(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る封止部材について、説明する。
【0013】
(1)封止部材の用途
封止部材の用途は、特に限定されないが、例えば、ガスケット、パッキン等が挙げられる。
【0014】
なかでも、電池用ガスケットに用いられる封止部材が好ましい。
【0015】
このような電池としては、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。このリチウムイオン電池の電解液としては、劣化が60℃以上になるまで生じにくいものが望ましい。
【0016】
電池用ガスケットとして用いられる場合には、封止部材は、封止部材の内側の貫通している部分に電池の電極(例えば、正極もしくは負極)が位置するようにして用いられることが好ましい。
【0017】
(2)封止部材の形状
封止部材の形状は、環状であって、内側の貫通している部分における貫通方向の一方側と他方側から押圧された状態で用いられ、押圧された状態において、押圧されている方向における圧縮割合が内側よりも外側の方が大きい部分を有しているものであれば特に限定されない。
【0018】
特に限定されないが、例えば、上下に傾斜面を有している場合には、当該傾斜面が貫通方向を法線とする平面に対して10度以上80度以下に傾斜していてもよいし、20度以上70度以下に傾斜していてもよい。
【0019】
なお、以下では、環状の封止部材の形状について、内側の貫通部分が上下方向に貫通していると仮定して、上面、下面等を説明する。
【0020】
ここで、「環状」という場合には、
図1の平面図に示す封止部材10のように、内側の円筒部分11がくり抜かれ外周12が円形である円柱形状も含まれるし、
図2の平面図の封止部材110に示すように、内側の方形部分111がくり抜かれ外周112が方形である四角筒も含まれるし、
図3の平面図に示す封止部材210のように、内側のくり抜かれた部分211に対する中心と外周212に対する中心とが偏心している形状も含まれる。また、封止部材の平面視における内側のくり抜かれた部分の形状も、特に限定されず、円柱形状がくり抜かれた形状であってもよいし、四角柱や五角柱等の多角形の柱がくり抜かれた形状であってもよい。同様に、封止部材の平面視における外縁の形状も、特に限定されず、円弧形状であってもよいし、多角形形状であってもよい。
【0021】
環状の封止部材は、使用状態において押圧されることとなる被押圧部分が、押圧されていない状態において内側から外側に向かうにつれて押圧される方向における厚みが増すように構成されていてもよい。具体的には、封止部材の内側の貫通部分の中心を含んで貫通方向に伸びる線が含まれる断面図である
図4に示す封止部材10のように、上面13は外側ほど上方に位置し下面14は外側ほど下方に位置するような形状であってもよいし、
図5に示す封止部材10Xのように、上面13xは外側ほど上方に位置し下面14xは同じ高さ位置に広がった形状であってもよい。ここで、封止部材の貫通方向における一方側と他方側から押圧される際に力のバランスを良好にして封止効果を得やすい観点から、貫通方向に垂直な方向視における上方側と下方側の形状が対象的であることがより好ましい。
【0022】
また、封止部材の上方と下方とは、平面を構成している必要はなく、例えば、封止部材の内側の貫通部分の中心を含んで貫通方向に伸びる線が含まれる断面図である
図6に示す封止部材310のように、上方部分313が上方に向けて膨出し下方部分314が下方に向けて膨出した形状であってもよいし、
図7に示す封止部材410のように、上方部分413が下方に向けて凹み下方部分414が上方に向けて凹んだ形状であってもよい。また、
図8に示す封止部材510のように、上方部分513と下方部分514が両方とも傾斜しており、各傾斜角度が異なった形状であってもよい。さらに、
図9に示す封止部材610のように、上方部分613や下方部分614が凹凸形状を伴いつつ全体として傾斜した形状であってもよい。また、
図10に示す封止部材710のように、内側の貫通部分の周囲に位置しており貫通方向の長さが内側ほど短くなるように貫通方向に対して傾斜した上方傾斜部分713aや下方傾斜部分714aを有し、上方傾斜部分713aの外側において傾斜していない上方平面部分713bと下方傾斜部分714aの外側において傾斜していない下方平面部分714bとを有した形状であってもよい。
【0023】
封止部材は、押圧された状態において、押圧されている方向における圧縮割合が内側よりも外側の方が大きい部分を有していればよい。ここで、封止部材のうち押圧された使用状態における被押圧部分について、外側よりも内側の方が圧縮割合が大きい部分が生じないように構成されていてもよい。
【0024】
また、封止部材の圧縮割合については、封止部材の内側の貫通部分の中心を含んで貫通方向に伸びる線が含まれる断面において内外方向の厚みの中心を基準に封止部材を内側と外側とに分けた場合に、内側の圧縮割合が外側の圧縮割合よりも小さいことがよく、内側の圧縮割合を外側の圧縮割合から差し引いて得られる値が2%以上60%以下であることが好ましく、3%以上50%以下であることがより好ましく、10%以上30%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
内側と外側に分割した圧縮割合ではなく封止部材の全体の圧縮割合は、寸法公差の影響を低減させるために10%以上が好ましい。さらに長期に高い反発力を維持させるためには、20%以上が好ましい。
【0026】
ここで、圧縮割合とは、封止部材の内側の貫通部分の中心を含んで貫通方向に伸びる線が含まれる断面において、封止部材になんら力が作用していない状態における封止部材(または封止部材の特定の部位)の断面積に対する、封止部材が貫通方向の一方側と他方側から押圧されて封止している状態(使用状態)における封止部材(または封止部材の特定の部位)の断面積の減少部分の割合(1―押圧状態の封止部材の断面積/なんら力が作用していない状態における封止部材の断面積)をいう。この圧縮割合は、封止部材が貫通方向の一方側と他方側から押圧されて封止している状態(使用状態)において、封止部材は単純に押圧方向の寸法が短くなり内外方向には寸法が変化しないものと仮定して得られる値とする。
【0027】
また、封止部材の内側の貫通部分の中心を含んで貫通方向に伸びる線が含まれる断面において、上方部分が傾斜した面で構成されている場合に、当該面の傾斜角度が水平面に対して5度以上傾斜していることが好ましく、10度以上傾斜していることがより好ましく、20度以上傾斜していることがさらに好ましい。
【0028】
(3)封止部材の素材
封止部材の素材としては、特に限定されず、封止部材による封止効果をより長時間得るためには、封止部材の引張弾性率の上限が好ましくは0.8GPaであり、より好ましくは0.7GPaである。また、封止部材の引張弾性率の下限は、好ましくは0.3GPaである。当該引張弾性率の望ましい範囲の根拠は、後述する。
【0029】
また、封止部材の素材としては、特に限定されず、ゴム状物質、フッ素樹脂以外の樹脂、フッ素樹脂、およびこれらの混合物等を用いることができる。これらの素材は、封止部材の主成分として含まれていることが好ましい。
【0030】
ゴム状物質としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、フッ素ゴム(FKM)、パーフルオロフッ素ゴム(FFKM)シリコーンゴム(VMQ)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム(U)、天然ゴム(NR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、および、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0031】
フッ素樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、メタクリル樹脂、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メラミン樹脂、フェノール樹脂、および、不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。フッ素樹脂以外の樹脂のメルトフローレートは、例えば、PPの場合は、ASTM D 1238に従って、温度230℃、荷重2.16kgとして測定される値であり、5以上60以下が好ましい。
【0032】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(FEP)、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体(PFA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、エチレン(Et)/テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、TFE/フッ化ビニリデン(VdF)共重合体、VdF/HFP共重合体、及び、ポリフッ化ビニル(PVF)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0033】
ここで、例えば「TFE/HFP共重合体」のように記載する場合には、TFEに基づく重合単位(TFE単位)と、HFPに基づく重合単位(HFP単位)とを含む共重合体であることを意味する。
【0034】
ここで、圧縮される封止部材の一部が面であって、圧縮する側の部材の面に対して傾斜している場合には、圧縮前は接触する面が平行ではない。このため、封止部材としては、柔軟に変形して圧縮する側の部材の面と平行になるよう変形するものが好ましい。このような観点から、封止部材の素材としては、比較的柔軟な樹脂であるパーフルオロポリマーが好ましく、なかでも、PTFE、PFA、FEPが好ましい。PFAにおけるPAVEとしては、炭素数1〜6のアルキル基を有するものが好ましく、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)またはパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)がより好ましい。上記PFAは、PAVE単位が2質量%を超え、8質量%以下であることが好ましく、2.5〜6質量%であることがより好ましい。これらの共重合体の各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる(以下同様)。上記PFAは、上述の組成を有するものであれば、さらに、その他の単量体を重合させたものであってよい。その他の単量体として、例えば、HFPが挙げられる。含有量としては、1重量%以下が好ましい。上記その他の単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。また、PFAのなかでも、耐クリープ性がすぐれることから、TFE/PPVE共重合体が特に好ましい。PPVEの共重合組成としては、2.0重量%から5.0重量%が好ましい。ここで、溶融流動可能なPTFEを添加し、見かけ上PPVEの含有量を下げて、耐クリープ性を向上させ、圧縮永久ひずみを低下させることも可能である。その場合、トータルのPPVE含有量は、1.0重量%から、4.0重量%が好ましい。トータルのPPVE含有量が1重量%より低くなると、クラックが発生しやすくなり、4重量%を超えると、PTFEを添加した効果が少なくなる。
【0035】
また、封止部材をリチウムイオン電池用のガスケットとして用いる場合には、極性の強い溶剤に膨潤しにくく、接触による劣化を起こしにくい素材が含有されていることが好ましい。具体的には、極性の強い溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを適宜混合した非水溶媒に対して、LiCF
3SO
3、LiClO
4、LiBF
4および/またはLiPF
6を溶解して得られる非水系電解液等が挙げられる。このため、これらの極性の強い溶剤に膨潤しにくく、接触による劣化を起こしにくい素材としては、ETFE、もしくはパーフルオロポリマーが好ましく、パーフルオロポリマーのなかでもPTFE、PFA、FEPが好ましい。これらのなかでも、水蒸気透過性が低いためにLiPF
6等の電解質の水分による分解を抑制することができるとともに、十分な硬度を有しており、溶剤膨潤性がゴムよりも小さく、幅広い化学物質に対する耐薬品性があり酸化劣化しにくく長期間使用が可能となるという観点から、特に、PFAが好ましい。なお、封止部材がPFAを含む場合には、PFAの含有量が50wt%以上100wt%以下であることが好ましく、その下限が70wt%以上であることがより好ましい。
【0036】
上述のPTFEは、TFE単独重合体であってもよいし、変性PTFEであってもよい。ここで、「変性PTFE」とは、得られる共重合体に溶融加工性を付与しない程度の少量(1重量%以下)の共単量体(変性剤)をTFEと共重合してなるものを意味する。変性剤としては、例えば、HFP等のパーフルオロオレフィン;CTFE等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
上述のTFE/VdF共重合体としては、TFE単位:VdF単位のモル比が45〜85/55〜15であるものが好ましく、より好ましくは、50〜80/50〜20である。
【0038】
上述のVdF/HFP共重合体としては、VdF単位とHFP単位とのモル比が45〜85/55〜15であるものが好ましく、より好ましくは50〜80/50〜20であり、さらに好ましくは60〜80/40〜20である。VdF/HFP共重合体は、VdFに基づく重合単位と、HFPに基づく重合単位とを含む共重合体であり、他の含フッ素単量体に基づく重合単位を有していてもよい。例えば、VdF/HFP/TFE共重合体であることも好ましい形態の一つである。VdF/HFP/TFE共重合体としては、VdF/HFP/TFEのモル比が40〜80/10〜35/10〜25のものが好ましい。
【0039】
封止部材がパーフルオロポリマーを含む場合には、流れにくく反発力が確保しやすい観点から、そのメルトフローレート(MFR)が40g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下であることがより好ましく、3g/10分以下であることがさらに好ましい。ここで、MFRとは、重合体の372℃におけるメルトフローレートをいい、ASTM D 1238-98に準拠し、メルトインデックステスター(東洋精機製作所社製)を用い、約6gの樹脂を372℃に保たれたシリンダーに投入し、5分間放置して温度が平衡状態に達した後、5kgのピストン荷重下で直径2.1mm、長さ8mmのオリフィスを通して樹脂を押し出して、単位時間(通常10〜60秒)に採取される樹脂の質量(g)を同一試料について3回ずつ測定し、その平均値を10分間当たりの押出量に換算した値(単位:g/10分)とする。
【0040】
なお、上述のフッ素樹脂のうち、溶融加工性に優れる観点からは、FEP、PFA、Et/TFE共重合体、PCTFE、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、PVdF、TFE/VdF共重合体、VdF/HFP共重合体、および、PVFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような溶融加工性フッ素樹脂を用いることで、成形を容易に行うことができる。
【0041】
(4)シミュレーション
本発明の封止部材は、押圧された状態において、押圧されている方向における圧縮割合が内側よりも外側の方が大きい部分を有していることにより、封止部材が使用された状態で長時間(例えば、20万時間)経過した後であっても、封止部材の反発力が残りやすく、封止効果を良好に維持することができる。
【0042】
ここで、本発明に係る封止部材の例として、上述の
図4に示す封止部材10および
図5に示す封止部材10Xを例に挙げ、形状の優位性を確認するシミュレーションを行った。
【0043】
図4に示す封止部材10は、外側に向かうほど貫通方向の幅が増大する形状であって、上面13側も下面14側もいずれも水平面に対して傾斜角度αで傾斜している例である。
【0044】
また、
図5に示す封止部材10Xは、外側に向かうほど貫通方向の幅が増大する形状であって、上面13xについては水平面に対して傾斜角度αで傾斜しており、下面14xについては水平面上に広がっているという例である。
【0045】
また、シミュレーションでは、本発明に係る封止部材ではない比較対象として、
図11に示す封止部材10Yと
図12に示す封止部材10Zを用いた。
図11に示す封止部材10Yは、上面13yは外側ほど下方に位置し下面14yは外側ほど上方に位置して外側に向かうほど貫通方向の幅が縮小する形状であって、上面13yおよび下面14y共に水平面に対して傾斜角度βで傾斜している。
図12に示す封止部材10Zは、下面14zについては水平面上に広がっており、上面13zは外側ほど下方に位置することで外側に向かうほど貫通方向の幅が縮小する形状であって、上面13zは水平面に対して傾斜角度βで傾斜している。
【0046】
また、シミュレーションに用いた封止部材10、10X、10Y、10Zは、いずれも環状であって、内側の貫通部分が円筒形状であって内径Aが6mmで共通し、外周面も円筒形状であって外径Bが18mmで共通しているものを用いた。また、これらの封止部材10、10X、10Y、10Zは、水平方向の幅の中心位置(径方向における内周と外周の中間位置)での貫通方向の幅Cがいずれも5mmとなるようにして共通化させた。
【0047】
なお、シミュレーションは、60℃の環境下において、水平方向に広がった面を有する部材によって貫通方向の一方側と他方側の両方から剛体によって封止部材が押圧され、そのまま保持されることを条件とし、ANSYS V14.5を用いて行った。なお、押圧は、封止部材の水平方向の幅の中心位置(径方向における内周と外周の中間位置)での貫通方向の幅Cが3mmとなるまで行い、この3mmが維持されるものとした。
【0048】
ここで、シミュレーションに用いた封止部材10、10X、10Y、10Zの素材は、いずれも「テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体」とし、具体的には、ネオフロン(登録商標)PFA AP-230の物性値を用いた。ここで、PFA AP-230の材質としての物性値としては、ASTM D 3307準拠によるMFRが2.0g/10分であり、ASTM D 4591準拠による融点306℃であり、ASTM D 3307準拠による比重が2.14であり、ASTM D 3307準拠による引張り強度が34.0MPaであり、ASTM D 3307準拠による伸びが320%である。引張弾性率は、430MPaである。シミュレーションに用いた60℃での物性値は、ASTM D 3307の測定雰囲気温度のみを60℃に変更して測定した値で、引張り強度が23.5MPa、伸びが330%、引張弾性率が186.1MPa、降伏応力が3.42MPaであるとした。ポアソン比は0.46であるとした。
【0049】
ここで、用いた素材の経時変化の条件は、用いた素材であるPFA AP-230のクリープ特性を用いて定めた。なお、クリープ特性は、次の式に示すように、修正時間硬化型のクリープモデルで表現すると仮定した。AP230の11.3mmφ×10Lのテストピースを圧縮成型したブロックから切削により作成し、60℃において6.9MPa,14MPa,20MPa,30MPa,40MPaの荷重におけるクリープ特性を実測した。その実測値を用いて、下記数1に実測データをフィッティングすることによりC
1、C
2、C
3、C
4をもとめた。
【0051】
また、封止部材と、貫通方向の一方側と他方側からの押圧に用いられる剛体との間の摩擦係数は0.1とした。
【0052】
なお、用いた素材について引っ張り試験を行うことで、
図13に示す公称応力と公称ひずみの関係を示す線図を得た。また、
図13の線図に基づいて計算を行うことで
図14に示す真応力と真ひずみの関係を示す線図を得た。そして、これらの線図から、経年挙動解析のシミュレーション条件を得た。
【0053】
なお、シミュレーションでは、封止部材10、10X、10Y、10Zの各外周の外側に
図1に示す剛体として仮定される拘束部材20を配備して貫通方向から押圧された場合であっても外周が外側に広がっていかないように拘束条件を定めた例と、このような拘束部材20を用いることなく外周における広がりをフリーとした例と、について検討した。
【0054】
図15に、傾斜角度αやβを変化させた場合における封止部材の20万時間後の反発力の大きさに関するシミュレーション結果を示す。
【0055】
図15に示すように、いずれの封止部材10、10X、10Y、10Zについても、拘束部材20を用いた場合の方が20万時間後でもより多くの反発力が残っており、封止効果が良好であることが分かる。また、外側に向かうほど貫通方向の厚みが縮小する封止部材10Y、10Zについては傾斜角度βが増大したとしても20万時間後に残る反発力は良好にはならない。上面側のみが傾斜している封止部材10Xについては傾斜角度αが増大するにつれて反発力がわずかに良好となり、傾斜角度が15度以上22度以下の範囲で反発力が極大となる。外側に向かうほど貫通方向の厚みが増大する形状である封止部材10については、傾斜角度αが増大するほど20万時間後に残る反発力も良好になることを確認することができ、封止部材10Xと比較して効果が顕著であった。拘束部材20がある場合でもない場合でもαが大きくなることにより反発力は良好になる。
【0056】
以上より、封止部材としては、封止部材10のように、外側に向かうほど貫通方向の厚みが増しており、上面13および下面14の両方が傾斜している形状のものを、拘束部材20が存在する状態で使用されることが望ましいことが分かる。
【0057】
また、
図16に、封止部材の使用開始からの経過時間に応じた反発力の変化を示すシミュレーション結果を示す。なお、ここでは、平板形状である傾斜の無いもの(「傾斜なし」の例)も比較のために用いた。
【0058】
この
図16の結果によると、いずれの封止部材10、10X、10Y、10Zについても、やはり、拘束部材20を用いた場合の方が時間経過に伴う反発力の低下が穏やかであり、拘束部材20が存在している方が封止効果が良好であることが分かる。
【0059】
また、封止部材の素材として、上述した素材の物性のうち、引っ張り試験時の応力およびクリープの反発力を倍にしたものについてもシミュレーションを行った。ここで、シミュレーションは、実測の倍の荷重をかけた場合のクリープ量が同じになったものとして処理を行った。また、ある変形量に対し実測の倍の応力が発生する、としてシミュレーション用のデータを作成した。
【0060】
図17に、封止部材に用いられる素材の引っ張り試験時の応力およびクリープの反発力が1倍のものと2倍のものについて、反発力の経時変化のシミュレーション結果を示す。
【0061】
この
図17の結果によると、当初は反発力が2倍であるモデルの方が望ましいが、1時間程度で反発力が1倍のものと2倍のものの差が無くなり、その後はむしろ1倍のものの方が反発力が大きく維持されることが分かった。封止部材の素材の物性値において、反発力に依存性が高い物性値として引張弾性率がある。室温における引張弾性率は、反発力が2倍であるモデルは0.86GPa なので 0.86GPa の引張弾性率を持つものは反発力が大きすぎ、好ましくない。よって、素材の引張弾性率は、0.8GPa よりも小さいことが好ましく、0.7GPa以下がさらに好ましい。
【0062】
また、封止部材と接触する押圧する部分との摩擦係数を変えた場合の20万時間後の反発力を、封止部材10(傾斜角度α=10度)、10X(傾斜角度α=20度)、10Y(傾斜角度β=10度)、10Z(傾斜角度β=20度)についてそれぞれ求めるシミュレーションを行った。ここで、各封止部材の条件は、押圧する部材との摩擦係数に関する条件以外は上述した通りとした。このシミュレーション結果を
図18に示す。この結果が示すように、封止部材と接触する押圧する部材との摩擦係数は、封止部材からの反発力の大きさに影響を及ぼすことが明らかとなった。この結果によると、上記摩擦係数が大きくなればなるほど、得られる反発力が大きくなることが明らかになった。この効果は、封止部材の形状によらず、封止部材10、10X、10Y、10Zのいずれでも同じであった。また、摩擦係数の増加による反発力の増大比率は、経過時間の短い長いに係らず、ほぼ同じ比率であった。例えば、摩擦係数を1.0から2.0に変化させると、反発力が約25%増大した。
【0063】
また、上記封止部材のうち上面および下面に傾斜の無い円筒形状のものを、貫通方向の一方側と他方側から押圧して5mmの厚みを3mmとして維持した場合であって、内側及び外側の拘束が無いという条件において、径方向の位置に応じた反発力の経時変化を求めるシミュレーションを行った。
【0064】
当該シミュレーションの結果を、押圧直後の状態について
図19に、押圧したままで1万時間経過した状態について
図20に、押圧したままで10万時間経過した状態について
図21に、押圧したままで20万時間経過した状態について
図22にそれぞれ示す。なお、
図19〜
図22においては、封止部材の側断面の一部を示しており、図の左側が径方向内側であり、図の右側が径方向外側を示している。また、
図19〜
図22においては、異なる反発力の領域を異なるハッチングによって示している。
【0065】
ここで、押圧直後の状態では反発力が最大である部分の面圧の値が37.7MPaであり、押圧したままで1万時間経過した状態では反発力が最大である部分の面圧の値が16.4MPaであり、押圧したままで10万時間経過した状態では反発力が最大である部分の面圧の値が15.0MPaであり、押圧したままで20万時間経過した状態では反発力が最大である部分の面圧の値が14.7MPaであった。
【0066】
これによると、
図19〜
図22に示すように、上面や下面に傾斜が設けられていない封止部材(一点鎖線で示す)を上下方向から押圧して変形させた状態(二点鎖線で示す)を維持する場合において、20万時間経過した時の封止部材の外側の反発力が低下していることが分かる。なお、外側に向かうほど貫通方向の厚みが増大する形状ではなく、傾斜が設けられていない形状では、押圧された状態において外側に押し拡げられることで径方向外側周辺の部分の外径がより長くなるように変形する(長外径化する)ため貫通方向における反発力が弱まりやすいものと考えられる。これに対して、封止部材を径方向外側が拘束されるようにして用いられる場合には、このような押圧時における長外径化の変形が生じにくいため、反発力の低減化を抑制することができるものと考えられる。
【0067】
(5)使用例
ガスケット51が電池の電極周辺の封止部材として用いられる場合について、押圧される前の状態の例を
図23に、押圧された使用状態の例を
図24に、それぞれ示す。
【0068】
この電池の上蓋63および上蓋63の一部を覆う絶縁カバー62には、上下方向に貫通した貫通部分が設けられている。この貫通部分には、カシメることによって電極等として用いられるカシメピン61が設けられている。このカシメピン61は、金属によって構成されており、互いに繋がって一体化しているピン上部61aとピン下部61bを有している。
【0069】
カシメピン61のピン上部61aは、カシメられる前の状態では、
図23に示すように、上記貫通部分の内径よりも小さな外径の円柱形状が、上蓋63よりも下方の高さから上記貫通部分の内側を介して上蓋63よりも上方の高さまで上下方向に渡って伸びた形状を有している。
【0070】
カシメピン61のピン下部61bは、カシメられる前の状態では、
図23に示すように、上記貫通部分の内径よりも大きな外径の円柱形状が、上蓋63の下方において、ピン上部61aの下端からさらに下方に向けて伸びた形状を有している。このカシメピン61のピン下部61bは、剛性の高い部材によって構成される拘束部材64によって径方向周囲から覆われている。なお、この拘束部材64は、図示しない他の部材によって例えば上蓋63に対して相対的に移動することが無いように固定されることで、位置決めされている。
【0071】
ガスケット51は、上蓋63と絶縁カバー62と拘束部材64と、カシメピン61との間に介在するように設けられており、上方円筒部分51aと、円板部分51bと、下方円筒部分51cを有している。
【0072】
上方円筒部分51aは、上蓋63と絶縁カバー62の内側の貫通部分の内径よりも僅かに小さい外径と、カシメピン61のピン上部61aの外径よりも僅かに大きい内径を有しており、上蓋63よりも下方の高さから上記貫通部分の内側を介して上蓋63よりも上方の高さまで上下方向に渡って伸びた形状を有している。上方円筒部分51aは、上蓋63および絶縁カバー62と、カシメピン61のピン上部61aと、の間に介在することで、両者を絶縁している。
【0073】
下方円筒部分51cは、カシメピン61のピン下部61bの外径よりも僅かに大きな内径と、拘束部材64の内径よりも僅かに小さな外径を有しており、カシメピン61のピン下部61bの外周と拘束部材64の内周が対面している高さ位置から上蓋63の下面に向けて上方に伸びた形状を有している。下方円筒部分51cは、カシメピン61のピン下部61bと、拘束部材64と、の間に介在することで、両者を絶縁している。
【0074】
円板部分51bは、上方円筒部分51aの下端外周部分と、下方円筒部分51c上端内周部分と、を径方向において繋ぐように広がった部材であり、例えば、上述した封止部材10のような形状を構成している。円板部分51bの径方向外側端部は、上蓋63の下面と面接触する外側上平面部分と、カシメピン61のピン下部61bの上面部分と面接触する外側下平面部分と、を有している。円板部分51bのうち、外側上平面部分および外側下平面部分よりも径方向内側の部分は、径方向内側に向かうにつれて上下方向の厚みが薄くなるように上面および下面が傾斜した構成となっている。なお、特に限定されないが、当該使用例では、径方向外側から上方円筒部分51aの下端外周に到達するまで、径方向内側に向かうにつれて上下方向の厚みが連続的に薄くなるように構成されているが、例えば、上方円筒部分51aの下端外周に到達する直前部分において上下方向の厚みが一定となっている部分が設けられていてもよい。また、円板部分51bの径方向において、外側上平面部分および外側下平面部分が設けられている部分と、当該部分よりも内側の部分と、の径方向の長さの割合は、特に限定されないが、例えば、
図23に示すようにカシメられる前の状態では、1:9〜5:5の範囲であることが好ましい。
【0075】
上述のように、
図23に示すカシメられる前の状態のカシメピン61を、ガスケット51が拘束部材64によって径方向への移動が拘束されている状態で、カシメピン61のピン上部61aの上端を下方に向けて押しつぶすようにすることで、カシメピン61のピン上部61aが押しつぶされ、
図24に示す変形ピン上部61a’のようにガスケット51の上方円筒部分51aの上端を上方から覆うように変形する。また、この時、ガスケット51の円板部分51bは、上蓋63の下面部分とカシメピン61のピン下部61bの上面部分によって上下方向から押圧され、上下方向の厚みが小さくなるように変形する。このようにして、ガスケット51は、径方向において拘束されつつ上下方向から押圧された状態で固定され、使用状態となる。なお、ここでは、ガスケット51の上方円筒部分51aについても、上下方向の長さが短くなるように変形している。
【0076】
なお、
図24に示すようにカシメられた後の状態において、ガスケット51の円板部分51bの径方向における外側上平面部分および外側下平面部分が設けられている部分と当該部分よりも内側の部分との径方向の長さの割合は、特に限定されないが、例えば、7:3〜9.5:1であることが好ましい。