(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1(a)、(b)は、それぞれ、本発明の一実施の形態に係る電子打楽器用のペダル装置の平面図、底面図である。
図2(a)、(b)は、
図1(a)のA−A線に沿う断面図である。
【0021】
このペダル装置は、例えば、電子打楽器としての電子バスドラムに用いられるキックペダルとして構成される。このペダル装置は、床面26の上に設置されて、フットボード20の踏み込みにより演奏操作がされる。
図2(a)、(b)はそれぞれ、フットボード20が踏み込み開始位置にある状態(非操作状態または初期状態)、踏み込み終了位置にある状態(踏み込み終了状態)を示している。
【0022】
以降、ペダル装置の前後、上下方向は、水平な床面26に載置された状態を基準とし、
図1、
図2の右側が前側、
図2(a)、(b)の上側が上側とする。また、左右方向については、
図1(a)の右方にいる奏者からみた方向を基準として呼称し、
図1(a)の上側が右側とする。
【0023】
図1、
図2に示すように、ペダル装置は基台10を有し、基台10上に、板状のフットボード20と2本のアーム21(21L、21R)とで構成されるリンク機構が配設される。このリンク機構においては、質量部22が前後方向にスライド移動するように構成され、いわゆるスライダクランク機構が採用されている(詳細は後述)。基台10、フットボード20、アーム21はいずれも金属等で構成される。
【0024】
基台10の底板11の前部上部には支承部12が設けられ、底板11の後部上部にはストッパ支持部13が設けられる。底板11の後半部上部の左右両側には、側板部14(14L、14R)が上方に突設されている。底板11の前後方向ほぼ中間部で左右方向中央部には、バネ支持部15が上方に突設されている(
図2)。これら支承部12、ストッパ支持部13、側板部14及びバネ支持部15は、底板11に対して固定的であればよく、一体に形成されている必要はない。ストッパ支持部13の前面にはストッパ部30が配設固定されている。
【0025】
底板11の下面には、脚部25が設けられ、脚部25(
図1)が床面26に接地されている。脚部25は、ゴムまたはバネ等の弾性体でなり、基台10と床面26との間の振動伝達を遮断乃至抑制する役割を果たす。振動遮断をより効果的にするために、脚部25に相当する部分に粘弾性材料を介在させたり、オイルダンパやエアダンパ等を設けたりして損失を与え、振動の減衰を早めるようにしてもよい。その際、共振が生じないように設計するのが好ましい。
【0026】
支承部12には第1回動軸18が左右方向に沿って設けられ、第1回動軸18に、フットボード20の前端部20aが軸支されている。これにより、フットボード20は、第1回動軸18を中心に後端部20bが上下方向(
図2(a)の時計及び反時計方向)に回動自在になっている。
【0027】
また、フットボード20の後端部20bに第2回動軸23が左右方向に沿って設けられる。アーム21は、左右に1本ずつ平行に設けられ、第2回動軸23に、各アーム21の前端部21aが軸支されている。これにより、各アーム21の後端部21bが、第2回動軸23を中心に相対的に上下方向(
図2(a)の時計及び反時計方向)に回動自在になっている。
【0028】
アーム21Lの後端部21bとアーム21Rの後端部21bとの間に棒状の摺動ピン24が懸架される。アーム21L、21Rの間には質量部22が設けられる。フットボード20、アーム21及び質量部22を含む系(動作系)の多くの質量が質量部22に集中するよう、質量部22は、好ましくはフットボード20やアーム21よりも比重の大きい素材でなる。質量部22を摺動ピン24が貫通し、質量部22に対して摺動ピン24が回転自在になっている。質量部22は側面視形状が円形であるが、形状は一例であり、これに限定されない。
【0029】
基台10の各側板部14の左右方向内側面には、前後方向に沿った凹状のガイド溝14aが形成されている。摺動ピン24は左右方向に沿って配設され、その左右両端が側板部14Lのガイド溝14aと側板部14Rのガイド溝14aとに係合するよう架け渡されている。ガイド溝14aの上下方向の幅は摺動ピン24の直径より僅かに大きく、摺動ピン24がガイド溝14a内を前後方向に摺動自在になっている。これにより、質量部22は、摺動ピン24と一体となって前後方向に変位可能になっている。
【0030】
フットボード20の下面と底板11との間には、弾性材としての第1コイルバネ16が介装されている。フットボード20への第1コイルバネ16の取り付け位置は後端部20b寄りであるのが好ましいが、必須ではない。また、質量部22とバネ支持部15との間には、弾性材としての第2コイルバネ17が介装されている。フットボード20の非操作状態においては、第1コイルバネ16及び第2コイルバネ17が共に圧縮状態となって、フットボード20、アーム21及び質量部22を含むリンク機構の系の平衡状態を保っている。すなわち、非操作状態のフットボード20が、
図2(a)に示す踏み込み開始位置に規制される。しかも、踏み込み開始位置から踏み込みの往方向(
図2(a)の反時計方向)またはその反対方向のいずれの方向にフットボード20を変位させたとしても、両コイルバネ16、17の弾性によって、フットボード20を踏み込み開始位置に復帰させる付勢力が作用する。
【0031】
コイルバネ16、17のバネ定数、配設位置の設定、変位量等は任意に設定でき、それらによって、踏み込みトルクを奏者の好みに設定することができる。また、フットボード20の踏み込み開始位置(初期角度)も好みの位置に設定することができる。ところで、非操作状態においてリンク機構の系の平衡状態を保つ上では、両コイルバネ16、17は双方とも引張状態であってもよい。
【0032】
非操作状態(
図2(a))からフットボード20が踏み込み操作されると、フットボード20が回動し、第2回動軸23が下方に変位する。それに伴い、ガイド溝14a内を摺動ピン24が後方に摺動し、質量部22が後方に水平移動する。アーム21は第2回動軸23及び摺動ピン24の位置に応じた姿勢となる。やがて、質量部22がストッパ部30に当接するとフットボード20の踏み込み終了位置が規制される(
図2(b))。質量部22の衝撃力が直接作用する方向は後方であるので、下方である床面26に対する衝撃力は従来に比べて大きく軽減される。ストッパ部30の構成は後述する。
【0033】
図3(a)は、本実施の形態におけるフットボード20、アーム21及び質量部22を含むリンク機構の系の模式図である。非操作状態における第2回動軸23、摺動ピン24の位置をそれぞれ始点PfS、PaS、フットボード20が踏み込み終了位置にあるときの第2回動軸23、摺動ピン24の位置をそれぞれ終点PfE、PaEとする。
【0034】
踏み込みの往行程において、第2回動軸23の始点PfSから終点PfEまでの直線距離よりも、摺動ピン24の始点PaSから終点PaEまでの直線距離の方が長い。第2回動軸23からみて質量部22の変位量が拡大していることにより、質量部22がフットボード20に直接固定される構成に比べ、上記系における質量部22の慣性質量が大きくなる。従って、従来に比べ、質量部による慣性力の影響が大きくなるよう設計するのが容易となっている。また、質量部22の形状や質量の設定の自由度も、フットボード20に固定する場合に比し高い。本実施の形態では、アコースティックのキックペダルと同程度の慣性質量となるように、質量部22の質量及び変位量が設定されている。
【0035】
図4(a)、(b)は、本実施の形態におけるストッパ部30の詳細な構成を模式的に示す断面図である。ストッパ部30の正面視形状は円形であるが、矩形でもよく、形状は問わない。
図4(a)は、質量部22との非当接状態、
図4(b)は質量部22との当接状態を示し、変形の様子は誇張して示してある。
【0036】
図4(a)に示すように、ストッパ部30は、最後部にベースプレート32を有し、ベースプレート32とセンサプレート34との間にスポンジ等の緩衝材33が介装される。センサプレート34の前面にスポンジ等の緩衝材35が貼着され、緩衝材35の前面をゴムシート36が覆っている。ゴムシート36の前面は鉛直方向に平行である。センサプレート34の後面の緩衝材33がない部分にピエゾセンサ31が貼着される。
【0037】
質量部22がゴムシート36の前面に当接すると、緩衝材33、35が緩衝機能を果たすと共に、その打撃による電圧変化をピエゾセンサ31が検出し、信号を出力する。出力された信号は、打撃演奏トリガ信号として不図示の信号処理部に送られ、打撃演奏データに変換されたり、リアルタイムに音響に変換されたりする。
【0038】
ここで、ゴムシート36の硬度は緩衝材33、35よりも高い。質量部22がゴムシート36に当接した瞬間、アコースティックドラムのキックペダルに近似した適切な反発力が発生するように、ゴムシート36及び緩衝材33、35の設計がなされている。設計上、反発力は主に緩衝材33、35の硬度で調節される。適切な調節により、2度続けて打撃するいわゆるダブル演奏操作を違和感なく行うことができる。ストッパ部30で質量部22が跳ね返った後、上記系は、コイルバネ16、17の弾性によって踏み込み開始位置に復帰する。
【0039】
本実施の形態によれば、フットボード20とアーム21とでリンク機構が構成され、ガイド溝14aによって質量部22の変位軌道が前後方向に規制される。そして、フットボード20の踏み込みの往行程において、質量部22が後方にスライド移動し、ストッパ部30に正面から当接する。これにより、床面26に対する衝撃を緩和することができる。特に、ストッパ部30の当接面は垂直であるので、水平方向前方に反発力が作用し、床面26に対して伝わる振動や発生する衝撃音が小さくて済む。また、質量部22がフットボード20にリンクされたアーム21の後端部21bに設けられ、その変位量がフットボード20の後端部20bよりも大きいので、質量部22の慣性力を大きくでき、踏み込み感触を向上させるための自由度を高めることができる。よって、踏み込み感触を向上させるのを容易にすることができる。
【0040】
また、第1コイルバネ16及び第2コイルバネ17によって、リンク機構の系が平衡状態を保ち、初期位置への復帰習性を付与されるから、アコースティックのペダル装置に似た踏み込み初期の操作感触を実現することができる。
【0041】
また、ストッパ部30の緩衝材33、35は、質量部22と当接したときフットボード20に対して復方向への反力を発生させる反力発生部としての役割を果たすので、良好な打撃感触を実現し連打を容易にすることができる。さらに、ストッパ部30に反力発生部とピエゾセンサ31とが内蔵されているので、良好な打撃感触と操作検出とをコンパクトな構成で実現することができる。
【0042】
ところで、床面26に対する衝撃を効果的に緩和する観点からは、踏み込みの往行程において質量部22が下方の成分を含まない方向に変位するように構成すればよい。以下、変形例を説明する。
【0043】
図3(b)〜(d)は、質量部22の変位方向を変えた変形例のリンク機構の模式図であり、
図3(a)に対応している。例えば、
図3(b)に示すように、フットボード20が踏み込まれるに従って、質量部22が前方にスライド移動するように構成してもよい。あるいは、上方の成分を含んでいてもよく、
図3(c)に示すように、質量部22が斜め後方上方に変位するように構成してもよい。また、質量部22は直線的に変位することは必須でなく、
図3(d)に示すように、湾曲した軌跡を辿るようにしてもよい。
【0044】
このほか、質量部22の変位方向には左右方向の成分を含んでいてもよい。ただし、緩衝の観点からは、摺動ピン24の始点PaSから終点PaEとの関係において、摺動ピン24乃至質量部22の変位成分は、上方の成分よりも水平方向の成分の方が大きい方が効果的である。なお、慣性質量を効果的に作用させる上で、踏み込みにより変位する第2回動軸23の直線距離よりも、質量部22の変位の直線距離(摺動ピン24の始点PaSから終点PaEまでの直線距離)の方が大きくなるように設計するのが好ましいことは、上記した
図3(a)の例と同様である。また、ストッパ部30からの反発力の方向に関しては、質量部22が当接するストッパ部30の面は鉛直方向に平行に近い方が好ましい。
【0045】
ところで、ストッパ部30に打撃検出機構と反力発生部とを内蔵させる構成としては、
図4(a)、(b)の例に限らない。
図4(c)〜(f)に変形例のストッパ部30を示す。
【0046】
例えば、
図4(c)、(d)に示すストッパ部30は、ベースプレート37に膜部39を張力を保持した状態でネジで固定する。膜部39の後面にスポンジ等の緩衝材38を設け、緩衝材38とベースプレート37との間にピエゾセンサ31を配設する。この構成では、主に膜部39の張力によって反発力が発生する。質量部22が当接すると緩衝材38が変形し、ピエゾセンサ31が打撃として検出する。
【0047】
また、
図4(e)、(f)に示すように、ベースプレート40と板金49との間にバネ42を介装し、ベースプレート40の後面にスポンジ等の緩衝材41を設け、緩衝材41とベースプレート40との間にピエゾセンサ31を配設する。板金49の前面をゴムシート36が覆っている。この構成では、主にバネ42の弾性によって反発力が発生する。質量部22が当接すると緩衝材41が変形し、ピエゾセンサ31が打撃として検出する。
【0048】
このほか、例示した以外の弾性体や張力を発生させる部材、あるいはこれらの組み合わせによって反力発生部を構成してもよい。なお、打撃を検出するセンサの種類は問わず、ピエゾ素子に限られない。静電容量型のセンサや感圧抵抗型のセンサ等を採用してもよい。
【0049】
ところで、質量部22の変位軌道を規制する機構としては、
図1、
図2に例示したガイド溝14aと摺動ピン24との組み合わせに限定されない。
図5(a)、(b)は、質量部22の変位軌道を規制する機構の変形例を示す模式図である。
【0050】
例えば、
図5(a)に示すように、基台10の底板11に側板部14と同様の側板部50を左右両側に設け、左右両方の側板部50の各左右方向内側面に凹状のガイド溝50aを形成する。質量部22は、直方体状に形成し、質量部22とアーム21とは回動軸52で連結される。そして、質量部22自体がガイド溝50a内を前後方向に摺動するように構成する。
【0051】
あるいは、
図5(b)に示すように、基台10の底板11にブロック51を突設し、ブロック51に正面視円形のガイド穴51aを形成する。質量部22は、円柱状に形成し、質量部22とアーム21とは回動軸52で連結される。そして、質量部22自体がガイド穴51a内を前後方向に摺動するように構成する。
【0052】
ところで、フットボード20、アーム21及び質量部22を含むリンク機構の系を非操作状態において平衡状態に保つ観点からは、
図1、
図2で示したコイルバネ16、17の配設態様に限られない。
図6(a)〜(e)は、リンク機構の系を非操作状態において平衡状態に保つためのコイルバネの配設態様の変形例を示す図である。
図6(a)〜(e)において、バネ係止部10a〜10eは、基台10に対して固定的な部分であって、基台10でもよく、基台10に固定された部材でもよい。
【0053】
例えば、
図6(a)に示すように、フットボード20と上方のバネ係止部10a、下方のバネ係止部10bとの間に、それぞれコイルバネ43、44を介装する。あるいは、
図6(b)に示すように、フットボード20とバネ係止部10aとの間にコイルバネ43を介装すると共に、質量部22と質量部22より後方のバネ係止部10cとの間にコイルバネ45を介装する。あるいは、
図6(c)に示すように、質量部22とバネ係止部10cとの間にコイルバネ45を介装すると共に、質量部22と質量部22より前方のバネ係止部10dとの間にコイルバネ46を介装する。
【0054】
図6(a)〜(c)の例の場合は、2つのコイルバネを共に圧縮状態としてリンク機構の系を非操作状態において平衡状態に保つことができる。あるいは、双方とも引張状態としても平衡状態に保つことは可能である。
【0055】
また、
図6(d)に示すように、質量部22とそれの上方のバネ係止部10aとの間にコイルバネ47を介装する。そして、非操作状態で、コイルバネ47が引張状態となり、且つ、質量部22がバネ係止部10aのちょうど直下に位置するようにする。あるいは、
図6(e)に示すように、フットボード20の後端部20b(乃至第2回動軸23)と、それの後方斜め上方のバネ係止部10eとの間にコイルバネ48を介装する。そして、非操作状態で、コイルバネ48が引張状態となり、且つ、フットボード20の延長上にコイルバネ48が延設された形となるようにする。
【0056】
図6(d)、(e)の例の場合は、コイルバネは1つである。コイルバネ47、48はいずれも、フットボード20が踏み込み開始位置にあるときに最も短くなるように引張状態で配設される。フットボード20を、非操作状態における踏み込み開始位置から往方向またはその反対方向のいずれの方向に変位させたとしても、コイルバネ47、48がより引っ張られるため、フットボード20を踏み込み開始位置に復帰させる付勢力がリンク機構の系に作用する。
【0057】
なお、上記実施の形態や各変形例において、リンク機構の系を適切に構成する上では、第2回動軸23の位置は、フットボード20の後端部20b寄りの位置に設ければよい。また、質量部22は、アーム21の後端部21b寄りの位置に設ければよい。また、コイルバネ16、17等、各種のコイルバネは、弾性力を発揮するものであればよく、ゴム等の他の弾性材であってもよい。
【0058】
なお、ピエゾセンサ31は、フットボード20の動作を直接または間接に検出できればよいので、配設箇所は質量部22と当接する箇所に限られず、フットボード20自体の動作を検出できる位置、例えば、底板11に配設してもよい。