(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記包囲構造物は、少なくとも使用するモールドのパターン領域と同じか、それより大きい領域に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインプリント用基板。
前記包囲構造物は、少なくとも使用するモールドのパターン領域と同じか、それより大きい領域に位置することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のインプリント用基板。
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のインプリント用基板の前記基板本体上の前記包囲構造物で囲まれた領域に、被加工物としての樹脂を液滴で供給する液滴供給工程と、
樹脂にモールドのパターン領域を押し当て、前記液滴が前記包囲構造物を乗り越えるように広げて樹脂層を形成する押し当て工程と、
前記樹脂層の所望領域を硬化させ、次いで、硬化した樹脂層から前記モールドを引き離す硬化・剥離工程と、を有することを特徴とするインプリント方法。
請求項8乃至請求項12のいずれかに記載のインプリント用基板の前記基板本体上の前記包囲構造物で囲まれた領域に、被加工物としての樹脂を液滴で供給する液滴供給工程と、
前記包囲構造物を加熱するとともに、樹脂にモールドのパターン領域を押し当て、前記液滴が前記包囲構造物を乗り越えるように広げて樹脂層を形成する加熱・押し当て工程と、
前記樹脂層の所望領域を硬化させ、次いで、硬化した樹脂層から前記モールドを引き離す硬化・剥離工程と、を有することを特徴とするインプリント方法。
前記液滴供給工程の後、硬化した樹脂層から前記モールドを引き離す前に、前記包囲構造物の水に対する接触角を低下させることを特徴とする請求項13または請求項14に記載のインプリント方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[インプリント用基板]
<第1の実施形態>
図1は、本発明のインプリント用基板の一実施形態を示す断面図である。
図1において、インプリント用基板1は、基板本体2と、この基板本体2の一方の面2aに位置する濡れ性変化層3とを備えたものである。
インプリント用基板1を構成する基板本体2は、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコンやガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基板、金属基板、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基板であってよい。また、
図2に示されるように、基板本体2は所望のパターン構造物5が面2a側に形成されたものであってもよい。このパターン構造物5としては、特に限定されず、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等が挙げられる。
また、インプリント用基板1を構成する濡れ性変化層3は、温度変化により表面の濡れ性が変化(水に対する接触角が変化)する層である。尚、本発明では、水に対する接触角はマイクロシリンジから水滴を滴下して3秒後に接触角測定器(協和界面科学(株)製 CA−Z型)を用いて測定する。
【0020】
濡れ性変化層3に使用する材料は、温度が高くなることにより水に対する接触角が大きくなる材料として、例えば、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド等のポリ−N−置換アクリルアミドや、ポリ−N−置換メタクリルアミド、ポリエーテル類やメチルセルロース等を挙げることができる。また、温度が高くなることにより水に対する接触角が小さくなる材料として、例えば、スルホベタインポリマー等を挙げることができる。このような材料は、水に対する接触角が変化する高温側の温度が通常50℃以下であり、一般的な熱硬化性樹脂の硬化反応が急速に進む温度よりも低いものである。また、温度変化により表面の濡れ性が変化する材料として、上記のN−置換アクリルアミド構造等の構造を含むポリマーも挙げることができる。特に、インプリントに使用する光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂が、上記のような構造のみを成分とした濡れ性変化層を損なう場合には、架橋剤等を用いてポリマー構造を形成して用いることが好ましい。
【0021】
このような濡れ性変化層3は、上述した成分を必要に応じて他の添加物とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基板本体2上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、水、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で、または2種以上の組み合わせで使用することができる。塗布はスピンコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ビードコーティング法等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層3を形成することができる。
【0022】
このような濡れ性変化層3の厚みは、例えば、0.05〜5μm、好ましくは0.01〜3μmの範囲で適宜設定することができる。濡れ性変化層3の厚みが0.05μm未満であると、膜厚が薄くなることで剥離力に対する機械的強度が低下し、例えば、モールドを被加工物から引き剥がす際に濡れ性変化層3が破損し、被加工物がモールドに付着してしまうことがあり好ましくない。一方、濡れ性変化層3の厚みが5μmを超えると、濡れ性変化層3の基板本体2に対する応力が無視できなくなり、基板本体2に意図しない反りが発生するため好ましくない。ただし、濡れ性変化層3から作用する応力による基板本体2の反りの程度は、基板本体2の厚みや剛性により変わるので、上記の厚みの上限値5μmはあくまで目安である。同様に、濡れ性変化層3の膜厚が薄くなることで、剥離力により濡れ性変化層3が破損する可能性も、濡れ性変化層3を構成する材料の機械強度により変化するため、上記の厚みの下限値0.05μmも目安の数値である。
【0023】
また、温度変化により表面の濡れ性が変化(水に対する接触角が変化)する材料の濡れ性変化層3中の含有量は、所望の溶液粘度、塗膜厚さ等を考慮して適宜設定することができ、例えば、50〜95重量%の範囲で設定することができる。この含有量が50重量%未満であると、濡れ性変化が不十分となったり、濡れ性変化に要する時間が長くなり、95重量%を超えると、濡れ性変化層3の機械的強度が低下したり、インプリントで使用する光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が含有する溶剤等に対する耐久性が低下することがある。
上述のような濡れ性変化層3は、基板本体2の所望の領域、例えば、基板本体2の周辺部を除く領域、あるいは、基板本体2に予め形成された特定のパターン構造物を除く領域、あるいは、後工程で所望の加工が施される部位を除く領域等に形成されたものでもよく、また、基板本体2の全面に形成されたものであってもよい。また、濡れ性変化層3は、インプリント用基板1に滴下する樹脂の液滴の直径と同じ直径を有する円形より大きくなければならない。これは、基板本体2に形成された濡れ性変化層3の上に樹脂の液滴が滴下された際に必要な最小限の領域である。但し、装置を作製し液滴を射出する際にはアライメントずれが起きる可能性があることや、濡れ性変化層3に衝突した際に液滴がミルククラウンのように潰れてしまい、接触面積が一時的に大きくなることを考慮して、濡れ性変化層3は、滴下する樹脂の液滴の直径の2倍の大きさの直径を有する円形であることが好ましい。また、濡れ性変化層3は、使用するモールド(型部材)のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)と同じか、それよりも大きい領域に1箇所、または、複数箇所形成されたものであってよい。また、
図3に示すように、基板本体2が多面付けで区画(各区画の境界を鎖線で示している)されている場合には、各面付け毎に濡れ性変化層3を形成してもよい。
【0024】
このような本発明のインプリント用基板1は、濡れ性変化層3の濡れ性を任意に変更することができるので、樹脂に対する濡れ性を低くして、被加工物としてインプリント用基板1に滴下供給された樹脂の液滴の高さを目的の高さに制御することが可能である。これにより、モールドとインプリント用基板との機械的精度(平坦度、平行度)に起因した接触時(インプリント用基板上の樹脂にモールドを押し当てた時)の樹脂の広がりの不均一性、厚みのムラ等が防止される。また、液滴の高さが所望の高さになった後、あるいは、液滴にモールドを押し当てた後等に、濡れ性変化層3の水に対する接触角を低下させ樹脂に対する濡れ性を高くすることができ、これにより硬化後の樹脂層との密着性を高いものとすることができる。
【0025】
<第2の実施形態>
図4は、本発明のインプリント用基板の他の実施形態を示す平面図であり、
図5は
図4のA−A線における断面図である。
図4および
図5において、インプリント用基板11は、基板本体12と、この基板本体12の一方の面12aに位置する包囲構造物13とを備えたものである。包囲構造物13は、樹脂の液滴を囲んで広がりを防止するものであり、図示例では、内側の領域14が円形をなしている。
インプリント用基板11を構成する基板本体12は、上述の基板本体2と同様とすることができる。また、基板本体12は、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等の所望のパターン構造物が面12a側に形成されたものであってもよい。また、基板本体12は、包囲構造物13を備える面12aが、被加工物である樹脂に対する濡れ性の高いものを選択することもでき、例えば、水に対する接触角が30°以下の範囲にあるもの、あるいは、水に対する接触角が、使用するモールドの水に対する接触角よりも30°以上小さいようなものを基板本体12として選択することができる。
【0026】
また、インプリント用基板11を構成する包囲構造物13は、例えば、Cr、Al、Ti、Ta、Cu、Ni等の金属、Si、Ge等の半導体等、これらの化合物、あるいは、これらの酸化物、炭化物等の材質で形成することができる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の材質で形成することができる。包囲構造物13の形成は、例えば、基板本体12上に上記の材質の膜を形成し、これをパターンエッチングして形成する方法、基板本体12上に光硬化性樹脂を塗布し、これをパターン露光、現像して形成する方法等を挙げることができる。また、基板本体12をパターンエッチングして、非エッチング部位を包囲構造物13として形成してもよい。
【0027】
このような包囲構造物13の内側の距離L(円形の領域14の直径)は、包囲構造物13の内側の領域14で高さを制御する樹脂液滴51の直径をd、樹脂の基板に対する接触角をθとし、液滴51の制御しようとする高さをhとしたときに、下記の式(1)を満足するように設定することができる。尚、
図5では、液滴51を二点鎖線で示している。
d < L ≦ 2h/tan(θ/2) … 式(1)
ここで、本発明では、液滴の高さの測定は、三次元形状計測器により包囲構造物の上方から計測する方法や、側面からCCDカメラ等により測定する方法等、実測に基づく計測方法を用いることが好ましいが、予め樹脂液滴51の表面張力が判明している場合には、滴下した液滴量から計算により求めることも可能である。
また、包囲構造物13が、後述するようなモールドから受ける圧力で変形可能なものではない場合、その高さHは、モールドを押し当てた際に樹脂の液滴51とモールドとが接触するのを阻害しないよう、液滴51の高さhよりも低い必要がある。また、インプリント転写により形成される樹脂層の残膜厚みt(モールドのパターン領域の凹凸構造が転写された樹脂層の凹凸構造のうち、凹部に残る樹脂層の厚み)以下とする必要がある。したがって、この場合、下記の式(2)、式(3)を満足するように包囲構造物13の高さHを設定する。
H < h … 式(2)
H ≦ t … 式(3)
【0028】
また、包囲構造物13の幅Wは、包囲構造物13が樹脂の液滴51を内側の領域14に保持できる強度を有するものであれば特に制限はない。したがって、例えば、包囲構造物13を構成する材料に応じて可能な範囲で幅Wを狭いものとすることができ、また、
図6に示されるように、基板本体12をパターンエッチングして凹部(上記の包囲構造物13の内側の領域14に相当)を形成し、周囲を包囲構造物13としたような、幅Wが広いものであってもよい。尚、包囲構造物13と樹脂の液滴51との濡れ性が低い(包囲構造物13の水に対する接触角が大きい)場合、インプリント転写で樹脂を硬化した後、モールドを樹脂層から引き離す際に、包囲構造物13を起点にして樹脂層が基板本体12から引き剥がされるおそれがある。このような場合には、包囲構造物13の幅Wを可能な範囲で狭くするか、モールドの引き離しの際には、水に対する接触角を小さいものに変更できる材料で形成することが好ましい。後者の材料は、上述の本発明のインプリント用基板1の濡れ性変化層3に使用する材料を挙げることができ、また、後述する光照射によって水に対する接触角が低下するような材料を挙げることができる。
【0029】
上述の例では、包囲構造物13は、内側の領域14が円形をなしているが、本発明では液滴を取り囲むものであればこれに限定されず、例えば、内側の領域14が多角形、楕円等となるものであってもよい。多角形の場合、液滴51の表面張力の作用を考慮すると、内側の領域14が正方形、正六角形、正八角形等の正多角形となるものが好ましく、同様に、内側の領域14が楕円の場合、長短の軸比が1に近いものが好ましい。尚、このように包囲構造物13の内側の領域14が正多角形である場合、上記の領域14の距離Lは、正多角形の対角線の長さとし、楕円の場合、長軸の長さとする。
また、図示例では、1個の包囲構造物13が示されているが、複数の包囲構造物13が所望の間隔で配設されたものであってもよい。また、包囲構造物13は、基板本体12の所望の領域、例えば、基板本体12の周辺部を除く領域、あるいは、基板本体12に予め形成された特定のパターン構造物を除く領域、あるいは、後工程で所望の加工が施される部位を除く領域等に1個、または、複数個が配設されたものでもよい。また、基板本体12の全面に所望の間隔で配設されたものであってもよい。また、包囲構造物13が位置する領域は、使用するモールド(型部材)のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)と同じか、それよりも大きい領域であってよい。さらに、基板本体12が多面付けで区画されている場合には、各面付け毎に1個、または、複数個の包囲構造物13が位置するものであってもよい。
【0030】
<第3の実施形態>
本発明では、包囲構造物13がインプリント転写時にモールドから受ける圧力で変形可能なものであってもよい。
図7は、圧力で変形可能な包囲構造物13の例を示す図である。この例では、円形の領域14を囲む包囲構造物13の8箇所に、幅Wよりも薄い肉薄部13aを有するもの(
図7(A))、正方形の領域14を囲む包囲構造物13の4個の頂点部位に、幅Wよりも薄い肉薄部13aを有するもの(
図7(B))、正六角形の領域14を囲む包囲構造物13の6個の頂点部位に、幅Wよりも薄い肉薄部13aを有するものである(
図7(C))。このような肉薄部13aを有する包囲構造物13は、インプリント転写時にモールドに接触することにより受ける圧力で肉薄部13aが破断し、残った部位が圧力で変形する。そして、包囲構造物13の内側の領域14に保持されていた液滴51は、モールドとインプリント用基板11との間隙中を容易に広がることができる。尚、包囲構造物13の肉薄部13aの位置、数には特に制限はないが、インプリント転写時にモールドに接触することにより受ける圧力が集中し易い箇所が好ましい。
このような圧力により変形可能な包囲構造物13の材質としては、上記と同様の材質を挙げることができる。また、肉薄部13aの厚みW′は、包囲構造物13の材質、肉薄部13aの数等を考慮して、インプリント転写時にモールドに接触することにより受ける圧力で肉薄部13aが破断可能となるように設定することができ、例えば、厚みW′を厚みWの60%以下、好ましくは10〜50%程度の範囲で設定することができる。厚みW′が厚みWの60%を超える場合、圧力が加わっても破断が起きにくく、10%以下では、ごくわずかな意図しない外力により破断が発生してしまう可能性がある。
【0031】
また、包囲構造物13がインプリント転写時にモールドから受ける圧力で変形可能なものとして、包囲構造物13の全域において、幅Wを薄くしたものを挙げることができる。この場合、包囲構造物13の幅Wは、包囲構造物13が樹脂の液滴を内側の領域14の保持できる強度を有し、かつ、インプリント転写時にモールドから受ける圧力で変形するように、使用する材料の強度を考慮して設定することができる。
このように、圧力で変形可能な包囲構造物13の場合、その内側の領域14の距離Lは、上記の式(1)を満足するように設定することができる。また、包囲構造物13の高さHは、モールドを押し当てた際に、樹脂の液滴51とモールドとが接触するのを阻害しないよう、液滴51の高さhよりも低い必要はあるが、圧力で変形するので、インプリント転写により形成される樹脂層の残膜厚みtよりも大きくてもよい。したがって、この場合、上記の式(2)を満足するように包囲構造物13の高さHを設定することができる。
【0032】
<第4の実施形態>
インプリント転写では、被加工物である樹脂が熱硬化性である場合、モールドとインプリント用基板との接触状態(インプリント用基板上の樹脂にモールドを押し当てた状態)で加熱がなされる。また、被加工物である樹脂が光硬化性であっても、モールドとインプリント用基板との接触時における樹脂の広がりを助長する目的で、粘度を低下させるために加熱が行われる場合がある。
本発明では、包囲構造物13が加熱により変形可能なものであってもよい。このような包囲構造物13は、インプリント転写に使用する被加工物である樹脂の硬化後の軟化点よりも30度以上低い軟化点を有する樹脂材料で形成する。尚、被加工物である樹脂が熱硬化性である場合、包囲構造物13を構成する樹脂材料は、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも30度以上低い軟化点を有するものとする。
このような加熱により変形可能な包囲構造物13を備えたインプリント用基板11は、例えば、供給された液滴51が目的の高さとなったところで、加熱によって包囲構造物13を変形して、その高さをインプリント転写時のモールドとの接近に支障を来さない高さに制御することができる。
また、供給された液滴51が目的の高さとなったところで、加熱によって包囲構造物13を変形して、その高さを低くすることにより、インプリント転写時のモールドとインプリント用基板11との間隙を樹脂が広がる際の抵抗を低減することができる。
また、加熱によって包囲構造物13をインプリント転写時の圧力により変形可能とし、インプリント転写時にモールドに接触することにより受ける圧力で変形し、包囲構造物13の内側の領域14に保持されていた液滴51のモールドとインプリント用基板11との間隙への広がりを誘発することができる。
【0033】
このように、加熱により変形可能な包囲構造物13の場合、その内側の領域14の距離Lは、上記の式(1)を満足するように設定することができる。また、包囲構造物13の高さHは、モールドを押し当てた際に、樹脂の液滴51とモールドとが接触するのを阻害しないよう、液滴51の高さhよりも低い必要はあるが、加熱により変形可能とされるので、インプリント転写により形成される樹脂層の残膜厚みtよりも大きくてもよい。したがって、この場合、上記の式(2)を満足するように包囲構造物13の高さHを設定することができる。
尚、上記のように包囲構造物13が加熱により変形可能な場合であっても、上記の第3の実施形態のように、所望の箇所に肉薄部を有するものであってもよい。
【0034】
上記の第2〜第4の実施形態で説明した本発明のインプリント用基板では、被加工物としてインプリント用基板11に滴下供給された樹脂の液滴の広がりが包囲構造物13によって防止されるので、包囲構造物13で囲まれる領域14の面積、液滴量によって液滴の高さを目的の高さに制御することが可能である。これにより、モールドとインプリント用基板との機械的精度(平坦度、平行度)に起因した接触時(インプリント用基板上の樹脂にモールドを押し当てた時)の樹脂の広がりの不均一性、厚みムラ等が防止される。また、上記のように包囲構造物13が液滴の高さ維持の作用を発現するので、基板本体12は硬化後の樹脂層との密着性が良好なものとすることができ、これによりモールドの離型性を向上させることができる。
また、第2の実施形態では、基板本体12からの包囲構造物13の高さHをインプリント転写により形成される樹脂の残膜厚みt以下とするので、インプリント転写時のモールドとの接近に支障を来すことがない。
また、第3の実施形態では、基板本体12からの包囲構造物の高さHがインプリント転写により形成される樹脂の残膜厚みtよりも大きいものであっても、包囲構造物13をインプリント転写時の圧力により変形可能であるため、液滴の高さ設定をより高いものとすることができ、かつ、インプリント転写時のモールドとの接近にも支障を来すことがない。
また、第4の実施形態では、凸状構造部13が加熱により変形可能であり、加熱によって包囲構造物13の高さをインプリント転写時のモールドとの接近に支障を来さない高さに制御すること、あるいは、加熱によって包囲構造物13をインプリント転写時の圧力により変形可能としてインプリント転写時のモールドとの接近に支障を来さないようにすることができる。
【0035】
[インプリント方法]
<第1の実施形態>
図8は、本発明のインプリント方法の実施形態を説明するための工程図である。
本実施形態では、まず、液滴供給工程として、インプリント用基板21の濡れ性変化層23を、水に対する接触角が大きくして、被加工物としての樹脂に対する濡れ性が低い状態に設定し、この濡れ性変化層23上に樹脂を液滴51で供給する(
図8(A))。供給された樹脂の液滴51は、濡れ性変化層23に対する濡れ性が低く広がりが防止され、所望の高さを維持している。樹脂を液滴51として滴下供給する手段としては、ディスペンサやインクジェット等を挙げることができる。
ここで使用するインプリント用基板21は、上述の本発明のインプリント用基板1とすることができる。また、インプリント用基板21は、後述するような、濡れ性変化層が光触媒を含有し、光照射で濡れ性が変化するインプリント用基板であってもよい。
また、樹脂を液滴51で供給する際の濡れ性変化層23の水に対する接触角は、例えば、60°以上、好ましくは70〜100°の範囲とすることができる。これにより、濡れ性変化層23を、樹脂に対する濡れ性が低い状態に設定することができる。
【0036】
次に、濡れ性変化工程として、濡れ性変化層23の水に対する接触角を、使用するモールド(型部材)の水に対する接触角よりも30°以上小さくなるように低下させて、濡れ性変化層23′とする(
図8(B))。上記の接触角の差が30°未満であると、後工程において、硬化した樹脂層52の濡れ性変化層23′に対する密着性とモールド61に対する密着性との差が不十分なものとなり、硬化した樹脂層52からモールド61を引き離す際に、モールド61に樹脂層52が付着するおそれがある。このような水に対する接触角の低下は、使用するインプリント用基板21が備える濡れ性変化層23に応じて、濡れ性変化層23の温度変化、あるいは、濡れ性変化層23への光照射により行う。
このように濡れ性変化層23の水に対する接触角を低下させると、液滴51の広がりが始まるので、液滴51がモールド61の押し当てに支障を来さない高さを維持しているうちに、液滴51へのモールド61の押し当てを行うことがこのましい。
上記の濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を、加熱による温度変化で行う場合であって、樹脂液滴51が熱硬化性である場合には、液滴51が熱硬化しないような温度範囲で濡れ性変化層23を加熱する必要がある。但し、上記の本発明のインプリント用基板1の説明で記述したように、水に対する接触角が変化する高温側の温度は、通常、50℃以下であり、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも低いので、加熱による液滴51の熱硬化や、それに伴う急激な粘性の増加が生じない条件で濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を確実に行うことができる。
【0037】
また、濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を、光照射で行う場合であって、樹脂液滴51が光硬化性である場合には、照射する光は、濡れ性変化層23に含有される光触媒の励起波長域を含む光であって、光硬化性の樹脂液滴51の感光波長域から外れる光を使用する。このような照射光としては、例えば、VUV(真空紫外線)、紫外線、可視光線、赤外線等を使用することができる。濡れ性変化層23への光照射は、液滴51側から行ってもよく、また、インプリント用基板21の基板本体22が照射光を透過可能である場合には、インプリント用基板21側から行ってもよい。
次に、押し当て工程として、樹脂の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図8(C))。モールド61が押し当てられた液滴51は、濡れ性変化層23′に対する濡れ性が高く、モールド61と濡れ性変化層23との間隙中を容易に広がり、均一な樹脂層51′を形成する。
【0038】
次いで、硬化・剥離工程として、樹脂層51′を硬化させて樹脂層52とし(
図8(D))、この硬化した樹脂層52からモールド61を引き離すことにより、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層52に転写形成される(
図8(E))。樹脂層51′の硬化は、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、加熱により行い、また、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、モールド61側から樹脂層51′に光を照射することにより行うことができる。また、上記の濡れ性変化工程において、濡れ性変化層23′の水に対する接触角が、モールド61の水に対する接触角よりも30°以上小さいものとなっているので、硬化した樹脂層52と濡れ性変化層23′との密着性が、硬化した樹脂層52とモールド61との密着性よりも大きいものとなり、硬化した樹脂層52からのモールド61の引き離しでは、モールド61に樹脂層52が付着することが防止される。
上記の例では、インプリント用基板21の濡れ性変化層23上に1個の液滴51が滴下して供給されているが、
図9に示すように、複数の液滴51を濡れ性変化層23上に滴下して供給してもよい(
図9(A))。この場合も、上記の実施形態と同様に、濡れ性変化工程として、濡れ性変化層23の水に対する接触角を、使用するモールド(型部材)の水に対する接触角よりも30°以上小さくなるように低下させて、濡れ性変化層23′とする(
図9(B))。その後、押し当て工程として、複数の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図9(C))。その後の工程も、上記の実施形態と同様に行うことができる。
【0039】
<第2の実施形態>
図10は、本発明のインプリント方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
本実施形態では、上述の実施形態と同様に、液滴供給工程として、インプリント用基板21の濡れ性変化層23を、水に対する接触角が大きくして、被加工物としての樹脂に対する濡れ性が低い状態に設定し、この濡れ性変化層23上に樹脂を液滴51で供給する(
図10(A))。
次に、押し当て工程として、樹脂の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図10(B))。
次に、濡れ性変化工程として、濡れ性変化層23の水に対する接触角を、使用するモールド61の水に対する接触角よりも30°以上小さくなるように低下させて、濡れ性変化層23′とする(
図10(C))。このような濡れ性変化層23′は液滴51の濡れ性が高く、液滴51はモールド61と濡れ性変化層23′の間隙中を広がり易くなる。このような効果をより有効に奏するために、押し当て工程から濡れ性変化工程までの時間は短い程好ましく、両工程を同時に進行してもよい。
【0040】
このような水に対する接触角の低下は、上述の実施形態と同様に行うことができ、使用するインプリント用基板21が備える濡れ性変化層23に応じて、濡れ性変化層23の温度変化、あるいは、濡れ性変化層23への光照射により行う。尚、濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を、光照射で行う場合であって、樹脂液滴51が光硬化性である場合には、照射する光は、濡れ性変化層23に含有される光触媒の励起波長域を含む光であって、光硬化性の樹脂層51′の感光波長域から外れる光を使用する。このような照射光としては、例えば、VUV(真空紫外線)、紫外線、可視光線、赤外線等から適宜選択することができる。濡れ性変化層23への光照射は、樹脂層51′側から行ってもよく、また、インプリント用基板21の基板本体22が照射光を透過可能である場合には、インプリント用基板21側から行ってもよい。
次いで、硬化・剥離工程として、樹脂層51′を硬化させて樹脂層52とし(
図10(D))、この硬化した樹脂層52からモールド61を引き離すことにより、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層52に転写形成される(
図10(E))。樹脂層51′の硬化は、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、加熱により行い、また、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、モールド61側から樹脂層51′に光を照射することにより行うことができる。
尚、この実施形態においても、
図9に示すように、複数の液滴51を濡れ性変化層23上に滴下して供給してもよい。
【0041】
<第3の実施形態>
図11は、本発明のインプリント方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
本実施形態では、上述の第1の実施形態と同様に、液滴供給工程として、インプリント用基板21の濡れ性変化層23を、水に対する接触角が大きくして、被加工物としての樹脂に対する濡れ性が低い状態に設定し、この濡れ性変化層23上に樹脂を液滴51で供給する(
図11(A))。但し、インプリント用基板21として、上述の本発明のインプリント用基板1を使用する場合、温度が高くなることにより水に対する接触角が小さくなる濡れ性変化層3を備えたものを使用する。
次に、押し当て工程として、樹脂の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図11(B))。
次に、硬化・濡れ性変化工程として、樹脂層51′を硬化させて樹脂層52とするとともに、濡れ性変化層23の水に対する接触角を、使用するモールド61の水に対する接触角よりも30°以上小さくなるように低下させて、濡れ性変化層23′とする(
図11(C))。
樹脂層51′の硬化は、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、加熱により行い、また、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、モールド61側から樹脂層51′に光を照射することにより行うことができる。
また、濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下は、上述の実施形態と同様に、使用するインプリント用基板21が備える濡れ性変化層23に応じて、濡れ性変化層23の温度変化(加熱)、あるいは、濡れ性変化層23への光照射により行う。
【0042】
このような硬化・濡れ性変化工程において、濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を、濡れ性変化層23の温度変化(加熱)により行う場合であって、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、熱硬化のための加熱過程の途中で水に対する接触角の低下がなされる。一方、濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を、濡れ性変化層23への光照射により行う場合であって、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、照射する光は、光硬化性の樹脂層51′の感光波長域と濡れ性変化層23に含有される光触媒の励起波長域とに波長が存在する光を少なくとも含むものとする。このような照射光としては、例えば、VUV(真空紫外線)、紫外線、可視光線、赤外線等から適宜選択することができる。
また、硬化・濡れ性変化工程において、濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を、濡れ性変化層23の温度変化(加熱)により行う場合であって、樹脂液滴51が光硬化性の場合、あるいは、濡れ性変化層23の水に対する接触角の低下を、濡れ性変化層23への光照射により行う場合であって、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、それぞれ、樹脂の硬化条件、濡れ性変化層の濡れ性変化(水に対する接触角低下)条件の範囲内で行う。
次いで、剥離工程として、硬化した樹脂層52からモールド61を引き離すことにより、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層52に転写形成される(
図11(D))。
尚、この実施形態においても、
図9に示すように、複数の液滴51を濡れ性変化層23上に滴下して供給してもよい。
【0043】
上記の第1〜第3の実施形態で説明した本発明のインプリント方法では、被加工物としての樹脂に対する濡れ性が低い状態に設定した濡れ性変化層23上に樹脂を液滴51で供給するので、液滴51の高さを所望の高さに維持することができる。そして、モールド61とインプリント用基板21との接触時(インプリント用基板上の樹脂にモールドを押し当てた時)よりも前、あるいは、接触状態で、インプリント用基板21の濡れ性変化層23の水に対する接触角を、モールドの水に対する接触角よりも30°以上小さくなるように低下させて濡れ性変化層23′とするので、濡れ性変化層23′は樹脂に対する濡れ性が高いものとなり、樹脂の良好な広がりが得られ、厚みムラが防止される。また、モールド61のパターン内部への樹脂の充填性と、硬化した樹脂に対するモールドの離型性とを両立させることができ、これにより高精細なインプリント転写を安定して行うことができる。
【0044】
また、本発明のインプリント方法では、モールド61の条件は常に一定とすることができるので、モールド61を連続して繰り返し使用するプロセス(例えば、ステップアンドリピート方式)であっても、安定したインプリント転写が可能である。これについて、
図12を参照して説明する。ここでは、多面付けのインプリント用基板21の所望の面付けの濡れ性変化層23上に被加工物として樹脂を液滴51として供給する(
図12(A))。図示例では、多面付けの各面付けの境界を鎖線で示している。次に、この1面付けの範囲内において、濡れ性変化層23の水に対する接触角を、使用するモールド61の水に対する接触角よりも30°以上小さくなるように低下させて、濡れ性変化層23′とし、また、液滴51にモールド61のパターン領域を押し当てて樹脂層とし、この樹脂層を硬化させて樹脂層52とする(
図12(B))。尚、濡れ性変化工程、押し当て工程、硬化工程の順序は、上記の第1〜第3の実施形態に示すいずれの順序であってもよい。そして、硬化した樹脂層52からモールド61を引き離し、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53を樹脂層52に転写形成し、次いで、次の面付けの濡れ性変化層23上に被加工物として樹脂を液滴51として供給し(
図12(C))、同様の操作を繰り返すことができる。このように、ステップアンドリピート方式を採用する場合、本発明では、繰り返し転写を行うことでモールド表面の状態が変化したとしても、モールドの離型処理をその都度やり直す必要はなく、インプリント用基板21の濡れ性を面付け毎に調整するだけで安定したインプリント転写が可能である。尚、上記のようなステップアンドリピート方式でのインプリント転写では、全ての面付けに予め樹脂を液滴51として供給してもよい。
【0045】
<第4の実施形態>
図13は、本発明のインプリント方法の他の実施形態を説明するための工程図であり、上述の本発明のインプリント用基板11(
図4、
図5参照)を用いた例である。
本実施形態では、まず、液滴供給工程として、インプリント用基板11の包囲構造物13で囲まれた領域14に樹脂を液滴51で供給する(
図13(A))。供給された樹脂の液滴51は、包囲構造物13によって広がりが防止され、所望の高さを維持している。したがって、インプリント用基板11の基板本体12は、樹脂に対する濡れ性の高い材質とすることができる。樹脂を液滴51として滴下供給する手段としては、ディスペンサやインクジェット等を挙げることができる。
包囲構造物13の領域14の長さLは、上述の式(1)を満足し、包囲構造物13の高さHは、上述の式(2)を満足し(液滴の高さhよりも低い)さらに、この実施形態では、包囲構造物13の高さHは、上述の式(3)を満足する(後工程で形成される樹脂層52の残膜高さt以下)ものである。
次に、押し当て工程として、樹脂の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図13(B))。モールド61が押し当てられた液滴51は、包囲構造物13を乗り越え、モールド61と基板本体12との間隙中を広がり、均一な樹脂層51′を形成する。また、このとき、包囲構造物13の高さHは、後工程で形成される樹脂層52の残膜高さt以下であるため、包囲構造物13がモールド61と接触することはなく、モールド61の押し当てに支障を生じることはない。
【0046】
次いで、硬化・剥離工程として、樹脂層51′を硬化させて樹脂層52とし(
図13(C))、この硬化した樹脂層52からモールド61を引き離すことにより、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層52に転写形成される(
図13(D))。樹脂層51′の硬化は、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、加熱により行い、また、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、モールド61側から樹脂層51′に光を照射することにより行うことができる。また、供給された樹脂の液滴51の広がりが包囲構造物13によって防止されるので、インプリント用基板11の基板本体12を、樹脂に対する濡れ性の高い材質とすることができる。これにより、硬化した樹脂層52と基板本体12との密着性を、硬化した樹脂層52とモールド61との密着性よりも大きいものとすることができ、硬化した樹脂層52からのモールド61の引き離しでは、モールド61に樹脂層52が付着することが防止される。
【0047】
尚、包囲構造物13と樹脂の液滴51との濡れ性が低い(包囲構造物13の水に対する接触角が大きい)場合、硬化した樹脂層52からモールド61を引き離す際に、包囲構造物13を起点にして樹脂層が基板本体12から引き剥がされるおそれがある。このような場合には、包囲構造物13の幅Wを可能な範囲で狭くすること、あるいは、モールド61の引き離しの際には、水に対する接触角を小さいものに変更できる材料で包囲構造物13を形成すること、により対処できる。そして、後者の場合には、樹脂層51′の硬化と同時、あるいは、押し当て工程において包囲構造物13の水に対する接触角を低下させることができる。これは、以下の第5〜第7の実施形態においても同様である。
上記の例では、インプリント用基板11の1個の包囲構造物13が配設されており、これに液滴51が滴下して供給されているが、
図14に示すように、複数の包囲構造物13に液滴51を滴下して供給してもよい(
図14(A))。この場合も、上記の第4の実施形態と同様に、押し当て工程として、複数の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図14(B))。その後の工程も、上記の実施形態と同様に行うことができる。
【0048】
<第5の実施形態>
図15は、本発明のインプリント方法の他の実施形態を説明するための工程図であり、上述の本発明のインプリント用基板11(
図4、
図5参照)を用いた例である。
本実施形態では、上述の第4の実施形態と同様に、液滴供給工程として、インプリント用基板11の包囲構造物13で囲まれた領域14に樹脂を液滴51で供給する(
図15(A))。供給された樹脂の液滴51は、包囲構造物13によって広がりが防止され、所望の高さを維持している。したがって、インプリント用基板11の基板本体12は、樹脂に対する濡れ性の高い材質とすることができる。
包囲構造物13の領域14の長さLは、上述の式(1)を満足し、包囲構造物13の高さHは、上述の式(2)を満足する(液滴の高さhよりも低い)が、後工程で形成される樹脂層52の残膜高さtよりも高いものとする。さらに、この実施形態では、包囲構造物13は、モールドの圧力で変形可能なものとする。
次に、押し当て工程として、樹脂の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図15(B))。この押し当て工程では、包囲構造物13の高さHが後工程で形成される樹脂層52の残膜高さtよりも高いので、包囲構造物13はモールド61に接触するが、モールド61の圧力により包囲構造物13が破断し変形する。これにより、液滴51は包囲構造物13を乗り越え、モールド61と基板本体12との間隙中を広がり、均一な樹脂層51′を形成する。
【0049】
次いで、硬化・剥離工程として、樹脂層51′を硬化させて樹脂層52とし(
図15(C))、この硬化した樹脂層52からモールド61を引き離すことにより、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層52に転写形成される(
図15(D))。樹脂層51′の硬化は、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、加熱により行い、また、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、モールド61側から樹脂層51′に光を照射することにより行うことができる。
尚、この実施形態においても、
図14に示すように、複数の包囲構造物13を配設し、これらに液滴51を滴下して供給してもよい。
<第6の実施形態>
図16は、本発明のインプリント方法の他の実施形態を説明するための工程図であり、上述の本発明のインプリント用基板11(
図4、
図5参照)を用いた例である。
本実施形態では、上述の第4の実施形態と同様に、液滴供給工程として、インプリント用基板11の包囲構造物13で囲まれた領域14に樹脂を液滴51で供給する(
図16(A))。供給された樹脂の液滴51は、包囲構造物13によって広がりが防止され、所望の高さを維持している。したがって、インプリント用基板11の基板本体12は、樹脂に対する濡れ性の高い材質とすることができる。
包囲構造物13の領域14の長さLは上述の式(1)を満足し、包囲構造物13の高さHは、上述の式(2)を満足する(液滴の高さhよりも低い)ものであり、さらに、この実施形態では、包囲構造物13は、加熱により変形可能なものとする。
【0050】
次に、加熱・押し当て工程として、加熱により包囲構造物13を変形して高さを低くし(
図16(B))、樹脂の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図16(C))。この加熱・押し当て工程では、加熱により包囲構造物13の高さが低くされるので、液滴51が包囲構造物13を乗り越えてモールド61と基板本体12との間隙中を広がり易くなり、均一な樹脂層51′が形成される。したがって、包囲構造物13の高さHは、上述の式(3)(後工程で形成される樹脂層52の残膜高さt以下)を満足しなくてもよい。
尚、包囲構造物13の加熱と、液滴51へのモールド61の押し当ては、同時であってもよく、いずれかを先にしてもよい。包囲構造物13の加熱を先に行う場合、加熱により包囲構造物13の高さが低くされることにより、液滴51の広がりが始まるので、液滴51がモールド61の押し当てに支障を来さない高さを維持しているうちに、液滴51へのモールド61の押し当てを行うことが好ましい。また、液滴51へのモールド61の押し当てを先に行う場合、加熱により包囲構造物13の高さを低くすることの効果を奏するためには、液滴51へのモールド61の押し当てが開始されてから包囲構造物13の加熱の開始までの時間が短い方が好ましい。
【0051】
次いで、硬化・剥離工程として、樹脂層51′を硬化させて樹脂層52とし(
図16(D))、この硬化した樹脂層52からモールド61を引き離すことにより、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層52に転写形成される(
図16(E))。樹脂層51′の硬化は、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、加熱により行い、また、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、モールド61側から樹脂層51′に光を照射することにより行うことができる。
尚、この実施形態においても、
図14に示すように、複数の包囲構造物13を配設し、これらに液滴51を滴下して供給してもよい。
【0052】
<第7の実施形態>
図17は、本発明のインプリント方法の他の実施形態を説明するための工程図であり、上述の本発明のインプリント用基板11(
図4、
図5参照)を用いた例である。
本実施形態では、上述の第4の実施形態と同様に、液滴供給工程として、インプリント用基板11の包囲構造物13で囲まれた領域14に樹脂を液滴51で供給する(
図17(A))。供給された樹脂の液滴51は、包囲構造物13によって広がりが防止され、所望の高さを維持している。したがって、インプリント用基板11の基板本体12は、樹脂に対する濡れ性の高い材質とすることができる。
包囲構造物13の領域14の長さLは、上述の式(1)を満足し、包囲構造物13の高さHは、上述の式(2)を満足する(液滴の高さhよりも低い)が、後工程で形成される樹脂層52の残膜高さtよりも高いものとする。さらに、この実施形態では、包囲構造物13は、加熱により変形可能なものとする。
次に、加熱・押し当て工程として、包囲構造物13を加熱するとともに、樹脂の液滴51にモールド61のパターン領域(凹凸構造が形成されている領域)を押し当て、樹脂層51′を形成する(
図17(B))。包囲構造物13の高さHは、後工程で形成される樹脂層52の残膜高さtよりも高いので、この加熱・押し当て工程では、包囲構造物13とモールド61とが接触するが、包囲構造物13は加熱によって変形可能とされるので、モールド61の圧力により包囲構造物13が破断し変形する。これにより、液滴51は包囲構造物13を乗り越え、モールド61と基板本体12との間隙中を広がり、均一な樹脂層51′を形成する。
【0053】
次いで、硬化・剥離工程として、樹脂層51′を硬化させて樹脂層52とし(
図17(C))、この硬化した樹脂層52からモールド61を引き離すことにより、モールド61が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層52に転写形成される(
図17(D))。樹脂層51′の硬化は、樹脂液滴51が熱硬化性の場合には、加熱により行い、また、樹脂液滴51が光硬化性の場合には、モールド61側から樹脂層51′に光を照射することにより行うことができる。
尚、この実施形態においても、
図14に示すように、複数の包囲構造物13を配設し、これらに液滴51を滴下して供給してもよい。
上記の第4〜第7の実施形態で説明した本発明のインプリント方法では、インプリント用基板11の包囲構造物13で囲まれた領域14に樹脂を液滴51で供給するので、基板本体12を樹脂に対する濡れ性の高いものとしても、液滴51の高さが維持され、モールド61とインプリント用基板11との接触時(インプリント用基板上の樹脂にモールドを押し当てた時)に、樹脂の良好な広がりが得られ、厚みムラが防止されるとともに、モールド61のパターン内部への樹脂の充填性と、硬化した樹脂層52に対するモールド61の離型性を両立させることができ、これにより高精細なインプリント転写を安定して行うことができる。
【0054】
また、第4の実施形態では、基板本体12からの包囲構造物13の高さがインプリント転写により形成される樹脂の残膜厚みt以下であるインプリント用基板11を使用するので、インプリント転写時のモールドとの接近に支障を来すことが防止される。
また、第5の実施形態では、基板本体12からの包囲構造物13の高さがインプリント転写により形成される樹脂の残膜厚みtよりも大きいが、包囲構造物13がインプリント転写時の圧力により変形可能であるインプリント用基板11を使用するので、液滴の高さ設定をより高いものとすることができ、かつ、インプリント転写時のモールドとの接近に支障を来すことが防止される。
また、第6の実施形態では、包囲構造物13が加熱により変形可能であるインプリント用基板11を使用するので、モールドとインプリント用基板との接触時の前、または、接触状態で、加熱によって包囲構造物13の高さを制御してインプリント転写時のモールドとの接近に支障を来すことを防止することができる。したがって、基板本体12からの包囲構造物13の高さを、目的とする液滴の高さに応じて適宜設定することができる。
また、第7の実施形態では、包囲構造物13が加熱により変形可能であるインプリント用基板を使用するので、加熱によって包囲構造物13をインプリント転写時の圧力により変形可能としてインプリント転写時のモールドとの接近に支障を来すことを防止することができ、したがって、基板本体12からの包囲構造物13の高さを、目的とする液滴の高さに応じて適宜設定することができる。
また、モールド61の条件は常に一定とすることができるので、
図12を参照して説明した上述のステップアンドリピート方式を採用することもできる。
【0055】
ここで、上記の第1〜第3の実施形態で説明した本発明のインプリント方法に使用するインプリント用基板であって、光照射で濡れ性が変化するインプリント用基板21について説明する。
このようなインプリント用基板21の基板本体22は、上述の本発明のインプリント用基板1を構成する基板本体2と同様とすることができる。
また、濡れ性変化層23は、光触媒とオルガノポリシロキサンを含有する層とすることができる。濡れ性変化層23に使用する光触媒としては、照射された光を吸収したときに、周囲の有機物の化学構造に変化を及ぼすものであり、例えば、光半導体として知られている酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、酸化タングステン(WO
3)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3)等のような金属酸化物を挙げることができ、これらの1種、あるいは2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0056】
このような光触媒のなかで、本発明では特に酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用することができる。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり、本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。このアナターゼ型の酸化チタンは励起波長が380nm以下にあり、また、粒径が小さいものの方が光触媒反応が効率的に起るので好ましく、例えば、平均粒径が50nm以下、より好ましくは20nm以下のものが好適である。このようなアナターゼ型の酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製 STS−02(平均粒径7nm))、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製 TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0057】
また、濡れ性変化層23に使用するオルガノポリシロキサンは、光触媒により濡れ性が変化し、かつ、光触媒の作用により劣化、分解し難い主鎖を有するものであり、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水性や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
上記の(1)の場合、一般式 Y
nSiX
(4-n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。尚、Yで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシル基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0058】
具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシラン;および、これらの部分加水分解物;および、これらの混合物を使用することができる。
【0059】
また、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンを好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF
3(CF
2)
3CH
2CH
2Si(OCH
3)
3;
CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2Si(OCH
3)
3;
CF
3(CF
2)
7CH
2CH
2Si(OCH
3)
3;
CF
3(CF
2)
9CH
2CH
2Si(OCH
3)
3;
(CF
3)CF(CF
2)
4CH
2CH
2Si(OCH
3)
3;
(CF
3)CF(CF
2)
6CH
2CH
2Si(OCH
3)
3;
(CF
3)CF(CF
2)
8CH
2CH
2Si(OCH
3)
3;
CF
3(C
6H
4)C
2H
4Si(OCH
3)
3;
CF
3(CF
2)
3(C
6H
4)C
2H
4Si(OCH
3)
3;
CF
3(CF
2)
5(C
6H
4)C
2H
4Si(OCH
3)
3;
CF
3(CF
2)
7(C
6H
4)C
2H
4Si(OCH
3)
3;
CF
3(CF
2)
3CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(CF
2)
7CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(CF
2)
9CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2;
(CF
3)CF(CF
2)
4CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2;
(CF
3)CF(CF
2)
6CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2;
(CF
3)CF(CF
2)
8CH
2CH
2SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(C
6H
4)C
2H
4SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(CF
2)
3(C
6H
4)C
2H
4SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(CF
2)
5(C
6H
4)C
2H
4SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(CF
2)
7(C
6H
4)C
2H
4SiCH
3(OCH
3)
2;
CF
3(CF
2)
3CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
3;
CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
3;
CF
3(CF
2)
7CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
3;
CF
3(CF
2)
9CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
3;および
CF
3(CF
2)
7SO
2N(C
2H
5)C
2H
4CH
2Si(OCH
3)
3。
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記のような一般式で表される骨格を有する化合物を挙げることができる。
【0060】
【化1】
ただし、nは2以上の整数であり、R
1、R
2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アニールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R
1、R
2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有することが好ましい。
【0061】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応を生じない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
また、濡れ性変化層23には、さらに界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製 ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製 サーフロンS−141,145、大日本インキ化学工業(株)製 メガファックF−141,144、ネオス(株)製 フタージェントF−200、F−251、ダイキン工業(株)製 ユ二ダインDS−401、402、スリーエム(株)製 フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
また、濡れ性変化層23には、上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0062】
このような濡れ性変化層23は、上述した成分を必要に応じて他の添加物とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基板本体22上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ビードコーティング法等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層23を形成することができる。
このような濡れ性変化層23の厚みは、例えば、0.01〜1μmの範囲で適宜設定することができ、また、濡れ性変化層3中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。濡れ性変化層23の厚みが0.01μm未満であると、膜厚が薄くなることで剥離力に対する機械的強度が低下し、例えば、モールド61を硬化した樹脂層52から引き剥がす際に濡れ性変化層23が破損し、樹脂層52がモールド61に付着してしまうことがあり好ましくない。一方、濡れ性変化層23の厚みが1μmを超えると、濡れ性変化層23の基板本体22に対する応力が無視できなくなり、基板本体22に意図しない反りが発生するため好ましくない。また、濡れ性変化層23中の光触媒の含有量が5重量%未満であると、濡れ性変化が不十分となったり、濡れ性変化に要する時間が長くなり、60重量%を超えると、濡れ性変化層23の機械的強度が不十分となり好ましくない。
【0063】
また、インプリント用基板21を構成する濡れ性変化層23が、基板本体22上に、光触媒含有層とオルガノポリシロキサン含有層とがこの順に積層されてなるものであってもよい。
この場合の光触媒含有層は、光触媒単独で形成されたものであってもよく、また、バインダーと混合して形成されたものであってもよい。
光触媒含有層を光触媒単独で形成する場合、例えば、光触媒が酸化チタンの場合は、基板本体22上に無定形チタニアを形成し、次いで、焼結により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いる無定形チタニアとしては、例えば、四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合により、あるいは、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下で加水分解、脱水縮合させることにより得ることができる。次いで、400〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0064】
また、光触媒含有層をバインダーと混合して形成する場合、バインダーの主骨格が光触媒の作用で分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば、上述のオルガノポリシロキサン等をバインダーとして使用することができる。このようにオルガノポリシロキサンをバインダーとして用いた場合は、光触媒とバインダーであるオルガノポリシロキサンを必要に応じて他の添加物とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基板本体22上に塗布することにより光触媒含有層を形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ビードコーティング法等の公知の塗布方法により行うことができる。また、バインダーとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0065】
また、バインダーとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX
4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。そして、バインダーとして無定形シリカ前駆体を用いる場合、無定形シリカ前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基板本体22上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成することができる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。
光触媒含有層の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは0.005〜10μm程度の範囲で適宜設定することができる。光触媒含有層の光触媒の含有量が5重量%未満であると、オルガノポリシロキサン含有層の濡れ性変化が不十分となったり、濡れ性変化に要する時間が長くなり、また、60重量%を超えると、光触媒含有層の機械的強度が不十分となり好ましくない。光触媒含有層の厚みが0.005μm未満であると、光触媒含有層の均一性の信頼が低下し、十分な機能を発揮できないおそれがあり、10μmを超えると、濡れ性変化層23の基板本体22に対する応力が無視できなくなり、基板本体22に意図しない反りが発生するため好ましくない。
【0066】
また、光触媒含有層には、上記の光触媒、バインダーの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製 ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製 サーフロンS−141,145、大日本インキ化学工業(株)製 メガファックF−141,144、ネオス(株)製 フタージェントF−200、F−251、ダイキン工業(株)製 ユ二ダインDS−401、402、スリーエム(株)製 フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
また、光触媒含有層には、上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0067】
また、濡れ性変化層23を構成するオルガノポリシロキサン含有層は、上述のオルガノポリシロキサンを、必要に応じてオルガノシリコーン化合物、界面活性剤、オリゴマー、ポリマー等とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を光触媒含有層上に塗布することにより形成することができる。このようなオルガノポリシロキサン含有層の厚みは、0.001〜1μm、好ましくは0.01〜0.1μmの範囲で適宜設定することができる。オルガノポリシロキサン含有層の厚みが0.001μm未満であると、膜厚が薄くなることで剥離力に対する機械的強度が低下するため、例えば、モールドを被加工物から引き剥がす際にオルガノポリシロキサン含有層が破損し、被加工物がモールドに付着してしまうおそれがあり好ましくない。一方、オルガノポリシロキサン含有層の厚みが1μmを超えると、基板本体22に対する応力が無視できなくなり、基板本体22に意図しない反りが発生するため好ましくない。
上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明のインプリント方法で使用するモールドも、図示例のような形状に限定されるものではなく、例えば、メサ構造を有するモールドであってもよい。
【実施例】
【0068】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[参考例1]
<インプリント用基板の作製>
基板本体として、厚み625μmの石英ウエハを150mmφの寸法としたものを準備した。
また、下記組成の濡れ性変化層形成用の塗布液を調製し、この塗布液を上記の基板本体上にスピンコーティング法で塗布し、乾燥(200℃、30分間)して濡れ性変化層(厚み2.6μm)とした。これにより、濡れ性変化層を備えたインプリント用基板とした。
(濡れ性変化層形成用の塗布液)
・ポリマーI … 100重量部
・トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル … 15重量部
・1−メトキシ−2−プロパノール … 1000重量部
上記のポリマーIは、N−イソプロピルアクリルアミド構造のモル分率80%、ヒドロキシエチルアクリレート構造のモル分率20%である下記のような一般式で表される骨格を有するポリマーである。
【0069】
【化2】
このように作製したインプリント用基板の濡れ性変化層は、温度変化により水に対する接触角が変化するものであり、25℃の濡れ性変化層の水に対する接触角は59.6°であり、40℃の濡れ性変化層の水に対する接触角は91.8°であった。尚、水に対する接触角はマイクロシリンジから水滴を滴下して3秒後に接触角測定器(協和界面科学(株)製 CA−Z型)を用いて測定した。
【0070】
<モールドの作製>
厚み6.35mmの石英ガラスを用いてモールドを作製した。このモールドは、大きさが25mm×25mmであり、深さ50nm、ライン/スペースが50nm/50nmの凹凸パターンを備えるものであった。また、このモールドの水に対する接触角を上記と同様に測定したところ、97.5°であった。
【0071】
<インプリント>
上記にように作製したインプリント用基板の濡れ性変化層の温度を40℃とし、水に対する接触角が大きく、樹脂に対する濡れ性が低い状態とした。そして、この濡れ性変化層に滴下容量が100pLとなるように下記組成の光硬化性樹脂を5列×5列(計25箇所)に5mmピッチで滴下して被加工物としての樹脂液滴とした。
(光硬化性樹脂の組成)
・アクリロキシメチルペンタメチルジシロキサン … 37重量部
・イソボルニルアクリレート … 42重量部
・エチレングリコールジアクリレート … 18重量部
・2−ヒドロジ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
… 3重量部
この樹脂液滴の滴下はインクジェット塗布装置を用いて行い、要した時間は約30秒であった。そして、最初に滴下された液滴の滴下直後の高さは184μmであり、30秒経過後(最後の液滴が滴下されたとき)の高さは178μmであり、殆ど変化がなく、25個の液滴の高さは均一なものとなった。尚、液滴の高さの測定は、インプリント用基板を側面からハイスピードカメラにより観察し、観察画像により得られた接触角と、射出された液滴の量から算出した。
【0072】
次に、基板本体側が当接するようにインプリント装置の基板ステージに載置した。
次いで、インプリント用基板の濡れ性変化層の温度を25℃とすることにより、水に対する接触角を91.8°から59.6°へ低下させて、上記のモールドの水の接触角(97.5°)よりも30°以上小さい値とした。その後、直ちに樹脂液滴に上記のモールドを押し当て濡れ性変化層上に樹脂層を形成し、この状態でインプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に20mJ/cm
2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂層を硬化させた。
その後、硬化した樹脂層からモールドを引き離した。そして、形成されたパターンについて、欠陥率を下記のように測定した。その結果、欠陥率は0.03であり、良好なインプリント転写が行われたことが確認された。
(欠陥率の測定)
光学顕微鏡でパターン領域内を5箇所観察し、一つの観察箇所(1.0mm×1.0mm)内で、樹脂層の剥がれや、パターン欠損が確認できた面積の割合を測定した。したがって、この欠陥率が大きい程、欠陥が多いことを意味し、本発明では、欠陥率が0.1未満を実用レベルと判定する。
【0073】
[参考例2]
<インプリント用基板の作製>
基板本体として、厚み625μmの石英ウエハを150mmφの寸法としたものを準備した。
また、JSR(株)製 グラスカHPC7002を30g、JSR(株)製 グラスカHPC402H(アルキルアルコキシシラン)を10g混合し、この塗布液を上記の基板本体の一方の面にスピンコーティング法で塗布し、乾燥(150℃、10分間)して、厚さ2μmの塗布層を形成した。次に、JSR(株)製 グラスカHPC7002を15g、JSR(株)製 グラスカHPC402H(アルキルアルコキシシラン)を5g、チタニアゾル(日産化学(株)製 TA−15(平均粒径12nm))を3g混合し、この塗布液を上記の塗布層上にスピンコーティング法で塗布した。これを乾燥(150℃、10分間)することにより、加水分解、重縮合反応を進行させ、光触媒とオルガノポリシロキサンを含有する濡れ性変化層(厚み3μm)を形成し、インプリント用基板とした。
このように作製したインプリント用基板の濡れ性変化層は、光照射によって水に対する接触角が変化するものであり、未照射状態での水に対する接触角は63°であった。
【0074】
<モールドの作製>
参考例1と同様にして、モールドを作製した。このモールドの水に対する接触角は97.5°であった。
<インプリント>
上記にように作製したインプリント用基板の濡れ性変化層(未照射状態)に、参考例1と同様の条件で被加工物としての樹脂液滴を滴下した。このように滴下された最初の液滴の滴下直後の高さは151μmであり、30秒経過後(最後の液滴が滴下されたとき)の高さは150μmであり、殆ど変化がなく、25個の液滴の高さは均一なものとなった。
次に、基板本体側が当接するようにインプリント装置の基板ステージに載置した。
次に、インプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が172nmの真空紫外線)を130mJ/cm
2の条件で照射した。これにより、インプリント用基板の濡れ性変化層の水に対する接触角は63°から8°へ低下し、上記のモールドの水に対する接触角(97.5°)よりも30°以上小さい値とした。その後、直ちに樹脂液滴に上記のモールドを押し当て濡れ性変化層上に樹脂層を形成し、この状態でインプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に20mJ/cm
2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂層を硬化させた。
その後、硬化した樹脂層からモールドを引き離した。そして、形成されたパターンについて、参考例1と同様に欠陥率を測定した結果、欠陥率は0.02であり、良好なインプリント転写が行われたことが確認された。
【0075】
[参考例3]
<インプリント用基板の作製>
参考例1と同様にして、温度変化により水に対する接触角が変化する濡れ性変化層を備えたインプリント用基板を作製した。
<モールドの作製>
参考例1と同様にして、モールドを作製した。このモールドの水に対する接触角は97.5°であった。
<インプリント>
上記にように作製したインプリント用基板の濡れ性変化層の温度を40℃とし、参考例1と同様の条件で被加工物としての樹脂液滴を滴下した。このように滴下された最初の液滴の滴下直後の高さは180μmであり、30秒経過後(最後の液滴が滴下されたとき)の高さは176μmであり、殆ど変化がなく、25個の液滴の高さは均一なものとなった。
次に、基板本体側が当接するようにインプリント装置の基板ステージに載置した。
次いで、樹脂液滴に上記のモールドを押し当て濡れ性変化層上に樹脂層を形成し、直ちに、インプリント用基板の濡れ性変化層の温度を25℃とすることにより、水に対する接触角を91.8°から59.6°へ低下させて、上記のモールドの水の接触角(97.5°)よりも30°以上小さい値とした。
次に、この状態でインプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に20mJ/cm
2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂層を硬化させた。
その後、硬化した樹脂層からモールドを引き離した。そして、形成されたパターンについて、参考例1と同様に欠陥率を測定した結果、欠陥率は0.01であり、良好なインプリント転写が行われたことが確認された。
【0076】
[参考例4]
<インプリント用基板の作製>
参考例1と同様にして、温度変化により水に対する接触角が変化する濡れ性変化層を備えたインプリント用基板を作製した。
<モールドの作製>
参考例1と同様にして、モールドを作製した。このモールドの水に対する接触角は97.5°であった。
【0077】
<インプリント>
上記にように作製したインプリント用基板の濡れ性変化層の温度を40℃とし、参考例1と同様の条件で被加工物としての樹脂液滴を滴下した。このように滴下された最初の液滴の滴下直後の高さは183μmであり、30秒経過後(最後の液滴が滴下されたとき)の高さは181μmであり、殆ど変化がなく、25個の液滴の高さは均一なものとなった。
次に、基板本体側が当接するようにインプリント装置の基板ステージに載置した。
次いで、樹脂液滴に上記のモールドを押し当て濡れ性変化層上に樹脂層を形成した。
次に、インプリント用基板の濡れ性変化層の温度を25℃とすることにより、水に対する接触角を91.8°から59.6°へ低下させて、上記のモールドの水の接触角(97.5°)よりも30°以上小さい値とした。これと同時に、この状態でインプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールドに20mJ/cm
2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂層を硬化させた。
その後、硬化した樹脂層からモールドを引き離した。そして、形成されたパターンについて、参考例1と同様に欠陥率を測定した結果、欠陥率は0.09であり、良好なインプリント転写が行われたことが確認された。
【0078】
[実施例1]
<インプリント用基板の作製>
基板本体として、厚み625μmのシリコンウエハを150mmφの寸法としたものを準備した。この基板本体の水に対する接触角は50°であり、下記のモールドの水に対する接触角よりも30°以上小さい値であった。
また、包囲構造物形成用の塗布液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZ5206)を上記の基板本体上にスピンコーティング法で塗布し、乾燥(90℃、90秒間)した。その後、包囲構造物形成用のマスクを介して塗布膜を露光、現像し、包囲構造物を形成してインプリント用基板とした。この包囲構造物は、5mmピッチで5列×5列(計25箇所)に形成され、内側の領域が直径200μmの円形をなすものであり、幅は5.0μm、高さは1.0μmであった。また、包囲構造物は、等間隔で4箇所に幅が1.5μmである肉薄部を有するものであった(
図7(A)参照)。
尚、この包囲構造物の内側の領域の直径(L)は、包囲構造物の内側の領域で高さを制御する樹脂液滴の直径dを160μm、この樹脂の基板に対する接触角θを30°とし、液滴の制御高さhを180μmとして、下記の式(1)を満足するように設定した。
d < L ≦ 2h/tan(θ/2) … 式(1)
また、包囲構造物の高さ(H)は、液滴の制御高さhを180μmとし、下記の式(2)を満足するように設定した。
H < h … 式(2)
<モールドの作製>
参考例1と同様にして、モールドを作製した。このモールドの水に対する接触角は97.5°であった。
【0079】
<インプリント>
上記にように作製したインプリント用基板の各包囲構造物で囲まれた領域に、参考例1と同様にして、被加工物としての樹脂液滴を滴下した。この樹脂液滴の滴下に要した時間は約30秒であり、最初に滴下された液滴の滴下直後の高さは186μmであり、30秒経過後(最後の液滴が滴下されたとき)の高さは166μmであった。そして、最初の樹脂の滴下から1分経過後に、包囲構造物に囲まれた状態で、25個の液滴の高さは155μmで均一なものとなった。
次に、基板本体側が当接するようにインプリント装置の基板ステージに載置した。
次いで、基板本体とモールドとの間隙(残膜厚み)を0.5μmに設定し、樹脂液滴に上記のモールドを押し当て、基板本体上に樹脂層を形成した。このモールドの押し当てでは、包囲構造物にモールドが接触したが、モールドの圧力(100kPa)で、包囲構造物は肉薄部で破断を生じ、変形した。
次いで、インプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)をモールド側に20mJ/cm
2の条件で照射した。これにより、光硬化性の樹脂層を硬化させた。
その後、硬化した樹脂層からモールドを引き離した。そして、形成されたパターンについて、参考例1と同様に欠陥率を測定した結果、欠陥率は0.08であり、良好なインプリント転写が行われたことが確認された。
【0080】
[参考例5]
濡れ性変化層(水に対する接触角91.8°)上に樹脂の液滴を滴下後、濡れ性変化層の濡れ性を変化させずに樹脂液滴にモールド(水に対する接触角97.5°)を押し当てた他は、参考例1と同様にしてインプリントを行った。
このインプリントでは、モールドへの樹脂層の付着が大となり、形成されたパターンについて、参考例1と同様に欠陥率を測定した結果、欠陥率は0.22であり、実用レベルを満足していないことが確認された。
【0081】
[比較例1]
包囲構造物を形成しない他は、実施例1と同様にしてインプリントを行った。
このインプリントでは、滴下された樹脂液滴が基板本体(水に対する接触角50°)上に広がり、モールド(水に対する接触角97.5°)への樹脂層の付着はないものの、形成されたパターンについて、参考例1と同様に欠陥率を測定した結果、欠陥率は0.16であり、実用レベルを満足していないことが確認された。