特許第6011677号(P6011677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6011677コンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6011677
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】コンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20161006BHJP
   B65G 45/12 20060101ALI20161006BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B65G43/02 Z
   B65G45/12 B
   G01B21/00 W
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-92687(P2015-92687)
(22)【出願日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】侯 剛
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−125347(JP,A)
【文献】 特開2009−166947(JP,A)
【文献】 特開2009−012957(JP,A)
【文献】 実開平03−113316(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00−43/10
B65G 45/12
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルトのカバーゴムの表面に対向配置されて所定のベルト幅方向の範囲に対して前記カバーゴムの表面までの距離を検知する非接触センサと、この非接触センサによる検知データが入力される演算部と、前記非接触センサにより検知される前記カバーゴムの反対表面側のカバーゴムに当接するバタつき防止部材とを備え、このバタつき防止部材が前記コンベヤベルトを架け渡す一対のプーリ間のリターン側で、前記非接触センサにより検知される検知範囲に対応する位置に配置され、前記演算部により、予め記憶されている基準データと前記検知データとを比較することにより、前記カバーゴムの摩耗量を算出する構成にしたことを特徴とするコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム。
【請求項2】
前記非接触センサにより検知される前記カバーゴムの表面に当接するスクレーパを備え、前記コンベヤベルトの走行により前記スクレーパを通過した後の前記カバーゴムの表面までの距離を前記非接触センサにより検知する構成にした請求項1に記載のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム。
【請求項3】
前記非接触センサが、前記コンベヤベルトの幅方向に間隔をあけて複数配置される請求項1または2に記載のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム。
【請求項4】
前記非接触センサが、前記コンベヤベルトの長手方向に間隔をあけた複数位置に配置される請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム。
【請求項5】
前記コンベヤベルトの基準位置に固定される基準部材と、前記コンベヤベルト周辺に固定される位置センサとを備え、前記コンベヤベルトの走行とともに移動する前記基準部材を前記位置センサにより検知し、この位置センサによる検知信号と前記コンベヤベルトの走行速度に基づいて、前記算出された摩耗慮の前記コンベヤベルトでの周方向位置を特定する構成にした請求項1〜4のいずれかに記載のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの摩耗モニタリングシステムに関し、さらに詳しくは、カバーゴムの任意の範囲の摩耗状況を精度よく効率的に把握できるコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石や石灰石等の鉱物資源をはじめとして様々な物がコンベヤベルトによって搬送される。コンベヤベルトによって物が搬送される場合、その搬送物はホッパや別のコンベヤベルトからコンベヤベルトの上カバーゴムに投入される。投入された搬送物は上カバーゴムに積載されてコンベヤベルトの走行方向に搬送される。その際には、搬送物が上カバーゴム上を摺動して上カバーゴムが摩耗する。搬送物により摩耗して許容強度を下回ったコンベヤベルトを使用し続けると突然、コンベヤベルトが切断してしまい作業の中断を余儀なくされることがある。この場合、復旧に多大な時間と費用を要するという問題があった。このような事故を防ぐために、コンベヤベルトの摩耗状態を検知する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で提案されている発明では、コンベヤベルトに磁石を埋設し、この磁石の磁力を磁気センサにより測定して、その測定データに基づいてコンベヤベルトの摩耗状態を検出する。この方法では、磁石が埋設されている範囲の摩耗状態は実際に検出できるが、埋設されていない範囲の摩耗状態は実際に検出することはできないため推測するしかない。
【0004】
コンベヤベルトの経時的な摩耗状態は、全範囲で均等に生じるわけではなく、ばらつきがある。また、何らかの理由で局部的な摩耗が生じることがある。最も摩耗が激しい範囲の摩耗状態や異常な摩耗状態を把握することが、コンベヤベルトの切断を回避するには重要であるが、このような摩耗状態が磁石が埋設されている範囲で生じるとは限らない。コンベヤベルトに磁石を埋設する従来の方法を用いてコンベヤベルトの任意の範囲の摩耗状態を把握するには、磁石を広範囲に埋設する必要があるが現実的ではない。そのため、コンベヤベルトの任意の範囲の摩耗状態を精度よく効率的に把握できる手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−52927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、カバーゴムの任意の範囲の摩耗状況を精度よく効率的に把握できるコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステムは、コンベヤベルトのカバーゴムの表面に対向配置されて所定のベルト幅方向の範囲に対して前記カバーゴムの表面までの距離を検知する非接触センサと、この非接触センサによる検知データが入力される演算部と、前記非接触センサにより検知される前記カバーゴムの反対表面側のカバーゴムに当接するバタつき防止部材とを備え、このバタつき防止部材が前記コンベヤベルトを架け渡す一対のプーリ間のリターン側で、前記非接触センサにより検知される検知範囲に対応する位置に配置され、前記演算部により、予め記憶されている基準データと前記検知データとを比較することにより、前記カバーゴムの摩耗量を算出する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非接触センサにより検知される範囲のベルト幅方向位置を任意に設定するとともにコンベヤベルトを走行させることにより、カバーゴムの任意の範囲について、非接触センサからカバーゴムの表面までの距離を非接触で検知することが可能になる。そして、基準データと非接触センサによる検知データとを比較することにより、検知した範囲のカバーゴムの摩耗量を算出することができる。カバーゴムの任意の範囲に対して、非接触センサによる検知を実際に行うことができるので、推測する場合に比して精度よく摩耗量を算出するには有利になる。また、コンベヤベルトを走行させながら非接触センサによる検知を行えるので効率よく短時間で任意の範囲の摩耗状態を把握することができる。
【0009】
本発明では、前記非接触センサにより検知される前記カバーゴムの反対表面側のカバーゴムに当接するバタつき防止部材を備え、このバタつき防止部材が前記非接触センサにより検知される検知範囲に対応する位置に配置される構成にする。この構成によれば、非接触センサによる検知範囲では、バタつき防止部材によってコンベヤベルトの走行に起因するバタつきが抑制される。それ故、非接触センサによる検知精度を向上させるには有利になる。
【0010】
前記非接触センサにより検知される前記カバーゴムの表面に当接するスクレーパを備え、前記コンベヤベルトの走行により前記スクレーパを通過した後の前記カバーゴムの表面までの距離を前記非接触センサにより検知する構成にすることもできる。この構成によれば、カバーゴムの表面に付着物がある場合には、非接触センサによる検知前に、スクレーパによって付着物が除去される。それ故、非接触センサによる検知精度を向上させるには有利になる。
【0011】
前記非接触センサが、前記コンベヤベルトの幅方向に間隔をあけて複数配置される構成にすることもできる。この構成によれば、カバーゴムの表面のより広い範囲の摩耗状態を一括的に把握することが可能になる。
【0012】
前記非接触センサが、前記コンベヤベルトの長手方向に間隔をあけた複数位置に配置される構成にすることもできる。この構成によれば、コンベヤベルトのそれぞれの長手方向位置での非接触センサの検知データどうしを比較することにより、非接触センサの検知精度のばらつきを把握することができる。また、いずれかの位置に配置された非接触センサの故障を発見することも可能になる。
【0013】
前記コンベヤベルトの基準位置に固定される基準部材と、前記コンベヤベルト周辺に固定される位置センサとを備え、前記コンベヤベルトの走行とともに移動する前記基準部材を前記位置センサにより検知し、この位置センサによる検知信号と前記コンベヤベルトの走行速度とに基づいて、前記算出された摩耗量の前記コンベヤベルトでの周方向位置を特定する構成にすることもできる。この構成によれば、カバーゴムの表面の任意の範囲の摩耗状態をより確実に、かつ、経時的変化も精度よく把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステムを適用したコンベヤベルトを側面視で例示する説明図である。
図2図1の非接触センサおよび位置センサをコンベヤベルトとともに正面視で例示する説明図である。
図3】算出された摩耗量をベルト横断面視で例示する説明図である。
図4】算出された摩耗量をベルト平面視で例示する説明図である。
図5】コンベヤベルトラインを単純化して例示する説明図である。
図6図5のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
実際のコンベヤベルトラインでは、図5図6に例示するように、別のコンベヤベルト12によって搬送された搬送物Sがコンベヤベルト10に投入されて、このコンベヤベルト10によって搬送先に搬送される。コンベヤベルト10にはホッパ等を通じて搬送物Sが投入されることもある。コンベヤベルト10は、プーリ9、9間に架け渡されていて所定のテンションで張設されている。
【0017】
コンベヤベルト10は、帆布やスチールコード等の心体で構成される心体層10bと、心体層10bを挟む上カバーゴム10aと下カバーゴム10cとにより構成されている。心体層10bは、コンベヤベルト10を張設するためのテンションを負担する部材である。コンベヤベルト10のキャリア側(搬送物Sが載置されて走行する側)では下カバーゴム10cが支持ローラ9aにより支持され、リターン側(搬送物Sが載置されずに走行する側)では上カバーゴム10aが支持ローラ9aにより支持されている。コンベヤベルト10のキャリア側ではベルト幅方向に3つの支持ローラ9aが配置されていて、これらの支持ローラ9aによってコンベヤベルト10は所定のトラフ角度aで凹状に支持されている。一方の駆動側のプーリ9が回転駆動することにより、コンベヤベルト10は一方向に所定の走行速度Vで稼働する。搬送物Sは上カバーゴム10aの上に投入され、上カバーゴム10aに積載されて搬送される。
【0018】
図1図2に例示する本発明のコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステム1(以下、システム1という)は、実際のコンベヤベルトラインのコンベヤベルト10に適用される。
【0019】
このシステム1は、上カバーゴム10aの表面までの距離hxを検知する非接触センサ2と、非接触センサ2による検知データが入力される演算部3とを備えている。非接触センサ2としては、レーザーセンサや超音波センサ、その他には、上カバーゴム10aの表面を撮影することにより距離を検知して3次元的に上カバーゴム10aの表面状態を取得する画像センサ等を用いることができる。上カバーゴム10a、下カバーゴム10cのいずれのカバーゴムも非接触センサ2の検知対象になるが、以下の実施形態では上カバーゴム10aを検知対象にした場合で説明する。
【0020】
非接触センサ2は、コンベヤベルト10の近傍に配置されたセンサ設置台2aに取り付けられて、コンベヤベルト10のリターン側で上カバーゴム10aの表面に対向配置されている。1台の非接触センサ2は、上カバーゴム10aのある程度のベルト幅方向範囲(例えば、ベルト幅方向30mm〜300mmの範囲)の表面を検知範囲にする。この実施形態では、複数台の非接触センサ2がベルト幅方向に間隔をあけて並置されている。並置された非接触センサ2の検知範囲どうしは、実質的に隙間なく隣接した配置にされる。
【0021】
演算部3としては、種々のコンピュータを用いることができる。演算部3には、上カバーゴム10aの摩耗量Hを算出する際に基準となる基準データhが記憶されている。
【0022】
この実施形態では、非接触センサ2に接続された制御部4が演算部3に接続されている。即ち、非接触センサ2と演算部3との間に制御部4が介在している。制御部4は、非接触センサ2の検知頻度や検知感度等を制御する。演算部3と制御部4とを一体化した機器を用いることもできる。コンベヤベルトラインには、コンベヤベルト10の走行速度、走行時間、停止時間等を制御する走行制御装置11が設けられているが、この走行制御装置11に演算部3が接続されている。
【0023】
コンベヤベルト10の側面等の周辺には、センサ設置台5aに取り付けられた位置センサ5が設置されている。コンベヤベルト10には、適宜、設定された基準位置(例えばベルト側面の所定位置)に基準部材6が固定されている。位置センサ5は、コンベヤベルト10が走行することにより基準部材6が検知可能範囲まで近づくと検知信号を発信する。例えば、基準部材6として金属や磁石等を用いて、これに反応する近接スイッチ等を位置センサ5として採用する。位置センサ5による検知信号は、制御部4を介して演算部3に入力される。この検知信号は演算部3に直接入力することもできる。
【0024】
また、非接触センサ2による検知対象となる上カバーゴム10aの反対表面側になる下カバーゴム10cに当接するバタつき防止部材7が備わっている。バタつき防止部材7は平板状であり、非接触センサ2により検知される上カバーゴム10aの検知範囲に対応する位置に配置される。即ち、コンベヤベルト10を挟んで、非接触センサ2とバタつき防止部材7が対置される。
【0025】
さらにこの実施形態では、非接触センサ2による検知対象となる上カバーゴム10aの表面に当接するスクレーパ8が備わっている。スクレーパ8は、コンベヤベルト10のリターン側で、非接触センサ2よりも走行方向上流側に配置されている。公知のスクレーバ8を用いることができ、コンベヤベルト10の走行によりスクレーパ8を通過した後の上カバーゴム10aの表面が非接触センサ2により検知される構成になっている。
【0026】
次に、このシステム1を用いて上カバーゴム10aの摩耗状態を把握、監視する方法を説明する。
【0027】
このシステム1は、コンベヤベルト10が走行している状態の時に非接触センサ2による検知を行って上カバーゴム10aの摩耗量Hを検知する。
【0028】
非接触センサ2は、センサ先端などの起点から上カバーゴム10aの表面までの距離hxを、所定のベルト幅の検知範囲について逐次検知する。コンベヤベルト10は走行しているので、コンベヤベルト10が1周回する間、非接触センサ2による検知を行うと、1台の非接触センサ2によって所定のベルト幅の範囲についてコンベヤベルト10の全周のデータを取得することができる。
【0029】
したがって、非接触センサ2の設置数や配置位置を適宜決定して、非接触センサ2による検知範囲のベルト幅方向位置を適宜設定するとともにコンベヤベルト10を走行させることにより、上カバーゴム10aの任意の範囲について、非接触センサ2から上カバーゴム10aの表面までの距離hxを非接触で検知することが可能になる。
【0030】
非接触センサ2による検知データ(距離hx)は、演算部3に入力される。演算部3には、この検知データhxと比較される基準データhが予め記憶されている。この基準データhには、例えば、今回の非接触センサ2より検知した範囲について、前回、接触センサ2により検知された検知データを用いる。そして、今回の検知データhxと基準データhとを比較することにより、今回検知した範囲について、前回の検知から今回の検知までの間に生じた上カバーゴム10aの摩耗量H(=hx−h)を算出することができる。コンベヤベルト10が1周回する毎に基準データhを更新すれば、常時、リアルタイムで上カバーゴム10aの摩耗量Hを把握することができる。
【0031】
例えば、摩耗量Hはベルト幅方向に対して横断面視で図3に示すように把握することができる。図3中の波線R1は前回の検知した上カバーゴム10aの表面位置であり、波線R2は今回の検知した上カバーゴム10aの表面位置である。波線R1とR2との上下間隔が摩耗量Hになる。
【0032】
また、非接触センサ2として、上カバーゴム10aの表面を撮影することにより距離hxを検知して3次元的に上カバーゴム10aの表面状態を取得できる画像センサ等を用いると、図4に例示する検知データを得ることができる。この検知データでは、上カバーゴム10aの表面の状態がモニタに3次元的に表現されていて、窪みCの部分が周辺部分よりも色を濃くして表示される。そのため、表示された色の濃淡によって摩耗量Hの違いを一目して把握することができる。
【0033】
上述のように本発明のシステム1によれば、非接触センサ2を適切な位置に配置して、コンベヤベルト10を走行させながら上カバーゴム10aの表面まで距離Hを検知することで、上カバーゴム10aの任意の範囲に対して実際に距離Hを検知できる。それ故、推測する場合よりも精度よく摩耗量Hを算出するには有利になる。コンベヤベルト10を走行させながら非接触センサ2による検知を行うので、効率よく短時間で上カバーゴム10aの表面の任意の範囲の摩耗状態を把握することが可能になる。
【0034】
前回の検知データと今回の検知データを比較する際には、それぞれのデータがコンベヤベルト10における同じ位置(同じ周方向位置)で検知されたものであることが必要になる。この実施形態では、コンベヤベルト10の走行とともに移動する基準部材6が位置センサ5の検知範囲に来た時(最接近した時)に、位置センサ5が検知信号を発信する。この検知信号は制御部4を通じて演算部3に入力される。位置センサ5と非接触センサ2の位置は既知である。そのため、位置センサ5が検知信号を発信した時点で非接触センサ2が検知した上カバーゴム10aの表面の周方向位置は判明する。そして、演算部3には走行制御装置11からコンベヤベルト10の走行速度が入力される。したがって、位置センサ5による検知信号とコンベヤベルト10の走行速度とに基づいて、非接触センサ2による検知範囲のコンベヤベルト10の周方向位置が常に判明する。これに伴って、演算部3により算出された摩耗量Hのコンベヤベルト10での周方向位置が常に特定される。この構成によれば、上カバーゴム10aの表面の任意の範囲の摩耗状態をより確実に、かつ、経時的変化も精度よく把握することが可能になる。
【0035】
演算部3には例えば、上カバーゴム10aの許容できる最大摩耗量Hxを記憶しておくことができる。そして、演算部3により算出した摩耗量Hが、最大摩耗量Hxに達した時点で、警告を発する構成にすることもできる。警告としては例えば、警報を発したり、モニターに警告表示をするなどを例示できる。摩耗量Hが、最大摩耗量Hxに達した時点で演算部3から走行制御装置11に指示を出してコンベヤベルト10の走行を停止させる構成にすることもできる。
【0036】
ところで、コンベヤベルト10のリターン側では上カバーゴム10aに搬送物Sは載置されていないが、搬送物Sが残存して上カバーゴム10aに付着している場合もあるので、その付着物がスクレーパ8によって除去される構成にすることが好ましい。このようにして、スクレーパ8を通過した後のカバーゴム10aの表面までの距離hxを検知すれば、非接触センサ2による検知精度を向上させるには有利になり、より正確に距離hxを検知できるので、ひいては算出される摩耗量Hがより正確になる。
【0037】
また、この実施形態では、非接触センサ2による検知範囲においては、走行するコンベヤベルト10の下カバーゴム10cの表面がバタつき防止部材7に僅かに摺動する。そのため、バタつき防止部材7によってコンベヤベルト10の走行に伴うバタつきが抑制され、非接触センサ2による検知精度を向上させるには有利になっている。
【0038】
この実施形態のように、非接触センサ2をコンベヤベルト10の幅方向に間隔をあけて複数配置することで、上カバーゴム10aの表面のより広い範囲の摩耗状態を一括的に把握することが可能になる。尚、上カバーゴム10aでは、図6に例示するように搬送物Sが積載されるベルト幅方向中央部の摩耗が顕著になる。そのため、非接触センサ2によって距離hxを検知する範囲は、例えば、ベルト幅方向中央部に限定することもできる。
【0039】
非接触センサ2をコンベヤベルト10の長手方向に間隔をあけた複数位置に配置することもできる。具体的には、コンベヤベルト10のリターン側に、ベルト長手方向に間隔をあけた複数位置に非接触センサ2を配置する。この構成によれば、それぞれの長手方向位置での非接触センサ2の検知データどうしを比較することにより、非接触センサ2の検知精度のばらつきを把握することができる。また、それぞれの位置での検知データのばらつきが過大である場合には、いずれかの位置に配置された非接触センサ2が故障していると思われるので、非接触センサ2の故障を早期に発見することができる。
【0040】
上カバーゴム10aと同様に下カバーゴム10cの摩耗状態を把握、監視することもできる。下カバーゴム10cの表面までの距離hxを非接触センサ2により検知することは、コンベヤベルト10のキャリア側でもリターン側でも行うことができる。ただし、リターン側の方が、コンベヤベルト10に搬送物Sが積載されていないのでコンベヤベルト10の挙動がより安定的であり、しかも、トラフ状ではなくフラットな状態なので本発明ではリターン側で非接触センサ2による検知を行う
【符号の説明】
【0041】
1 摩耗モニタリングシステム
2 非接触センサ
2a センサ設置台
3 演算部
4 制御部
5 位置センサ
5a センサ設置台
6 基準部材
7 バタつき防止部材
8 スクレーパ
9 プーリ
9a 支持ローラ
10 コンベヤベルト
10a 上カバーゴム
10b 心体層
10c 下カバーゴム
11 走行制御装置
12 別のコンベヤベルト
S 搬送物
H 摩耗量
【要約】
【課題】カバーゴムの任意の範囲の摩耗状況を精度よく効率的に把握できるコンベヤベルトの摩耗モニタリングシステムを提供する。
【解決手段】上カバーゴム10aの表面に非接触センサ2を対向配置して、走行するコンベヤベルト10の上カバーゴム10aの所定のベルト幅方向の範囲に対して、非接触センサ2を用いて上カバーゴム10aの表面までの距離hxを検知し、この検知データhxと予め記憶されている基準データhとを演算部3により比較して上カバーゴム10aの摩耗量Hを算出する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6