特許第6011684号(P6011684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6011684ポリカーボネートジオールの製造方法及びポリカーボネートジオール並びにそれを用いたポリウレタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011684
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオールの製造方法及びポリカーボネートジオール並びにそれを用いたポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20161006BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20161006BHJP
   D01F 6/70 20060101ALI20161006BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20161006BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20161006BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C08G64/02
   C08G18/44
   D01F6/70 Z
   C09D175/04
   C09D5/02
   C09J175/04
【請求項の数】13
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-125992(P2015-125992)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-27118(P2016-27118A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-129547(P2014-129547)
(32)【優先日】2014年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】草野 一直
(72)【発明者】
【氏名】若林 一樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽子
(72)【発明者】
【氏名】井澤 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】金森 芳和
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303285(JP,A)
【文献】 特開2009−051888(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063768(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/039249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 − 64/42
C08G 18/00 − 18/87
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01〜1.0重量%のアルデヒド体を含有する下記式(A)で表される化合物と、下記式(B)で表される化合物と、カーボネート化合物とを触媒存在下、エステル交換反応により重縮合させて、数平均分子量が250〜5000のポリカーボネートジオールを得るポリカーボネートジオールの製造方法。
HO−(CH10−OH・・・(A)
HO−R−OH・・・(B)
(上記式(B)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記式(B)には上記式(A)の化合物は含まれない。)
【請求項2】
前記式(B)中のRの主鎖の炭素原子が、1級、2級もしくは3級の炭素原子である請求項1に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項3】
前記式(B)が1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1または2に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項4】
下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位及び下記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールであって、数平均分子量が250〜5000であり、アルデヒド体を0.001〜0.10重量%含有するポリカーボネートジオール。
HO−(CH10−OH・・・(A)
HO−R−OH・・・(B)
(上記式(B)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記式(B)には上記式(A)の化合物は含まれない。)
【請求項5】
前記式(B)中のRの主鎖の炭素原子が、1級、2級もしくは3級の炭素原子である請求項4に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項6】
前記式(B)が1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項4または5に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールを用いて得られるポリウレタン。
【請求項8】
請求項7に記載のポリウレタンを用いて製造した人工皮革または合成皮革。
【請求項9】
請求項7に記載のポリウレタンを用いて製造した塗料またはコーティング剤。
【請求項10】
請求項7に記載のポリウレタンを用いて製造した弾性繊維。
【請求項11】
請求項7に記載のポリウレタンを用いて製造した水系ポリウレタン塗料。
【請求項12】
請求項7に記載のポリウレタンを用いて製造した粘着剤または接着剤。
【請求項13】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールを用いて得られる活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネート系ポリウレタンの原料として有用なポリカーボネートジオール及びその製造方法並びにそれを用いてなるポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業規模で生産されているポリウレタンの主たるソフトセグメント部の原料は、ポリテトラメチレングリコールに代表されるエーテルタイプ、アジペート系エステルに代表されるポリエステルポリオールタイプ、ポリカプロラクトンに代表されるポリラクトンタイプ又はポリカーボネートジオールに代表されるポリカーボネートタイプに分けられる(非特許文献1)。
【0003】
これらに対して、ポリカーボネートジオールに代表されるポリカーボネートタイプを用いたポリウレタンは、耐熱性及び耐加水分解性において最良な耐久グレードとされており、耐久性フィルムや自動車用人工皮革、(水系)塗料、接着剤として広く利用されている。
しかしながら、現在広く市販されているポリカーボネートジオールは、主に1,6−ヘキサンジオールから合成されるポリカーボネートジオールであるが、このものは結晶性が高いため、ポリウレタンとしたときに、ソフトセグメントの凝集性が高く、特に低温における柔軟性、伸び、曲げ又は弾性回復性が悪いという問題があり用途が制限されていた。さらに、このポリウレタンを原料として製造した人工皮革は、硬い質感があり、天然皮革に比べて“風合い”が悪いということも指摘されている。
【0004】
そこで上記問題を解決するためにいろいろな構造のポリカーボネートジオールが提案されている。
例えば、柔軟性を向上させるため、1,9−ノナンジオールや1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの長鎖のジヒドロキシ化合物を用いた例がある(特許文献1、2、3、4、5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第02802657号公報
【特許文献2】特許第03240194号公報
【特許文献3】特開2013−10950公報
【特許文献4】国際公開WO09/063768号パンフレット
【特許文献5】特開2001−270938公報
【特許文献6】日本国特開2005−48141公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"ポリウレタンの基礎と応用"96頁〜106頁 松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら従前知られた技術、例えば特許文献1〜6に記載のポリカーボネートジオールを製造するに際して、原料であるジヒドロキシ化合物に含まれるアルデヒド体やその含有量などが、ポリカーボネートジオールの製造効率などに影響することや、さ
らにこれらのポリカーボネートジオールを用いて得られるポリウレタンとした際の反応性や物性についても、原料であるジヒドロキシ化合物に含まれるアルデヒド体やその含有量などが影響を及ぼすことについては着目されていなかった。そのため、これまでは、1,10−デカンジオールを原料のジヒドロキシ化合物として使用する場合のポリカーボネートジオールの製造効率や、そのポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンなどを工業的に製造並びに使用するにあたっては、コストや品質の面から有利なものではなかった。
【0008】
本発明はこれら従来技術で到達できなかった、上記課題に鑑みてなされたものであり、原料のジヒドロキシ化合物として1,10−デカンジオールを含むポリカーボネートジオールを製造する際に、重縮合時の反応性が良好で、色調が良好なポリカーボネートジオールの製造方法、並びにポリウレタン原料のポリカーボネートジオールの中でも1,10−デカンジオールを構造単位として含むポリカーボネートジオールを用いる場合に、ウレタン重合時の反応性が良好で、かつ得られるポリウレタンの柔軟性、低温特性、耐薬品性、耐熱性の物性バランスに優れたポリカーボネートジオールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、1,10−デカンジオール中に0.01〜1.0重量%のアルデヒド体を含有するものと下記式(B)で表される化合物とカーボネート化合物とを触媒存在下、エステル交換反応により重縮合させて、数平均分子量が250〜5000のポリカーボネートジオールを製造することで、ポリカーボネートジオールの重縮合時の反応性が良好で、色調が良好なポリカーボネートジオールが得られ、さらに該ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンが、ウレタン重合時の反応性が良好で、かつ柔軟性、低温特性、耐薬品性、耐熱性のバランスに優れることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下である。
(1)0.01〜1.0重量%のアルデヒド体を含有する下記式(A)で表される化合物と、下記式(B)で表される化合物と、カーボネート化合物とを触媒存在下、エステル交換反応により重縮合させて、数平均分子量が250〜5000のポリカーボネートジオールを得るポリカーボネートジオールの製造方法。
HO−(CH10−OH・・・(A)
HO−R−OH・・・(B)
(上記式(B)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記式(B)には上記式(A)の化合物は含まれない。)
【0011】
(2)前記式(B)中のRの主鎖の炭素原子が、1級、2級もしくは3級の炭素原子である前記(1)に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
(3)前記式(B)が1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である前記(1)または(2)に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
(4)下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位及び下記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールであって、数平均分子量が250〜5000であり、アルデヒド体を0.001〜0.10重量%含有するポリカーボネートジオール。
HO−(CH10−OH・・・(A)
HO−R−OH・・・(B)
(上記式(B)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記式(B)には上記式(A)の化合物は含まれない。)
【0012】
(5)前記式(B)中のRの主鎖の炭素原子が、1級、2級もしくは3級の炭素原子である前記(4)に記載のポリカーボネートジオール。
(6)前記式(B)が1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である前記(4)または(5)に記載のポリカーボネートジオール。
(7)前記(4)〜(6)のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオールを用いて得られるポリウレタン。
【0013】
(8)前記(7)に記載のポリウレタンを用いて製造した人工皮革または合成皮革。
(9)前記(7)に記載のポリウレタンを用いて製造した塗料またはコーティング剤。
(10)前記(7)に記載のポリウレタンを用いて製造した弾性繊維。
(11)前記(7)に記載のポリウレタンを用いて製造した水系ポリウレタン塗料。
(12)前記(7)に記載のポリウレタンを用いて製造した粘着剤または接着剤。
(13)前記(4)〜(6)のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオールを用いて得られる活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、反応性が良好で、色調が良好なポリカーボネートジオールが得られ、該ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンは、ウレタン重合時の反応性が良好で、かつ柔軟性、低温特性、耐薬品性、耐熱性のバランスに優れた特長を有し、弾性繊維、合成または人工皮革、塗料、高機能エラストマー用途に適しており、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、詳細に本発明の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
ここで、本明細書において“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”、及び“質量部”と“重量部”とは、それぞれ同義である。また、単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
【0016】
[1.ポリカーボネートジオールの製造方法]
本発明は、0.01〜1.0重量%のアルデヒド体を含有する下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とカーボネート化合物とを触媒存在下、エステル交換反応により重縮合させて、数平均分子量が250〜5000のポリカーボネートジオールを得るポリカーボネートジオールの製造方法であることを特徴とする。
HO−(CH10−OH・・・(A)
HO−R−OH・・・(B)
(上記式(B)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記式(B)には上記式(A)の化合物は含まれない。)
【0017】
<1−1.構造上の特徴>
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びポリカーボネートジオールに係る前記式(A)で表される化合物に由来する構造単位は、例えば、下記式(C)で表される。また、前記式(B)で表される化合物に由来する構造単位は、例えば、下記式(D)で表される。
【0018】
【化1】
【0019】
(上記式(D)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記式(D)には、上記式(C)は含まれない。)
前記式(D)中、Rは1種類であっても複数種であってもよい。前記式(D)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20の二価のアルキレン基であるが、柔軟性、低温特性、耐薬品性、耐熱性それぞれが良好となることより、Rのアルキレン基を構成する主鎖の炭素原子が1級、2級もしくは3級の炭素原子であることが好ましく、2級であることがより好ましい。
【0020】
前記式(B)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3〜炭素数20(炭素数10を除く)の二価のアルキレン基を示す。具体的な式(B)の化合物としては、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられる。中でもポリウレタンとしたときの柔軟性、低温特性、耐薬品性のバランスが優れることより、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールが好ましく、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、1,4−ブタンジオールが更に好ましい。尚、前記式(B)で表される化合物は1種であっても複数種であってもよい。ただし、式(A)で示される1,10−デカンジオールは除く。
【0021】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールは、前記式(A)で表される化合物に由来する構造単位及び前記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を含む。前記式(A)で表される化合物に由来する構造単位及び前記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を含むことにより、ポリウレタンにしたときの良好な柔軟性、低温特性、耐薬品性、耐熱性を得ることができる。更に前記式(A)で表される化合物に由来する構造単位と前記式(B)で表される化合物に由来する構造単位との割合(以下「(A):(B)」と称す場合がある。)は、モル比率で、(A):(B)=40:60〜1:99が好ましく、30:70〜2:98がより好ましく、25:75〜5:95が更に好ましく、20:90〜10:90が最も好ましい。前記式(A)で表される化合物に由来する構造単位の含有割合が多くなりすぎると、
ポリウレタンとしたときの耐薬品性が十分でなくなる場合がある。前記式(A)で表される化合物に由来する構造単位の含有割合が少なくなりすぎると、ポリウレタンとしたときの柔軟性、低温特性が十分ではない可能性がある。
【0022】
さらに本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールにおけるポリカーボネートジオールを加水分解して得られるジヒドロキシ化合物の平均炭素数が4以上5.5以下であることにより、ポリウレタンにしたときの良好な耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性を得ることができる。平均炭素数の上限は5.3が好ましく、5.2がより好ましく、5.1が更に好ましい。平均炭素数の下限は4.3が好ましく、4.5がより好ましく、4.7が更に好ましい。上記下限未満では、低温特性が不足する場合があり、また上記上限を超える場合は、耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性が不足する場合がある。
【0023】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールにおけるポリカーボネートジオールを加水分解して得られるジヒドロキシ化合物の平均炭素数とは、アルカリ存在下で加熱によりポリカーボネートジオールを加水分解して得られたジヒドロキシ化合物を、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果から求めることができる。具体的には、ポリカーボネートジオールを加水分解して得られたジヒドロキシ化合物の炭素数と、該ジヒドロキシ化合物の全ジヒドロキシ化合物に対するモル比率から計算する。
【0024】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法において、原料として使用する前記式(A)で表される化合物は、0.01〜1.0重量%のアルデヒド体を含有することを特徴とする。アルデヒド体の構造としては前記式(A)で表される化合物のヒドロキシ基がアルデヒド基になったものを表す。アルデヒド体の量は1つのヒドロキシ基がアルデヒド基になったものとして換算する。またアルデヒド基はヒドロキシ基と反応してアセタール基に変化する場合があり、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールにおけるアルデヒド体とは、このアセタール基に変化したものも含み、アルデヒド体の量としてもアセタール基に変化したものが含まれる。
【0025】
また、アルデヒド体は前記式(A)で表される化合物の前駆体であるセバシン酸又はセバシン酸エステルの水素化反応により得られるが、水素化反応工程でアルデヒド体が副生する。前記式(A)で表される化合物の製造段階においてアルデヒド体を低減する方法としては、水素化反応での触媒量を多くしたり、滞留時間を長くしたり、水素化圧力を過大にしたりするなどが必要となり、製造段階における負荷が大きく容易ではない。また、アセタールはアルデヒドとは異なる水素化触媒能が必要となるため、水素化されにくく前記式(A)で表される化合物中に残存する。
【0026】
さらに、水素化反応工程の後に、蒸留により前記式(A)で表される化合物を精製するが、蒸留段階においても水素化反応工程にて副生したアセタール体がアルデヒド体に分解して、精製した前記式(A)で表される化合物中に混入する場合がある。またアルデヒド体がヒドロキシ基と反応してアセタールが生成し、前記式(A)で表される化合物中に混入することがある。
【0027】
一般に、炭素数が少ないジヒドロキシ化合物におけるアルデヒド体は、蒸留精製により比較的容易に分離できるが、炭素数が多い前記式(A)で表される化合物では、前記式(A)で表される化合物とアルデヒド体の沸点が近く、またアセタール体として分けることが難しいため、アルデヒド体やアセタール体として前記式(A)で表される化合物中に残りやすい。
【0028】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法において、原料として使用する前記式(A)で表される化合物中のアルデヒド体の含有量は0.01〜1.0重量%であり、好ましくは0.04〜1.0重量%、より好ましくは0.04〜0.8重量%、更に好ましくは0.04〜0.5重量%であり、特に好ましくは0.10〜0.5重量%である。アルデヒド体の含有量が0.01重量%より少ない場合は、前記式(A)で表される化合物の製造段階において、負荷が大きくコスト高となるため好ましくない。また、アルデヒド体の含有量が1.0重量%超の場合は、前記式(A)で表される化合物をポリカーボネートジオールの原料として使用した場合に反応性が低下したり、重縮合により得られるポリカーボネートジオールの色調が悪化したりする傾向にある。前記式(A)で表される化合物のアルデヒド体の含有量は、セバシン酸又はセバシン酸エステルの水素化反応により前記式(A)で表される化合物を得る際に、水素化反応工程を押し切る事で低減できる。一方、前記式(A)で表される化合物のアルデヒド体の含有量は酸化によって増加するため、例えば前記式(A)で表される化合物を酸素存在下の原料槽などで加熱すれば、ポリカーボネートジオールを製造する前に前記式(A)で表される化合物中のアルデヒド体を所望の含有量まで増加できる。
【0029】
さらに、前記式(A)で表される化合物のアルデヒド体の含有量が1.0重量%超の場合は、ポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンとした時に、ポリウレタンが着色する傾向にあり、成形体とした際の意匠性が損なわれる可能性があるだけでなく、イソシアネートと反応しないためポリウレタン骨格に組み込まれず、末端停止剤となってポリウレタンの分子量が伸びにくかったり、反応性が低下したりする場合がある。またポリウレタンの製造条件によっては、アルデヒド体が水酸基末端及びイソシアネートと反応して架橋構造を構築し、ゲル化する場合もある。そのため、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法で得られるポリカーボネート及び本発明のポリカーボネート中に含まれるアルデヒド体の含有量は、アルデヒド体の重量換算で0.001〜0.10重量%であり、好ましくは0.003〜0.10重量%、より好ましくは0.005〜0.08重量%、更に好ましくは0.01〜0.06重量%、特に好ましくは0.01〜0.05重量%、最も好ましくは0.02〜0.05重量%である。
【0030】
<1−2.カーボネート化合物>
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールにおいて、ポリカーボネートジオールの製造に使用可能なカーボネート化合物(「炭酸ジエステル」と称する場合がある)としては、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。このうち反応性の観点からジアリールカーボネートが好ましい。
カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0031】
<1−3.エステル交換触媒>
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールは、上記式(A)で表される化合物と上記式(B)で表される化合物とカーボネート化合物とを、エステル交換反応により重縮合することにより製造することができる。
【0032】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法においては、重合を促進するためにエステル交換触媒(以下、触媒と称する場合がある)を用いる。その場合、得られたポリカーボネートジオール中に、過度に多くの触媒が残存すると、該ポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造する際に反応を阻害したり、反応を過度に促進したりする場合
がある。
【0033】
このため、ポリカーボネートジオール中に残存する触媒量は、特に限定されないが、触媒金属換算の含有量として100重量ppm以下が好ましく、より好ましくは50重量ppm以下、更に好ましくは10重量ppm以下である。
エステル交換触媒としては、一般にエステル交換能があるとされている化合物であれば制限なく用いることができる。
【0034】
エステル交換触媒の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の長周期型周期表(以下、単に「周期表」という)第1族金属の化合物;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表第2族金属の化合物;チタン、ジルコニウム等の周期表第4族金属の化合物;ハフニウム等の周期表第5族金属の化合物;コバルト等の周期表第9族金属の化合物;亜鉛等の周期表第12族金属の化合物;アルミニウム等の周期表第13族金属の化合物;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表第14族金属の化合物;アンチモン、ビスマス等の周期表第15族金属の化合物;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等のランタナイド系金属の化合物等が挙げられる。これらのうち、エステル交換反応速度を高めるという観点から、周期表第1族金属の化合物、周期表第2族金属の化合物、周期表第4族金属の化合物、周期表第5族金属の化合物、周期表第9族金属の化合物、周期表第12族金属の化合物、周期表第13族金属の化合物、周期表第14族金属の化合物が好ましく、周期表第1族金属の化合物、周期表第2族金属の化合物がより好ましく、周期表第2族金属の化合物がさらに好ましい。周期表第1族金属の化合物の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムの化合物が好ましく、リチウム、ナトリウムの化合物がより好ましく、ナトリウムの化合物がさらに好ましい。周期表第2族金属の化合物の中でも、マグネシウム、カルシウム、バリウムの化合物が好ましく、カルシウム、マグネシウムの化合物がより好ましく、マグネシウムの化合物がさらに好ましい。これらの金属化合物は主に、水酸化物や塩等として使用される。塩として使用される場合の塩の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩;酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩やトルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩等の燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;等が挙げられる。触媒金属は、さらにメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドとして用いることもできる。
【0035】
これらのうち、好ましくは、周期表第2族金属から選ばれた少なくとも1種の金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシドが用いられ、より好ましくは周期表第2族金属の酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、さらに好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、特に好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩が用いられ、最も好ましくは酢酸マグネシウムが用いられる。
【0036】
<1−4.分子鎖末端>
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールの分子鎖末端は主に水酸基である。しかしながら、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物との反応で得られるポリカーボネートジオールの場合には、不純物として一部分子鎖末端が水酸基ではないものが存在する可能性がある。その具体例としては、分子鎖末端がアルキルオキシ基又はアリールオキシ基のものであり、多くはカーボネート化合物由来の構造である。
【0037】
例えば、カーボネート化合物としてジフェニルカーボネートを使用した場合はアリールオキシ基としてフェノキシ基(PhO−)、ジメチルカーボネートを使用した場合はアルキルオキシ基としてメトキシ基(MeO−)、ジエチルカーボネートを使用した場合はエ
トキシ基(EtO−)、エチレンカーボネートを使用した場合はヒドロキシエトキシ基(HOCHCHO−)が分子鎖末端として残存する場合がある(ここで、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す)。
又、ポリカーボネートジオールの分子鎖末端がカーボネート化合物に由来する末端基の数の割合は、全末端数に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは3モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
【0038】
<1−5.水酸基価>
本発明の本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールの水酸基価は、下限は20mg−KOH/g、好ましくは25mg−KOH/g、より好ましくは30mg−KOH/g、更に好ましくは35mg−KOH/gである。また、ポリカーボネートジオールの水酸基価の上限は450mg−KOH/g、好ましくは230mg−KOH/g、より好ましくは150mg−KOH/g、更に好ましくは120mg−KOH/g、より更に好ましくは75mg−KOH/g、特に好ましくは60mg−KOH/g、最も好ましくは45mg−KOH/gである。水酸基価が上記下限未満では、粘度が高くなりすぎポリウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、上記上限超過ではポリウレタンとした時に柔軟性や低温特性などの物性が不足する場合がある。
【0039】
<1−6.分子量・分子量分布>
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量(Mn)の下限は250であり、好ましくは300、より好ましくは400である。一方、ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)の上限は5,000であり、好ましくは4,000、より好ましくは3,000である。ポリカーボネートジオールのMnが前記下限未満では、ウレタンとした際に柔軟性が十分に得られない場合があり、一方前記上限超過では粘度が上がり、ポリウレタン化の際のハンドリングを損なう可能性がある。
【0040】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及びその製造方法で得られるポリカーボネートジオールの分子量分布である重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は特に限定されないが、下限は好ましくは1.5であり、より好ましくは1.8である。重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)の上限は好ましくは3.5であり、より好ましくは3.0である。分子量分布が上記範囲を超える場合、このポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンの物性が、低温で硬くなる、伸びが低下する等の傾向があり、分子量分布が上記範囲未満のポリカーボネートジオールを製造しようとすると、オリゴマーを除くなどの高度な精製操作が必要になる場合がある。
前記重量平均分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量、前記数平均分子量はポリスチレン換算の数平均分子量であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPCと略記する場合がある)の測定により求めることができる。
【0041】
<1−7.原料等の使用割合>
本発明のポリカーボネートジオールの製造において、カーボネート化合物の使用量は、特に限定されないが、通常ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対するモル比率で、下限が好ましくは0.35、より好ましくは0.50、更に好ましくは0.60であり、上限は好ましくは1.00、より好ましくは0.98、更に好ましくは0.97である。カーボネート化合物の使用量が上記上限超過では得られるポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加する場合や、分子量が所定の範囲とならない場合があり、前記下限未満では所定の分子量まで重合が進行しない場合がある。
【0042】
<1−8.触媒失活剤>
前述の如く、重合反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートジオールには触媒が残存し、残存する触媒により、ポリカーボネートジオールを加熱した際に分子量上昇や組成変化、色調悪化等が起こったり、ポリウレタン化反応の制御が出来なくなったりする場合がある。この残存する触媒の影響を抑制するために、使用されたエステル交換触媒とほぼ当モルの例えばリン系化合物等を添加し、エステル交換触媒を不活性化することが好ましい。さらには添加後、後述のように加熱処理等により、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。リン系化合物としては、少量で効果が大きいことからリン酸、亜リン酸が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0043】
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記リン系化合物の使用量は、特に限定はされないが、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ当モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.6モル、より好ましくは0.8モル、更に好ましくは1.0モルである。これより少ない量のリン系化合物を使用した場合は、ポリカーボネートジオールを加熱すると、ポリカーボネートジオールの分子量上昇、組成変化、色調悪化等が起こったり、エステル交換触媒の不活性化が十分でなく、得られたポリカーボネートジオールを例えばポリウレタン製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートジオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができなかったりする場合がある。また、この範囲を超えるリン系化合物を使用すると得られたポリカーボネートジオールが着色したり、該ポリカーボネートジオールを原料としてポリウレタンとしたときに、ポリウレタンが加水分解しやすく、さらに、リン系化合物がブリードアウトしたりする可能性がある。
【0044】
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行う事ができるが、加熱処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、特に限定はされないが、上限が好ましくは180℃、より好ましくは150℃、更に好ましくは120℃、特に好ましくは100℃であり、下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃、更に好ましくは70℃である。加熱処理の温度が前記下限より低い温度の場合は、エステル交換触媒の不活性化に時間がかかり効率的でなく、また不活性化の程度も不十分な場合がある。一方、加熱処理温度が180℃を超える温度では、得られたポリカーボネートジオールが着色することがある。
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常0.1〜5時間である。
【0045】
<1−9.残存モノマー類等>
原料として例えばジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸ジエステルを使用した場合、ポリカーボネートジオール製造中にフェノール類が副生する。フェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタンを製造する際の阻害因子となる可能性がある上、フェノール類によって形成されたウレタン結合は、その結合力が弱いために、その後の工程等で熱によって解離してしまい、イソシアネートやフェノール類が再生し、不具合を起こす可能性がある。また、フェノール類は刺激性物質でもあるため、ポリカーボネートジオール中のフェノール類の残存量は、より少ない方が好ましい。具体的にはポリカーボネートジオールに対する重量比として好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは500重量ppm以下、更に好ましくは300重量ppm以下、特に100重量ppm以下であることが好ましい。ポリカーボネートジオール中のフェノール類を低減するためには、ポリカーボネートジオールの重合反応の圧力を絶対圧力として1kPa以下の高真空としたり、ポリカーボネートジオールの重合後に薄膜蒸留等を行ったりすることが有効である。
【0046】
また、ポリカーボネートジオール中には、製造時の原料として使用した炭酸ジエステルが残存することがある。ポリカーボネートジオール中の炭酸ジエステルの残存量は限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、ポリカーボネートジオールに対する重量比として上限が好ましくは5重量%、より好ましくは3重量%、更に好ましくは1重量%である。ポリカーボネートジオールの炭酸ジエステル含有量が多すぎるとポリウレタン化の際の反応を阻害する場合がある。一方、その下限は特に制限はないが、好ましくは0.1重量%、より好ましくは0.01重量%、更に好ましくは0重量%である。
【0047】
また、ポリカーボネートジオールには、製造時に使用したジヒドロキシ化合物が残存する場合がある。ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量は、限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、ポリカーボネートジオールに対する重量比として1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以下であり、更に好ましくは0.05重量%以下である。ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量が多いと、ポリウレタンとした際のソフトセグメント部位の分子長が不足し、所望の物性が得られない場合がある。
【0048】
また、ポリカーボネートジオール中には、製造の際に副生した環状のカーボネート(環状オリゴマー)を含有する場合がある。例えば1,3−プロパンジオールを用いた場合、1,3−ジオキサン−2−オンもしくはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状カーボネートとなったものなどが生成してポリカーボネートジオール中に含まれる場合がある。これらの化合物は、ポリウレタン化反応においては副反応をもたらす可能性があり、また濁りの原因となるため、ポリカーボネートジオールの重合反応の圧力を絶対圧力として1kPa以下の高真空にしたり、ポリカーボネートジオールの合成後に薄膜蒸留等を行ったりして、できる限り除去しておくことが好ましい。ポリカーボネートジオール中に含まれるこれら環状カーボネートの含有量は、限定されないが、ポリカーボネートジオールに対する重量比として好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。
【0049】
[2.ポリウレタン]
上述の本発明のポリカーボネートジオールの製造方法によって得られるポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造することができる。
本発明のポリカーボネートジオールを用いて本発明のポリウレタンを製造する方法は、通常ポリウレタンを製造する公知のポリウレタン化反応条件が用いられる。
【0050】
例えば、本発明のポリカーボネートジオールとポリイソシアネート及び鎖延長剤を常温から200℃の範囲で反応させることにより、本発明のポリウレタンを製造することができる。
また、本発明のポリカーボネートジオールと過剰のポリイソシアネートとをまず反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤を用いて重合度を上げて本発明のポリウレタンを製造する事が出来る。
【0051】
<2−1.ポリイソシアネート>
本発明のポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造するのに使用されるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族又は芳香族の各種公知のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4
−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
これらの中でも得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0053】
<2−2.鎖延長剤>
また、本発明のポリウレタンを製造する際に用いられる鎖延長剤は、後述するイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する場合において、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、通常ポリオール及びポリアミン等を挙げることができる。
【0054】
その具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ヘプタンジオール、1,4−ジメチロールヘキサン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4−ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’−メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’−ジアミノピペラジン等のポリアミン類;及び水等を挙げることができる。
【0055】
これらの鎖延長剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
また、後述する水酸基を有するプレポリマーを製造する場合の鎖延長剤とは、イソシアネート基を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、具体的には<2−1.ポリイソシアネート>で記載したような化合物が挙げられる。
【0056】
<2−3.鎖停止剤>
本発明のポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
これらの鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類、一個のアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルフォホリン等の脂肪族モノアミン類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<2−4.触媒>
本発明のポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応において、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒又は酢酸、リン酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の酸系触媒、トリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジオクチルチンジネオデカネートなどのスズ系の化合物、さらにはチタン系化合物などの有機金属塩などに代表される公知のウレタン重合触媒を用いる事もできる。ウレタン重合触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
<2−5.本発明のポリカーボネートジオール以外のポリオール>
本発明のポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、本発明のポリカーボネートジオールと必要に応じてそれ以外のポリオールを併用してもよい。ここで、本発明のポリカーボネートジオール以外のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、本発明以外のポリカーボネートポリオールが挙げられる。例えば、ポリエーテルポリオールとの併用では、本発明のポリカーボネートジオールの特徴である柔軟性を更に向上させたポリウレタンとすることができる。ここで、本発明のポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールを合わせた重量に対する、本発明のポリカーボネートジオールの重量割合は70%以上が好ましく、90%以上が更に好ましい。本発明のポリカーボネートジオールの重量割合が少ないと、本発明の特徴である耐薬品性、柔軟性、耐熱性、耐候性のバランスが失われる可能性がある。
【0059】
本発明において、ポリウレタンの製造には、上述の本発明のポリカーボネートジオールを変性して使用することも出来る。ポリカーボネートジオールの変性方法としては、ポリカーボネートジオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させてエーテル基を導入する方法や、ポリカーボネートジオールをε−カプロラクトン等の環状ラクトンやアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物並びにそれらのエステル化合物と反応させてエステル基を導入する方法がある。エーテル変性ではエチレンオキシド、プロピレンオキシド等による変性でポリカーボネートジオールの粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。特に、本発
明のポリカーボネートジオールではエチレンオキシドやプロピレンオキシド変性することによって、ポリカーボネートジオールの結晶性が低下し、低温での柔軟性が改善すると共に、エチレンオキシド変性の場合は、エチレンオキシド変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの吸水性や透湿性が増加する為に人工皮革・合成皮革等としての性能が向上することがある。しかし、エチレンオキシドやプロピレンオキシドの付加量が多くなると、変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの機械強度、耐熱性、耐薬品性等の諸物性が低下するので、ポリカーボネートジオールに対する付加量としては5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。また、エステル基を導入する方法では、ε−カプロラクトンによる変性でポリカーボネートジオールの粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。ポリカーボネートジオールに対するε−カプロラクトンの付加量としては5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。ε−カプロラクトンの付加量が50重量%を超えると、変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの耐加水分解性、耐薬品性等が低下する。
【0060】
<2−6.溶剤>
本発明のポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応は溶剤を用いてもよい。
好ましい溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0061】
これらの中で好ましい有機溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシド等である。
また、本発明のポリカーボネートジオール、ポリジイソシアネート、及び前記の鎖延長剤が配合されたポリウレタン組成物から、水分散液のポリウレタンを製造することもできる。
【0062】
<2−7.ポリウレタン製造方法>
上述の反応試剤を用いて本発明のポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用できる。
その例としては、本発明のポリカーボネートジオール、それ以外のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」と称する場合がある)や、まず本発明のポリカーボネートジオール、それ以外のポリオール及びポリイソシアネートを反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、「二段法」と称する場合がある)等がある。
【0063】
二段法は、本発明のポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとを予め1当量以上のポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する部分の両末端イソシアネート中間体を調製する工程を経るものである。このように、プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤と反応させると、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすい場合があり、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離を確実に行う必要がある場合には有用である。
【0064】
<2−8.一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、本発明のポリカーボネートジオール、それ以外のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法である。
一段法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとの総水酸基数と、鎖延長剤の水酸基数とアミノ基数との総計を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。
【0065】
ポリイソシアネートの使用量が多すぎると、未反応のイソシアネート基が副反応を起こし、得られるポリウレタンの粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、柔軟性が損なわれたりする傾向があり、少なすぎると、ポリウレタンの分子量が十分に大きくならず、十分なポリウレタン強度が得られなくなる傾向がある。
また、鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、本発明のポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールの総水酸基数からポリイソシアネートのイソシアネート基数を引いた数を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。鎖延長剤の使用量が多すぎると、得られるポリウレタンが溶媒に溶けにくく加工が困難になる傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンが軟らかすぎて十分な強度や硬度、弾性回復性能や弾性保持性能が得られない場合や、耐熱性が悪くなる場合がある。
【0066】
<2−9.二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、主に以下の方法がある。
(a)予め本発明のポリカーボネートジオール及びそれ以外のポリオールと、過剰のポリイソシアネートとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリカーボネートジオール及びそれ以外のポリオール)の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤を加えることによりポリウレタンを製造する方法。
(b)予めポリイソシアネートと、過剰のポリカーボネートジオール及びそれ以外のポリオールとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリカーボネートジオール及びそれ以外のポリオール)の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤として末端がイソシアネート基のポリイソシアネートを反応させてポリウレタンを製造する方法。
【0067】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法によるポリウレタン製造は以下に記載の(1)〜(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず直接ポリイソシアネートとポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応に使用する。
(2) (1)の方法でプレポリマーを合成し、その後溶媒に溶解し、以降の鎖延長反応に使用する。
(3) 初めから溶媒を使用し、ポリイソシアネートとポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとを反応させ、その後鎖延長反応を行う。
【0068】
(1)の方法の場合には、鎖延長反応にあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を溶解したりするなどの方法により、ポリウレタンを溶
媒と共存する形で得ることが重要である。
二段法(a)の方法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、ポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは1.0当量を超える量、より好ましくは1.2当量、更に好ましくは1.5当量であり、上限が好ましくは10.0当量、より好ましくは5.0当量、更に好ましくは3.0当量の範囲である。
【0069】
このイソシアネート使用量が多すぎると、過剰のイソシアネート基が副反応を起こして所望のポリウレタンの物性まで到達しにくい傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がらず強度や熱安定性が低くなる場合がある。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の数1当量に対して、下限が、好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、更に好ましくは0.8当量であり、上限が好ましくは5.0当量、より好ましくは3.0当量、更に好ましくは2.0当量の範囲である。
【0070】
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
また、二段法(b)の方法における末端が水酸基であるプレポリマーを作成する際のポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、ポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、更に好ましくは0.7当量であり、上限が好ましくは0.99当量、より好ましくは0.98当量、更に好ましくは0.97当量である。
【0071】
このイソシアネート使用量が少なすぎると、続く鎖延長反応で所望の分子量を得るまでの工程が長くなり生産効率が落ちる傾向にあり、多すぎると、粘度が高くなりすぎて得られるポリウレタンの柔軟性が低下したり、取扱いが悪く生産性が劣ったりする場合がある。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに使用したポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合、プレポリマーに使用したイソシアネート基の当量を加えた総当量として、下限が好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量であり、上限が好ましくは1.0当量未満、より好ましくは0.99当量、更に好ましくは0.98当量の範囲である。
【0072】
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
鎖延長反応は通常、0℃〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なり、特に制限はない。温度が低すぎると反応の進行が遅くなったり、原料や重合物の溶解性が低い為に製造時間が長くなることがあり、また高すぎると副反応や得られるポリウレタンの分解が起こることがある。鎖延長反応は、減圧下で脱泡しながら行ってもよい。
【0073】
また、鎖延長反応には必要に応じて、触媒や安定剤等を添加することもできる。
触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。安定剤としては例えば2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネート、N,N′−ジ−2−ナフチル−1,4−フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、鎖延長剤
が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施してもよい。
【0074】
<2−10.水系ポリウレタンエマルション>
本発明のポリカーボネートジオールを用いて、水系ポリウレタンエマルションを製造する事も可能である。
その場合、ポリカーボネートジオールを含むポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物を混合してプレポリマーを形成し、親水性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタンエマルションとする。
【0075】
ここで使用する少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の親水性官能基とは、例えばカルボキシル基やスルホン酸基であって、アルカリ性基で中和可能な基である。また、イソシアネート反応性基とは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウレア結合を形成する基であり、これらが同一分子内に混在していてもかまわない。
【0076】
少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物としては、具体的には、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2−メチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類、例えば、リジン、シスチン、3,5−ジアミノカルボン酸等も挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらを実際に用いる場合には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ性化合物で中和して用いることができる。
【0077】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の使用量は、水に対する分散性能を上げるために、その下限は、本発明のポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとの総重量に対して好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%、更に好ましくは10重量%である。一方、これを多く添加しすぎると本発明のポリカーボネートジオールの特性が維持されなくなってしまうことがあるために、その上限は好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%、更に好ましくは30重量%である。
【0078】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、プレポリマー工程においてメチルエチルケトンやアセトン、あるいはNーメチル−2−ピロリドン等の溶媒の共存下に反応させてもよいし、無溶媒で反応させてもよい。また、溶媒を使用する場合は、水性エマルションを製造した後に蒸留によって溶媒を留去させるのが好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールを原料として、無溶媒で水系ポリウレタンエマルションを製造する際にはポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量の上限は好ましくは5000、より好ましくは4500、更に好ましくは4000である。また、数平均分子量の下限は好ましくは300、より好ましくは500、更に好ましくは800である。水酸基価から求めた数平均分子量が5000を超える、または300より小さくなると、エマルション化が困難となる場合がある。
【0079】
また、水系ポリウレタンエマルションの合成、あるいは保存にあたり、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸アルキルアリール、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステルなどに代表されるアニオン性界面活性剤、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコー
ル又はフェノール類との公知の反応生成物に代表される非イオン性界面活性剤等を併用して、乳化安定性を保持してもよい。
【0080】
また、水系ポリウレタンエマルションとする際に、プレポリマーの有機溶媒溶液に、必要に応じて中和塩化工程なしに、乳化剤の存在下、水を機械的に高せん断下で混合して、エマルションを製造することも出来る。
このようにして製造された水系ポリウレタンエマルションは、様々な用途に使用する事が可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
【0081】
水系ポリウレタンエマルションの具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、水系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。特に本発明のポリカーボネートジオールを用いて製造される水系ポリウレタンエマルションは、ポリカーボネートジオール中に前記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を有していることから、柔軟性がありコーティング剤等として従来のポリカーボネートジオールを使用した水系ポリウレタンエマルションに比べて有効に利用する事が可能である。
【0082】
<2−11.添加剤>
本発明のポリカーボネートジオールを用いて製造した本発明のポリウレタンには、熱安定剤、光安定剤、着色剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着防止剤、難燃剤、老化防止剤、無機フィラー等の各種の添加剤を、本発明のポリウレタンの特性を損なわない範囲で、添加、混合することができる。
【0083】
熱安定剤として使用可能な化合物としては、燐酸、亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルぺンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体、特にヒンダードフェノール化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル系等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等を使用することができる。
【0084】
ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、「Irganox1010」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox1520」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox245」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
リン化合物としては、「PEP−36」、「PEP−24G」、「HP−10」(いずれも商品名:株式会社ADEKA社製)、「Irgafos 168」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
イオウを含む化合物の具体例としては、ジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)などのチオエーテル化合物が挙げられる。
【0085】
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられ、具体的には「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、「SANOL LS−2626」、「SANOL LS−765」(以上、三共株式会社製)等が使用可能である。
紫外線吸収剤の例としては、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0086】
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料などの染料;カーボ
ンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどの無機顔料;及びカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられる。
無機フィラーの例としては、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等が挙げられる。
【0087】
難燃剤の例としては、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素あるいは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
【0088】
これらの添加剤の添加量は、ポリウレタンに対する重量比として、下限が、好ましくは0.01重量%、より好ましくは0.05重量%、更に好ましくは0.1重量%、上限は、好ましくは10重量%、より好ましくは5重量%、更に好ましくは1重量%である。添加剤の添加量が少な過ぎるとその添加効果を十分に得ることができず、多過ぎるとポリウレタン中で析出したり、濁りを発生したりする場合がある。
【0089】
<2−12.ポリウレタンフィルム・ポリウレタン板>
本発明のポリウレタンを使用してフィルムを製造する場合、そのフィルムの厚さは、下限が好ましくは10μm、より好ましくは20μm、更に好ましくは30μm、上限は好ましくは1000μm、より好ましくは500μm、更に好ましくは100μmである。
フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向があり、また、薄過ぎるとピンホールを生じたり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向がある。
【0090】
<2−13.分子量>
本発明のポリウレタンの分子量は、その用途に応じて適宜調整され、特に制限はないが、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として5万〜50万であることが好ましく、10万〜30万であることがより好ましい。Mwが上記下限よりも小さいと十分な強度や硬度が得られない場合があり、上記上限よりも大きいと加工性などハンドリング性を損なう傾向がある。
【0091】
<2−14.耐オレイン酸性>
本発明のポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、オレイン酸に浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、オレイン酸に浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、80%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましく、45%以下が特に好ましく40%以下が最も好ましい。
この重量変化率が上記上限超過では十分な耐オレイン酸性が得られない場合がある。
【0092】
<2−15.耐エタノール性>
本発明のポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、エタノールに浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、エタノールに浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、25%以下が好ましく、23%以下がより好ましく、21%以下が更に好ましく、20%以下が特に好ましく、19%以下が最も好ましい。
この重量変化率が上記上限超過では十分な耐エタノール性が得られない場合がある。
【0093】
<2−16.耐酢酸エチル性>
本発明のポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、酢酸エチルに浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、薬品に浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、250%以下が好ましく、230%以下がより好ましく、200%以下が更に好ましい。
この重量変化率が上記上限超過では、所望の耐薬品性が得られない場合がある。
【0094】
<2−17.引張破断伸度>
本発明のポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度50%で測定する引張破断伸度の下限が好ましくは50%、より好ましくは100%、更に好ましくは150%であり、上限は好ましくは900%、より好ましくは850%、更に好ましくは800%である。引張破断伸度が上記下限未満では加工性などハンドリング性を損なう傾向があり、上記上限を超えると十分な耐薬品性が得られない場合がある。
【0095】
<2−18.100%モジュラス>
本発明のポリウレタンは、本発明のポリカーボネートジオールに対して4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを2当量反応させ、さらにイソホロンジアミンで鎖延長反応を行い二段法でポリウレタンを得た場合、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度50%で測定した100%モジュラスの下限が好ましくは0.1MPa、より好ましくは0.5MPa、更に好ましくは1MPaであり、上限は好ましくは20MPa、より好ましくは10MPa、更に好ましくは6MPaである。100%モジュラスが上記下限未満では耐薬品性が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。更に、特定ポリウレタンの−10℃での100%モジュラスの下限は好ましくは0.5MPa、より好ましくは1.0MPa、更に好ましくは1.5MPa、特に好ましくは2.0MPaである。上限は好ましくは13.0MPa、より好ましくは12.5MPa、更に好ましくは12.0MPa、特に好ましくは11.5MPa、最も好ましくは10.0MPaである。−10℃での100%モジュラスが上記下限未満では耐薬品性が不足する場合がある。−10℃での100%モジュラスが上記上限を超えると低温での柔軟性が不十分であったり、加工性などのハンドリング性を損なったりする場合がある。
【0096】
<2−19.低温特性>
本発明のポリウレタンは、低温特性が良好であるが、本特許での低温特性とは、−10℃等の低温での引張試験における引張破断伸度、ヤング率、100%モジュラスにより評価できる。また、具体的には低温での柔軟性、耐衝撃性、耐屈曲性、耐久性のことである。
【0097】
<2−20.ガラス転移温度>
本発明のポリカーボネートジオールに対して4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを2当量反応させ、さらにイソホロンジアミンで鎖延長反応を行い二段法でポリウレタンを得た場合に、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が13万〜21万の特定ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)の下限は好ましくは−50℃、より好ましくは−45℃、更に好ましくは−40℃であり、上限は好ましくは−20℃、より好ましくは−25℃、更に好ましくは−30℃である。Tgが上記下限未満では耐薬品性が十分でない場合があり、上記上限超過では低温特性が十分でない可能性がある。
【0098】
<2−21.用途>
本発明のポリウレタンは、耐薬品性に優れ、良好な柔軟性、耐熱性、耐候性を有することから、フォーム、エラストマー、弾性繊維、塗料、繊維、粘着剤、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料、活性エネルギー線硬化性重合体組成物等に広く用いることができる。
【0099】
特に、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、接着剤、弾性繊維、医療用材料、床材、塗料、コーティング剤等の用途に、本発明のポリウレタンを用いると、耐薬品性、柔軟性、耐熱性、耐候性の良好なバランスを有するため、人の皮膚に触れたり、コスメティック用薬剤や消毒用のアルコールが使われたりする部分において耐久性が高く、また柔軟性も十分で、かつ物理的な衝撃などにも強いという良好な特性を付与することができる。また、耐熱性が必要とされる自動車用途や、耐候性が必要とされる屋外用途に好適に使用できる。
【0100】
本発明のポリウレタンは、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。その具体的用途として、圧延ロール、製紙ロール、事務機器、プレテンションロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車、運搬車等のソリッドタイヤ、キャスター等、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン、サイクロンライナー等がある。また、OA機器のベルト、紙送りロール、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラー等にも使用できる。
【0101】
本発明のポリウレタンは、また、熱可塑性エラストマーとしての用途にも適用される。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等に使用できる。また、丸ベルト、Vべルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等に用いられる。また、履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルト等に使用できる。さらに自動車部品としては、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等が挙げられる。また、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等に使用できる。
【0102】
本発明のポリウレタンは、溶剤系二液型塗料としての用途にも適用可能であり、楽器、仏壇、家具、化粧合板、スポーツ用品等の木材製品に適用できる。また、タールエポキシウレタンとして自動車補修用にも使用できる。
本発明のポリウレタンは、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料、水系ウレタン塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等に適用できる。
【0103】
本発明のポリウレタンは、また、粘着剤や接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材、構造部材等に適用でき、また、低温用接着剤、ホットメルトの成分としても用いることができる。
本発明のポリウレタンは、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レ
ジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム、ガラス繊維サイジング等に使用可能である。
【0104】
本発明のポリウレタンは、繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工等に使用できる。
本発明のポリウレタンを弾性繊維として使用する場合のその繊維化の方法は、紡糸できる方法であれば特に制限なく実施できる。例えば、一旦ペレット化した後、溶融させ、直接紡糸口金を通して紡糸する溶融紡糸方法が採用できる。本発明のポリウレタンから弾性繊維を溶融紡糸により得る場合、紡糸温度は好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以上235℃以下である。
【0105】
本発明のポリウレタン弾性繊維はそのまま裸糸として使用したり、また、他繊維で被覆して被覆糸として使用したりすることができる。他繊維としては、ポリアミド繊維、ウール、綿、ポリエステル繊維など従来公知の繊維を挙げることができるが、なかでも本発明ではポリエステル繊維が好ましく用いられる。また、本発明のポリウレタン弾性繊維は、染着タイプの分散染料を含有していてもよい。
【0106】
本発明のポリウレタンは、シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC(Precast Concrete)目地、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント、自動車用シーラント等に使用できる。
本発明のポリウレタンは、医療用材料としての使用が可能であり、血液適合材料として、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管、人工弁等、また、使い捨て素材としてカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋、人工腎臓ポッティング材料等に使用できる。
本発明のポリウレタンは、末端を変性させることによりUV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物、光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
【0107】
<2−22.ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー>
又、本発明のポリカーボネートジオールを用いて、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加反応させることによりウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造することができる。その他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等を併用する場合は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリイソシアネートに、更にこれらのその他の原料化合物も付加反応させることにより製造することができる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸のように「(メタ)アクリル」と表示した場合には、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
【0108】
また、その際の各原料化合物の仕込み比は、目的とするウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの組成と実質的に同等、ないしは同一とする。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおける全イソシアネート基の量と水酸基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に当モルである。
【0109】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する際は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオール、並びに必要に応じて用いられるその他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等のイソシアネートと反応する官能基を含む化合物の総使用量に対して、通常10モル%以上、好ましくは15モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下とする。この割合に応じて、得られるウレ
タン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量を制御することができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量は小さくなる傾向となり、割合が少ないと分子量は大きくなる傾向となる。
【0110】
ポリカーボネートジオールとポリオールとの総使用量に対して、ポリカーボネートジオールの使用量を25モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値以上であると、得られる硬化物の硬度及び耐汚染性が良好となる傾向があり好ましい。
【0111】
また、ポリカーボネートジオールとポリオールとの総使用量に対して、ポリカーボネートジオールの使用量は、10質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値以上であると、得られる組成物の粘度が低下し作業性が向上し、また得られる硬化物の機械的強度及び硬度や耐摩耗性が向上する傾向になり好ましい。
【0112】
更に、ポリカーボネートジオールとポリオールとの総使用量に対して、ポリカーボネートジオールの使用量は、25モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値以上であると、得られる硬化物の伸度、耐候性が向上する傾向になり好ましい。
【0113】
更に、鎖延長剤を用いる場合には、ポリカーボネートジオール、ポリオールと鎖延長剤とを合わせた化合物の総使用量に対してポリオールの使用量を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。ポリオール量が前記の下限値以上であると、液安定性が向上する傾向になり好ましい。
【0114】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、粘度の調整を目的に溶剤を使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、反応系内の固形分100質量部に対して300質量部未満で使用可能である。
【0115】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量は、反応系の総量に対して20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。なお、この総含有量の上限は100質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量が20質量%以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。
【0116】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造に際しては付加反応触媒を用いることができる。この付加反応触媒としては、例えばジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジオクトエート等が挙げられる。付加反応触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。付加反応触媒は、これらのうち、ジオクチルスズジラウレートであることが、環境適応性及び触媒活性、保存安定性の観点から好ましい。
【0117】
付加反応触媒は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化
合物の総含有量に対して、上限が通常1000重量ppm、好ましくは500重量ppmであり、下限が通常10重量ppm、好ましくは30重量ppmで用いられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時に、反応系に(メタ)アクリロイル基を含む場合には、重合禁止剤を併用することができる。このような重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
【0118】
重合禁止剤は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常3000ppm、好ましくは1000重量ppmであり、特に好ましくは500重量ppmであり、下限が通常50重量ppm、好ましくは100重量ppmで用いられる。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、反応温度は通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は通常120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。反応温度が120℃以下であると、アロハナート化反応等の副反応が起き・BR>
ノくくなるために好ましい。また、反応系に溶剤を含む場合には、反応温度はその溶剤の沸点以下であることが好ましく、(メタ)アクリレートが入っている場合には(メタ)アクリロイル基の反応防止の観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5〜20時間程度である。
【0119】
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量は500以上が好ましく、特に1000以上であることが好ましく、10000以下が好ましく、特に5000以下、とりわけ3000以下であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記下限以上であると、得られる硬化膜の三次元加工適性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記上限以下であると該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。これは、三次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり三次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
【0120】
<2−23.ポリエステル系エラストマー>
更に、本発明のポリカーボネートジオールは、ポリエステル系エラストマーとして使用することが出来る。ポリエステル系エラストマーとは、主として芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと、主として脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントから構成される共重合体である。本発明のポリカーボネートジオールをソフトセグメントの構成成分として使用すると、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルを用いた場合に比べて、耐熱性、耐水性等の物性が優れる。また、公知のポリカーボネートジオールと比較しても、溶融時の流動性、つまりブロー成形、押出成形に適したメルトフローレートを有し、且つ機械強度その他の物性とのバランスに優れたポリカーボネートエステルエラストマーとなり、繊維、フィルム、シートをはじめとする各種成形材料、例えば弾性糸及びブーツ、ギヤ、チューブ、パッキンなどの成形材料に好適に用いることができる。具体的には耐熱性、耐久性を要求される自動車、家電部品等などのジョイントブーツや、電線被覆材等の用途に有効に適用することが可能で
ある。
【0121】
<2−24.活性エネルギー線硬化性重合体組成物>
以下に、上述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、該組成物の計算網目架橋点間分子量が500〜10,000であることが好ましい。
【0122】
本明細書において、組成物の計算網目架橋点間分子量は、全組成物中の網目構造を形成する活性エネルギー線反応基(以下、「架橋点」と称する場合がある)の間の分子量の平均値を表す。この計算網目架橋点間分子量は、網目構造形成時の網目面積と相関があり、計算網目架橋点間分子量が大きいほど架橋密度が小さくなる。活性エネルギー線硬化による反応では、活性エネルギー線反応基を1個のみ有する化合物(以下、「単官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合には線状高分子になり、一方で活性エネルギー線反応基を2個以上有する化合物(以下、「多官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合に網目構造を形成する。
【0123】
よって、ここで多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基が架橋点であって、計算網目架橋点間分子量の算出は架橋点を有する多官能化合物が中心となり、単官能化合物は多官能化合物が有する架橋点間の分子量を伸長する効果があるものとして扱い、計算網目架橋点間分子量の算出を行う。また、計算網目架橋点間分子量の算出は、全ての活性エネルギー線反応基が同じ反応性を有し、且つ活性エネルギー線照射により全ての活性エネルギー線反応基が反応するものと仮定した上で行う。
【0124】
1種の多官能化合物のみが反応するような多官能化合物単一系組成物では、多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基1個当りの平均分子量の2倍が計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物では(1000/2)×2=1000、分子量300の3官能性化合物では(300/3)×2=200となる。
複数種の多官能化合物が反応するような多官能化合物混合系組成物では、組成物中に含まれる全活性エネルギー線反応基数に対する上記単一系の各々の計算網目架橋点間分子量の平均値が組成物の計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物4モルと分子量300の3官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、組成物中の全活性エネルギー線反応基数は2×4+3×4=20個となり、組成物の計算網目架橋点間分子量は{(1000/2)×8+(300/3)×12}×2/20=520となる。
【0125】
組成物中に単官能化合物を含む場合は、計算上、多官能化合物の活性エネルギー線反応基(つまり架橋点)にそれぞれ当モルずつ、且つ架橋点に単官能化合物が連結して形成された分子鎖の中央に位置するように反応すると仮定すると、1個の架橋点における単官能化合物による分子鎖の伸長分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値の半分となる。ここで、計算網目架橋点間分子量は架橋点1個当り平均分子量の2倍であると考える為、多官能化合物において算出した計算網目架橋点間分子量に対して単官能化合物により伸長された分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値となる。
【0126】
例えば、分子量100の単官能化合物40モルと分子量1,000の2官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、多官能化合物の活性エネルギー線反応基数は2×4=8個となるので、計算網目架橋点間分子量中の単官能化合物による伸長分は100×40/8=500となる。すなわち組成物の計算網目架橋点間分子量は1000+500=1500となる。
上記のことから、分子量Wの単官能性化合物Mモルと、分子量Wのf官能性化合物Mモルと、分子量Wのf官能性化合物Mモルとの混合物では、組成物の計算網目架橋点間分子量は下記式で表せる。
【0127】
【数1】
【0128】
このようにして算出される本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の計算網目架橋点間分子量は、500以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、1,000以上であることが更に好ましく、また10,000以下であることが好ましく、8,000以下であることがより好ましく、6,000以下であることが更に好ましく、4,000以下であることが更に一層好ましく、3,000以下であることが特に好ましい。
【0129】
計算網目架橋点間分子量が10,000以下であると、該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。また、計算網目架橋点間分子量が500以上であると、得られる硬化膜の3次元加工適性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。これは、3次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり3次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
【0130】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、重合開始剤、光増感剤、添加剤、及び溶剤が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線反応性成分の総量に対して40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。なお、この含有量の上限は100質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量が40質量%以上であると、硬化性が良好となり、硬化物とした際の機械的強度が高くなりすぎることなく、3次元加工適性が向上する傾向にあるため好ましい。
【0131】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、伸度及び造膜性の点では多い方が好ましく、また、一方、低粘度化の点では、少ない方が好ましい。このような観点から、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、前記活性エネルギー線反応性成分に加えて他の成分を含む全成分の総量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。なお、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量の上限値は100質量%であり、この含有量はそれ以下であることが好ましい。
【0132】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む前記活性エネルギー線反応性成分の総量の含有量は、組成物としての硬化速度及び表面硬化性に優れ、タックが残らない等の面から、該組成物全量に対して、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。なお、この含有量の上限は100質量%である。
【0133】
前記活性エネルギー線反応性モノマーとしては、公知のいずれの活性エネルギー線反応性モノマーも用いることができる。これらの活性エネルギー線反応性モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの親疎水性や、得られる組成物を硬化物とした際の硬化物の硬度、伸度等の物性を調整する目的等で使用される。活性エネルギー線反応性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0134】
このような活性エネルギー線反応性モノマーとしては、例えばビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、及び(メタ)アクリレート類が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等の単官能(メタ)アクリレート;及び、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(n=3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(n=5〜20)、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロ
ペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエポキシジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;が挙げられる。
【0135】
これらの中で、特に、塗布性を要求される用途では、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリルアミド等の、分子内に環構造を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、また、一方、得られる硬化物の機械的強度が求められる用途では、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0136】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性モノマーの含有量は、組成物の粘度調整及び得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0137】
前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性オリゴマーの含有量は、得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0138】
前記重合開始剤は、主に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射で進行する重合反応の開始効率を向上させる等の目的で用いられる。重合開始剤としては、光によりラジカ
ルを発生する性質を有する化合物である光ラジカル重合開始剤が一般的であり、公知の何れの光ラジカル重合開始剤でも使用可能である。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更に、光ラジカル重合開始剤と光増感剤とを併用してもよい。
【0139】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0140】
これらの中で、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇できる点から、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンがより好ましい。
【0141】
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、ラジカル重合性基と共にエポキシ基等のカチオン重合性基を有する化合物が含まれる場合は、重合開始剤として、上記した光ラジカル重合開始剤と共に光カチオン重合開始剤が含まれていてもよい。光カチオン重合開始剤も、公知の何れのものも使用可能である。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物におけるこれらの重合開始剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が10質量部以下であると、開始剤分解物による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
【0142】
前記光増感剤は、重合開始剤と同じ目的で用いることができる。光増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。光増感剤としては、本発明の効果が得られる範囲で公知の光増感剤のいずれをも使用することができる。このような光増感剤としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、及び4−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
【0143】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記光増感剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であるこ
とが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光増感剤の含有量が10質量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記添加剤は、任意であり、同様の用途に用いられる組成物に添加される種々の材料を添加剤として用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このような添加剤としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、雲母、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、金属酸化物、金属繊維、鉄、鉛、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(フィラー類、炭素材料類を総称して「無機成分」と称することがある);酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)、耐指紋剤、表面親水化剤、帯電防止剤、滑り性付与剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;及び、モノマー又は/及びそのオリゴマー、又は無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類;等が挙げられる。
【0144】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記添加剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が10質量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記溶剤は、例えば本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗膜を形成するためのコーティング方式に応じて、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度の調整を目的に使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、本発明の効果が得られる範囲において公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、イソブタノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、活性エネルギー線硬化性重合体組成物の固形分100質量部に対して200質量部未満で使用可能である。
【0145】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、前述の添加剤等の任意成分を含有させる方法としては、特に限定はなく、従来公知の混合、分散方法等が挙げられる。尚、前記任意成分をより確実に分散させるためには、分散機を用いて分散処理を行うことが好ましい。具体的には、例えば、二本ロール、三本ロール、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、遊星式撹拌機、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等で処理する方法が挙げられる。
【0146】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、該組成物の用途や使用態様等に応じて適宜調節し得るが、取り扱い性、塗工性、成形性、立体造形性等の観点から、E型粘度計(ローター1°34’×R24)における25℃での粘度が、10mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましく、また、一方、100,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましい。活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、例えば本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量や、前記の任意成分の種類や、その配合割合等によって調整することができる。
【0147】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗工方法としては、バーコーター法、アプリケーター法、カーテンフローコーター法、ロールコーター法、スプレー法、グラビアコーター法、コンマコーター法、リバースロールコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、スロットダイコーター法、エアーナイフコーター法、ディップコーター法等
の公知の方法を適用可能であるが、その中でもバーコーター法及びグラビアコーター法が好ましい。
【0148】
<2−25.硬化膜及び積層体>
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、これに活性エネルギー線を照射することにより硬化膜とすることができる。
上記組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等が使用可能である。装置コストや生産性の観点から電子線又は紫外線を利用することが好ましく、光源としては、電子線照射装置、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプ、太陽光等が適している。
【0149】
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線の種類に応じて適宜に選ぶことができ、例えば、電子線照射で硬化する場合には、その照射量は1〜10Mradであることが好ましい。また、紫外線照射の場合は50〜1,000mJ/cmであることが好ましい。硬化時の雰囲気は、空気、窒素やアルゴン等の不活性ガスでもよい。また、フィルムやガラスと金属金型との間の密閉空間で照射してもよい。
【0150】
硬化膜の膜厚は、目的とされる用途に応じて適宜決められるが、下限は好ましくは1μm、更に好ましくは3μm、特に好ましくは5μmである。また、同上限は好ましくは200μm、更に好ましくは100μm、特に好ましくは50μmである。膜厚が1μm以上であると3次元加工後の意匠性や機能性の発現が良好となり、また、一方、200μm以下であると内部硬化性、3次元加工適性が良好であるため好ましい。また、工業上での使用の際には、硬化膜の膜厚の下限は好ましくは1μmであり、上限は好ましくは100μm、更に好ましくは50μm、特に好ましくは20μm、最も好ましくは10μmである。
【0151】
基材上に、上記の硬化膜からなる層を有する積層体を得ることができる。
積層体は、硬化膜からなる層を有していれば特に限定されず、基材及び硬化膜以外の層を基材と硬化膜との間に有していてもよいし、その外側に有していてもよい。また、前記積層体は、基材や硬化膜を複数層有していてもよい。
複数層の硬化膜を有する積層体を得る方法としては、全ての層を未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法、下層を活性エネルギー線にて硬化、あるいは半硬化させた後に上層を塗布し、再度活性エネルギー線で硬化する方法、それぞれの層を離型フィルムやベースフィルムに塗布した後、未硬化あるいは半硬化の状態で層同士を貼り合わせる方法等の公知の方法を適用可能であるが、層間の密着性を高める観点から、未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。未硬化の状態で積層する方法としては、下層を塗布した後に上層を重ねて塗布する逐次塗布や、多重スリットから同時に2層以上の層を重ねて塗布する同時多層塗布等の公知の方法を適用可能であるが、この限りではない。
【0152】
基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂等の種々のプラスチック、又は金属で形成された板等の種々の形状の物品が挙げられる。
硬化膜は、インキ、エタノール等の一般家庭汚染物に対する耐汚染性及び硬度に優れる膜とすることが可能であり、硬化膜を各種基材への被膜として用いた積層体は、意匠性及び表面保護性に優れたものとすることができる。
【0153】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、計算網目架橋点間分子量を考慮すれば、3次元加工時の変形に追従可能な柔軟性、破断伸度、機械的強度、耐汚染性、及び硬度を同時に兼ね備える硬化膜を与えることができる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、1層塗布により簡便に薄膜状の樹脂シートを製造することが可能となることが期待される。
【0154】
硬化膜の破断伸度は、硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM−III−100)を用いて、温度23℃、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を行って測定した値が、50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが特に好ましい。
硬化膜及び積層体は、塗装代替用フィルムとして用いることができ、例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電等の各種部材等に有効に適用することが可能である。
【実施例】
【0155】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
以下において、各物性値の評価方法は下記の通りである。
【0156】
[評価方法:ジヒドロキシ化合物]
<アルデヒド体含有量の定量>
ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H−NMR(日本電子株式会社製AL−400)を測定し、各成分のシグナル位置より、アルデヒド基を同定し、積分値よりアルデヒド体含有量を算出した。アルデヒド体含有量はアルデヒド体の重量として計算した。サンプル全体の重量に対するアルデヒド体含有量の下限値は0.005重量%である。
【0157】
[評価方法:ポリカーボネートジオール]
<数平均分子量、フェノキシ基末端量、フェノール含有量、アルデヒド体含有量の定量>
ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H−NMR(日本電子株式会社製AL−400)を測定し、各成分のシグナル位置より、フェノキシ基、フェノール、アルデヒド基を同定し、積分値より各々の含有量と数平均分子量を算出した。その際の検出限界は、サンプル全体の重量に対するフェノール含有量として100重量ppmである。またフェノキシ基の割合は、フェノキシ基の1プロトン分の積分値と末端全体の1プロトン分の積分値の比から求めており、フェノキシ基の検出限界は末端全体に対して0.05%である。またアルデヒド体含有量はアルデヒド体の重量として計算した。サンプル全体の重量に対するアルデヒド体含有量の下限値は0.005重量%である。
【0158】
<APHA値の測定>
JIS K0071−1(1998)に準拠して、ポリカーボネートジオールを比色管に入れた標準液と比較してAPHA値を測定した。試薬は色度標準液1000度(1mgPt/mL)(キシダ化学株式会社製)を使用した。
【0159】
[評価方法:ポリウレタン]
<イソシアネート基濃度測定>
ジ−n−ブチルアミン/トルエン(重量比:2/25)混合溶液20mLをアセトン90mLで希釈した後に0.5規定の塩酸水溶液で滴定を行い、中和に要する塩酸水溶液量を測定し、ブランク値とした。その後、反応溶液を1〜2g抜出し、ジ−n−ブチルアミン/トルエンの混合溶液20mLを加えて室温で30分間撹拌した後、ブランク測定と同様にアセトン90mLで希釈し、0.5規定の塩酸水溶液で滴定して中和に要する塩酸水
溶液量を測定し、残存するアミンの量を定量した。中和に要する塩酸水溶液の容量から下記の式でイソシアネート基の濃度を求めた。
イソシアネート基濃度(重量%)=A×42.02/D
A:本測定に用いた試料に含有するイソシアネート基(mol)
A=(B−C)x0.5/1000xf
B:ブランク測定に要した0.5規定の塩酸水溶液の量(mL)
C:本測定に要した0.5規定の塩酸水溶液の量(mL)
f:塩酸水溶液の力価
D:本測定に用いた試料(g)
【0160】
<溶液粘度測定>
VISCOMETER TV−22(東機産業株式会社製)に3°×R14のローターを設置し、ポリウレタンをジメチルホルムアミドに溶解した溶液(濃度:30重量%)を用いて、25℃でポリウレタン溶液の溶液粘度を測定した。
【0161】
<室温引張試験方法>
JIS K6301(2010)に準じ、幅10mm、長さ100mm、厚み約50μmの短冊状としたポリウレタン試験片を、引張試験機〔オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III−100」〕を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃(相対湿度55%)で引張試験を実施し、試験片が100%及び300%伸長した時点での応力を測定した。
【0162】
<分子量測定>
ポリウレタンの分子量は、ポリウレタンの濃度が0.14重量%になるようにジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」(カラム:TskgelGMH−XL・2本)〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0163】
<ポリウレタン耐オレイン酸性評価方法>
ポリウレタン溶液を9.5milのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、60℃で1時間、続いて100℃で0.5時間乾燥させた。さらに100℃の真空状態で0.5時間、80℃で15時間乾燥させた後、23℃、55%RHの恒温恒湿下で12時間以上静置し、得られたフィルムから3cm×3cmの試験片を切り出し、試験溶剤50mlを入れた容量250mlのガラス瓶に投入して、80℃の窒素雰囲気下の恒温槽にて16時間静置した。試験後、試験片の表裏を紙製ワイパーで軽く拭いた後、重量測定を行い試験前からの重量増加比率を算出した。重量変化率が0%に近いほうが、耐オレイン酸性が良好であることを示す。
【0164】
<ポリウレタン耐エタノール性評価方法>
上述の<ポリウレタン耐オレイン酸性評価方法>で示したのと同様の方法でウレタンフィルムを作成した後、3cm×3cmに切り出したウレタンフィルムの試験片を切り出した。精密天秤で試験片の重量を測定した後、試験溶剤50mlを入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して約23℃の室温にて1時間浸漬した。試験後、試験片を取り出して紙製ワイパーで軽く拭いた後、重量測定を行い試験前からの重量増加比率を算出した。重量変化率が0%に近いほうが、耐エタノール性が良好であることを示す。
【0165】
<ポリウレタン耐酢酸エチル性評価方法>
上述の<ポリウレタン耐オレイン酸性評価方法>と同様の方法でウレタンフィルムを作成した後、3cm×3cmにウレタンフィルムの試験片を切り出した。精密天秤で試験片
の重量を測定した後、試験溶媒として酢酸エチル50mlを入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して約23℃の室温にて20分間浸漬した。試験後、試験片を取り出して紙製ワイパーで軽く拭いた後、精密天秤で重量測定を行い、試験前からの重量変化率(増加率)を算出した。重量変化率が0%に近いほうが、耐酢酸エチル性が良好であることを示す。
【0166】
<使用原料>
本実施例のポリカーボネートジオール及びポリウレタンの製造に使用した原料は以下の通りである。
1,4−ブタンジオール(以下1,4BDと略記することがある):三菱化学株式会社製
1,10−デカンジオール(以下、1,10DDと略記することがある):豊国製油株式会社製
ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある):三菱化学株式会社製
酢酸マグネシウム四水和物:和光純薬工業株式会社製
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下「H12MDI」と略記することがある):東京化成工業株式会社製
トリイソオクチルフォスファイト(以下「TiOP」と略記することがある):東京化成工業株式会社製
ネオスタンU−830:日東化成株式会社製
脱水トルエン:和光純薬工業株式会社製
脱水N,N−ジメチルホルムアミド(以下「脱水DMF」と略記することがある):和光純薬工業株式会社製
イソホロンジアミン(以下「IPDA」と略記することがある):東京化成工業株式会社製
モルフォリン:東京化成工業株式会社製
【0167】
[実施例1]
<ポリカーボネートジオールの製造と評価>
撹拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、原料として、表1に記載の量の1,4BD、アルデヒド体含有量が0.05重量%である1,10DD、DPC、酢酸マグネシウム4水和物水溶液(濃度:8.4g/L)を入れ、窒素ガス置換した。撹拌下、内温を160℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけて圧力を24kPaまで下げた後、フェノールを系外へ除去しながら90分間エステル交換反応によりポリカーボネートジオール(PCD)を製造した。次いで、圧力を9.3kPaまで90分間かけて下げ、さらに0.7kPaまで30分間かけて下げて反応を続けた。その後、170℃まで内温を上げてフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら120分間エステル交換反応させて、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
【0168】
[実施例2]
<ポリカーボネートジオールの製造と評価>
実施例1において、原料として、1,10DDを5Lガラス製セパラブルフラスコに入れる前に、1,10DDを空気中で160℃にて加熱し、1,10DDの一部を1−ヒドロキシ−10−デカナールに酸化させた後にポリカーボネートジオールの原料としてセパラブルフラスコに入れた以外は全て実施例1と同様な方法でポリカーボネートジオールを合成した。
1,10DD中のアルデヒド体(1−ヒドロキシ−10−デカナールを含む)の含有量、得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
【0169】
[実施例3]
<ポリカーボネートジオールの製造と評価>
実施例1において、原料として、1,10DDを5Lガラス製セパラブルフラスコに入れる前に、1,10DDを空気でバブリングしながら120℃にて加熱し、1,10DDの一部を1−ヒドロキシ−10−デカナールに酸化させた後にポリカーボネートジオールの原料としてセパラブルフラスコに入れた以外は全て実施例1と同様な方法でポリカーボネートジオールを合成した。
1,10DD中のアルデヒド体(1−ヒドロキシー10−デカナールを含む)の含有量、得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
【0170】
[実施例4]
<ポリカーボネートジオールの製造と評価>
実施例1において、原料として、1,10DDを5Lガラス製セパラブルフラスコに入れる前に、1,10DDを空気でバブリングしながら140℃にて加熱し、1,10DDの一部を1−ヒドロキシ−10−デカナールに酸化させた後にポリカーボネートジオールの原料としてセパラブルフラスコに入れた以外は全て実施例1と同様な方法でポリカーボネートジオールを合成した。
1,10DD中のアルデヒド体(1−ヒドロキシー10−デカナールを含む)の含有量、得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
【0171】
[実施例5]
<ポリカーボネートジオールの製造と評価>
実施例1において、原料として、1,10DDを5Lガラス製セパラブルフラスコに入れる前に、1,10DDを空気でバブリングしながら140℃にて加熱し、1,10DDの一部を1−ヒドロキシ−10−デカナールに酸化させた後にポリカーボネートジオールの原料としてセパラブルフラスコに入れた以外は全て実施例1と同様な方法でポリカーボネートジオールを合成した。
1,10DD中のアルデヒド体(1−ヒドロキシ−10−デカナールを含む)の含有量、得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
【0172】
[比較例1]
<ポリカーボネートジオールの製造と評価>
実施例1において、原料として、1,10DDを5Lガラス製セパラブルフラスコに入れる前に、1,10DDを空気でバブリングしながら160℃で加熱し、1,10DDの一部を1−ヒドロキシ−10−デカナールに酸化させた後にポリカーボネートジオールの原料としてセパラブルフラスコに入れた以外は全て実施例1と同様な方法でポリカーボネートジオールを合成した。
1,10DD中のアルデヒド体(1−ヒドロキシー10−デカナール含む)含有量、得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
【0173】
[比較例2]
<ポリカーボネートジオールの製造と評価>
実施例1において、原料として、1,10DDを5Lガラス製セパラブルフラスコに入れる前に、1,10DDを空気でバブリングしながら160℃で加熱し、1,10DDの一部を1−ヒドロキシ−10−デカナールに酸化させた後にポリカーボネートジオールの原料としてセパラブルフラスコに入れた以外は全て実施例1と同
様な方法でポリカーボネートジオールを合成した。
1,10DD中のアルデヒド体(1−ヒドロキシ−10−デカナール含む)含有量、得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
表1によれば、ポリカーボネートジオールを製造する際の原料の1,10−デカンジオール中のアルデヒド体の含有量が0.01〜1.0重量%である実施例1〜5に対して、アルデヒド体の含有量が1.0重量%を超える1.10−デカンジオールで製造する比較
例1、2は、得られるPCDの色調が悪いことが表1のAPHAの値からわかる。また、実施例1、2に比べ比較例1のポリカーボネートジオールのフェノール含有量が多く残留していることから、実施例1、2は比較例1に対してポリカーボネートジオールを製造する際の重合の反応性が高いことがわかる。
【0176】
<ポリウレタンの製造と評価>
実施例1、3、4、5及び比較例2で得られたポリカーボネートジオールに含まれるフェノールを除去するため、まず20g/分の流量で薄膜蒸留装置に送液し、薄膜蒸留(温度:180〜190℃、圧力:40〜67Pa)を行った。薄膜蒸留装置としては、直径50mm、高さ200mm、面積0.0314mの内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS−300特型を使用した。
上述の方法で薄膜蒸留を行った実施例1、3、4、5のポリカーボネートジオールを用いて、以下の操作で特定ポリウレタンを製造した。
【0177】
(プレポリマー化反応)
熱電対と冷却管を設置したセパラブルフラスコに、あらかじめ80℃に加温した実施例1に記載のポリカーボネートジオール(薄膜蒸留済み)96.5gを入れ、60℃のオイルバスにそのフラスコを浸した後、H12MDI17.1g及び、反応抑制剤としてTiOP0.3gを添加し、フラスコ内を窒素雰囲気下で60rpmで撹拌しながら1時間程度で80℃に昇温した。80℃まで昇温した後、ウレタン化触媒としてネオスタンU−830を7.4mg(ポリカーボネートジオールとイソシアネートの合計重量に対し46.6重量ppm)添加し、発熱がおさまってからオイルバスを100℃まで昇温し、さらに2時間程度撹拌した。イソシアネート基の濃度を分析し、イソシアネート基が理論量消費されたことを確認した。
【0178】
(鎖延長反応)
得られたプレポリマー107.6gを脱水トルエン11.5gで希釈した。続いて脱水DMF248.4gを加え、55℃のオイルバスにフラスコを浸漬して約200rpmで撹拌しながらプレポリマーを溶解した。プレポリマー溶液のイソシアネート基の濃度を分析後、フラスコを35℃に設定したオイルバスに浸漬し、150rpmで撹拌しながら、残存イソシアネートより算出した必要量のIPDA4.3gを分割添加した。約1時間撹拌後、鎖停止剤としてモルフォリン0.4gを添加し、さらに1時間撹拌して粘度156Pa・s、重量平均分子量18万のポリウレタン溶液を得た。このポリウレタンの性状及び物性の評価結果を表2に示す。
【0179】
薄膜蒸留済みの実施例3、4、5のポリカーボネートジオールを用いてのポリウレタンの製造は、使用するポリカーボネートジオールを変え、各原料の仕込み量をそれぞれ表2の記載の仕込み量に変更したこと以外は、すべて上述のポリウレタン製造方法と同様の条件と方法で反応を行い、ポリウレタンを得た。このポリウレタンの性状及び物性を表2に示す。
【0180】
(比較例2のプレポリマー化反応)
熱電対と冷却管を設置したセパラブルフラスコに、あらかじめ80℃に加温した比較例2に記載のポリカーボネートジオール(薄膜蒸留済み)90.3gを入れ、60℃のオイルバスにそのフラスコを浸した後、H12MDI16.0g及び、反応抑制剤としてTiOP0.3gを添加し、フラスコ内を窒素雰囲気下で60rpmで撹拌しながら1時間程度で80℃に昇温した。80℃まで昇温した後、ウレタン化触媒としてネオスタンU−830を8.0mg(ポリカーボネートジオールとイソシアネートの合計重量に対し46.6重量ppm)添加した。触媒添加後、数分でゲル化が進行し、60rpmでの撹拌が出来なくなったため反応を中止した。
【0181】
【表2】
【0182】
表2によれば、アルデヒド体の含有量が0.01〜1.0重量%の1,10−デカンジオールを用いて製造したPCDではウレタン化が問題なく進行し、得られたポリウレタンの物性もアルデヒド体の含有量によらず、ほぼ同等であった。それに対し、アルデヒド体の含有量が1.0重量%を超える1.10−デカンジオールを用いて製造したPCDは、ウレタン化の際にゲル化を引き起こしており、ウレタン原料として用いられないことが分かる。