(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011711
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】車両室内構造
(51)【国際特許分類】
B60R 21/12 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
B60R21/12
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-501297(P2015-501297)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2013084216
(87)【国際公開番号】WO2014129074
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-29922(P2013-29922)
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】望月 悠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 渉
(72)【発明者】
【氏名】向山 高志
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3150255(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3109663(JP,U)
【文献】
特開2011−126454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配置された運転者用座席と、
車室内における前記運転者用座席の車両後方側に配置された乗員用座席と、
前記運転者用座席と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設された仕切り板と、
を備え、
前記仕切り板は、車両前方側へ膨出する膨出部を有することを特徴とする車両室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タクシー等の車両において、防犯を目的として運転者用座席と該運転者用座席の後側の乗員用座席との間に、車幅方向に沿って仕切り板を設ける技術が知られている(特許文献1参照)。この仕切り板としては、例えば透明なポリカーボネイトが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−46104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のポリカーボネイト製の仕切り板は、その表面に入射した光の一部を反射する作用を有する。このため、先行車両のテールランプからの光が前記仕切り板の表面で前方に反射して車室内のルームミラーに映り、運転者が煩わしさを感じるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、仕切り板の表面で反射した光がルームミラーに映り込むことを抑制する車両室内構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、運転者用座席の後側に、車幅方向に沿って仕切り板を配設し、該仕切り板に、車両前方側へ膨出する膨出部を設けた車室内構造である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態による仕切り手段を車両後方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、運転者がルームミラーで視認できる範囲を示す概略的な側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態による仕切り板を拡大した断面図であり、ハッチングを省略している。
【
図5】
図5は、前方からの入射光と該入射光が仕切り板の膨出部で前方に向けて反射する反射光とを示す概略的な側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態による仕切り板を拡大した断面図であり、ハッチングを省略している。
【
図7】
図7は、前方からの入射光と該入射光が仕切り板の傾斜部で前方に向けて反射する反射光とを示す概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る車両室内構造を図面と共に詳述する。なお、図面において、FRは車両前方側、RRは車両後方側、UPRは車両上方側、LWRは車両下方側を示すものとする。また、以下の実施形態においては、例えば乗客を後部座席に乗せるタクシー等の車両に適用される場合を説明するが、当該車両に限定されるものではない。
【0010】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0011】
図1に示すように、車室内の前部には、右側に運転者用座席1が配設され、該運転者用座席1の左側には助手席3が配設されている。運転者用座席1および助手席3の車両後方側には、乗員用座席4(
図3,5参照)が配設されている。運転者用座席1と乗員用座席4との間には、隔壁部材5と仕切り板7とからなる仕切り手段9が車幅方向に沿って配設されている。仕切り手段9で運転者用座席1および助手席3と後部の乗員用座席4とが分離されることによって、タクシー等の車両における防犯機能が発揮される。
【0012】
具体的に説明すると、車幅方向の左右側端部には、左右一対のセンターピラー11がそれぞれ上下方向に沿って延在しており、これらのセンターピラー同士11,11を連結するように隔壁部材5が車幅方向に沿って延在している。即ち、隔壁部材5の左右両端には、車幅方向外側に突出するフランジ部13が形成されており、該フランジ部13がセンターピラー11に結合されている。なお、隔壁部材5の右端部の後側(乗員用座席4側)には、料金受け部15が設けられ、該料金受け部15を介して運転者と乗員との間で料金やお釣りの受け渡しが行われる。
【0013】
また、隔壁部材5の上側には、透明なポリカーボネイト製の仕切り板7が車幅方向に沿って配設されている。
図2に示すように、仕切り板7は、下端部7aが隔壁部材5の上端に結合されており、上端部7bが天井側内装材17に結合されている。また、仕切り板7の車幅方向中央部の下部には、正面視が略矩形状の開閉窓19が設けられている。この開閉窓19は、仕切り板7に形成された開口部21を開閉可能に構成されており、開閉窓19の下端部を回動軸として車両前方側から上方側までの約90°の角度範囲を回動可能範囲としている。開閉窓19を開くことで、開口部21を介して運転者と乗員との間で地図等の小物の受け渡しを行うことができる。なお、隔壁部材5の下側には、フロアパネル30が配設されている。
【0014】
図3に示すように、フロントウィンドウガラス23は、インストルメントパネル25の前端近傍から後方に向けて斜め上方に延びており、上端部23aがルーフ27の前端に支持されている。また、ルーフ27の前端における車室内には、ルームミラー29が配設されている。従って、運転者用座席1に着座した運転者Pは、二点鎖線で示すように、透明な仕切り板7およびバックウィンドウガラス31を通して車両後方の様子を視認することができる。
【0015】
図4に示すように、仕切り板7は、全体に亘って同等の厚さに形成されており、下側に配置された本体部33と、該本体部33の上側に配置されて車両前方に向けて円弧状に屈曲した屈曲部35と、該屈曲部35から車両前方に向けて延在する延在部37と、から側面視が逆L字状に一体に形成されている。
【0016】
本体部33は、車両前方に向けて膨出する膨出部39に形成されている。具体的には、膨出部39における前面41の上端縁41aと下端縁41bとを一点鎖線で示す直線L1で結んだ場合に、膨出部39の前面41の上下方向中央部41cが、直線L1よりも車両前方側に配置される。即ち、膨出部39の前面41においては、上端縁41aおよび下端縁41bよりも上下方向中央部41cが車両前方側に配置されている。このように、膨出部39の前面41は、上下方向中央部41cに近づくに従って車両前方側に行くようになだらかに湾曲している。また、膨出部39の前面41の曲率中心は、前面41の全域を通じて前面41よりも車両後方に位置している。
【0017】
従って、
図5に示すように、車両前方からフロントウィンドウガラス23を通して入ってくる入射光In1(例えば、先行車両のテールランプの光)が仕切り板7の膨出部39に当たって前方に反射する。ここで、この反射光Re1は、膨出部39によって上下方向に広がるように拡散するため、反射光Re1のうちルームミラー29に映り込む光量が低減する。
【0018】
なお、本実施形態では、膨出部39の前面41の上端縁41aの高さは、運転者用座席1に着座した運転者Pの頭頂部の高さと略同じ高さに設定されている。また、膨出部39の前面41の上端縁41aおよび下端縁41bは、ルームミラー29に映り込む反射光Re1が確実に拡散したものとなるように、運転者用座席1に着座した運転者Pがルームミラー29を介して視認できる範囲の外側に配置することが好ましい。
【0019】
また、本実施形態による膨出部39は、上下方向に沿った縦断面において、車両前方に膨出する形状を説明したが、車幅方向に沿った断面において車両前方に膨出する形状としても良い。即ち、車幅方向中央部が、車幅方向両端部よりも車両前方側に突出して配置された膨出部とし、膨出部によって左右方向に広がるように拡散するように構成しても良い。この場合においても、膨出部の車幅方向両端縁は、ルームミラー29に映り込む反射光Re1が確実に拡散したものとなるように、運転者用座席1に着座した運転者Pがルームミラー29を介して視認できる範囲の外側に配置することが好ましい。
【0020】
以下に、第1実施形態による作用効果を説明する。
【0021】
(1)本実施形態による車両室内構造は、車室内に配置された運転者用座席1と該運転者用座席1の車両後方側に配置された乗員用座席4との間に、車幅方向に沿って仕切り板7を配設した車両室内構造である。仕切り板7は、車両前方側へ膨出する膨出部39を有する。
【0022】
従って、車両前方から入射される入射光In1が仕切り板7の膨出部39で反射し、この反射光Re1が車両前方に向かうときに反射光Re1が上下方向に拡散する。従って、膨出部39で反射する反射光Re1のうちルームミラー29に映り込む光量が低減するため、運転者Pの煩わしさ感を抑制することができる。
【0023】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。ただし、第1実施形態と同一構造には、同一符号を付けて説明を省略する。
【0024】
図6に示すように、本実施形態による仕切り板47は、第1実施形態と同様に、全体に亘って同等の厚さに形成されており、下側に配置された本体部33と、該本体部33の上側に配置されて車両前方に向けて円弧状に屈曲した屈曲部35と、該屈曲部35から車両前方に向けて延在する延在部37と、から側面視が逆L字状に一体に形成されている。
【0025】
本体部33は、車両上下方向に対して、下方へ行くにつれて車両前方側へ行くように傾斜する傾斜部49を有する。具体的には、傾斜部49における前面51の上端縁51aから下方に延在する鉛直線L2を引いた場合に、傾斜部49の前面51が、鉛直線L2に対して所定角度θだけ車両前方側に向けて傾斜している。即ち、傾斜部49の前面51においては、上端縁51aよりも下端縁51bの方が車両前方側に配置されている。
【0026】
従って、
図7に示すように、車両前方からフロントウィンドウガラス23を通して入ってくる入射光In2(例えば、先行車両のテールランプの光)のうち、仕切り板47の傾斜部49に当たる範囲の入射光In2は、側面視で後方に行くに従ってやや上方に向かう。そして、仕切り板47の傾斜部49に当たる範囲の入射光In2は、傾斜部49において前方に向けて反射する。ここで、当該反射光Re2は、傾斜部49によって、前方に行くに従って上方に傾斜するため、傾斜部49からの反射光Re2がルームミラー29よりも上方へ外れる可能性が高くなる。
【0027】
なお、傾斜部49の前面51の下端縁51bは、フロントウィンドウガラス23を通して入ってくる入射光In2が当たる範囲よりも下方に配置することが好ましい。また、傾斜部49の前面51の上端縁51aは、運転者用座席1に着座した運転者Pがルームミラー29を介して視認できる範囲の外側に配置するとよい。角度θの大きさは、特に限定されないが、フロントウィンドウガラス23を通して入射光In2が水平に入ってきた場合に、当該入射光In2が当たる範囲の下端部から反射した反射光Re2がルームミラー29よりも上方へ外れるように設定することが好ましい。このようにすることで、反射光Re2がルームミラー29よりも上方へ外れる可能性をより高くすることができる。
【0028】
以下に、第2実施形態による作用効果を説明する。
【0029】
(1)本実施形態による車両室内構造は、車室内に配置された運転者用座席1と該運転者用座席1の車両後方側に配置された乗員用座席4との間に、車幅方向に沿って仕切り板47を配設した車両室内構造である。仕切り板47は、車両上下方向に対して、下方へ行くにつれて車両前方側へ行くように傾斜する傾斜部49を有する。
【0030】
このように、仕切り板47が傾斜部49を有するため、傾斜部49からの反射光Re2がルームミラー29よりも上方へ外れる可能性が高くなる。仮に、ルームミラー29へ入射しても、運転者Pの目の高さ位置よりも上方へ外れる可能性が高くなる。以上より、運転者Pの煩わしさ感を抑制することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は、それらの実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0032】
本出願は、2013年2月19日に出願された日本国特許願第2013−029922号に基づく優先権を主張しており、これらの出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の第1の態様によれば、車両前方から入射される光が仕切り板の膨出部で反射し、この反射光が車両前方に向かうときに反射光が上下方向および左右方向の少なくともいずれかの方向に拡散する。従って、膨出部で反射する反射光のうちルームミラーに映り込む光量が低減するため、運転者の煩わしさ感を抑制することができる。
【0034】
また、本発明の第2の態様によれば、仕切り板が傾斜部を有するため、傾斜部からの反射光がルームミラーよりも上方へ外れる可能性が高くなる。仮に、ルームミラーへ入射しても、運転者の目の高さ位置よりも上方へ外れる可能性が高くなる。以上より、運転者の煩わしさ感を抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 運転者用座席
4 乗員用座席
7 仕切り板
39 膨出部
47 仕切り板
49 傾斜部