特許第6011716号(P6011716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6011716-車両の発電制御装置および発電制御方法 図000002
  • 特許6011716-車両の発電制御装置および発電制御方法 図000003
  • 特許6011716-車両の発電制御装置および発電制御方法 図000004
  • 特許6011716-車両の発電制御装置および発電制御方法 図000005
  • 特許6011716-車両の発電制御装置および発電制御方法 図000006
  • 特許6011716-車両の発電制御装置および発電制御方法 図000007
  • 特許6011716-車両の発電制御装置および発電制御方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011716
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】車両の発電制御装置および発電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/14 20060101AFI20161006BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20161006BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20161006BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H02J7/14 M
   H02J7/00 303A
   H02P9/04 M
   H01M10/48 P
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-511158(P2015-511158)
(86)(22)【出願日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2014055780
(87)【国際公開番号】WO2014167924
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-84167(P2013-84167)
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100148231
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 謙治
(72)【発明者】
【氏名】穂積 麻巳
【審査官】 古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−221788(JP,A)
【文献】 特開2010−035327(JP,A)
【文献】 特開2007−015477(JP,A)
【文献】 特開2006−040689(JP,A)
【文献】 特開2003−087991(JP,A)
【文献】 特開2012−244648(JP,A)
【文献】 特開平08−140205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
B60R 16/00−17/02
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機の発電電力により充電されるバッテリと、前記バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、を備えた車両の発電制御装置であって、
前記電流検出手段により検出した前記バッテリの充電電流が充電完了判定値以下になると、前記バッテリの充電量が目標充電量に到達したと判定する充電完了判定手段と、
充電開始前における前記バッテリの放電電流が小さい時間が長いほど、前記充電完了判定値を小さく設定する判定値設定手段と、
を備えた車両の発電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電制御装置であって、
前記バッテリの電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記判定値設定手段は、前記電圧検出手段により検出したエンジン始動時の前記バッテリの最低電圧が低いほど、前記放電電流が小さい時間が長いと判定する車両の発電制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発電制御装置であって、
イグニッションスイッチをOFFにしてからONにするまでの時間を計測する時間計測手段を備え、
前記判定値設定手段は、前記時間計測手段により計測した前記イグニッションスイッチがOFFの時間が長いほど、前記放電電流が小さい時間が長いと判定する車両の発電制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の発電制御装置であって、
前記充電完了判定手段が前記バッテリの充電量が前記目標充電量に到達したと判定した後の前記バッテリの充電量を演算する充電量演算手段と、
演算した前記充電量が放電許容充電量より大きい場合に、前記バッテリの放電を許容する放電許容手段と、
充電開始前における前記バッテリの放電電流が小さい時間が長いほど、前記放電許容充電量を大きく設定する許容量設定手段と、
を備えた車両の発電制御装置。
【請求項5】
エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機の発電電力により充電されるバッテリと、前記バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、を備えた車両の発電制御方法であって、
前記電流検出手段により検出した前記バッテリの充電電流が充電完了判定値以下になると、前記バッテリの充電量が目標充電量に到達したと判定し、
充電開始前における前記バッテリの放電電流が小さい時間が長いほど、前記充電完了判定値を小さく設定する車両の発電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の発電制御装置および発電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2005−80396Aには、発電電圧を変更可能な発電機を備えた車両において、充電時にバッテリに流入する電流に基づいてバッテリの充電量を推定し、エンジン始動後にバッテリの充電量が目標充電量になるまでは高電圧で充電を行う発電制御装置が開示されている。
【0003】
バッテリの充電量と充電電流との関係は、バッテリの状態により変動するので、上記装置では、バッテリの電圧及び温度に基づいて、目標充電量に到達したと判定する電流値を補正し、バッテリ充電量の推定精度の向上を図っている。
【発明の概要】
【0004】
バッテリの充電量と充電電流との関係は、充電開始前のバッテリの放電状態によっても変動する。例えば、放電電流が小さい状態が長時間続くと、バッテリの充電性能が低下し、充電電流が同じでも充電量が少なくなる。
【0005】
このような場合には、充電開始前のバッテリの放電状態に基づいて目標充電量に到達したと判定する電流値を補正しなければ、バッテリ充電量が少ないにもかかわらず目標充電量に到達したと誤判定し、バッテリが充電不足になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、バッテリ充電量の推定精度を向上し、バッテリが充電不足になることを防止することを目的とする。
【0007】
本発明のある態様によれば、エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機の発電電力により充電されるバッテリと、前記バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、を備えた車両の発電制御装置が提供される。
【0008】
発電制御装置は、前記電流検出手段により検出した前記バッテリの充電電流が充電完了判定値以下になると、前記バッテリの充電量が目標充電量に到達したと判定する。
【0009】
また、充電開始前における前記バッテリの放電電流が小さい時間が長いほど、前記充電完了判定値を小さく設定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る発電制御装置を適用する車両の、エンジン及び補機を示す概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係る発電制御装置の、バッテリ充電完了までの処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態に係る発電制御装置の、可変発電制御の処理手順を示すフローチャートである。
図4a図4aは、充電性能が低下していないバッテリにおける、充電量90%のときの充電電流を示す特性マップである。
図4b図4bは、充電性能が低下したバッテリにおける、充電量90%のときの充電電流を示す特性マップである。
図5図5は、第1実施形態に係る発電制御装置を適用する車両の、バッテリの状態を示すタイムチャートである。
図6図6は、第2実施形態に係る発電制御装置の、バッテリ充電完了までの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、添付図面を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る発電制御装置を適用する車両の、エンジン及び補機を示す概略構成図である。
【0013】
車両1は、エンジン2と、オルタネータ3と、バッテリ4と、車両コントローラ5と、を備える。
【0014】
エンジン2は、ガソリン、ディーゼル等を燃料とする内燃機関であり、車両コントローラ5からのエンジン制御指令に基づいて、回転速度、トルク等が制御される。
【0015】
オルタネータ3は、発電電圧を変更可能な発電機であり、エンジン2により駆動される。
バッテリ4は、オルタネータ3の発電電力により充電される。また、バッテリ4には、電流センサ6、温度センサ7が取り付けられる。
【0016】
車両コントローラ5には、電流センサ6、温度センサ7等からの検出信号、バッテリ4の電圧等が入力される。車両コントローラ5は、エンジン2を制御するための各種演算や、オルタネータ3の目標発電電圧の設定、バッテリ4の充電量の推定等を行う。
【0017】
ところで、車両コントローラ5は、上記のように、オルタネータ3の目標発電電圧を変更することで、車両1の走行中の発電量をコントロールし、燃費や動力性能の向上を図っている。
【0018】
具体的には、車両1の減速中でエンジン2の燃料をカットしている間は、オルタネータ3の発電電圧を高電圧にしてバッテリ4を効率よく充電し、燃料をカットしていない加速時等には、オルタネータ3の発電を停止してエンジン2の負荷を低減する可変発電制御を行う。高電圧は、例えば14Vである。
【0019】
ただし、バッテリ4の充電量によっては、発電を停止した場合に充電不足になり、バッテリ4が劣化することが考えられる。そこで、車両コントローラ5は、エンジン2を始動すると、まず、オルタネータ3の発電電圧を高電圧にして目標充電量になるまでバッテリ4を充電し、その後に低電圧で充電を行いつつ、可変発電制御を行う。低電圧は、バッテリ4の充電量を減少させることなく各種電装品に電力を供給できる電圧とされ、例えば13Vである。
【0020】
ここで、車両コントローラ5は、バッテリ4の充電電流に基づいて充電量を推定するが、バッテリ4の充電量と充電電流との関係は、バッテリ4の状態により変動する。
【0021】
したがって、実際には充電不足の状態で可変発電制御が行われることがないように、バッテリ4の充電量と充電電流との関係を、バッテリ4の状態に基づいて補正する必要がある。
【0022】
そこで、車両コントローラ5は、バッテリ4が充電不足になることを防止しつつ、可変発電制御を行うべく、図2図3のフローチャートに示す処理手順に従って制御を行う。
【0023】
以下、図2図3のフローチャートにしたがって、車両コントローラ5が行う制御を詳しく説明する。
【0024】
図2は、第1実施形態に係る発電制御装置の、バッテリ充電完了までの処理手順を示すフローチャートである。
【0025】
まず、車両コントローラ5は、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧を検出し、最低電圧が、状態判定値以上か否かを判定する(S101)。状態判定値は、バッテリ4の充電性能が低下しているか否かを判定できる電圧値であり、例えば7Vである。バッテリ4の充電性能については後で詳しく述べる。
【0026】
車両コントローラ5は、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が状態判定値以上と判定すると、図4aの特性マップを参照する。そして、バッテリ4の電圧と温度センサ7により検出したバッテリ4の温度とに基づいて、バッテリ4の充電量が目標充電量に到達したと判定する充電完了判定値を設定し(S102)、S104に処理を移行する。目標充電量は、充電不足によりバッテリ4の劣化が促進されることがない充電量であり、例えば、充電量90%の状態である。
【0027】
車両コントローラ5は、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が状態判定値より小さいと判定すると、図4bの特性マップを参照する。そして、バッテリ4の電圧と温度センサ7により検出したバッテリ4の温度とに基づいて、充電完了判定値を設定し(S103)、S104に処理を移行する。
【0028】
図4aは、充電性能が低下していないバッテリ4における、充電量90%のときの充電電流を示す特性マップである。また、図4bは、充電性能が低下したバッテリ4における、充電量90%のときの充電電流を示す特性マップである。
【0029】
バッテリ4の充電量と充電電流との関係は、バッテリ4の電圧及び温度によって変動し、また、上記のように、バッテリ4の充電性能によっても変動する。
【0030】
バッテリ4の充電性能は、バッテリ4の充電開始前の放電状態により変動する。例えば、暗電流による放電が長時間続くほどバッテリ4の充電性能は低下する。暗電流は、イグニッションスイッチがOFFの状態で流れる微小電流である。
【0031】
充電性能が低下したバッテリ4においては、電圧及び温度が同じ場合でも、充電性能が低下していないバッテリよりも充電量90%のときの充電電流が小さくなる。例えば、バッテリ4の電圧が14V、温度が25℃の場合では、図4aの特性マップによれば充電完了判定値は10Aとなるが、図4bの特性マップによれば充電完了判定値は3Aとなる。
【0032】
ここで、エンジン2の始動前は、バッテリ4は暗電流による放電をしており、この状態が長時間続くと、バッテリ4の充電量も相当に低下する。バッテリの起電圧は、バッテリの比重によって変化するので、バッテリ4の充電量が低下すると、バッテリ4の電圧も低下することになる。
【0033】
したがって、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が状態判定値以上の場合は、放電電流が小さい時間が短く、バッテリ4の状態が、充電性能が低下していない状態と判定でき、車両コントローラ5は、図4aの特性マップを参照して充電完了判定値を設定する。
【0034】
バッテリ4の最低電圧が状態判定値より小さい場合は、放電電流が小さい時間が長く、バッテリ4の状態が、充電性能が低下している状態と判定でき、車両コントローラ5は、図4bの特性マップを参照して充電完了判定値を設定する。
【0035】
このように、バッテリ4の充電性能に基づいて参照する特性マップ(図4a、図4b)を選択し、充電完了判定値を設定することで、バッテリ4の充電量の推定精度を向上できる。
【0036】
S104では、車両コントローラ5は、オルタネータ3の発電電圧を高電圧(14V)にしてバッテリ4の充電を開始し、S105に処理を移行する。
【0037】
S105では、車両コントローラ5は、電流センサ6により検出したバッテリ4の充電電流が、S102またはS103で設定した充電完了判定値以下か否かを判定する。
【0038】
車両コントローラ5は、充電電流が充電完了判定値以下と判定すると、高電圧での充電を終了し、可変発電制御に処理を移行する(END)。
【0039】
車両コントローラ5は、充電電流が充電完了判定値より大きいと判定すると、S105の判定処理を繰り返し行う。
【0040】
続いて、車両コントローラ5が行う可変発電制御について説明する。
【0041】
図3は、第1実施形態に係る発電制御装置の、可変発電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
車両コントローラ5は、まず、オルタネータ3の発電電圧を低電圧(13V)にしてバッテリ4の充電を開始する(S201)。
【0043】
また、車両コントローラ5は、電流センサ6により検出したバッテリ4の電流に基づいて、S201で充電を開始してからのバッテリ4の充放電電流の積算を開始する(S202)。
【0044】
次に、車両コントローラ5は、エンジン2始動時の最低電圧が、状態判定値以上か否かを判定する(S203)。
【0045】
車両コントローラ5は、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が状態判定値以上と判定すると、その後にバッテリ4の放電を許容する下限値となる放電許容充電量を、目標充電量(充電量90%)より少なく、例えば88%に設定し(S204)、S206に処理を移行する。
【0046】
車両コントローラ5は、バッテリ4の最低電圧が状態判定値より小さいと判定すると、放電許容充電量を、目標充電量と同じ充電量90%に設定し(S205)、S206に処理を移行する。
【0047】
エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が状態判定値より小さい場合は、放電電流が小さい時間が長く、バッテリ4の充電性能が低下している状態である。したがって、このような場合は、高電圧での充電が完了した後も、放電を許容する充電量の下限値を大きく設定し、バッテリ4の充電量を多めに維持することで、バッテリ4が充電不足になることを防止できる。
【0048】
S206では、車両コントローラ5は、エンジン2の燃料がカットされているか否かを判定する。
【0049】
車両コントローラ5は、エンジン2の燃料がカットされていると判定すると、オルタネータ3の発電電圧を高電圧にしてバッテリ4の充電を開始し(S207)、S208に処理を移行する。
【0050】
車両コントローラ5は、エンジン2の燃料がカットされていないと判定すると、S206の判定処理を繰り返し行う。
【0051】
エンジン2の燃料がカットされている間に高電圧でバッテリ4を充電することで、車両1の燃費や動力性能に影響を与えることなく、バッテリ4の充電を効率よく行うことができる。
【0052】
S208では、車両コントローラ5は、エンジン2の燃料カットが終了したか否かを判定する。
【0053】
車両コントローラ5は、エンジン2の燃料カットが終了したと判定すると、オルタネータ3の発電を停止し(S209)、S210に処理を移行する。
【0054】
車両コントローラ5は、エンジン2の燃料カットが終了していないと判定すると、S208の判定処理を繰り返し行う。
【0055】
S210では、車両コントローラ5は、バッテリ4の充放電電流の積算値に基づいて演算したバッテリ4の充電量と、S204またはS205で設定した放電許容充電量とを比較し、バッテリ4の充電量が放電許容充電量以下か否かを判定する。
【0056】
車両コントローラ5は、バッテリ4の充電量が放電許容充電量以下と判定した場合は、オルタネータ3の発電電圧を低電圧にしてバッテリ4の充電を開始し(S211)、S206に処理を移行する。
【0057】
車両コントローラ5は、バッテリ4の充電量が放電許容充電量より大きいと判定した場合は、S210の判定処理を繰り返し行う。
【0058】
燃料カット中に高電圧でバッテリ4を充電した後は、バッテリ4の充電量が放電許容充電量以下になるまでは、バッテリ4から各種電装品に電力を供給し、その間はオルタネータ3の発電を停止することで、車両1の燃費を向上させることができる。また、バッテリ4の充電量が放電許容充電量以下になると、低電圧での充電を再開するので、バッテリ4が充電不足になることを防止できる。
【0059】
続いて、図5を参照して、本実施形態の動作について説明する。
【0060】
図5は、第1実施形態に係る発電制御装置を適用する車両の、バッテリの状態を示すタイムチャートである。
【0061】
まず、エンジン2を始動すると、バッテリ電圧が低下する(t1)。
【0062】
そして、オルタネータ3が14Vで発電を開始すると、バッテリ電圧が14Vに上昇する(t1→t2)。
【0063】
その後、バッテリ4の充電量が増加するのにしたがって、バッテリ電流が徐々に小さくなる(t2→t3)。
【0064】
ここで、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が、状態判定値(7V)より高い場合は、充電完了判定値は図4aの特性マップに基づいて設定され、例えば10Aとなる。状態判定値より低い場合は、充電完了判定値は図4bの特性マップに基づいて設定され、例えば3Aとなる。図5のタイムチャートは、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が7Vより低い状態であり、充電完了判定値は、3Aとなる。
【0065】
バッテリ電流が3Aになると、14Vでの充電が完了して、オルタネータ3の発電電圧が徐々に13Vになり、バッテリ電圧が13Vに低下する(t3→t4)。
【0066】
オルタネータ3の発電電圧が13Vである間は、バッテリ4が徐々に充電されるので、オルタネータ3の発電電圧が13Vに切り換わり始めてからは、バッテリ電流積算値が緩やかに増加する(t3→t5)。なお、バッテリ電流積算値は、バッテリ4の目標充電量が基準値となるので、充電量90%が0Asとなる。
【0067】
エンジン2の燃料がカットされると、オルタネータ3の発電電圧が14Vになり、バッテリ電圧が14Vに上昇する(t5)。
【0068】
燃料がカットされている間は、バッテリ4が14Vで充電されるので、バッテリ電流積算値が急速に増加する(t5→t6)。
【0069】
エンジン2の燃料カットが終了すると(t6)、オルタネータ3が徐々に発電を停止し、バッテリ電圧が低下する(t6→t7)。
【0070】
オルタネータ3の発電が停止している間は、バッテリ4が各種電装品に電力を供給するので、バッテリ電流積算値が放電許容充電量まで減少する(t7→t8)。
【0071】
エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が、状態判定値(7V)より高い場合は、放電許容充電量は、例えば充電量88%となる。7Vより低い場合は、放電許容充電量は、例えば充電量90%となる。図5のタイムチャートは、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が7Vより低い状態であり、放電許容充電量は、充電量90%となる。
【0072】
バッテリ電流積算値が放電許容充電量まで減少すると、オルタネータ3の発電電圧が13Vになり、バッテリ電圧が13Vまで上昇する(t8)。
【0073】
本実施形態によれば、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が状態判定値より小さい場合は、充電開始前におけるバッテリ4の放電電流が小さい時間が長く、バッテリ4の充電性能が低下している状態と判定できる。したがって、バッテリ4の充電性能が低下していない状態よりも、充電量が目標充電量に到達したと判定する充電完了判定値を小さく設定することで、バッテリ充電量の推定精度を向上でき、バッテリ4が充電不足になることを防止できる。
【0074】
また、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧が状態判定値より小さい場合は、高電圧での充電が完了した後も、バッテリ4の放電を許容する下限値となる放電許容充電量を大きく設定し、バッテリ4の充電量を多めに維持することで、バッテリ4が充電不足になることを防止できる。
【0075】
<第2実施形態>
続いて本発明の第2実施形態について説明する。
【0076】
図6は、第2実施形態に係る発電制御装置の、バッテリ充電完了までの処理手順を示すフローチャートである。
【0077】
第2実施形態は、イグニッションスイッチOFFの時間に基づいて充電完了判定値を設定する点が、第1施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0078】
車両1のイグニッションスイッチがONになると、まず、車両コントローラ5は、イグニッションスイッチがOFFになってからONになるまでの時間を検出し、イグニッションスイッチOFFの時間が、状態判定時間より短いか否かを判定する(S301)。
【0079】
上記のように、暗電流による放電が長時間続くほどバッテリ4の充電性能は低下する。したがって、状態判定時間は、図4bの特性マップに基づいて充電完了判定値を設定した場合に、図4aの特性マップに基づいて充電完了判定値を設定するよりも充電量の推定精度が高くなる時間とされる。
【0080】
車両コントローラ5は、イグニッションスイッチOFFの時間が状態判定時間より短いと判定すると、図4aの特性マップを参照して充電完了判定値を設定し(S302)、S304に処理を移行する。
【0081】
車両コントローラ5は、イグニッションスイッチOFFの時間が状態判定時間以上と判定すると、図4bのマップを参照して充電完了判定値を設定し(S303)、S304に処理を移行する。
【0082】
S304及びS305では、第1実施形態のS104及びS105と同様の処理が行われる。
【0083】
本実施形態によれば、イグニッションスイッチOFFの時間が状態判定時間以上の場合は、充電開始前におけるバッテリ4の放電電流が小さい時間が長く、バッテリ4の充電性能が低下している状態と判定できる。したがって、バッテリ4の充電性能が低下していない状態よりも、充電量が目標充電量に到達したと判定する充電完了判定値を小さく設定することで、バッテリ充電量の推定精度を向上でき、バッテリ4が充電不足になることを防止できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体例に限定する趣旨ではない。
【0085】
上記実施形態では、充電完了判定値を2つの特性マップ(図4a、図4b)に基づいて設定しているが、例えば、3つ以上の特性マップに基づいて充電完了判定値を設定してもよい。
【0086】
また、例えば、1つの特性マップを基準として、バッテリ4の充電性能に対応した補正係数(≦1)を乗算することで、充電完了判定値を補正してもよい。
【0087】
また、図3のS203〜S205では、エンジン2始動時のバッテリ4の最低電圧に基づいて放電許容充電量を設定しているが、イグニッションスイッチOFFの時間に基づいて放電許容充電量を設定してもよい。この場合は、イグニッションスイッチOFFの時間が状態判定時間以上の場合は、充電開始前におけるバッテリ4の放電電流が小さい時間が長く、バッテリ4の充電性能が低下している状態と判定できる。したがって、バッテリ4の充電性能が低下していない状態よりも、放電許容充電量を大きく設定する。
【0088】
本願は2013年4月12日に日本国特許庁に出願された特願2013−084167に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6