(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0014】
本実施の形態にかかるPBSは、シリコン導波路を有している。シリコン導波路では、コアとクラッドの比屈折率差を大きくすることができる。このため、石英導波路に比べて、最小曲げ半径を小さくすることができる。シリコン導波路はリブ型構造とチャネル型構造の2つを有している。
図1、
図2に、一般的なリブ型構造のシリコン導波路断面と、チャネル型構造のシリコン導波路断面を示す。
【0015】
チャネル型導波路51、及びリブ型導波路50は、基板21、下層クラッド層22、コア層23、及び上層クラッド層24を備えている。シリコン基板である基板21の上に下層クラッド層22が設けられる。ここでは、下層クラッド層22はSiO
2膜であり、例えば、埋め込み酸化膜(BOX)によって形成される。下層クラッド層22の上には、コア層23が設けられる。コア層23は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などのSi膜である。コア層23の上には、上層クラッド層24が設けられる。上層クラッド層24は、例えば、SiO
2膜である。コア層23は、下層クラッド層22、上層クラッド層24と異なる屈折率の物質で設けられている。
【0016】
リブ型構造の断面では、コア層23は、上側に突起したリブ23aを有している。そして、リブ23aの両側が上層クラッド層24に挟まれている。リブ型構造では、厚さは1〜3μm程度で様々である。曲げ半径は200μm程度とチャネル型ほど小さくならないが、伝搬損失は0.5〜1.0dB/cmとチャネル型より小さい。導波路作製はステッパ露光で十分特性が得られるため、EB露光により形成する場合と比較して生産性が高い。
【0017】
チャネル型構造では、導波路となるコア層23の断面がほぼ矩形状となっている。そして、上層クラッド層24がコア層23を覆っている。下層クラッド層22及び上層クラッド層24がコア層23の全体を覆っている。本実施の形態にかかる偏波分離器PBSは、チャネル型構造とリブ型構造の両方を有している。
【0018】
本実施の形態にかかるPBSは、コヒーレントミキサ素子に用いられる。コヒーレントミキサ素子は、例えば、平面光波回路(PLC)であり、偏波分離器(PBS)、及び90°光ハイブリッド(90°OH)を有している。PBSは偏波分離機能を有する回路である。PBSは互いに直交する直線偏光成分を分離して、出力する。偏波分離器PBSは、例えば、アーム導波路の複屈折率を利用したマッハツェンダ型干渉計である。90°光ハイブリッドは位相情報を取り出す機能を有する回路(コヒーレントミキサ回路)である。
【0019】
図3は、MZI型PBSの全体構成を模式的に示す図である。PBS1は、コヒーレントミキサ素子の内部にモノリシックに集積されたマッハツェンダ型の偏光ビームスプリッタである。PBS1は、分波器11、合波器14、アーム部15、入力導波路16、及び出力導波路17を有している。アーム部15は、第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13を有している。アーム部15は、分波器11と合波器14との間に配置されている。アーム部15は、マッハツェンダ干渉計を構成する。分波器11、及び合波器14は、例えばMMI(Multi-Mode Interference)カプラである。分波器11は、2入力2出力のカプラとなっており、合波器14も同様に、2入力2出力のカプラとなっている。例えば、分波器11、及び合波器14は3dBカプラである。なお、分波器11、及び合波器14として、方向性結合器やY分岐器等を用いることも可能である。
【0020】
分波器11は、入力導波路16に結合されており、入力光を第1の入力光と第2の入力光に分波する。例えば、分波器11は、信号光を50:50に分岐して、第1の入力光と第2の入力光とを生成する。分波器11は、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13とに結合している。分波器11で分波された第1の入力光は、第1のアーム導波路12を伝搬する。分波器11で分波された第2の入力光は、第2のアーム導波路13を伝搬する。第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13は、合波器14に結合している。第1のアーム導波路12は、第1の入力光を合波器14に導き、第2のアーム導波路13は、第2の入力光を合波器14に導く。
【0021】
合波器14は、第1のアーム導波路12を伝搬してきた第1の入力光と、第2のアーム導波路13を伝搬してきた第2の入力光を合波する。合波器14は、2つの出力導波路17に結合されている。合波器14は、一方の出力導波路17からTE(Transverse Electric)偏光を出力し、他方の出力導波路17からTM(Transverse Magnetic)偏光を出力する。これにより、偏波分離器PBSが入力光を偏波分離する。PBS1は、互いに直交する直線偏光成分であるTM偏光とTE偏光を分離して出力する。
【0022】
分波器11、及び合波器14は同じタイプのシリコン導波路で形成されている。例えば、分波器11、及び合波器14はリブ型のシリコン導波路で構成されている。なお、分波器11、及び合波器14をチャネル型のシリコン導波路で形成してもよい。分波器11、及び合波器14をチャネル型導波路51とすることで、小型化することができる。第1のアーム導波路12の少なくとも一部は、リブ型導波路で形成されている。第2のアーム導波路13の少なくとも一部は、チャネル型導波路で形成されている。すなわち、2つのアーム導波路のうちの一方が、リブ型導波路50となっており、他方がチャネル型導波路51となっている。
【0023】
分波器11、及び合波器14をリブ型導波路で構成した場合、第2のアーム導波路13には、リブ型導波路からチャネル型導波路の遷移領域、及びチャネル型導波路からリブ型導波路への遷移領域が設けられる。第1のアーム導波路12は、全て、リブ型導波路50で形成される。反対に、分波器11、及び合波器14をチャネル型シリコン導波路51で構成した場合、第2のアーム導波路13には、チャネル型導波路51からリブ型導波路50の遷移領域、及びリブ型導波路からチャネル型導波路への遷移領域が設けられる。合波器14は、全て、チャネル型導波路51で形成される。
【0024】
ここで、アーム部15におけるPBS1の断面図を
図4に示す。
図4に示すように、第1のアーム導波路12は、チャネル型導波路51となっている。第2のアーム導波路13は、リブ型導波路50となっている。リブ型導波路50のコア層23とチャネル型導波路51のコア層23の間に上層クラッド層24が配置されている。よって、リブ型導波路50のコア層23とチャネル型導波路51のコア層23が分離して形成される。リブ型導波路50では、リブ23aの近傍に光が閉じ込められる。リブ型導波路50では、光が閉じ込められる領域が、リブ23aよりも若干広がる。このため、リブ23aだけでなく、リブ23aの下と周辺のコア層23内も光が伝搬する。チャネル型導波路51では、コア層23に光が閉じ込められる。さらに、リブ型導波路50では、光パワーを検出できない程度の幅だけコア層23が広がって形成される。リブ型導波路50のリブ23aを含めたコア層23の厚みと、チャネル型導波路51のコア層23の厚みは、ほぼ等しくなっている。
【0025】
MZI型PBS1の基本動作について説明する。
図3のようなMZI型PBS1において、PBS動作を示すためには、以下の式(1)、(2)を満たす必要がある。
(2π/λ)×n
TE1L
1−(2π/λ)×n
TE2L
2=0・・・(1)
(2π/λ)×n
TM1L
1−(2π/λ)×n
TM2L
2=π・・・(2)
【0026】
ここで、λは動作波長、L
1は第1のアーム導波路12のアーム長、L
2は第2のアーム導波路13の導波路長である。n
TE1は第1のアーム導波路12でのTE偏光の屈折率、n
TE2は第2のアーム導波路13でのTE偏光の屈折率である。同様に、n
TM1は第1のアーム導波路12でのTM偏光の屈折率、n
TM2は第2のアーム導波路13でのTM偏光の屈折率である。
【0027】
分波器11で分かれた光は各アーム間でTE偏光に対しては同位相となり、TM偏光に対してはπ位相がずれれば、TE偏光とTM偏光が異なる出力ポートから出射することとなる。このとき、位相条件に関しては、TE/TMが入れ替わってもよい。すなわち、TM偏光を同位相とし、TE偏光を逆位相としてもよい。
【0028】
次に我々が検討しているSiリブ型導波路の分散関係を
図5に示す。
図5は、リブ23aを含めたコア層23の厚さを1.5μm、リブ23aの深さを0.925μmとして計算し多結果を示している。
図5において、横軸は、導波路幅を示し、縦軸は屈折率を示している。さらに、
図5では、TE偏光に対する屈折率とTM偏光に対する屈折率の差(n
TE−n
TM)をdnとして示している。屈折率差dnが複屈折の大きさを示すことになる。およそ10
―3オーダの複屈折が見込め、PBS1を構成するには十分な複屈折量があることがわかる。
【0029】
式(1)の位相条件を満たすように、PBS1を構成したときの透過スペクトルの1例を
図6に示す。ここでは、第1のアーム導波路12及び第2のアーム導波路13をリブ型導波路50とし、それぞれの導波路幅を1.5μm、3μmと設定している。
図6において、横軸は、動作波長を示し、縦軸はTE偏光、TM偏光の損失(透過率)を示している。TE偏光の損失とTM偏光の損失の差が大きくなるほど、偏波消光比が大きくなる。C帯内において偏波消光比30dB以上のPBS1を構成できている。しかしながら、実際のプロセスでは導波路幅が設計値からずれることは十分に考えられる。
【0030】
そこで、それぞれの導波路幅を設計値からdW変化させたときの過剰損失と偏波消光比を
図7、及び
図8に示す。
図7において、横軸が設計値からの導波路幅のずれdWを示し、縦軸が偏波消光比を示している。
図8において、横軸が設計値からの導波路幅のずれdWを示し、縦軸が損失を示している。
【0031】
トレランスとしては帯域の端が最も厳しくなる。このため、
図7、
図8は、C帯の最長波(1.566μm)、最短波(1.527μm)の2波長についての損失、偏波消光比を示している。また、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13は近接しているため、導波路幅が同じように変化すると仮定している。すなわち、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の導波路幅が設計値からほぼ同じ大きさだけずれると仮定している。過剰損失、偏波消光比ともに導波路幅の変動に対して、非常に急峻な変動を示している。ここで実用上必要とされる偏波消光比20dBを一つの基準とすると、±5nm程度のトレランスしか許されておらず、製品化には厳しい結果となっている。
【0032】
これらの損失、偏波消光比の変動は導波路幅が変動することにより、それぞれのアーム導波路の屈折率が変化し、式(1)、(2)を満たせないためである。特に1.5μm導波路では分散関係が急峻に変化している部分であり、これが特性を急激に悪化させ、PBS1の製品化を難しくしている原因である。
【0033】
そこで、本実施形態では、PBS1の2本のアーム導波路をそれぞれ異なる構造の導波路で製作している。すなわち、
図4で示したように、第1のアーム導波路12をチャネル型導波路51とし、第2のアーム導波路13をリブ型導波路50で形成している。そして、2本のアーム導波路間でTE偏光、TM偏光のどちらかの分散関係を一致させる。こうすることで、導波路幅の製造ばらつきに強いPBS1を実現することができる。仮にTE偏光の屈折率を合わせたとき、すなわちn
TE1=n
TE2となるとき、式(1)はL
1=L
2となる。換言すると、直交する直線偏光成分の一方に対して、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の屈折率が同じになるとき、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13のアーム長(導波路長)がほぼ等しくなる。このため、式(2)は以下の式(3)のように変形される。
【0034】
(2π/λ)×n
TM1L
1−(2π/λ)×n
TM2L
2=π → L=λ/(2 (n
TM1- n
TM2)) ・・・(3)
【0035】
式(2)のL
1=L
2=Lとすることで式(3)が得られる。従って、PBS1のアーム長は2本のTM側の屈折率差のみで決まる。すなわち、n
TE1=n
TE2となっているため、アーム長Lによらず、TE偏光での位相差は0となる。
【0036】
次にSiリブ型導波路と、Siチャネル型導波路の分散関係を
図9、
図10に示す。
図9において、横軸は、導波路幅を示し、縦軸は、TE偏光に対する屈折率を示している。
図10において、横軸は、導波路幅を示し、縦軸は、TM偏光に対する屈折率を示している。
図9、
図10は、それぞれ、リブ型導波路50、チャネル型導波路51の両方の屈折率を示している。
【0037】
導波路幅が広い領域では、2つの導波路構造がほとんど重なっているように見える。したがって、n
TE1=n
TE2となり、式(3)のような状況が作れることが予想される。しかしながら、TM偏光の屈折率差が小さく、現実的な大きさでPBS1を構成することができない。すなわち、TM偏光に対して位相差をπとするためには、アーム長Lが長くなり、PBS1が大型化してしまう。従って、導波路幅の狭い領域でPBS1を作る必要がある。
【0038】
ここで、
図9において、リブ型導波路50のみ導波路幅を0.1μm変えたときの分散関係を
図11に示す。
図11では、導波路幅Wが1.5μm〜2.5μmの範囲を拡大して示している。
図11に示されるように、リブ型導波路50をチャネル型導波路51よりも0.1μm幅広にすることで、分散関係がほぼ一致する。例えば、導波路幅1.7μm付近でチャネル型導波路とリブ型導波路の分散関係がほぼ一致している。これは、例えばリブ型導波路50の導波路幅を1.6μmに、チャネル型導波路51の導波路幅を1.7μmに設定することで、導波路幅がずれたとしても屈折率が同じように変化することを表している。したがって、導波路幅の製造ばらつきに強いPBS1が構成できる。なお、導波路幅の設定値は一意で決まるものではなく、必要とするアーム長の大きさ、また必要な導波路幅のトレランスにより決定される。リブ型導波路50を用いる場合には、導波路幅1〜4μm程度が望ましい。これにより、一方の偏光成分に対しては、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の屈折率差が大きくなる。よって、PBS1を大型化することなく、アーム間で位相をずらすことができる。
【0039】
この考えに基づいてPBS1を構成し、トレランスを計算した結果を
図12〜
図15に示す。
図12では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTE偏光の損失を示している。
図13では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTM偏光の損失を示している。
図14では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTE偏光に対する偏波消光比を示している。
図15では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTM偏光に対する偏波消光比を示している。
【0040】
このときの導波路幅は、リブ型導波路1.91μm、チャネル型導波路が2μmである。
図7、8と比較して、導波路幅のずれdWの許容範囲が改善されている。導波路幅のずれdWが大きくなった場合でも、損失が小さくなっている。リブ型導波路50とチャネル型導波路51とで、TE偏光に対する分散関係を一致させたことにより、損失については十分なトレランスを持つことがわかる。ただし、TE偏光について最適化したため、TM偏光はTE偏光よりも若干の損失が増加しているが、実用上問題ない範囲である。
【0041】
一方、偏波消光比は1段のPBSでは十分に満たすことができない。そこで損失には十分な余裕があるので、PBSを2段にすることで、偏波消光比は向上させることが出来る。
図16にPBSを2段構成にした光デバイス100の構成を示す。光デバイス100は、多段に接続されたPBS1〜PBS3を備えている。PBS1が1段目となっており、PBS2、及びPBS3が2段目になっている。したがって、PBS1から出力された出力光が、PBS2、及びPBS3の入力光となる。
【0042】
PBS1とPBS3は、それぞれ、
図2で示したPBS1と同様に、分波器11、第1のアーム導波路12、第2のアーム導波路13、合波器14、アーム部15、入力導波路16、出力導波路17を備えている。すなわち、PBS1、PBS3において、第1のアーム導波路12及び第2のアーム導波路13の一方がリブ型導波路50となっており、他方がチャネル型導波路51となっている。そして、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13とで、分散関係がほぼ一致するよう、導波路幅を異ならせている。
PBS2は、PBS1と同様に、分波器11、合波器14、入力導波路16、出力導波路17を備えている。また、PBS2は、第1のアーム導波路32と第2のアーム導波路33を有するアーム部35を備えている。PBS2の基本的構成は、
図2で示したPBS1と同様になっており、PBS2の第1のアーム導波路32、第2のアーム導波路33、及びアーム部35が、PBS1のアーム部15、第1のアーム導波路12、第2のアーム導波路13にそれぞれ対応する。PBS2においても、PBS1と同様に、第1のアーム導波路32及び第2のアーム導波路33の一方がリブ型導波路50となっており、他方がチャネル型導波路51となっている。そして、第1のアーム導波路32と第2のアーム導波路33とで、分散関係がほぼ一致するよう、導波路幅を異ならせている。
【0043】
PBS1は、TM偏光とTE偏光を偏波分離して、出力する。PBS1の出力導波路17の一方は、PBS2に結合されており、他方は、PBS3に結合されている。したがって、PBS2の入力導波路16には、TM偏光が入力光として入力される。PBS3の入力導波路16には、TE偏光が入力光として入力される。なお、PBS1で偏波分離されたTM偏光、及びTE偏光には、残留偏波成分が残っている。すなわち、PBS2に入力されるTM偏光には、TE偏光成分がわずかに残留している。同様に、PBS3に入力されるTE偏光には、TM偏光成分がわずかに残留している。なお、
図16では、残留偏波成分を括弧内に示している。
【0044】
PBS2は、入力光であるTM偏光に対して最適化されている。すなわち、PBS2では、TM偏光に対して、第1のアーム導波路32と第2のアーム導波路33とで位相が揃えられている。換言すると、TM偏光に対する第1のアーム導波路32と第2のアーム導波路33の屈折率が同じとなっており、導波路幅の変化に対する屈折率変化が同じになるような導波路幅で、PBS2の第1のアーム導波路32と第2のアーム導波路33が形成されている。一方、残留偏波成分であるTE偏光ついては、PBS2が、第1のアーム導波路32と第2のアーム導波路33との間で光に位相差を生じさせる。1段目で切り出したTM偏光に対しては、2段目のPBS2をTM偏光に対して最適化することで、損失増加を抑えることが出来る。
【0045】
PBS3は、入力光であるTE偏光に対して最適化されている。すなわち、PBS3では、TE偏光については、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13とで位相が揃えられている。換言すると、TE偏光に対する第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の屈折率が同じとなっており、導波路幅の変化に対する屈折率変化が同じになるような導波路幅で、PBS3の第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13が形成されている。一方、残留偏波成分であるTM偏光ついては、PBS3において、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13との間で光に位相差を生じさせる。1段目で切りだしたTE偏光に対しては、2段目のPBS3をTE偏光に対して最適化することで、損失増加を抑えることが出来る。
【0046】
PBS1を2段とした場合の計算結果を
図17〜
図20に示す。
図17では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTE偏光の損失を示している。
図18では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTM偏光の損失を示している。
図19では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTE偏光に対する偏波消光比を示している。
図20では、横軸が導波路幅WのずれdWを示し、縦軸がTM偏光に対する偏波消光比を示している。
【0047】
なお、TM偏光側のPBS2に関してはリブ型導波路を1.94μm、チャネル型導波路を2μmとしている。なお、TE偏光側については、上記の通り、リブ型導波路を1.91μm、チャネル型導波路を2μmとしている。偏波消光比はTE偏光、TM偏光ともに20dB以上を確保できている。また、2段目をそれぞれの偏光について屈折率を最適化したため、2段の構成としても損失増加はほとんど見られない結果となっている。これにより損失、偏波消光比ともに導波路幅に対して十分なトレランスをもつPBSを構成できる。
【0048】
以上のように、互いに直交する直線偏光成分のうちの一方については、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13とを伝搬する光の位相を揃え、他方については、光の位相をずらしている。そして、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の一方にリブ型導波路50を形成し、他方にチャネル型導波路51を形成している。そして、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13を同じ長さで、異なる導波路幅としている。例えば、リブ型導波路50とチャネル型導波路51との導波路幅の差を0.1μm程度、又はそれ以下としている。
【0049】
PBS1では、TE偏光に対する第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の屈折率が同じになっており、かつ、導波路幅の変化に対する屈折率変化が同じになるような導波路幅で第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13が形成されている。一方、TM偏光にこれにより、第1のアーム導波路12を伝搬するTE偏光と第2のアーム導波路13を伝搬するTE偏光とで、位相を揃えることができる。TM偏光については、第1のアーム導波路12を伝搬する光と第2のアーム導波路13を伝搬する光との間に位相差を生じさせる。
【0050】
このように、2本のアーム導波路をSiリブ型導波路とSiチャネル型導波路として、PBSを構成する。そして、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13に対して、TE/TM偏光どちらかの屈折率の分散関係を合わせる。こうすることにより、導波路幅に対する製造ばらつきに強い偏光分離素子である。
【0051】
さらに、偏波消光比を高くするために、
図16のようにPBSを多段に接続することができる。そして、前段のPBS1の合波器14からは、TE偏光とTM偏光が分離して出力される。後段のPBS2の分波器11には、入力光としてTM偏光が入力される。PBS2では、TM偏光に対する第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の屈折率が同じであり、かつ導波路幅の変化に対する屈折率変化が同じになるような導波路幅で第1及び第2のアーム導波路が形成されている。そして、PBS2において、TE偏光については、第1のアーム導波路12を伝搬する光と第2のアーム導波路13を伝搬する光との間に位相差を生じさせる。
【0052】
後段のPBS3の分波器には、入力光としてTE偏光が入力される。後段のPBS3では、TE偏光に対する第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の屈折率が同じであり、かつ導波路幅の変化に対する屈折率変化が同じになるような導波路幅で第1及び第2のアーム導波路が形成されている。そして、PBS3において、TM偏光については、第1のアーム導波路12を伝搬する光と第2のアーム導波路13を伝搬する光との間に位相差を生じさせる。なお、PBS2、又はPBS3の一方のみをPBS1の後段に接続してもよい。
【0053】
もちろん、PBSを3段以上にしてもよい。PBSを多段接続させ、2段目以降については、損失を減らしたい偏光に対して屈折率を一致させる、こうすることにより、導波路幅に対する製造ばらつきに強い偏光分離素子を実現することができる。さらに、多段接続したPBSの後段に90°OHなどを設けて、コヒーレントレシーバとすることも可能である。さらには、PBSをコヒーレントレシーバ以外の光デバイスに用いてもよい。
【0054】
なお、上記の説明では、導波路がシリコン導波路として説明したが、導波路はシリコン導波路に限られるものではない。例えば、導波路として、InP等の半導体導波路を用いることも可能である。種々の材料を含む化合物半導体材料を導波路として用いることができる。
【0055】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0056】
この出願は、2013年4月24日に出願された日本出願特願2013−91272を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。