(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、分解せずに撥水撥油剤に浸して撥水撥油加工を施すことが可能な防護衣等を得るために有用な防護材料を提供するため検討を行った。その結果、外層付加層と、布帛からなる液遮蔽層をそれぞれ少なくとも1層以上有する防護材料において、上記液遮蔽層が、平均単繊維直径:0.5〜10μm、融点:170℃以上の熱可塑性樹脂の繊維から構成され、且つ、AATCC試験法118−2002による撥油度:5.5級以上、最大細孔径が1.0〜100μmであることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
詳細には、防護材料の液遮蔽層を、平均単繊維直径:0.5〜10μmの熱可塑性樹脂の繊維で構成して、且つ、AATCC試験法118−2002による撥油度を5.5級以上、最大細孔径を1.0〜100μmとすることより、液遮蔽層の耐液防護性を向上させることができる。更に、外層付加層によって外部からの機械的な力を軽減することにより、耐液防護性を更に向上させることができる。その結果、液状有機化学物質を拡散する撥油度の低い拡散層を積層させなくても優れた耐液防護性が得られることが分かった。即ち、上記防護材料を用いれば、上記撥油度の低い拡散層の有無にかかわらず優れた耐液防護性が得られるため、撥水撥油剤による拡散層の拡散能の低下等の影響を考慮する必要がなくなり、防護衣等を分解せずに撥水撥油剤に浸して撥水撥油加工を施すことが可能となることを見出した。
【0027】
更に、防護材料の液遮蔽層の上記撥油度を確保するためには、後述する高温域でのキュアリングの観点より、液遮蔽層を構成する熱可塑性樹脂の繊維の融点を170℃以上とすることが有効であることを見出した。
【0028】
また、従来の防護材料に耐液防護性を付与するためには、特許文献1のように防護シート層、すなわち液遮蔽性能を発現するための層を多層構造にしたり、目付を大きくする必要があり、防護衣等に仕立てたときに、素材の厚みや重量により生理負担が大きくなる問題があった。これに対して本発明では、上記液遮蔽層と外層付加層を積層することにより優れた耐液防護性を発揮するため、素材の厚みや重量が小さい防護材料が得られることを見出した。更に、該防護材料を用いることにより、生理負担の少ない防護衣等を得られることを見出した。
【0029】
本明細書において、撥水撥油性とは、撥油性、または撥水性および撥油性の性質を意味する。
【0030】
以下では、まず本発明の防護材料の液遮蔽層について詳細に説明する。
【0031】
本発明の液遮蔽層とは、液状有機化学物質を遮蔽する層である。本発明の液遮蔽層は、布帛からなり、平均単繊維直径:0.5〜10μmおよび融点:170℃以上の熱可塑性樹脂の繊維から構成され、且つ、AATCC試験法118−2002による撥油度:5.5級以上、最大細孔径:1.0〜100μmを満たすものである。
【0032】
本発明の液遮蔽層の下記の各特性の数値は、後述する内層付加層や外層付加層、保護層、接着層等を積層する場合には、内層付加層や外層付加層、保護層、接着層等を除いた数値である。
【0033】
本発明の液遮蔽層は、AATCC試験法118−2002による撥油度:5.5級以上とする。上記撥油度は高い程、耐液防護性は向上する。一方、上記撥油度が5.5級を下回ると耐液防護性が低下する。そのため、好ましくは6級以上、より好ましくは6.5級以上、更に好ましくは7級以上、最も好ましくは8級である。
【0034】
本発明の液遮蔽層を構成する熱可塑性樹脂の繊維の平均単繊維直径は、0.5〜10μmとする。平均単繊維直径を上記範囲内にすることにより、防護材料の耐液防護性、通気度、柔軟性のバランスを良好に保ち、特に被服に適した防護材料が得られる。更に、上記範囲内であれば、優れた粒子除去性も付与することができる。詳細には、平均単繊維直径が0.5μmを下回ると液遮蔽層の間隙が少なくなり、防護材料の通気性が悪くなるため、防護衣等に仕立てたときに着用者の不快感が増す。また、平均単繊維直径が10μmを上回ると、液遮蔽層の間隙が多くなり、防護材料の耐液防護性が十分に発揮されず、液状有機化学物質が防護材料を透過するおそれがある。更に、平均単繊維直径が大きくなると柔軟性が低下する。平均単繊維直径は、好ましくは0.6〜8μmであり、より好ましくは0.7〜5μmである。
【0035】
本発明の液遮蔽層を構成する熱可塑性樹脂の繊維の融点は170℃以上とする。これにより、上記繊維に後述するキュアリングを150℃以上の高温域で施すことが可能となり、十分な撥水撥油性を付与することができる。融点は高い程よく、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である。融点の上限は特に限定されないが、好ましくは280℃以下である。
【0036】
本発明の液遮蔽層の最大細孔径は、後述する実施例に示す方法で測定される。最大細孔径は、好ましくは1.0〜100μmとする。最大細孔径の下限を1.0μm以上とすることにより、通気度を確保し易くなる。最大細孔径の下限は、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。一方、最大細孔径の上限を100μm以下とすることにより、上記撥水撥油性を有効に発揮することができ、耐液防護性を向上させることができる。最大細孔径の上限は、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。
【0037】
本発明の液遮蔽層の目付は、好ましくは5〜50g/m
2とする。液遮蔽層の目付が上記範囲内であれば、防護材料の耐液防護性と通気度のバランスを維持することができる。更に、積層後の防護材料が分厚くなり過ぎず、防護衣等に仕立てたときに軽量性や運動追従性を損なわないため、着用者の負担を軽減できる。更に、上記範囲内であれば、優れた粒子除去性を付与することができる。目付は、より好ましくは7〜47g/m
2、更に好ましくは10〜43g/m
2である。
【0038】
本発明の液遮蔽層の通気度は、好ましくは5〜35cm
3/cm
2・secとする。上記範囲内であれば、防護材料の通気度を適正な範囲に調整できる。より好ましくは7〜34cm
3/cm
2・sec、更に好ましくは8〜32cm
3/cm
2・secである。
【0039】
本発明の液遮蔽層の撥水度は、JIS L1092(2009)7.2に記載の撥水度試験で、好ましくは2級以上とする。上記範囲内であれば、有機系以外の液状化学物質も浸透しにくくなる。上記撥水度は、より好ましくは4級以上、最も好ましくは5級である。
【0040】
本発明の液遮蔽層の厚さは、好ましくは0.1〜500μmとする。液遮蔽層の厚さを上記範囲内にすることにより、防護材料の耐液防護性、通気性、強度、柔軟性のバランスを良好なものにできる。上記厚さは、より好ましくは0.5〜400μmである。
【0041】
本発明の液遮蔽層は布帛からなるものである。布帛は、好ましくは織物、編物、または不織布であり、より好ましくは不織布である。不織布であれば、優れた耐液防護性を付与できると共に、柔軟性と伸長性のバランスが良いため、防護服として仕立てたときに、着用者の作業性を確保でき、着用者のストレスを軽減することができる。更に、不織布であれば、優れた粒子除去性を付与することができる。
【0042】
不織布形状の液遮蔽層を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、メルトブローン法、湿式法、乾式法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法、複合繊維分割法等が挙げられる。適度な通気度を与え、かつ、得られる不織布の繊維径が小さく耐液防護性が良好なことから、メルトブローン法及びエレクトロスピニング法が好ましい。
【0043】
なお、エレクトロスピニング法とは、溶融紡糸法の一種であり、具体的には、ポリマー溶液に正の電荷を与え、正電荷を与えられたポリマー溶液をアースまたは負に帯電した基盤表面にスプレーされる工程でポリマーを繊維化する手法をいう。
【0044】
本発明の液遮蔽層を構成する素材、即ち熱可塑性樹脂の繊維としては、好ましくはナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維;ポリウレタン繊維等の合成繊維;ポリフェニレンスルフィド繊維;等である。これらの繊維は複数を混紡・混綿して使用してもよい。
【0045】
本発明の液遮蔽層を構成する熱可塑性樹脂の繊維は、防護材料の柔軟性の観点からは、ポリウレタン繊維が好ましく、耐熱性の観点からはポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維が好ましい。
【0046】
上記のとおり、本発明の液遮蔽層は、同一種の素材から形成してもよく、または異なる素材を複数用いて形成してもよい。
【0047】
本発明の液遮蔽層の撥油度を確保するためには、上記素材等に撥水撥油処理を施す必要がある。撥水撥油処理を施す方法としては、例えば、スプレーにより噴霧する方法、撥水撥油剤を含有する溶液中に浸漬させる方法(以下では含浸加工と呼ぶ場合がある)等が挙げられる。均一に撥水撥油処理を施す観点からは、含浸加工が好ましい。撥水撥油剤としては、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ワックス等が挙げられる。
【0048】
例えば、含浸加工を行う場合の好ましい態様は、以下のとおりである。
【0049】
液遮蔽層の素材を、撥水撥油剤に浸した後、脱水し、乾燥して、高温域でキュアリングを行えばよい。
【0050】
撥水撥油剤として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ワックス等を0.6〜10wt%含有する溶液を用いることが好ましい。
【0051】
撥水撥油剤の添着量は、撥水撥油剤固形分で、0.5〜10wt%が好ましい。
【0052】
含浸加工は、10〜30℃の上記溶液に浸漬後、マングル等でニップ(圧搾)して脱水する方法が挙げられる。
【0053】
脱水後の乾燥は、100〜120℃で1〜10分間行うことが好ましい。
【0054】
乾燥後のキュアリングは、150〜185℃で1〜5分間行うことが好ましい。これにより、優れた撥水撥油性を付与することができる。
【0055】
以上、本発明の液遮蔽層について説明した。
【0056】
本発明の防護材料は、外層付加層と、本発明の液遮蔽層をそれぞれ少なくとも1層以上含むものである。外層付加層と、本発明の液遮蔽層をそれぞれ少なくとも1層以上含んでいれば、公知のいずれの構造でも良い。例えば、本発明の防護材料は、ガス吸着層を積層したものが好ましい。更に、本発明の防護材料は、別の層を積層させることも可能であり、例えば、内層付加層、ガス吸着層、液遮蔽層、および外層付加層がこの順に積層されたものであっても良い。
【0058】
外層付加層は、外部からの機械的な力から液遮蔽層等を保護するための層である。外層付加層によって、外部からの機械的な力を軽減することによって耐液防護性を向上させることができる。更に、外層付加層に撥水撥油性を付与すると、液状化学物質に対する耐液防護性をより一層、向上させることができる。一方、外層付加層の撥水撥油性が低い場合でも、毛管現象によって液状化学物質を拡散させることにより、防護材料の耐液防護性を向上させることができる。そのため、本発明の防護材料は、外層付加層を含む。
【0059】
本発明の外層付加層の最大細孔径は、後述する実施例に示す方法で測定される。最大細孔径は、好ましくは1.0〜1000μmとする。最大細孔径の下限を1.0μm以上とすることにより、防護材料の通気度を確保し易くなる。最大細孔径の下限は、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、更により好ましくは50μm以上である。一方、最大細孔径の上限を1000μm以下とすることにより、外部からの機械的な力を軽減することができ、液遮蔽層等を保護しつつ耐液防護性を向上させることができる。最大細孔径の上限は、より好ましくは700μm以下、更に好ましくは250μm以下、更により好ましくは210μm以下である。
【0060】
外層付加層の最大細孔径は、液遮蔽層の最大細孔径よりも大きいことが好ましい。これにより、外層付加層では液状化学物質を拡散して、液遮蔽層では液状化学物質の透過を防ぐという役割分担をすることができ、耐液防護性を向上させ易くすることができる。更に、防護材料の通気性を確保し易くすることができる。
【0061】
外層付加層の撥油度は、AATCC試験法118−2002で、好ましくは2級以上、より好ましくは4級以上、更に好ましくは6級以上、最も好ましくは8級である。外層付加層に撥油性を付与すると、有機系の液状化学物質が浸透しにくくなる。
【0062】
外層付加層の撥水度は、JIS L1092(2009)7.2に記載の撥水度試験で、好ましくは2級以上、より好ましくは4級以上、最も好ましくは5級である。上記範囲内であれば、有機系以外の液状化学物質も浸透しにくくなる。
【0063】
外層付加層を構成する熱可塑性樹脂の繊維の平均単繊維直径は、好ましくは0.5〜600μmとする。平均単繊維直径の下限を0.5μm以上とすることにより、防護材料の通気度を確保することができる。平均単繊維直径の下限は、好ましくは0.7μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。一方、平均単繊維直径の上限を600μm以下とすることにより、耐液防護性を向上させることができる。平均単繊維直径の上限は、好ましくは400μm以下、より好ましくは260μm以下、更に好ましくは215μm以下である。
【0064】
本発明の外層付加層を構成する熱可塑性樹脂の繊維の融点は、好ましくは170℃以上とする。これにより、上記繊維に後述するキュアリングを150℃以上の高温域で施すことが可能となり、十分な撥水撥油性を付与することができる。融点は高い程よく、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは190℃以上である。融点の上限は特に限定されないが、好ましくは280℃以下である。
【0065】
外層付加層の目付は、好ましくは10〜200g/m
2とする。外層付加層の目付の下限を10g/m
2以上とすることにより、外部からの機械的な力を軽減することができ、液遮蔽層等を保護しつつ耐液防護性を向上させることができる。外層付加層の目付の下限は、好ましくは10g/m
2以上、より好ましくは13g/m
2以上、更に好ましくは15g/m
2以上、更により好ましくは17g/m
2以上、最も好ましくは19g/m
2以上である。一方、外層付加層の目付の上限を200g/m
2以下とすることにより、積層後の防護材料が分厚くなり過ぎず、防護衣等に仕立てたときに軽量性や運動追従性を損なわないため、着用者の負担を軽減できる。外層付加層の目付の上限は、好ましくは200g/m
2以下、より好ましくは170g/m
2以下、更に好ましくは150g/m
2以下、更により好ましくは120g/m
2以下、最も好ましくは75g/m
2以下である。
【0066】
外層付加層の通気度は、好ましくは5〜800cm
3/cm
2・secとする。外層付加層の通気度の下限を5cm
3/cm
2・sec以上とすることにより、防護材料の通気度を適正な範囲に調整できる。外層付加層の通気度の下限は、好ましくは5cm
3/cm
2・sec以上、より好ましくは120cm
3/cm
2・sec以上、更に好ましくは160cm
3/cm
2・sec以上、更により好ましくは250cm
3/cm
2・sec以上である。一方、外層付加層の通気度の上限を800cm
3/cm
2・sec以下とすることにより、耐液防護性を発揮し易くなる。外層付加層の通気度の上限は、好ましくは700cm
3/cm
2・sec以下、より好ましくは620cm
3/cm
2・sec以下である。
【0067】
外層付加層の厚さは、好ましくは0.1〜1000μmとする。外層付加層の厚さの下限を0.1μm以上とすることにより、外部からの機械的な力を軽減することができ、液遮蔽層等を保護しつつ耐液防護性を向上させることができる。外層付加層の厚さの下限は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは10μm以上、更により好ましくは100μm以上である。一方、外層付加層の厚さの上限を1000μm以下とすることにより、防護材料の耐液防護性、通気度、強度、柔軟性のバランスを良好なものにできる。外層付加層の厚さの上限は、好ましくは800μm以下、より好ましくは600μm以下、更に好ましくは400μm以下である。
【0068】
外層付加層は、布帛からなるものである。布帛は、織物、編物、不織布等が好ましく、柔軟性を考慮したものが推奨される。耐液防護性を向上の観点からは、不織布が好ましい。不織布は、スパンポンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。耐液防護性を向上し、かつ液遮蔽層の強度を補強するという観点からは、スパンポンド不織布、スパンレース不織布が好ましい。
【0069】
外層付加層を形成する方法は、メルトブローン法、湿式法、乾式法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法、複合繊維分割法等により形成すれば良い。例えば、適度な通気度と柔軟性、強度を与えることから、乾式法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法が好ましい。
【0070】
外層付加層を構成する素材は、特に限定されず、液遮蔽層と同様の素材を使用しても良い。外層付加層を構成する素材は、防護材料の柔軟性の観点からは、ポリウレタン繊維が好ましく、耐熱性の観点からはポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維が好ましい。また、外層付加層は、同一種の素材から形成してもよく、または異なる素材を複数用いて形成してもよい。
【0071】
外層付加層の撥油度を確保するためには、液遮蔽層と同様に撥水撥油処理を施せば良い。
【0072】
内層付加層は、防護衣等の着用者の汗によるべたつき感を抑制する層である。更に、内層付加層を含むことにより外力に対して強くなる。そのため、本発明の防護材料は、内層付加層を含むことが好ましい。
【0073】
内層付加層の素材は、織物、編物、不織布、開孔フィルム等が挙げられる。通気性、柔軟性等の観点からは、粗い密度で製織、製編された織物または編物が好ましい。
【0074】
ガス吸着層は、ガスに対する防護性を付与する層である。そのため、本発明の防護材料は、ガス吸着層を含むことが好ましい。
【0075】
ガス吸着層は、ガス吸着性能の観点からは、活性炭やゼオライト等からなるガス吸着材が挙げられる。そのうち、吸着性能に優れる繊維状活性炭布であることが好ましい。
【0076】
内層付加層、ガス吸着層、液遮蔽層、および外層付加層は、接着剤により接着しても良いし、柔軟性を考慮し、接着せずに重ね合わせた状態で縫製加工しても良い。
【0077】
例えば、あらかじめ内層付加層とガス吸着層をキルティング加工した後、その積層体に液遮蔽層および外層付加層を接着剤により接着しても良い。
【0078】
キルティング加工は、従来公知の方法を採用することができ、ポリエステル、ナイロン、綿等のミシン糸を使用することが好ましい。なお、キルティング加工の縫い目に耐液防護性を付与するために、ミシン糸に撥水撥油性を付与しても良い。
【0079】
内層付加層、ガス吸着層、液遮蔽層、および外層付加層はそれぞれ1層に限らず、必要に応じてそれぞれ2層以上設けても良い。
【0080】
なお、本発明の防護材料においては、内層付加層、ガス吸着層、液遮蔽層、および外層付加層以外の他の層を積層させることも可能である。
【0081】
例えば、本発明の液遮蔽層の強度を補強するために、液遮蔽層の片面または両面に基材(以下では、保護層と呼ぶ場合がある)を積層させても良い。
【0082】
保護層の通気度は、液遮蔽層の通気性能を損なわないために、好ましくは100cm
3/cm
2・sec以上、より好ましくは150cm
3/cm
2・sec以上とする。保護層の通気度の上限は限定されないが、例えば、600cm
3/cm
2・sec以下が好ましく、500cm
3/cm
2・sec以下がより好ましい。
【0083】
また、保護層の厚さは、好ましくは0.05〜0.7mmとする。保護層の厚さを上記範囲内にすることにより、基材としての剛性と柔軟性のバランスを良好なものにできる。
【0084】
保護層は、その形態は特に限定されないが、例えば、シート状の布帛、多孔フィルム、多孔膜等が挙げられる。
【0085】
保護層の布帛は、特に限定されないが、例えば、織物、編物、レース、網、不織布等の各種布帛が挙げられる。また、保護層の布帛は、液遮蔽層の素材の欄で挙げた各種繊維から形成されることが好ましい。これらの繊維は、単独で使用してもよく、混紡、混綿、交絡、交編して使用してもよい。
【0086】
また、保護層の多孔フィルム、または保護層の多孔膜を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、共重合ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、アクリレート等が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、混合あるいは順にコーティングすることにより積層構造としてもよい。
【0087】
液遮蔽層と保護層を複合化する方法としては、例えば、液遮蔽層と保護層間を、接着層を介して固定する方法が挙げられる。複合化方法としては、(1)ポリウレタン系接着剤、アクリル酸エステル系エマルジョン等に代表される各種化学系接着剤を液遮蔽層と保護層間に塗工することによりこれらを貼り合わせて複合化する方法、(2)熱可塑性樹脂層(布帛、網状体、粉体、フィルム)を介して、液遮蔽層と保護層を熱接着する方法、(3)液遮蔽層と保護層を熱融着により複合化する方法等が例示できる。
【0088】
上記複合化方法(1)により液遮蔽層と保護層間を複合化する場合は、液遮蔽層の通気度低下を防止し、かつ、防護材料の柔軟性を確保するために、化学系接着剤はドット状に部分接着することが好ましい。
【0089】
上記複合化方法(2)により液遮蔽層と保護層間を複合化する場合は、熱可塑性樹脂として、例えば、低融点の共重合ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が例示できる。また、熱可塑性樹脂からなる布帛を介して複合化する場合、保護層の布帛は、目付が5〜30g/m
2程度と低いことが好ましい。特に、保護層の布帛として不織布を使用することにより、接着層を均一の厚さにすることができるため好ましい。これにより、接着剤を塗布する場合に比べ、接着剤の斑が少なくなるため、通気性や吸着性能に劣る箇所が生じにくくなる。
【0090】
上記複合化方法(3)により液遮蔽層と保護層間を複合化する場合は、熱エンボス加工、超音波融着、高周波融着等が例示できる。液遮蔽層の通気度低下を防止するために、融着部分は少ない方が好ましい。
【0091】
本発明の防護材料を用いることにより、例えば、液状および粒子状有機化学物質から身体を守る防護衣、防護手袋、防護靴下、防護フード、フィルター、防護天幕、寝袋等が得られる。
【0092】
以上、本発明の防護材料について説明した。
【0093】
本発明の防護衣は、本発明の防護材料を素材として用いて、従来公知の方法により製造することができる。
【0094】
更に、本発明には、使用済みの本発明の防護衣を、分解せずに撥水撥油剤に浸して、撥水撥油加工を施す工程を含む再生防護衣の製造方法も含まれる。
【0095】
再生防護衣の製造方法は、使用済みの本発明の防護衣を、分解せずに撥水撥油剤に浸して撥水撥油加工を施せばよく、従来公知の方法を採用することができる。
【0096】
例えば、含浸加工を行う場合の好ましい態様は、以下のとおりである。
【0097】
使用済みの本発明の防護衣を、分解せずに撥水撥油剤に浸した後、脱水し、乾燥して、高温域でキュアリングを行うことが好ましい。
【0098】
撥水撥油剤として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ワックス等を0.1〜10wt%含有する溶液を用いることが好ましい。
【0099】
撥水撥油剤の添着量は、撥水撥油剤固形分で、0.1〜10wt%が好ましい。
【0100】
含浸加工は、10〜30℃で0.5〜3分間行い、遠心脱水機等で脱水を1〜5分間行うことが好ましい。
【0101】
含浸加工後の乾燥は、100〜120℃で10〜60分間行うことが好ましい。
【0102】
乾燥後のキュアリングは、110〜185℃で5〜30分間行うことが好ましい。これにより、優れた撥水撥油性を再度付与することができる。但し、使用済みの防護衣に熱変性し易いプラスティック材料等が含まれる場合には、乾燥後のキュアリングは、110〜125℃で5〜30分間行うことが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0104】
(撥油度)
撥油度は、AATCC Test Method 118−2002に記載の方法に基づいて測定した。すなわち、表1に示した試験溶液を、液遮蔽層の上の5カ所に、それぞれ直径が約5mmになるように約0.6cm上方から滴下した。滴下から30秒後に、目視にて、5滴とも浸透しなかった試験液の最高の等級を撥油度とした。上記浸透しなかったとは、下記A〜DのうちAまたはBの状態を意味する。更に、5滴のうち少なくとも3滴が下記Bの状態であった場合は、該等級から−0.5級とした等級を、撥油度とした。
A.滴が十分な丸みを帯びているもの。
B.滴が丸みを帯びているが、滴下部分が部分的に黒ずんでいるもの。
C.ウィッキングが発生および/または完全に浸透しているもの。
D.完全に浸透しているもの。
【0105】
【表1】
【0106】
(平均単繊維直径)
平均単繊維直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影を行い、2000倍または5000倍のSEM画像に映し出された多数の繊維からランダムに20本の繊維を選び、単繊維直径を測定した。測定した20本の単繊維直径の平均値を算出し、平均単繊維直径とした。
【0107】
(目付)
目付は、JIS L1096(2010)の8.3.2(標準状態における単位面積当たりの質量)に記載の方法に基づいて測定した。
【0108】
(融点)
融点は、示差走査熱量計DSCを用い、昇温速度20℃/分で測定した。
【0109】
(通気度)
通気度は、JIS L1096(2010)の8.26.1 A法(フラジール形法)に記載の方法に基づいて測定した。
【0110】
(撥水度)
撥水度は、JIS L1092(2009)の7.2 撥水度試験(スプレー試験)に記載の方法に基づいて測定した。以下の基準で撥水度を決定した。
1級.表面全体に湿潤を示すもの。
2級.表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤があるもの。
3級.表面に小さな個々の水滴上の湿潤を示すもの。
4級.表面は湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの。
5級.表面に湿潤や水滴の付着がないもの。
【0111】
(最大細孔径)
最大細孔径は、バブルポイント法(JIS K 3832)に基づき、PMI社製のキャピラリー・フロー・ポロメーター「モデル:CFP−1200AE」を用い、測定サンプル径を20mmとして測定した。バブルポイント圧力における細孔径を求めて、最大細孔径とした。
【0112】
(耐液防護性試験)
耐液防護性試験の説明図を
図1に示す。スライドガラス6上にろ紙5を置き、その上に外層付加層3、液遮蔽層4を配置し、試験液2(赤色染料を溶解したフタル酸ジプロピル)10μLを滴下し、試験液2上へおもり1を乗せ加圧(1kg/cm
2)し、24時間経過後に、ろ紙の呈色の程度により耐液防護性を判定した。呈色なしを、耐液防護性に優れているとして○、呈色ありを、耐液防護性に劣っているとして×と評価した。
【0113】
<実施例1>
液遮蔽層として、ポリアミド樹脂からなるメルトブローン不織布(融点250℃、目付10g/m
2、平均単繊維直径0.94μm、最大細孔径10.3μm、厚さ120μm、通気度23cm
3/cm
2・sec)を使用し、5wt%のフッ素系撥水撥油剤(明成化学工業株式会社製 アサヒガード AG 7105)を含む25℃の加工浴に、1分間浸漬して、マングルでニップして脱水し、100℃で2分間乾燥後、170℃で2分間キュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で2.5wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。
【0114】
外層付加層(上層)として、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるスパンボンド法により製造された長繊維のスパンボンド不織布(融点260℃、目付30g/m
2、平均単繊維直径11.5μm、最大細孔径115.2μm、厚さ190μm、通気度327cm
3/cm
2・sec)を使用し、上記メルトブローン不織布と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で2.8wt%添着させた。このようにして得られた外層付加層の撥水度および撥油度を測定した。
【0115】
液遮蔽層と外層付加層をこの順に積層し、1インチダイヤ模様にて超音波融着して積層体を得た。次いで、この積層体の耐液防護性を評価した。
【0116】
<実施例2>
液遮蔽層として、実施例1と同じメルトブローン不織布を使用し、2wt%のフッ素系撥水撥油剤を含む加工浴を用いたこと以外は実施例1と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で1.0wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。次いで、実施例1に記載の外層付加層を重ねて実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0117】
<実施例3>
液遮蔽層として、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなるメルトブローン不織布(融点225℃、目付30g/m
2、平均単繊維直径1.93μm、最大細孔径13.8μm、厚さ260μm、通気度32cm
3/cm
2・sec)を使用し、実施例1と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で2.8wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。次いで、実施例1に記載の外層付加層を重ねて実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0118】
<実施例4>
液遮蔽層として、ポリアミド樹脂からなるメルトブローン不織布(融点250℃、目付40g/m
2、平均単繊維直径0.94μm、最大細孔径10.3μm、厚さ400μm、通気度8cm
3/cm
2・sec)を使用し、実施例1と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で2.5wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。次いで、実施例1に記載の外層付加層を重ねて実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0119】
<実施例5>
液遮蔽層として、実施例1に記載の液遮蔽層を用いた。
【0120】
外層付加層(上層)として、実施例1と同じスパンボンド不織布に撥水撥油加工を施さないものを用い、撥水度および撥油度を測定した。
【0121】
液遮蔽層と外層付加層をこの順に積層し、実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0122】
<実施例6>
液遮蔽層として、実施例1に記載の液遮蔽層を用いた。
【0123】
外層付加層(上層)として、ポリエチレンテレフタレート短繊維を用いたスパンレース不織布(融点260℃、目付30g/m
2、平均単繊維直径12.9μm、最大細孔径152.2μm、厚さ440μm、通気度334cm
3/cm
2・sec)に撥水撥油加工を施さないものを用い、撥水度および撥油度を測定した。
【0124】
液遮蔽層と外層付加層をこの順に積層し、実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0125】
<実施例7>
液遮蔽層として、実施例1に記載の液遮蔽層を用いた。
【0126】
外層付加層(上層)として、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるスパンボンド法により製造された長繊維のスパンボンド不織布(融点260℃、目付15g/m
2、平均単繊維直径11.5μm、最大細孔径206.1μm、厚さ110μm、通気度585cm
3/cm
2・sec)に撥水撥油加工を施さないものを用い、撥水度および撥油度を測定した。
【0127】
液遮蔽層と外層付加層をこの順に積層し、実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0128】
<
参考例1>
液遮蔽層として、実施例1に記載の液遮蔽層を用いた。
【0129】
外層付加層(上層)として、綿糸40番手を使用した平織物(融点:溶解せずに240℃程度で炭化)、目付110g/m
2、平均単繊維直径140μm、最大細孔径90.6μm、厚さ240μm、通気度105cm
3/cm
2・sec)を使用し、実施例1と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で1.3wt%添着させた。このようにして得られた外層付加層の撥水度および撥油度を測定した。
【0130】
液遮蔽層と外層付加層をこの順に重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0131】
<
参考例2>
液遮蔽層として、実施例1に記載の液遮蔽層を用いた。
【0132】
外層付加層(上層)として、
参考例1と同じ平織物に撥水撥油加工を施さないものを用
い、撥水度および撥油度を測定した。
【0133】
液遮蔽層と外層付加層をこの順に重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0134】
<実施例10>
液遮蔽層として、実施例1に記載の液遮蔽層を用いた。
【0135】
外層付加層(上層)として、綿糸27番手を使用した平織物(融点:溶解せずに240℃程度で炭化)、目付36g/m
2、平均単繊維直径215μm、最大細孔径676μm、厚さ360μm、通気度563cm
3/cm
2・sec)に撥水撥油加工を施さないものを用い、撥水度および撥油度を測定した。
【0136】
液遮蔽層と外層付加層をこの順に重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0137】
<比較例1>
液遮蔽層として、実施例6と同じスパンレース不織布を使用し、実施例1と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で3.0wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。次いで、実施例8に記載の外層付加層を重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0138】
<比較例2>
液遮蔽層として、実施例1に記載の外層付加層を用いた。次いで、比較例1に記載の外層付加層を重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0139】
<比較例3>
液遮蔽層として、実施例1と同じメルトブローン不織布を使用し、0.5wt%のフッ素系撥水撥油剤を含む加工浴を用いたこと以外は実施例1と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で0.3wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。次いで、比較例1に記載の外層付加層を重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0140】
<比較例4>
液遮蔽層として、実施例4と同じメルトブローン不織布を使用し、0.5wt%のフッ素系撥水撥油剤を含む加工浴を用いたこと以外は実施例1と同様に含浸加工、脱水、乾燥、およびキュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で0.3wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。次いで、比較例1に記載の外層付加層を重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0141】
<比較例5>
液遮蔽層として、ポリプロピレン樹脂からなるメルトブローン不織布(融点165℃、目付15g/m
2、平均単繊維直径1.76μm、最大細孔径11.7μm、厚さ180μm、通気度26cm
3/cm
2・sec)を使用して、実施例1と同様に含浸加工、脱水した後、100℃で2分間乾燥後、120℃で2分間キュアリングを施し、撥水撥油剤固形分で2.5wt%添着させた。このようにして得られた液遮蔽層の撥水度および撥油度を測定した。次いで、比較例1に記載の外層付加層を重ね合わせ、耐液防護性を評価した。
【0142】
<比較例6>
実施例1に記載の液遮蔽層単層について、耐液防護性を評価した。
【0143】
<比較例7>
液遮蔽層として、比較例1に記載の液遮蔽層を用いた。次いで、実施例1に記載の外層付加層を重ねて実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0144】
<比較例8>
液遮蔽層および外層付加層として比較例1に記載の液遮蔽層を2枚重ね、実施例1と同様の積層方法により得られた積層体の耐液防護性を評価した。
【0145】
以上の結果を表2、3に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
表2に示すように、本発明で規定する要件を全て満足する実施例1〜
7、10
、および参考例1、2は、耐液防護性に優れていた。
【0149】
これに対して、表3の比較例1〜8は本発明で規定するいずれかの要件を満足しない例であり、耐液防護性が低下していた。
【0150】
詳細には、比較例1、2、7、8は、液遮蔽層を構成する熱可塑性樹脂の繊維の平均単繊維直径および最大細孔径が大きいため耐液防護性が低下した。
【0151】
比較例3、4は、撥水撥油剤の添着量が少ないため、液遮蔽層の撥油度が低くなり耐液防護性が低下した。
【0152】
比較例5は、液遮蔽層の融点が低いためキュアリングの温度を低くした結果、液遮蔽層の撥油度が低くなり耐液防護性が低下した。
【0153】
比較例6は、外層付加層がないため、液遮蔽層への加圧負荷が大きくなり耐液防護性が低下した。
【0154】
なお、上記実施例においては、融点、目付、平均単繊維直径、最大細孔径、通気度は撥水撥油加工前の不織布について測定したが、撥水撥油加工後もほぼ同じ値を示すことを確認している。
【解決手段】外層付加層と、布帛からなる液遮蔽層をそれぞれ少なくとも1層以上有する防護材料であって、前記液遮蔽層は、平均単繊維直径:0.5〜10μmおよび融点:170℃以上の熱可塑性樹脂の繊維から構成され、且つAATCC試験法118−2002による撥油度が5.5級以上、最大細孔径が1.0〜100μmである防護材料。