特許第6011739号(P6011739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6011739
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】制御装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20161006BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20161006BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
   H02M7/48 N
   H02M7/493
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-91941(P2016-91941)
(22)【出願日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 一喜
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】原 篤史
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−005329(JP,A)
【文献】 特開2008−131808(JP,A)
【文献】 特開昭59−059083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電力を、各々が変換して出力する複数の電力変換部と、
前記複数の電力変換部の出力電圧の各位相を、予め定められた目標位相に同期させる同期部と、
前記複数の電力変換部の各位相が前記目標位相に同期された後に、前記複数の電力変換部に電力を外部へ出力させる出力部と
を備え
前記複数の電力変換部は、
出力電圧の位相が前記目標位相であるマスタ電力変換部と、
前記マスタ電力変換部の前記目標位相に出力電圧の各位相が同期される複数のスレーブ電力変換部と
を含み、
前記同期部は、前記複数のスレーブ電力変換部の出力周波数を制御する周波数制御部を含み、
自立運転モードにおいて、
前記周波数制御部は、前記複数のスレーブ電力変換部の出力周波数を、前記マスタ電力変換部の出力周波数に同期させる制御装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記複数の電力変換部の出力電圧の位相のゼロクロスポイントにおいて、前記複数の電力変換部の出力を開始させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記複数のスレーブ電力変換部の各位相が前記目標位相に同期された後に、前記複数のスレーブ電力変換部のそれぞれの電力を同一のタイミングで外部へ出力させる
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記複数のスレーブ電力変換部の各位相が前記目標位相に同期された後に、前記マスタ電力変換部に電力を外部へ出力させる
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記複数のスレーブ電力変換部の各出力端子に接続された複数の遮断器を更に備え、
前記出力部は、前記複数の遮断器を投入することにより、前記複数のスレーブ電力変換部に電力を出力させる
請求項からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
電力系統と連系して動作する系統連系運転モードと、前記電力系統と独立して動作する自立運転モードとを、前記電力系統からの受電状況に応じて切り替える動作制御部
を更に備える
請求項からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記同期部は
前記複数のスレーブ電力変換部の出力電圧を制御する電圧制御部
を備え
請求項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記自立運転モードにおいて、
前記電圧制御部は、前記出力電圧の上昇指令時に、前記複数のスレーブ電力変換部の出力無効電力に基づいて、前記複数のスレーブ電力変換部の出力電圧をドループ制御する
請求項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記自立運転モードにおいて、
前記周波数制御部は、前記複数のスレーブ電力変換部の各位相が前記目標位相に同期された後であって、前記複数のスレーブ電力変換部の出力電圧が定格電圧に到達する前に、前記複数のスレーブ電力変換部の出力周波数を、前記マスタ電力変換部の出力周波数に同期させる
請求項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記周波数制御部は、前記複数のスレーブ電力変換部の出力電圧が定格電圧に到達した後に、前記複数のスレーブ電力変換部の出力有効電力に基づいて、前記複数のスレーブ電力変換部の出力周波数をドループ制御する
請求項からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
電力系統の受電電圧と前記複数の電力変換部側の母線電圧とが入力され、前記受電電圧と前記母線電圧との間の電圧差および位相差を検出する検出部
を更に備え、
前記動作制御部は、前記受電電圧と前記母線電圧との間の前記電圧差および前記位相差に基づいて、前記受電電圧と前記母線電圧とを同期させる
請求項から10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記検出部は、前記電力系統と、前記複数のスレーブ電力変換部側の系統との電気的な接続を切り替える遮断部を備え、
前記遮断部は、前記受電電圧と前記母線電圧とが同期した後に投入される
請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
入力エネルギーに応じて電力を発生させ、負荷に電力を供給する発電装置と、
電力系統から電力を受電し、前記負荷に電力を供給する受電部と、
請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置と
を備える電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電力安定化装置を用いて自立運転制御することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2007−124797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電力安定化装置に対して系統の容量が大きいので、停電後に電力安定化装置により系統の受電トランスを励磁することは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、入力された電力を、各々が変換して出力する複数の電力変換部と、複数の電力変換部の出力電圧の各位相を、予め定められた目標位相に同期させる同期部と、複数の電力変換部の各位相が目標位相に同期された後に、複数の電力変換部に電力を外部へ出力させる出力部とを備える制御装置を提供する。
【0005】
出力部は、複数の電力変換部の出力電圧の位相のゼロクロスポイントにおいて、複数の電力変換部の出力を開始させてよい。
【0006】
複数の電力変換部は、出力電圧の位相が目標位相であるマスタ電力変換部を含んでよい。また、複数の電力変換部は、マスタ電力変換部の目標位相に出力電圧の各位相が同期される複数のスレーブ電力変換部を含んでよい。
【0007】
出力部は、複数のスレーブ電力変換部の各位相が目標位相に同期された後に、複数のスレーブ電力変換部のそれぞれの電力を同一のタイミングで外部へ出力させてよい。
【0008】
出力部は、複数のスレーブ電力変換部の各位相が目標位相に同期された後に、マスタ電力変換部に電力を外部へ出力させてよい。
【0009】
出力部は、複数のスレーブ電力変換部の各出力端子に接続された複数の遮断器を更に備えてよい。
【0010】
出力部は、複数の遮断器を投入することにより、複数のスレーブ電力変換部に電力を出力させてよい。
【0011】
制御装置は、電力系統と連系して動作する系統連系運転モードと、電力系統と独立して動作する自立運転モードとを、電力系統からの受電状況に応じて切り替える動作制御部を更に備えてよい。
【0012】
同期部は、複数のスレーブ電力変換部の出力周波数を制御する周波数制御部と、複数のスレーブ電力変換部の出力電圧を制御する電圧制御部とを備えてよい。また、自立運転モードにおいて、周波数制御部は、複数のスレーブ電力変換部の出力周波数を、マスタ電力変換部の出力周波数に同期させてよい。
【0013】
自立運転モードにおいて、電圧制御部は、出力電圧の上昇指令時に、複数のスレーブ電力変換部の出力無効電力に基づいて、複数のスレーブ電力変換部の出力電圧をドループ制御してよい。
【0014】
自立運転モードにおいて、周波数制御部は、複数のスレーブ電力変換部の各位相が目標位相に同期された後であって、複数のスレーブ電力変換部の出力電圧が定格電圧に到達する前に、複数のスレーブ電力変換部の出力周波数を、マスタ電力変換部の出力周波数に同期させてよい。
【0015】
周波数制御部は、複数のスレーブ電力変換部の出力電圧が定格電圧に到達した後に、複数のスレーブ電力変換部の出力有効電力に基づいて、複数のスレーブ電力変換部の出力周波数をドループ制御してよい。
【0016】
制御装置は、電力系統の受電電圧と複数の電力変換部側の母線電圧とが入力され、受電電圧と母線電圧との間の電圧差および位相差を検出する検出部を更に備えてよい。
【0017】
動作制御部は、受電電圧と母線電圧との間の電圧差および位相差に基づいて、受電電圧と母線電圧とを同期させてよい。
【0018】
検出部は、電力系統と、複数のスレーブ電力変換部側の系統との電気的な接続を切り替える遮断部を備えてよい。また、遮断部は、受電電圧と母線電圧とが同期した後に投入されてよい。
【0019】
本発明の第2の態様においては、入力エネルギーに応じて電力を発生させ、負荷に電力を供給する発電装置と、電力系統から電力を受電し、負荷に電力を供給する受電部と、制御装置とを備える電力変換システムを提供する。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】電力変換システム200の構成の概要を示す。
図2】電力変換システム200の構成の一例を示す。
図3】電力変換システム200のより具体的な構成の一例を示す。
図4】電力変換システム200のより具体的な構成の一例を示す。
図5A】同期処理状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。
図5B】同期完了状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。
図5C】定格運転状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。
図5D】モード遷移状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、電力変換システム200の構成の概要を示す。本例の電力変換システム200は、制御装置100、発電装置110、負荷120および受電部130を備える。
【0024】
制御装置100は、電力変換装置1、出力部30および同期部40を備える。制御装置100は、発電装置110および受電部130が出力する電力を安定して負荷120に供給するための電力安定化装置の一例である。また、制御装置100は、電力系統と分散電源装置との連系を制御する。
【0025】
電力変換装置1は、蓄電した電力を変換して出力する。一例において、電力変換装置1は、直流電力を交流電力に変換して出力する。電力変換装置1は、電力変換器2および蓄電部3を備える。本例の電力変換装置1は、複数の電力変換器2−1〜2−nおよび複数の蓄電部3−1〜3−nを備える。なお、本明細書において、nは、任意の2以上の整数を指す。
【0026】
複数の電力変換器2−1〜2−nは、入力された電力を変換して各々が出力する。一例において、複数の電力変換器2は、入力された直流電力を交流電力に変換して出力する。複数の電力変換器2−1〜2−nは、互いに並列に接続されている。本明細書において、複数の電力変換器2と称する場合、複数の電力変換器2−1〜2−nを指す。複数の電力変換器2は、パワーコンディショニングシステム(PCS:Power Conditioning System)の一例である。
【0027】
複数の蓄電部3−1〜3−nは、電力を貯蔵する。本例の複数の蓄電部3−1〜3−nは、複数の電力変換器2−1〜2−nにそれぞれ対応して接続される。これにより、蓄電部3は、電力変換器2との間で直流電力を充放電する。例えば、蓄電部3は、蓄電池、フライホイール、揚水発電、キャパシタ等を有する。
【0028】
同期部40は、複数の電力変換器2の出力を互いに同期させる。出力を同期させるとは、出力電圧の位相、周波数および振幅の少なくとも1つを同期させることを指す。例えば、同期部40は、複数の電力変換器2の出力電圧の各位相を、予め定められた目標位相Pに同期させる。目標位相Pは、制御装置100の動作状況に応じて適宜変更されてよい。
【0029】
出力部30は、電力変換装置1が出力した電力を制御装置100の外部に出力するか否かを切り替える。また、出力部30は、電力変換装置1の出力した電力を変圧して出力してもよい。一例において、出力部30は、複数の電力変換器2の出力が同期された後に、複数の電力変換器2から外部へ電力を出力させる。また、出力部30は、複数の電力変換器2から電圧が発生されていないが内部の指令と同期された後に、又は出力電圧を発生したものと同期された後に、複数の電力変換器2から外部へ電力を出力させてよい。本例の出力部30は、複数の電力変換器2の各位相が目標位相Pに同期された後に、複数の電力変換器2に電力を出力させる。
【0030】
例えば、出力部30は、複数の電力変換器2に同一のタイミングで電力を出力させる。より好ましくは、出力部30は、複数の電力変換器2の出力電圧の位相のゼロクロスポイントにおいて、複数の電力変換器2の出力を開始させる。なお、出力部30は、電力を出力するか否かを切り替える遮断器又はスイッチを有してよい。
【0031】
発電装置110は、入力エネルギーを電気に変換することにより発電する。一例において、発電装置110の入力エネルギーは、太陽光および風力等の環境エネルギーである。発電装置110は、複数の発電装置を備えてよい。発電装置110は、発電した電力を負荷120に供給する。また、発電装置110は、発電した電力の一部を制御装置100の蓄電部3に蓄電してもよい。例えば、発電装置110は、複数の風力発電装置又は複数の太陽光発電装置を備える。
【0032】
負荷120は、発電装置110および受電部130から電力が供給される。制御装置100は、発電装置110および受電部130の状態に応じて、負荷120への電力の供給を制御する。これにより、負荷120には、安定した電力が供給される。
【0033】
受電部130は、電力系統から電力を受電する。本明細書において、電力系統とは商用の電力系統を指すがこれに限られない。本例の受電部130には、受電電圧Vの電力が供給される。受電部130は、電力系統から受電した電力を負荷120に供給する。また、受電部130は、電力系統から受電した電力の一部を制御装置100の蓄電部3に蓄電してもよい。受電部130は、平常時、電力系統から電力を安定的に受電するが、停電等が生じると電力系統から安定的に受電できない場合がある。
【0034】
ここで、本明細書に係る制御装置100は、系統連系運転モードと自立運転モードとを有する。一例において、制御装置100は、受電部130の受電状況に応じて、系統連系運転モードと自立運転モードとを切り替える。
【0035】
系統連系運転モードは、制御装置100が電力系統と連系して動作する動作モードである。系統連系運転モードにおいて、受電部130は、電力系統から安定的に電力を受電している。この場合、負荷120には、発電装置110および受電部130からの電力が、制御装置100の制御により安定的に供給される。系統連系運転モードにおいて、制御装置100は、受電部130が受電する電力系統と連系して動作する。
【0036】
自立運転モードは、制御装置100が電力系統と独立して動作する動作モードである。自立運転モードにおいて、受電部130は、電力系統から安定的に電力を受電していない。安定的に電力を受電していない場合とは、電力を全く受電していない場合、又は十分な電力を受電していない場合のいずれかを指す。この場合、負荷120は、制御装置100および発電装置110から電力が供給される。自立運転モードにおいて、制御装置100は、電力系統と連系せずに、自立運転を行う。
【0037】
ここで、電力変換システム200は、複数の発電装置110を並列に接続することにより、発電装置110から負荷120に大きな電力を供給する場合がある。この場合、発電装置110の容量が大きくなる。しかしながら、発電装置110は、気象条件等によって、発電量が変動し、負荷120への電力の供給が不安定になる場合がある。そこで、電力変換システム200は、制御装置100における充電および放電を制御することにより、負荷120に安定的に電力を供給する。但し、系統事故や災害時に停電が生じた場合、従来の蓄電池を用いたインフラ設備への給電には限界がある。電力変換システム200は、制御装置100を自立運転させることにより、制御装置100および発電装置110を用いて負荷120へ安定的に電力を供給する。
【0038】
但し、電力変換システム200は、系統の受電容量が大きくなると、1つの電力変換器2だけでは、停電後に受電トランスを励磁することが困難である。そこで、制御装置100は、複数の電力変換器2を並列に接続し、予め定められたタイミングで電圧を発生させる。これにより、制御装置100は、取り扱える容量を大きくできる。
【0039】
以上の通り、本例の制御装置100は、複数の電力変換器2の出力電圧の位相を同期さることにより、系統の受電容量が大きな場合であっても、給電を開始できる。これにより、制御装置100は、環境の変化に応じて、発電装置110の電力を安定的に負荷120に供給できる。
【0040】
図2は、電力変換システム200の構成の一例を示す。本例の複数の電力変換器2は、n個の内の1つをマスタ電力変換部10とし、その他を複数のスレーブ電力変換部20としている。
【0041】
マスタ電力変換部10は、複数の電力変換器2のうち、出力電圧の位相が目標位相Pである電力変換器2である。即ち、制御装置100は、マスタ電力変換部10とされた電力変換部の出力を目標位相Pとして動作する。マスタ電力変換部10は、蓄電部91に蓄電された電力を変換して出力する。一例において、マスタ電力変換部10は、蓄電部91から入力された直流電力を交流電力に変換して出力する。
【0042】
蓄電部91は、電力を貯蔵する。一例において、蓄電部91は、マスタ電力変換部10との間で直流電力を充放電する。例えば、蓄電部91は、蓄電池、フライホイール、揚水発電、キャパシタ等を有する。即ち、蓄電部91は、蓄電部3の一例である。
【0043】
複数のスレーブ電力変換部20は、複数の蓄電部92に蓄電された電力を変換して出力する。本例の複数のスレーブ電力変換部20は、出力電圧の各位相を、マスタ電力変換部10の出力する目標位相Pに同期される。一例において、複数のスレーブ電力変換部20は、複数の蓄電部92から入力された直流電力を交流電力に変換して出力する。本例の複数のスレーブ電力変換部20は、複数のスレーブ電力変換部20−1〜20−nを有する。
【0044】
なお、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20は、同一の回路構成を有してよい。そして、マスタ電力変換部10と複数のスレーブ電力変換部20とは、動作モードに応じて、互いに異なるタイミングでスイッチを切り替える。即ち、複数の電力変換器2において、いずれの電力変換器2をマスタ電力変換部10に設定するかは、単にいずれの電力変換器2の出力電圧の位相を目標位相Pに設定するかにより決定される。但し、電力変換装置1は、複数の電力変換器2からマスタ電力変換部10に設定する電力変換器2を予め決定していてもよい。
【0045】
複数の蓄電部92は、電力を貯蔵する。一例において、蓄電部92は、スレーブ電力変換部20との間で直流電力を充放電する。例えば、蓄電部92は、蓄電池、フライホイール、揚水発電、キャパシタ等を有する。即ち、蓄電部92は、蓄電部3の一例である。本例の蓄電部92は、複数のスレーブ電力変換部20−1〜20−nに対応して、複数の蓄電部92−1〜92−nを有する。
【0046】
同期部40は、複数の電力変換器2の出力電圧の位相を同期させる。本例の同期部40は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'の位相を、マスタ電力変換部10の出力電圧Vの位相である目標位相Pに同期させる。同期部40は、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20の位相を同期させることにより、ゼロクロスポイントからの立ち上がりのタイミングを揃える。
【0047】
出力部30は、電力変換装置1が出力した電力を制御装置100の外部に出力するか否かを切り替える。例えば、出力部30は、同期部40により、マスタ電力変換部10と複数のスレーブ電力変換部20との出力電圧との電圧および位相が同期した後に、出力部30は、電力変換装置1の出力した電力を制御装置100の外部に出力する。この場合、出力部30は、複数のスレーブ電力変換部20のそれぞれの電力を同一のタイミングで外部へ出力させてよい。また、出力部30は、複数のスレーブ電力変換部20の各位相が目標位相Pに同期された後に、マスタ電力変換部10に電力を外部へ出力させてもよい。
【0048】
図3は、電力変換システム200のより具体的な構成の一例を示す。本例の出力部30は、入力トランス31、入力トランス32、受電トランス33、スイッチ34、遮断器35、スイッチ36および遮断器37を備える。
【0049】
発電装置110は、複数の発電装置110−1〜110−mを備える。mは、2以上の任意の整数である。本例の複数の発電装置110−1〜110−mは、それぞれ風力発電装置で構成される。複数の発電装置110−1〜110−mは、並列に接続されている。このように、複数の発電装置110−1〜110−mを並列に接続すると、発電装置110の容量が大きくなる。
【0050】
入力トランス31は、マスタ電力変換部10の出力端子に接続される。本例の入力トランス31は、遮断器35を介して、マスタ電力変換部10の出力端子に接続されている。本例の入力トランス31は、マスタ電力変換部10の出力を変圧する。
【0051】
入力トランス32は、スレーブ電力変換部20の出力端子に接続される。本例の入力トランス32は、複数のスレーブ電力変換部20−1〜20−nの出力端子にそれぞれ接続された複数の入力トランス32−1〜32−nを備える。本例の複数の入力トランス32−1〜32−nは、遮断器37−1〜37−nを介して、複数のスレーブ電力変換部20−1〜20−nの出力端子にそれぞれ接続されている。
【0052】
なお、入力トランス31および複数の入力トランス32は、それぞれ同一の構成を備えてよい。即ち、制御装置100が有する複数の入力トランスにおいて、いずれを入力トランス31に設定するかは、単にいずれの入力トランスをマスタ電力変換部10に接続するかにより決定される。但し、制御装置100は、複数の入力トランスから入力トランス31に設定する入力トランスを予め決定していてもよい。
【0053】
受電トランス33は、一端が制御装置100の出力端子に接続され、他端が入力トランス31および複数の入力トランス32−1〜32−nに接続される。受電トランス33は、制御装置100に入出力される電力を受電して変圧する。
【0054】
遮断器35は、マスタ電力変換部10と入力トランス31とを電気的に接続するか否かを切り替える。遮断器35は、投入されるとマスタ電力変換部10と入力トランス31とを電気的に接続する。また、遮断器35は、投入されない場合、マスタ電力変換部10と入力トランス31とを電気的に遮断する。一例において、遮断器35は、複数のスレーブ電力変換部20の各位相が目標位相Pに同期された後に投入される。
【0055】
遮断器37は、複数の遮断器37−1〜37−nを備える。複数の遮断器37−1〜37−nは、スレーブ電力変換部20−1〜20−nと入力トランス32−1〜32−nとを電気的に接続するか否かをそれぞれ切り替える。遮断器37は、投入されると複数のスレーブ電力変換部20−1〜20−nと入力トランス32−1〜32−nとを電気的に接続する。また、遮断器37は、投入されない場合、複数のスレーブ電力変換部20−1〜20−nと入力トランス32−1〜32−nとを電気的に遮断する。一例において、複数の遮断器37は、複数のスレーブ電力変換部20の各位相が目標位相Pに同期された後に投入される。
【0056】
目標電圧信号線93は、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20が出力する出力電圧の目標電圧を設定する。目標電圧信号線93は、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20に設定された目標電圧を入力する。目標電圧は、目標位相Pを含んでよい。
【0057】
スイッチ34は、目標電圧信号線93と、マスタ電力変換部10の出力端子とを接続するか否かを切り替える。本例の目標電圧信号線93は、スイッチ34がオフの状態で、マスタ電力変換部10から目標電圧を検出する。
【0058】
スイッチ36−1〜36−nは、目標電圧信号線93と、複数のスレーブ電力変換部20の出力端子とを接続するか否かを切り替える。本例の目標電圧信号線93は、スイッチ36−1〜36−nがオンの状態で、複数のスレーブ電力変換部20に目標電圧を入力する。これにより、制御装置100は、スレーブ電力変換部20の出力電圧V'を目標電圧に設定する。
【0059】
指令状態信号線94は、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20に指令状態を示す信号を伝達する。一例において、指令状態信号線94は、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20に、制御装置100の動作モードに関する信号を入力する。例えば、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20は、自立運転モードの動作指示を示す信号が入力されると、自立運転モードで動作する。また、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20は、指令状態信号線94からの信号に応じて、スイッチ34,36のオンオフおよび遮断器35,37を投入するか否かを制御してもよい。
【0060】
本例の制御装置100は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'を、マスタ電力変換部10からの目標電圧に同期する。制御装置100は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'の同期後、複数の遮断器37のそれぞれを投入する。例えば、制御装置100は、複数のスレーブ電力変換部20の同期確認後、出力電圧指令波形の零位相ポイント通過後に、起動信号を指令状態信号線94を通じて発信する。制御装置100は、起動信号の発振後、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'のゼロクロスポイントにて遮断器37を投入する。そして、制御装置100は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'を定格電圧まで上昇させる。
【0061】
図4は、電力変換システム200の構成の概要を示す。本例の同期部40は、周波数制御部50および電圧制御部60を備える。また、制御装置100は、動作制御部70を更に備える。
【0062】
周波数制御部50は、電力変換装置1の出力周波数を制御する。一例において、周波数制御部50は、複数のスレーブ電力変換部20の出力周波数を制御する。また、周波数制御部50は、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20の出力周波数を制御してよい。例えば、周波数制御部50は、複数のスレーブ電力変換部20の出力周波数を、周波数制御部50の出力周波数に同期させる。本明細書において、出力周波数とは、出力電圧の周波数を指す。
【0063】
電圧制御部60は、電力変換装置1の出力電圧を制御する。一例において、電圧制御部60は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'を制御する。また、電圧制御部60は、マスタ電力変換部10および複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'を制御してよい。例えば、電圧制御部60は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'を、マスタ電力変換部10の出力電圧Vに同期させる。
【0064】
動作制御部70は、電力系統からの受電状況に応じて、制御装置100の動作を制御する。一例において、動作制御部70は、周波数制御部50および電圧制御部60の動作を制御することにより制御装置100の動作を制御する。例えば、動作制御部70は、制御装置100の動作モードに応じて、周波数制御部50および電圧制御部60の動作を制御する。
【0065】
図5A図5B図5Cおよび図5Dは、電力変換システム200の具体的な構成の一例を示す。図5A図5Dは、それぞれ同期処理状態、同期完了状態、定格運転状態、モード遷移状態の各状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。
【0066】
図5Aは、同期処理状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。同期処理状態とは、自立運転モードにおいて、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'の位相を、目標位相Pに同期させる処理を実行している状態を示す。本例の制御装置100は、検出部80を更に備える。
【0067】
周波数制御部50は、スイッチ51、PLL調節器52、スイッチ53、スイッチ54、減算器55および周波数ドループ制御部56を備える。周波数制御部50は、動作モードに応じて、スイッチ51、スイッチ53およびスイッチ54を予め定められた端子に切り替える。
【0068】
スイッチ51は、マスタ電力変換部10の出力端子が接続されたb側端子に切り替えられている。また、遮断器35が投入されず、スイッチ34がオンされている。これにより、スイッチ51は、PLL調節器52に出力電圧Vを入力する。
【0069】
スイッチ53は、周波数制御部50による周波数制御を、電力変換装置1の出力周波数に基づく周波数制御又は周波数ドループ制御部56による周波数ドループ制御に切り替える。本例のスイッチ53は、PLL調節器52が接続されたa側端子に切り替えられている。スイッチ53は、周波数制御用の周波数制御部50の出力端子から、PLL調節器52の出力信号を出力する。例えば、スイッチ53は、PLL調節器52の出力信号を複数のスレーブ電力変換部20に出力する。
【0070】
スイッチ54は、内部指令波形Cが入力されるa側端子に切り替えられている。これにより、スイッチ54は、PLL調節器52に内部指令波形Cを入力する。内部指令波形Cは、動作制御部70により生成されてよい。
【0071】
PLL調節器52には、マスタ電力変換部10の出力電圧Vおよび内部指令波形Cが入力される。PLL調節器52は、マスタ電力変換部10の出力電圧Vを内部指令波形Cに同期させて出力する。一例において、周波数制御部50は、PLL調節器52において同期した信号を複数のスレーブ電力変換部20に出力する。これにより、周波数制御部50は、複数のスレーブ電力変換部20の出力周波数を制御する。PLL調節器52は、マスタ電力変換部10と複数のスレーブ電力変換部20との同期を確認する機能を有してよい。
【0072】
検出部80は、電力系統の受電電圧Vと電力変換器2側の母線電圧Vとを検出する。また、検出部80は、受電電圧Vと母線電圧Vとの間の電圧差および位相差を検出する。遮断部83は、電力系統と、母線側の系統とを電気的に接続するか否かを切り替える。検出部80は、受電側検出線81、母線側検出線82および遮断部83を備える。
【0073】
受電側検出線81は、受電部130の受電電圧Vを検出する。受電側検出線81は、受電部130と動作制御部70との間に設けられる。受電側検出線81は、検出した受電電圧Vを動作制御部70に出力する。
【0074】
母線側検出線82は、制御装置100の母線電圧Vを検出する。母線側検出線82は、制御装置100の母線と動作制御部70との間に設けられる。母線側検出線82は、検出した母線電圧Vを動作制御部70に出力する。
【0075】
遮断部83は、受電部130と制御装置100とを電気的に接続するか否かを切り替える。また、遮断部83は、受電部130と負荷120とを電気的に接続するか否か切り替えてよい。遮断部83は、投入された場合に、受電部130と負荷120とを電気的に接続する。遮断部83は、受電電圧Vと母線電圧Vとが同期された後に投入される。即ち、同期処理状態において、遮断部83は、投入されていない。
【0076】
図5Bは、同期完了状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。同期完了状態とは、自立運転モードにおいて、複数のスレーブ電力変換部20の出力がマスタ電力変換部10の出力に同期した後であって、制御装置100の出力電圧が定格電圧に到達する前の状態を指す。
【0077】
制御装置100は、同期完了状態において、予め定められたタイミングで電力の出力を開始する。例えば、制御装置100は、複数のスレーブ電力変換部20の全ての同期確認が取れると、指令状態信号線94により同期された旨を示す信号が動作制御部70から伝達されることにより出力を開始する。制御装置100は、出力の開始に応じて、出力電圧を上昇させてよい。
【0078】
周波数制御部50は、同期完了状態において、マスタ電力変換部10の出力周波数に同期して、複数のスレーブ電力変換部20の出力周波数を制御する。一例において、周波数制御部50は、複数のスレーブ電力変換部20の出力周波数がマスタ電力変換部10の出力周波数に同期した状態を保持する。スイッチ54は、同期完了状態において、出力電圧V'が入力されるb側端子に切り替えられていてよい。
【0079】
動作制御部70は、検出部80と電気的に接続されている。動作制御部70は、検出部80を介して受電部130および負荷120に接続されている。本例の動作制御部70は、出力電圧指令Vとして出力電圧の上昇指令を出力する。同期完了状態において、動作制御部70は、複数のスレーブ電力変換部20の遮断器37−1〜37−nを投入する。全遮断器37の投入が完了すると、複数のスレーブ電力変換部20は、予め定められた時定数にて出力電圧指令Vを上昇させる。また、動作制御部70は、受電電圧Vと母線電圧Vとの間の電圧差および位相差に基づいて、受電電圧Vと母線電圧Vとを同期させてよい。
【0080】
電圧制御部60は、スイッチ61、減算器62、加算器63、電圧調節器64および電圧ドループ制御部65を備える。電圧制御部60は、動作モードに応じて、スイッチ61を予め定められた端子に切り替える。電圧制御部60は、同期完了状態において、複数のスレーブ電力変換部20の出力無効電力に基づいて、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'をドループ制御する。また、電圧制御部60は、複数のスレーブ電力変換部20がマスタ電力変換部10の目標電圧に同期した後、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'を予め定められた時間をかけて定格電圧まで上昇させる。なお、複数のスレーブ電力変換部20の出力無効電力は、母線電圧Vおよび出力電流Iから算出される。
【0081】
スイッチ61は、b端子側に切り替えられている。スイッチ61のb端子側には、動作制御部70からの出力電圧指令Vが入力される。出力電圧指令Vは、同期完了状態において、予め定められた時定数で出力電圧を上昇させるように指令する。一例において、予め定められた時間とは、複数のスレーブ電力変換部20のそれぞれの出力が過電流にならない時定数にて電圧を上昇させる時間を指す。例えば、電圧制御部60は、トランスの磁束時定数による励磁電流に応じて複数のスレーブ電力変換部20の出力が過電流にならないように電圧を上昇させる。
【0082】
電圧ドループ制御部65は、ドループ制御用の調整電圧Vを生成する。電圧ドループ制御部65は、生成した調整電圧Vを減算器62に入力する。
【0083】
減算器62には、出力電圧指令V、複数のスレーブ電力変換部20からの出力電圧V'および調整電圧Vが入力される。減算器62は、出力電圧指令Vから出力電圧V'および調整電圧Vを減算する。
【0084】
加算器63は、減算器62の出力に動作制御部70からの信号を加算して制御装置100に出力する。本例の加算器63は、減算器62の出力に電圧補正Vを加算する。これにより、電圧制御部60は、制御装置100の出力電圧を制御する。
【0085】
電圧調節器64は、加算器63で加算した電圧を調整して出力する。一例において、電圧調節器64は、入力された電圧の平均値を算出して出力する。例えば、平均値は、予め定められた期間、電圧調節器64に入力された電圧の平均値である。電圧調節器64は、算出した電圧を複数のスレーブ電力変換部20に出力してよい。また、電圧調節器64は、算出した電圧を動作制御部70に出力してもよい。
【0086】
図5Cは、定格運転状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。定格運転状態とは、自立運転モードにおいて、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'が定格電圧に到達している状態を指す。
【0087】
周波数制御部50は、定格運転状態において、複数のスレーブ電力変換部20の出力有効電力に基づいて、複数のスレーブ電力変換部20の出力周波数をドループ制御する。なお、複数のスレーブ電力変換部20の出力有効電力は、母線電圧Vおよび出力電流Iから算出される。
【0088】
スイッチ53は、減算器55に接続されたb端子側に切り替えられている。スイッチ53は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'が定格電圧まで上昇したタイミングで、a側端子からb側端子に切り替えられてよい。
【0089】
減算器55には、動作制御部70から周波数補正Fが入力され、周波数ドループ制御部56から周波数ドループ制御用の信号が入力される。減算器55は、動作制御部70の周波数補正Fから周波数ドループ制御部56の周波数制御用の信号を減算する。減算器55は、減算した信号をスイッチ53に出力する。これにより、周波数制御部50は、複数のスレーブ電力変換部20に対して周波数ドループ制御を実行する。
【0090】
電圧制御部60は、定格運転状態において、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧を電圧ドループ制御する。本例のスイッチ61は、b端子側に接続されたままである。
【0091】
本例の制御装置100は、複数のスレーブ電力変換部20の出力電圧V'が定格電圧まで到達した後は、定常の定格運転状態を確立させる。また、本例の制御装置100は、定格運転状態において、マスタ電力変換部10を複数のスレーブ電力変換部20と並列に投入されてよい。
【0092】
図5Dは、モード遷移状態における電力変換システム200の構成の一例を示す。モード遷移状態は、自立運転モードから系統連系運転モードに切り替えられる状態を指す。一例において、自立運転モードから系統連系運転モードに切り替えられる場合とは、受電部130が停電等から復電される場合である。
【0093】
遮断部83は、受電部130が受電した電力を負荷120に供給するか否かを切り替える。遮断部83は、投入された場合に受電部130が受電した電力を負荷120に供給し、投入されていない場合に受電部130が受電した電力の負荷120への供給を遮断する。また、遮断器35,37が投入されているので、検出部80の母線側には母線電圧Vが入力されている。
【0094】
動作制御部70は、受電側検出線81を介して検出した電圧と、母線側検出線82を介して検出した電圧との位相差および電圧差を演算する。これにより、動作制御部70は、周波数補正Fおよび電圧補正Vを生成する。動作制御部70は、生成した周波数補正Fを減算器55に出力する。また、動作制御部70は、生成した電圧補正Vを加算器63に出力する。
【0095】
周波数制御部50は、減算器55により、周波数補正Fから、電圧ドループ制御部65の出力した周波数を減算する。周波数制御部50は、減算器55で減算した周波数を制御装置100に出力する。
【0096】
電圧制御部60は、加算器63により減算器62の出力した電圧に電圧補正Vを加算する。電圧制御部60は、加算器63で加算した電圧を電圧調節器64で調整して、制御装置100に出力する。
【0097】
これにより、電力変換システム200は、受電電圧Vと母線電圧Vとを同期する。一例において、受電電圧Vと母線電圧Vとの同期とは、互いの位相および電圧レベルが等しくなることを指す。動作制御部70は、受電電圧Vと母線電圧Vとが同期したと判断すると、遮断部83を投入する。動作制御部70は、遮断部83の投入確認信号を複数のスレーブ電力変換部20に出力して、複数のスレーブ電力変換部20を停止させる。そして、制御装置100は、自立運転モードから系統連系運転モードに切り替える。これにより、本例の電力変換システム200は、母線電圧Vを落とし、発電装置110を停止させることなく、動作モードを変更できる。
【0098】
以上の通り、本例の制御装置100は、母線電圧Vを落とし、発電装置110を停止することなく、自立運転モードから系統連系運転モードに動作モードを切り替える。よって、本例の制御装置100は、復旧時に、自立運転モードから系統連系運転モードへの移行を無瞬断にて切り替えることのできる電力変換装置の自立並列同時起動を実現する。なお、本明細書に係る制御装置100は、目標電圧信号等の各信号として、実際の波形ではなく、制御信号を用いてもよい。
【0099】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0100】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0101】
1・・・電力変換装置、2・・・電力変換器、3・・・蓄電部、10・・・マスタ電力変換部、20・・・スレーブ電力変換部、30・・・出力部、31・・・入力トランス、32・・・入力トランス、33・・・受電トランス、34・・・スイッチ、35・・・遮断器、36・・・スイッチ、37・・・遮断器、40・・・同期部、50・・・周波数制御部、51・・・スイッチ、52・・・PLL調節器、53・・・スイッチ、54・・・スイッチ、55・・・減算器、56・・・周波数ドループ制御部、60・・・電圧制御部、61・・・スイッチ、62・・・減算器、63・・・加算器、64・・・電圧調節器、65・・・電圧ドループ制御部、70・・・動作制御部、80・・・検出部、81・・・受電側検出線、82・・・母線側検出線、83・・・遮断部、91・・・蓄電部、92・・・蓄電部、93・・・目標電圧信号線、94・・・指令状態信号線、100・・・制御装置、110・・・発電装置、120・・・負荷、130・・・受電部、200・・・電力変換システム
【要約】
【課題】電力を安定的に供給するための制御装置を提供する。
【解決手段】入力された電力を、各々が変換して出力する複数の電力変換部と、前記複数の電力変換部の出力電圧の各位相を、予め定められた目標位相に同期させる同期部と、前記複数の電力変換部の各位相が前記目標位相に同期された後に、前記複数の電力変換部に電力を外部へ出力させる出力部とを備える制御装置を提供する。また、入力エネルギーに応じて電力を発生させ、負荷に電力を供給する発電装置と、電力系統から電力を受電し、負荷に電力を供給する受電部と、制御装置とを備える電力変換システムを提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D