特許第6011741号(P6011741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6011741-台車の搬送装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011741
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】台車の搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 35/08 20060101AFI20161006BHJP
   B61B 13/12 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B65G35/08 Z
   B61B13/12 F
【請求項の数】13
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-507930(P2016-507930)
(86)(22)【出願日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】JP2015066147
(87)【国際公開番号】WO2016027549
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-166748(P2014-166748)
(32)【優先日】2014年8月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 康弘
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−209309(JP,A)
【文献】 特開2005−081950(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/060528(WO,A1)
【文献】 特開昭60−015303(JP,A)
【文献】 特開2002−173219(JP,A)
【文献】 特開2006−151255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 35/00−35/08
B61B 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスター車輪付きの台車を、台車を複数台収容でき、かつ入口と出口とを備える直線状の搬送経路に沿って搬送する搬送装置であって、
前記搬送経路に沿ってかつ搬送経路の両側に、前記台車の下部側面に接触するに適した高さに配置されている複数のサイドローラと、
前記サイドローラを搬送経路内の前記台車の下部側面に接触するように付勢する付勢部材と、
少なくとも一部のサイドローラを駆動するモータとを備え、
モータ駆動のサイドローラが複数個、前記台車の長さよりも短い間隔で、搬送経路に沿ってかつ搬送経路の両側に配置され、
モータ駆動のサイドローラにより、台車を搬送経路の入口から出口側へ搬送して搬送経路内の複数の台車を前詰めで整列させるように構成されていることを特徴とする、台車の搬送装置。
【請求項2】
前記搬送経路内の1つのスペースに台車が存在して次のスペースが空であれば、モータ駆動のサイドローラにより台車を次のスペースへ前進させることにより、前詰めで整列させるように構成されていることを特徴とする、請求項1の台車の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送経路内の台車1台分のスペース毎に、台車の有無を検出するセンサが設けられ、台車を一台ずつ搬送することにより、前詰めで整列させるように構成されていることを特徴とする、請求項1または2の台車の搬送装置。
【請求項4】
搬送経路内の1つのスペースに台車が存在して、搬送経路内の次のスペースが空であることを、前記センサにより検出すると、前記1つのスペースのモータ駆動のサイドローラと前記次のスペースのモータ駆動のサイドローラとを回転させることにより、台車を前記1つのスペースから前記次のスペースへ前進させるように構成されていることを特徴とする、請求項3の台車の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送経路の両側に、前記モータと、前記モータ駆動のサイドローラと、前記付勢部材とを収容しているパネルが設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの台車の搬送装置。
【請求項6】
前記台車は、複数個のキャスター車輪と、下部の4側面のフレームと、フレームから上方へ伸びるパイプとを備えたカゴ台車であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの台車の搬送装置。
【請求項7】
前記サイドローラは空気入りのゴムタイヤであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの台車の搬送装置。
【請求項8】
前記モータはブレーキを備えていないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの台車の搬送装置。
【請求項9】
前記搬送経路は前記台車を人力で移動自在に構成されていることを特徴とする、請求項8の台車の搬送装置。
【請求項10】
前記搬送経路は、人力で前記台車を搬送経路内へ移動させ、かつ人力で前記台車を搬送経路から取り出し自在に構成されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかの台車の搬送装置。
【請求項11】
前記サイドローラとして、モータにより駆動されないサイドローラがさらに設けられていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかの台車の搬送装置。
【請求項12】
前記サイドローラが高さ方向に沿って少なくとも2段に重ねられていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかの台車の搬送装置。
【請求項13】
前記モータと前記モータ駆動のサイドローラと前記付勢部材とを備える搬送ユニットが、前記台車の長さよりも短い間隔で、搬送経路に沿ってかつ搬送経路の両側に複数個ずつ配置されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかの台車の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャスター車輪を備える台車の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャスター車輪を備える台車が荷物の搬送用に多数用いられ、このような台車を搬送する装置も必要とされている。例えば、特許文献1(JP2013-237537A)は、建屋の床面にピットを掘り、スラットコンベヤを設置することを提案している。しかしながら既存の建屋内にピットを掘り、スラットコンベヤを設置することは難しい。単に設置が難しいだけでなく、台車から落下する荷物によりコンベヤのスラットが損傷する、コンベヤを直列に複数設置する場合、コンベヤとコンベヤとの間を台車がスムーズに渡りにくい、等の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2013-237537A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、キャスター車輪付きの台車をピット無しで搬送できる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、キャスター車輪付きの台車を、台車を複数台収容でき、かつ入口と出口とを備える直線状の搬送経路に沿って搬送する搬送装置であって、
前記搬送経路に沿ってかつ搬送経路の両側に前記台車の下部側面に接触するに適した高さに配置されている複数のサイドローラと、
前記サイドローラを搬送経路内の前記台車の下部側面に接触するように付勢する付勢部材と、
少なくとも一部のサイドローラを駆動するモータとを備え、
モータ駆動のサイドローラ複数個、前記台車の長さよりも短い間隔で、搬送経路に沿ってかつ搬送経路の両側に配置され、
モータ駆動のサイドローラにより、台車を搬送経路の入口から出口側へ搬送することにより、搬送経路内の複数の台車を前詰めで整列させるように構成されていることを特徴とする
【0006】
この発明では、床面にコンベヤを設ける必要がないので、ピットを掘る必要がない。サイドローラは付勢部材により付勢されて台車の側面に接触し、サイドローラとの摩擦で台車が搬送される。このため台車の幅がばらついても良い。さらに、モータにより駆動されるサイドローラが、台車の長さよりも短い間隔で、搬送経路に沿ってかつ搬送経路の両側に配置されているので、搬送経路の途中で台車が動かなくなることがない。
【0007】
好ましくは、サイドローラは空気入りのゴムタイヤである。このようにすると、台車の側面に凹凸等があっても搬送できる。
【0008】
好ましくは、サイドローラを駆動するモータはブレーキを備えず、当然のことであるが、モータ以外の個所にもサイドローラを固定するブレーキを備えない。このようにするとモータの異常等が生じても、人力等で台車を移動させることができる。
【0009】
サイドローラは高さ方向に沿って少なくとも2段に重ねることが好ましい。このようにすると、台車の形状が様々でも、いずれかの段のサイドローラが台車の側面、特に台車の側面下部の金属板あるいはプラスチック板、に接触して搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】台車と実施例の台車の搬送装置とを示す要部短辺方向断面図
図2】実施例の台車の搬送装置の要部長手方向断面図
図3】実施例の台車の搬送装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0012】
図1図3は、実施例の台車の搬送装置2を示す。図1は搬送対象の台車4と搬送装置2の要部とを示し、台車4は例えばカゴ台車で、下部の4側面にフレーム6,7を備え、パイプ8がフレーム6,7に取り付けられて、カゴを形成している。また台車4はキャスター車輪10を複数備えて、人手で押して移動できる。乱暴な扱いを受けることがあるため、台車4のフレーム6,7には凹凸が有ることがあり、またフレーム6,7の高さは台車4の仕様により様々である。なお以下では、台車の搬送装置2を単に搬送装置2ということがある。
【0013】
台車の搬送装置2は複数台の台車4を前詰めして整列させ、台車4を一時保管する。このとき台車4は荷を積んでいることも、空荷のこともある。搬送装置2は、台車の搬送方向(搬送装置2の長手方向で、図3の左から右への方向)に沿って搬送ユニット12を複数備え、その構造を図1図2に示す。14は空気入りのタイヤで、例えば上下2段に重ねられているが、3段以上でも、あるいは高さ方向に1段のみでも良い。タイヤ14は表面に水切りの溝16を備える空気入りのゴムタイヤであるが、ウレタンゴムタイヤ等のソリッドゴムタイヤでも良い。18はモータで、タイヤ14,14を回転させて摩擦力により台車4を搬送し、モータ18はブレーキの無いモータが好ましい。なおタイヤ14,14の回転を禁止するブレーキは、モータ18以外の個所にも設けないことが好ましい。19はモータ18を支持する台で、軸22はタイヤ14,14を回転させ、20,21はモータ18の出力を軸22に伝達するギアである。また搬送ユニット12は、上下一対のタイヤ14,14を搬送方向に沿って例えば2組備え、チェーン24等の駆動媒体によりモータ18から離れた位置のタイヤ14,14を回転させる。
【0014】
タイヤ14,モータ18等は可動フレーム25に取り付けられて、台車4の搬送方向に水平面内で直角な方向に、スライド自在である。可動フレーム25はリニアガイド26により水平動し、付勢部材であるバネ31により台車4が移動する側へ付勢されている。27はリニアガイド26の可動部、28は固定部で、可動フレーム25側のブラケット29と地上側に固定のブラケット30間に、前記のバネ31が配置されている。ケーシング32は、タイヤ14,14を除いて、搬送装置2を覆っている。なおバネ31はコイルバネ以外に板バネ、空気バネ等でも良く、またエアシリンダ等により付勢しても良い。
【0015】
図3に示すように、搬送ユニット12を搬送方向に沿って複数配列したパネル3が、搬送経路36の両側に配置されて、台車の搬送装置2を構成している。そして台車の搬送装置2は、図3の左側から搬送経路36へ入ってきた台車4を、複数台前詰めで整列させる。また搬送方向に沿って、モータ18により駆動するタイヤ14,14の間隔は、台車4の長さよりも短く、搬送経路36内の各位置から台車4を搬送できるように、実施例では、台車4の長さ当たり2個の搬送ユニット12を配置する。なおモータ18により駆動されず、台車4の側面と接触してガイドするだけのサイドローラを別途に設けても良く、このようなサイドローラの間隔は重要ではない。
【0016】
34は発光部、35は受光部で、これらにより、走行ルート36の各位置毎に台車4の有無を検出する。またコントローラ40は受光部35の信号等により、搬送ユニット12を制御する。なお台車4の有無を検出するセンサの種類は任意である。また実施例では、図3の右端(搬送経路36の出口)にも搬送ユニット12を設けて、搬送装置2から台車4を動力で押し出すようにしたが、人力で取り出すようにしても良く、その場合、図3の右端側の搬送ユニット12は不要である。
【0017】
実施例の動作を説明する。図3では、搬送装置2は、台車4を例えば5台整列させるスペースと、台車4の入口37とを備え、入口37から例えば手押しで台車4を搬送経路36内へ押し込む。搬送装置2は、搬送経路36内の台車1台分のスペース毎に台車4の有無を監視し、1つのスペースに台車4が存在して次のスペースが空であれば、これらのスペースの搬送ユニット12を動作させて、タイヤ14と台車4のフレーム6,7との摩擦力により台車4を前進させる。そして上流側のスペースで受光部35が台車4を検出しなくなると、台車が次のスペースまで前進したものとし、搬送ユニット12を停止させる。
【0018】
床面にピットを掘らなくても設置できるので搬送装置2は設置が容易で、台車4から床面へ荷物が落下しても、搬送装置2には衝突しない。台車4のフレーム6,7に凹凸があっても、空気入りのタイヤ14は台車4を搬送できる。さらにタイヤ14を上下2段に配置すると、フレーム6,7の高さが様々でも、台車4を搬送できる。タイヤ14を搬送方向に沿って短い間隔で配置しているので、搬送装置2の内部で台車4が動かなくなることがない。またタイヤ14は台車4側へ付勢されているので、台車4の幅が変動しても良く、仮にタイヤ14の空気が抜けても、バネ31で付勢されて搬送を続けることができる。さらに台車4が濡れていても、タイヤ14の溝16に沿って水が排出されるので、タイヤ14と台車4とが空転しにくい。そしてモータ18はブレーキを備えていないので、モータ18等に異常が生じた場合でも、タイヤ14はロックされず、人力等で台車4を取り出すことができる。
【0019】
なお可動フレーム25を、上下にスライド自在に、上方へ付勢する部材を設けると、搬送経路36の凹凸等により台車4が上下しても、台車4を傷つけるおそれが完全に解消する。また実施例では全てのタイヤ14を駆動したが、一部のタイヤを駆動しないようにする場合、駆動を掛けるタイヤ14を台車4の長さ以下の間隔で配置すればよい。
【符号の説明】
【0020】
2 台車の搬送装置 3 パネル 4 台車 6,7 フレーム
8 パイプ 10 キャスター車輪 12 搬送ユニット
14 タイヤ(サイドローラ) 16 溝 18 モータ
19 台 20,21 ギア 22 軸 23 スプロケット
24 チェーン 25 可動フレーム 26 リニアガイド
27 可動部 28 固定部 29,30 ブラケット
31 バネ(付勢部材) 32 ケーシング 34 発光部
35 受光部 36 搬送経路 37 入口
40 コントローラ
図1
図2
図3