特許第6011750号(P6011750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

特許6011750電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体
<>
  • 特許6011750-電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体 図000006
  • 特許6011750-電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体 図000007
  • 特許6011750-電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6011750
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/38 20060101AFI20161006BHJP
   B65D 73/02 20060101ALI20161006BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B65D85/38
   B65D73/02
   H05K13/02
【請求項の数】17
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-543252(P2016-543252)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2016056200
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-46796(P2015-46796)
(32)【優先日】2015年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-75142(P2015-75142)
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】森藤 亮介
【審査官】 佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−114267(JP,A)
【文献】 特開2005−178811(JP,A)
【文献】 特開平7−251860(JP,A)
【文献】 特開平11−286079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/38
B65D 73/02
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR50とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR30としたとき、R50/R30の値が、0.35以上2.8以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR50とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR12としたとき、R50/R12の値が、0.1以上10以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS50とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS30としたとき、S50/S30の値が0.7以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
請求項3に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS50とし、23℃、12%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS12としたとき、S50/S12の値が、0.2以上1以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの全光線透過率が、80%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの前記帯電防止層の表面に対して、ポリスチレンからなる材料により形成されたシートを重ね合わせ、前記表面に対して前記シートを速度100mm/sで50mmの間隔で2回摩擦させてから5秒後に、23℃、50%RHで測定した摩擦帯電圧が、−1800V以上1800V以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、エステル化合物を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物とを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項9】
請求項8に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記負の化合物の固形分の含有量が、前記正の化合物の固形分と前記負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、導電ポリマーを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層が、界面活性剤を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の膜厚が、1μm以上20μm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層の表面抵抗値が、23℃、50RH%の条件で10Ω以上1011Ω以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層の膜厚が、1μm以上15μm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記基材層の全光線透過率が、80%以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの幅が2mm以上100mm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項17】
電子部品を収納する部品収納部が所定の間隔で並んで形成されているキャリアテープと前記キャリアテープに形成された前記部品収納部を覆うように設けられたカバーテープとからなる部品収納テープで構成されており、
前記部品収納テープは、リール状に巻き取り可能であり、
前記カバーテープは、請求項1から16のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープである、電子部品用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品包装用カバーテープおよび電子部品用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子レジスタ等の電子部品は、電子機器の製造現場において、当該電子部品を収納することが可能なポケットが連続的に形成されたキャリアテープと、上記キャリアテープにシールするカバーテープとからなる包装体に収容して熱シール処理を施した後、紙製或いはプラスチック製のリールに巻かれた状態で、電子回路基板等に表面実装を行う作業領域まで搬送されている。そして、かかる電子部品は、上述した作業領域内で上記包装体のカバーテープを剥離した後、キャリアテープに形成された上記ポケットから取り出され、電子回路基板等に表面実装されることとなる。上記電子部品については、近年の電子機器の小型化に伴って、さらなる小型化、高度実装化が要求されている。そのため、近年の電子部品は、これまで以上に静電気による影響を受けやすくなってきている傾向にある。
【0003】
たとえば、特許文献1には、キャリアテープからの剥離の際に発生する帯電を抑えるべく、基材層上に、シーラント層を備え、シーラント層がポリオレフィン系樹脂とポリエーテル/ポリオレフィン共重合体とを含むカバーテープが開示されている。
【0004】
特許文献2には、カバーテープと電子部品との間の摩擦によって発生する帯電などを抑えるべく、シーラント層面の表面抵抗値が特定の条件を満たすように制御されたカバーテープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−214252号公報
【特許文献2】特開2012−30897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年カバーテープの静電気対策という観点について要求される技術水準は、ますます高くなっている。
本発明者は、従来のカバーテープについて各種の検討を行った結果、次のような課題を見出した。
電子部品を収容した包装体をリールに巻かれた状態で搬送する際に、搬送時の振動によってキャリアテープとカバーテープとを接着している面、すなわち、カバーテープにおけるシーラント層表面とは反対側の表面における摩擦により静電気が発生する。このような静電気により、包装体内に収容している電子部品が故障する、又は基盤実装時に貼り付きなどのトラブルを引き起こす場合がある。
このような知見に基づき、本発明者は、従来のカバーテープについて、シーラント層表面とは反対側の表面における静電気対策という点に改善の余地があることを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、摩擦帯電防止性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材層と、基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、基材層の他方の面に設けられる帯電防止層と、を有する電子部品包装用カバーテープにおいて、23℃、50%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値と、23℃、30%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値との比という尺度が、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性を向上させるための設計指針として有効であるという知見を得て、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR50とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR30としたとき、R50/R30の値が、0.35以上2.8以下である、電子部品包装用カバーテープが提供される。
【0010】
また本発明者は、別の観点から、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材層と、基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、基材層の他方の面に設けられる帯電防止層と、を有する電子部品包装用カバーテープにおいて、異なる湿度条件において測定した帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰する時間(帯電圧減衰時間)の変化率という尺度が、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性を向上させるための設計指針として有効であるという知見を得て、本発明を完成させた。
【0011】
本発明によれば、基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、
前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS50とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電圧減衰時間の値をS30としたとき、S50/S30の値が0.7以上1以下である、電子部品包装用カバーテープが提供される。
また、本発明によれば、
電子部品を収納する部品収納部が所定の間隔で並んで形成されているキャリアテープと前記キャリアテープに形成された前記部品収納部を覆うように設けられたカバーテープとからなる部品収納テープで構成されており、
前記部品収納テープは、リール状に巻き取り可能であり、
前記カバーテープは、上記電子部品包装用カバーテープである、電子部品用包装体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、摩擦帯電防止性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの一例を示す概略断面図である。
図2】本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープをキャリアテープにシールした状態の一例を示す図である。
図3】摩擦帯電圧の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープ10(以下、「カバーテープ」とも示す。)は、基材層1と、基材層1の一方の面側に設けられるシーラント層2と、基材層1の上記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層3と、を有するものである。そして、かかるカバーテープ10は、23℃、50%RHで測定した帯電防止層3の表面における表面抵抗値の値をR50とし、23℃、30%RHで測定した帯電防止層3の表面における表面抵抗値の値をR30としたとき、R50/R30の値が、0.35以上2.8以下である。これにより、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性に優れたカバーテープを実現することができる。なお、上記表面抵抗値は、IEC61340に準じて測定することができる。
【0016】
図2は、本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープをキャリアテープにシールした状態の一例を示す図である。
まず、カバーテープの使用方法について、図2を参照して説明する。図2に示すように、カバーテープ10は、電子部品の形状に合わせて凹状のポケット21が連続的に設けられたキャリアテープ20の蓋材として用いられる。具体的には、カバーテープ10は、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面に接着(例えば、ヒートシール)させて使用する。なお、後述においては、カバーテープ10と、キャリアテープ20とを接着して得られた構造体のことを、電子部品用の包装体100と称して説明する。
【0017】
実際、電子機器の製造現場においては、以下の手順で電子部品用の包装体100を作製する。まず、キャリアテープ20のポケット21内に電子部品を収容する。次いで、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面にカバーテープ10を接着することで、電子部品が包装体100内に密封収容されてなる構造体を得ることができる。かかる電子部品を収容してなる構造体は、紙製或いはプラスチック製のリールに包装体100を巻いた状態で、電子回路基板等に表面実装を行う作業領域まで搬送される。このように、リールに包装体100を巻いた状態で電子部品を搬送する際、キャリアテープ20の底面20aは、カバーテープ10の表面10aと接触(摩擦)している。
【0018】
本実施形態において、電子部品用包装体は、電子部品を収納する部品収納部(ポケット21)が所定の間隔で並んで形成されたキャリアテープ20と、キャリアテープ20に形成された部品収納部を覆うように設けられたカバーテープ10とからなる部品収納テープで構成されている。この部品収納テープはリール状に巻き取り可能である。
また、本実施形態の電子部品包装用カバーテープ(カバーテープ10)は、シート形状でもよく、リール状に巻き取り可能なロール形状でもよい。
【0019】
ここで、本発明者は、各種の検討を行った結果、次のような知見を得た。具体的には、従来のカバーテープを用いて作製した電子部品を収容してなる構造体を搬送する際、搬送時の振動によってキャリアテープとカバーテープとを接着している面、すなわち、カバーテープにおけるシーラント層表面とは反対側の表面における摩擦により静電気が発生する。運搬時等の摩擦により発生した静電気により、包装体内に収容している電子部品が故障する、又は基盤実装時に貼り付きなどのトラブルを引き起こす場合があった。
このような知見から、本発明者は、従来のカバーテープには、シーラント層表面とは反対側の表面における静電気対策という点に改善の余地があることを見出した。
たとえば、通常の帯電防止対策として表面抵抗値を下げるという方法が考えられる。しかしながら、表面抵抗値を下げたとしても、摩擦帯電が生じてしまう事があった。こうした知見に基づいて検討した結果、作業環境を踏まえた上で帯電を抑制することにより、摩擦帯電の発生を抑制できると考えるに至った。
【0020】
さらに検討を深めた結果、特に、従来のカバーテープは、電子機器の製造現場における作業環境の湿度変化に伴い、帯電防止層の表面における表面抵抗値の変動が大きいものがほとんどであった。具体的には、従来のカバーテープは、上記表面抵抗値R50と、上記表面抵抗値R30の変動率が2.8倍より大きな比率となっていた。このことから、本願発明者は、従来のカバーテープにおいては、摩擦により発生する静電気に由来する電荷が帯電防止層の表面に付着した水分を介して移動している可能性が高いという知見を得て、湿度変化を因子に含む特性に着眼し、新たな設計指針を見出した。
【0021】
すなわち、本実施形態に係るカバーテープは、上述したように23℃、50%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値R50と、23℃、30%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値R30との比、R50/R30の値が特定の条件を満たすものである。こうすることで、電子部品を搬送する際の振動により、キャリアテープの底面とカバーテープの表面とが接触して発生する静電気が、キャリアテープとカバーテープとからなる包装体内に収容された電子部品に及ぼす影響を低減することが可能となる。そのため、電子部品を搬送する際の振動により、キャリアテープの底面とカバーテープの表面とが接触して発生する帯電により、電子部品が静電破壊されてしまう、又は基盤実装時に張り付きなどのトラブルを引き起こすという不都合が生じることを抑制できる。
【0022】
本実施形態に係るカバーテープにおいて、上記R50/R30の下限値は、例えば、好ましくは0.35以上であり、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。一方、上記R50/R30の上限値は、例えば、好ましくは2.8以下であり、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2以下であり、一層好ましくは1.5以下である。こうすることで、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性をより一層向上させることができる。なお、従来の代表的なカバーテープは、上記R50/R30の値が0.06程度となるものがほとんどであった。特に、上記R50/R30の値が、上記上限値以下である場合、摩擦により静電気が発生した場合においても放電特性に優れたカバーテープを実現することができる。また、湿度変化による表面抵抗値変化が小さいので保管性に優れたカバーテープとすることができる。一方、上記R50/R30の値が、上記下限値以上である場合、電子機器の製造現場における作業環境が湿度30RH%程度の乾燥状態にある場合においても、搬送中にカバーテープと電子部品とが摩擦することにより発生した静電気、キャリアテープからカバーテープを剥離する際に発生した静電気、付着した埃や内容物から発生した静電気等の放電特性に優れたカバーテープを実現することができる。本実施形態に係るカバーテープのように、上記R50/R30の値が特定の条件を満たすものである場合、すなわち、電子機器の製造現場における作業環境の湿度変化に伴う表面抵抗値の変動率が小さい場合、摩擦により発生する静電気に由来する電荷が帯電防止層を形成する材料中を移動できているため、従来のカバーテープのように、帯電防止層の表面に付着した水分を介して移動することを抑制できているものと考えられる。
【0023】
また、本実施形態に係るカバーテープは、23℃、50%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値R50と、23℃、12%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値R12との比、R50/R12の値が、好ましくは、0.1以上10以下であり、さらに好ましくは、0.125以上8以下であり、最も好ましくは、0.17以上6以下である。こうすることで、電子機器の製造現場における作業環境の湿度変化に伴って、カバーテープにおける帯電防止層の表面抵抗値が変動することをより一層厳しく制御できるため、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性により一層優れたカバーテープとすることができる。
【0024】
また、別の観点から、本実施形態にかかるカバーテープ10は、帯電防止層3の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰する時間、すなわち、帯電圧減衰時間について、23℃、50%RHで測定した値をS50とし、23℃、30%RHで測定した値をS30としたとき、S50/S30の値が0.7以上1以下となるものである。こうすることで、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性に優れたカバーテープを実現することができる。なお、後述においては、「帯電圧減衰時間S」が、帯電防止層3の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰する時間のことを指すものとして説明する。
【0025】
特に、従来のカバーテープは、電子機器の製造現場における作業環境の湿度変化に伴い、帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の変動が大きいものがほとんどであった。具体的には、従来のカバーテープは、上記帯電圧減衰時間S50と、上記帯電圧減衰時間S30とから算出されるS50/S30の値が0.7未満となっていた。このことから、本願発明者は、従来のカバーテープにおいては、摩擦により発生する静電気に由来する電荷が帯電防止層の表面に付着した水分を介して移動することにより摩擦帯電が発生している可能性が高いという知見を得て、湿度変化を因子に含む特性に着眼し、新たな設計指針を見出した。
【0026】
すなわち、本実施形態に係るカバーテープは、上述したように23℃、50%RHで測定した帯電圧減衰時間S50と、23℃、30%RHで測定した帯電圧減衰時間S30とから算出されるS50/S30の値が特定の条件を満たすものである。こうすることで、電子部品を搬送する際の振動により、キャリアテープの底面とカバーテープの表面とが接触して発生する静電気が、キャリアテープとカバーテープとからなる包装体内に収容された電子部品に及ぼす影響を低減することが可能となる。そのため、電子部品を搬送する際の振動により、キャリアテープの底面とカバーテープの表面とが接触して発生する帯電により、電子部品が静電破壊されてしまう、又は基板実装時に張り付きなどのトラブルを引き起こすという不都合が生じることを抑制できる。
【0027】
本実施形態に係るカバーテープにおいて、上記S50/S30の下限値は、例えば、0.7以上であり、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは0.9以上である。一方、上記S50/S30の上限値は、特に限定されないが、例えば、1以下とすることができる。こうすることで、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性をより一層向上させることができる。具体的には、S50/S30の値が、上記数値範囲を満たす場合には、電子機器の製造現場における作業環境が湿度30%RH程度の乾燥状態にある場合においても、搬送中にカバーテープと電子部品とが摩擦することにより発生した静電気、キャリアテープからカバーテープを剥離する際に発生した静電気、付着した埃や内容物から発生した静電気等の放電特性に優れたカバーテープを実現することができる。
【0028】
ここで、帯電圧減衰時間Sを測定するために実施する帯電防止層の表面における摩擦帯電圧は、たとえば、次の方法で測定することができる。まず、カバーテープにおける帯電防止層の表面と、たとえば、キャリアテープ等の上記カバーテープにおける帯電防止層の表面と接触させる対象物表面とを除電する。次いで、対象物表面に対してカバーテープにおける帯電防止層の表面を、たとえば、速度:約100mm/s、距離:約50mmの条件で一方向に2回接触させ、公知の表面電位計を用いて上記摩擦帯電圧を測定する。なお、本実施形態に係る摩擦帯電圧は、公知の表面電位計により、帯電防止層の表面における摩擦帯電圧を直接測定して得られた結果を採用してもよいし、対象物表面における摩擦帯電圧を測定して得られた結果から算出した結果を採用してもよい。
【0029】
また、本実施形態に係るカバーテープは、23℃、50%RHで測定した帯電圧減衰時間の値をS50とし、23℃、12%RHで測定した帯電圧減衰時間の値をS12としたとき、S50/S12の値が、好ましくは0.2以上1以下であり、さらに好ましくは、0.4以上1以下であり、最も好ましくは、0.5以上1以下である。こうすることで、電子機器の製造現場における作業環境の湿度変化に伴って、カバーテープにおける帯電防止層の摩擦帯電量が変動することをより一層厳しく制御できるため、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性により一層優れたカバーテープとすることができる。
【0030】
本実施形態に係るカバーテープの全光線透過率の下限値は、好ましくは、80%以上であり、さらに好ましくは、85%以上である。こうすることで、カバーテープとキャリアテープとからなる包装体において、上記キャリアテープのポケット内に電子部品が正しく収容されているか否かを検査することができる程度に必要な透明性を付与することができる。言い換えれば、基材層の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、カバーテープとキャリアテープとからなる包装体の内部に収容した電子部品を、当該包装体の外部から視認して確認することが可能となる。また、カバーテープの全光線透過率の上限値は、特に限定されないが、例えば、100%以下とすることができる。なお、カバーテープの全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定することが可能である。
【0031】
本実施形態に係るカバーテープにおいて、当該カバーテープの帯電防止層の表面に対して、ポリスチレンからなる材料により形成されたシートを重ね合わせ、上記シートを速度100mm/sで50mmの間隔で2回摩擦させてから5秒後に、23℃、50%RHの条件で摩擦帯電圧を測定する。このようなカバーテープの摩擦耐電圧は、特に限定されないが、例えば、好ましくは−1800V以上1800V以下であり、より好ましくは−1500V以上1500V以下であり、さらに好ましくは−1000V以上1000V以下であり、一層好ましくは−800V以上800V以下である。こうすることで、電子部品を搬送する際の振動により、キャリアテープの底面とカバーテープの表面とが接触して発生する静電気が、キャリアテープとカバーテープとからなる包装体内に収容された電子部品に及ぼす影響をより一層低減することが可能である。
なお、上記カバーテープにおける帯電防止層の表面と、たとえば、キャリアテープ等の上記カバーテープにおける帯電防止層の表面と接触させる対象物表面とを除電する。次いで、対象物表面に対してカバーテープにおける帯電防止層の表面を、一方向に2回接触させ、公知の表面電位計を用いて上記摩擦帯電圧を測定する。なお、本実施形態に係る摩擦帯電圧は、公知の表面電位計により、帯電防止層の表面における摩擦帯電圧を直接測定して得られた結果を採用してもよいし、対象物表面における摩擦帯電圧を測定して得られた結果から算出した結果を採用してもよい。
【0032】
本実施形態に係るカバーテープの幅は、特に限定されないが、例えば、2mm以上100mm以下としてもよく、好ましくは2mm以上80mm以下としてもよく、より好ましくは、2mm以上50mm以下としてもよい。
【0033】
以下、本実施形態に係るカバーテープを形成する各層の構成について詳説する。
【0034】
<基材層1>
基材層を構成する材料は、当該基材層に対して帯電防止層やシーラント層を積層してカバーテープを作製する際、キャリアテープに対してカバーテープを接着させる際、カバーテープの使用時等に外部から加わる応力に耐えうることができる程度の機械的強度、キャリアテープに対してカバーテープを接着させる際に加わる熱履歴に耐えうることができる程度の耐熱性を有したものであればよい。また、基材層を構成する材料の形態は、特に限定されないが、加工が容易である観点から、フィルム状でもよい。
【0035】
基材層を構成する材料の具体例としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。中でも、カバーテープの機械的強度を向上させる観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートであるとさらに好ましい。また、カバーテープの機械的強度、柔軟性を向上させる観点から、ナイロン6を、基材層を構成する材料として用いてもよい。なお、基材層を構成する材料中には、滑材を含有させてもよい。これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0036】
基材層は、上述した材料を含む単層フィルムにより形成してもよいし、上述した材料を各層に含む多層フィルムを用いて形成してもよい。また、基材層を形成するために使用するフィルムの形態としては、未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、カバーテープの機械的強度を向上させる観点から、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムを使用してもよい。
【0037】
基材層の厚さは、例えば、9μm以上25μm以下としてもよく、好ましくは9μm以上16μm以下としてもよい。基材層の厚さが上記上限値以下である場合、カバーテープの剛性が高くなりすぎず、シール後のキャリアテープに対して捻り応力がかかった場合であっても、カバーテープがキャリアテープの変形に追従し、剥離してしまうことを抑制することができる。また、基材層の厚さが上記上限値以上である場合、カバーテープの機械的強度を良好なものとすることができるため、キャリアテープからカバーテープを高速で剥離する場合であっても、カバーテープが破断してしまうことを抑制することができる。
【0038】
基材層の全光線透過率の下限値は、たとえば、好ましくは80%以上としてもよく、好ましくは85%以上としてもよい。こうすることで、カバーテープとキャリアテープとからなる包装体において、上記キャリアテープのポケット内に電子部品が正しく収容されているか否かを検査することができる程度に必要な透明性を付与することができる。言い換えれば、基材層の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、カバーテープとキャリアテープとからなる包装体の内部に収容した電子部品を、当該包装体の外部から視認して確認することが可能となる。基材層の全光線透過率の上限値は、特に限定されないが、例えば、100%以下とすることができる。なお、基材層の全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定することが可能である。
【0039】
<シーラント層2>
本実施形態に係るカバーテープにおいて、シーラント層は、基材層における帯電防止層が設けられた面とは反対側の面に設けられる層である。かかるシーラント層の表面は、上述した方法でカバーテープを使用する場合、キャリアテープと接触することになる。本実施形態において、帯電防止層、基材層、およびシーラント層を含む多層構造とすることにより、キャリアテープに対する接着性と剥離性とのバランスとともに、帯電防止性に優れた電子部品包装用カバーテープを実現することができる。
【0040】
シーラント層を構成する材料としては、例えば、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂と、帯電防止剤とを含むものを使用することができる。かかる帯電防止剤の具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、スメクタイト等の金属フィラー、ポリオキシエチレンアルキルアミン、第四級アンモニウム、アルキルスルホネート等の構造を有する界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、第四級アンモニウム、アルキルスルホネート、ポリエーテル等の構造をブロックあるいはランダムに組み込んだ高分子型帯電防止剤、イオン性液体、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェンポリアセチレン、ポリアニリンとそれらの誘導体からなる導電ポリマー、カーボンからなる群より選択される1種またはこれらの混合物が挙げられる。なお、上記カーボンとしては、カーボンブラック、ホワイトカーボン、カーボン繊維、カーボンチューブ等の炭素からなる種々の形状のフィラーを用いることができる。これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0041】
シーラント層を構成する材料には、搬送中に生じるブロッキングを防止する観点から、ケイ素、マグネシウムまたはカルシウムを主成分とする酸化物粒子、シリカ、タルク等の無機粒子、ポリエチレン粒子、ポリアクリレート粒子およびポリスチレン粒子等の有機粒子からなる群より選択される1種またはこれらのアロイが含まれていてもよい。
【0042】
シーラント層の厚さは、キャリアテープに対する接着性と剥離性とのバランスを向上させる観点から、たとえば、1μm以上15μm以下としてもよく、好ましくは1μm以上10μm以下としてもよく、より好ましくは1μm以上5μm以下としてもよい。
【0043】
シーラント層の表面抵抗値は、種々の要因により発生した静電気を効率よく外部に放出させる観点から、23℃、50RH%の条件で、たとえば、10Ω以上1011Ω以下としてもよく、好ましくは10Ω以上1010Ω以下としてもよく、より好ましくは10Ω以上10Ω以下としてもよい。上記表面抵抗値は、IEC61340に準じて測定することができる。
【0044】
<帯電防止層3>
本実施形態に係るカバーテープにおいて、帯電防止層は、基材層におけるシーラント層が設けられた面とは反対側の面に設けられる層である。かかる帯電防止層の表面は、上述したように、キャリアテープとカバーテープとからなる包装体に電子部品を収容して搬送する際に、キャリアテープの底面と接触する可能性を有している。
【0045】
以下、帯電防止層を形成する材料について説明する。
【0046】
帯電防止層を形成する材料は、たとえば、キャリアテープの底面を形成する材料等の電子部品を収容して搬送する際に帯電防止層の表面と接触する対象物を形成する材料と比べて帯電列において正側に位置する「正の化合物」と、上記対象物を形成する材料と比べて帯電列において負側に位置する「負の化合物」とを含むものであることが好ましい。こうすることで、帯電防止層の表面が対象物と接触した際に、摩擦に伴う静電気の発生を抑制することができる。詳細なメカニズムは定かでないが、帯電防止層の表面が対象物と接触した際に、当該帯電防止層を形成する材料に含まれる正の化合物が正極性に帯電する一方、負の化合物は負極性に帯電することになるため、帯電防止層内において電気的に中和することができる、と考えられる。
【0047】
ここで、本発明者が検討したところ、帯電防止層の表面と接触する対象物として特定の材料を使用し、これを基準とすることにより、正の化合物と負の化合物とを併用した時に帯電防止層の摩擦帯電防止性を安定的に得られることを見出した。さらに検討した結果、綿布(コットン100%)を基準に採用することにより、摩擦する材質によって帯電の正負が変化する影響を回避できるため、本実施形態の正の化合物と負の化合物との併用により得られる帯電防止層の摩擦帯電防止性を安定的に得られる事が判明した。正負の帯電量の測定方法としては、例えば、樹脂シートの表面又はシートにコーティングしたフィルムの表面を、綿布(コットン100%)で摩擦した後、表面電位計により測定する方法が挙げられる。この場合、例えば、3M社製Static Sensor 718などの表面電位計を使用できる。
【0048】
本実施形態の正の化合物としては、綿布に対して正に帯電する化合物であればよく、例えば、スチレンアクリル共重合、エステルアクリル共重合、アクリル樹脂、ビニルアルコール、ホルムアルデヒド変性ナイロン、アジリジニル化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物等の正のバインダー樹脂が挙げられる。これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0049】
また、正の化合物として、たとえば、キャリアテープの底面を形成する材料等の、電子部品を収容して搬送する際に帯電防止層の表面と接触する対象物を形成する材料がポリスチレン等を含む場合が多いことから、アジリジニル化合物とその開環化合物を使用してもよい。アジリジニル化合物は、一般に、アジリジニル基を有する化合物のことを指し、その具体例としては、N,N´−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジカルボキシアミド)、N,N´−ジフェニルメタン−4,4´−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート)、N,N´−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリエチレンメラミン、トリメチロールプロパン−トリ−β(2−メチルアジリジン)プロピオネート、ビスイソフタロイル−1−2−メチルアジリジン、トリ−1−アジリジニルフォスフィンオキサイド、トリス−1−2−メチルアジリジンフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、上記アジリジニル化合物として、日本触媒社製のケミタイトPZ−33、DZ−22E等の市販品を使用することもできる。なお、アジリジニル化合物の開環化合物は、アジリジニル化合物中のアジリジニル基が開環した状態にある化合物のことを指す。
【0050】
上述した正の化合物の含有量は、帯電防止層を形成する材料全量に対して、0.2重量%以上98重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上90重量%以下であるとさらに好ましい。こうすることで、塗膜の物理的な強度が高まり接触による帯電防止剤の滑落に強くなる。
【0051】
本実施形態の負の化合物としては、綿布に対して負に帯電する化合物であればよく、たとえば、フッ素樹脂、ポリエステル化合物等の負のバインダー樹脂が挙げられる。これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0052】
また、負の化合物として、キャリアテープの底面を形成する材料等の電子部品を収容して搬送する際に帯電防止層の表面と接触する対象物を形成する材料がポリスチレン等を含む場合が多いことから、エステル化合物を使用しても良い。エステル化合物とは、有機酸または無機酸とアルコールとが脱水反応により結合して生成した化合物のことを指し、その具体例としては、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやこれらの誘導体等が挙げられる。
【0053】
上述した負の化合物の含有量は、帯電防止層を形成する材料全量に対して、0.2重量%以上98重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上90重量%以下であるとさらに好ましい。こうすることで、塗膜の物理的な強度が高まり接触による帯電防止剤の滑落に強くなる。
【0054】
ここで、本発明者が検討したところ、上記正の化合物と負の化合物とを併用することにより、帯電防止層の摩擦帯電防止性を向上させることができることが見出された。さらに、正の化合物と負の化合物とが十分に分散された帯電防止層においては、表面抵抗値や帯電圧減衰時間等の湿度変化を因子に含む特性を適切に制御できるため、優れた摩擦帯電防止性を実現できることが判明した。詳細なメカニズムは定かでないが、正の化合物と負の化合物により、摩擦により生じた摩擦帯電を中和することができるため、湿度変化を因子に含む特性を適切に制御できると考えられる。
【0055】
また、正の化合物と負の化合物との配合量に関しては、固形分に基づいて決定することにより、これらの併用による摩擦帯電防止性の制御が容易になることが分かった。
具体的には、負の化合物の固形分の含有量の下限値は、例えば、正の化合物の固形分と負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、50重量%以上が好ましく、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。負の化合物の固形分の含有量の上限値は、特に限定されないが、例えば、正の化合物の固形分と負の化合物の固形分との合計値100重量%に対して、99重量%以下としてもよく、95重量%以下としてもよく、90重量%以下としてもよい。このように正の化合物と負の化合物とのバランスを図ることにより、摩擦帯電防止性に優れた帯電防止層の製造安定性を向上させることができる。
【0056】
帯電防止層の表面抵抗値の上限値は、23℃、15RH%の条件で、たとえば、1011Ω以下が好ましく、1010Ω以下がより好ましく、10Ω以下がさらに好ましく、10Ω以下が一層好ましい。これにより、帯電防止性を向上させることができる。帯電防止層の表面抵抗値の下限値は、23℃、15RH%の条件で、特に限定されないが、例えば、10Ω以上としてもよく、好ましくは10Ω以上としてもよい。上記表面抵抗値は、IEC61340に準じて測定することができる。
【0057】
帯電防止層を形成する材料は、当該帯電防止層の表面抵抗値を低下させて摩擦に伴う静電気の発生を抑制する観点から、導電性ポリマーを含むことが好ましい。かかる導電性ポリマーの具体例としては、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられ、中でもポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)系の化合物を好適に用いることができる。これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0058】
帯電防止層を形成する材料は、当該帯電防止層を形成する際の濡れ性やレベリング性を向上させる観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。かかる界面活性剤は、低分子型の界面活性剤であっても、高分子型の界面活性剤であってもよいが、フッ素アルキル構造を含む界面活性剤を好適に用いることができる。これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0059】
帯電防止層の摩擦帯電圧は、23℃、50%RHの条件下において、例えば、好ましくは−1800V以上1800V以下であり、より好ましくは−1500V以上1500V以下であり、さらに好ましくは−1000V以上1000V以下であり、一層好ましくは−800V以上800V以下であり、最も好ましくは−500V以上500V以下である。また、帯電防止層の摩擦帯電圧の絶対値は、23℃、50%RHの条件下において、例えば、好ましくは1800V以下であり、より好ましくは1500V以下であり、さらに好ましくは1000V以下であり、一層好ましくは800V以下であり、最も好ましくは500V以下である。こうすることで、電子部品を搬送する際の振動により、キャリアテープの底面とカバーテープの表面とが接触して発生する帯電により、電子部品が静電破壊されてしまう、又は基盤実装時にトラブルを引き起こすという不都合が生じることを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態の帯電防止層の膜厚の下限値は、特に限定されないが、例えば、たとえば、1nm以上としてもよく、好ましくは10nm以上としてもよく、より好ましくは20nm以上としてもよい。これにより、帯電防止層の機械強度を向上させることができる。また、帯電防止層の膜厚の上限値は、特に限定されないが、例えば、5μm以下としてもよく、好ましくは4μm以下としてもよく、さらに好ましくは3μm以下としてもよい。これにより、帯電防止層が積層されたカバーテープ全体の柔軟性を向上させることができる。また、収容スペースの体積当たりのカバーテープの集積密度を高めることもできる。
【0061】
<その他の層>
本実施形態に係るカバーテープは、基材層とシーラント層の間に中間層(図示せず)を設けてもよい。こうすることで、カバーテープ全体のクッション性を向上させるとともに、接着対象であるキャリアテープとの密着性を向上させることができる。
【0062】
上述した中間層を形成する材料としては、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。中でも、接着対象であるキャリアテープとの密着性を向上させる観点から、オレフィン系樹脂を使用してもよい。これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0063】
中間層の厚さは、接着対象であるキャリアテープとの密着性を向上させる観点から、たとえば、10μm以上30μm以下としてもよく、好ましくは15μm以上25μm以下としてもよい。
【0064】
本実施形態に係るカバーテープは、基材層とシーラント層の間または基材層と帯電防止層の間に接着層を設けてもよい。こうすることで、カバーテープの機械的強度を向上させることができる。
【0065】
上述した接着層を形成する材料には、樹脂が含まれている。かかる樹脂の具体例としては、ウレタン系のドライラミネート用接着樹脂、アンカーコート用接着樹脂等が挙げられ、一般に、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどのポリエステル組成物とイソシアネート化合物とを組み合わせたものやポリブタジエン、ポリイミン樹脂等を使用することができる。
【0066】
次に、電子部品を収容して搬送する際に帯電防止層の表面と接触する対象物を形成する材料について説明する。上述した通り、上記対象物としては、キャリアテープの底面等が挙げられるが、電子部品を収容して搬送する際や電子部品を実装する際に帯電防止層の表面と接触する可能性を有したものであれば限定されない。また、上記対象物を形成する材料の具体例としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のキャリアテープを形成する材料や、ポリエチレン、ゴム(天然ゴム、合成ゴムなどを加工した材料)等が挙げられる。
【0067】
次に、本実施形態に係るカバーテープの製造方法について説明する。
本実施形態におけるカバーテープの製造方法は、従来の製造方法とは異なるものであって、後述する製造条件を高度に制御する必要がある。すなわち、以下の2つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて、23℃、50%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値R50と、23℃、30%RHで測定した帯電防止層の表面における表面抵抗値R30との比、R50/R30の値が、上述した特定の条件を満たすカバーテープを得ることができる。
(1)帯電防止層を形成する樹脂材料の配合組成
(2)帯電防止層を形成する材料と基材層を形成する材料との組み合わせ
【0068】
ただし、本実施形態におけるカバーテープは、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御することを前提に、たとえば、製造装置の温度設定などの具体的な製造条件は種々のものを採用することができる。言い換えれば、本実施形態におけるカバーテープは、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御すること以外の点については、公知の方法を採用して作製することが可能である。これらの中でも、帯電防止層に、たとえば正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物を併用するとともに、これらが良く分散した状態とすること等が、表面抵抗値等の湿度変化を因子に含む特性を適切に制御し、上記R50、R30、R50/R30を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。以下、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御していることを前提に、カバーテープの製造方法の一例を説明する。
まず、基材層の一方の面に所定の材料を塗布し乾燥させることによって、帯電防止層を形成する。次いで、基材層の帯電防止層を形成した面とは反対側の面にシーラント層を押出しラミネート法によって積層する。このようにして、本実施形態に係るカバーテープを作製することができる。なお、シーラント層を押出し加工法によりシート形成した後、基材層の帯電防止層を形成した面とは反対側の面に得られたシートを積層してもよい。
【0069】
また、別の観点における本実施形態に係るカバーテープの製造方法について説明する。
本実施形態におけるカバーテープの製造方法は、従来の製造方法とは異なるものであって、後述する製造条件を高度に制御する必要がある。すなわち、以下の2つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて、23℃、50%RHで測定した帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間S50、23℃、30%RHで測定した帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの帯電圧減衰時間S30、S50/S30の値が、上述した特定の条件を満たすカバーテープを得ることができる。
(1)帯電防止層を形成する樹脂材料の配合組成
(2)帯電防止層を形成する材料と基材層を形成する材料との組み合わせ
【0070】
ただし、本実施形態におけるカバーテープは、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御することを前提に、たとえば、製造装置の温度設定などの具体的な製造条件は種々のものを採用することができる。言い換えれば、本実施形態におけるカバーテープは、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御すること以外の点については、公知の方法を採用して作製することが可能である。これらの中でも、たとえば正に帯電する正の化合物と負に帯電する負の化合物を併用するとともに、これらが良く分散した状態とすること等が、帯電圧減衰時間等の湿度変化を因子に含む特性を適切に制御し、上記S50、S30、S50/S30を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。以下、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御していることを前提に、カバーテープの製造方法の一例を説明する。
まず、基材層の一方の面に所定の材料を塗布し乾燥させることによって、帯電防止層を形成する。次いで、基材層の帯電防止層を形成した面とは反対側の面にシーラント層を押出しラミネート法によって積層する。このようにして、本実施形態に係るカバーテープは作製することができる。なお、シーラント層を押出し加工法によりシート形成した後、基材層の帯電防止層を形成した面とは反対側の面に得られたシートを積層してもよい。
【0071】
また、上述した中間層を形成する場合には、基材層の帯電防止層を形成した面とは反対側の面に押出しラミネート法によって当該中間層を積層してもよいし、当該中間層を押出し加工法によりシート形成した後、基材層の帯電防止層を形成した面とは反対側の面に得られたシートを積層してもよい。
【0072】
また、上述した接着層を形成する場合には、従来公知の塗布方法によって、対象となる面に接着層の材料を塗布すればよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
[実施例A]
実施例A及び比較例Aにおいて、帯電防止層およびシーラント層の作製に用いた各原料成分を下記に示した。
【0076】
<帯電防止層>
(帯電防止剤)
・帯電防止剤A1:ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)系の化合物を含む導電性ポリマー(ヘレウス社製、CLEVIOS P)
・帯電防止剤A2:二酸化錫(日記触媒社製)
・帯電防止剤A3:カチオン系低分子界面活性剤(日油社製、エレガン264−30)
・帯電防止剤A4:カチオン系高分子界面活性剤(大成ファインケミカル社製、アクリット1SX−1090)
【0077】
(希釈溶剤)
・希釈溶剤A1:イソプロピルアルコール:水=1:1
・希釈溶剤A2:トルエン:メチルエチルケトン=1:1
・希釈溶剤A3:イソプロピルアルコール
【0078】
(バインダー樹脂)
・正のバインダー樹脂A1:カルボジイミド(日清紡ケミカル社製、カルボジライトV−02−L2)
・正のバインダー樹脂A2:アクリル樹脂(東亜合成社製、アロンS−1001)
・負のバインダー樹脂A3:水溶性ポリエステル樹脂(互応化学社製、プラスコートZ760)
・負のバインダー樹脂A4:水溶性ポリエステル樹脂(互応化学社製、プラスコートZ565)
【0079】
(界面活性剤)
・界面活性剤A1:ビックケミージャパン社製、BYK−3440
・界面活性剤A2:サンノプコ社製、SNディスパーサント9228
【0080】
<シーラント層>
・スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体(新日鐵化学社製、エスチレンMS−600。以下「St―MMA」とも言う。)
・エチレン−アクリル酸メチル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、エルバロイAC 1820。以下、「EMA」とも言う。)
・ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体(三洋化成工業社製、ペレスタット212。以下「PEG−PP」とも言う。)
【0081】
<実施例Aに係るカバーテープの製造>
まず、基材層として、厚さが16μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製:E5102)を準備した。得られた基材層の全光線透過率は、87.7%であった。
【0082】
次に、帯電防止層を形成する材料を、以下の方法で準備した。なお、各試薬の配合組成は、表1に示す通りである。
帯電防止剤に対して、希釈溶剤を加えながら30秒間撹拌した。次に、基材密着性および分散安定性を高めるため、バインダー樹脂と界面活性剤を加えてから30秒間撹拌した。このようにして、液体状の帯電防止層を形成する材料を準備した。
【0083】
次いで、得られた帯電防止層を形成する材料(液体状の)を基材層の一方の面に対して、バーコーター又はグラビアコーターを用いてwet膜厚が4μmとなるように塗布した。その後、100℃で乾燥させることにより帯電防止層を製膜した。
【0084】
次に、基材層における帯電防止層を製膜した面とは反対側の面に対し、押出しラミネート法によってシーラント層を積層した。かかるシーラント層を形成する材料としては、15量部のSt―MMA、65重量部のEMAおよび20重量部のPEG−PPからなる樹脂組成物を使用した。なお、シーラント層の厚みは、5μmであった。
【0085】
以上の方法により、実施例A1、A2に係るカバーテープを作製した。得られたカバーテープの幅は、8mmであった。
【0086】
<比較例Aに係るカバーテープの製造>
帯電防止層は、表1に示すようにバインダー樹脂と界面活性剤を加えることなく得られた帯電防止剤と希釈溶剤の混合溶液を用いて、実施例Aと同様の方法でカバーテープを作製した。
【0087】
実施例Aおよび比較例Aの各カバーテープを用いて、以下の評価を行った。
【0088】
<評価方法>
・帯電防止層の表面における表面抵抗値:23℃という温度にて50RH%、30RH%および12RH%の3つの湿度条件下での帯電防止層の表面における表面抵抗値を、IEC61340に準じて測定した。なお、単位は、Ωである。
【0089】
・全光線透過率:カバーテープの全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定した。なお、単位は%である。
【0090】
・摩擦帯電圧:23℃、50%RHで測定した摩擦帯電圧は、図3を参照して以下の(1)〜(7)で説明する方法により測定した。なお、単位は、Vである。
【0091】
(1)表面抵抗値が1.0×1011Ω未満である車輪付台座30の上に、表面抵抗値が1.0×1013Ω以上であり、かつ板状のゴム体40を設置した。次いで、ゴム体40の上に、所定の間隔を設けて2つの絶縁体50を設置した。なお、絶縁体50は、四角柱状で厚みが10mm以上であり、かつ表面抵抗値が1.0×1013Ω以上のものを使用した。次に、2つの絶縁体50の両方に接触した状態となるように、両面テープを用いて8mm幅にカットしたポリスチレン系シート70(電気化学社製、クリアレンCST2401)を固定した。なお、上記ポリスチレン系シート70は、後述する測定において各カバーテープと接触させる摩擦対象物である。また、車輪付台座30は、常に接地(アース)の状態となっていた。
【0092】
(2)ポリスチレン系シート70を、イオナイザー(春日電機社製、BLH−H)を用いて除電した。
【0093】
(3)車輪付台座30を動かし、表面電位計(TREK社製、MODEL370)に備わる測定プローブ60の下にポリスチレン系シート70が配されるように移動させ、上記ポリスチレン系シート70が除電されていることを確認した。なお、ポリスチレン系シート70と測定プローブ60との間隔は、1〜2mmとした。
【0094】
(4)帯電防止層が表層となるようにカバーテープ10を、表面抵抗値が1.0×10Ω未満であり、かつ棒状の支持体80に巻きつけた。この支持体80は、手で支える際の帯電の影響を少なくするために、カーボン練り込みフィルムからなる導体で構成されているものを用いた。また、カバーテープ10についても、ポリスチレン系シート70と同様の方法で除電した。
【0095】
(5)車輪付台座30を動かし、ポリスチレン系シート70を測定プローブ60の下から移動させ、支持体80に巻き付けられたカバーテープ10における帯電防止層によりポリスチレン系シート70表面を摩擦した。このとき、カバーテープ10における帯電防止層による摩擦は、車輪付台座30を固定した状態で、ポリスチレン系シート70に対して長手方向の一方向に、速度100mm/sで50mmの間隔で2回摩擦するというものであった。
【0096】
(6)カバーテープ10における帯電防止層とポリスチレン系シート70との摩擦から5秒以内に、測定プローブ60の下にポリスチレン系シート70を移動させ、イオナイザーを用いて摩擦帯電圧の測定を行った。
【0097】
(7)得られたポリスチレン系シート70表面の摩擦帯電圧の値から、カバーテープ10における帯電防止層の表面の摩擦帯電圧を算出した。なお、摩擦帯電圧の測定に使用したポリスチレン系シート70とカバーテープ10はいずれも、上述したように摩擦試験前に除電した帯電圧が0Vのものを用いている。そのため、ポリスチレン系シート70表面の摩擦帯電圧が100Vである場合、カバーテープ10における帯電防止層の表面の摩擦帯電圧は、100V(=0V−100V)と算出されることになる。
【0098】
上記評価項目に関する評価結果を、帯電防止層の配合組成とあわせて以下の表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例A1、A2のカバーテープは、いずれも、キャリアテープに対する接着性と剥離性とのバランスとともに、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性に優れたものであった。特に、実施例A1およびA2のカバーテープは、正のバインダー樹脂と負のバインダー樹脂の両方を含み、かつ導電性ポリマーを含む材料を用いて帯電防止層を形成しているため、摩擦帯電自体が発生しにくいものであった。一方、比較例A1、A2のカバーテープは、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性という点においては、湿度依存性があり、要求水準を満たすものではなかった。
得られたカバーテープとポリスチレン製キャリアテープとを摩擦させて、カバーテープの表面の帯電圧の絶対値を測定した。その結果、実施例A1、A2については、摩擦帯電防止性が良好であることが分かった。一方、比較例A1、A2については、摩擦帯電防止性が劣ることが分かった。
また、得られたカバーテープをキャリアテープに熱シール後、シールに巻くことにより、リール状に巻き取られた電子部品用包装体が得られた。
【0101】
[実施例B]
実施例B及び比較例Bにおいて、帯電防止層およびシーラント層の作製に用いた各原料成分を下記に示した。
【0102】
<帯電防止層>
(帯電防止剤)
・帯電防止剤B1:ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)系の化合物を含む導電性ポリマー(ヘレウス社製、CLEVIOS P)
・帯電防止剤B2:二酸化錫(日記触媒社製)
・帯電防止剤B3:カチオン系低分子界面活性剤(日油社製、エレガン264−30)
・帯電防止剤B4:カチオン系高分子界面活性剤(大成ファインケミカル社製、アクリット1SX−1090)
【0103】
(希釈溶剤)
・希釈溶剤B1:イソプロピルアルコール:水=1:1
・希釈溶剤B2:トルエン:メチルエチルケトン=1:1
・希釈溶剤B3:イソプロピルアルコール
【0104】
(バインダー樹脂)
・正のバインダー樹脂B1:カルボジイミド(日清紡ケミカル社製、カルボジライトV−02−L2)
・正のバインダー樹脂B2:アクリル樹脂(東亜合成社製、アロンS−1001)
・負のバインダー樹脂B3:水溶性ポリエステル樹脂(互応化学社製、プラスコートZ760)
・負のバインダー樹脂B4:水溶性ポリエステル樹脂(互応化学社製、プラスコートZ565)
【0105】
(界面活性剤)
・界面活性剤B1:ビックケミージャパン社製、BYK−3440
・界面活性剤B2:サンノプコ社製、SNディスパーサント9228
【0106】
<シーラント層>
・スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体(新日鐵化学社製、エスチレンMS−600。以下「St―MMA」とも言う。)
・エチレン−アクリル酸メチル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、エルバロイAC 1820。以下、「EMA」とも言う。)
・ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体(三洋化成工業社製、ペレスタット212。以下「PEG−PP」とも言う。)
【0107】
<実施例Bに係るカバーテープの製造>
まず、基材層として、厚さが16μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製:E5102)を準備した。得られた基材層の全光線透過率は、87.7%であった。
【0108】
次に、帯電防止層を形成する材料を、以下の方法で準備した。なお、各試薬の配合組成は、表2に示す通りである。
帯電防止剤に対して、希釈溶剤を加えながら30秒間撹拌した。次に、基材密着性および分散安定性を高めるため、バインダー樹脂と界面活性剤を加えてから30秒間撹拌した。このようにして、液体状の帯電防止層を形成する材料を準備した。
【0109】
次いで、得られた帯電防止層を形成する材料(液体状の)を基材層の一方の面に対して、バーコーター又はグラビアコーターを用いてwet厚みが4μmとなるように塗布した。その後、100℃で乾燥させることにより帯電防止層を製膜した。
【0110】
次に、基材層における帯電防止層を製膜した面とは反対側の面に対し、押出しラミネート法によってシーラント層を積層した。かかるシーラント層を形成する材料としては、15量部のSt―MMA、65重量部のEMAおよび20重量部のPEG−PPからなる樹脂組成物を使用した。なお、シーラント層の厚みは、5μmであった。
【0111】
以上の方法により、実施例B1、B2に係るカバーテープを作製した。得られたカバーテープの幅は、8mmであった。
【0112】
<比較例Bに係るカバーテープの製造>
帯電防止層を形成する材料として、バインダー樹脂と界面活性剤を加えることなく得られた帯電防止剤と希釈溶剤の混合溶液を用いた点以外は、実施例1および2と同様の方法でカバーテープを作製した。
【0113】
実施例Bおよび比較例Bの各カバーテープを用いて、以下の評価を行った。
【0114】
<評価方法>
・帯電圧減衰時間:23℃という温度にて50%RH、30%RHおよび12%RHの3つの湿度条件下、後述する方法を用いて測定された帯電防止層の表面における摩擦帯電圧の絶対値が5kVから50Vに減衰するまでの時間を測定した。なお、単位は、秒(s)である。さらに、下記表1においては、摩擦帯電圧の値が+5kVから+50Vに減衰するまでの時間を、S+とし、摩擦帯電圧の値が−5kVから−50Vに減衰するまでの時間を、S−とした。
【0115】
・摩擦帯電圧:23℃、50%RHで測定した摩擦帯電圧は、図3を参照して、上記実施例Aと同様の方法により測定した。なお、単位は、Vである。
【0116】
・全光線透過率:カバーテープの全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定した。なお、単位は%である。
【0117】
上記評価項目に関する評価結果を、帯電防止層の配合組成とあわせて以下の表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
実施例B1、B2のカバーテープは、いずれも、キャリアテープに対する接着性と剥離性とのバランスとともに、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性に優れたものであった。特に、実施例1BおよびB2のカバーテープは、正のバインダー樹脂と負のバインダー樹脂の両方を含み、かつ導電性ポリマーを含む材料を用いて帯電防止層を形成しているため、摩擦帯電自体が発生しにくいものであった。一方、比較例B1、B2のカバーテープは、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性という点においては、湿度依存性があり、要求水準を満たすものではなかった。
得られたカバーテープとポリスチレン製キャリアテープとを摩擦させて、カバーテープの表面の帯電圧の絶対値を測定した。その結果、実施例B1、B2については、摩擦帯電防止性が良好であることが分かった。一方、比較例B1、B2については、摩擦帯電防止性が劣ることが分かった。
また、得られたカバーテープをキャリアテープに熱シール後、シールに巻くことにより、リール状に巻き取られた電子部品用包装体が得られた。
【0120】
[実施例C]
実施例Cにおいて、帯電防止層の作製に用いた各原料成分を下記に示した。
【0121】
(バインダー樹脂)
・正の化合物C1:アクリル酸エステル共重合体樹脂(東亜合成社製、ジュリマーFC−80)
・負の化合物C1:水溶性ポリエステル樹脂(互応化学社製、プラスコートZ565)
【0122】
(帯電防止剤)
・帯電防止剤C1:ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)系の化合物を含む導電性ポリマー(日本アグフアマテリアルズ社製、Orgacon ICP1010)
【0123】
(その他)
・希釈剤C1:イソプロピルアルコール
・希釈剤C2:水
・中和剤C1:トリエチルアミン(和光純薬社製:TEA)
・界面活性剤C1:ビックケミージャパン社製、BYK−3440
【0124】
<実施例Cに係るカバーテープの作製>
まず、基材層として、厚さが16μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製:E5102)を準備した。得られた基材層の全光線透過率は、87.7%であった。
【0125】
次に、帯電防止層を形成する材料を、以下の方法で準備した。なお、帯電防止層を形成する材料の配合組成は、表3に示す通りである。
帯電防止剤に対して、中和剤と希釈溶剤を加えながら30秒間撹拌した。次に、基材密着性および分散安定性を高めるため、バインダー樹脂と界面活性剤を加えてから30秒間撹拌した。このようにして、液体状の帯電防止層を形成する材料を準備した。
【0126】
次いで、得られた帯電防止層を形成する材料(液体状の)を基材層の一方の面に対して、バーコーター又はグラビアコーターを用いてwet厚みが4μmとなるように塗布した。その後、100℃で乾燥させることにより帯電防止層を製膜した。
【0127】
次に、基材層における帯電防止層を製膜した面とは反対側の面に対し、押出しラミネート法によってシーラント層を積層した。かかるシーラント層を形成する材料としては、15量部のSt―MMA、65重量部のEMAおよび20重量部のPEG−PPからなる樹脂組成物を使用した。なお、シーラント層の厚みは、5μmであった。
【0128】
以上の方法により、実施例C1〜C3に係るカバーテープを作製した。得られたカバーテープの幅は、いずれも、8mmであった。
【0129】
実施例Cの各カバーテープを用いて、以下の評価を行った。
【0130】
・表面抵抗値:23℃という温度にて50RH%、30RH%および12RH%の3つの湿度条件下での帯電防止層の表面における表面抵抗値を、IEC61340に準じて測定した。なお、単位は、Ωである。
【0131】
・全光線透過率:カバーテープの全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定した。なお、単位は%である。
【0132】
【表3】
【0133】
得られたカバーテープとポリスチレン製キャリアテープとを摩擦させて、カバーテープの表面の帯電圧の絶対値を測定した。その結果、実施例C1〜C3については、摩擦帯電防止性が良好であることが分かった。
また、得られたカバーテープをキャリアテープに熱シール後、シールに巻くことにより、リール状に巻き取られた電子部品用包装体が得られた。
実施例C1〜C3のカバーテープは、いずれも、搬送時等に生じる摩擦に対する摩擦帯電防止性やキャリアテープの剥離に伴う帯電防止性に優れたものであった。
【0134】
[実施例D]
実施例Dにおいて、帯電防止層およびシーラント層の作製に用いた各原料成分を下記に示した。
【0135】
<帯電防止層>
(バインダー樹脂)
・正の化合物D1:アクリル酸エステル共重合体樹脂(荒川化学社製:アラコートCL910)
・負の化合物D1:水溶性ポリエステル樹脂(互応化学社製、プラスコートZ565)
【0136】
(帯電防止剤)
・帯電防止剤D1:ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)系の化合物を含む導電性ポリマー(荒川化学社製:、アラコートACS332)
【0137】
(その他)
・希釈剤D1:イソプロピルアルコール
・希釈剤D2:水
・界面活性剤D1:荒川化学社製、アラコートACS347
【0138】
<シーラント層>
・スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体(新日鐵化学社製、エスチレンMS−600。以下「St―MMA」とも言う。)
・エチレン−アクリル酸メチル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、エルバロイAC 1820。以下、「EMA」とも言う。)
・ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体(三洋化成工業社製、ペレスタット212。以下「PEG−PP」とも言う。)
【0139】
<実施例Dに係る電子部品包装用カバーテープの作製>
まず、基材層として、厚さが25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製:E5102)を準備した。得られた基材層の全光線透過率は、87.7%であった。
【0140】
次に、帯電防止層を形成する材料を、以下の方法で準備した。なお、帯電防止層を形成する材料の配合組成は、表4に示す通りである。
帯電防止剤に対して、イソプロピルアルコールと水とを所定の比率で配合した希釈溶剤を加えながら30秒間撹拌した。次に、基材密着性および分散安定性を高めるため、バインダー樹脂と界面活性剤を加えてから30秒間撹拌した。このようにして、液体状の帯電防止層を形成する材料を準備した。
【0141】
次いで、得られた帯電防止層を形成する材料(液体状の)を基材層の一方の面に対して、バーコーター又はグラビアコーターを用いてwet厚みが4μmとなるように塗布した。その後、100℃で1分間乾燥させることにより帯電防止層を製膜した。
【0142】
次に、基材層における帯電防止層を製膜した面とは反対側の面に対し、押出しラミネート法によってシーラント層を積層した。かかるシーラント層を形成する材料としては、15量部のSt―MMA、65重量部のEMAおよび20重量部のPEG−PPからなる樹脂組成物を使用した。なお、シーラント層の厚みは、5μmであった。
【0143】
以上の方法により、実施例D1〜D4に係る電子部品包装用カバーテープを作製した。得られたカバーテープの幅は、いずれも、8mmであった。
【0144】
実施例Dの各カバーテープを用いて、以下の評価を行った。
【0145】
・表面抵抗値:23℃という温度にて50RH%、30RH%および12RH%の3つの湿度条件下での帯電防止層の表面における表面抵抗値を、IEC61340に準じて測定した。なお、単位は、Ωである。
【0146】
・全光線透過率:カバーテープの全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定した。なお、単位は%である。
【0147】
【表4】
【0148】
得られたカバーテープとポリスチレン製キャリアテープとを摩擦させて、カバーテープの表面の帯電圧の絶対値を測定した。その結果、実施例D1〜D4については、摩擦帯電防止性が良好であることが分かった。
また、得られたカバーテープをキャリアテープに熱シール後、シールに巻くことにより、リール状に巻き取られた電子部品用包装体が得られた。
実施例D1〜D4のカバーテープは、いずれも、キャリアテープを構成する素材の種類に関係なく、搬送時等に生じる摩擦に対する摩擦帯電防止性や該キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性に優れたものであった。
【0149】
この出願は、2015年3月10日に出願された日本出願特願2015−046796号および2015年4月1日に出願された日本出願特願2015−075142号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【要約】
本発明の電子部品包装用カバーテープは、基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられるシーラント層と、前記基材層の前記一方の面とは反対側の面に設けられる帯電防止層と、を有するものであり、23℃、50%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR50とし、23℃、30%RHで測定した前記帯電防止層の表面における表面抵抗値の値をR30としたとき、R50/R30の値が、0.35以上2.8以下である。
図1
図2
図3