(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011757
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】加熱用容器及びそれに用いる蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20161006BHJP
B65D 77/30 20060101ALI20161006BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D77/30 A
B65D77/20 H
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-191442(P2011-191442)
(22)【出願日】2011年9月2日
(65)【公開番号】特開2013-52892(P2013-52892A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096600
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 育郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康司
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 和佳子
(72)【発明者】
【氏名】大森 頼子
【審査官】
遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−142826(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/056690(WO,A1)
【文献】
実開平04−001179(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 77/20
B65D 77/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口周縁にフランジ部を有する容器本体と、調理用食品を収納した容器本体のフランジ部に固着することで容器本体の開口部を塞ぐフィルム状の蓋材とからなり、蓋材の端部に開封開始部分がある加熱用容器であって、蓋材の開封開始部分には、フランジ部に対する固着部より外側で且つ端縁側に先端部分を残したところに上向きの突出部分が設けられていることを特徴とする加熱用容器。
【請求項2】
容器本体のフランジ部に、蓋材の開封開始部分に対応して段下げ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱用容器。
【請求項3】
調理用食品を収納した容器本体のフランジ部に固着することで容器本体の開口部を塞ぐために用いられるフィルム状の蓋材であって、フランジ部に対する固着部より外側で且つ端縁側に先端部分を残したところに上向きの突出部分が設けられていることを特徴とする蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中に調理用食品を収納した状態で販売され、電子レンジ等によってその調理用食品を加熱調理するのに用いられる加熱用容器の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中に調理用食品を収納した状態で販売され、電子レンジ等でその調理用食品を加熱調理する場合に用いる容器として、調理用食品を容器本体に収納しそのフランジ部に蓋材を密封シールした状態で販売されるタイプの加熱用容器が知られている。このタイプの加熱用容器は、電子レンジにかけると、中の調理用食品が高周波によって直に加熱されるとともに、水分が蒸気になることによって蒸らされながら加熱調理されるようになっている。
【0003】
そして、このような加熱用容器としては、加熱調理時に中の水蒸気が膨張して破裂するのを防止するため、蓋材の一部を剥がしたり、あるいは針状のもので数カ所に孔を開けるかしてから電子レンジにかけるようになったものが主流であったが、最近では自動的に水蒸気を逃がす機能を付与したものが増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−221177号公報
【特許文献2】実開平2−73184号公報
【特許文献3】特開2000−142826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術で述べたように、最近では、加熱調理するときに自動的に水蒸気を逃がすための工夫を施した加熱用容器が多く出回っている。しかしながら、このタイプの加熱用容器の場合でも、加熱調理後すぐに蓋材のつまみ部を指先で摘んで容器本体のフランジ部から引き剥がそうとすると、残った水蒸気が開封開始箇所から噴き出すことがあり、上手く操作しないと場合によっては指先に軽いやけどをすることがあった。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電子レンジ等で中の調理用食品を加熱調理する容器であって、加熱調理後の開封時に指先のやけどを防ぐようにした加熱用容器を提供し、併せてそれに用いる蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明である加熱用容器は、開口周縁にフランジ部を有する容器本体と、調理用食品を収納した容器本体のフランジ部に固着することで容器本体の開口部を塞ぐフィルム状の蓋材とからなり、蓋材の端部に開封開始部分がある加熱用容器であって、蓋材の開封開始部分には、フランジ部に対する固着部より外側で且つ端縁側に先端部分を残したところに
上向きの突出部分が設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明である加熱用容器は、請求項1に記載の加熱用容器において、容器本体のフランジ部に、蓋材の開封開始部分に対応して段下げ部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
そして、請求項
3に記載の発明である蓋材は、調理用食品を収納した容器本体のフランジ部に固着することで容器本体の開口部を塞ぐために用いられるフィルム状の蓋材であって、フランジ部に対する固着部より外側で且つ端縁側に先端部分を残したところに上向きの突出部分が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の加熱用容器は、開口周縁にフランジ部を有する容器本体と、調理用食品を収納した容器本体のフランジ部に固着することで容器本体の開口部を塞ぐフィルム状の蓋材とからなり、蓋材の端部に開封開始部分がある加熱用容器であって、蓋材の開封開始部分には、フランジ部に対する固着部より外側で且つ端縁側に先端部分を残したところに
上向きの突出部分が設けられていることを特徴としているので、突出部分を指先で摘んだ状態で蓋材を引っ張り上げた場合、開封を開始した箇所から水蒸気が噴き出したとしても、突出部分を摘んでいる指先を蓋材の先端部分がカバーするため、噴き出した水蒸気が指先に当たらず、開封時に蓋材を摘んだ指先をやけどをするのが防止される。
【0012】
請求項2に記載の加熱用容器は、請求項1に記載の加熱用容器において、容器本体のフランジ部に、蓋材の開封開始部分に対応して段下げ部が設けられている形態としたので、請求項1に記載の発明が奏する効果に加え、フランジ部を摘んでいる方の指先に水蒸気が当たりににくくなり、開封時に蓋材の突出部分を摘んだ方の指先のみならず、フランジ部を摘んで押さえている方の指先をやけどするのも防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る加熱用容器一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の加熱用容器を構成する容器本体と蓋材の両者を離した状態で示す斜視図である。
【
図3】蓋材の突出部分をその変形例とともに示す拡大断面図である。
【
図4】
図1の加熱用容器を開封し始めた状態で示す説明図である。
【
図5】
図1の加熱用容器における容器本体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示す加熱用容器Cは、
図2に分離状態で示すように、開口周縁にフランジ部11を有する容器本体10と、調理用食品を収納した容器本体10のフランジ部11に固着することで容器本体10の開口部を塞ぐフィルム状の蓋材20とからなる。そして、この加熱用容器Cの場合、加熱調理時に自動的に水蒸気を逃がすための逆止弁30が蓋材20の略中央に設けられている。
【0017】
容器本体10は、樹脂シートを円形で深さのあるトレー状にシート成形したもので、開口周縁に設けられたフランジ部11には、手で持ちやすくするため、相対する位置を膨出させた把手状の拡大部分11aが設けられている。
【0018】
なお、本発明の加熱用容器における容器本体は、押出し成形した樹脂シートを用いて真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法でトレー状に成形したものでよいし、樹脂を容器形状に射出成形したものであってもよい。また、容器本体の形状は特に制限されるものではなく、用途や内容物に応じて、図示のような円形状のほか、楕円状、角形状など任意である。
【0019】
一方、蓋材20は、内面にイージーピール層を有するフィルム状の包装材からなり、容器本体10のフランジ部11に対して固着部21を形成するように金型でヒートシールすることによって容器本体10の開口部を塞ぐようになっている。
図1の加熱用容器Cでは、ヒートシールによる蓋材20の固着部21は、フランジ部11の内側寄りの部分に沿って細いシール幅で形成され、開封開始部分となる一方の拡大部分11aの中央のところにおいて図示の如く外向きに尖ったV字状に形成されている。
【0020】
この蓋材20には、フランジ部11における一方の拡大部分11aに対応する開封開始部分に、フランジ部11に対する固着部21より外側で且つ端縁側に先端部分20aを残したところに摘み部分となる
上向きの突出部分22が設けられている。この突出部分22は、
図3(a)に示すように、蓋材20を折り返した状態でヒートシール等により貼り合わせることで形成されている。このように突出部分22を一枚の蓋材で構成した方が経済的ではあるが、
図3(b)に示す突出部分22のように、別の包装材を当該箇所にヒートシール、ホットメルト、接着剤等で取り付けるようにしても構わない。
【0021】
そして、搬送時や店頭での取扱い時にこの突出部分22を含む蓋材20の開封開始部分がばたつくのを防止するため、開封開始部分のいずれかの部位を容器本体10のフランジ部11に対してスポットシールにより仮固定しておくのが好ましい。
【0022】
容器本体10と蓋材20とから構成され、中に調理用食品を収納してなる加熱用容器Cは、電子レンジにかけることで加熱調理される。すると、中の調理用食品は高周波によって加熱され、水蒸気で蒸らされながら加熱調理される。そして、膨張した水蒸気が蓋材20の逆止弁30から自動的に逃げることで破裂することなく加熱調理が行われる。なお、逆止弁30のような自動的に水蒸気を逃がす手段を設けない場合は、あらかじめ蓋材の一部を剥がしたり、あるいは針状のもので数カ所に孔を開けるかしてから電子レンジにかけるようにする。
【0023】
このように加熱調理した後、加熱用容器Cを開封するには、
図4に示すように、一方の手の指先で容器本体10におけるフランジ部11の拡大部分11aを把持し、もう一方の手の指先で蓋材20の突出部分22を摘んで引っ張り上げる。すると、ヒートシールによる固着部21におけるV字状の先端部に引っ張る力が集中し、そこから蓋材20が剥がれ始める。このとき、開封を開始した箇所から水蒸気が噴き出したとしても、突出部分22を摘んでいる指先を蓋材20の先端部分20aがカバーするため、噴き出した水蒸気が指先に当たるのが防止される。なお、蓋材20の開封開始部分が容器本体10のフランジ部11に仮固定されている場合は、突出部分22を引っ張る勢いで固定状態を解くことができる。
また、スポットシールにより仮固定しておくことにより、搬送時や店頭での取扱い時に突出部分を含む開封開始部分が邪魔になるのが軽減されるとともに、突出部分を摘んで蓋材を剥がし始める際には軽く引っ張ることで開封開始分をフランジ部から外すことができる。
【0024】
図5は
図2の下側に示した容器本体10の変形例であり、フランジ部11の相対する位置に設けた把手状の拡大部分11aの一部をフランジ部11の高さより低くして段下げ部11bとしたものである。この容器本体10を用いた加熱用容器は、蓋材20の開封開始部分に対応して段下げ部11bが設けられた形態になるので、加熱調理して開封するときに、フランジ部11を摘んでいる方の指先に水蒸気が当たりににくくなり、蓋材20の突出部分22を摘んだ方の指先のみならず、フランジ部11を摘んで押さえている方の指先にも水蒸気が当たらなくなる。なお、
図5ではデザイン的な観点から両側の拡大部分11aの一部に段下げ部11bを形成する例を示しているが、少なくともどちらか一方の拡大部分11aに設ければよい。
【0025】
本発明で用いられる容器本体としては、電子レンジ調理食品に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば代表的なものとして、PP、PP/EVOH/PP等が挙げられる。
【0026】
また、本発明で用いられる蓋材としては、基材フィルムを有し、内面にイージーピール層を有するフィルム状の包装材であれば特に限定されるものではなく、例えば、Ny、PET等の基材フィルムにイージーピール層をドライラミネートしたものが用いられ、さらには必要に応じてバリヤー層を積層したものも用いられる。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について詳細に説明してきたが、本発明による加熱用容器は、上記の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の加熱用容器は、中に収納した調理用食品を電子レンジにより加熱調理するための容器として用いられるほか、熱湯により加熱する食品を収納して販売する容器としても用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
C 加熱用容器
10 容器本体
11 フランジ部
11a 拡大部分
20 蓋材
21 固着部
21a 先端部分
22 突出部分
30 逆止弁