特許第6011762号(P6011762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011762
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ラベルスイッチングネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/723 20130101AFI20161006BHJP
   H04L 12/717 20130101ALI20161006BHJP
【FI】
   H04L12/723
   H04L12/717
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-285870(P2011-285870)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135397(P2013-135397A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋
【審査官】 衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08014395(US,B1)
【文献】 特開2003−032280(JP,A)
【文献】 特開2008−259094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00〜12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末と、複数のスイッチ装置と、前記複数の端末間を前記複数のスイッチ装置を介して接続し上記端末間でフレームを伝送する複数の通信経路と、を備え、前記スイッチ装置の各々は、上記フレーム内のラベルの情報からスイッチングに関する情報に変換するためのラベルスイッチング制御テーブルを備え、前記ラベルより得られた前記のスイッチングに関する情報を用いてスイッチングを行う、ネットワークであって、
送信端末は、
(1)前記フレームの前記通信経路の設定を可能とする付加ヘッダとラベル情報とを前記フレームのヘッダフィールドあるいはペイロードの一部に付与する機能と、
(2)前記フレーム内に表示制御フィールドを設け前記フレーム内のラベル以外の付加ヘッダに対する、前記ヘッダフィールドでの表示あるいは隠蔽を指定する値を前記表示制御フィールドに設定する機能と、を有し、
前記ラベル情報は、前記ヘッダフィールドに設定され、第1ラベル部分と第2ラベル部分とから構成され、前記第1ラベル部分は、ラベル管理者あるいはラベル管理範囲を特定する識別情報を含み、第2ラベル部分は、前記付加ヘッダに対応付けて、前記ラベル管理者が付与するか、あるいは、前記管理範囲の中で規定されるユニークな符号であって、
前記スイッチ装置は、前記表示制御フィールドの値が表示に相当する場合は、受信された前記付加ヘッダに基づき通信経路を確定すると共に、前記ラベル情報と前記の確定された通信経路に対応しスイッチングに必要な制御情報とを前記ラベルスイッチング制御テーブルに設定し、前記表示制御フィールドの値が隠蔽に相当する場合は、設定された前記ラベル情報に基づきスイッチングを行う機能を有することを特徴とするラベルスイッチングネットワーク。
【請求項2】
前記第1ラベル部分として、ラベル管理者あるいはラベル管理範囲を特定するMACアドレス、あるいは、ラベル管理者あるいはラベル管理範囲を特定するIPアドレスを用いることを特徴とする請求項1記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項3】
中央制御装置を具備し、前記中央制御装置は、前記端末あるいは前記スイッチ装置より供給される、ラベル情報と経路設定に必要な情報とに基づいて、経路を確定し、前記経路に関わるスイッチ装置に対し、ラベルスイッチング制御テーブルへの前記ラベル情報とスイッチングに必要な経路情報とを提供し、前記スイッチ装置は、前記ラベル情報と前記経路情報より得られるスイッチングに必要な制御情報とを前記ラベルスイッチング制御テーブルに設定することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項4】
前記端末で構成される単数あるいは複数の仮想的なグループ内での通信に際し、前記送信端末のヘッダ処理回路は、
(1)上記ラベルスイッチングネットワークの範囲において前記ユニークな符号を前記ラベルに共通に設定すると共に、前記仮想的なグループ内に対する同報通信に対しては、同報通信を指定する値と前記のユニークな符号を前記ラベルに設定する機能、
(2)前記仮想的なグループ内に対する同報通信に対しては、上記第1ラベル部分として該同報通信の管理者を特定する識別情報を設定し、上記第2部分として少なくとも該同報通信の管理者の管理範囲内でユニークな符号を前記ラベルに設定する機能、
のいずれかあるいは両方の機能を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項5】
前記フレーム内のラベル情報の一部に経路選択ポリシーを指定する情報のための領域を設け、前記送信端末あるいはスイッチ装置のいずれか一方のヘッダ処理回路は、前記経路選択ポリシーを指定する情報を設定し、前記スイッチ装置は、受信されたフレームの経路選択ポリシーを指定する情報を参照して経路設定を行うことを特徴とする請求項1あるいは2に記載のラベルスイッチングネットワーク。
【請求項6】
上記ラベルスイッチングネットワークは、さらに所定の対象を感知するセンサー、あるいは、所定のルールに従って判定する判定器を備え、上記センサーあるいは判定器は所定のラベルをヘッダにしその出力をフレーム化して送出するものであり、
前記スイッチ装置は、(1)前記フレームのラベル情報と、(2)上記センサーまたは上記判定器の出力するラベル記載の情報と、に基づいて、スイッチングを行うことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載のラベルスイッチングネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信ネットワークにおいてヘッダ情報としてラベルを用いた、ラベルスイッチングネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のインターネットは、端末間(含む端末・ホスト間)の通信は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を基本に設計されている。また、その端末とホスト間のIPトラフィックを転送するルータやスイッチは、RIP(Routing Information Protocol)/OSPF(Open Shortest Path First)/BGP(Border Gateway Protocol)などのダイナミックルーティングプロトコルにより相互にトポロジー情報や経路情報をやり取りし、パケットの転送経路を判断して転送を行う自律・分散制御アーキテクチャにより構成されている。これに対し、非特許文献1で報告されたオープンフロースィッチング技術は、これまでのルータ/スイッチのような複雑化した処理を、データプレーン(処理部)とコントロールプレーン(制御部)に分離し、ネットワーク機能に対するプログラマビリティを向上したものである。
【0003】
通信ネットワークにおけるフロー制御は既によく知られているが、比較的新しいアーキテクチャとして、通信を「フロー」として識別し、フロー単位で通信経路を制御するオープンフロー技術がある。このオープンフロー技術においては、通信フロー単位毎にパケットの転送経路や転送方法などを記述したフローテーブルに従ってパケット転送を行う。これを実現するためのシステムは、複数のスイッチノード(オープンフロースイッチ)と、その複数のスイッチに対し上記フローテーブルの設定やノード制御を行う経路制御部(オープンフローコントローラー)との2種類の要素を用いて構成されている。
【0004】
また、上記経路制御部を上記スイッチノードから独立にして動作させ、経路制御情報を管理するサーバを設けて、その転送経路をきめ細かに制御し、ネットワーク全体のトラフィックを制御するプログラマブルフローも知られている。このプログラマブルフローでは、「フロー」において、パケットの転送制御にMACアドレス、IPアドレス、ポート番号などの送信元及び宛先アドレスの組み合わせを使うことで、ユーザ単位、アプリケーション単位の転送制御や監視を行うものである。また、上記オープンフロースイッチでは、パケットを受信するとその転送先経路を調べるために、宛先アドレスを上記オープンフロースイッチ内部に記録されたフローテーブルで検索し、合致した宛先アドレスが上記フローテーブルに見つかれば、その宛先アドレス欄に記されたルールに従ってパケットを転送する。見つからない場合は、上記サーバにそれを転送すべき経路を問い合わせ、そのサーバからの回答に従いフローテーブルを新たに設定し、同時に、そのパケットの転送を行う。ここで、上記サーバを上位にある外部アプリケーションと連携させることで通信経路を制御し、輻輳によるパケットの棄却等を抑制することができるようになる。
【0005】
オープンフロースイッチング技術を用いたデータセンター306の構成例を図11(a)に示す。ファイアウォール機能を有するスイッチ装置320は、それに接続したサーバにアクセスしようとする信号フレーム(あるいはパケット:ここでは、OSI7層構造モデルのレイヤ2あるいは3の通信で使われるPDU(プロトコル・データ・ユニット)を、それぞれ、フレームあるいはパケットと称する)を受信すると、宛先アドレスを調べ、そこに至る経路が登録されていない場合には、中央制御装置300に経路の設定を要求する。図2(a)にフレーム構成を示す。中央制御装置300は、このフローを、サーバ321、322、323のどれにアクセスさせるか判断し(サーバ322が選択されたとする)、オープンフロースイッチング機能を有するスイッチ装置に対し、図2(a)の信号フレームの宛先IPアドレスを選択されたサーバ322のIPアドレスに変更するよう指示を行う。このようにして、データセンター306向けに送信された信号フレームは、中央制御装置300のポリシーに従って、サーバ122にスイッチされる。それ以降、スイッチ装置310は、ヘッダのTCPポート番号(受信ポート番号、送信ポート番号の対)まで参照して、アドレスの書き換えとそれに伴うCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)の再計算を行い、スイッチング制御を行う。オープンフロースイッチング技術では、以上に示すように、図2(a)の信号フレームのMACアドレス対からTCPポート番号対までのヘッダ領域の任意の組み合わせを一つのラベルとみなして、データセンターの管理者のポリシーに従って、サーバ向けのトラヒックを、動的かつ柔軟にスイッチングすることができる。これによって、オープンフロースイッチング技術により、スイッチ装置320は、ファイアウォール機能に加え、ロードバランス機能を具備することができ、データセンター内のネットワークの制御をシンプルにすることができる。
【0006】
しかしながら、本従来技術は、大きくは3つの課題を有する。
(1)一つは、各スイッチ装置のスイッチングエンジンでのヘッダ情報の扱いである。オープンフロースイッチングにおいては、図2(a)に示す信号フレームにおいて、TCPポート番号までのヘッダ情報のうち、任意に選択された部分に対し、一致不一致を判定して選別するフィルタリング機能が必要となる。この機能を高速に実行するためには、通常、総計58バイトのヘッダ情報に対し、“0”、“1”の他に“Don't Care”の状態を含めた3値の状態での一致不一致を瞬時に検出する高機能デバイスが必要となる。その結果、スイッチングエンジンの大規模化、大消費電力化、高価格化をもたらす。従って、処理すべきヘッダの長さを短くしてスイッチングエンジンの大規模化を抑制する技術や、3値ではなく、“0”、“1”の2値で上記のフィルタリングが可能な技術を用いることが望まれる。
【0007】
(2)また、結果的に同じ経路になる場合でも、フローの識別パターンが異なれば新たに経路設定の処理が必要となり、結果的に同じ経路になる場合でも経路設定のための処理負荷が軽減されることが無い。これは、図11(b)に示す大規模ネットワーク例を用いて説明する様に、オープンフロースイッチング方式をデータセンター内だけでなく、広域のネットワークにも拡大適用した場合に顕在化する。プライベートIPアドレスのユーザネットワーク302内のパソコン301は、パブリックIPアドレスを用いたIPv4ネットワーク103、IPv6ネットワーク304、IPv4ネットワーク305を経由してデータセンター306に接続されるとする。ファイアウォール機能を有するスイッチ装置311は、ファイアウォール機能に加え。プライベートなIPv4アドレスとパブリックなIPv4アドレスとの変換を行う。スイッチ装置215、216はIPv6ベースでのスイッチングを、スイッチ装置312、313、318、319はIPv4ベースでのスイッチングを行い、スイッチ装置314、317は、スイッチング制御に加え、IPv4アドレスとIPv6アドレスとの変換を行う。データセンター306は、図11(a)の構成と同じである。
【0008】
このように、図11(b)に示す例で顕在化する課題の一つは、ラベルが最大の場合、MACアドレスからTCPポート番号までをラベルとして扱うことになるが、TCPポート番号が異なるフローは別のエントリーとして扱わなければならないため、経路を共有するフローであっても、それぞれのフローに上記のフィルタリングを行う必要がある、という点である。経路を共有する複数のフローは、同じパスに集約し、共通のエントリーで扱えるようにすることが望まれる。
【0009】
(3)もう一つの課題は、IPアドレスの変換が必要なスイッチ装置、上記の図11(b)の例では、スイッチ装置311、314、317、320においては、“ラベルの付替え処理”が必要となることである。この処理も、少なくすることが望まれる。
【0010】
通常のヘッダ情報をラベルとみなしてスイッチングする方式では無く、ヘッダ情報自体をラベル化した技術としては、前述のMPLS(Multi-Protocol Label Switching)技術がある。これは、同じパスに対し、リンク・バイ・リンクで、異なるラベル値を割り当ててスイッチングしている。これは、ラベル値のユニーク性(単一性)の保証をリンク内に限定し、ラベル値の管理が必要な範囲を小範囲にするためである。しかし、このラベル管理方針により、ラベルの付替え頻度が増大し、かつ、エッジルータ間でのパス(LSP:Label Switched Path)の管理が複雑化している。
【0011】
このラベルの付け替えによる管理の複雑化を抑制するための技術として、特許文献1(米国特許公開番号US2005/0262264 A1)の開示がある。特許文献1の図4に、ラベル情報として、ネットワークID(ID:識別情報)とルータIDとを組み合わせたものがある。この技術を用いれば、宛先ルータまでの途中経路でのラベルの付替えは不要となる。しかし、この開示においてラベル値は仮想化されていないので、あるルータから、ある宛先ルータ(つまり、あるネットワークIDとルータIDとを組み合わせで指定されるルータ)に対し、異なる複数の経路を設定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0262264号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】NEC技報、 Vol.63、 No.2/2010、89-93頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のオープンフロースイッチング技術における3つの課題、つまり、
(1)スイッチングエンジンの大規模化、大消費電力化を抑制する、
(2)経路を共有する複数のフローを、同じパスに集約し、共通のエントリーで扱えるようにする、
(3)フレームの伝送の途中で必要な“ラベルの付替え処理”の回数を抑制する、
ことを行ったラベルスイッチングネットワークを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のラベルスイッチングネットワークは、複数の端末と、複数のスイッチ装置と、前記複数の端末間を前記複数のスイッチ装置を介して接続し上記端末間でフレームを伝送する複数の通信路と、を備え、前記スイッチ装置の各々は、上記フレーム内のラベルの情報からスイッチングに関する情報に変換するためのラベルスイッチング制御テーブルを備え、前記ラベルより得られた前記のスイッチングに関する情報を用いてスイッチングを行うネットワークである。特に、送信端末は、(1)前記フレームのラベルフィールドに、第1ラベル部分と第2ラベル部分を設け、ラベル管理者あるいはラベル管理範囲を特定する識別情報を前記第1ラベル部分に設定し、前記ラベル管理者が付与する、あるいは、前記管理範囲の中で規定された、ユニークな符号を第2ラベル部分に設定する機能、(2)前記フレーム内に表示制御フィールドを設け、前記フレーム内のラベル以外の付加ヘッダに対する、前記フレームのヘッダフィールドでの表示領域あるいは非表示領域を指定する情報を設定する機能、のいずれかあるいは両方の機能を有するヘッダ処理回路を備えることを特徴としている。
【0016】
前記第1ラベル部分として、ラベル管理者あるいはラベル管理範囲を特定するMACアドレス、あるいは、ラベル管理者あるいはラベル管理範囲を特定するIPアドレスを用いることを特徴とする請求項1記載のラベルスイッチングネットワーク。
【0017】
また、本発明のラベルスイッチングネットワークでは、中央制御装置を具備する場合がある。前記中央制御装置は、前記端末あるいは前記スイッチ装置より供給される、ラベル情報及と経路設定に必要な情報とに基づいて、経路を確定する。ここで、「経路を確定する」とは、曖昧さを残さないように経路を決めることを意味する。この際、前記経路に関わるスイッチ装置に対し、ラベルスイッチング制御テーブルへの前記ラベル情報とスイッチングに必要な経路情報とを提供し、前記スイッチ装置は、前記ラベル情報と前記経路情報より得られるスイッチングに必要な制御情報とを前記ラベルスイッチング制御テーブルに設定する。
【0018】
送信端末の前記ヘッダ処理回路は、分散制御的手法により経路設定を可能にする付加ヘッダと前記付加ヘッダに対応するラベル情報とを前記フレームのヘッダフィールドあるいはペイロードの一部に付与する。ここで、また、前記スイッチ装置は、受信された前記フレームの前記の経路設定を可能とする付加ヘッダに基づき経路を確定すると共に、前記フレーム内のヘッダフィールドあるいはペイロードに示された前記ラベル情報と前記の確定された経路に対応しスイッチングに必要な制御情報とを前記ラベルスイッチング制御テーブルに設定する。
【0019】
前記端末で構成される単数あるいは複数の仮想的なグループ内での通信に際し、前記送信端末のヘッダ処理回路は、
(1)上記ラベルスイッチングネットワークの範囲において前記ユニークな符号を前記ラベルに共通に設定すると共に、前記仮想的なグループ内に対する同報通信に対しては、同報通信を指定する値と前記のユニークな符号を前記ラベルに設定する機能、
(2)前記仮想的なグループ内に対する同報通信に対しては、上記第1ラベル部分として該同報通信の管理者を特定する識別情報を設定し、上記第2部分として少なくとも該同報通信の管理者の管理範囲内でユニークな符号を前記ラベルに設定する機能、
のいずれかあるいは両方の機能を有するものとする。
【0020】
前記フレーム内に経路選択ポリシーを指定するポリシーフィールドを設け、前記送信端末あるいはスイッチ装置のいずれかのヘッダ処理回路は、前記ポリシーフィールドの値を設定し、前記スイッチ装置は、受信されたフレームのポリシーフィールドの値を参照して経路設定を行う。ここで、「経路設定を行う」とは、フレームが所定の経路で伝送されるようにスイッチ装置を設定することを意味する。
【0021】
さらに、上記ラベルスイッチングネットワークは所定の対象を感知するセンサーあるいは所定のルールに従って判定する判定器を備え、前記スイッチ装置は、(1)前記フレームのラベル情報と、(2)上記センサーまたは上記判定器の出力する情報と、に基づいて、スイッチングを行う。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、上記のオープンフロースイッチング技術における3つの課題を解決することができる。つまり、
(1)スイッチングエンジンの大規模化、大消費電力化を抑制する、
(2)経路を共有する複数のフローを、同じパスに集約し、共通のエントリーで扱えるようにする、
(3)フレームの伝送の途中で必要な“ラベルの付替え処理”の回数を抑制する、
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるスイッチングネットワーク例を示す図である。
図2】(a)は、図1のスイッチングネットワーク例において、送信側プロトコル処理部50において、MACアドレス処理部53及びIPアドレス処理部54により、TCPポート55、56、57に対応して、プロトコル処理がなされることによる信号フレームのもつフレーム構成を示す図である。(b)は、実施例2用いる一般的なフレーム構成を示す図である。(b’)は、実施例10に用いるフレーム構成の例を示す図である。(c)は、現在のイーサネット(登録商標)仕様及びTCP/IP仕様に準拠させたフレーム構成を示す図である。(d)は、同一宛先に対し、より柔軟に複数経路を設定するために、用いる信号フレームの構成を示す図である。これは、経路ポリシーを選択するための一例として、ラベル情報の一部(本実施例では、拡張ラベルの一部)に、経路コストのタイプを指定する機能を含んでいる。(e)は、コンテンツ配信ネットワークに適用した第9の実施例において用いるフレーム構成を示す図である。ラベル情報として、ラベル管理者のIDの代わりに、コンテンツ管理者71、72、73のIDが設定されている。
図3図1のスイッチ装置の例を示すブロック図である。
図4】本発明の第2の実施例で加えられた端末の例を示す図である。
図5】第4の実施例に用いるスイッチ装置の構成を示すブロック図である。
図6】第5の実施例に用いるスイッチ装置の構成を示すブロック図である。
図7】第6の実施例の通信開始時の、ラベル情報と付加ヘッダのとの対応づけを学習する動作経過を示すチャートである。
図8】第7の実施例における分散制御を説明するためのブロック図である。
図9】第9の実施例であるコンテンツ配信ネットワークを説明するためのブロック図である。
図10】第11の実施例としてセンサーネットワークに適用した実施例を示す図である。
図11】(a)は、従来技術のオープンフロースイッチング技術を用いたデータセンターの構成例を示すブロック図である。(b)は、大規模ネットワーク例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明においては、同じ機能あるいは類似の機能をもった装置に、特別な理由がない場合には、同じ符号を用いるものとする。
【実施例1】
【0025】
本発明の第1の実施例を、図1図2(b)及び図3を用いて説明する。
図1に示す様に、本発明によるスイッチングネットワークは、例えば、複数の端末11、12、13、21、22及び23と、それらを接続しネットワークを構成するスイッチ装置2、3、4及び5と、中央制御装置1とから構成される。更に、それぞれが端末を配下に置き、ラベル管理を行うラベル管理装置10及び20を含むものである。図では、ラベル管理装置10が端末11、12及び13を、ラベル管理装置20が端末21、22及び23をそれぞれ管理している。ラベル管理装置10及び20の両装置は、同じ構成を有し、ラベル管理装置を特定するラベル管理者ID記憶部101、201、端末に配布するラベル値(ラベル管理者ID部分を除く)をプールしているラベルプール102、202を有する。ラベル管理者ID記憶部101、201の記憶するラベル管理者IDは、ラベル管理者を特定するユニークな識別符号である。それぞれの制御部100、200は、配下の端末からのラベルの要求に対し、ラベルプール内の値と自身の管理者IDとをセットにしたラベルを該端末に、公知の通信手段あるいは配送手段を用いて配布する。
なお、ラベル管理装置10あるいは20は、将来の要求に備えて、複数のラベル値をまとめて配布しても良い。また、一旦、配布したラベルを、回収することも可能である。
【0026】
図2(b)に本実施例に用いる一般的なフレームの構成を示す。ヘッダ情報の一部であるラベルフィールドがラベル管理者IDを含んでいることが特徴である。なお、本発明は、ヘッダ情報として他のヘッダフィールド(図中の付加ヘッダ)の付加を制限するものではない。
【0027】
図3に上記スイッチ装置の例を示す。これは、伝送路に接続されたインタフェース回路34、35などのインタフェース回路と、それらをスイッチングするスイッチング回路33とを有し、ラベルスイッチング制御テーブル32に格納されたラベル値とそのラベル値に結び付けられ接続すべき一対のインタフェース回路番号情報に基づきスイッチングされる。制御部31は、中央制御装置1からの指示に基づき、所定のラベル値及び接続すべき一対のインタフェース回路のポート番号情報をラベルスイッチング制御テーブル32に設定する。ラベル値Laのフレームは、入力ポート番号P1のインタフェース回路から出力ポート番号P4のインタフェース回路にスイッチされる。逆方向の通信に対して、異なるラベル値、例えば、宛先の端末(以降、宛先端末)の属するラベル管理装置が管理するラベル情報を用いてもよいが、同じラベル値Laを用いることもできる。なお、ラベルスイッチングテーブル32の構成を簡略化し、ラベル値と出力ポート番号との対応づけのみ記録する構成にしても良い。この場合でも、入力されたポート番号と同じポート番号の出力ポートにはスイッチングしないという条件を設ければ、双方向の通信に対し、同じ値のラベル情報を共有することが可能である。
【0028】
図1に示す例においてある送信側端末とその宛先端末間の通信を開始するに際し、送信側端末は、ラベルによる経路の設定が行われていない場合、管理者IDを含むラベル情報と宛先端末情報、必要ならば、経路制御に必要な情報を添えて、中央制御装置1に対し、経路の設定を要求する。中央制御装置1は、送信元となる該端末の端末情報及び前記の宛先の端末の情報に基づき経路を確定し、その確定した経路の情報を、関係するスイッチ装置の制御部31(図3)に送信する。例えば、図1の端末11からの端末22への通信要求に対し、前述の操作により、スイッチ装置2及び5のそれぞれの制御部31に、端末11が経路設定を要求した前記のラベル情報が中央制御装置1を介し、配布され、更に、それぞれのラベルスイッチング制御テーブル32に設定され、図1に太線で示す端末11、22の間の経路が設定される。
【0029】
ここで、ラベル情報と送信側端末(端末11)とを対応付けるための対応情報については、図1の中央制御装置1から宛先端末22に対し破線で示すように通知しても良いし、また、図2(b)の付加ヘッダ部に送信側端末に関する情報が含まれるならば、スイッチ装置5を経て受信されるフレームのヘッダ情報に基づき、ラベル情報と送信側端末との対応付けを上記宛先端末で行ってもよい。
また、図3のスイッチ装置において、入力ポートと出力ポートとを入換えることも考慮してスイッチング制御を行えば、公知の技術を用いて、双方向の通信に対し、両方向で同じラベル情報を用いることも可能である。
【0030】
上記の様に端末11と端末22との間の通信経路はラベル情報によって特定されるので、同じ宛先端末との通信でも、別のラベル情報を割り当てれば、例えば図1に破線で示す別の経路を設定することが可能となる。
【0031】
本発明の特徴の1つは、ラベル情報がラベル管理者のIDを含むことである。端末11は、宛先端末22への通信に対するラベルの要求を、宛先端末22が属するラベル管理装置20に対して行っても良い。端末22が属するラベル管理装置20のアドレス(IPアドレスあるいはMACアドレス)の取得は、名前解決サーバへの問合わせやアドレス解決プロトコルなど、公知のアドレス解決手段を用いて解決できる。
【0032】
また、同じ端末間通信に対し、送信側端末が属するラベル管理者IDを含むラベル情報と、宛先端末が属するラベル管理者IDを含めラベル情報とを混在させて用いても良い(同一方向の通信に対しても混在可能)。以上のように、ローカルに配置されたラベル管理装置において、ユニークなラベル情報が生成できるので、ネットワーク全体で集中的にラベルを管理する必要が無く、シンプルな運用・管理が可能となる。
【0033】
本実施例では、特許請求の範囲第1項に記載する第1ラベル部分としてラベル管理者を特定する識別情報を用いているが、第2ラベル部分のユニーク性を担保している、企業・組織、地域、グループなど、ラベル管理範囲を特定する識別情報でもよい。公知の技術として、市街番号と市内番号とが組み合わせた電話番号がある。これは、宛先を特定するために識別情報に、階層性を持たせたものであり、本発明の第1ラベル部分と第2部分より構成されるラベルとは次の点が異なる、本発明のラベルでは、第1ラベル部分は、前述のように、ラベルのユニーク性を担保するものであり、市外局番のような宛先に関わる識別情報でなくてもよい。実際、発信元、更には、第三書を特定する情報であってもよい。第2ラベル部分も、市内番号のように宛先を特定する固定的な識別情報ではない。実際、第2ラベル部分は、使用時期が異なっていれば、異なる宛先に対し、同じ符号を割り当てることが許される場合があり、同じ宛先との通信に対し、複数のラベルを割当てることも可能となる。なお、図2には、第1ラベル部分としてラベル管理者IDを用いたフレームが記載されているが、第1ラベル部分は、前述のように、ラベル管理範囲を特定する識別情報でもよい。
【実施例2】
【0034】
本発明の第2の実施例を、図4に示す端末の例を加えて説明する。この実施例におけるフレーム構成は、図2(b)に示した一般的なフレーム構成を、図2(c)に示す現在のイーサネット(登録商標)仕様及びTCP/IP仕様に準拠させたものである。ただし、先の例のラベル内のラベル管理者IDとして送信端末のインタフェース回路のMACアドレス(Media Access Control address)を用いる。図4の端末は、制御部41、フレーム処理部45、送信側プロトコル処理部50、受信側プロトコル処理部60を含む。送信すべき信号は、送信側プロトコル処理部50において、MACアドレス処理部53及びIPアドレス処理部54により、TCPポート55、56、57に対応して、プロトコル処理がなされる。これで得られたフレームは、例えば、図2(a)に示すフレーム構成をもつ。フレーム処理部45は、ラベルプール42、ユニークアドレス部43、ラベル生成部44を有する。ラベル生成部44は、送信側プロトコル処理部50で生成されたヘッダ情報に対応付けられたラベル情報をラベルプール42内からラベル管理者IDは別にして選択してラベル情報の生成を行い、送信フレームのヘッダ情報としてセットし、送信バッファ52及び送信インタフェース51を介して送信する。
【0035】
なお、ラベル管理者IDは、ネットワーク全体でユニークであれば良く、イーサネット(登録商標)仕様には馴染まないが、端末のIPアドレスを用いても、ラベルを端末自身で管理することができる。本実施例では、ラベル管理は、端末各々で実施することができるので、第1の実施例で用いた図1のラベル管理装置10、20は不要となる。
【0036】
一方、図1の宛先端末22においては、図4の受信インタフェース61及び受信バッファ62を介して受信された信号フレームは、フレーム処理部45において、ラベル情報から、IPアドレスやTCPポート番号等が復元され、受信側プロトコル処理部60に供給される。受信側プロトコル処理部60では、MACアドレス処理部63、IPアドレス処理部64、TCPポート65、66、67において、OSI7層構造モデルのそれぞれのレイヤでの処理が行われ、送信側端末と、TCPポート番号対応のセッションあるいはコネクションが維持される。
【0037】
なお、ラベル以外のヘッダ情報(付加ヘッダ)として、宛先IPアドレスをはじめ、他の情報を含んでも良いし、スイッチング制御には用いないので、割愛しても良い。他のアドレス情報を含んで通信する場合、フレーム処理部45における処理は、MACフィールドからラベルフィールドへあるいはその逆の変換処理に限定される。
【0038】
なお、送信側端末は、何らかの手段で宛先端末とのコネクション確立後、それを用いて宛先端末に使用すべきラベルを要求して、それを用いても良い。この場合は、ユニークアドレス部43が管理するラベル管理者IDは、宛先端末のMACアドレスあるいはIPアドレスとなる。当然のことながら、ラベルを適時変更して、セキュリティの向上や、トラフィックにおける輻輳の回避に用いることができる。
【実施例3】
【0039】
本発明の第3の実施例に用いる信号フレームの詳細を図2(c)に示す。本実施例は、ラベルフィールドを拡張する機能と、付加ヘッダとして転送しているヘッダを表示し付加ヘッダの隠蔽を動的に変更する機能とを具備したものである。
【0040】
はじめに、ヘッダの拡張機能について説明する。ヘッダの拡張機能によって2つのサービスを提供することができるようになる。一つは、経路制御に用いるヘッダ情報のサイズを長くし、より大規模なネットワークにも対応可能とすることである。もう一つは、経路制御に用いるラベル情報とは別に、端末間で例えば、TCPセッションあるいはフローを識別する機能を拡張ラベルに持たせるサービスである。後者は、同じ宛先端末との間の複数のフローを、基本ラベル情報でリンクアグリゲートする一方、端末間では、拡張ラベルで、個々のフローを識別させるものである。複数のフローが、経路を共有することができるので、効率的なスイッチング制御が実現される。
【0041】
次に、表示制御フィールドを用いたヘッダ隠蔽制御について説明する。例えば、IPアドレスなど付加ヘッダ情報とラベル情報との対応付けをする場合、別の通信手段に基づくアウトバンド(帯域外)シグナリング手法を用いてもできるが、付加ヘッダとラベル情報を結合させて送信すれば、信号フレームの受信だけで、その対応付けを学習できる(インバント(帯域内)シグナリング手法)。図2(c)の構成がそれに該当する。一方、通信のセキュリティを向上させるには、IPアドレスやTCPポート番号は、送信しないことが望まれる。これらの制御をダイナミックに行うために、表示制御を実施する。つまり、表示制御フィールドを設け、それが示す値により、表示されている付加ヘッダフィールドを特定する。これにより、当初は付加ヘッダを表示し、宛先端末側でラベルの対応づけについての学習が完了した後は、それらを隠蔽するといった制御が可能となる。この隠蔽とは、他の情報を上書きすることや、上記ヘッダフィールドを切詰めることなどを意味する。
【0042】
次に、以上のヘッダの操作・制御を、図2(c)で示すフレーム構成を用いて具体的に説明する。拡張ラベルフィールド、表示制御フィールドの長さをそれぞれ、4バイト、2バイトとする。拡張ラベルフィールドの先頭2バイトが0xC100(以下、0xは16進表示を示す)の場合、以下の2バイトは、ラベル情報の拡張を示す。スイッチ装置は、基本ラベル(オリジナルのラベルフィールド)に加え、下位2バイトをラベル情報として扱う。拡張ラベルフィールドの先頭2バイトが0xC101場合は、下位2バイトは、端末間で定義されるフローの識別用に用いられるローカル用途のラベルとして扱われ、スイッチ装置は、スイッチング用のラベルとして処理しない。表示制御フィールドの先頭1バイトが0xC0の場合、続く下位の1バイトが付加ヘッダの表示制御を関わるものとする。下位1バイトの値≦127(10進表示)の場合、その値は、隠蔽されたフィールドのバイト数を示す。その値が40の場合、IPv6のIPアドレス対(32バイト)とTCPポート番号対(8バイト)が、隠蔽され、表示フィールドの後にペイロードが続いていることを示す。表示フィールドの下位1バイトの値が≧128の場合は、通信相手の端末との了解に基づき、付加ヘッダのみならず、ペイロード部分を含み、その中のどのフィールドを隠蔽するのかそのパターンを規定するものとする(128個の任意のパターンを規定可能)。なお、ラベルフィールドの次に、0xC0が検出された場合は、拡張ラベルフィールドは割愛され、表示制御フィールドであることを示すことになる。以上は、一例ではあるが、動的な制御が可能となる。
【実施例4】
【0043】
次に、本発明の第4の実施例を説明する。これは、ラベル情報を用いたスイッチングと、ラベル情報を用いない既存の宛先MACアドレスによりスイッチングとの両方を混在させて機能するスイッチ装置に関するものである。図に示していないが、ラベルフィールドの先頭に、ラベル用途か、非ラベル用途かの識別情報を付与して、通信経路における混在を可能とするものである。本実施例に用いるスイッチ装置の構成を図5に示す。これは、図3に示すスイッチ装置に、MACスイッチング制御テーブル36と、ラベルスイッチング制御テーブル37との切り替えを行うセレクタ手段38が加わったものである、ヘッダ内、例えば、ラベルフィールドの先頭ビットの識別情報に基づき、MACスイッチング制御テーブル36とラベルスイッチング制御テーブル37の出力結果のいずれかが選択される。なお、二つのスイッチング制御テーブルの切り替えは、前述のようなセレクタ手段を用いる以外にも、二つのスイッチング制御テーブルを同じメモリ内に実現し、メモリのアドレッシング制御によるなど、公知の方法によって実現できる。
【0044】
図5において、セレクタ手段38の制御によって、MACスイッチング制御テーブル36の出力あるいはラベルスイッチング制御テーブル37の一方を動作させるように構成することは容易である。また、セレクタ手段38の制御によってラベルフィールドの情報をMACスイッチング制御テーブル36またはラベルスイッチング制御テーブル37の一方に流す構成にすることも容易である。これらの構成によって、回路動作を抑制し消費電流を削減することができる。
【0045】
本実施例では、MACアドレスあるいはラベル値から出力ポート番号が出力される構成のテーブルを用いているが、図3に示すように入力ポートも特定するような構成にしてもよい。また、前記両テーブルを、一つのメモリ(例えば連想メモリ)で、ラベル値、MACアドレスの両方またはいずれか一方から出力ポートを特定する構成にしても良く、公知の技術で可能である。これらのテーブルは、連想メモリを用いた高速な探索のほかに、よく知られているように、ハッシュ関数を用いる方法や、2分探索を並列で行う方法などを適用することも可能である。
【0046】
このようなスイッチ装置をネットワーク内に配置することによりラベル型のスイッチングと、従来のMACアドレスに基づくスイッチングの併存が実現される。端末側も、図4に示すフレーム処理部45により両方のサービスを提供することができる。従来のMACアドレスベースのスイッチングを行う場合は、送信側プロトコル処理部50からの信号に対し、前記識別情報を付加するのみで、ラベル生成処理を割愛して、送信バッファ52に送出する。
【実施例5】
【0047】
本発明の第5の実施例を、図6を用いて説明する。これは、図3のスイッチ装置にキャッシュテーブル38が加わっている。ラベルにより特定されるコネクションの設定には、中央製制御装置1により経路の設定が必要となる。中央制御装置1の負荷を低減させるには、この経路設定の頻度を少なくすることが望まれる。それには、ラベルスイッチング制御テーブル32のエントリー数を大きくする必要がある。しかしながら、エントリー数を多くするには、高価なデバイスを必要とし、消費電力が大きくなるという制約を受ける。ラベルスイッチング制御テーブル32に格納されているコネクション(ラベルとポート番号情報により特定される)情報のうち、アクセス頻度の低いコネクション情報を、キャッシュテーブル38に退避させることにより、この問題を解消することができる。制御部31は、ラベルスイッチング制御テーブル32に登録されていないラベルを検出すると、キャッシュテーブル38を検索し、ヒットすれば、該コネクション情報をラベルスイッチング制御テーブル32に転送する。
【実施例6】
【0048】
図7に本発明の第6の実施例を示す。ラベル情報と付加ヘッダのとの対応づけを学習するものであり、その手順を示す。送信側端末11は、中央制御装置1に宛先端末22に関する経路制御に必要な情報とラベル情報とを送出し、中央制御装置1は経路を確定し、関係するスイッチ装置(この場合、スイッチ装置2及び5)に、必要な経路制御情報を設定する。そして、上記の関係するスイッチ装置の全てから設定完了のACK信号を受信すると、送信側端末11に、経路設定完了通知を送出する。送信側端末11は、これを受信すると、IPアドレスやTCPポート番号などの付加ヘッダを表示する形態で、つまり隠蔽しない形態で、信号フレームを送出する。宛先端末22は、この信号フレームを受信すると、前記付加ヘッダとラベル情報との対応づけを識別し記録することで学習する。また、宛先端末22は、応答の際に受信時と同じ値のラベルを用いた信号フレームで応答信号を送信する。送信側端末11は、前記応答信号の受信により、宛先端末22の上記学習を認識すると、それ以降、付加ヘッダを隠蔽するフレーム構成、即ち、表示制御フィールドの次にTCPシーケンス番号が続く構成で送出する。この制御により、IPアドレスやTCPポート番号が隠されるので、盗聴などに対し高いセキュリティを確保することができる。
【実施例7】
【0049】
以上、経路の設定を中央制御装置が行う実施例の説明を行ってきたが、以下では、中央制御装置を用いないで、分散制御により経路設定を行う実施例を次に説明する。
この分散制御を、図8を用いて、端末21から端末12への通信を例に説明する。端末21は、図2(c)の構成を有する経路設定用の信号フレームを、スイッチ装置4に送信する。スイッチ装置4は、この信号フレームのラベルが登録されていない場合、スイッチ装置4に接続されたスイッチ装置2、5にフラッディング(flooding)する。フラッディングに際しては、入力されたポートには出力しない。また、同じラベルのフレーム信号が到着した場合は、後から到着した信号フレームは廃棄する。そして、各スイッチ装置は、廃棄しなかったフレーム信号のラベル値と入力ポートとの対応づけを記録する。この結果、全ての端末に、この経路設定用信号フレームは、同報されるが、宛先IPアドレスと一致する端末12のみが、同じラベル値の信号フレームを用いて応答信号を送出する。各スイッチ装置は、ラベル値と往路での入力ポートとの対応づけを記録しているので、応答信号は、上記往路をさかのぼる形の復路で、端末21に到着する(図8の太線で示す経路)。上記復路上の各スイッチ装置がこの応答信号の通過に対応し終えることで、端末21から端末12への経路が設定される。
【0050】
この分散制御だけでは、同じ宛先に対し異なる経路は設定できない。しかし、図11(b)に示した様な異なるネットワークを介した通信において、IPアドレスの付け替え頻度を大幅に低減させることができる。通信の開始に当たっては、まず、上述のように、図2(c)の構成を有する信号フレームにより、経路の設定を行う。この場合、従来のIPルーティングプロトコルを用いて設定を行ってもよい。IPv4とIPv6との間や、プライベートIPアドレスとパブリックIPアドレスとの間の変換や、ロードバランシングサービスで選択されたサーバのIPアドレスの付与などを行う。これにより、経路が設定される。次に、IPアドレスを隠ぺいした信号フレームで通信を行う。各スイッチ装置は、ラベル情報のみでスイッチングを行うので、ネクストホップを繰り返すIPアドレス方式の場合に比べて、信号フレームの高い到達性を確保できると共に、ヘッダは固定されており、IPアドレスは付加されていないので、ネクストホップを繰り返す際のIPアドレスの付け替え処理は不要となる。これにより、経路設定完了後のデータ転送フェーズでのスイッチング制御をシンプル化することができる。
【0051】
なお、実施例6及び7では、ラベル情報をフレームヘッダの一部として送出し、付加ヘッダとの対応付けを行っているが、ヘッダラベル情報の転送を、ペイロードを用いて実施してもよい。この場合、フレームは、非ラベル形式にすることも可能であり、ラベル形式の通信との併存は、実施例4に示した技術で実現される。
【実施例8】
【0052】
同じ宛先に対して異なる経路を設定する第8の実施例について説明する。この実施例では、各スイッチ装置に、各出力ポートのトラヒックを観測し、ある閾値を超えると、かかるポートを閉塞し、新たな経路設定を行うという機能を具備させる。このために、例えば図8において、スイッチ装置4からスイッチ装置2への経路のトラヒックが閾値を超えている場合、スイッチ装置4はその経路へのフラッディングを禁止する。この制御により、点線で示すような別の経路が設定される。
【0053】
同一宛先に対し、より柔軟に複数経路を設定するために、図2(d)に示す信号フレームを用いる。これは、ラベル情報の一部(本実施例では、拡張ラベルの一部)に、経路を設定するための経路コストのタイプを指定する機能を含んでいる。一般に、経路コストには、中継ホップ数以外に、伝送帯域、空き伝送帯域、伝送距離など、種々あるが、デフォルトの経路コスト(例えば、ホップ数)とは別に、端末のポリシーに従い経路コストを選択させる。すなわち、デフォルト経路コストで設定される経路とは異なりそれぞれの経路コストで最適化された経路を設定することができる。
【実施例9】
【0054】
本発明をコンテンツ配信ネットワークに適用した第9の実施例を、図9を用いて説明する。コンテンツ配信ネットワーク70は、端末77、78、79をはじめとする複数の端末を収容し、キャッシュサーバを含むコンテンツサーバ74、75、76をはじめとするコンテンツサーバが配置されている。図2(e)に本実施例に用いる信号フレームの構成を示す。ラベル情報として、ラベル管理者のIDの代わりに、コンテンツ管理者71、72、73のIDが設定されている。コンテンツ管理者とは、コンテンツ作成者、著作権保有者、配信事業者などがある。将来、個人がコンテンツ配信を行う状況では、個人を特定するコード、例えば、免許証番号や個人電話番号などでもよい。これにより、コンテンツに対し、全世界でユニークな(つまり単一性を保証された)IDを割り当てるという困難な作業から解放される。本実施例では、図2のラベル情報が抽象的な番号ではなく、具体的なコンテンツに対応付けられた番号になっているだけなので、そのラベル値をラベルスイッチング制御テーブル32に設定することにより、前述の実施例に記載されたラベルスイッチング制御が実現される。また、ラベルの表示制御も同様に実現される。
【0055】
コンテンツサーバには、付加ヘッダを割愛した形態でコンテンツを格納すれば、例えば映像信号の各フレームなどの信号フレームを単位とするコンテンツ管理が実現され、IPアドレス方式によるコンテンツ流通サービスの通信経路上の処理オーバヘッドを低減することができる。その場合、信号フレーム単位にシーケンス番号を用いることになるが、この番号をTCPのポート番号の代わりとすれば、OSI7層構造モデルのさらに上位レイヤでの処理の効率化が図られる。
【実施例10】
【0056】
VLAN(仮想LAN)機能を、本発明のラベルに付与した場合の実施例について説明する。VLANは、設定された端末間でのみ仮想的なLAN接続されるサービスである。現状のVLANタグは、12ビットで4096個のVLANしか提供できない。図2(b’)に既存のVLANタグフィールドを含み、かつラベルフィールドにVLAN機能を付与した構成を示す(カッコ内数字はビット数を示す)。2次VLAN(VLANタグが規定するVLANの中に規定されるので2次VLANと称す)を共有する端末は、ラベル管理者IDを除くラベルフィールドに、VLAN対応の共通のラベル値(VLAN指定)と個別の通信を特定するためのラベルフィールド(コネクション指定)を設ける。更に、VLAN端末間での、同報通信向けに固有のラベル値(コネクション指定値=1111・・・111)を割り当てる。例えば、VLANタグの規定するVLAN内にさらに4096個のVLAN設定する場合を考える。ラベルフィールドの長さを96ビット、そのうちの下位48ビットをラベル管理者IDに割り当て、上位2ビット=11の場合ラベル化ヘッダとし、残りの46ビットのうち、下位12ビットをVLAN指定に割り当てる。残りの44ビットが、4096x4096個のVLAN中でのコネクションあるいはフローを規定する。この二重構造のVLANでの同報通信は、コネクション指定のフィールドのビットを全て“1“により実現する。このように、本発明は、VLAN機能の拡張も実現することができる。
【0057】
また、VLAN数を実質的に拡大する方法としては、VLANタグを用いないで、仮想的なグループを構成する端末間のブロードキャースト通信を、マルチキャースト通信を用いて実現する方法が考えられる。具体的には、VLAN内のユニキャースト通信は、図2(b)のフレーム構成( 図2(b')ではなく)を用い、グループ内に限定したブロードキャースト通信に対しても、同じく、図2(b)のフレーム構成を用い、ラベル第1部分であるラベル管理者IDとして、VLAN管理サーバ(VLANを設定するために一般的に設置される)のID(例えば、MACアドレス)を用い、ラベル第2部分には該グループに関わる端末を指定するマルチキャーストアドレス(あるいはグループアドレス)を割り当てる。ラベル第2部分のビット長を大きくすることにより、グループ数、すなわち、実効VLAN数を増大させることができる。12ビットのVLANタグと組み合わせれば、実効VLAN数は更に拡大できる。
【実施例11】
【0058】
本発明をセンサーネットワークに適用した実施例を図10に示す。本センサーネットワークは、中央制御装置80、センサー81、82、83、端末84、85、86及びこれらを接続するスイッチ装置91、92、93、94とから構成される。本実施例は、これら所定の対象を感知するセンサーのセンサー情報(例えば、温度情報)の値により、経路を選択する機能を実現するものである。具体的には、センサー81の温度情報が、例えば50℃以下の場合は、そのセンサー情報は端末86に転送され、50℃を超える場合は端末85に転送されるサービスを実現するためのものである。センサー81は、定められたラベルをヘッダにして、温度情報をフレーム化して送出する。スイッチ91は、該ラベル情報と温度情報とを読み取り、予め通告された中央制御装置80の指示に基づき、温度情報が50℃以下の場合、スイッチ94にスイッチする。スイッチ94は、同様に中央制御装置80の指示に基づき、端末86にスイッチする。スイッチ91から端末86への経路を太線で示す。温度情報が50℃を超えない場合は、同じように、中央制御装置80の指示により、点線で示す経路で、スイッチ装置91を経て端末85に転送することが可能となる。なお、温度情報は、その値をペイロードに設定にしてもよいし、加工(この場合、50℃を超えているか否かの判定)した結果を、ラベルの一部に設定してもよい。なお、本構成において、ペイロードを用いて温度情報即ちセンサー情報を転送する場合、スイッチ93、94は、50℃を超えない場合と50℃を超える場合のどちらか一方でしか、経路上のスイッチ装置とならないので、ラベル情報だけに基づいてスイッチングしてもよい。本実施例では、センサーは、宛先端末を意識しないでセンサー情報を送出することができるので、センサーをシンプルにすることができ、小型化・低消費電力化に寄与する。
【0059】
なお、上記では、センサー情報とラベルに基づく経路制御の指示を中央制御装置80が行う構成を説明したが、この設定指示を端末側から分散して行う構成も可能である。端末85は、センサー81を収容するスイッチ装置91のアドレスとそれに至る経路を、公知の技術を用いて把握し、スイッチ装置91を含め経路上のスイッチ装置、つまりこの場合スイッチ93、に対し、指示することが可能である。
【0060】
また、本実施例では、センサー81のセンサー情報に対するスイッチング制御を説明したが、複数のセンサーからの情報に基づいて、それらを論理処理した後、例えば、全てが50℃を超えた場合に、センサー情報のすべてあるいはその一部を、定められた端末にスイッチングするように制御することも本発明に含むものである。
【0061】
上記で所定の対象のセンサー情報を用いてスイッチングを行う例を示したが、本発明は、これらの例に制限されるものではなく、例えば、(1)スイッチ装置が時計を有し、ある時刻範囲に例えば50℃超えを示すフレームを受信した場合や、(2)スイッチ装置がカウンタを有し、50℃を越えた旨を示すフレームの数が所定の閾値を超えた場合などに、所定のルールに従って判定する判定器の出力結果をもとにスイッチングするネットワークなども可能であり、種々の状況に基づいて設定したそれぞれの手順に従ってスイッチングを行うネットワークも、含むものである。
【0062】
以上の実施例において説明した、図4に示した端末のフレーム処理に関わる構成を、ラベルスイッチングネットワークに配置されるスイッチ装置が具備する構成も本発明は含むものである。例えば、図1において、端末11、12、13、21、22、23からの図2(a)に示す信号フレームを、スイッチ装置2、3、4、5で、図2(b)に示す信号フレームをはじめ、ラベルを含む信号フレームに変換する構成である。この場合、図7に示す中央制御装置1と送信元端末11との信号の授受は、中央制御装置1とスイッチ装置2との信号の授受に置き換わる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の適用によって、上記の効果の他に、以下の効果も期待することができる。
(1) 同じ宛先に対し複数の経路を設定できる。
(2) ラベルをローカルに管理できる。
(3) 宛先、経路が同じコネクション(フロー・パス)に対し、同じ値のラベルでリンクアグリゲートできる。これにより、スイッチ装置のスイッチングエンジンのエントリー数を低減できると共に、コネクションの経路設定の頻度を少なくすることができる。
(4) アクセス頻度の低いラベルのキャッシュテーブルに退避させることより、高速動作が要求されるスイッチングテーブルの効率的な利用が実現される。
(5) オープンフロースイッチング方式に比べ、検索すべきビット長が短かくでき、“Don't Care”のビットがないので2値処理で済み、デバイスの小規模化、低消費電力化、小型化に寄与する。
(6) ラベルの長さを拡張できる。
(7) 付加ヘッダを隠ぺいできる。
(8) 付加ヘッダの付け替えを不要とする。
(9) ラベルと付加ヘッダの対応付けの学習を実現できる。
(10) 分散制御環境で、ラベルスイッチングを可能とする。
(11) コンテンツ配信ネットワークにおいては、コンテンツを特定するラベルによりスイッチングを可能とする。
(12) 既存のLANスイッチングネットワークやIPルーティングネットワークと共存できる。
(13) 異なる経路コストを用いて、経路設定が可能となる。
(14) センサー情報に基づき、その経路や転送起動の条件をプログラマブルにすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 中央制御装置
2、3、4、5 スイッチ装置
10 ラベル管理装置
11、12、13、21、22、23 端末
20 ラベル管理装置
31 制御部
32 ラベルスイッチング制御テーブル
33 スイッチング回路
34、35 インタフェース回路
36 MACスイッチング制御テーブル
37 ラベルスイッチング制御テーブル
38 セレクタ手段
41 制御部
42 ラベルプール
43 ユニークアドレス部
44 ラベル生成部
45 フレーム処理部
50 送信側プロトコル処理部
51 送信インタフェース
52 送信バッファ
53 MACアドレス処理部
54 IPアドレス処理部
55、56、57 TCPポート
60 受信側プロトコル処理部
61 受信インタフェース
62 受信バッファ
63 MACアドレス処理部
64 IPアドレス処理部
65、66、67 TCPポート
70 コンテンツ配信ネットワーク
71、72、73 コンテンツ管理者
74、75、76 コンテンツサーバ
77、78、79 端末
80 中央制御装置
81、82、83 センサー
84、85、86 端末
91、92、93、94 スイッチ装置
100、200 制御部
101、201 ラベル管理者ID記憶部
102 ラベルプール
300 中央制御装置
301 パソコン
302 ユーザネットワーク
303 IPv4ネットワーク
304 IPv6ネットワーク
305 IPv4ネットワーク
306 データセンター
311、312、313、314、315、316、317、318、319、320 スイッチ装置
321、322、323 サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11