特許第6011778号(P6011778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6011778暗視撮像装置および赤外線照射装置および暗視撮像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011778
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】暗視撮像装置および赤外線照射装置および暗視撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/335 20110101AFI20161006BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20161006BHJP
   H04N 9/07 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H04N5/335
   H04N5/225 F
   H04N9/07
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-116569(P2012-116569)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-243589(P2013-243589A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100105094
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 薫
(72)【発明者】
【氏名】伴 新二
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−050049(JP,A)
【文献】 特開2005−182247(JP,A)
【文献】 特開平04−007991(JP,A)
【文献】 特開2007−089084(JP,A)
【文献】 特開平07−274183(JP,A)
【文献】 特開2002−171519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 − 5/378
H04N 5/222− 5/257
H04N 7/18
H04N 9/04 − 9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長、第2波長および第3波長の順番で赤外線を受光し、受光に応じて波長ごとに画像信号を出力する画素群を含み、当該画素群の中に、光の三原色の第1色に感度を有し前記赤外線のうち最も波長の短い光の受光に応じて第1信号を出力する第1画素、および、前記三原色の第2色に感度を有し前記赤外線の受光に応じて第2信号を出力する第2画素を有する撮像素子と、
前記第1信号および前記第2信号を相互に比較し、相対感度比に応じて特定の波長の赤外線の受光タイミングを判別する判別回路と
を備えることを特徴とする暗視撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の暗視撮像装置において、
商用電源から供給される決められた周波数の電力に基づき前記撮像素子に駆動信号を供給する制御回路と、
前記電力の周波数に同期して決められた順番で前記画像信号に表示色を関連づける画像合成処理回路と
を備えることを特徴とする暗視撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の暗視撮像装置において、第1波長の前記赤外線に基づく前記画像信号には前記表示色として赤色が関連づけられ、前記第1波長よりも長い第2波長の前記赤外線に基づく前記画像信号には前記表示色として青色が関連づけられ、前記第2波長よりも長い第3波長の前記赤外線に基づく前記画像信号には前記表示色として緑色が関連づけられることを特徴とする暗視撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の暗視撮像装置において、前記第1色は赤色であって、前記第2色は青色または緑色のいずれかであることを特徴とする暗視撮像装置。
【請求項5】
被写体に向かって第1波長の赤外線を放出する第1光源、
前記被写体に向かって第2波長の赤外線を放出する第2光源、
前記被写体に向かって第3波長の赤外線を放出する第3光源、および、
商用電源から供給される決められた周波数の電力に同期して決められた順番で前記第1光源、前記第2光源および前記第3光源の赤外線の放出を切り替える制御回路を有する赤外線照射装置と、
前記周波数の周波数信号に同期して前記順番で前記第1波長、前記第2波長および前記第3波長の赤外線を受光し、受光に応じて波長ごとに画像信号を出力する画素群を含み、当該画素群の中に、三原色の第1色に感度を有し前記赤外線のうち最も波長の短い光の受光に応じて第1信号を出力する第1画素、および、三原色の第2色に感度を有し前記赤外線の受光に応じて第2信号を出力する第2画素を有する撮像素子、並びに、
前記第1信号および前記第2信号を相互に比較し、相対感度比に応じて前記第1波長の赤外線の受光タイミングを判別する判別回路を有する暗視撮像装置と
を備えることを特徴とする暗視撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視撮像システム、および、暗視撮像システムに利用される暗視撮像装置および赤外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、自然な色合いのカラー画像を再現することができる暗視撮像システムは知られる。暗視撮像システムは赤外線照射装置および暗視撮像装置を備える。赤外線照射装置は対象物に向かって例えば第1波長、第2波長および第3波長の赤外線を照射する。暗視撮像装置では個々の赤外線ごとに画像が撮像される。画像ごとに赤外線の強度分布が得られる。画像ごとにR(赤色)、G(緑色)およびB(青色)が表示色として割り当てられる。割り当てられた表示色の強度分布が重ねられると、擬似的に自然な色合いのカラー画像は生成されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−50049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
暗視撮像システムでは、第1波長、第2波長および第3波長の赤外線の照射が順番に切り替えられる場合に、各波長の赤外線ごとに表示色が特定されなければならない。したがって、画像ごとに赤外線の波長が特定されなければならない。こういった特定にあたって赤外線照射装置および暗視撮像装置の間には制御線が接続される。赤外線照射装置と暗視撮像装置とが遠隔に配置される場合には長い制御線が要求され、その結果、施工や配置に制約が生じてしまう。
【0005】
本発明のいくつかの態様によれば、赤外線照射装置および暗視撮像装置の間で制御線は省略されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、第1波長、第2波長および第3波長の順番で赤外線を受光し、受光に応じて波長ごとに画像信号を出力する画素群を含み、当該画素群の中に、光の三原色の第1色に感度を有し前記赤外線のうち最も波長の短い光の受光に応じて第1信号を出力する第1画素、および、三原色の第2色に感度を有し前記赤外線の受光に応じて第2信号を出力する第2画素を有する撮像素子と、前記第1信号および前記第2信号を相互に比較し、相対感度比に応じて特定の波長の赤外線の受光タイミングを判別する判別回路とを備える暗視撮像装置に関する。
【0007】
撮像素子は、切り替えられる波長ごとに赤外線の画像を撮像することができる。画像ごとに赤外線の強度分布が得られる。波長ごとに特定の表示色が関連づけられることができる。関連づけられた表示色の強度分布が重ねられると、擬似的に自然な色合いのカラー画像は生成されることができる。
【0008】
本発明者の観察によれば、赤外線の波長に応じて第1信号および第2信号の相対感度比は変化する。したがって、判別回路で第1信号および第2信号の相対感度比が特定されると、相対感度比に応じた特定の波長の赤外線の受光タイミングは判別されることができる。第1波長、第2波長、第3波長の順番で赤外線は受光されることから、こうして特定の波長の赤外線の受光タイミングが判別されれば、全ての赤外線の受光タイミングは決定されることができる。赤外線照射装置および暗視撮像装置の間で制御線が省略されても、確実に波長ごとに特定の表示色は関連づけられることができる。
【0009】
暗視撮像装置は、商用電源から供給される決められた周波数の電力に基づき前記撮像素子に駆動信号を供給する制御回路と、前記電力の周波数に同期して決められた順番で前記画像信号に表示色を関連づける画像合成処理回路とを備えることができる。商用電源から供給される電力は暗視撮像装置だけでなく赤外線照射装置にも同位相で供給されることができる。その結果、赤外線の波長の切り替えと赤外線の受光のタイミングとは同期することができる。同期にあたって赤外線照射装置および暗視撮像装置の間で制御線は省略されることができる。したがって、施工や配置の制約を受けずに赤外線照射装置および暗視撮像装置は遠隔に配置されることができる。
【0010】
第1波長の前記赤外線に基づく前記画像信号には前記表示色として赤色が関連づけられることができ、前記第1波長よりも長い第2波長の前記赤外線に基づく前記画像信号には前記表示色として青色が関連づけられることができ、前記第2波長よりも長い第3波長の前記赤外線に基づく前記画像信号には前記表示色として緑色が関連づけられることができる。こうした関連づけによれば、他の組み合わせに比べて自然な色合いのカラー画像は生成されることができる。
【0011】
前記第1色は赤色であって、前記第2色は少なくとも青色または緑色のいずれかであることができる。赤外線の波長が比較的に短いと、赤色の第1画素の出力と、青色または緑色の第2画素の出力との相対感度比は大きい。その一方で、赤外線の波長が長くなるにつれて、光の三原色の画素の出力値はほぼ一致していく。すなわち、相対感度比は1対1に近づいていく。したがって、赤色と青色または緑色とが比較されれば、確実に特定の波長の赤外線の受光タイミングは判別されることができる。
【0012】
本発明の他の形態は、被写体に向かって第1波長の赤外線を放出する第1光源、前記被写体に向かって第2波長の赤外線を放出する第2光源、前記被写体に向かって第3波長の赤外線を放出する第3光源、および、決められた周波数の周波数信号に同期して決められた順番で前記第1光源、前記第2光源および前記第3光源の赤外線の放出を切り替える制御回路を有する赤外線照射装置と、前記周波数の周波数信号に同期して前記順番で前記第1波長、前記第2波長および前記第3波長の赤外線を受光し、受光に応じて波長ごとに画像信号を出力する画素群を含み、当該画素群の中に、光の三原色の第1色に感度を有し前記赤外線のうち最も波長が短い光の受光に応じて第1信号を出力する第1画素、および、三原色の第2色に感度を有し前記赤外線の受光に応じて第2信号を出力する第2画素を有する撮像素子、並びに、前記第1信号および前記第2信号を相互に比較し、相対感度比に応じて前記第1波長の赤外線の受光タイミングを判別する判別回路を有する暗視撮像装置とを備える暗視撮像システムに関する。
【0013】
赤外線照射装置は、決められた周期、かつ、決められた順番で、第1波長の赤外線、第2波長の赤外線および第3波長の赤外線を放出することができる。撮像素子は、切り替えられる波長ごとに赤外線の画像を撮像することができる。画像ごとに赤外線の強度分布が得られる。波長ごとに特定の表示色が関連づけられることができる。関連づけられた表示色の強度分布が重ねられると、擬似的に自然な色合いのカラー画像は生成されることができる。
【0014】
判別回路で第1信号および第2信号の相対感度比が特定されると、相対感度比に応じた特定の波長の赤外線の受光タイミングは判別されることができる。決められた順番で複数の波長の赤外線は受光されることから、こうして特定の波長の赤外線の受光タイミングが判別されれば、全ての赤外線の受光タイミングは決定されることができる。赤外線照射装置および暗視撮像装置の間で制御線が省略されても、確実に波長ごとに特定の表示色は関連づけられることができる。
【0015】
本発明のさらに他の形態は、第1波長の赤外線を放出する第1光源と、第2波長の赤外線を放出する第2光源と、第3波長の赤外線を放出する第3光源と、決められた周波数の周波数信号に同期して決められた順番で前記第1光源、前記第2光源および前記第3光源の赤外線の放出を切り替える制御回路とを備える赤外線照射装置に関する。こうして赤外線照射装置は、決められた周期、かつ、決められた順番で、第1波長の赤外線、第2波長の赤外線および第3波長の赤外線を放出することができる。
【0016】
赤外線照射装置は、商用電源から供給される前記周波数信号としての電力に基づき前記第1光源、前記第2光源および前記第3光源に駆動信号を供給する駆動回路を備えることができる。商用電源から供給される電力は赤外線照射装置だけでなく赤暗視撮像装置にも同位相で供給されることができる。その結果、赤外線の波長の切り替えと赤外線の受光のタイミングとは同期することができる。同期にあたって赤外線照射装置および暗視撮像装置の間で制御線は省略されることができる。したがって、施工や配置の制約を受けずに赤外線照射装置および暗視撮像装置は遠隔に配置されることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明のいくつかの形態によれば、赤外線照射装置および暗視撮像装置の間で制御線は省略されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る暗視撮像システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図2】赤外線に対するR画素、G画素およびB画素の相対感度を示すグラフである。
図3】暗視撮像システムの動作タイミングを概略的に示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0020】
図1は一実施形態に係る暗視撮像システム11を概略的に示す。暗視撮像システム11は赤外線照射装置12および暗視撮像装置13を備える。赤外線照射装置11は被写体に向かって例えば第1波長の赤外線14a、第2波長の赤外線14bおよび第3波長の赤外線14cを照射する。暗視撮像装置13では個々の赤外線14a、14b、14cごとに画像が撮像される。画像ごとに赤外線14a、14b、14cの強度分布が得られる。画像ごとにR(赤色)、G(緑色)およびB(青色)が表示色として割り当てられる。ここでは、第1波長の赤外線14aに基づく画像に青色が割り当てられ、第2波長の赤外線14bに基づく画像に緑色が割り当てられ、第3波長の赤外線14cに基づく画像に赤色が割り当てられる。割り当てられた表示色の強度分布が重ねられると、擬似的に自然な色合いのカラー画像は生成されることができる。
【0021】
暗視撮像装置13にはディスプレイユニット15が接続されることができる。カラー画像はディスプレイユニット15の画面に映し出されることができる。その他、暗視撮像装置13には記憶装置(図示されず)が接続されることができる。カラー画像は記憶装置に記憶されることができる。
【0022】
赤外線照射装置12および暗視撮像装置13はそれぞれ商用電源16に接続される。接続にあたって赤外線照射装置12および暗視撮像装置13はそれぞれ電源コード17、18を備える。電源コード17、18のプラグは商用電源16のコンセント19、21にそれぞれ差し込まれる。個々のコンセント19、21には発電所22の発電機から交流電源が供給される。交流電源は例えば50Hzや60Hzといった規定の周波数を有する。赤外線照射装置12および暗視撮像装置13は供給される交流電源に基づき動作する。動作にあたって交流電源は必要に応じて直流電流に変換されることができる。赤外線照射装置12および暗視撮像装置13にはAC/DC変換回路(図示されず)が組み込まれることができる。こうした発電所22の発電機に代えて個々のコンセント19、21には自家発電機から電力が供給されてもよい。その他、いかなる形態であろうと、個々のコンセント19、21には共通の発電機から電力が供給されることができる。
【0023】
赤外線照射装置12は第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25を備える。第1赤外線光源23は第1波長(ピーク値)の赤外線14aを放出する。第1波長は例えば780nmに設定されることができる。第1赤外線光源23は例えばLED(発光ダイオード)で構成されることができる。第2赤外線光源24は第2波長(ピーク値)の赤外線14bを放出する。第2波長は第1波長よりも長い。第2波長は例えば870nmに設定されることができる。第2赤外線光源24は例えばLEDで構成されることができる。第3赤外線光源25は第3波長(ピーク値)の赤外線14cを放出する。第3波長は第2波長よりも長い。第3波長は例えば940nmに設定されることができる。第3赤外線光源25は例えばLEDで構成されることができる。個々の赤外線光源23、24、25は例えば40nmの半値幅を有することができる。
【0024】
赤外線照射装置12は駆動回路26を備える。駆動回路26は第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25に接続される。駆動回路26は第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25に駆動信号を供給する。駆動信号の供給に応じて第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25から被写体に向かって赤外線14a、14b、14cが照射される。駆動信号は赤外線光源23、24、25の点灯期間を規定する。駆動信号が供給されていない間、第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25は消灯する。駆動信号は交流電源から変換される直流電源に基づき生成されることができる。駆動回路26は第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25に個別に構成されてもよい。
【0025】
赤外線照射装置12は制御回路27を備える。制御回路27は駆動回路26に接続される。制御回路27は駆動回路26に制御信号を供給する。制御回路27は決められた順番で第1赤外線光源23の点灯時間、第2赤外線光源24の点灯時間および第3赤外線光源25の点灯時間を規定する。制御信号の働きで第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25の赤外線14a、14b、14cの放出は決められた順番で切り替えられる。
【0026】
赤外線照射装置12は同期信号発生回路28を備える。同期信号発生回路28は制御回路27に接続される。同期信号発生回路28にはコンセント19から交流電圧が供給される。同期信号発生回路28は交流電圧のゼロクロスポイントを検出する。ゼロクロスポイントの検出に応じて同期信号発生回路28は交流電圧の位相を特定する。同期信号発生回路28は交流電圧の位相に合わせて同一の周波数の同期信号を生成する。同期信号は制御回路27に供給される。制御回路27は同期信号に同期して第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25の点灯を切り替える。
【0027】
暗視撮像装置13は撮像素子31を備える。撮像素子31は決められた配列の画素群を備える。画素はR(赤色)画素32、G(緑色)画素33およびB(青色)画素34に分類されることができる。R画素32、G画素33およびB画素34は例えばベイヤー配列に従って配置されることができる。R画素32は光の三原色のうち赤色に感度を有する。G画素33は三原色のうち緑色に感度を有する。B画素34は三原色のうち青色に感度を有する。こうした3種類の画素32、33、34の形成にあたって個々の画素にはオンチップカラーフィルタが形成されることができる。個々の画素32、33、34は決められた帯域の光(電磁波)の強度に応じて電圧を出力する。いずれの画素32、33、34も赤外線(ここでは例えば近赤外線)に対して感度を有する。したがって、いずれの画素32、33、34も赤外線の受光に応じて電圧を出力する。こうして光の帯域ごとに強度分布が検出されることができる。こうした強度分布で画像信号が形成される。撮像素子31は例えばCCD(電荷結合素子)イメージセンサやCMOSイメージセンサといった固体撮像素子で構成されることができる。撮像素子は決められた周期で画像を生成する。
【0028】
暗視撮像装置13は画像メモリ36を有する。画像メモリ36は撮像素子31に接続される。画像メモリ36は一時的に画像データを記憶する。個々の画像データには撮像素子31で生成された画像が記述される。後述されるように、画像メモリ36には少なくとも3枚の画像の画像データが記憶されることができる。
【0029】
暗視撮像装置13は画像合成処理回路37を備える。画像合成処理回路37は画像メモリ36に接続される。画像合成処理回路37は画像メモリ36から画像データを取得する。画像合成処理回路37は時系列で連続する3枚の画像を合成する。個々の画像には決められた順番で表示色が関連づけられる。赤外線の強度分布は予め設定された規則に従って表示色の強度分布に置き換えられる。規則は例えば実測に基づき規定されることができる。規則は例えば画像合成処理回路37に内蔵のメモリに格納されることができる。ここでは、1周期で赤色、青色および緑色の順番が確立される。したがって、連続する3枚の画像が合成されると、1枚のカラー画像が生成されることができる。
【0030】
暗視撮像装置13はエンコーダ38を備える。エンコーダ38は画像合成処理回路37に接続される。エンコーダ38には画像合成処理回路37から画像信号が供給される。この画像信号でカラー画像が特定される。エンコーダ38は画像信号を表示機器用のコンポジット信号に変換する。エンコーダ38の出力信号は例えばディスプレイユニット15や記憶装置に供給されることができる。
【0031】
暗視撮像装置13は赤外線判別回路39を備える。赤外線判別回路39は撮像素子31に接続される。赤外線判別回路39にはR画素32の出力(以下「第1信号」という)とB画素34の出力(以下「第2信号」という)およびG画素33の出力が個別に供給される。赤外線判別回路39は第1信号および第2信号を相互に比較する。赤外線判別回路39は第1信号および第2信号の比率に応じて特定の波長の赤外線(ここでは第1波長の赤外線14a)を判別する。R画素32およびB画素34は、相互に隣り合う1個ずつの画素であってもよく、特定の局所に配置される同数の画素であってもよく、撮像素子31全体に配置される同数の画素であってもよい。
【0032】
暗視撮像装置13は制御回路41を備える。制御回路41は撮像素子31、画像メモリ36、画像合成処理回路37および赤外線判別回路39に接続される。制御回路41は撮像素子31に制御信号を供給する。制御回路41は決められた周期で撮像素子31に垂直同期信号を出力する。撮像素子31は垂直同期信号に同期して1画像を撮像する。画像メモリ36には撮像素子31の出力に同期して最新の3画像データが記憶される。画像メモリ36では撮像素子31から画像信号が出力されるたびに画像データは更新される。
【0033】
制御回路41は画像合成処理回路37に制御信号を供給する。この制御信号は特定の波長の赤外線の受光タイミングと同期する。ここでは、第1波長の赤外線14aの受光タイミングが特定される。この受光タイミングは赤外線判別回路39の出力に基づき決定されることができる。画像合成処理回路37では時系列に画像メモリ36に記憶される画像の中からどの画像が第1波長の赤外線14aに基づく画像なのかが特定されることができる。こうして第1波長の赤外線14aに基づく画像が特定されると、赤外線14a、14b、13cの照射の順番は予め決められることから、順番に第2波長の赤外線14bに基づく画像、および、第3波長の赤外線14cに基づく画像は特定されることができる。
【0034】
暗視撮像装置13は同期信号発生回路42を備える。同期信号発生回路42は制御回路41に接続される。同期信号発生回路42にはコンセント21から交流電圧が供給される。同期信号発生回路42は交流電圧のゼロクロスポイントを検出する。ゼロクロスポイントの検出に応じて同期信号発生回路42は交流電圧の位相を特定する。同期信号発生回路42は交流電圧の位相に合わせて同一の周波数の同期信号を生成する。同期信号は制御回路41に供給される。制御回路41は同期信号に同期して撮像素子31、画像メモリ36および画像合成処理回路37の動作を制御する。
【0035】
図2に示されるように、R画素32、G画素33およびB画素34は波長に応じて赤外線の感度に違いを有する。特に、感度の違いは赤外線の波長が短ければ短いほど増大する。例えば第1波長の赤外線14aに対してR画素32はG画素33およびB画素34に比べて高い感度を示すことができる。これに対して第2波長の赤外線14bおよび第3波長の赤外線14cではR画素32、G画素33およびB画素34はいずれもほぼ等しい感度を示す。したがって、第1信号(R画素32)と第2信号(B画素34)との相対感度比が例えば第1信号の感度/第2信号の感度≧2という様に予め定められた所定値を超えれば、その画像は第1波長の赤外線14aに基づくものと判別されることができる。第1信号と第2信号との相対感度比が「1」に近ければ、その画像は第2波長または第3波長の赤外線14b、14cに基づくものと判別されることができる。第2信号にはB画素34の出力に代えてG画素33の出力が利用されてもよい。
【0036】
次に暗視撮像システム11の動作を説明する。図3に示されるように、赤外線照射装置12は順番に第1赤外線光源(LED1)23、第2赤外線光源(LED2)24および第3赤外線光源(LED3)25の点灯を切り替える。第1波長の赤外線14a、第2波長の赤外線14bおよび第3波長の赤外線14cが順番に被写体に照射される。このとき、同期信号発生回路28は商用電源16の交流電圧に同期して同期信号を生成する。同期信号の立ち上がりに応じて第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25の順番で駆動回路26から駆動信号が供給される。第1赤外線光源23、第2赤外線光源24および第3赤外線光源25の点灯期間は商用電源16の1周期に合わせられる。個々の点灯期間ごとに被写体から暗視撮像装置13に向かって赤外線14a、14b、14cが反射する。反射した赤外線14a、14b、14cは撮像素子31上に図示しないレンズで結像される。
【0037】
暗視撮像装置13は赤外線14a、14b、14cを撮像する。R画素32、G画素33およびB画素34は個々に赤外線14a、14b、14cの強度に応じて電圧を出力する。個々の画素32、33、34の電圧の大きさで赤外線14a、14b、14cごとに強度分布が形成されることができる。このとき、同期信号発生回路42は商用電源16の交流電圧に同期して同期信号を生成する。同期信号の立ち上がりに応じて撮像素子31は画像を撮像する。撮像素子31の撮像期間は商用電源16の1周期に合わせられる。同期信号発生回路28、42は共通の交流電圧に基づき同期信号を生成することから、撮像素子31の撮像は赤外線14a、14b、14cの切り替えに同期する。いずれかの赤外線光源23、24、25の点灯期間と撮像素子31の撮像期間とは一致する。
【0038】
赤外線判別回路39は画像ごとに第1信号および第2信号を相互に比較する。同期信号に同期してR画素32の電圧値とB画素34の電圧値とが検出される。2つの電圧値の比が算出される。比が予め定めた所定の値よりも大きければ、赤外線判別回路39は第1波長の赤外線14aに基づく画像を特定する。こうして特定された画像に画像合成処理回路37は赤色の表示色を割り当てる。第1波長の赤外線14aの強度分布は赤色の強度分布に変換される。この画像の次の画像に画像合成処理回路37は青色の表示色を割り当てる。第2波長の赤外線14bの強度分布は青色の強度分布に変換される。さらに次の画像に画像合成処理回路37は緑色の表示色を割り当てる。第3波長の赤外線14cの強度分布は緑色の強度分布に変換される。赤色の強度分布、青色の強度分布および緑色の強度分布は重ね合わせられる。1枚のカラー画像が生成される。
【0039】
交流電源の1周期ごとに特定の赤外線波長の照射によりR、G、Bのいずれかに相当する画像が更新され、過去に他の波長の照射により撮像されたその他の2画像を合わせ1枚のカラー画像が生成される。カラー画像の画像信号はエンコーダ38で表示機器用のコンポジット信号に変換される。コンポジット信号はディスプレイユニット15に供給される。ディスプレイユニット15の画面には比較的に自然な色合いで被写体のカラー画像が出力される。
【0040】
本発明者の観察によれば、赤外線14a、14b、14cの波長に応じて第1信号および第2信号の相対感度比は変化する。したがって、赤外線判別回路39で第1信号および第2信号の相対感度比が予め定めた所定値を超えると、第1波長の赤外線14aの受光タイミングは判別されることができる。予め決められた順番で赤外線14a、14b、14cは受光されることから、第1波長の赤外線14aの受光タイミングが判別されれば、全ての赤外線14a、14b、14cの受光タイミングは決定されることができる。赤外線照射装置12および暗視撮像装置13の間で制御線が省略されても、確実に第1波長の赤外線14aの画像、第2波長の赤外線14bの画像および第3波長の赤外線14cの画像に赤色、青色および緑色は関連づけられることができる。
【0041】
赤外線照射装置12および暗視撮像装置13は動作にあたってコンセント19、21から電力の供給を受ける。コンセント19、21から供給される電力は暗視撮像装置13だけでなく赤外線照射装置12にも同位相の電力を供給することができる。その結果、赤外線14a、14b、14cの波長の切り替えと撮像素子31の撮像のタイミングとは同期することができる。同期にあたって赤外線照射装置12および暗視撮像装置13の間で制御線は省略されることができる。したがって、施工や配置の制約を受けずに赤外線照射装置12および暗視撮像装置13は遠隔に配置されることができる。暗視撮像システム11には簡単に2台目以降の赤外線照射装置12や暗視撮像装置13は追加されることができる。
【0042】
暗視撮像装置13では第1波長の赤外線14aに基づく画像信号には表示色として赤色が関連づけられる。第1波長よりも長い第2波長の赤外線14bに基づく画像信号には表示色として青色が関連づけられる。第2波長よりも長い第3波長の赤外線14cに基づく画像信号には表示色として緑色が関連づけられる。こうした関連づけによれば、他の組み合わせに比べて自然の色合いのカラー画像は生成されることができる。その他、例えば第1波長の赤外線14aに基づく画像信号に赤色が関連づけられ、第2波長の赤外線14bに基づく画像信号に青色が関連づけられ、第3波長の赤外線14cに基づく画像信号に緑色が関連づけられてもよい。
【0043】
赤外線の波長が短い程、R画素32の出力電圧とB画素34の出力電圧との相対感度比(=R画素の出力/B画素の出力)は大きい。その一方で、赤外線の波長が長くなるにつれて、R画素32、G画素33およびB画素34の出力電圧値はほぼ一致していく。すなわち、相対感度比は1に近づいていく。したがって、赤色と青色とが比較されれば、確実に第1波長の赤外線14aの受光タイミングは判別されることができる。青色に代えて赤色と緑色とが比較されても、確実に第1波長の赤外線14aの受光タイミングは判別されることができる。
【0044】
暗視撮像システム11では同期信号発生回路28、42として発振器が用いられてもよい。発振器には例えば水晶発振器が用いられることができる。水晶発振器には分周器が組み合わせられることができる。発振器は赤外線照射装置12および暗視撮像装置13ごとに局部同期信号を出力することができる。予め決められた周波数の発振器が赤外線照射装置12および暗視撮像装置13に組み込まれれば、赤外線14a、14b、14cの切り替えの時間間隔と撮像の時間間隔とは一致することができる。そして、R画素32の出力電圧とB画素34との感度の比が変化するタイミングが特定されれば、そのタイミングで第1波長の赤外線14aの照射開始タイミングまたは第2波長の赤外線14bの照射開始タイミングが導き出されることができる。こうして個々の波長の赤外線14a、14b、14cに基づく画像に赤色、青色および緑色の表示色は確実に関連づけられることができる。この場合には、赤外線判別回路39は切り替えおよび撮像の時間間隔よりも十分に短い時間間隔で第1信号および第2信号を相互に比較すればよい。
【0045】
こうした暗視撮像システム11は監視カメラシステムに利用されることができる。監視カメラシステムでは暗視撮像装置13は昼間は可視光を受光し、夜間は可視光および赤外光を受光し撮像を行うデイナイトカメラとしても機能することができる。こうしたデイナイトカメラの実現にあたって撮像素子31には例えば赤外線カットフィルタが組み合わせられることができる。赤外線カットフィルタは撮像時に撮像素子31に向かって赤外線の進入を阻止する。その結果、個々のR画素32は赤色光の強度に応じて電圧を出力し、個々のG画素33は緑色光の強度に応じて電圧を出力し、個々のB画素34は青色光の強度に応じて電圧を出力することができる。1度の撮像で1枚のカラー画像は生成されることができる。この場合には、暗視撮像の実現にあたって赤外線カットフィルタは取り除かれる。赤外線カットフィルタはレンズと撮像素子31との間の光路に進退自在に配置されればよい。こうした進退の実現にあたって赤外線カットフィルタには機械的な駆動機構が連結されることができる。
【符号の説明】
【0046】
11 暗視撮像システム、12 赤外線照射装置、13 暗視撮像装置、14a (第1波長の)赤外線、14b (第2波長の)赤外線、14c (第3波長の)赤外線、23 第1光源(第1赤外線光源)、24 第2光源(第2赤外線光源)、25 第3光源(第3赤外線光源)、26 駆動回路、27 制御回路、31 撮像素子、32 第1画素(R画素)、34 第2画素(B画素)、37 画像合成処理回路、39 判別回路(赤外線判別回路)、41 制御回路。
図1
図2
図3