(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多座配位子とアルミニウムとを含む錯体と、前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の前駆体とを含む溶液を用い、該溶液を前記多孔質担体に接触せしめた後に焼成することにより、工程(B)と工程(C)を同時に実施することを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、酸素貯蔵能を有する多孔質担体と、
該多孔質担体に担持されており且つ平均粒子径が1〜20nmであるアルミニウム化合物の微粒子と、
該多孔質担体に担持されている、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む活性金属化合物と、
を備えることを特徴とするものである。
【0020】
このような多孔質担体は、酸素貯蔵能を有する多孔質の担体である。このような多孔質担体としては、酸素貯蔵能を有する金属酸化物を含有する多孔質の担体であることが好ましい。なお、ここにいう「酸素貯蔵能」とは、いわゆる酸素貯蔵放出性能をいい、酸素原子を吸放出することができる性能をいう。また、「酸素貯蔵能を有する金属酸化物」とは、価数変化することによって酸素原子を吸放出することができる金属の酸化物をいう。
【0021】
このような酸素貯蔵能を有する金属酸化物としては、例えば、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)等の金属の酸化物が挙げられる。また、このような酸素貯蔵能を有する金属酸化物の中でも、より高い酸素貯蔵放出性能を発揮できることから、セリア、プラセオジウム及びサマリウムを用いることが好ましく、セリアを利用することが特に好ましい。また、前記酸素貯蔵能を有する金属酸化物は1種を単独で、また、複数種類を混合あるいは複合化して用いてもよい。
【0022】
また、前記多孔質担体としては、より高度な酸素貯蔵能が得られるとともに耐熱性が向上するという観点から、前記酸素貯蔵能を有する金属酸化物と他の金属酸化物とを複合化させた多孔質の担体が好ましい。このような他の金属酸化物としては、例えば、チタニア、ジルコニア、ランタナ、ネオジア、プラセオジア及びシリカなどの金属酸化物;並びにこれらの金属酸化物のうちの少なくとも2種以上の複合酸化物;等といった公知の多孔質の金属酸化物が挙げられる。
【0023】
また、このような酸素貯蔵能を有する多孔質担体としては、例えば、セリア−ジルコニア複合酸化物、シリカ−セリア−ジルコニア複合酸化物、シリカ−セリア複合酸化物、セリア−ジルコニア−ランタナ複合酸化物、セリア−ジルコニア−ネオジア複合酸化物、セリア−ジルコニア−プラセオジア複合酸化物が挙げられ、中でも、ジルコニアによるセリアの構造安定化に基づいて、より高度な酸素貯蔵能が得られるといった観点から、セリア−ジルコニア複合酸化物、シリカ−セリア−ジルコニア複合酸化物、セリア−ジルコニア−ランタナ複合酸化物を用いることが好ましく、セリア−ジルコニア複合酸化物、セリア−ジルコニア−ランタナ複合酸化物を用いることがより好ましい。
【0024】
また、このような多孔質担体が、前述のような他の金属酸化物を含む場合において、前記酸素貯蔵能を有する金属酸化物の含有量は、金属換算で30〜95mol%であることが好ましく、50〜90mol%であることがより好ましい。前記酸素貯蔵能を有する金属酸化物の含有量が前記下限未満では、排ガス浄化の際に酸素貯蔵能を十分に利用することができなくなり、活性金属化合物の微細化に対する効果(活性金属化合物を微細化する性能)が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると酸素貯蔵能及び耐熱性が低下する傾向にある。
【0025】
また、このような多孔質担体としては、より高度な排ガス浄化性能が得られることから、粉末状のものであることが好ましい。このように多孔質担体が粉末状のものである場合には、前記多孔質担体の平均粒子径は、1〜100μmであることが好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では、担体のシンタリングが促進されてしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、比表面積が小さくなり、十分な触媒活性が得られなくなる傾向にある。なお、このような平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、任意の100個の粒子の粒径分布をとることにより求めることができる。
【0026】
また、このような多孔質担体の比表面積は特に制限されないが、より高い触媒活性を得るという観点からは、30m
2/g以上(更に好ましくは50〜200m
2/g)であることがより好ましい。このような比表面積は、窒素吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0027】
さらに、このような多孔質担体の平均細孔直径としては、特に制限されないが、5〜30nm以下であることが好ましく、5〜20nmであることが特に好ましい。このような多孔質担体の平均細孔直径が前記下限未満では反応ガスの拡散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると比表面積が低下するので、十分な触媒活性が得られ難くなる傾向にある。このような多孔質担体の平均細孔直径は、窒素吸着等温線を測定し、BJH法により細孔径分布曲線を作成することにより求めることができる。
【0028】
また、このような多孔質担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、本発明にかかる多孔質担体として好適なセリア−ジルコニア複合酸化物を製造する場合には、特開2003−275580号公報に記載のような方法等を適宜利用することができる。
【0029】
また、本発明においては、前記多孔質担体にアルミニウム化合物の微粒子が担持されている。
【0030】
このようなアルミニウム化合物の微粒子は、平均粒子径が1〜20nmのものである。このような平均粒子径が前記下限未満では担体と反応し易くなり、他方、前記上限を超えると活性金属化合物や金属化合物との接触性が低下し、十分な触媒活性を得ることが困難となる。また、このようなアルミニウム化合物の微粒子としては、同様の観点から、1〜10nmであることがより好ましく、1〜5nmであることが更に好ましい。また、このようなアルミニウム化合物の微粒子としては、より高度な高温耐久性が得られることから、触媒を大気中、750℃で5時間焼成した後においても平均粒子径が1〜10nmであることが好ましく、1〜5nmであることが更に好ましい。
【0031】
なお、このようなアルミニウム化合物微粒子の平均粒子径は、任意の20個以上のアルミニウム化合物の微粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定し、平均化することにより求めることができる。
【0032】
また、ここにいう「アルミニウム化合物の微粒子」とは、担体上に担持されている粒子であって、上記平均粒子径の条件を満たし且つTEM‐EDX分析した場合にアルミニウムに由来するピークが確認される粒子をいう。また、このようなアルミニウム化合物の具体的な形態としては、酸化物(アルミナ)であってもメタル状のアルミニウムであってもよく、担体を構成する金属元素及び/又は他の金属担持粒子を形成する金属元素と界面において金属結合又は酸素を介して結合していることにより化合物となっているものであってもよい。例えば、後述する「平均粒子径が1〜20nmであるアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の微粒子」のような他の金属の化合物の微粒子と、界面において、酸素原子を介して結合等することにより複合化されていてもよい。なお、このようなTEM−EDX分析の方法としては、公知のTEM−EDX装置を用いてエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルを求め、得られたエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルから、アルミニウムに由来するピークを測定すればよい。また、ここにいう「ピーク」とは、前記スペクトルのベースラインからピークトップまでの高さの強度差が1cts以上のものをいう。また、前記TEM−EDX分析の測定装置としては、特に制限されず、公知のエネルギー分散型X線分光器(EDX分析装置:例えば、NCRAN社製の商品名「Vatage EDX System」等)を装備した公知の透過型電子顕微鏡(TEM:例えば、日立製作所社製の商品名「HF−2000」等)をTEM−EDX分析用の測定装置(TEM−EDX装置)として適宜用いることができる。
【0033】
また、このようなアルミニウム化合物としては、触媒にX線回折による測定(XRD測定)を行った場合に、アルミニウム化合物(アルミニウムのメタル、酸化物)に由来する回折線が確認されないことが好ましい。すなわち、アルミニウム化合物としては、非晶質の状態で担体に担持されているものであることが好ましい。なお、本願明細書においては、XRD測定において、化合物としての回折線が確認されないもの(回折線が確認されないような微粒子状態にあるものも含む。)を非晶質の状態にあるものと判断する。このように、アルミニウム化合物に由来する回折線が確認されず、アルミニウム化合物が非晶質として確認されるような場合には、担体上でアルミニウム化合物が活性金属化合物と相互作用し易くなり、より高度な触媒活性が得られる傾向にある。このようなXRD測定の方法としては公知の方法を適宜利用することができ、例えば、触媒0.1gに対してX線回折装置(例えば、RIGAKU社製の商品名「RINT−TTR II」を用いて、X線回折パターンを求める方法を採用してもよい。
【0034】
また、前記多孔質担体に担持されたアルミニウム化合物の微粒子としては、エネルギー分散型X線分析(EDX)法により前記触媒中の任意の20点以上の測定点において前記アルミニウム化合物の微粒子に由来するアルミニウムの含有量(質量比)を測定した場合に、該アルミニウムの含有量の変動係数([含有割合の標準偏差]/[含有割合の平均値])が0.2以下(より好ましくは0.15以下)であることが好ましい。このような変動係数が前記上限を超えると、アルミニウム化合物の均一性が低下して、活性金属化合物との相互作用が低下する傾向にある。また、前記多孔質担体に担持されたアルミニウム化合物の微粒子としては、より高度な高温耐久性が得られることから、触媒を大気中、750℃で5時間焼成した後においても前記変動係数が0.2以下(より好ましくは0.15以下)のものであることが好ましい。このようなアルミニウムの変動係数の測定方法としては、以下のような方法を採用することができる。すなわち、先ず、前述のようなTEM−EDX装置を用いて、前記酸化物複合体の表面上の任意の領域内において、20点以上の任意の10nm角の測定点のエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルを求める。次に、各測定点において、得られたエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルから、その測定点内に存在する金属元素の種類を求め、各金属元素に由来する蛍光X線スペクトルのピーク面積に基いて、各測定点内に存在する金属元素の含有割合を質量比として求める。そして、上記各測定点内の各金属元素の質量比の値(含有割合)に基いて、20点以上の任意の測定点におけるアルミニウムの含有割合の標準偏差及び含有割合の平均値を求め、下記式(1)
[変動係数]=[含有割合の標準偏差]/[含有割合の平均値] (1)
に基いて、アルミニウムの含有量の変動係数を求める。なお、「ピーク面積」とは、ベースラインとピークとの間の面積をいい、市販のソフト(例えば、OriginLab社製の商品名「Origin」等)を利用して求めることができる。また、このような変動係数が前記条件を満たす場合、任意の20点以上の測定点においてほぼ同程度の量のアルミニウム元素が存在することが分かり、それにより担体表面の全体においてアルミニウムが均一に分散して担持されていることが分かることから、かかる変動係数は均一性の指標として利用することができる。
【0035】
また、このようなアルミニウム化合物の担体への担持量としては、アルミニウム化合物中におけるアルミニウムの金属換算で、担体100gに対して0.01〜0.3molであることが好ましく、担体100gに対して0.03〜0.2molであることが好ましい。このようなアルミニウム化合物の担持量が前記下限未満ではNOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性金属化合物をカバーリングすることにより、その性能を低下させる傾向にある。
【0036】
また、本発明においては、前記多孔質担体に、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む活性金属化合物が担持されている。
【0037】
このような活性金属化合物を構成することが可能な活性金属の元素は、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo、Wであるが、NOxをより効率よく還元して浄化することが可能となることから、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cuがより好ましく、Pt、Pd、Rhが更に好ましく、Pt、Rhが特に好ましい。なお、このような活性金属の元素は1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて利用することができる。
【0038】
このような活性金属化合物は、空燃比がリーン雰囲気である場合に排ガス中の酸素を利用してNOを酸化してNOxとし、空燃比がリッチ雰囲気である場合にCOやHC等の還元性ガスと反応させてNOxをN
2に還元するための触媒成分(活性成分)として利用することができるものである。また、このような「活性金属化合物」は、XRD分析した場合に前記活性金属の元素に由来するピークが確認されることにより確認でき、その具体的な形態は、酸化物であってもメタル状であってもよく、担体を構成する金属元素や他の金属担持粒子を形成する金属元素等と界面において金属結合又は酸素を介して結合していることにより化合物となっているものであってもよい。なお、本発明においては、前記多孔質担体に前記アルミニウム化合物の微粒子とともに前記活性金属化合物が担持されており、かかるアルミニウム化合物の微粒子によって前記活性金属化合物のメタル化が促進されることから、排ガスを浄化する際において前記活性金属化合物によって十分に高度な触媒活性が得られる。
【0039】
さらに、このような活性金属化合物の担持量としては、担体100質量部に対して0.2〜3質量部であることが好ましく、担体100質量部に対して0.3〜2質量部であることがより好ましい。このような活性金属化合物の担持量が前記下限未満では十分に高度なNOx浄化性能を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると分散性が低下することに起因して排ガスの浄化効率が低下して触媒のコストメリットが低下する傾向にある。
【0040】
また、このような活性金属化合物は、平均粒子径が1〜30nmの担持粒子であることが好ましく、1〜10nmの担持粒子であることがより好ましく、1〜5nmの担持粒子であることが更に好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では担体成分と反応し易くなることで、表面露出割合が低下し、十分な触媒活性を発揮できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると十分に高度な触媒活性を発揮することができなくなる傾向にある。なお、このような担持粒子の平均粒子径は、上述のアルミニウム化合物の平均粒子径を求める方法と同様に、任意の20個以上の担持粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定し、平均化することにより求めることができる。
【0041】
なお、このような活性金属化合物は、その近傍又はそれに接触して存在するアルミニウム化合物の微粒子により相互作用を受けることにより、その電子状態を変化させることが可能となるため、担体上にアルミニウム化合物の微粒子とともに担持されることで、メタル化が促進されて、得られる触媒の活性をより向上させることができる。また、このような活性金属化合物は、酸素貯蔵性能を有する多孔質担体(例えばセリアを含む担体)との界面において、酸素を介した結合を形成し、粒成長が抑制されることとなるため、前記多孔質担体上に担持されることにより、活性が向上するとともに、より微細化した状態で分散して担持されることとなり、これにより触媒中の活性点がより分散した状態となって高度な触媒活性を達成することが可能となる。このように、前記活性金属化合物は前記酸素貯蔵能を有する多孔質担体上に担持されることにより、微細化と活性化が両立され、より高度な触媒活性を得ることが可能となる。
【0042】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、より高度なNOx浄化性能が得られることから、前記多孔質担体に、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の微粒子が更に担持されていることが好ましい。
【0043】
このような金属化合物に用いることが可能なアルカリ金属元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)等が挙げられる。また、このような金属化合物に用いることが可能なアルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられる。このような金属化合物中の元素としては、より高度な塩基性を有し、酸化物を形成させた際に十分に高いNOx吸蔵能を発揮できるという観点から、カリウム、ルビジウム、セシウム、バリウムが好ましく、バリウムがより好ましい。このような第一金属元素としては、1種を単独であるいは2種以上を混合して含有させてもよい。なお、アルカリ金属元素は高温域におけるNOx吸蔵能が高く、他方、アルカリ土類金属は低温域におけるNOx吸蔵能が高いことから、両者を併用して用いてもよい。
【0044】
このようなアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の微粒子としては、平均粒子径が1〜20nmのものであることが好ましく、平均粒子径が1〜10nmのものであることがより好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では担体成分と反応し易くなることで、表面露出割合が低下し、触媒活性が低下することとなり、他方、前記上限を超えると、NOx吸蔵サイト数が減少することや、被毒SOxの再生性が低下することとなる。なお、このような金属化合物の微粒子の平均粒子径は、任意の20個以上の金属化合物の微粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定し、平均化することにより求めることができる。
【0045】
また、ここにいう「金属化合物の微粒子」とは、TEM‐EDX分析した場合にアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちのいずれかの元素に由来するピークが確認される粒子をいう。なお、このようなTEM−EDX分析としてはアルミニウムに由来するピークの代わりに、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちのいずれかの元素に由来するピークを測定する以外は、前述のアルミニウム化合物の微粒子において採用するTEM−EDX分析の方法と同様の方法を採用することができる。
【0046】
また、このような金属化合物としては、触媒に対してX線回折による測定(XRD測定)を行った場合に、金属化合物(アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の酸化物、炭酸塩等)に由来する回折線が確認されないものを含有していることが好ましい。すなわち、前記金属化合物としては、触媒が大気中焼成して得られたものである場合や触媒を二酸化炭素及び酸素を含むガス中で使用した場合等に、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素がそれらのガスと反応して酸化物や炭酸塩となり得るが、XRD測定において回折線が確認されないような、非晶質(微粒子)として確認される状態で担体に担持されているものを含むことが好ましい。このように、金属化合物に由来する回折線が確認されず、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素を含む金属化合物が非晶質となっている場合には、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の金属化合物が微粒子の状態で存在し、より高度なNOx吸蔵性と高いSOx再生性を実現できることとなり、より高度な触媒活性が得られる傾向にある。なお、本発明においては、前記アルミニウム化合物とともに前記金属化合物の微粒子が担持されているため、その相互作用によって、前記金属化合物は微粒子の状態が維持され易く、触媒が大気中焼成して得られたものである場合や触媒を二酸化炭素及び酸素を含むガス中で使用した場合であっても、非晶質の状態で金属化合物の粒子が担持され、その状態を十分に維持できる傾向にある。
【0047】
また、前記金属化合物の具体的な形態としては、酸化物や炭酸塩等であってもよく、担体を構成する金属元素や他の金属担持粒子を形成する金属元素(例えばアルミニウムや活性金属の元素)等と界面において金属結合又は酸素を介して結合していることにより化合物となっているものであってもよい。
【0048】
また、前記多孔質担体に担持された金属化合物の微粒子としては、エネルギー分散型X線分析(EDX)法により前記触媒中の任意の20点以上の測定点において前記金属化合物の微粒子に由来するアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量(質量比)を測定した場合に、該アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量の変動係数([含有割合の標準偏差]/[含有割合の平均値])が0.4以下(より好ましくは0.3以下)であることが好ましい。このような変動係数が前記上限を超えると、金属化合物の微粒子の分散性及び粒子の均一性等が低下して、高いNOx吸蔵性能と高いSOx再生性能とを両立して実現することが困難となる傾向にある。なお、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量の変動係数は、アルミニウムの代わりにアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量の含有割合を求める以外は前述のアルミニウムの変動係数の測定方法と同様の方法を採用することができる。また、前記多孔質担体に担持された金属化合物の微粒子としては、より高度な高温耐久性が得られることから、触媒を大気中、750℃で5時間焼成した後においても前記変動係数が0.4以下(より好ましくは0.3以下)であることが好ましい。
【0049】
また、このような金属化合物の担体への担持量としては、金属化合物中のアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の金属換算で、担体100gに対して0.01〜0.3molであることが好ましく、担体100gに対して0.03〜0.2molであることが好ましい。このような金属化合物の担持量が前記下限未満ではNOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属化合物を覆ってしまうことにより(カバーリングすることにより)、触媒の活性が低下する傾向にある。
【0050】
また、本発明においては、前記金属化合物の微粒子は、その界面において、アルミニウム化合物の微粒子と複合化されていること(例えばアルミニウム化合物の微粒子中のアルミニウムと、金属化合物の微粒子中のアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちのいずれかの元素とが酸素原子を介して結合されているような状態等になっていること)が好ましい。すなわち、前記アルミニウム化合物及び前記金属化合物としては、それらの界面においてアルミニウムとアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちのいずれかの元素とが複合化された複合体を形成していることが好ましい。
【0051】
このようなアルミニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子としては、前記多孔質担体の表面上の10nm角の任意の複数(好ましくは20点以上)の測定点をTEM−EDX分析した際に、全測定点の70%以上(より好ましくは90%以上)において、アルミニウムの含有割合が3〜30質量%(より好ましくは3〜20質量%)であり且つアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の総量の含有割合が3〜30質量%(より好ましくは3〜20質量%)であるという条件を満たすことが好ましい。このような10nm角の測定点内のアルミニウムの含有割合が前記下限未満では、金属化合物の微細化や活性金属化合物の活性化が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性サイトである活性金属化合物や金属化合物の表面露出割合が低下する傾向にある。なお、このような各元素の含有比率は、変動係数の測定方法と同様にしてTEM−EDX分析することにより求めることができる。また、10nm角という非常に微細な領域にアルミニウムと、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちのいずれかの元素とが上記割合で共存している場合には、その領域において、アルニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子が、非常に微細な粒子の状態(その測定点のサイズから10nm以下の粒子径の微粒子が担体表面上において混合状態となっていることが推察される。)で複合化されて、各微粒子が高度に分散されているものと認められる。一方、このような含有比率の条件を満たす測定点の割合が全測定点の70%未満では、担体中においてアルミニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子が非常に微細な粒子の状態で複合化されて高度に分散されている状態となっている部位の存在比率が低いものと認められる。そのため、上述のような条件を満たす場合には、前記多孔質担体の表面上において十分に均一に、アルミニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子が非常に微細な状態で複合化されたナノ複合体が形成されているものとみなすことができる。
【0052】
また、本発明において、前記多孔質担体に前記金属化合物の微粒子を更に担持した場合に、より高度な触媒活性を達成することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、酸素吸蔵能を有する多孔質担体上に、アルミニウム化合物の微粒子とともに金属化合物の微粒子とを担持した場合、上述のようなナノ複合体が形成され得る。このようにアルミニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子が複合化された場合には、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちのいずれかの元素を含む金属酸化物の粒子は酸化物及び炭酸塩として粒成長が抑制されるため、かかる金属酸化物の粒子は、より高度に微細化されて分散された状態で担持される。また、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物は、塩基性の化合物であり、NOx吸蔵材として機能し得るものである。すなわち、このような金属化合物の微粒子は、排ガスの雰囲気が空燃比がリーン雰囲気にある場合には排ガス中に存在するNOx(活性化金属化合物により酸化されたNOxも含。)を吸蔵し、空燃比がリッチ雰囲気である場合に吸蔵したNOxを放出することができる。そのため、酸素吸蔵能を有する多孔質担体上に金属化合物の微粒子が担持され、アルミニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子のナノ複合体が形成されると、前述のようにアルミニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子がより均一に微細化された状態で分散して担持(担体の表面をアルミニウム化合物の微粒子と金属化合物の微粒子が覆うように十分に微細な粒子が均一に分散して存在するような状態で担持)されるためNOxの吸蔵サイトの密度がより向上し、前記複合体と活性金属化合物の担持粒子との間(界面)において、NOxの吸蔵サイトである金属化合物の微粒子から、酸化還元サイトである活性金属化合物の担持粒子に対して、より効率的に反応物質(NOx)の移動を行うことが可能となり、触媒の吸蔵速度及び還元速度をより向上させることが可能となる。また、上述のように、多孔質担体上に担持された活性化金属化合物の担持粒子はアルミニウム化合物の存在によって、より高活性なメタル状態をとることが容易となり、活性化金属化合物の担持粒子はアルミニウム化合物の相互作用により活性化金属化合物の担持粒子の活性(反応性)がより向上され、しかも、多孔質担体との界面において酸素を介した安定化効果により、粒生長がより抑制されることとなってより微細化された状態で分散担持されることから、この点においても触媒の還元速度を向上させることができる。このように、アルミニウム化合物の微粒子とともに前記金属化合物の微粒子を多孔質担体に担持した場合には、NOx吸蔵サイトと酸化還元サイトとの間の反応物質の移動が促進され、NOx吸蔵サイト(前記金属化合物の微粒子)の密度(分散性)が向上するとともに、酸化還元サイト(活性化金属化合物)の活性も向上して、触媒の吸蔵速度及び還元速度がより高度な水準のものとなり、触媒活性をより十分に向上させることが可能となるものと本発明者らは推察する。
【0053】
また、このような本発明の排ガス浄化用触媒としては、触媒の酸素貯蔵量が100μmol−O
2/g以上であることが好ましく、200〜400μmol−O
2/gであることがより好ましい。このような酸素貯蔵量が前記下限未満では十分なNOx浄化性能を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性金属化合物の活性化(メタル化)が困難となる傾向にある。
【0054】
このような酸素貯蔵量は、触媒反応に用いられる全自動流通式触媒評価装置を用いて、COとO
2を交互に注入する過渡雰囲気下でのCO
2生成量を測定することにより求めることができる。すなわち、このような酸素貯蔵能は、モノリス基材(直径:30mm、長さ:50mm、容積:35ml、セル密度:400cell/inch
2)に触媒を担持した試料(例えば触媒を160g担持した試料)を準備し、該試料に対して400℃の温度条件下において、25L/minの流量でCO(1容量%)/N
2(バランス)の組成の測定ガス(A)とO
2(1容量%)/N
2(バランス)の組成の測定ガス(B)とを、それぞれ80秒(ガス(A))/40秒(ガス(B))の間隔で切り替えながら交互に間欠的に供給し、定常状態において、ガス(A)を供給開始後80秒間、CO
2の生成量を測定し、かかるCO
2の生成量に基いて計算される触媒1Lあたりの酸素の吸蔵量に基づいて、触媒1gあたりの酸素貯蔵量を計算して求めることができる。
【0055】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の形態としては特に制限されず、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態にすることができる。このような形態の排ガス浄化用触媒を製造するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、触媒をペレット状に成型して排ガス浄化用触媒を得る方法や、触媒を含むスラリーを触媒基材にコートして排ガス浄化用触媒を得る方法、触媒基材に担体粉末をコートした後にその担体に活性化金属化合物及びアルミニウム化合物を担持することにより触媒基材に触媒をコートして排ガス浄化用触媒を得る方法等を採用してもよい。また、このような触媒基材としては特に制限されず、得られる排ガス浄化用触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、DPF基材、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。
【0056】
また、本発明の排ガス浄化用触媒を前記触媒基材に担持する形態とする場合においては、前記触媒基材に担持する排ガス浄化用触媒の総量が、前記触媒基材の容量1Lあたり150〜400g/Lであることが好ましく、100〜300g/Lであることがより好ましい。このような触媒の総量が前記下限未満では、十分な触媒活性を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒基材の細孔が閉塞して圧損が生じる傾向にある。
【0057】
また、前記排ガス浄化用触媒を触媒基材に担持する場合、基材容量1Lあたりの多孔質担体の担持量が、30〜300g/Lであることが好ましく、50〜200g/Lであることが好ましい。このような多孔質担体の担持量が前記下限未満ではアルミニウム化合物、金属化合物、活性金属化合物を高分散に担持できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると触媒基材の細孔が閉塞して圧損が生じる傾向にある。
【0058】
さらに、前記排ガス浄化用触媒を触媒基材に担持する場合、基材容量1Lあたりのアルミニウム化合物の担持量が、アルミニウムの金属換算で0.02〜0.5mol/Lであることが好ましく、0.05〜0.3mol/Lであることが好ましい。このようなアルミニウム化合物の担持量が前記下限未満ではNOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性金属化合物をカバーリングすることにより、その性能を低下させる傾向にある。
【0059】
また、前記排ガス浄化用触媒を触媒基材に担持する場合、基材容量1Lあたりの活性化金属化合物の担持量が、活性化金属元素の金属換算で0.3〜5g/Lであることが好ましく、0.5〜3g/Lであることが好ましい。このような活性化金属化合物の担持量が前記下限未満では十分に高度なNOx浄化性能を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると分散性が低下することに起因して排ガスの浄化効率が低下して触媒のコストメリットが低下する傾向にある。
【0060】
さらに、前記排ガス浄化用触媒を触媒基材に担持する場合において、触媒がアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちのいずれか1種を含む前記金属化合物を含む場合、基材容量1Lあたりの前記金属化合物の担持量は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の総量の金属換算で0.02〜0.5mol/Lであることが好ましく、0.05〜0.3mol/Lであることが好ましい。このような金属化合物の担持量が前記下限未満ではNOx吸着サイトの数が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると活性金属化合物をカバーリングすることにより、その性能を低下させる傾向にある。
【0061】
以上、本発明の排ガス浄化用触媒について説明したが、以下、上記本発明の排ガス浄化用触媒を製造することが可能な方法として好適に利用可能な本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。
【0062】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、上記本発明の排ガス浄化用触媒を製造するための排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
酸素貯蔵能を有する多孔質担体に、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を担持せしめた後に焼成することにより、前記多孔質担体に前記元素を含む活性金属化合物を担持する工程(A)と、
前記多孔質担体に、多座配位子とアルミニウムとを含む錯体を担持せしめた後に焼成することにより、前記多孔質担体に平均粒子径が1〜20nmのアルニウム化合物を担持する工程(B)と、
を含むことを特徴とする方法である。以下、このような工程(A)と工程(B)を分けて説明する。
【0063】
先ず、工程(A)を説明する。工程(A)は、酸素貯蔵能を有する多孔質担体に、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を担持せしめた後に焼成することにより、前記多孔質担体に前記元素を含む活性金属化合物を担持する工程である。
【0064】
このような本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法に用いる酸素貯蔵能を有する多孔質担体は、前述の本発明の排ガス浄化触媒中の多孔質担体として説明したものと同様のものである。なお、このような多孔質担体は予め前述の触媒基材に担持したものを用いてもよい。また、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素も、前述の本発明の排ガス浄化触媒中の活性金属化合物中の元素(活性金属の元素)として説明したものと同様のものである。
【0065】
工程(A)において、前記多孔質担体に前記活性金属の元素を担持する方法としては特に制限されず、例えば、前記活性金属化合物の前駆体を含有する溶液を接触させる方法を採用してもよい。このような前記活性金属化合物の前駆体としては、前記多孔質担体に前記活性金属の元素を担持することを可能とする化合物であればよく、特に制限されず、例えば、前記活性金属の元素の塩(硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩等)、前記活性金属の元素の錯体(ジニトロジアンミン錯体等)、前記活性金属の元素の水酸化物等を適宜使用することができる。
【0066】
また、前記活性金属化合物の前駆体を含有する溶液を調製する場合に用いる溶媒としては、特に制限されないが、前記活性金属の元素をイオン状に溶解させることが可能な溶媒であることが好ましく、例えば、水、エタノール等を好適に利用することができ、廃液処理や調製コストの観点から、水が好ましい。また、前記溶液における前記活性金属の元素の前駆体の濃度は、前記活性金属の金属換算で5g/L以下であることが好ましく、1〜3g/Lであることがより好ましい。前記濃度が前記上限を超えると、前記担体に均一に且つ微細な状態に分散させて前記活性金属の元素を担持することが困難となり、触媒活性が低下してしまう傾向にある。また、前記濃度が前記下限未満では、所定量の前記活性金属元素を担持するために複数回の作業が必要となり、作業性が低下する傾向にあるとともに、複数回の担持時に再溶出、析出が起こり、前記活性金属元素の分散性が低下する傾向にある。
【0067】
また、前記多孔質担体に前記溶液を接触させる方法としては、特に制限されず、前記溶液中に前記多孔質担体を浸して撹拌する方法、前記溶液を前記多孔質担体に含浸担持させる方法等の公知の方法を適宜採用できる。
【0068】
また、工程(A)において、多孔質担体に前記活性金属の元素を担持せしめた後の焼成の条件としては、250〜600℃(より好ましくは300〜550℃)の温度条件で2〜10時間(より好ましくは3〜5時間)焼成する条件を採用することが好ましい。このような焼成温度及び時間が前記下限未満では前記活性金属化合物の前駆体が十分に分解されず、得られる触媒において十分な性能が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行して、担持粒子の分散性が低下する傾向にある。このような工程(A)によれば、前記多孔質担体の表面上に微細な状態で前記活性金属のメタル又は酸化物状の粒子が十分に分散して担持することができ、前記多孔質担体に活性化金属化合物を担持することが可能となる。
【0069】
次に、工程(B)を説明する。工程(B)は、前記多孔質担体に、多座配位子とアルミニウムとを含む錯体を担持せしめた後に焼成することにより、前記多孔質担体に平均粒子径が1〜20nmのアルニウム化合物を担持する工程である。
【0070】
このような多孔質担体に担持されたアルミニウム化合物は前述の本発明の排ガス浄化触媒中のアルミニウム化合物として説明したものと同様のものである。
【0071】
工程(B)に用いる錯体中の多座配位子とは、2個以上の配位基で配位し得る配位子をいう。このよう多座配位子としては、クエン酸、シュウ酸の多価カルボン酸から少なくとも1つの水素が脱離した残基、グリコール、ピナコール等のジオール類から少なくとも1つの水素が脱離した残基、エチレンジアミン等のジアミン類から少なくとも1つの水素が脱離した残基、アセト酢酸エチル等の2つのカルボニル基を有するエステル類から少なくとも1つの水素が脱離した残基等が挙げられる。
【0072】
また、このような多座配位子としては、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、アコニット酸、グルタル酸、エチレンジアミン四酢酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、サリチル酸、メバロン酸、エチレンジアミン、アセト酢酸エチル、マロン酸エステル、グリコール及びピナコールのうちの少なくとも1種から少なくとも1つの水素が脱離した残基であることが好ましく、中でも、ヒドロキシ基を併せ持つカルボン酸であるという観点から、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸のうちの少なくとも1種から少なくとも1つの水素が脱離した残基であることがより好ましく、より微細化された状態でアルミニウムを担持できるという観点から、クエン酸から少なくとも1つの水素が脱離した残基が特に好ましい。なお、このような多座配位子は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。このように、多座配位子とアルミニウムとを含む錯体としては、例えば、アルミニウム−クエン酸錯体、アルミニウム−乳酸錯体、アルミニウム−リンゴ酸錯体、アルミニウム−酒石酸錯体、アルミニウム−グリコール酸錯体、アルミニウム−サリチル酸錯体等が挙げられる。
【0073】
工程(B)において、前記多孔質担体に前記錯体を担持する方法としては特に制限されず、例えば、前記錯体を含有する錯体含有液を接触させる方法を採用してもよい。このような錯体含有液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、エタノール等を適宜利用することができ、廃液処理、調製コストの観点から、水が好ましい。
【0074】
また、前記錯体含有液における前記錯体の濃度は、アルミニウムの金属換算で5mol/L以下であることが好ましく、0.3〜3mol/Lであることがより好ましい。前記濃度が前記上限を超えると、前記担体に均一に且つ微細な状態で分散させて錯体を担持することが困難となり、得られる触媒の触媒活性が低下してしまう傾向にある。また、前記濃度が前記下限未満では、所定量の錯体(アルミニウム)を担体に担持するために複数回の作業が必要となり、作業性が低下する傾向にあるとともに、複数回の担持時に再溶出、析出が起こり、前記活性金属元素の分散性が低下する傾向にある。
【0075】
また、前記多孔質担体に前記錯体含有液を接触させる方法としては、特に制限されず、前記錯体含有液中に前記多孔質担体を浸して撹拌する方法、前記錯体含有液を前記多孔質担体に含浸担持させる方法等の公知の方法を適宜採用できる。
【0076】
また、工程(B)において、多孔質担体に錯体を担持せしめた後の焼成の条件としては、300〜600℃(より好ましくは300〜550℃)の温度条件で2〜10時間(より好ましくは3〜5時間)焼成する条件を採用することが好ましい。このような焼成温度及び時間が前記下限未満では担持した錯体が十分に分解されず、得られる触媒において十分な性能が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行して粒成長してしまい、アルミニウム化合物の微粒子の分散性が低下する傾向にある。このような工程(B)によれば、前記多孔質担体の表面上に微細な状態でアルミニウムのメタル又は酸化物状の粒子が十分に分散して担持することができ、前記多孔質担体にアルミニウム化合物を担持することが可能となる。なお、本発明においては、前述のような多座配位子とアルミニウムとを含む錯体を用いて多孔質担体にアルミニウム化合物を担持するが、このような多座配位子とアルミニウムとを含む錯体を用いた場合には、錯体の核に存在するアルミニウムが、嵩高い前記多座配位子により離間した状態で担体上に離間して担持されるため、焼成した際にもアルミニウム元素が凝集することを十分に抑制しながら、十分に微細な状態でアルミニウム又はその酸化物の粒子を担持することが可能となり、これにより、アルミニウム化合物を十分に分散した状態で担持することが可能となる。そのため、多座配位子とアルミニウムとを含む錯体を用いて多孔質担体にアルミニウム化合物を担持する工程(B)により、平均粒子径が1〜20nmであるアルミニウム化合物の微粒子を多孔質担体に担持することが可能となる。このように、上記工程(A)及び(B)を含む本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、上記本発明の排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
【0077】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記多孔質担体に、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を担持せしめた後に焼成することにより、前記多孔質担体に平均粒子径が1〜20nmである該元素を含む金属化合物の微粒子を担持する工程(C)を更に含んでいてもよい。
【0078】
このような工程(C)において担持されるアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の微粒子は、前述の本発明の排ガス浄化触媒において金属化合物の微粒子として説明したものと同様のものである。
【0079】
また、工程(C)において、前記多孔質担体に前記元素を担持する方法としては特に制限されず、例えば、前記元素を含む金属化合物の前駆体を含有する溶液を接触させる方法を採用してもよい。このような金属化合物の前駆体としては、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を担持することを可能とする化合物であればよく、特に制限されず、例えば、前記金属の元素の塩(硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩等)、前記金属の元素の錯体(ジニトロジアンミン錯体等)、前記金属の元素の水酸化物等を適宜使用することができる。
【0080】
また、前記金属化合物の前駆体を含有する溶液を作製する場合に用いる溶媒としては、特に制限されないが、前記金属をイオン状に溶解させることが可能な溶媒であることが好ましく、例えば、水、エタノール等を好適に利用することができ、廃液処理、調製コストの観点から、水が好ましい。また、前記溶液における前記金属化合物の前駆体の濃度は、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の金属換算で5mol/L以下であることが好ましく、0.3〜3mol/Lであることがより好ましい。前記濃度が前記上限を超えると、前記担体に均一に且つ微細な状態に分散させてアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素を担持することが困難となり、NOx吸着性能が低下してしまう傾向にある。また、前記濃度が前記下限未満では、所定量のアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素を担持するために複数回の作業が必要となり、作業性が低下する傾向にあるとともに、複数回の担持時に再溶出、析出が起こり、前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の分散性が低下する傾向にある。
【0081】
また、前記多孔質担体に前記金属化合物の前駆体を含有する溶液を接触させる方法としては、特に制限されず、前記溶液中に前記多孔質担体を浸して撹拌する方法、前記溶液を前記多孔質担体に含浸担持させる方法等の公知の方法を適宜採用できる。また、工程(C)において、多孔質担体に前記元素を担持せしめた後の焼成の条件としては、300〜600℃(より好ましくは300〜550℃)の温度条件で2〜10時間(より好ましくは3〜5時間)焼成することが好ましい。このような焼成温度及び時間が前記下限未満では前記金属化合物の前駆体が分解せず、十分な性能が発揮されない原因となり、他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行し、分散性低下の原因となる傾向にある。
【0082】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法において、前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の微粒子を担持する場合には、工程(B)と工程(C)とを順次実施してもよく、あるいは、前記多座配位子とアルミニウムとを含む錯体と、前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の前駆体とを含む溶液を用い、該溶液を前記多孔質担体に接触せしめた後に焼成することにより、工程(B)と工程(C)を同時に実施してもよい。
【0083】
このように、工程(B)と工程(C)とを順次実施する場合、アルミニウム化合物の微粒子が十分に離間して存在する担体の表面上に、前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を担持することとなるため、アルミニウム化合物の存在により担体表面上において両者が微細な状態で複合化して存在することが可能となり、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を十分に均一に分散した状態で担持することが可能となる。そのため、工程(B)と工程(C)とを順次実施する場合においては、効率よくアルミニウム化合物の微粒子と前記金属化合物の微粒子との複合体(ナノ複合体)を担持することが可能である。
【0084】
また、前記錯体と前記金属化合物の前駆体とを含む溶液を用いて工程(B)と工程(C)を同時に実施する場合には、前記錯体と前記金属化合物の前駆体とを含む溶液を前記多孔質担体に接触せしめることにより、前記錯体と前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とを同時に多孔質担体に担持することが可能となり、その後に焼成することで、アルミニウム化合物の微粒子と前記金属化合物の微粒子とを同時に効率よく担持することが可能となる。また、このように前記錯体と前記金属化合物の前駆体とを含む溶液を用いる場合には、該溶液中において、錯体の核に存在するアルミニウムと前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素との間に多座配位子が存在した状態となるため、その溶液を多孔質担体に接触させた後においても多座配位子を介して離間してアルミニウムの元素とアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とが存在する状態となり、これを焼成することによって、アルミニウム化合物と前記金属化合物とを十分に微細な状態なものとできるとともに、これらの微粒子を相互により十分に均一に分散した状態で担持することが可能となり、より効率よくアルミニウム化合物の微粒子と前記金属化合物の微粒子との複合体(ナノ複合体)を担持することが可能となる。
【0085】
また、前記錯体と前記金属化合物の前駆体とを含む溶液に用いる溶媒や、担体に前記溶液を接触させる方法及び焼成の条件は、前記工程(B)や工程(C)において説明した溶媒や前記溶液又は錯体担持液を接触させる方法、及び、焼成の条件と同様のものとすることができる。また、前記錯体と前記金属化合物の前駆体とを含む溶液は、前述の工程(B)において説明した錯体担持液と、前述の工程(C)において説明した前記金属化合物の前駆体を含む溶液とを混合することにより調製してもよい。
【0086】
以上、本発明の排ガス浄化用触媒及びその製造方法について説明したが、以下、本発明の排ガス浄化方法について説明する。
【0087】
本発明の排ガス浄化方法は、排ガス浄化用触媒にNOxを含有する排ガスを接触させることにより、前記排ガス中のNOxを浄化する排ガス浄化方法であって、
前記排ガス浄化用触媒が上記本発明の排ガス浄化用触媒であることを特徴とする方法である。
【0088】
このような排ガス浄化方法は、上記本発明の排ガス浄化用触媒を用い、上記本発明の排ガス浄化用触媒に排ガスを接触させること以外は特に制限されるものではなく、例えば、内燃機関から排出される排ガスが流通する排ガス管内に上記本発明の排ガス浄化用触媒を配置して、上記本発明の排ガス浄化用触媒に排ガスを接触させて排ガスを浄化してもよい。このような排ガス浄化方法においては、上記本発明の排ガス浄化用触媒を用いているため、NOxを十分に効率よく浄化することができる。
【0089】
また、このような本発明の排ガス浄化方法においては、排ガス浄化用触媒に接触させる排ガス中に含まれる炭化水素の濃度を変動させることにより、触媒入口における炭化水素の濃度が酸素の濃度に対して当量比で0.02(1/50)倍未満となる排ガス(以下「炭化水素低濃度ガス」という。)を接触させる工程(I)と、触媒入口における炭化水素の濃度が酸素の濃度に対して当量比で1.2倍以上の排ガス(以下「炭化水素高濃度ガス」という。)を接触させる工程(II)とを交互に所定の周期で実施することが好ましい。このように炭化水素低濃度ガスを接触させる工程と、炭化水素高濃度ガスを接触させる工程とを交互に実施することにより、排ガス浄化用触媒において、炭化水素低濃度ガスを接触させる工程において吸蔵したNOxを、炭化水素高濃度ガスを接触させる工程において効率よく還元することが可能となり、NOxをより効率よく浄化することが可能となる。なお、炭化水素低濃度ガス及び炭化水素高濃度ガス中の酸素の濃度は、内燃機関(例えば自動車のエンジン)の通常の運転状態における排ガス中の酸素の濃度を基準とするものであり、その具体的な濃度は内燃機関の種類やその運転状況によっても異なるものであり、一概にはいえないが、例えば、0.5〜10容量%程度であってもよい。
【0090】
また、このような工程(I)と工程(II)とを交互に実施する周期は0.5〜5秒間(より好ましくは1〜2秒間)であることが好ましい。このような周期が前記下限未満では炭化水素高濃度ガスを形成することが困難となる(工程(I)と工程(II)とにおいて使用するガス中の酸素と炭化水素の比率が同比率の状態が維持されてしまう)と共に、炭化水素の非常に短い周期での連続的な添加により燃費が悪化する傾向にあり、他方、前記上限を超えると炭化水素により還元されるNOx吸蔵の許容量を越えてしまうか、或いは、NOxの吸蔵効率が低下することとなる傾向にある。また、工程(II)を実施する時間を、工程(I)を実施した時間の0.005〜0.2倍(より好ましくは0.01〜0.1倍)の時間とすることが好ましい。このような工程(II)を実施する時間が前記下限未満では炭化水素高濃度ガスが形成されず、NOxを効率的に浄化できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると燃費が悪化する傾向にある。また、工程(I)を実施する時間としては0.5〜5秒であることが好ましく、1〜2秒であることがより好ましい。このような工程(I)を実施する時間が前記下限未満では、炭化水素低濃度ガスを形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとNOx還元効率やNOx吸蔵効率が低下する傾向にある。
【0091】
このような工程(I)と工程(II)とを交互に実施する場合、触媒の温度が300℃以上(より好ましくは400〜600℃)となる条件下で各工程を実施することが好ましい。このような温度条件が前記下限未満では、上記工程(I)と工程(II)とを交互に実施するよう制御することにより得られる効果が必ずしも十分なものとはならない傾向にある。
【0092】
また、工程(I)と工程(II)とを交互に所定の周期で実施するよう制御する方法としては、かかる方法を実施することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出される排ガスが流通する排ガス管内に上記本発明の排ガス浄化用触媒を配置して、上記本発明の排ガス浄化用触媒に排ガスを接触させて排ガスを浄化する場合、該排ガス管に公知の炭化水素供給手段を接続し、該炭化水素供給手段を内燃機関の運転を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)に接続して、エンジンコントロールユニットを利用して、炭化水素供給手段から炭化水素を供給するタイミングや時間を制御することにより、工程(I)と工程(II)とを所定の周期で交互に実施するよう制御する方法を採用してもよい。このようなエンジンコントロールユニット(ECU)や炭化水素供給手段としても、自動車等において利用されている公知のものを適宜利用することができる。また、このような工程(I)と工程(II)とを所定の周期で交互に実施するように制御する方法としては、例えば、特開2011−190803号公報に記載のような制御方法を適宜利用してもよい。
【0093】
なお、上述の工程(I)及び(II)のように、H
2やCO等の還元剤と比較して還元効率の低い炭化水素を利用して排ガスの浄化を行う場合には、炭化水素の活性化を促進する必要があり、酸化還元サイトを形成する活性化金属化合物の高度な分散化とメタル化との両立が必要である。この点、本発明の排ガス浄化方法に利用する上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、近傍に存在するアルミニウム化合物の影響により、酸素過剰雰囲気における活性金属化合物への酸素供給性が低下することとなるため、活性化金属化合物のメタル化が促進されるとともに、多孔質担体との界面において、酸素を介した安定化を図ることが可能となるため、活性化金属化合物が十分に微細な状態で高度に分散された状態となる。また、工程(I)と工程(II)とを交互に所定の周期(前述のように比較的短時間の周期)で実施するよう制御した場合に、より十分にNOxを浄化するためには、酸化還元サイトとNOx吸蔵サイトとの間の物質移動を高速で進行させることが好ましい。そのため、用いる触媒においては、酸化還元サイトとNOx吸蔵サイトとがより一層微細化され且つ近接化されていることが好ましい。この点、上記本発明の排ガス浄化用触媒は、NOx吸蔵サイトとなり得るアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物の微粒子を更に備える場合、かかる金属化合物の微粒子がアルミニウム化合物の影響により粒成長が抑制されることから、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属化合物が十分に微細で且つ十分に分散された状態で担持され、担体上のNOx吸蔵サイトの密度が十分なものとなる。そのため、上記本発明の排ガス浄化用触媒が前記金属化合物の微粒子を更に備える場合においては、該金属化合物の微粒子(NOx吸蔵サイト)の密度が高く、NOx吸蔵サイトから活性化金属化合物(酸化還元サイト)への反応物質の移動が効率よく進行する。このように、本発明の排ガス浄化用触媒は、上述のような工程(I)と工程(II)とを交互に所定の周期で実施するよう制御を行う場合においても、十分に高度なNOx浄化性能を発揮することが可能であり、これにより、より効率よくNOxを浄化することが可能である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
(調製例1:セリア−ジルコニア複合酸化物担体を担持した基材(A)の調製)
六角セルコージェライトモノリス基材(直径:30mm、長さ:50mm、容積:35ml、セル密度:400cell/inch
2)に、セリア−ジルコニア複合酸化物(粉末状、平均粒子径20μm、比表面積80m
2/g、Ce:Zr(金属換算によるモル比)が80:20、共沈法により調製)を、基材に対するコート密度が触媒1Lあたり160g(160g/L)となるようにウォッシュコート法を用いてコートして、セリアージルコニア複合酸化物からなる担体が担持された基材(A)を得た。
【0096】
(調製例2:アルミナ担体を担持した基材(B)の調製)
六角セルコージェライトモノリス基材(直径:30mm、長さ:50mm、容積:35ml、セル密度:400cell/inch
2)に、アルミナ(粉末状、平均粒子径17μm、比表面積170m
2/g、Rhodia社製の商品名「MI307」)を、基材に対するコート密度が触媒1Lあたり160g(160g/L)となるようにウォッシュコート法を用いてコートして、アルミナからなる担体が担持された基材(B)を得た。
【0097】
(調製例3:アルミナ担体を担持した基材(C)の調製)
六角セルコージェライトモノリス基材(直径:30mm、長さ:50mm、容積:35ml、セル密度:400cell/inch
2)に、セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物(粉末状、平均粒子径20μm、比表面積120m
2/g、Ce:Zr:Al(金属換算によるモル比)が10:15:75、共沈法により調製)を、基材に対するコート密度が触媒1Lあたり160g(160g/L)となるようにウォッシュコート法を用いてコートして、セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる担体が担持された基材(C)を得た。
【0098】
(調製例4:アルミニウム−クエン酸錯体を含有する溶液(A)の調製)
クエン酸水溶液(クエン酸の濃度:3.3mol/L)320mlに対して、酢酸アルミニウム水和物(粉末状、和光純薬工業社製の商品名「酢酸アルミニウム」)90gを加え、80℃の温度条件下において5時間攪拌することにより、前記水溶液中においてクエン酸を配位子とするアルミニウム−クエン酸錯体(Alクエン酸錯体)を調製し、アルミニウム−クエン酸錯体を1.5mol/Lの濃度で含有する溶液(A)を調製した。
【0099】
(調製例5:錯体及び酢酸バリウムを混合した溶液(B)の調製)
調製例4で得られたアルミニウム−クエン酸錯体水溶液50mlに対して、酢酸バリウム水溶液(酢酸バリウムの濃度:2.2mol/L)32mlを加えて、室温(25℃)において10分間攪拌し、アルミニウム−クエン酸錯体と酢酸バリウムとを含有する溶液(B)を調製した。なお、溶液(B)は、アルミニウム−クエン酸錯体と酢酸バリウムとが、アルミニウムとバリウムのモル比([Ba]:[Al])が1:1となるような割合で含有されたものであった。
【0100】
(実施例1)
調製例1で採用した方法と同様の方法を採用して得られた基材(A)を用い、その基材(A)に担持されているセリア−ジルコニア複合酸化物担体に、ジニトロジアンミン白金水溶液を前記基材1Lあたりの白金担持量が2gとなるようにして含浸担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、前記セリア−ジルコニア複合酸化物担体に白金を担持した。
【0101】
次に、前記基材中の前記白金を担持した担体に対して、調製例5で得られた溶液(B)を、前記基材1Lあたりのアルミニウム及びバリウムの担持量がそれぞれ0.2molとなるようにして含浸担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより前記担体にバリウムとアルミニウムとを担持して、モノリス基材に担持された形態の排ガス浄化用触媒(アルミニウム化合物/バリウム化合物/白金化合物/セリア−ジルコニア複合酸化物(多孔質担体)を含む触媒)を得た。得られた排ガス浄化用触媒中の各成分の担持量等を表1に示す。
【0102】
(実施例2)
前記基材1Lあたりのアルミニウム及びバリウムの担持量をそれぞれ0.2molから0.1molに変更した以外は実施例1と同様にして、モノリス基材に担持された形態の排ガス浄化用触媒(アルミニウム化合物/バリウム化合物/白金化合物/セリア−ジルコニア複合酸化物(多孔質担体)を含む触媒)を得た。得られた排ガス浄化用触媒中の各成分の担持量等を表1に示す。
【0103】
(実施例3)
先ず、調製例1で採用した方法と同様の方法を採用して得られた基材(A)を用い、その基材(A)に担持されているセリア−ジルコニア複合酸化物担体に、ジニトロジアンミン白金水溶液を前記基材1Lあたりの白金担持量が2gとなるようにして含浸担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、前記セリア−ジルコニア複合酸化物担体に白金を担持した。
【0104】
次に、前記基材中の前記白金を担持した担体に対して、調製例4で得られた溶液(A)を前記基材1Lあたりのアルミニウムの担持量が0.2molとなるようにして含浸担持させた後、大気中、550℃の温度条件で5時間焼成することにより前記担体にアルミニウムを担持して、前記セリア−ジルコニア複合酸化物担体に白金及びアルミニウムを担持した。
【0105】
次いで、前記基材中の前記白金及びアルミニウムを担持した担体に対して、酢酸バリウム水溶液(酢酸バリウムの濃度:2.2mol/L)を前記基材1Lあたりのバリウムの担持量が0.2molとなるようにして含浸担持させた後、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、モノリス基材に担持された形態の排ガス浄化用触媒(アルミニウム化合物/バリウム化合物/白金化合物/セリア−ジルコニア複合酸化物(多孔質担体)を含む触媒)を得た。得られた排ガス浄化用触媒中の各成分の担持量等を表1に示す。
【0106】
(比較例1)
先ず、調製例1で採用した方法と同様の方法を採用して得られた基材(A)を用い、その基材(A)に担持されているセリア−ジルコニア複合酸化物担体に、ジニトロジアンミン白金水溶液を前記基材1Lあたりの白金担持量が2gとなるようにして含浸担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、前記セリア−ジルコニア複合酸化物担体に白金を担持した。
【0107】
次に、前記基材中の前記白金を担持した担体に対して、酢酸バリウム水溶液(酢酸バリウムの濃度:2.2mol/L)を前記基材1Lあたりのバリウムの担持量が0.2molとなるようにして含浸担持させた後、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、前記セリア−ジルコニア複合酸化物担体に白金及びバリウムを担持した比較のための排ガス浄化用触媒(バリウム化合物/白金化合物/セリア−ジルコニア複合酸化物(多孔質担体)を含む触媒)を得た。得られた排ガス浄化用触媒中の各成分の担持量等を表1に示す。
【0108】
(比較例2)
調製例2で得られた基材(B)を用い、その基材(B)に担持されているアルミナ担体に、ジニトロジアンミン白金水溶液を前記基材1Lあたりの白金担持量が2gとなるようにして含浸担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、前記アルミナ担体に白金を担持した。
【0109】
次に、前記基材中の前記白金を担持した担体に対して、調製例5で得られた溶液(B)を、前記基材1Lあたりのアルミニウム及びバリウムの担持量がそれぞれ0.2molとなるようにして含浸担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより前記担体にバリウムとアルミニウムとを担持して、モノリス基材に担持された形態の比較のための排ガス浄化用触媒(アルミニウム化合物/バリウム化合物/白金化合物/アルミナ(担体)を含む触媒)を得た。得られた排ガス浄化用触媒中の各成分の担持量等を表1に示す。
【0110】
(比較例3)
調製例2で得られた基材(C)を用い、その基材(C)に担持されているセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体に、ジニトロジアンミン白金水溶液を前記基材1Lあたりの白金担持量が2gとなるようにして含浸担持させた後、大気中、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、前記セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体に白金を担持した。
【0111】
次に、前記基材中の前記白金を担持した担体に対して、酢酸バリウム水溶液(酢酸バリウムの濃度:2.2mol/L)を前記基材1Lあたりのバリウムの担持量が0.2molとなるようにして含浸担持させた後、300℃の温度条件で3時間焼成することにより、前記セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物担体に白金及びバリウムを担持した比較のための排ガス浄化用触媒(バリウム化合物/白金化合物/セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物(多孔質担体)を含む触媒)を得た。得られた排ガス浄化用触媒中の各成分の担持量等を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
[実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた触媒の特性評価]
<耐久試験>
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた各排ガス浄化用触媒に対して空気を1L/minの流量で流通させ、750℃で5時間保持する熱耐久試験を行った。
【0114】
<酸素吸蔵量測定試験>
耐久試験後の各排ガス浄化用触媒(実施例1〜3及び比較例1〜3)をそれぞれ用い、測定装置として全自動流通式触媒評価装置(分析計:堀場製作所社製の商品名「MEXA−7100D」)を用いて、以下のようにして触媒の酸素吸蔵量を測定した。すなわち、先ず、各触媒に対して、400℃の温度条件下において、25L/minの流量でCO(1容量%)/N
2(バランス)の組成の測定ガス(A)とO
2(1容量%)/N
2(バランス)の組成の測定ガス(B)とを、それぞれ80秒(ガス(A))/40秒(ガス(B))の間隔で切り替えながら交互に間欠的に供給した後、定常状態において、ガス(A)を供給開始後80秒間の間に排出されたCO
2の量を測定し、かかるCO
2の量に基いて触媒中の酸素量を求め、触媒1gあたりに担持されている酸素の量及び触媒1Lあたりに担持されている酸素の量を計算して求めた。得られた結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
表2に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)はいずれも、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜3)よりも高度な酸素吸蔵量(OSC量)を有していることが確認された。特に、同じ担体を利用した比較例1で得られた排ガス浄化用触媒と比較しても本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)は高い酸素吸蔵量を示していたことから、アルミニウム化合物を担持することにより、より高度なOSC性能を発揮することが可能となることが分かった。また、このような結果から、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)はいずれも、OSC性能の熱耐久性が十分に高いことも分かった。
【0117】
<XRD測定>
耐久試験前及び耐久試験後の双方の各排ガス浄化用触媒(実施例1〜3及び比較例1〜3)からそれぞれ排ガス浄化用触媒の粉末を300mg掻きとって試料とし、X線回折法による測定を行って触媒中のアルミニウム化合物、バリウム化合物の結晶構造を測定した。このようなXRD測定においては、測定装置としてX線回折装置(RIGAKU社製の商品名「RINT−TTR II」)を用いた。耐久試験後の各排ガス浄化用触媒(実施例1〜3及び比較例1〜3)の測定結果(確認された結晶構造)を表3に示す。また、耐久試験前の実施例1及び比較例1で得られた排ガス浄化用触媒のX線回折パターン及び耐久試験後の実施例1及び比較例1で得られた排ガス浄化用触媒のX線回折パターンを
図1に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
表3に示す結果及び
図1に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、耐久試験後においても、白金(Pt)、バリウム化合物、不純物として混入した基材成分のコージェライトの結晶相のみが確認され、担体に担持されたアルミニウム化合物は非晶質の状態(回折線が確認されないような微粒子の状態)で存在していることが確認された。なお、
図1に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1)においては、耐久試験前のX線回折パターンにおいてはバリウムの炭酸塩の回折ピークが確認されておらず、耐久試験前においてはバリウム化合物が非晶質の状態(回折線が確認されないような微粒子の状態)で存在していることが分かるとともに、耐久試験後に確認された炭酸バリウムのピークから、耐久試験後においても、非晶質の状態(回折線が確認されないような微粒子の状態)を維持して担持されているバリウム化合物が存在していることが分かった。
【0120】
一方、比較のための排ガス浄化用触媒においてアルミナを担体に含むもの(比較例2〜3)においてはいずれも、アルミナがγ−Al
2O
3の結晶を形成していることが確認された。また、
図1に示す結果からも明らかなように、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1)においては、耐久試験前及び耐久試験後のいずれにおいてもバリウム化合物が炭酸バリウムの結晶を形成していることが確認された。更に、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜3)においてはいずれも、耐久試験前及び耐久試験後においてバリウム化合物が炭酸バリウムの結晶を形成していることが確認された。このような結果から、担体にアルミニウム化合物を担持した場合と、公知の一般的なセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物とでは、アルミニウム化合物の状態等(非晶質の状態か否か等)の点においても構造が相違することが分かった。
【0121】
<TEMによる測定>
耐久試験後の各排ガス浄化用触媒(実施例1〜3及び比較例1〜3)から、それぞれ粉末を100mgづつ掻きとって、各触媒の状態を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した。なお、かかる測定に際しては、測定装置として透過型電子顕微鏡(日立製作所製の商品名「HF−2000」)を用い、加速電圧を200kVとした。また、以下に示すアルミニウム化合物、バリウム化合物及びPtの平均粒子径は、それぞれ任意の(無作為で選択した)20個の粒子の粒子径をTEMにより測定して平均化することにより求めた値である。
【0122】
また、前記測定装置に付属するEDX検出器(NCRAN社製の商品名「Vatage EDX system」)を用いて、各触媒から発生する特性X線に基いて、各触媒中の任意の20点の測定点(10nm角の領域を測定点とした。)中の蛍光X線スペクトルを求め、得られたエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルに基づいて元素分析を行い、該スペクトルのピーク面積(OriginLab社製の商品名「Origin」を利用して求めた。)により各元素の含有比率も分析し、得られた各測定点でのデータに基づいて、各元素の含有割合(質量比)の標準偏差及び含有割合の平均値を求めた後、触媒中のアルミニウムの含有量の変動係数([含有割合の標準偏差]/[含有割合の平均値])及びバリウムの含有量の変動係数([含有割合の標準偏差]/[含有割合の平均値])をそれぞれ求めた。得られた結果を表4に示す。また、耐久試験後の実施例1で得られた排ガス浄化用触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を
図2に示す。なお、
図2には、TEM−EDX分析の際に利用した任意の20点の測定点(それぞれ001〜020の番号が付されている領域)を明示する。また、表5に、
図2中の測定点001〜020中の元素分析の結果を示す。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
このようなTEMによる測定により、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においてはいずれもアルミニウム化合物の粒子の平均粒子径が1nm以上10nm以下であることが確認され、非常に微細な粒子の状態でアルミニウム化合物が担持されていることが確認された。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においてはいずれもバリウム化合物の粒子の平均粒子径が1nm以上10nm以下であることが確認され、非常に微細な粒子の状態でバリウム化合物が担持されていることが確認された。一方、比較のための排ガス浄化用触媒においてはいずれもバリウム化合物の粒子の平均粒子径が、比較例1:40nm、比較例2:35nm、比較例3:40nmとなっていた。なお、比較例3において用いられているセリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物中のアルミナの平均粒子径はTEMにより確認したところ、50nmであった。このように、TEMによる測定により、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、担体に担持したアルミニウム化合物の粒子の平均粒子径が10nm以下と非常に微細なものとなっている点において、担体に単にアルミナを含む場合(比較例2及び3)と触媒の構成が相違していることが分かる。また、TEMによる測定により本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、アルミニウム化合物の粒子及びバリウム化合物の粒子のいずれにおいても10nmを超えるような粗大化した粒子は確認されず、また、TEM画像から本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、バリウム化合物の粒子に関して比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜3)と比較してサイズのばらつきが十分に小さなものとなっていることが分かった。このような結果から、TEM測定により多孔質担体に担持された粒子の状態を確認した場合においても、アルミニウム化合物の微粒子及びバリウム化合物の微粒子の均一性が十分に高いことが分かった。また、TEMによる測定により確認された各排ガス浄化用触媒におけるPtの担持粒子の平均粒子径はそれぞれ、1nm以上5nm以下(実施例1〜3及び比較例1)、20nm(比較例2)、10nm(比較例3)であることが分かった。
【0126】
また、表4及び表5に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においてはいずれも、アルミニウムの含有割合の変動係数がいずれも0.2以下であり且つバリウムの含有割合の変動係数がいずれも0.4以下であり、アルミニウム化合物とバリウム化合物が担体上に均一に分散されて担持されていることが分かった。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においてはいずれも、10nm角の20点の測定点の全てにおいてアルミニウムの含有割合が3〜20質量%の範囲内の値であり且つバリウムの含有割合が3〜20質量%の範囲内の値であった。このような結果から、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においてはいずれも、10nm以下の粒子径のアルミニウム化合物と10nm以下の粒子径のバリウム化合物が均一に分散して存在しており、担体の表面上をアルミニウム化合物の微粒子とバリウム化合物の微粒子が覆うように存在していることが分かる。このように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、10nm角といった微細な各測定領域においていずれもアルミニウム化合物の微粒子とバリウム化合物の微粒子が存在していることが確認されたから、担体の表面上においてはアルミニウム化合物とバリウム化合物のナノ微粒子同士が近接して分散して存在し、ナノ複合体を形成していることが分かる。一方、比較のための排ガス浄化用触媒(比較例1〜3)においてはいずれもバリウムの変動係数が高い値となっており、バリウム化合物の担持状態等にばらつきがあることが確認された。なお、アルミナからなる担体を含む比較例2で得られた触媒は、担体自体がアルミナであるため、アルミナの変動係数が十分に低い値となっている。また、セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる担体を用いた比較例3で得られた触媒においてはアルミニウムの変動係数が大きい。そのため、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においては、比較例3で得られた触媒(セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる担体を用いた場合)と比較して、平均粒子径がより微細なものとなっていることに起因して、アルミニウムがより均一に分散された状態で存在することが分かった。
【0127】
<排ガス浄化性能の試験>
耐久試験後の各排ガス浄化用触媒(実施例1〜3及び比較例1〜3)をそれぞれ用い、測定装置として全自動流通式触媒評価装置(分析計:堀場製作所社製の商品名「MEXA−7100D」)を用いて、以下のようにして触媒の酸素吸蔵量を測定した。すなわち、先ず、各触媒に対して、500℃の温度条件下において、C
3H
6を間欠的に添加しながら下記表6に示す評価用の排気モデルガスを45.0L/minの流量で15分間供給した後、排ガスの温度を500℃から150℃まで50℃毎にステップ的に温度を降温させた。なお、このように、C
3H
6を間欠的に添加するために別途LPG車(液化石油ガスを燃料とする内燃機関を有する自動車)で使用されている空燃比補償用のインジェクタを利用した。また、C
3H
6の添加は、下記表6に示す排気モデルガス中での添加時のC
3H
6の入ガス平均濃度が0.6容量%となるようにインジェクタの圧力を調整し、C
3H
6を添加したガスの一回の添加時間を50ミリ秒とし、添加周期を50m秒(添加期間)/2秒(未添加期間)とすることにより行った。なお、排ガスの温度の降温は、各温度において15分間保持してステップ的に行った。そして、各温度(500℃、450℃、400℃、350℃、300℃、250℃、200℃、150℃)において15分間排気モデルガスを供給した後(15分経過時)の触媒に接触した後のガス中のNOxの濃度を測定し、評価用の排気モデルガス中のNOの濃度との比較により、NOx浄化性能を評価した。得られた結果を
図3に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
図3に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)においてはいずれも300℃以上の温度条件において十分に高度な排ガス浄化性能を有することが確認され、熱耐久試験後においても十分に優れたNOx浄化性能を有することが分かった。
【0130】
以上のような結果から、先ず、同一の種類の多孔質担体を使用した実施例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒と比較例1で得られた排ガス浄化用触媒とを比較すると、多孔質担体に対してアルミニウム化合物の微粒子を担持した場合(実施例1〜3)に、同一の多孔質担体を利用しているにもかかわらず、触媒全体の酸素貯蔵性能がより高度なものとなり且つNOx浄化性能がより向上することが分かった。このように、実施例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒と比較例1で得られた排ガス浄化用触媒との対比から、活性化金属化合物(Pt)とともにアルミニウム化合物の微粒子を担持することで、NOx浄化性能がより向上することが確認された。また、実施例1〜3と比較例1とを対比すると、同一の多孔質担体を利用した場合においてもアルミニウム化合物の微粒子を担持した場合(実施例1〜3の場合)に、バリウム化合物がより微細な粒子の状態で担持され且つその均一性も高くなることも分かった。
【0131】
また、アルミナを多孔質担体とした排ガス浄化用触媒(比較例2)、セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物を多孔質担体とした排ガス浄化用触媒(比較例3)と対比した場合においても、多孔質担体に対してアルミニウム化合物の微粒子を担持した本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)は、酸素貯蔵性能がより高度なものとなっており且つNOx浄化性能もより向上することが確認された。また、実施例1〜3と比較例2〜3とを対比すると、アルミニウム化合物の微粒子を担体に担持した場合(実施例1〜3の場合)に、バリウム化合物がより微細な粒子の状態で担持され且つその均一性も高くなることも分かった。なお、セリア−ジルコニア複合酸化物からなる多孔質担体に対してアルミニウム化合物の微粒子を担持した本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜3)と、セリア−ジルコニア−アルミナ複合酸化物からなる多孔質担体を利用した排ガス浄化用触媒(比較例3)とを比較すると、触媒全体において利用している元素の種類は同一であることから、アルミニウム化合物がより微細な状態で担体の表面上に存在している場合に、より高度な触媒活性が得られることが分かった。