(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転中心軸(O)を有する略円柱形状の工具ボデー(20)と、該工具ボデー(20)に装着された切削インサート(30)と、を有し、前記工具ボデー(20)の外周面(23)には複数の溝(27)が形成され、該溝(27)内には複数のインサート座(28)が形成されており、前記切削インサート(30)は、前記インサート座(28)に着脱自在に配置されている、刃先交換式回転切削工具(10)において、
前記切削インサート(30)は、すくい面(31)と、該すくい面(31)と交差する逃げ面(33)と、を有し、前記すくい面(31)と前記逃げ面(33)の交差稜線部には、主切れ刃(34)と、該主切れ刃(34)に接続するコーナ切れ刃(37)と、該コーナ切れ刃(37)に接続する副切れ刃(35)と、が形成され、
前記主切れ刃(34)は、前記すくい面(31)に対向する方向から見て、外方に向かって湾曲する外方湾曲切れ刃部分(341)を複数有する波状に形成されており、
前記切削インサート(30)は、前記刃先交換式回転切削工具(10)が前記回転中心軸(O)周りを回転したときの、各々の前記切削インサート(30)の前記主切れ刃(34)が形成する回転軌跡にて、1つの前記溝(27)内で前記回転中心軸(O)に沿った方向に隣り合う前記切削インサート(30)が形成する回転軌跡の波の位相が一致するように配置され、且つ、少なくとも一部の前記切削インサート(30)は、前記主切れ刃(34)が形成する回転軌跡のうち、一部の切れ刃部分が形成する回転軌跡同士が前記回転中心軸(O)方向に重なり合うように配置され、
さらに、前記切削インサート(30)は、前記すくい面(31)の各辺に沿って前記主切れ刃(34)が形成され、前記複数の外方湾曲切れ刃部分(341)のうち、前記主切れ刃(34)の端部にあって前記副切れ刃(35)と接続する外方湾曲切れ刃部分(351)が、内刃(38)としても使用される、
ことを特徴とする刃先交換式回転切削工具(10)。
全ての前記溝(27)において、全ての隣接する前記切削インサート(30)は、前記端部の回転軌跡同士が前記回転中心軸(O)方向に重なり合うように配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の刃先交換式回転切削工具(10)。
前記工具ボデー(20)の周方向に隣接する前記溝(27)に配置される前記切削インサートの回転軌跡同士の関係において、当該回転軌跡の波の位相が工具回転軸(O)方向にずらされて前記切削インサート(30)が配置されており、全ての前記溝(27)の回転軌跡を重ね合わせたときに、前記溝(27)同士の回転軌跡の波の位相が一致しないように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の刃先交換式回転切削工具(10)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今、ラフィングカッタにおいては、三角形の切削インサートが使用されることがある。三角形の切削インサートは、ポジディブタイプの場合、従来の四角形の切削インサートと比較して使用可能なコーナ数が1つ多く、経済的だからである。しかしながら、三角形の切削インサートを使用したラフィングカッタを用いて工具軸方向の送りを伴う切削加工(ランピング加工など)を行う場合、特許文献1に開示されたような切削インサートの配列をすると次のような問題が生じる。三角形の切削インサートの場合、ランピング加工などで使用する内刃が主切れ刃の一部をなしている。「内刃」とは、通常の横送りにおいては機能することがなく、ランピング加工のように工具を工具軸方向にも送るときに使用される切れ刃のことである。一般的には、切削インサートが工具ボデーに装着された状態において、切削に関与している副切れ刃の、コーナ切れ刃が接続している側とは反対側に設けられている。
【0006】
したがって、ラフィングカッタの最先端に装着される切削インサートにおいては、一部の切れ刃部分だけが、「内刃」としても使用され、「主切れ刃」としても使用されることになる。そのため、特許文献1に記載の配列では、これらの双方に使用される切れ刃部分に非常に大きな負荷がかかってしまい、その部分から欠損しやすくなるおそれがある。この問題は、三角形の切削インサートに限らず、主切れ刃の一部を内刃として使用する切削インサート全てにおいて生じ得る。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、波状の切れ刃を有し且つ主切れ刃の一部の切れ刃部分が内刃としても使用される構成の切削インサートを装着しても、当該切れ刃部分の損傷を抑制することが可能な、ラフィングカッタの形態の刃先交換式切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転中心軸(O)を有する略円柱形状の工具ボデー(20)と、該工具ボデー(20)に装着された切削インサート(30)と、を有し、前記工具ボデー(20)の外周面(23)には複数の溝(27)が形成され、該溝(27)内には複数のインサート座(28)が形成されており、前記切削インサート(30)は、前記インサート座(
28)に着脱自在に配置されている、刃先交換式回転切削工具(10)において、前記切削インサート(30)は、すくい面(31)と、該すくい面(31)と交差する逃げ面(33)と、を有し、前記すくい面(31)と前記逃げ面(33)の交差稜線部には、主切れ刃(34)と、該主切れ刃(34)に接続するコーナ切れ刃(37)と、該コーナ切れ刃(37)に接続する副切れ刃(35)と、が形成され、前記主切れ刃(34)は、前記すくい面(31)に対向する方向から見て
、外方に向かって湾曲する外方湾曲切れ刃部分(341)を複数有する波状に形成されており、前記切削インサート(30)は、前記刃先交換式回転切削工具(10)が前記回転中心軸(O)周りを回転したときの、各々の前記切削インサート(30)の前記主切れ刃(34)が形成する回転軌跡にて、1つの前記溝(27)内で前記回転中心軸(O)に沿った方向に隣り合う前記切削インサート(30)が形成する回転軌跡の波の位相が一致するように配置され、且つ、少なくとも一部の前記切削インサート(30)は、前記主切れ刃(34)が形成する回転軌跡のうち、一部の切れ刃部分が形成する回転軌跡同士が前記回転中心軸(O)方向に重なり合うように配置され
、さらに、前記切削インサート(30)は、前記すくい面(31)の各辺に沿って前記主切れ刃(34)が形成され、前記複数の外方湾曲切れ刃部分(341)のうち、前記主切れ刃(34)の端部にあって前記副切れ刃(35)と接続する外方湾曲切れ刃部分(351)が、内刃(38)としても使用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、波状の主切れ刃を有する切削インサート(30)を使用する刃先交換式回転切削工具(10)において、隣り合う切削インサート(30)が有する主切れ刃の上記一部の切れ刃部分は同じ回転軌跡を形成するので、一刃あたりの切削負荷が軽減される。したがって、主切れ刃のその一部の切れ刃部分が内刃としても使用されるものであっても、当該切れ刃部分の欠損を大きく抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「前」、「後」のような用語を用いることがあるが、これらは理解を容易にするように用いられるに過ぎず、空間における絶対的な位置関係や本発明を限定することを意図しない。
【0012】
本実施形態の刃先交換式回転切削工具10は、
図1及び
図2に示されているように、複数のインサート座28を有する略円筒形状の工具ボデー20と、それらインサート座28に装着された複数の切削インサート30と、から基本的に構成されている。本実施形態の刃先交換式回転切削工具10のことを、ラフィングカッタと呼称する場合もある。
【0013】
工具ボデー20には、
図3から
図5に示されているように、略円形形状を有する第1端面21と、第1端面21に対向して配置され且つ第1端面21と同様の略円形形状を有する第2端面22と、それら端面21,22間を接続する外周面23と、から構成された円筒形状を有している。工具ボデー20は、第1端面21の中心点と第2端面22の中心点とを通る回転中心軸Oを有する。この回転中心軸Oを基準として、刃先交換式回転切削工具10は回転する。第1端面21は工具ボデー20の基端側に配置されている端面であり、基端面とも称される。ここにおいて、工具ボデー20の基端側とは、工作機械に装着される側のことを指す。第2端面22は工具ボデー20の先端側に配置されている端面であり、先端面とも称される。ここにおいて、工具ボデー20の先端側とは、被加工物に近接する側のことを指す。
【0014】
工具ボデー20には、第1端面21から第2端面22まで回転中心軸Oに沿って形成された貫通孔24と、クーラントが流れる複数のクーラント供給孔25と、が設けられている。貫通孔24には、工具ボデー20を工作機械用のアーバに固定するときに使用される取付ボルトが挿入される。第1端面21には、貫通孔24の開口部と、クーラント供給孔25の開口部と、工作機械の主軸から動力を伝達するためのキー溝26と、が形成されている。また、第2端面22には、貫通孔24の開口部と、インサート座28を設けたことによる切欠きが形成されている。
【0015】
工具ボデー20の外周面23には、第1端面21と第2端面22との間において、複数の溝27が螺旋状に形成されている。溝27は、基端側から先端側に向かって、工具ボデー20の先端面視にて反時計回りにねじれるように形成されている。溝27は、工具ボデー20の第1端面21の近傍から始まって、第2端面22にまで達している。本実施形態において、溝27の数は4本であるが、これに限定されることはなく、1本以上設けられていればよい。溝27の工具回転方向前方を向く領域には、複数のインサート座28が形成されている。本実施形態において、インサート座28は、1本の溝27につき5つ設けられているが、これに限定されることなく、2つ以上設けられていればよい。一方、溝27の工具回転方向の反対方向を向く領域には、クーラントを噴出するための複数のクーラント噴出口29が設けられている。クーラント噴出口29はクーラント供給孔25に連通している。クーラント噴出口29及びクーラント供給孔25の数や配置箇所等は、求められる冷却性能等に鑑みて適宜変更することが可能である。
【0016】
ここで、工具ボデー20の側面視において、同一の溝27において最も工具先端側に位置しているインサート座28を1段目、次のインサート座28を2段目、その次のインサート座28を3段目、その次のインサート座28を4段目、最も基端側のインサート座28を5段目(最上段)と定義する。
【0017】
図3に示されているように、インサート座28は、切削インサート30の下面(着座面)32と当接する底面281と、切削インサート30の外周面(拘束面)33と当接する2つの側面282から基本的に構成されている。インサート座の底面281は、取り付ける切削インサート30の着座面32とおおよそ同様の形状を有している。本実施形態の場合、その形状は略三角形であるが、これに限定されることはない。また、底面281の略中央部には、切削インサート30をインサート座28に例えばねじ止めにより固定するための固定穴283が設けられている。すなわち、
図3に示されている固定穴283は、簡略化して表現されているが、実際の固定穴283の内面にはめねじが形成される。インサート座28の底面281や側面282の形状又はそれらの位置関係に関しては、装着する切削インサートの形状等との関係において適宜変更することが可能である。
【0018】
本実施形態において使用されている切削インサート30は、
図6及び7に示されているように、基本的な外郭形状が略正三角形形状の上面31と、上面31に対向して配置され且つ略三角形形状の下面32と、上面31と下面32とを接続する外周面33と、から基本的に構成されている。より詳細には、三角形の頂点付近が、一方の辺に略直交する線分によって切り落とされたような形状となっているので、上面31は、長辺部分と短辺部分とが交互に交差することによって形成された、120゜回転対称の六角形形状を有しているとも言える。上面31と外周面33とのなす角度は鋭角であり、下面32と外周面33とのなす角度は鈍角となっている。したがって、この切削インサート30は、いわゆる、ポジティブタイプである。上面31はすくい面として機能し、外周面33は逃げ面又は拘束面として機能し、下面32は着座面として機能する。また、上面31及び下面32の略中央を貫通するように、取付孔36が設けられている。
【0019】
そして、上面31と外周面33との交差稜線の一部には切れ刃が形成されている。具体的には、長辺部分には主切れ刃34が形成され、短辺部分には副切れ刃35が形成され、長辺部分と短辺部分とが略直角に交差するコーナ部にはコーナ切れ刃37が形成されている。したがって、本実施形態の切削インサート30は、主切れ刃34と副切れ刃35とコーナ切れ刃37からなる組を3つ有するので、120゜回転させてインサート座28に取り付けなおし、切れ刃の組を順々に使用することによって、1つの切削インサート30で3回切削加工を行うことができる。
【0020】
しかしながら、本発明の刃先交換式回転切削工具10に使用する切削インサート30の形状及び構成はこれに限定されることはなく、必要に応じて適宜変更することが可能である。例えば、上面31及び下面32が外周面33に対して90°に交差するネガティブタイプの切削インサートであってもよい。この場合、上下両面を合同の形状とし、下面32にも切れ刃が形成されるのであれば、上下両面を反転して使用することで合計6回の切削加工を行うことが可能となる。また、基本的な外郭形状が四角形や五角形といった他の多角形であってもよい。
【0021】
主切れ刃34は、切削インサート30の上面視(
図7)において、波状に形成されている。ここにおける「波状」とは、切削インサート30の上面視において、切削インサート30の外方に向かって円弧状に湾曲する外方湾曲切れ刃部分341と、切削インサート30の内方に向かって円弧状に湾曲する内方湾曲切れ刃部分342と、が交互に接続した形状のことを言う。しかしながら、必ずしも波の全ての部分が円弧状湾曲部から構成されている必要は無く、例えば、一部が直線状に形成された形状であっても構わない。本実施形態においては、主切れ刃34はその全長にわたって波状に形成されており、正弦波状をなしている。この波状の主切れ刃34に隣接している外周面33の部分も、主切れ刃34にならって波状に形成されている。このような波状切れ刃においては、基本的には、山の部分(外方湾曲切れ刃部分341)だけが切削に関与するため、切りくずが細かく分断される。また、切れ刃の一部分のみが切削に関与するため、切削抵抗を低減させることができる。このため、ラフィングカッタのような、切り込みが大きいために切りくず排出量が多く且つ切削抵抗が高い工具に好適である。
【0022】
前述したように、本実施形態の切削インサート30においては、三角形の各辺に沿った主切れ刃34とコーナ切れ刃37と副切れ刃35とがこの順番で接続して1つの組をなしている。したがって、ある組における副切れ刃35は、隣の組における別の主切れ刃34と接続している。ある組における副切れ刃35と隣の組における別の主切れ刃34との接続部A1及びその周辺付近は、内刃38としても機能する。「内刃」とは、通常の横送り(工具軸に直交する平面内での送り)においては機能することがなく、ランピング加工のように工具を工具軸方向にも送るときに使用される切れ刃のことである。一般的には、
図1に示すように切削インサート30が工具ボデーに装着された状態において、最先端側に取り付けられている切削インサートに設けられて切削に関与している副切れ刃35の、コーナ切れ刃37が接続している側とは反対側に設けられている部分が内刃38となる。
【0023】
本実施形態において、内刃38となり得るのは、
図7に示されているように、ある組の副切れ刃35と隣の組の主切れ刃34との接続点A1から、当該主切れ刃34方向に一定の長さ伸長した切れ刃部分である。すなわち、主切れ刃34の外方湾曲切れ刃部分341のうち、最も端部(接続点A1)側に位置している外方湾曲切れ刃部分351付近が内刃としても機能する部分である。また、最も端部にある外方湾曲切れ刃部分351は、上面視において最も外方に突出した位置が副切れ刃35との接続点A1となる形状、すなわち山が最も高くなった地点(山の半分の地点)で終了する形状を有している。
【0024】
また、本実施形態の切削インサート30においては、全ての切れ刃34,35,37にわたってランド39が形成されているのであるが、その幅及び角度は一定ではない。主切れ刃34の中央点Cから主切れ刃34の両端部(すなわち、隣接する組の副切れ刃35との接続点A1及び同じ組のコーナ切れ刃37との接続点A2)の手前にかけては、ランド幅及びランド角は一定である。具体的には、ランド幅は0.15mm、ランド角は5°となっている。一方、主切れ刃34において、各々の接続点A1,A2から僅かに中央点C側に寄った地点から、ランド幅及びランド角が変化する。すなわち、その領域において、中央点C側から接続点A1,A2に向かってランド幅は広くなり、ランド角は小さくなるように変化している。そして、接続点A1,A2においてランド幅は最も広くなり、ランド角は最も小さくなっている。具体的には、接続点A1,A2において、ランド幅は0.2mm、ランド角は0°となっている。コーナ切れ刃37及び副切れ刃35のランド39は、その全長にわたって、主切れ刃34との接続部A1,A2におけるランド幅及びランド角と同一である。したがって、副切れ刃35及び
コーナ切れ刃37のランド幅は0.2mm、ランド角は0°となっている。
【0025】
このような切削インサート30は、固定ねじ40によって工具ボデー20のインサート座28に装着される。その際、切削インサート30の下面32とインサート座28の底面281とが当接する。また、切削インサート30の外周面33とインサート座28の側面282とが当接する。このとき、切削インサート30は、
図2に示されているように、主切れ刃34が工具ボデー20の外周面23側において外周面23と平行な位置関係で配置され、副切れ刃35が工具ボデー20の先端面側において先端面と平行な位置関係で配置されるように装着される。切削インサート30は、固定ねじ40のほか、くさびや押さえ駒などによって固定されるものとすることもできる。しかし取付孔36を、その両端部が中央部よりも直径が拡大されたものとなし、固定ねじ40の頭部を取付孔の直径拡大部により形成される段差部分に当接させて工具ボデー20に固定されるようにすると、溝27内に突出する突起物をなくすことができる。したがって、切りくずの排出性が高められる。
【0026】
切削インサート30の切れ刃34,35,37は、超硬合金、サーメット、セラミック、これらにコーティングを施した材料又はダイヤモンドあるいは立方晶窒化硼素を含有する超高圧焼結体、立方晶窒化硼素を含有する超高圧焼結体にコーティングを施した材料といった硬質材料から作製されることができる。切削インサート30の切れ刃34,35,37以外の部分も、同様の硬質材料から作製されることが好ましい。
【0027】
本実施形態では、1本の溝27につき切削インサート30が5つ装着される。このとき、最も工具先端側に配置されている1段目の切削インサート30は、主切れ刃34が被加工物の側面の切削加工に関与し、副切れ刃35が被加工物の底面の切削加工に関与し、コーナ切れ刃37が被加工物の隅部の切削加工に関与する。これに対し、2段目から5段目の切削インサート30においては、主切れ刃34は被加工物の側面の切削に関与するけれども、副切れ刃35及びコーナ切れ刃37は切削に関与することがない。すなわち、2段目から5段目の切削インサート30の副切れ刃35及びコーナ切れ刃37は、他の溝において対応する切削インサート30の主切れ刃34の回転軌跡よりも突出しないように配置される。
【0028】
また、各切削インサート30は、工具ボデー20の側面視において、1つの溝27内で回転中心軸O方向に重畳的に配置されている。より詳細には、1つの溝内で隣り合う切削インサート30の主切れ刃34同士が、回転中心軸O方向の切削部位が重なり合っている。
図2に示されているように、インサート座28が螺旋状の溝27内において階段状に形成されているために、重畳的な切削インサート30の配置が可能となっている。
【0029】
このように、切削インサート30は1つの溝27内で回転中心軸O方向に一部重畳するように配置されているのであるが、具体的には次のような特徴的な構成を有している。
【0030】
図8は、工具回転方向のある角度位置に、最先端側に位置する切削インサートから最基端位置に位置する切削インサートまでの5つの切削インサートの回転軌跡301〜305を投影した状態を示す。
図8に示されているように、本実施形態の刃先交換式回転切削工具10が回転中心軸O周りを回転したときの、各々の切削インサート30の主切れ刃34が形成する回転軌跡を正面から見たとき、隣り合う切削インサート30が形成する回転軌跡301〜305の波の位相が一致するように、切削インサート30は回転中心軸O方向に重なり合って配置されている。すなわち、切削インサート30の主切れ刃34によって形成された回転軌跡の波が、隣接する切削インサート30間で連続するように配置されている。
【0031】
本実施形態においては、
図8の部分IXを拡大した
図9に示すように、各々の溝27にて、主切れ刃34が形成する回転軌跡(
図9では、2段目及び3段目の切削インサートがそれぞれ形成する回転軌跡302及び303)のうち、主切れ刃34の最も端部側に位置している外方湾曲切れ刃部分341が形成する回転軌跡同士のみが回転中心軸O方向に重なり合うように、切削インサート30が配置されている。これは、より正確に言えば、相対的に先端側に位置する切削インサートの、外方湾曲切れ刃部分351の回転軌跡と、相対的に基端側に位置する切削インサートの、コーナ切れ刃に接続する外方湾曲切れ刃部分341の回転軌跡との関係である。またこれは、本実施形態では、全ての溝27において、全ての隣接する切削インサート30同士の関係について同様である。
【0032】
さらに、工具周方向に隣接する溝27同士の関係においては、切削工具10の回転軌跡の波の位相が工具回転軸O方向にずらされて切削インサート30が配置されており、全ての溝27の回転軌跡を重ね合わせたときに、溝27同士の回転軌跡の波の位相が一致しないように構成されている。すなわち、
図8の部分Xを拡大した
図10に示すように、周方向に隣り合う溝27の最先端側に位置する1段目の切削インサート間の関係においては、実線で示す回転軌跡301に対し、周方向に隣接する切削インサートの破線で示す回転軌跡の波の位相がずらされているということである。
【0033】
次に、本実施形態の刃先交換式回転切削工具10の作用及び効果について説明する。
【0034】
本実施形態の刃先交換式回転切削工具10のように、切削インサート30が平面視にて波状に形成された主切れ刃34を有しており、切削インサート30は、刃先交換式回転切削工具10が回転中心軸O周りを回転したときの、各々の切削インサート30の主切れ刃34が形成する回転軌跡にて、1つの溝27内で回転中心軸Oに沿った方向に隣り合う切削インサート30が形成する回転軌跡の波の位相が一致するように配置され、且つ、少なくとも一部の切削インサート30は、主切れ刃34が形成する回転軌跡のうち、一部の切れ刃部分が形成する回転軌跡同士が回転中心軸方向Oに重なり合うように配置されている構成によって、次の効果を得ることができる。
【0035】
隣り合う切削インサート30の波状回転軌跡の位相が一致し、且つ一部の切れ刃部分が形成する回転軌跡同士が重なり合っているということは、本実施形態では、少なくとも、主切れ刃34の最も端部(接続点A1)側に位置している外方湾曲切れ刃部分341同士が周方向に重畳していることを意味する。本実施形態の切削インサート30においては、主切れ刃34の外方湾曲切れ刃部分351は、内刃38としても機能し得る。そのため、工具先端側に配置された切削インサート30では、その外方湾曲切れ刃部分351のみが、被加工物の側面及び底面に対する2回の切削加工に使用されることになる。すなわち、外方湾曲切れ刃部分351は、主切れ刃34として使用され、内刃38としても使用されるのである。
【0036】
したがって、その外方湾曲切れ刃部分351には過大な負荷がかかり損傷しやすくなるのであるが、本実施形態のような構成を採用することによって、これを抑制することができる。なぜなら、外方湾曲切れ刃部分351に相当する回転方向の領域では、他の切れ刃部分と比較して刃数が倍になっているからである。すなわち、外方湾曲切れ刃部分351の付近は、隣接する切削インサートの端部の外方湾曲切れ刃部分341の付近と重なり合っており、且つ工具ボデー20には4本の溝が設けられているので、主切れ刃34のうち、他の切れ刃部分に相当する回転方向の領域では4枚刃で切削するのに対し、重なり合っている外方湾曲切れ刃部分351に相当する回転方向の領域では8枚刃で切削することになる。このため、当該領域では、一刃あたりの切り取り厚みが薄くなるため、切削負荷が大きく軽減される。このように、2回切削に使用される外方湾曲切れ刃部分341への負担を大幅に軽減することによって、内刃38としても使用される当該箇所の欠損を顕著に抑制することができるのである。
【0037】
本実施形態においては、主切れ刃34が形成する回転軌跡のうち、主切れ刃34の最も端部側に位置している外方湾曲切れ刃部分341(すなわち、相対的に先端側に位置する切削インサートの内刃38に相当する外方湾曲切れ刃部分351と、相対的に基端側に位置する切削インサートのコーナ切れ刃に接続する外方湾曲切れ刃部分341と)が形成する回転軌跡同士のみが一致するように、切削インサート30は回転中心軸O方向に重なり合って配置されているが、これに限定されることはない。すなわち、端部から数えて複数の外方湾曲切れ刃部分341が形成する回転軌跡同士が重なるように配置してもよい。しかしながら、工具全体の切り込みを最大化するためには、最も端部側の部分のみが重なるように配置することが好ましい。
【0038】
また、本実施形態においては、全ての溝27において、全ての隣接する切削インサート30同士が重なり合うように配置されているが、これに限定されることはない。すなわち、一部の溝27において、一部の隣接する切削インサート30同士が重なり合うように配置される構成であっても、外方湾曲切れ刃部分351の欠損を抑制する効果をある程度達成することはできる。しかしながら、欠損抑制効果を最大化するには、全ての溝27において、全ての隣接する切削インサート30同士が重なり合うように配置することが好ましい。外方湾曲切れ刃部分351が内刃38として機能するのは最先端に位置づけられる切削インサート30のみであるが、工具全体の切削インサートを同時に付け替るとき、最先端に位置づけられていた切削インサートと基端側に位置づけられていた切削インサートとを交換して使用するからである
【0039】
また、工具周方向に隣接する溝27同士においては、回転軌跡の波の位相が工具回転軸O方向にずらされて切削インサート30が配置されており、全ての溝27の回転軌跡を重ね合わせたときに、前記溝27同士の回転軌跡の波の位相が一致しないように構成されている。これによって、全部の溝27を重ね合わせたときの主切れ刃34の波状回転軌跡の山部分と谷部分の高低差が減少するため、谷部分による削り残し量が削減され、被削材加工面の表面粗さが向上する。
【0040】
また、切削インサート30の全ての主切れ刃34、副切れ刃35及びコーナ切れ刃37にはランド39が形成されており、主切れ刃34と副切れ刃35の接続点A1のランド幅が主切れ刃34の中央点Cにおけるランド幅よりも大きいとともに、接続点A1のランド角が中央点Cにおけるランド角よりも小さくなるように構成されている。このように構成することによって、内刃38に相当する主切れ刃34の部分(外方湾曲切れ刃部分351)の強度を向上させることができ、さらに欠損を抑制することが可能になる。
【0041】
また、前述した、溝27同士が工具回転軸O方向に回転軌跡の波の位相がずらされて配置されている構成においては、各々の溝27の工具最先端に位置する切削インサート30の内刃38のみが最初に被加工物の底面に接触するため、この状態では切削に関与する刃数が少なくなっている。例えば、全ての溝27の中で、最も工具先端側に位置する切削インサート30の内刃38に相当する領域は1枚刃であり、その次に工具先端側に位置する切削インサート30の内刃38に相当する領域は2枚刃であり、その次に工具先端側に位置する切削インサート30の内刃38に相当する領域は3枚刃となる。したがって、内刃38にかかる切削抵抗は、通常の、すなわち、さらにその次に工具先端側に位置する切削インサート30の内刃38に相当する領域に対する4枚刃のときよりも大きくなるため、上記のようにランドを強化する構成は効果的である。同時に、主切れ刃34の他の部分(切削に2回使用しない部分)においては、ランド39をシャープなままにして切削性能を維持している。
【0042】
さらに、副切れ刃35のランド幅及びランド角は、接続点A1のランド幅及びランド角と等しいことが好ましい。このように構成することによって、前述したように、溝27同士が工具回転軸O方向に回転軌跡の波の位相がずらされて配置されている構成において大きな負荷がかかる副切れ刃35の強度を向上させることができるからである。
【0043】
本発明において使用される切削インサート30は、平面視にて三角形形状を有するものに限定されることはない。すなわち、主切れ刃34の一部の切れ刃部分が内刃38としても使用される構成の切削インサート30であるならば、他の形状にも適用することが可能である。
【0044】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は種々の変更が可能であり、本願の請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、置換、変更が可能である。