【文献】
Daisuke Totsuka et al,Afterglow Suppression by Codoping with Bi in CsI:Tl Crystal Scintillator,Applied Physics Express,2012年,5,052601-1〜052601-3
【文献】
A.V.Gektin et al,The Effect of Bi- and Threevalent Cation Impurities on the Luminescence CsI,Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference,1994,1994 IEEE Conference Record,IEEE,1994年,Vol.1,111-113
【文献】
A.V.Gektin et al,The Effect of Bi- and Trivalent Cation Impurities on the Luminescence CsI,IEEE TRANSACTION ON NUCLEAR SCIENCE,IEEE,1995年 8月,Vol.42,No.4,285-287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シンチレータとは、γ線やX線などの放射線を吸収し、可視光線又は可視光線に近い波長の電磁波を放射する物質である。その用途としては、例えば医療用のPET(陽電子放射断層撮影装置)やTOF−PET(タイム・オブ・フライト陽電子放射断層撮影装置)、X線CT(X線コンピュータ断層撮影装置)、空港などで使用される所持品検査装置、港湾などで使用される荷物検査装置、石油探索装置、さらには被ばく線量計測装置や高エネルギー粒子計測装置など、各種放射線検出器を挙げることができる。
【0003】
このような放射線検出器は、一般に放射線を受光して可視光に変換するシンチレータ部と、このシンチレータ部で変換され透過してくる可視光を検知して電気信号に変換するホトマルチプライヤチューブ(以下「PMT」という)やフォトダイオードなどの光検出部とから構成されている。そして、この種の用途に用いるシンチレータは、ノイズを小さくして測定精度を上げるために、発光出力の高いシンチレータであることが望まれている。
【0004】
従来、シンチレータとして、CsIやNaIなどのアルカリハライド結晶が広く実用化されている。中でも、CsIを母体とするシンチレータは、放射線吸収効率が比較的高い点、放射線損傷が比較的少ない点、真空蒸着法等により薄膜作製が比較的容易である点などから利用されている。
【0005】
しかし、従来のCsIシンチレータは、発光効率がそれほど高くないため、CsIを母体とする結晶に不純物をドープしてシンチレーション効率を高めたものや、TlI(ヨウ化タリウム)をドーピングしたCsI:Na、CsI:Tlなどが実用化されている。
例えば特許文献1には、ヨウ化セシウム(CsI)にタリウム(Tl)をドープしたヨウ化セシウム:タリウム(CsI:Tl)が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、残光特性を改善したシンチレータとして、CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料に、ビスマス(Bi)をドープしてなるシンチレータが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について詳細に述べる。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(シンチレータ)
本実施形態に係るシンチレータ(以下「本シンチレータ」という)は、CsI(ヨウ化セシウム)を母体(ホスト)とし、且つ、Tl、Bi及びOを含有してなる結晶を有するシンチレータである。
【0015】
本シンチレータの上記母体は、CsI(ヨウ化セシウム)の他に、Tl化合物又はBi化合物又はこれら両方を含んでいてもよい。すなわち、本シンチレータの上記母体は、CsI(ヨウ化セシウム)からなるものでもよいし、CsI(ヨウ化セシウム)とTl化合物又はBi化合物又はこれら両方とを含むものでもよい。
ここで、Tl化合物及びBi化合物は、後述するTl原料、Bi原料或いはそれらの化合物である。
【0016】
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープすることにより、この種のシンチレータの課題である残光を或る程度低減することができる。このような作用はおそらく、CsI結晶中に固有に存在する格子欠陥などが発光するエネルギーを、ビスマス(Bi)の遷移エネルギーで非発光状態で消費するため、シンチレータの残光を低減することができるものと考えることができる。
【0017】
中でも、結晶中のIに対するO含有濃度bと結晶中のCsに対するBi含有濃度aとの比率(a/b)を所定範囲に維持しつつ、結晶中のCsに対するBi含有濃度aを低下させて所定範囲に調整することにより、高出力を維持しつつ残光特性をさらに高めることができる。
【0018】
かかる観点から、結晶中のCsに対するビスマス(Bi)の含有濃度aは0.001at.ppm≦a≦5at.ppmであるのが好ましく、中でも0.001at.ppm以上或いは1at.ppm以下、その中でも0.003at.ppm以上或いは0.5at.ppm以下であるのが特に好ましい。ビスマス(Bi)の含有濃度aを5at.ppm以下とすることにより、出力特性を損なうことなく残光低減効果を発揮することができる。一方、ビスマス(Bi)の含有濃度aを0.001at.ppm以上とすることにより、低残光化の効果を得ることができる。
【0019】
この際、高出力を維持しつつ残光特性をさらに高めるために、上述のように結晶中のIに対するO含有濃度bと、結晶中のCsに対するBi含有濃度aとの比率(a/b)を所定範囲に調整することが好ましい。
かかる観点から、結晶中のIに対するO含有濃度bとCsに対するBi含有濃度aとの比率(a/b)は0.005×10
−4〜200×10
−4であるのが好ましく、中でも0.01×10
−4以上或いは100×10
−4以下、その中でも0.05×10
−4以上或いは50×10
−4以下であるのが特に好ましい。
【0020】
前記結晶中のIに対する酸素(O)の含有量は、上記の比率(a/b)の範囲内であれば特に限定するものではない。
但し、好ましくは、結晶中のIに対するO含有濃度bが0at.%<b≦0.30at.%であり、中でも0.001at.%以上或いは0.10at.%以下、その中でも0.01at.%以上或いは0.08at.%以下であるのが特に好ましい。
酸素(O)をかかる濃度範囲となるように含有させることにより、単にビスマス(Bi)を少量含有させることだけでは達成されることのなかった性能、すなわち高出力を維持しつつ残光をより一層低減させることができる。
【0021】
上記結晶中のタリウム(Tl)の含有量は、特に限定するものではない。一応の目安としては、CsIのCsに対するタリウム(Tl)の含有濃度として100at.ppm〜10000at.ppmであるのが好ましく、中でも300at.ppm以上或いは4000at.ppm以下であるのが特に好ましい。タリウム(Tl)の含有濃度が100at.ppm以上であれば、育成された結晶のシンチレーション発光効率を十分に得ることができる。他方、10000at.ppm以下であれば、濃度消光のために発光量が小さくなるのを回避することができる。
【0022】
なお、上述したCsに対するBi含有濃度とするために、Biの仕込み濃度、言い換えれば本シンチレータ製造時の配合量を0.01at.%以下とすることが好ましく、0.00001at.%以上或いは0.01at.%以下とすることがより好ましい。
また、上述したCsに対するTl含有濃度とするために、Tlの仕込み濃度は0.05at.%以上1.00at.%以下とすることが好ましい。
【0023】
本シンチレータの形態は、バルク状、柱状及び薄膜状のいずれであってもよい。いずれの場合にも、残光を低減する効果を享受することができる。
【0024】
また、本シンチレータは、単結晶であっても多結晶であってもよい。本シンチレータが単結晶であっても多結晶であっても、残光を低減することができるという効果を享受することができる。
なお、本発明において「単結晶」とは、結晶をXRDで測定した際にCsI単相の結晶体と認められるものをいう。
【0025】
(製造方法)
次に、本シンチレータの製造方法の一例について説明する。但し、本シンチレータの製造方法が次に説明する方法に限定されるものではない。
【0026】
シンチレータ結晶は、通常、その製造過程において結晶欠陥や歪が内在することになる。これに対し、本シンチレータは、CsIの結晶育成時に、Biと共に、僅かな酸素を供給することで、Bi及びOがTlに対して分散剤的効果を発揮し、局所的にTlが高濃度化するのを防止して結晶欠陥や歪を低減することができ、高出力・低残光を図ることができる。
【0027】
本シンチレータは、CsI原料、Tl原料及びBi原料を含む原料を混合して加熱溶融させた後、結晶育成させて得ることができる。
この際、Tl原料及びBi原料としては、Tl又はBiのヨウ化物などのようなTl又はBiのハロゲン化物や、酸化物、金属或いは金属化合物などを挙げることができる。但し、これらに限るものではない。
この際の結晶育成方法は、特に限定するものではなく、例えばBridgman−Stockbarger法(「BS法」ともいう)、温度勾配固定化法(例えばVGF法など)、Czochralski(「CZ法」ともいう)、キロプロス法、マイクロ引き下げ法、ゾーンメルト法、これらの改良法、その他の融液成長法等、公知の結晶育成方法を適宜採用することができる。
以下、代表的なBS法とCZ法について説明する。
【0028】
BS法は、坩堝の中に原料を入れて融解させ、坩堝を引下げながら、坩堝底から結晶を育成させていく方法である。結晶育成装置が比較的安価であり、大口径の結晶を比較的に容易に育成可能であるという特徴を有している。その反面、結晶成長方位の制御が困難であり、また、結晶育成時や冷却時に無理な応力がかかるため、応力分布が結晶内に残って歪や転位が誘起され易いと言われている。
【0029】
他方、CZ法は、坩堝内に原料を入れて融解させ、シード(種結晶)を溶融液面に接触させて結晶を回転引き上げながら育成(結晶化)していく方法である。CZ法は、結晶方位を特定し結晶化させることが可能であるため、目的とする結晶方位の育成が容易であると言われている。
【0030】
結晶育成方法の一例に係るBS法の一例についてより具体的に説明する。
例えば、原料となるCsI粉体、TlI粉体及びBiI
3粉体を所定量に秤量・混合し、この混合物を石英坩堝に充填し、必要に応じて真空引きしながら坩堝を封入する。必要により坩堝底部に、種結晶を入れておくこともできる。この石英坩堝を結晶成長装置内に設置する。この際、坩堝を封入しない場合は、結晶成長装置内の雰囲気は、酸素濃度を調整しつつ適切な雰囲気を選択するのが好ましい。加熱装置によって石英坩堝を融点以上に加熱し、坩堝に充填した原料を溶融させる。
坩堝内の原料が融解した後、坩堝を0.1mm/時間〜3mm/時間程度の速度で鉛直下方に引き下げると、融液となった原料は坩堝底部から固化が始まり、結晶が成長する。坩堝内の融液がすべて固化した段階で坩堝の引き下げを終了し、加熱装置により徐冷しつつ、室温程度にまで冷却することで、インゴット状の結晶を育成することができる。
【0031】
いずれの結晶育成方法においても、本シンチレータを製造する際には、Bi原料の混合量を調整すると共に、結晶育成時の雰囲気における酸素量を調整することが重要である。
例えば、坩堝に原料を充填した後、坩堝内をポンプなどで真空引きして坩堝内の酸素濃度を調整して加熱するようにすれば、結晶中の酸素濃度を調整することができる。
また、一部が開放された坩堝を用いて、大気中で坩堝に原料を充填した後、加熱炉内の酸素濃度を調整して加熱するようにしても、結晶中の酸素濃度を調整することができる。この際、加熱炉内の雰囲気は、例えばN
2等の不活性ガスを流して酸素を若干含む不活性ガス雰囲気などとするのが好ましい。
【0032】
以上のようにして育成したインゴット状の結晶体は、所定の大きさに切り出した後、所望のシンチレータ形状に加工すればよい。
【0033】
なお、必要に応じて結晶を熱処理することも可能であるが、必ずしも熱処理する必要はない。
熱処理の方法としては、例えば、前記工程で育成された結晶体を容器に入れ、この容器を熱処理炉内に設置し、熱処理炉内温度を融点の約80〜90%の温度に均熱的に加熱して、結晶中に残留する歪を除去することができる。熱処理における雰囲気は、高純度アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気とすればよい。但し、このような熱処理方法に限定するものではない。
【0034】
(用語の解説)
本発明において「シンチレータ」とは、X線やγ線などの放射線を吸収し、可視光又は可視光に近い波長(光の波長域は近紫外〜近赤外にまで広がっていてもよい)の電磁波(シンチレーション光)を放射する物質、並びに、そのような機能を備えた放射線検出器の構成部材を意味する。
【0035】
本発明において「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Yより小さいことが好ましい」旨の意図を包含する。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
<出力の測定>
図1に示す測定装置を使用して、出力(nA)及び残光(ppm)を測定した。
測定サンプル(シンチレータ板)は、8mm×8mm×厚み2mmを使用した。
この際、前記出力とは、所定のX線を測定サンプルに照射したことにより測定サンプルに生じるシンチレーション光をPINフォトダイオードで受光した時のフォトダイオードの出力である。前記残光とは、X線照射後所定時間後の残光という意味である。
【0038】
タングステン(W)からなるターゲットに、印加電圧120kV、印加電流20mAの電子線を照射しX線を発生させ、このX線を測定サンプルに照射し、シンチレーション光と透過X線の出力をPINフォトダイオード(浜松ホトニクス株式会社製「S1723−5」)で測定した。次に、厚み2.2mmの鉛板の穴に遮光テープを張ってシンチレーション光を遮光し、透過X線だけの出力を測定した。そして、透過X線による出力を差し引き、シンチレーション光による出力を得た。
【0039】
<残光の測定>
また、上記同様に、120kV、20mAの電子線を照射しX線を発生させ、このX線を測定サンプルに1秒間照射し、PINフォトダイオード(浜松ホトニクス株式会社製「S1723−5」)に流れる電流値(I)を測定した。次に、X線を測定サンプルに1秒間照射した後、X線の照射を遮断し、20ms後に前記PINフォトダイオードに流れる電流値(I
20ms)を測定した。また、X線を測定サンプルに照射する前の状態において、PINフォトダイオードに流れる電流値をバックグラウンド値(I
bg)として測定し、次の式から残光(@20ms)を算出した。
残光(@20ms)=(I
20ms−I
bg)/(I−I
bg)
【0040】
<XRD測定>
X線回折(XRD)測定は、測定装置として株式会社リガク製「RINT−TTRIII(50kV、300mA)」を使用し、線源にはCuターゲットを用いて、2θが10度から80度の範囲でXRDパターンを得た。
【0041】
<元素含有濃度の測定>
各元素含有濃度の測定方法を以下に示す。
すなわち、Tlの元素分析は、ICP−AES(型式:SPS3525、装置メーカ:株式会社日立ハイテクサイエンス)を用いて、CsIのCsに対するTl含有濃度(at.ppm)を求めた。
Biの元素分析は、ICP−MS(型式:XSERIES2、装置メーカ:Thermo Scientific社)を用いて、CsIのCsに対するBi含有濃度(at.ppm)を求めた。但し、Bi含有濃度が0.001at.ppm未満の場合、測定値のばらつきが大きいため、表1には「<0.001」と表示した。この場合Bi/Oの比率を示す意味がないためこの項目は「−」と表示した。
Oの元素分析は、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法(型式:EMGA−620、装置メーカ:株式会社堀場製作所)を用いて、CsIのIに対するO含有濃度(at.%)を求めた。
Oの元素分析測定の前処理として、バルク体のサンプルを窒素で充填したグローブボックス内で切断し、新鮮な面を得たサンプルを使用した。
【0042】
<Tl偏析の確認>
Tlの偏析は、Imaging−Dynamic−SIMS(「ダイナミックSIMS」と称する。型式:IMS−7f、装置メーカ:アメテック株式会社)を用いた。測定サンプルは5mm×5mm×厚み2mmの寸法に切断し、測定前の前処理として測定面を約100μmの深さまでスパッタ処理を行った後に本測定を行った。測定の領域は50μm×50μmの面積を約5μmの深さまで1次イオンの酸素を照射して、検出された
205Tlの2次イオン強度データを3次元マッピング処理した。
【0043】
<実施例1、3−11・比較例1−2及び4>
CsI粉(99.999%)、TlI粉(99.999%)、さらにBiI
3粉(99.999%)を表1に示す量で秤量し、乳鉢で混合し、
図2に示す結晶育成装置にセットし、結晶を育成した。ここで、Tl及びBi元素のドープ量は、母材であるCsI中のCs元素に対する原子数パーセント(at.%)として示した。
【0044】
結晶育成は、次のような垂直ブリッジマン法により行った。すなわち、寸胴部直径45mm、長さ100mmの底部が円錐形状の石英坩堝に10%のフッ酸濃度に調整したフッ化水素酸を入れ、5分間洗浄した。このように洗浄処理した石英坩堝を水でよく洗った後、自然乾燥させた。
このように前処理した石英坩堝に、上記の如く乳鉢で混合した原料を入れ、ロータリーポンプと油拡散ポンプを用い所定の坩堝内圧(表1参照)となるように真空引きしながら300℃に加熱後に12時間保持して、原料に含まれている水分を飛ばした後、真空状態を維持したまま石英をバーナーで加熱して溶融させて原料を封入した。
【0045】
次に、石英坩堝を窒素ガス雰囲気とした炉にセットし、原料が溶けるまでヒーターで加熱し、原料溶融後24時間その温度を保持した。その後、0.5mm/時間の速度で石英坩堝を引き下げ、250時間引き下げた後、引き下げを停止し、24時間かけて徐々にヒーターの加熱を停止させた。
このようにして得られた結晶体を、所定の大きさ・所定の方向に切り出して、それぞれの上記の測定サンプルを得た。
【0046】
<実施例2及び比較例3>
実施例2及び比較例3では、寸胴部直径45mm、長さ100mmで上端が開口した石英坩堝を用いて、実施例1と同様に石英坩堝の洗浄を行なった後水でよく洗い、自然乾燥させた後、乳鉢で混合した原料を入れて、石英坩堝を炉内にセットし、大気雰囲気下の炉内にN
2を流して流量を調整した。この状態のまま300℃まで加熱した後に12時間保持して、原料に含まれている水分を飛ばした後は、上記実施例1と同様に測定サンプルを得た。この際、N
2を流す際の流量を制御して処理雰囲気の酸素濃度を変更させた。
【0047】
<実施例12>
実施例12では、寸胴部直径120mm、長さ230mmの底部が円錐形状の石英坩堝を用いた以外、実施例1と同様に測定サンプルを得た。
【0048】
【表1】
【0049】
(結果及び考察)
実施例1−12で得られた結晶体の一部を粉砕し、粉末XRD測定を行ったところ、実施例1−12で得られた結晶体はいずれも、CsI単相の結晶体であり、他の相は確認されなかった。
【0050】
上記実施例及びこれまで本発明者が行ってきた試験結果から、CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、Tl、Bi及びOを含有してなる結晶を有するシンチレータに関しては、記結晶中のIに対するO含有濃度bと、前記結晶中のCsに対するBi含有濃度aとの比率(a/b)を0.005×10
−4〜200×10
−4に調整しつつ、前記結晶中のCsに対するBi含有濃度aを0.001at.ppm≦a≦5at.ppmとすることにより、高出力を維持しつつ残光特性をさらに高めることができることが分かった。
【0051】
なお、実施例1−12と比較例1のシンチレータに関し、ダイナミックSIMSにてTlを観察したところ、
図3に示すように、実施例8はTlが均一に分散していることが確認できた一方、
図4に示すように、比較例1はTlが偏析していることが確認できた。
実施例8以外の実施例もすべて同様の傾向を示し、Bi含有濃度及びO含有濃度も所定範囲内であったため、BiとOがTlを分散させる分散剤としての効果を発揮することを確認することができた。
【0052】
なお、上記の実施例は、バルク状のシンチレータを使用して試験したが、柱状及び薄膜状のシンチレータを作製する場合の方がCsI結晶中の格子欠陥が大きくなるため、バルク以上の効果を期待することができる。すなわち、シンチレータの形態がバルク状、柱状及び薄膜状にかかわらず、少なくともバルク状のシンチレータを使用した場合の効果と同等以上の効果を期待することができる。
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、タリウム(Tl)及びビスマス(Bi)を含有する結晶を有するシンチレータに関し、高出力を維持しつつ残光特性をさらに高めることができる、新たなシンチレータを提供する。
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、Tl、Bi及びOを含有してなる結晶を有するシンチレータであって、前記結晶中のCsに対するBi含有濃度aが0.001at.ppm≦a≦5at.ppmであり、前記結晶中のIに対するO含有濃度bと、前記結晶中のCsに対するBi含有濃度aとの比率(a/b)が0.005×10