(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記金属多孔体が、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチングプレート、精密プレス加工プレート、金網、金属メッシュ、金属細線焼結体からなる群より選ばれた少なくとも1種からなる、ことを特徴とする請求項10に記載の燃料電池。
上記ガス拡散層基材層の空孔の全部又は一部に上記ガス拡散層下地層に含まれるカーボン及び/又は撥水材を含有する、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の燃料電池。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る燃料電池について詳細に説明する。
本実施形態の燃料電池は、膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持する一対のガス拡散層と、膜電極接合体及び該一対のガス拡散層を挟持し、ガス拡散層との対峙面にガス流路であるチャネルを形成するリブを有するセパレータとを備えたものである。
そして、ガス拡散層との対峙面におけるチャネルの占有面積比S
C(−)と、ガス拡散層の厚みt(μm)とが下記式(1)で表される関係を満足する。
0.9>S
C≧55(t−103)
2/1000000+0.3…(1)
このような構成とすることにより、酸素輸送抵抗及び電子抵抗を低減し、高い性能を発現し得る燃料電池となる。
【0011】
また、本実施形態の燃料電池は、例えば、下記式(2)で表される関係を満足するものであることが好ましい。なお、下記式(2)の右辺の意味するところは、((0.0755ln(σ・t/8000)−0.1525)×W
R+0.9611)から算出される値と0.9のうち小さい方を選択するというものである。
【0013】
このような構成とすることにより、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
【0014】
更に、本実施形態の燃料電池は、例えば、ガス拡散層の電気伝導度に異方性がある場合、上記式(2)のガス拡散層の電気伝導度(σ)としてチャネルを形成するリブの幅方向の電気伝導度(σ
inplane)を適用することができるものであることが好ましい。
このような構成とすることにより、ガス拡散層の電気伝導度に異方性がある場合であっても、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
なお、ガス拡散層の電気伝導度に異方性がない、すなわち電気伝導度が等方性を有する場合は、いずれの方向の電気伝導度を適用してもよい。
【0015】
また、本実施形態の燃料電池は、例えば、セパレータにおけるガス流れ方向に対してほぼ垂直な断面におけるチャネル形状が矩形形状でない場合、上記式(2)のリブ幅(W
R)としてリブとガス拡散層とが接する部分のリブ幅(W
Rcontact)を適用し、チャネル幅(W
C)としてチャネルとガス拡散層が対峙する部分のチャネル幅(W
Cchannel)を適用することができるものであることが好ましい。
このような構成とすることにより、セパレータにおけるガス流れ方向に対してほぼ垂直な断面におけるチャネル形状が矩形形状でない場合であっても、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
なお、セパレータにおけるガス流れ方向に対してほぼ垂直な断面におけるチャネル形状が矩形形状である場合は、後述する
図1で示すようなリブ幅やチャネル幅を適用すればよい。
【0016】
更に、本実施形態の燃料電池は、例えば、ガス拡散層が厚み方向に積層されたn層構造を有する場合、上記式(2)のガス拡散層の電気伝導度(σ)として下記式(3)より算出される電気伝導度(σ
layered)を適用することができるものであることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、ガス拡散層が厚み方向に積層されたn層構造を有する場合であっても、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
【0019】
なお、本発明の燃料電池は、ガス拡散層が厚み方向に積層されたn層構造を有する場合に限定されるものでないことは言うまでもない。なお、上記式(3)は、1層からなるものに対しても拡張して適用することができる。つまり、nは1以上の整数である。
ガス拡散層が1層からなるものは、例えば、構造を簡素化することができ、低コスト化を図ることができるという観点から好ましい。
【0020】
また、本実施形態の燃料電池は、例えば、ガス拡散層が厚み方向の面圧に対して感度を有する場合、上記式(2)のガス拡散層の電気伝導度(σ)として燃料電池を形成した状態での電気伝導度(σ
pressure)を適用することができるものであることが好ましい。
このような構成とすることにより、ガス拡散層が厚み方向の面圧に対して感度を有する場合であっても、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
なお、ここで、「面圧に対して感度を有する」とは、ガス拡散層にかかる面圧を変化させた場合に、ガス拡散層の電気伝導度が変化することを意味する。
例えば、ガス拡散層にかかる面圧を高くした場合にガス拡散層の電気伝導度が高くなる場合を一例として挙げることができる。
また、本発明の燃料電池が、ガス拡散層が厚み方向の面圧に対して感度を有しないものを適用することができることは言うまでもない。
【0021】
更に、本実施形態の燃料電池は、例えば、セパレータにおけるガス流れ方向が一方向でない場合、セパレータにおけるガス流れ方向のうち最も割合が大きい方向を主流方向と規定する。
そして、上記式(2)のリブ幅(W
R)及びチャネル幅(W
C)として、上記主流方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ幅(W
Rmain)及びチャネル幅(W
Rmain)を適用することができるものであることが好ましい。
このような構成とすることにより、セパレータにおけるガス流れ方向が一方向でない、例えばサーペンタイン形流路が形成されている場合であっても、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
【0022】
また、本発明の燃料電池は、例えば、リブの厚さ方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ配置形状が点状又は島状配置形状である場合にも適用することができる。
ここで、「点状配置形状」とは、複数のリブが当該リブの外形線がチャネルを形成するように分散配置されており、当該リブ形状が点状であるとみなすことができるものをいう。
また、「点状であるとみなすことができるもの」とは、当該リブ形状が円形、楕円形、扇形、三角形、四角形以上の多角形、更にはこれらを適宜組み合わせて形成される複合的な形であっても、当該リブをこれに外接する円形のリブに置き換えたときにガス流れに殆ど影響を与えない配置形状をいう。
なお、ガス流れに殆ど影響を与えない配置形状としては、例えばリブ幅に対するチャネル幅の比が5倍以上のものを挙げることができる。
一方、「島状配置形状」とは、複数のリブが当該リブの外形線がチャネルを形成するように分散配置されており、当該リブ形状が点状であるとみなすことができないものをいう。
また、「点状であるとみなすことができないもの」とは、当該リブ形状が円形、楕円形、扇形、三角形、四角形以上の多角形、更にはこれらを適宜組み合わせて形成される複合的な形であっても、当該リブをこれに外接する円形のリブに置き換えたときにガス流れに影響を与える配置形状をいう。
なお、ガス流れに影響を与える配置形状としては、例えばリブ幅に対するチャネル幅の比が5倍未満のものを挙げることができる。
【0023】
例えば、本実施形態の燃料電池においては、上記式(2)におけるリブ幅(W
R)及びチャネル幅(W
C)として、下記リブ幅(W
Rcg)及びチャネル幅(W
Ccg)を適用することができるものであることが好ましい。
ここで、リブ幅(W
Rcg)は、リブの重心位置を算出し、重心位置を結ぶことにより重なりのない三角形を形成し、三角形の重心位置を算出し、リブの重心位置及び三角形の重心位置を結ぶ線分とリブの外形線との交点と、リブの重心位置との距離を2倍にしたものである。
また、チャネル幅(W
Ccg)は、上記交点と上記三角形の重心位置との距離を2倍にしたものである。
このような構成とすることにより、リブの厚さ方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ配置形状が点状又は島状配置形状である場合であっても、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
【0024】
更に、本発明の燃料電池は、例えば、リブの厚さ方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ配置形状が点状又は島状配置形状である場合であって、それが不均一に分散された場合にも適用することができる。
例えば、本実施形態の燃料電池においては、上記式(2)におけるリブ幅(W
R)及びチャネル幅(W
C)として、下記リブ幅(W
Rcg)及びチャネル幅(W
Ccg)のうち、(W
Ccg/(W
Ccg+W
Rcg))が最も小さくなるものを適用することができるものであることが好ましい。
ここで、リブ幅(W
Rcg)は、リブの重心位置を算出し、重心位置を結ぶことにより重なりのない三角形を形成し、三角形の重心位置を算出し、リブの重心位置及び三角形の重心位置を結ぶ線分とリブの外形線との交点と、リブの重心位置との距離を2倍にしたものである。
また、チャネル幅(W
Ccg)は、上記交点と上記三角形の重心位置との距離を2倍にしたものである。
このような構成とすることにより、リブの厚さ方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ配置形状が点状又は島状配置形状である場合であって、それが不均一に分散された場合であっても、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
【0025】
また、本実施形態の燃料電池は、例えば、ガス拡散層が、膜電極接合体側に位置するガス拡散層下地層と、セパレータ側に位置するガス拡散層基材層とから構成され、更に、ガス拡散層下地層が、カーボンと撥水材とを含有し、ガス拡散層基材層が、金属多孔体を含有するものであることが望ましい。
このような構成とすることにより、更に電子抵抗を低減し得る燃料電池となる。
また、ガス拡散層下地層は、カーボン及び撥水材以外の材料を含有していてもよく、ガス拡散層に用いられる従来公知の材料を適用することができる。更に、ガス拡散層基材層は、金属多孔体以外の材料を含有していてもよく、ガス拡散層に用いられる従来公知の材料を適用することができる。
なお、本発明においてカーボンと撥水材とを含有するガス拡散層下地層には、カーボンと撥水材のみからなるガス拡散層下地層を含む意味に解釈しなければならない。また、本発明において金属多孔体を含有するガス拡散層基材層には、金属多孔体のみからなるガス拡散層基材層を含む意味に解釈しなければならない。
【0026】
ここで、金属多孔体としては、例えば発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチングプレート、精密プレス加工プレート、金網、金属メッシュ、金属細線焼結体などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの金属多孔体は、製造過程において厚みや空隙率などを調整し易いという利点もある。
【0027】
更に、本実施形態の燃料電池は、例えば、ガス拡散層基材層の空孔の全部又は一部にガス拡散層下地層に含まれるカーボン及び撥水材のいずれか一方又は双方を含有するものであることが望ましい。
このような構成とすることにより、空孔内の表面性状等のコントロールが可能となり、フラッディング耐性を更に向上させることができるという利点がある。
【0028】
また、本実施形態の燃料電池は、例えば、ガス拡散層が膜電極接合体及びセパレータのいずれか一方又は双方に接合や圧着などされているものであることが望ましい。
このような構成とすることにより、界面における接触抵抗を低減することが可能となり、酸素輸送抵抗及び電子抵抗をより低減し、より高い性能を発現し得る燃料電池となる。
【0029】
ここで、接合や圧着には、例えば、冷間プレス、ホットプレス、溶着、溶接、拡散接合などを利用することができる。これらは1種を単独で利用してもよく、2種以上を適宜併用してもよい。
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る燃料電池について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の一例の概略を示す断面図(A)及びセパレータにおける特定部位の長さの定義を説明する図(B)である。
図1に示すように、第1の実施形態の燃料電池1は、膜電極接合体10と、膜電極接合体10を挟持する一対のガス拡散層(20a、20c)と、該膜電極接合体10及び該一対のガス拡散層(20a、20c)を挟持し、該ガス拡散層(20a、20c)との対峙面にガス流路であるチャネル(Ca、Cc)を形成するリブ31を有するセパレータ30とを備える。
そして、該ガス拡散層(20a、20c)との対峙面におけるチャネルの占有面積比S
C(−)と、該ガス拡散層の厚みt(μm)とが下記式(1)で表される関係を満足する。
なお、本例においては、チャネルが平行な直線状であることから、チャネルの占有面積比(S
C)=チャネル幅(W
C)/(リブ幅(W
R)+チャネル幅(W
C))と定義して算出することができる。また、チャネルが平行な直線状でない場合には、それぞれの場合に応じて、具体的に計測することにより、算出することができる。
0.9>S
C≧55(t−103)
2/1000000+0.3…(1)
【0032】
以下、各構成について更に詳細に説明する。
【0033】
[膜電極接合体]
膜電極接合体10は、電解質膜11を一対の触媒層(13a、13c)で挟持した構成を有している。電解質膜や触媒層については、燃料電池に用いられている従来公知の材料を適用することができる。以下、具体的に説明する。
【0034】
(電解質膜)
電解質膜11は、例えば、固体高分子電解質膜から構成される。この固体高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池の運転時にアノード側の触媒層で生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード側の触媒層へと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
【0035】
電解質膜は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
【0036】
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、且つ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質膜が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
【0037】
電解質膜の厚みは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。電解質膜の厚みは、通常は5〜300μm程度である。電解質膜の厚みがこのような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性及び使用時の出力特性のバランスが適切に制御され得る。
【0038】
(触媒層)
触媒層(13a、13c)は、例えば、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体及び電解質を含む。以下、触媒担体に触媒成分が担持されてなる複合体を「電極触媒」とも称する。この触媒層(アノード側の触媒層、カソード側の触媒層)は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層では水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層では酸素の還元反応が進行する。
【0039】
アノード側の触媒層に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に限定されるものではなく従来公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード側の触媒層に用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に限定されるものではなく従来公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、タングステン(W)、鉛(Pb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)等の金属及びこれらの合金などから選択することができる。
【0040】
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものを用いることが望ましい。なお、合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素又は非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物又は金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本発明ではいずれであってもよい。この際、アノード側の触媒層に用いられる触媒成分及びカソード側の触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択され得る。本明細書では、特記しない限り、アノード側の触媒層用及びカソード側の触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義である。よって、一括して「触媒成分」と称する。しかしながら、アノード側の触媒層及びカソード側の触媒層の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択することができる。
【0041】
触媒成分の形状や大きさは、特に限定されるものではなく、従来公知の触媒成分と同様の形状及び大きさを採用することができる。ただし、触媒成分の形状は、粒状であることが好ましい。触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nmであることが好ましい。触媒粒子の平均粒子径がこのような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスを適切に制御することができる。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定することができる。
【0042】
触媒担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、及び触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。触媒担体としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、充分な電気伝導度を有しているものであればよく、主成分がカーボンであることが好ましい。
【0043】
具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、「実質的に炭素原子からなる」とは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容され得ることを意味する。
【0044】
触媒担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに充分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m
2/g、より好ましくは80〜1200m
2/gである。触媒担体の比表面積がこのような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散性と触媒成分の有効利用率とのバランスを適切に制御することができる。
【0045】
触媒担体のサイズについても特に限定されないが、担持の簡便さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径を5〜200nm程度、好ましくは10〜100nm程度とするとよい。
【0046】
触媒担体に触媒成分が担持されてなる電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。触媒成分の担持量がこのような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御され得る。なお、電極触媒における触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって測定することができる。
【0047】
触媒層には、電極触媒に加えて、イオン伝導性の高分子電解質が含まれる。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照され得る。例えば、上述した高分子電解質層を構成するイオン交換樹脂が、高分子電解質として触媒層に添加され得る。
【0048】
[ガス拡散層]
ガス拡散層(アノード側のガス拡散層20a、カソード側のガス拡散層20c)は、それぞれガス拡散層下地層(21a、21c)とガス拡散層基材層(23a、23c)とを積層した構成を有している。このガス拡散層は、セパレータのガス流路であるチャネルを介して供給されたガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)の触媒層への拡散を促進する機能、及び電子伝導パスとしての機能を有する。
【0049】
(ガス拡散層下地層)
ガス拡散層下地層(21a、21c)は、例えば、撥水性をより向上させるために、カーボンと撥水材とを含むカーボン粒子の集合体からなる構成を有している。このようなガス拡散層下地層は、マイクロポーラス層(MPL)と呼ばれる。
【0050】
カーボンは、特に限定されるものではなく、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料を適宜用いることができる。中でも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックを用いることが好ましい。カーボン粒子の平均粒子径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
【0051】
撥水材は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを抑制ないし防止することができれば、特に限定されるものではない。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどオレフィン系の高分子材料が挙げられる。中でも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料を用いることが好ましい。
【0052】
ガス拡散層下地層におけるカーボンと撥水材との混合比は、撥水性及び電子伝導性のバランスを考慮して、質量比で90:10〜40:60(カーボン:撥水材)程度とするのがよい。なお、気相成長炭素やカーボンファイバ、カーボンナノチューブを用いること、含有させるカーボンの配向性を調整することなどにより、電気伝導性に異方性を持たせることができる。また、ガス拡散層下地層の厚みについては、後述する。
【0053】
(ガス拡散層基材層)
ガス拡散層基材層(23a、23c)は、構成する材料について特に限定されるものではなく、従来公知の材料を用いることができる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有する炭素製のものや、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチングプレート、精密プレス加工プレート、金網、金属メッシュ、金属細線焼結体といった導電性及び多孔質性を有する金属製のものを挙げることができる。ガス拡散層基材層の厚みについては、後述する。
【0054】
また、
図2は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池のガス拡散層の他の例の概略を示す拡大断面図である。
図2に示すように、ガス拡散層(20c)におけるガス拡散層基材層(23c)の空孔であった部分にガス拡散層下地層(21c)を構成する材料であるカーボンや撥水材を含有していてもよい。このようにすると、空孔内の表面性状等のコントロールが可能となり、フラッディング耐性を更に向上させることができるという利点がある。
【0055】
更に、
図3は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池のガス拡散層の更に他の例を示すグラフ図である。
同図において実線で示すように、ガス拡散層が厚み方向の面圧に対して感度を有する場合、上述した式(2)のガス拡散層の電気伝導度(σ)として燃料電池を形成した状態(セル組み付け時)での電気伝導度(σ
pressure)を適用することができるものであることが好ましい。
なお、同図において、一点差線は、面圧に対して感度を有しないガス拡散層の一例を示す。
【0056】
[セパレータ]
セパレータ30は、電極接合体10及び一対のガス拡散層(20a、20c)を挟持し、ガス拡散層(20a、20c)との対峙面にガス流路であるチャネル(Ca、Cc)を形成するリブ31を有する構成を有している。
なお、セパレータは、構成する材料について特に限定されるものではなく、従来公知の材料を用いることができる。供給されるガスが透過し難い材料であることが望ましく、電池反応で取り出された電流が流れやすい材料であることが望ましい。具体的には、鉄、チタン、アルミニウム、これらの合金などの金属材料、各種金属材料や炭素材料などで電導性を付与した高分子材料(導電性プラスチック)などが挙げられる。なお、鉄合金にはステンレスが含まれる。
【0057】
また、
図4は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の一例の概略を示す断面図である。なお、第1の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
第2の実施形態の燃料電池1’は、一対のガス拡散層(20a、20c)が1層からなるものを適用したこと以外は、上記第1の実施形態の燃料電池と同様の構成を有する。このようにすると、構造を簡素化することができ、低コスト化を図ることができるという利点がある。なお、ガス拡散層はガス拡散層下地層やガス拡散層基材層をそのまま適用してもよいが、ガス拡散層下地層の構成材料とガス拡散層基材層の構成材料を適宜組み合わせてもよい。
また、ガス拡散層の電気伝導度に異方性がある場合には、
図4の矢印Xで示すリブの幅方向における電気伝導度(σ
inplane)を適用すればよい。
【0058】
更に、
図5は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の一例の概略を示す断面図である。なお、第1の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
第3の実施形態の燃料電池1’’は、一対のガス拡散層(20a、20c)が1層からなるものを適用し、一対のセパレータにおけるガス流れ方向に対してほぼ垂直な断面におけるチャネル形状を台形形状としたこと以外は、上記第1の実施形態の燃料電池と同様の構成を有する。このときは、上述した式(2)において、図示したリブとセパレータが接する部分の幅(W
Rcontact)及びチャネルとガス拡散層が対峙する部分の幅(W
Ccontact)を適用すればよい。
【0059】
また、
図6は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池の一例の概略を示す断面図である。なお、第1の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
第4の実施形態の燃料電池1’’’は、一対のガス拡散層(20a、20c)がn層からなるものを適用したこと以外は、上記第1の実施形態の燃料電池と同様の構成を有する。このときは、上述した式(2)において、上述した式(3)で示した(σ
layered)を適用すればよい。
【0060】
更に、
図7は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池の一例を示す斜視図である。また、
図8は、
図7中のVIII−VIII’線に沿った断面の概略図である。なお、第1の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
第5の実施形態の燃料電池1’’’’は、一対のガス拡散層(20a、20c)が1層からなるものを適用し、一つのセパレータにおけるガス流れ方向が一方向でないもの、としたこと以外は、上記第1の実施形態の燃料電池と同様の構成を有する。
本例においては、
図8に示すようないわゆるサーペンタイン型流路を形成することによって、ガス流れ方向が一方向でないものとする。
このときは、
図8の矢印Yで示す主流方向を規定し、上記式(2)において、図示したリブ幅(W
Rmain)及びチャネル幅(W
Cmain)を適用すればよい。
【0061】
また、
図9は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の一例を示す斜視図である。また、
図10は
図9中のX−X’線に沿った断面の概略図である。更に、
図11は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の一例におけるリブ幅(W
Rcg)及びチャネル幅(W
Ccg)の規定の仕方を説明する図である。
なお、第1の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
第6の実施形態の燃料電池1’’’’’は、一対のガス拡散層(20a、20c)が1層からなるものを適用し、リブの厚さ方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ配置形状を同一の円形のリブ31を均一に分散配置させたこと以外は、上記第1の実施形態の燃料電池と同様の構成を有する。これはリブ配置形状が点状配置形状の場合に相当する。
このような場合であっても、
図11に示したように作図することにより、上述したようなリブ幅(W
Rcg)及びチャネル幅(W
Ccg)を規定できる。
【0062】
まず、(1)においては、リブ31の重心位置aを算出する。
次に、(2)においては、重心位置aを結ぶことにより重なりのない三角形を形成する。
更に、(3)においては、三角形の重心位置bを算出する。
しかる後、(4)においては、リブ31の重心位置a及び三角形の重心位置bを結ぶ線分をリブ31の外形線で分けて、それぞれ、(0.5W
Ccg)及び(0.5W
Rcg)とする。
これは、(4)におけるリブ31の重心位置a及び三角形の重心位置bを結ぶ線分とリブ31の外形線の交点cと、リブの重心位置aとの距離を2倍にしたものをリブ幅(W
Rcg)とし、交点cと三角形の重心位置bとの距離を2倍にしたものをチャネル幅(W
Ccg)とすることと同義である。
【0063】
更に、
図12は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の他の例におけるリブ幅(W
Rcg)及びチャネル幅(W
Ccg)の規定の仕方を説明する図である。
なお、第1の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
本例の実施形態の燃料電池1’’’’’’は、一対のガス拡散層(20a、20c)が1層からなるものを適用し、リブの厚さ方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ配置形状を異なる円形のリブ31を不均一に分散配置させたこと以外は、上記第1の実施形態の燃料電池と同様の構成を有する。これはリブ配置形状が点状配置形状の場合に相当する。
このような場合であっても、
図12に示したように作図することにより、上述したようなリブ幅(W
Rcg)及びチャネル幅(W
Ccg)を規定できる。
【0064】
まず、(1)においては、リブの重心位置aを算出する。
次に、(2)においては、重心位置aを結ぶことにより重なりのない三角形を形成する。
更に、(3)においては、三角形の重心位置bを算出する。
しかる後、(4)においては、一部の三角形について検討する。リブの重心位置a及び三角形の重心位置bを結ぶ線分をリブの外形線で分けて、それぞれ、(0.5W
Ccg)及び(0.5W
Rcg)とする。ここで、(0.5W
Ccg)及び(0.5W
Rcg)は、全てについて算出する。
これは、(4)におけるリブ31の重心位置a及び三角形の重心位置bを結ぶ線分とリブ31の外形線の交点cと、リブの重心位置aとの距離を2倍にしたものをリブ幅(W
Rcg)とし、交点cと三角形の重心位置bとの距離を2倍にしたものをチャネル幅(W
Ccg)とすることと同義である。
このようにして全部の(0.5W
Ccg)及び(0.5W
Rcg)について検討した後、本例の場合は、そのうち、(W
Ccg/(W
Ccg+W
Rcg))が最も小さくなるものを適用すればよい。
【0065】
そして、本発明の燃料電池においては、上述したようにガス拡散層に対峙する面におけるガス流路であるチャネルの占有面積比S
C(−)と、ガス拡散層の厚みt(μm)とが下記式(1)で表される関係を満足する。
0.9>S
C≧55(t−103)
2 /1000000+0.3…(1)
【0066】
上記式(1)は、以下のように算出することができる。
まず、
図1に示すような構造の燃料電池においては、ガス拡散層の厚みt(μm)とガス流路であるチャネルの占有面積比S
C(−)とを変化させた場合の等酸素輸送抵抗曲線は、
図13に示すようにガス流路であるチャネルの占有面積比S
C(−)をガス拡散層の厚みt(μm)の2次曲線として表すことができることを実験的に明らかにした。
すなわち横軸にガス拡散層の厚みt(μm)、縦軸にガス流路であるチャネルの占有面積比S
C(−)を取って、得られた酸素輸送抵抗値をプロットする。
このとき、得られた酸素輸送抵抗値が同じものどうしを結ぶ等酸素輸送抵抗曲線は最小二乗法によりガス流路であるチャネルの占有面積比S
C(−)に対するガス拡散層の厚みt(μm)の二次関数で近似できる。
なお、酸素輸送抵抗は、限界電流密度法にて計測することができる。酸素輸送抵抗の定量は、限界電流を計測することにより算出することが可能であり、基本となる原理は、例えばECS Transaction.Vol11(1)、p529(2007)に記載の方法を用いることができる。ここでは、限界電流の大小を酸素輸送抵抗の大小と置き換えて表現している。
また、
図1に示すような構造の燃料電池においては、S
CはW
C/(W
R+W
C)から算出できる。
【0067】
ところで、燃料電池自動車において、車両をモータによって駆動するためには、所定の電圧(定格電圧)と電流(定格電流)が必要となる。このような電圧を発揮するスタック運転点を車両定格点という。
そこで、
図1に示すような構造の燃料電池を後述する実施例1、比較例1、比較例2の仕様で作製、各仕様で実測した酸素輸送抵抗値と電圧計測値を横軸、縦軸に取ってプロットする。
具体的には各仕様で、限界電流密度法にて測定した酸素輸送抵抗値と、車両定格電圧で規格化した車両定格電流における電圧計測値を、それぞれ横軸、縦軸に取ってプロットすると、
図14のようになる。
なお、車両定格電流における電圧を車両定格電圧で規格化した値は、例えば電子負荷装置を用いて計測することができる。
ここで車両が実走行するための1つの因子として燃料電池が車両定格点での条件を満たす必要がある。ここで、「車両定格点の条件を満たす」とは、定格電流値での燃料電池の実電圧が定格電圧を超えることで、すなわち車両定格電圧で規格化した車両定格電流における電圧計測値が1以上となることである。
すると
図14から、車両定格点の条件を満たすためには、車両定格電圧で規格化した値が1以上となるには酸素輸送抵抗値を0.375(sec/m/kPa)以下にする必要があることが分かる。
そして、酸素輸送抵抗値が0.375(sec/m/kPa)以下となるには、
図14において酸素輸送抵抗値0.375(sec/m/kPa)での等酸素輸送抵抗曲線から算出されるガス流路であるチャネルの占有面積比S
C以上となる必要がある。
ここで、酸素輸送抵抗値0.375(sec/m/kPa)の等酸素輸送抵抗曲線はガス拡散層の厚さtを用いてS
C=55(t−103)
2/1000000+0.3と表される。
よって、本実施形態の燃料電池においては、酸素輸送抵抗値が0.375(sec/m/kPa)以下となるように上記(1)の右側の関係(S
C≧55(t−103)
2/1000000+0.3)を満足するものである。
更に、
図1に示すような構造の燃料電池を後述する比較例2、比較例3、比較例4の仕様で作製、各仕様で実測したガス流路の占有面積比S
C(−)を横軸、例えばミリオームハイテスタを用いて交流4端子法で計測したセル抵抗値を、S
Cが0となる理想状態での電気抵抗値で規格化した値を縦軸に取ってプロットすると
図15のように表すことができる。
なお、S
Cが0となる理想状態とは電子伝導にとっての理想状態であってセパレータが全て電子の流路となっている状態を言い、具体的にはセパレータにガス流路であるチャネルがない状態を言う。
すると
図15から分かるように、S
Cが0.9以上となると抵抗値が急激に上昇して出力低下につながる。
なお、理論的にはS
C=1.0では無限大となる。
従って、
図15から、上記(1)の左側の関係(0.9>S
C)が決定できる。
【0068】
また、本実施形態の燃料電池においては、例えば、上述したように、下記式(2)で表される関係を満足することが好ましい。
【0070】
上記式(2)は、以下のように算出することができる。
通常、燃料電池(スタック)は、モータや補機等のシステムを稼働させるため、最低限必要な電圧が規定されている。
酸素輸送抵抗は燃料電池の性能(電圧−電流特性)には相関関係があり、この電圧を確保するために必要な酸素輸送抵抗の目標値が定められる。
具体的には、燃料電池(スタック)において、電圧を所定の電圧以上に保つためには、
図16中の0値の水平ラインよりも酸素輸送抵抗を小さくする必要がある。酸素輸送抵抗のチャネルの占有比に対する傾向は、
図16に示すようにリブ幅によって変化する。
ここで、「チャネルの占有比」は、「チャネル幅/(チャネル幅+リブ幅)(=W
C/(W
C+W
R))」と定義する。なお、詳細については後述する。
【0071】
また、この傾向から、
図17に示すように燃料電池(スタック)の電圧を所定の電圧以上に保つために取り得るチャネルの占有比(W
C/(W
C+W
R))の上限を各リブ幅で算出することができる。
つまり、W
C/(W
R+W
C)<−0.1605×W
R+0.9611…(4)であることを要する。
図17に示す線分は、W
C/(W
R+W
C)=−0.1605×W
R+0.9611である。
【0072】
更に、
図18及び
図19に示すように、電子輸送(電気伝導度)を変化させた場合にも、その傾向は変化する。そこで、同様の考え方によって、
図20に示すように燃料電池(スタック)の電圧を所定の電圧以上に保つために取り得るチャネルの占有比(W
C/(W
C+W
R))の上限を各リブ幅で算出することができる。
更にまた、
図21に示すように、これらを電気伝導度の倍数と傾きとの関係として示す。
このようにして得られた傾きの関係式を上記式(4)に反映させることによって、上記式(2)の関係式のうちの一方である下記式(5)を決定することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
まず、電解質膜として、パーフルオロスルホン酸系電解質膜を用意し、カソード側及びアノード側の触媒層形成用スラリとして、白金担持カーボン含有分散液を用意した。
電解質膜に、スラリをスプレーコータ装置を用いて塗布し、焼成炉を用いて、空気雰囲気中、350℃で30分間焼成し、膜電極接合体を作製した。
次に、カソード側及びアノード側のガス拡散層基材層として、空隙率が0.44であるエッチングプレートを用意し、ガス拡散層下地層として、カーボン粉末と撥水材(例えばポリテトラフルオロエチレン)とからなる層を用意し、これらを所定の面圧にて圧着することでガス拡散層を作製した。
なお、ガス拡散層の厚みは50μmであった。
更に、セパレータとして、S
C=0.67としたステンレス(SUS)製セパレータを作製した。
これらを用いて、
図1に示すような燃料電池を作製し、本例の燃料電池を得た。
【0076】
(比較例1)
ガス拡散層基材層として、一般的なカーボンペーパを用意して、実施例1と同様の操作を繰り返して、ガス拡散層を作製した。
なお、ガス拡散層の厚みは210μmであった。
更に、セパレータとして、S
C=0.5としたステンレス(SUS)製セパレータを作製した。
上記作製したガス拡散層及びセパレータを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、
図1に示すような燃料電池を作製し、本例の燃料電池を得た。
【0077】
(比較例2)
ガス拡散層基材層として、一般的なカーボンペーパを用意して、実施例1と同様の操作を繰り返して、ガス拡散層を作製した。
なお、ガス拡散層の厚みは210μmであった。
更に、セパレータとして、S
C=0.67としたステンレス(SUS)製セパレータを作製した。
上記作製したガス拡散層及びセパレータを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、
図1に示すような燃料電池を作製し、本例の燃料電池を得た。
【0078】
(比較例3)
ガス拡散層基材層として、一般的なカーボンペーパを用意して、実施例1と同様の操作を繰り返して、ガス拡散層を作製した。
なお、ガス拡散層の厚みは210μmであった。
更に、セパレータとして、S
C=0.78としたステンレス(SUS)製セパレータを作製した。
上記作製したガス拡散層及びセパレータを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、
図1に示すような燃料電池を作製し、本例の燃料電池を得た。
【0079】
(比較例4)
ガス拡散層基材層として、一般的なカーボンペーパを用意して、実施例1と同様の操作を繰り返して、ガス拡散層を作製した。
なお、ガス拡散層の厚みは210μmであった。
更に、セパレータとして、S
C=0.83としたステンレス(SUS)製セパレータを作製した。
上記作製したガス拡散層及びセパレータを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、
図1に示すような燃料電池を作製し、本例の燃料電池を得た。
【0080】
(実施例2)
まず、電解質膜として、パーフルオロスルホン酸系電解質膜を用意し、カソード側及びアノード側の触媒層形成用スラリとして、白金担持カーボン含有分散液を用意した。
電解質膜に、スラリをスプレーコータ装置を用いて塗布し、焼成炉を用いて、空気雰囲気中、350℃で30分間焼成し、膜電極接合体を作製した。
次に、カソード側及びアノード側のガス拡散層として、カーボン粉末と撥水材(例えばポリテトラフルオロエチレン)とからなる層(厚み80μm)を用意し、これらを所定の面圧にて圧着することでガス拡散層を作製した。なお、ガス拡散層の電気伝導度を、セル組み付け時面圧下において直流2端子法により測定したところ、100(S/m)であった。
更に、セパレータとして、リブ幅W
R0.7mm、チャネル幅W
C0.7mm、S
C=0.5としたステンレス(SUS)製セパレータを作製した。
これらを用いて、
図4に示すような燃料電池を作製し、本例の燃料電池を得た。
【0081】
(実施例3)
セパレータとして、リブ幅W
R0.7mm、チャネル幅W
C1.8mm、S
C=0.72としたステンレス(SUS)製セパレータを作製し、これらを用いて、
図4に示すような燃料電池を作製したこと以外は実施例2と同様の操作を繰り返し、本例の燃料電池を得た。
【0082】
(実施例4)
セパレータとして、リブ幅W
R0.5mm、チャネル幅W
C3.8mm、S
C<0.9としたステンレス(SUS)製セパレータを作製し、これらを用いて、
図4に示すような燃料電池を作製したこと以外は実施例2と同様の操作を繰り返し、本例の燃料電池を得た。
【0083】
(実施例5)
セパレータとして、リブ幅W
R0.2mm、チャネル幅W
C1.7mm、S
C<0.9としたステンレス(SUS)製セパレータを作製し、これらを用いて、
図4に示すような燃料電池を作製したこと以外は実施例2と同様の操作を繰り返し、本例の燃料電池を得た。
【0084】
[性能評価]
上記各例の燃料電池を用いて、下記条件において、その性能を評価した。具体的には、電子負荷装置を用いて、車両定格電流における電圧を計測し、車両定格電圧にて規格化した。得られた結果を
図14に示す。また、ミリオームハイテスタを用いて抵抗を計測し、比較例1の抵抗で規格化した。得られた結果を
図22に示す。
<評価条件>
・ガス成分 :水素(アノード側)/空気(カソード側)
・セル温度 :80℃
・R.H.(相対湿度) :100%RH
【0085】
本発明の範囲に属する実施例1は、本発明外の比較例1や比較例2と比較して、
図14より、定格電圧で規格化した値が高く1以上である、つまり、(S
C≧55(t−103)
2/1000000+0.3)を満足するもので定格電流における性能が高い。なお、
図14より、比較例1、比較例2はこの条件を満足しない。また、本発明の範囲に属する実施例1は、
図22より比較例1の抵抗で規格化した抵抗が1よりも小さいことから、抵抗が低減していることが分かる。これは、セパレータのリブ下への酸素拡散を確保しつつ、薄層化による酸素輸送距離低減及び電子抵抗を低減したため、薄層化によるリブ下への酸素輸送抵抗増大の影響を抑え、更に酸素輸送距離低減による濃度分極低減及びオーム損低減により性能が向上したためと考えられる。また、基材として金属エッチングプレートを用いたことにより、導電性が向上したためとも考えられる。更に、金属エッチングプレートの空孔に、ガス拡散層下地層形成用スラリの一部が浸入し、フラッディング耐性が向上したためとも考えられる。
更にまた、ガス拡散層と膜電極接合体及びセパレータとを所定の圧力でホットプレスによって、圧着したため、電子抵抗が低減され、性能が向上したとも考えられる。
【0086】
また、本発明の範囲に属する実施例2〜実施例5についても、(S
C≧55(t−103)
2/1000000+0.3)を満足するもので定格電流における性能が高い。更に、上記説明したように、式(2)を満足する構成としているため、より高い性能を発現し得る。
【0087】
更に、電気伝導度は等方性を有するが、上記説明したように、式(2)においてガス拡散律速方向であるリブ幅方向の電気伝導度(σ
inplane)を適用することよって、より確実に高い性能を発現し得る。
【0088】
また、セパレータにおけるガス流れ方向に対してほぼ垂直な断面におけるチャネル形状が矩形形状でない場合であっても、上記説明したように、式(2)においてガス拡散律速方向であるリブとガス拡散層とが接する部分のリブ幅(W
Rcontact)を適用し、チャネル幅(W
C)としてチャネルとガス拡散層が対峙する部分のチャネル幅(W
Cchannel)を適用することによって、より確実に高い性能を発現し得る。
【0089】
更に、ガス拡散層が厚み方向に積層されたn層構造を有する場合であっても、上記説明したように、式(2)において式(3)より算出される電気伝導度(σ
layered)を適用することによって、より確実に高い性能を発現し得る。
【0090】
また、ガス拡散層が厚み方向の面圧に対して感度を有する場合であっても、上記説明したように、式(2)において燃料電池を形成した状態での電気伝導度(σ
pressure)を適用することによって、より確実に高い性能を発現し得る。
【0091】
更に、上記セパレータにおけるガス流れ方向が一方向でない場合であっても、上記説明したように、セパレータにおけるガス流れ方向のうち最も割合が大きい方向を主流方向と規定し、式(2)において、主流方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ幅(W
Rmain)及びチャネル幅(W
Rmain)を適用することによって、より確実に高い性能を発現し得る。
【0092】
また、リブの厚さ方向に対してほぼ垂直な断面におけるリブ配置形状が点状又は島状配置形状である場合であっても、上記説明したように算出したリブ幅(W
Rmain)及びチャネル幅(W
Rmain)を適用することによって、より確実に高い性能を発現し得る。
【0093】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上述した各実施形態に記載した構成は、各実施形態毎に限定されるものではなく、例えば、セパレータやガス拡散層の構成の細部を変更したり、各実施形態の構成を上述した各実施形態以外の組み合わせにしたりすることができる。
また、例えば、実施例においては、セパレータとして、ガス流路が平行な直線状のものを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、サーペンタイン型のガス流路の場合であっても、S
Cを算出する式を上述したように適宜適用させることにより、本発明は適用可能である。