(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011840
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ティッシュボックスカバー
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20161006BHJP
B65D 5/72 20060101ALI20161006BHJP
B65D 5/32 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
B65D83/08 A
B65D5/72 Z
B65D5/32 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-27759(P2012-27759)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-151318(P2013-151318A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】504270426
【氏名又は名称】株式会社板野紙工
(72)【発明者】
【氏名】松本 一志
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
意匠登録第1231548(JP,S)
【文献】
特開2003−292058(JP,A)
【文献】
特開2001−130543(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0020977(US,A1)
【文献】
実開昭58−131897(JP,U)
【文献】
実開平5−3111(JP,U)
【文献】
特開2005−335758(JP,A)
【文献】
特開2005−1711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D83/08
B65D 5/00− 5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙などの板状部材を折り曲げて写実的な構造体を構成するティッシュボックスカバーにおいて、湾曲した折線のライン上に不規則的なカットを設け、
該不規則的なカットは、各カットの長さが不均一で、カットと隣近するカットされていない部分との長さも不均一であるカットであって、前記湾曲した折線の湾曲が強い部分に設けられたことを特徴とするティッシュボックスカバー。
【請求項2】
紙などの板状部材を折り曲げて写実的な構造体を構成するティッシュボックスカバーにおいて、2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線のライン上に不規則的なカットを設け、該不規則的なカットは、各カットの長さが不均一で、カットと隣近するカットされていない部分との長さも不均一であるカットであって、前記2本以上の折線のうち、一方の折線の他方の折線と交わる部分と、他方の折線の中央付近に設けられたことを特徴とするティッシュボックスカバー。
【請求項3】
前記写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、フロントバンパーを模した部分のライン上としたことを特徴とする請求項1記載のティッシュボックスカバー。
【請求項4】
前記写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアバンパーを模した部分のライン上としたことを特徴とする請求項1記載のティッシュボックスカバー。
【請求項5】
前記写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアフェンダーを模した部分のライン上としたことを特徴とする請求項2記載のティッシュボックスカバー。
【請求項6】
前記写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアピラーを模した部分のライン上としたことを特徴とする請求項2記載のティッシュボックスカバー。
【請求項7】
前記写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアハッチゲートを模した部分のライン上としたことを特徴とする請求項1記載のティッシュボックスカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙などの板状部材を折り曲げて構成するティッシュボックスカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、板状部材を折り曲げて乗り物などを模した構造体を構成するティッシュボックスカバーが提案されている。そんな中で、より実物に近い写実的な形状を再現することを追及していくと、湾曲した折線や
2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線を美しく折り曲げることが必要になる。
【0003】
ここで、谷折り部分などの直線的なものについては、美しく折り曲げるため、折線の上に規則的にカットが入れられている「リード罫」や、それより比較的細かい間隔で規則的にカットが入れられた「ミシン目」などが用いられていることがある。
【0004】
例えば、特許文献3においては、折り畳む時に生ずる紙の歪を折線の一部をミシン目切り線にて歪の発生を吸収して美しく折り畳むという折り曲げ構造が提案されている。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】意匠登録第1401691号
【特許文献2】意匠登録第1231548号
【特許文献3】特開2000−335590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、板状部材を折り曲げて構造体を構成するティッシュボックスカバーにおいて、湾曲した折線や、
2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線を折り曲げる際に、前記リード罫及び前記ミシン目を使用すると、逆にしわ等が発生して、美しく折り曲げることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、湾曲した折線や、
2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線を折り曲げる際の問題点を解決することを課題とし、外観を損ねることなく美しく折り曲げることができるティッシュボックスカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明のティッシュボックスカバーは、写実的な構造体を紙などの板状部材を折り曲げて構成するティッシュボックスカバーであって、湾曲した折線
のライン上
の湾曲が強い部分に不規則的なカットを設けたことを特徴とするものである。
ここで、「不規則的なカット」とは、前記リード罫及び前記ミシン目が規則的なカット等が構成されていることに対して、各カットの長さが不均一で、カットと隣近するカットされていない部分との長さも不均一であるカットのことをいい、それらが必要に応じてその都度決定されるカットのことを指す。
【0009】
第二の発明のティッシュボックスカバーは、写実的な構造体を紙などの板状部材を折り曲げて構成するティッシュボックスカバーであって、2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線のライン上の、一方の折線の他方の折線と交わる部分と、他方の折線の中央付近に不規則的なカットを設けたことを特徴とするものである。【0010】
第
三の発明では、第一の発明における写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、フロントバンパーを模した部分のライン上としたことを特徴とするものである。
【0011】
第
四の発明では、第一の発明における写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアバンパーを模した部分のライン上としたことを特徴とするものである。
【0012】
第
五の発明では、第
二の発明における写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアフェンダーを模した部分のライン上としたことを特徴とするものである。
【0013】
第
六の発明では、第
二の発明における写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアピラーを模した部分のライン上としたことを特徴とするものである。
【0014】
第
七の発明では、第一の発明における写実的な構造物を、自動車を模したものとして構成して、前記不規則的なカットを入れる部分を、リアハッチゲートを模した部分のライン上としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明では、不規則的なカットが、湾曲した折線や、
2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線のライン上に設けられているため、湾曲した折線や、
2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線があいまいに折れ曲がろうとすることを防ぎ、折れ曲がる方向や角度等を確定させることができる。これにより、板状部材を折り曲げる際のしわ等の発生を防ぎ、湾曲した折線や、
2本以上の折線が鋭角に交わる部分の折線を、外観を損ねることなく美しく折り曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施例を示し、ティッシュボックスカバーの前方から見た斜視図である。
【
図2】この発明の一使用例を示し、ティッシュボックスカバーの中にティッシュボックスを収納した状態を前方から見た斜視図である。
【
図3】この発明の一実施例を示し、ティッシュボックスカバーの後方から見た斜視図である。
【
図4】この発明の一実施例を示し、ティッシュボックスカバーの展開図である。
【
図5】この発明の一実施例を示し、ティッシュボックスカバーのフロントバンパーを模した部分付近の拡大図である。
【
図6】この発明の一実施例を示し、ティッシュボックスカバーのリアバンパーを模した部分付近の拡大図である。
【
図7】この発明の一実施例を示し、ティッシュボックスカバーのリアフェンダーを模した部分及びリアピラーを模した部分付近の拡大図である。
【
図8】この発明の一実施例を示し、Y−Z断面拡大図である。
【
図9】この発明の一実施例を示し、ティッシュボックスカバーのリアハッチゲートを模した部分付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
本実施形態は、
図1〜
図3に示すように、長尺矩形のティッシュボックスTBを内部に収容するティッシュボックスカバーMである。このティッシュボックスカバーMは自動車を写実的に模した構造となっている。このティッシュボックスカバーMの前部には、フロントバンパーを模した部分10が構成され、その上部にはボンネットを模した部分50、そのさらに上部にはフロントウインドーを模した部分60が構成される。そしてティッシュボックスカバーMの天部にはルーフを模した部分70が構成されている。さらに、その両側面側にはフロントピラーを模した部分80と隣接する形でフロントフェンダーを模した部分90が構成され、後部にはリアフェンダーを模した部分30Aが構成され、フロントフェンダーを模した部分90とリアフェンダーを模した部分30Aの間には、ドアウインドーを模した部分100が構成されている。また、フロントピラーを模した部分80の下部付近にはサイドミラーを模した部分110が構成されている。そして、後部下側には
図3に示すようにリアバンパーを模した部分20が構成され、その上側にはリアハッチゲートを模した部分40が構成されている。その両側にはリアピラーを模した部分30Bが構成されている。そして、これらすべてを支えるように4つのタイヤを模した部分120を、下部の4カ所に配置するように構成されている。
【0019】
このティッシュボックスカバーMは、
図4に示すようにまず、紙などの板状部材αに必要に応じて印刷加工がされ、その後、折線及びカットが入れられる。その後、前部形成部材1、天部・後部・左側面部形成部材2、右側面部形成部材3、底部形成部材4の掛合部A.B.Cを引っ掛け式で固定し、差込片D.E.F.G.H.I.J.Kをそれぞれ係止穴D’.E’.F’.G’.H’.I’.J’.K’にそれぞれ差し込み、さらに、サイドミラー形成部材5を折線に従って折り、サイドミラー係止穴イに差し込むことで、サイドミラー110を形成し、市販のティッシュボックスTBを収容可能なティッシュボックスカバーTを構成する。
その後、切取線ロに沿って上部封鎖部ハを切り取ることで、ティッシュペーパーTを1枚ずつ取り出すための、取出口ニを形成する。なお、ティッシュボックスを収容しない場合には、封鎖部ハを外さずに自動車形状の置物として使用することもできる。
【0020】
以下、本実施形態の特徴的な各部位について詳細に説明をする。
【0021】
図5に示すフロントバンパーを模した部分10のラインのうち上側のラインL1では、折線11の両端に折線11全体の約25%の長さのカットされてない部分11a.11aが設けられており、それに隣接して、折線11全体の約6%の長さの不規則的なカット11c.11cが設けられている。この不規則的なカット11c.11cを設けていない場合は、折り曲げる前の状態に戻ろうとする復元力が発生して、美しく折り曲げることができないが、この不規則的なカット11c.11cを設けていることで、復元力を軽減させ、湾曲した折線を美しく折り曲げることができて、フロントバンパーの丸みを帯びた形状を写実的に表現することが可能となる。
【0022】
図6に示すリアバンパーを模した部分20のラインのうち下側のラインL2では、折線21の両端に折線21全体の約26%の長さのカットされてない部分21a.21aが設けられており、それに隣接して、折線21全体の約19%の長さの不規則的なカット21c.21cが設けられている。また、上側のラインL3では、折線22の両端に折線22全体の約17%の長さのカットされてない部分22a.22aが設けられており、それに隣接して、折線22全体の約9%の長さの不規則的なカット22c.22cが設けられている。前記フロントバンパーを模した部分10に設けられた不規則的なカット11c11cと同様に、この不規則的なカット21c.21c.22c.22cを設けていない場合は、折り曲げる前の状態に戻ろうとする復元力が発生して、美しく折り曲げることができないが、この不規則的なカット21c.21c.22c.22cが設けられていることで、復元力を軽減させ、湾曲した折線を美しく折り曲げることができて、リアバンパーのくの字型形状を写実的に表現することが可能となる。
【0023】
図7、
図8に示すリアフェンダーを模した部分30A及びリアピラーを模した部分30BのラインL4.L5.L6において、ラインL4とラインL5は鋭角βで、ラインL5とラインL6は鋭角θでそれぞれ交差している。折線31には交点34から折線31全体の約48%のカットされていない部分31aが設けられており、それに隣接して、折線31の全体の約28%の長さの不規則的なカット31cが設けられている。また、折線32には交点34から折線32全体の約15%のカットされていない部分32aが設けられており、それに隣接して、折線32の全体の約30%の長さの不規則的なカット32cが設けられている。また、折線33には交点35から折線33の全体の約30%の長さの不規則的なカット33cが設けられており、それに隣接して、折線33全体の約19%のカットされていない部分33aが設けられている。この不規則的なカット31c.32c.33cがない場合は、折線同士が交わっているため、交点部分にしわ等が発生して、それによって折り曲げる前の状態に戻ろうとする強い復元力が発生して折線が美しく折り曲げることができない。しかし、この不規則的なカット31c.32c.33cが設けられていることで、交点部分のしわ等の発生を防止することで復元力を軽減させ、少なくとも2本以上の折線が交わる部分の折線を美しく折り曲げることができて、リアフェンダー及びリアピラーの特殊な形状を写実的に表現することが可能となる。
【0024】
図9に示すリアハッチゲートを模した部分40のラインL7では、折線41の両端に折線41全体の約38%の長さのカットされてない部分41a.41aが設けられており、それに隣接して、中央に折線41全体の約24%の長さの不規則的なカット41cが設けられている。前記フロントバンパーを模した部分10及び前記リアバンパーを模した部分20に設けられた不規則的なカット11c.11c.21c.21c.22c.22cと同様に、この不規則的なカット41cを設けていない場合は、折り曲げる前の状態に戻ろうとする復元力が発生して、美しく折り曲げることができないが、この不規則的なカット41cが設けられていることで、復元力を軽減させ、湾曲した折線を美しく折り曲げることができて、リアハッチゲートの湾曲した線を軸に角度が変わっている形状を写実的に表現することが可能となる。
【0025】
以上のように、写実的な自動車を紙などの板状部材を折り曲げて構成するこの実施形態のティッシュボックスカバーMは、湾曲した折線11.21.41や、
2本以上の折線が鋭角β.θに交わる部分の折線31.32.33のラインL1.L2.L3.L4.L5.L6.L7上に、不規則的なカット11c.11c.21c.21c.22c.22c.31c.32c.33c.41cが設けられているため、湾曲した折線11.21.41や、
2本以上の折線が鋭角β.θに交わる部分の折線31.32.33があいまいに折れ曲がろうとすることを防ぎ、折れ曲がる方向や角度等を確定させることができる。これにより、板状部材αを折り曲げる際のしわ等の発生を防ぎ、湾曲した折線11.21.41や、少なくとも2本以上の折線が鋭角β.θに交わる部分の折線31.32.33を、外観を損ねることなく、美しく折り曲げることができる。
その結果、板状部材αを折り曲げて構成するティッシュボックスカバーMにおいて、複雑な構造や特殊な構造を写実的に表現することが可能となる。
【0026】
また、他の実施形態では、ティッシュボックスカバーは電車を写実的に模すことが考えられる。この場合、不規則的なカットは、フロントノウズを模した部分に設けることが考えられる。このように、不規則的なカットを設けることによりフロントノウズの丸みを帯びた形状を写実的に表現することが可能となる。
【0027】
さらに、ティッシュボックスカバーは船を写実的に模すことが考えられる。この場合、不規則的なカットは、船首部を模した部分に設けることが考えられる。このように、不規則的なカットを設けることにより船首部の上下方向に反った形状を写実的に表現することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 前部形成部材
2 天部・後部・左側面部形成部材
3 右側面部形成部材
4 底部形成部材
5 サイドミラー形成部材
A 掛合部
B 掛合部
C 掛合部
D 差込片
D’ 係止穴
E 差込片
E’ 係止穴
F 差込片
F’ 係止穴
G 差込片
G’ 係止穴
H 差込片
H’ 係止穴
I 差込片
I’ 係止穴
J 差込片
J’ 係止穴
K 差込片
K’ 係止穴
T ティッシュペーパー
TB ティッシュボックス
M ティッシュボックスカバー
α 板状部材
β 鋭角
θ 鋭角
L1 ライン
L2 ライン
L3 ライン
L4 ライン
L5 ライン
L6 ライン
L7 ライン
イ サイドミラー係止穴
ロ 切取線
ハ 封鎖部
二 取出口
10 フロントバンパーを模した部分
11 湾曲した折線
11a カットされていない部分
11c 不規則的なカット
20 リアバンパーを模した部分
21 湾曲した折線
21a カットされていない部分
21c 不規則的なカット
22 湾曲した罫線
22a カットされていない部分
22c 不規則的なカット
30A リアフェンダーを模した部分
30B リアピラーを模した部分
31 折線
31a カットされていない部分
31c 不規則的なカット
32 折線
32a カットされていない部分
32c 不規則的なカット
33 折線
33a カットされていない部分
33c 不規則的なカット
34 交点
35 交点
40 リアハッチゲートを模した部分
41 湾曲した折線
41a カットされていない部分
41c 不規則的なカット
50 ボンネットを模した部分
60 フロントウインドーを模した部分
70 ルーフを模した部分
80 フロントピラーを模した部分
90 フロントフェンダーを模した部分
100 ドアウインドーを模した部分
110 サイドミラーを模した部分
120 タイヤを模した部分