特許第6011871号(P6011871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011871
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】金属平板部材の接合構造
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20161006BHJP
   B21D 28/10 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B21D39/03 B
   B21D28/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-89108(P2013-89108)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-210284(P2014-210284A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中村 有延
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 道生
(72)【発明者】
【氏名】難波 巌
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−035279(JP,A)
【文献】 実開昭62−010921(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02072059(GB,A)
【文献】 独国特許出願公開第19822772(DE,A1)
【文献】 特開2010−201458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/03
B21D 28/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通部材を構成する2つの金属平板部材の重ね合せ部分を接合する金属平板部材の接合構造であって、
前記重ね合せ部分が、メカニカルクリンチにより形成された接合部により接合されており、
前記接合部は、前記重ね合せ部分の一部が下方に向かって押圧変形されたものであり、一方の前記金属平板部材に突設された有底筒部が他方の前記金属平板部材に突設された有底筒部の内部に嵌め入れられた状態で、一方の前記有底筒部の底部側に拡径されて設けられた係合凸部が他方の前記有底筒部の底部側に拡径されて設けられた係合凹部に密接して接合されたものである一方、
前記2つの金属平板部材のうち少なくとも1つの前記金属平板部材には、前記接合部の突出方向と同じ方向に突出して前記2つの金属平板部材のうちの別の1つの前記金属平板部材に係合する回転防止突部が設けられており、
前記回転防止突部が、前記2つの金属平板部材の前記重ね合せ部分を外れた部分において、前記一方の金属平板部材に突設されて前記他方の金属平板部材の周縁部に係合している
ことを特徴とする金属平板部材の接合構造。
【請求項2】
前記回転防止突部が、平面視で非円形状を有して突出している請求項に記載の金属平板部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属平板部材の接合構造であって、特に、メカニカルクリンチを用いた接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の電気接続箱等に用いられる導通部材として、金属平板をプレス打ち抜き加工して形成したバスバーやタブ端子等が広く採用されており、これら金属平板部材を適所で接合することにより、種々の形状の通電回路が構成されるようになっている。
【0003】
ところで、このような金属平板部材同士の接合構造としては、それらの間に中継端子を介して接合する方法もあるが、部品点数の削減や構造の簡素化等の目的から、一方の金属平板部材(バスバー)に対して、他方の金属平板部材(タブ端子)を加締め固定する構造が、特開2000−350335号公報(特許文献1)に提案されている。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の構造では、バスバーにタブ端子を重ね合せて、タブ端子の基端部の一部をバスバー本体側に押し込んで加締めているだけであるので、例えば、電気接続箱などへの組付け時に、タブ端子が周囲の部材と干渉して回転方向の荷重が加わった際には、タブ端子が変位したり外れてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、特開2009−208103号公報(特許文献2)に記載のように、金属平板部材の重ね合せ面間に微粒子状固形物入りの接着剤を介在させ、金属平板部材の重ね合せ部分を、ダイを背当てにしてポンチにより局部的に押し込むメカニカルクリンチにより接合する構造も提案されている。これによれば、メカニカルクリンチにより全体の接合強度の向上を図ることができると共に、微粒子状固形物が金属平板部材に食い込むことにより多数の機械的な係合部が構成されることから、回転方向の荷重に対しても十分な抗力を発揮して回転を阻止することができるのである。
【0006】
しかしながら、金属平板部材の重ね合せ面間に微粒子状固形物入りの接着剤を介在させることは、製造工程が煩雑になりコストアップに繋がるという問題を内在しており、構造の簡素化と接合強度の向上を両立し得る接合構造が望まれていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−350335号公報
【特許文献2】特開2009−208103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、簡単な構造で金属平板部材間の接合強度の向上を図ることができる、新規な金属平板部材の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明の第一の態様は、導通部材を構成する2つの金属平板部材の重ね合せ部分を接合する金属平板部材の接合構造であって、前記重ね合せ部分が、メカニカルクリンチにより形成された接合部により接合されており、前記接合部は、前記重ね合せ部分の一部が下方に向かって押圧変形されたものであり、一方の前記金属平板部材に突設された有底筒部が他方の前記金属平板部材に突設された有底筒部の内部に嵌め入れられた状態で、一方の前記有底筒部の底部側に拡径されて設けられた係合凸部が他方の前記有底筒部の底部側に拡径されて設けられた係合凹部に密接して接合されたものである一方、前記2つの金属平板部材のうち少なくとも1つの前記金属平板部材には、前記接合部の突出方向と同じ方向に突出して前記2つの金属平板部材のうちの別の1つの前記金属平板部材に係合する回転防止突部が設けられており、前記回転防止突部が、前記2つの金属平板部材の前記重ね合せ部分を外れた部分において、前記一方の金属平板部材に突設されて前記他方の金属平板部材の周縁部に係合していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、メカニカルクリンチにより形成された接合部の突出方向と同じ方向に突出する回転防止突部が、少なくとも一方の金属平板部材に設けられていることから、金属平板部材の接合部に対して回転方向の荷重が加わった際には、当該回転防止突部が他方の金属平板部材へ係合することにより、回転が阻止される。これにより、接合部の上下方向のみならず回転方向の接合強度も安定して確保することができ、金属平板部材の接合強度の確実な向上を図ることができる。
【0012】
しかも、メカニカルクリンチによる接合部と同じ方向に突出する回転防止突部を設けるだけで、接合強度の向上を図ることが可能であることから、金属平板部材の重ね合せ面間に他部材を介在させる必要もなく、簡単なプレス加工等で接合強度の向上を図ることができるのである。これにより、構造の簡素化と接合強度の向上という相反する課題の両立を有利に図ることができるのである。
【0013】
なお、回転防止突部は、想定される回転方向の変位を阻止し得るものであれば何れでもよく、その形成箇所や形状、個数等は任意に設定が可能である
【0017】
さらに、本態様では、回転防止突部の形成部位として、金属平板部材の重ね合せ部分以外の領域に設けることができることから、重ね合せ部分の面積が小さい場合等にも、回転防止突部を有利に設けることができる。しかも、一方の金属平板部材に突設した回転防止突部が他方の金属平板部材の周縁部に係合していることから、金属平板部材の回転阻止力が確実に発揮され得る。
【0020】
本発明の第の態様は、前記第の態様に記載のものにおいて、前記回転防止突部が、平面視で非円形状を有して突出しているものである。
【0021】
本態様によれば、回転防止突部が、平面視で非円形状を有して突出されている。これにより、金属平板部材の接合部に対して、回転方向の荷重が加わった際に、回転防止突部の形成部位における一方の金属平板部材と他方の金属平板部材が干渉する。それ故、1つの回転防止突部を設けるだけで、周方向の全周に亘る回転防止効果が発揮される。よって、より一層安定した金属平板部材の回転阻止構造を設けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、メカニカルクリンチにより形成された接合部の突出方向と同じ方向に突出する回転防止突部が、少なくとも一方の金属平板部材に設けられていることから、回転防止突部が他方の金属平板部材へ係合することにより、回転が阻止される。これにより、回転方向の接合強度も安定して確保することができ、金属平板部材の接合強度の確実な向上を図ることができる。しかも、金属平板部材の重ね合せ面間に他部材を介在させる必要もなく、簡単なプレス加工等で接合強度の向上を図ることができることから、構造の簡素化と接合強度の向上という相反する課題の両立を有利に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態としての金属平板部材の接合構造を示す斜視図。
図2図1に示す金属平板部材の接合構造の平面図。
図3図2のIII−III断面拡大図。
図4図1に示す金属平板部材の接合構造のメカニカルクリンチによる接合工程を示す斜視図。
図5図4のV−V断面図。
図6】本発明の一実施形態の変形例1としての金属平板部材の接合構造を示す斜視図。
図7図6に示す金属平板部材の接合構造の平面図。
図8図7のVIII−VIII断面拡大図。
図9】本発明の一実施形態の変形例2としての金属平板部材の接合構造を示す斜視図。
図10図9に示す金属平板部材の接合構造の平面図。
図11図10のXI−XI断面拡大図。
図12】本発明の一実施形態の変形例3としての金属平板部材の接合構造を示す斜視図。
図13図12に示す金属平板部材の接合構造の平面図。
図14図13のXIV−XIV断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1〜5には、本発明の一実施形態に従う金属平板部材10の接合構造を用いて、2つの金属平板部材10の重ね合せ部分12を接合する構造が示されている。
【0026】
先ず、図1〜3に、本発明の一実施形態としての金属平板部材10の接合構造が示されている。金属平板部材10は、例えばバスバーやタブ端子等の導通部材として用いられており、従来公知の技術を用いて、例えば銅や銅合金等の金属板をプレス打ち抜きおよび屈曲加工等して形成されている。そして、金属平板部材10同士を適所で接合することにより、種々の形状の通電回路が構成されるようになっている。図1〜3に示されているように、2つの金属平板部材10は、上方に位置する一方の金属平板部材10aと、下方に位置する他方の金属平板部材10bから構成されている一方、2つの金属平板部材10a,10bが互いに直交する方向に重ね合わされている。そして、その重ね合せ部分12が、メカニカルクリンチにより形成された接合部16により接合されるようになっている。なお、以下の説明において、上方とは、図3中の上方、下方とは、図3中の下方を言うものとする。
【0027】
図1〜3に示されているように、2つの金属平板部材10a,10bの重ね合せ部分12の中央部には、円筒形状の接合部16が形成されている。接合部16は、2つの金属平板部材10a,10bが略同形状で下方に向かって円筒形状で突設された有底筒部18a,18bによって構成されている。そして、有底筒部18a,18bの底部20a,20bには、その外周縁部が斜め外方に向かって円環状に突出して環状突部22a,22bが設けられている。図3に示されているように、この環状突部22a,22bにより、一方の金属平板部材10aの有底筒部18aの外径が底部20a側において拡げられて円環状の係合凸部24が構成されている一方、他方の金属平板部材10bの有底筒部18bの内径が底部20b側において拡げられて円環状の係合凹部26が構成されている。そして、係合凸部24と係合凹部26の嵌合により、2つの金属平板部材10a,10bが接合されるようになっている。
【0028】
また、上方に位置する一方の金属平板部材10aの重ね合せ部分12を外れた部分には、接合部16の突出方向と同じく下方に向って、平面視で非円形状である半円形状を有して半ドーム状に部分球殻形状で突出して、回転防止突部28が設けられている。回転防止突部28は、ドーム形状の突出端面30において、下方に位置する他方の金属平板部材10bの周縁部32に係合するようになっている。
【0029】
次に、図1〜3に示されているような金属平板部材10の接合構造を実現する方法について、図4〜5を用いて、説明する。まず、接合部16を形成するための接合部形成用ポンチ34と接合部形成用ダイ36、および、回転防止突部28を形成するための回転防止突部形成用ポンチ38と回転防止突部形成用ダイ40、を用意する。接合部形成用ポンチ34は、円柱形状を有しており、先端部42が基端部44に比べて小径とされている。また、接合部形成用ポンチ34の先端面46は、略平坦形状となっている。一方、接合部形成用ダイ36は、円柱形状を有しており、先端面48に凹所50が形成されている。凹所50は、上方に開口する略有底円筒形状とされており、底面52の中心部が略平坦形状とされている一方、底面52の外周縁部に環状溝54が形成されている。そして、凹所50の内径は、2つの金属平板部材10の厚さを考慮して、接合部形成用ポンチ34の先端部42の外径よりやや大きい所定の大きさに形成されている。
【0030】
回転防止突部形成用ポンチ38は、基端部56が円柱形状、先端部58が略半円錐形状を有している一方、先端が半ドーム形状とされている。一方、回転防止突部形成用ダイ40は、円柱形状を有しており、先端面60に凹所62が形成されている。凹所62は、基端側に向かって突出する半ドーム形状とされている。
【0031】
そして、メカニカルクリンチにより接合部16を形成するに際しては、まず、図5に示されているように、接合部形成用ダイ36を、下方に位置する他方の金属平板部材10bの底面64に当接させて位置固定する。この状態で接合部形成用ポンチ34の先端部42を、接合部形成用ダイ36の凹所50に向かって移動させることにより、図5に示されているように、2つの金属平板部材10a,10bがその重ね合せ部分12において、局部的に接合部形成用ダイ36の凹所50内に張出し、有底筒部18a,18bを形成する。有底筒部18a,18bは、接合部形成用ダイ36の凹所50の底面52に到達するまでは有底筒体形状を維持し、その後、さらに接合部形成用ポンチ34が前進すると、接合部形成用ダイ36の凹所50内で横方向に広がる。そして、遂には塑性流動を起こして環状溝54を含む凹所50内に材料が満たされることにより、図3に示されているように、一方の金属平板部材10aに円環状の係合凸部24が構成される一方、他方の金属平板部材10bに円環状の係合凹部26が構成されるのである。そして、係合凸部24と係合凹部26の嵌合により、2つの金属平板部材10a,10bが接合されるのである。
【0032】
さらに、メカニカルクリンチにより接合部16を形成するのと同時に、押出加工より回転防止突部28を形成するに際しては、まず、図5に示されているように、回転防止突部形成用ダイ40を、下方に位置する他方の金属平板部材10bの底面64に当接させて周縁部32に位置固定する。この状態で回転防止突部形成用ポンチ38の先端部58を、回転防止突部形成用ダイ40の凹所62に向かって移動させて押出加工を行う。これにより、図5に示されているように、上方に位置する一方の金属平板部材10aがその重ね合せ部分12を外れた部分において、下方に向って半ドーム形状で突出して、回転防止突部28が形成されるのである。
【0033】
上述の如き本実施形態の金属平板部材10の接合構造によれば、メカニカルクリンチにより形成された接合部16の突出方向と同じ方向(図3〜5中、下方)に突出する回転防止突部28が、上方に位置する一方の金属平板部材10aに設けられている。これにより、金属平板部材10a,10bの接合部16に対して回転方向の荷重が加わった際に、回転防止突部28が下方に位置する他方の金属平板部材10bの周縁部32に係合することにより、回転を阻止することができる。これにより、接合部16の上下方向のみならず回転方向の接合強度も安定して確保することができ、金属平板部材10a,10bの接合強度の確実な向上を図ることができるのである。また、回転防止突部28の形成部位が、金属平板部材10a,10bの重ね合せ部分12以外の領域に設けられていることから、重ね合せ部分12の面積が小さい場合等にも、回転防止突部28を有利に設けることができるのである。
【0034】
しかも、メカニカルクリンチにより形成された接合部16と同じ方向に突出する回転防止突部28を設けるだけで、接合強度の向上を図ることが可能であることから、従来の如き金属平板部材の重ね合せ面間に他部材を介在させる必要もなく、簡単なプレス加工等で接合強度の向上を図ることができる。これにより、構造の簡素化と接合強度の向上という相反する課題の両立を有利に図ることができるのである。
【0035】
加えて、回転防止突部28が、メカニカルクリンチと同時に実施される押出加工によって形成されていることから、作業時間短縮によるコスト低減や作業性の改善を有利に実現することができる。
【0036】
次に、図6〜8に、本実施形態の変形例1としての金属平板部材10の接合構造が示されている。図6〜8に示されているように、本実施形態においては、回転防止突部70は、上方に位置する一方の金属平板部材10aの重ね合せ部分12を外れた部分から下方に向かって、平面視で円形状を有してドーム状に部分球殻形状で突出しており、下方に位置する他方の金属平板部材10bの周縁部32に係合するようになっている。これにより、金属平板部材10の回転阻止力が確実に発揮され得るようになっているのである。要するに、回転防止突部70の形状は、下方に位置する他方の金属平板部材10bの周縁部32に係合し得る形状であれば、何れでもよく、今回例示した円形状に限定されず、前実施形態で例示したような半円形状、あるいは多角形状や楕円形状等の非円形状も採用可能である。その他、回転防止突部の形成位置や個数などについても、阻止したい回転方向や要求される回転阻止力等に応じて任意に設定可能である。
【0037】
また、図9〜11には、本実施形態の変形例2としての金属平板部材10の接合構造が示されている。図9〜11に示されているように、本実施形態においては、回転防止突部80は、2つの金属平板部材10a,10bの重ね合せ部分12において、接合部16と非同軸となる位置に突設されている。回転防止突部80は、その形成部位において、2つの金属平板部材10a,10b両方が、下方に向かって平面視で半円形状を有して半ドーム形状で突出している。すなわち、重ね合せ部分12に設けた回転防止突部80が平面視で非円形状とされていることから、金属平板部材10a,10bが相互に回転変位しようとした際に、回転防止突部80の形成部位において、金属平板部材10a,10bが相互に干渉して、回転防止突部80の周方向の全周に亘る回転防止効果が発揮されるのである。それ故、1つの回転防止突部80を設けるだけで、回転防止効果が安定して有利に発揮され、一層効率的に金属平板部材10の回転阻止構造を設けることができるのである。
【0038】
さらに、図12〜14には、本実施形態の変形例3としての金属平板部材10の接合構造が示されている。図12〜14に示されているように、本実施形態においても、回転防止突部90は、2つの金属平板部材10a,10bの重ね合せ部分12において、接合部16と非同軸となる位置に突設されている。回転防止突部90の形成部位において、2つの金属平板部材10a,10b両方は、下方に向かって平面視で円形状を有してドーム形状で突出している。本実施形態では、回転防止突部90は平面視で円形状を有しているが、接合部16と非同軸となる位置に設けられていることから、接合部16に回転方向の荷重が加わった際には、回転防止突部90の形成部位において金属平板部材10a,10bが相互に干渉することとなる。それ故、1つの回転防止突部90を設けるだけで、回転防止効果が有利に発揮され得る。
【0039】
なお、金属平板部材10a,10bの重ね合せ部分12に設けられる回転防止突部80,90の形状は、2つの金属平板部材10a,10b同士が係合し得る形状であれば、何れでもよく、例示した半円形状や円形状の他、多角形状や楕円形状も採用可能である。その他、回転防止突部80,90の形成位置や個数などについても、阻止したい回転方向や要求される回転阻止力等に応じて任意に設定可能である。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0041】
例えば、本実施形態においては、回転防止突部28は、メカニカルクリンチと同時に実施される押出加工によって形成されていたが、必ずしも同時加工に限定するものではなく、例えば一方の金属平板部材10aに事前に回転防止突部28をプレス加工等により形成するようにしてもよい。
【0042】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10:金属平板部材、10a:一方の金属平板部材、10b:他方の金属平板部材、12:重ね合せ部分、16:接合部、24:係合凸部、26:係合凹部、28,70,80,90:回転防止突部、32:周縁部
図1
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図3
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