特許第6011873号(P6011873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011873
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】物質導入方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/42 20060101AFI20161006BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20161006BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C12M1/42
   C12Q1/02
   C12N15/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-120148(P2013-120148)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-236679(P2014-236679A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】河野 晋
(72)【発明者】
【氏名】冨永 伸明
(72)【発明者】
【氏名】山口 明美
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−516678(JP,A)
【文献】 特表2007−500501(JP,A)
【文献】 特開平01−141584(JP,A)
【文献】 特表2007−535943(JP,A)
【文献】 電気学会研究会資料,2012年 3月 8日,p.5-8
【文献】 Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry,2010年,Vol.74, No.6,p.1279-1282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12Q 1/00−1/70
C12N 1/00−15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
Pubmed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象細胞の内部に導入物質を導入する物質導入方法において、
正負に極性が変化する間に一定電位値レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルスを、導入物質を含有する溶液中に浸漬された対象細胞に対して、印加するバーストパルス印加工程と、
前記バーストパルス印加工程による印加後、前記対象細胞に対して、前記バーストパルスを構成する基準パルスよりも高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、1オン時間分印加する高電圧パルス印加工程とを含むことを特徴とする
物質導入方法。
【請求項2】
請求項1に記載の物質導入方法において、
前記バーストパルスを構成する基準パルスが、正負極性間で異なる波高値を有することを特徴とする
物質導入方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の物質導入方法において、
前記バーストパルスを構成する基準パルスが、正負極性間で異なるデューティ比を有することを特徴とする
物質導入方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の物質導入方法において、
前記バーストパルスが、各基準パルスの印加電荷量を順次減衰させて構成されることを特徴とする
物質導入方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の物質導入方法において、
前記高電圧パルスが、前記バーストパルスを構成する各正負の基準パルスのうち、印加電荷量の少ない極性の側と同極性で印加することを特徴とする
物質導入方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の物質導入方法において、
前記バーストパルスを構成する基準パルスが、マイクロ秒オーダーのオン時間、且つ数十〜数百Vオーダーの印加電圧を有し、
前記高電圧パルスが、ナノ秒オーダーのオン時間、且つkVオーダーの印加電圧を有することを特徴とする
物質導入方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の物質導入方法において、
前記バーストパルスを構成する各正負の基準パルスの印加電荷量が、各正負間で10:1〜1:10の比率を有することを特徴とする
物質導入方法。
【請求項8】
対象細胞の内部に導入物質を導入する物質導入装置において、
前記導入物質を含有する溶液及び前記対象細胞を収容する収容手段と、
前記収容手段の周囲に配設される一対の対向電極と、
前記対向電極間に印加する電圧を生成する直流電流を供給する直流電源と、
前記直流電源から供給される直流電流に基づいて、正負に極性が変化する間に一定電位値レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルス、及び、前記バーストパルスを構成する基準パルスよりも高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、前記対象細胞に対して印加する制御を行うパルス制御手段とを備えることを特徴とする
物質導入装置。
【請求項9】
請求項8に記載の物質導入装置において、
前記パルス制御手段が、
前記バーストパルスを生成するバーストパルス生成部と、
前記高電圧パルスを生成する高電圧パルス生成部と、
前記バーストパルス及び前記高電圧パルスを印加するタイミングを調整するタイミング調整部を備えることを特徴とする
物質導入装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の物質導入装置において、
前記対向電極の少なくとも一方が、他の電極と対向する側に、ピン形状又はレール形状の突起物を備えることを特徴とする
物質導入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象細胞内部への導入物質の導入方法に関し、特に、電場を用いた導入物質の導入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体細胞に導入物質を導入する技術のニーズは高まっている。例えば、化学物質の生体影響評価を目的としてメダカ等の受精卵へ被検物質を導入することや、遺伝子治療の実験として動物の生体細胞に遺伝子を導入すること等、その応用は医薬分野からバイオ分野まで多岐に渡っている。このような導入物質の導入技術としては、従来からマイクロインジェクション法が知られている。マイクロインジェクション法は、ガラス針を対象細胞に突き刺して導入物質の導入を行う方法であるが、その操作上、物理的な力を加えることから、対象細胞に負荷をかけることや対象細胞を破壊する場合が生じ得る。
【0003】
このような問題を解決する方法として、電気的な力を用いることによって、対象細胞内に対象物質を導入することが提案されている。例えば、電極間に電気パルスを印加して電場を形成し、当該電場により導入物質の電気泳動が誘引されることによって、導入物質を対象細胞内に導入する方法がある(特許文献1参照)。また、細胞内に薬剤を導入するための電気穿孔法(エレクトロポレーション)として、方形波パルスや指数波パルス等の電界パルスを印加して、細胞内に薬剤を導入する方法(特許文献2参照)や、ポリヌクレオチドを植物細胞に導入することによって、遺伝的に改変された植物を生産する方法も開示されている(特許文献3参照)。また、生体内電気穿孔療法(EPT法)として、低電圧長パルス長を利用して細胞を死滅させる方法も開示されている(特許文献4参照)。
【0004】
さらに、本発明者らも、これまで主にメダカの受精卵に対して、電気パルスを印加する電気穿孔法により、対象物質の導入を試みている。例えば、電気パルスによるメダカ卵への物質導入における分子量と導入効率についての関連性の調査(非特許文献1)や、当該印加する電気パルスについて、パルス幅50〜300nsの電気パルスを用いること(非特許文献2)や、パルス幅15ns、電圧値6kVの電気パルスを用いること(非特許文献3)や、高電界矩形波パルスを用いること(非特許文献4、5)を開示している。また、2種類の電気パルスを連続して印加する方法も開示しており(非特許文献6、7)、このうち、パルス幅が100ナノ秒の高電圧矩形波パルスの印加と、2パルス分の低電圧減衰波パルスの印加を組み合わせる構成も開示している(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−041023号広報
【特許文献2】特表2001−517998号広報
【特許文献3】特表平11−511974号広報
【特許文献4】特表2000−503586号広報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山口明美、今村泰隆、河野晋、冨永伸明著「高電界パルスによるメダカ卵への物質導入;分子量と導入効率についての検討」電気関係学会九州支部連合大会講演論文集(CD-ROM)、2011年9月16日、Vol.64th Page.ROMBUNNO.04-1P-16
【非特許文献2】NAKAMITSU S., KANG D.K., YAMANAKA M., HOSSEINIS.H.R.,SHIRAISHI E., SAKUGAWA T., KATSUKI S., AKIYAMA H., KONO S., TOMINAGA N. 著「パルス電界印加後のOryziaslatipes(メダカ)の胚発生」電気学会パルスパワー研究会資料、2009.年10月23日、Vol.PPT-09 No.102-107 Page.27-31
【非特許文献3】田邉貴志、山口明美、冨永伸明、河野晋著「ナノ秒パルスパワ-を用いたメダカ卵への高効率物質導入に関する基礎研究」電気学会パルスパワー研究会資料、2010年1月7日、Vol.PPT-10 No.1-10 Page.1-5
【非特許文献4】中嶋楓、山口明美、田邊貴志、河野晋、冨永伸明著「極短高電界パルスを用いたメダカの卵への物質導入」日本農芸化学会西日本支部大会およびシンポジウム講演要旨集、2010年9月17日、Vol.2010 Page.38
【非特許文献5】山口明美、河野晋、田邉貴志、冨永伸明著「異なる高電界矩形波パルスによるメダカ受精卵への物質導入について」電気学会全国大会講演論文集、2011年3月5日、Vol.2011 No.1 Page.239
【非特許文献6】河野晋、山口明美、冨永伸明著「メダカ卵内への化学物質導入量の増加を目的とした2種類の電圧パルスの連続印加実験」電気学会基礎・材料・共通部門大会講演論文集(CD-ROM)、2011年9月21日、Vol.2011 Page.ROMBUNNO.B-7
【非特許文献7】河野晋、山口明美、田邉貴志、冨永伸明著「異なる2種類のパルス電圧の連続印可によるメダカ受精卵への物質導入」電気学会全国大会講演論文集、2011年3月5日、Vol.2011 No.1 Page.240
【非特許文献8】久保貴博、山口明美、今村泰隆、冨永伸明、河野晋著「パルスパワ-を用いたメダカ受精卵への物質導入実験におけるパラメ-タの検討」電気学会パルスパワー研究会資料、2012年3月8日、Vol.PPT-12 No.1-4.6-8 Page.5-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の電気的な力を利用する物質導入方法では、電圧印加の際に最適となり得る様々な電圧値や印加方法が模索されているものの、依然として、電圧印加に伴って対象細胞に及ぶ電気的ダメージが大きく、対象細胞自体が損傷を受けてしまい、電圧によっては、対象細胞(例えば、受精卵等の生体細胞等)自体を破壊してしまうという課題がある。また、上記非特許文献3に示されているように、2種類の異なる電圧印加を組み合わせるという構成も提案されているが、対象細胞に物質を導入することに対する顕著な効果は確認されていない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、電気穿孔法を用いて、電気的ダメージを抑制して導入物質を対象細胞に導入する物質導入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示する物質導入方法は、対象細胞(例えば、受精卵等の生体細胞等)の内部に導入物質を導入する物質導入方法において、正負に極性が変化する間に一定電位値レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルスを、導入物質を含有する溶液中に浸漬された対象細胞(例えば、受精卵等の生体細胞等)に対して、印加するバーストパルス印加工程と、前記バーストパルス印加工程による印加後、前記対象細胞に対して、前記バーストパルスよりも高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、1オン時間分印加する高電圧パルス印加工程を含むものである。
【0010】
このように、本願に開示する物質導入方法は、正負に極性が変化する間に一定電位値レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルスを、導入物質を含有する溶液中に浸漬された対象細胞に対して、印加した後、前記対象細胞に対して、前記バーストパルスを構成する基準パルスよりも高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、1オン時間分印加することから、非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルス(非対称バーストパルス)によって、対象細胞(例えば、受精卵の対象生体等)の外膜(例えば、卵膜や細胞膜等)に対して、正負極のいずれか一方に極性が偏った電荷が連続してチャージされることがないため、電気的なダメージを抑制しつつ、一方で、溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動させられることで、導入物質が導入され易い状況が形成されることとなり、当該状況下において、高電圧パルスが短時間印加されることによって、対象細胞(例えば、受精卵の対象生体等)の外膜(例えば、卵膜や細胞膜等)に一時的な穴を形成し、その影響を最小限に抑えることで外膜内にある組織等を損傷することなく、導入物質を対象細胞(例えば、受精卵の対象生体等)の内部に導入することができる。
【0011】
本願に開示する物質導入方法は、必要に応じて、前記バーストパルスを構成する基準パルスが、正負極性間で異なる波高値を有するものである。このように、本願に開示する物質導入方法は、正負極性間における波高値の違いにより、前記対象細胞に印加されるパルスの強度を、経時的に交互に変えることから、外膜にチャージされる電荷量を調整することで電気的ダメージを抑制しつつ、一方で、溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動させることで、導入物質がさらに導入され易い状況が形成されることとなり、当該状況下において、高電圧パルスが短時間印加されることによって、対象細胞を損傷することなく、さらに大量の導入物質を一気に対象細胞に導入することができる。
【0012】
本願に開示する物質導入方法は、必要に応じて、前記バーストパルスを構成する基準パルスが、正負極性間で異なるデューティ比を有するものである。このように、本願に開示する物質導入方法は、正負極性間におけるデューティ比の違いにより、前記対象細胞に印加されるパルスの印加タイミングが、経時的に交互に変わることから、外膜にチャージされる電荷量を調整することで電気的ダメージを抑制しつつ、一方で、溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動させることで、導入物質がさらに導入され易い状況が形成されることとなり、当該状況下において、高電圧パルスが短時間印加されることによって、対象細胞を損傷することなく、さらに大量の導入物質を一気に対象細胞に導入することができる。
【0013】
本願に開示する物質導入方法は、必要に応じて、前記バーストパルスが、各基準パルスの印加電荷量を順次減衰させて構成されるものである。このように、本願に開示する物質導入方法は、後続する高電圧パルスが印加される直前には、前記バーストパルスの強度が、前記バーストパルス印加初期の基準パルスよりも小さくなることから、前記高電圧パルスと前記バーストパルスの波高値との差異が高められ、対象細胞に対して導入物質をより受け入れ易い状況が形成されることとなり、当該状況下で前記高電圧パルスが印加されることによって、対象細胞を損傷することなく、対象細胞に対してより多くの導入物質を導入することができる。
【0014】
本願に開示する物質導入方法は、必要に応じて、前記バーストパルスを構成する基準パルスが、マイクロ秒オーダーのオン時間、且つ数十〜数百Vオーダーの印加電圧を有し、前記高電圧パルスが、ナノ秒オーダーのオン時間、且つkVオーダーの印加電圧を有するものである。このように、本願に開示する物質導入方法は、マイクロ秒オーダーのオン時間、且つ数十〜数百Vオーダーの印加電圧を有し、前記高電圧パルスが、ナノ秒オーダーのオン時間、且つkVオーダーの印加電圧を有することから、当該バーストパルスと高電圧パルスの最適な組み合わせによって、前記バーストパルスにより効率よく溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動し、対象細胞が導入物質を受容しやすい状況が形成されることとなり、後続する前記高電圧パルスの印加によって、対象細胞を損傷することなく、より多くの導入物質を対象細胞の内部に導入することができる。
【0015】
本願に開示する物質導入方法は、必要に応じて、前記高電圧パルスが、前記バーストパルスを構成する各正負の基準パルスのうち、印加電荷量の少ない極性の側と同極性で印加するものである。このように、前記高電圧パルスが、前記バーストパルスにより対象細胞内にチャージされた電荷の極性と異なる極性で印加されることから、前記バーストパルスにより対象細胞にチャージされた電荷と同じ極性の電荷を前記高電圧パルスが重畳することに起因して対象細胞に余分なダメージを与えることが抑制されることとなり、当該高電圧パルスの印加によって、さらに対象細胞を損傷することなく、より多くの導入物質を対象細胞の内部に導入することができる。
【0016】
本願に開示する物質導入方法は、必要に応じて、前記バーストパルスを構成する各正負の基準パルスの印加電荷量が、各正負間で10:1〜1:10の比率を有するものである。このように、本願に開示する物質導入方法は、前記バーストパルスを構成する各正負の基準パルスの印加電荷量が、各正負間で10:1〜1:10の比率を有することから、外膜にチャージされる電荷量を調整することで電気的ダメージを抑制しつつ、一方で、溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動させることで、対象細胞が導入物質を受容しやすい最適な状況が形成され、後続する前記高電圧パルスの印加によって、対象細胞を損傷することなく、大量の導入物質を対象細胞の内部に導入することができる。
【0017】
本願に開示する物質導入装置は、対象細胞の内部に導入物質を導入する物質導入装置において、前記導入物質を含有する溶液及び前記対象細胞を収容する収容手段と、前記収容手段の周囲に配設される一対の対向電極と、前記対向電極間に印加する電圧を生成する直流電流を供給する直流電源と、前記直流電源から供給される直流電流に基づいて、正負に極性が変化する間に一定電位値レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルス、及び、前記バーストパルスを構成する基準パルスよりも高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、前記対象細胞に対して印加する制御を行うパルス制御手段とを備えるものである。
【0018】
このように、前記導入物質を含有する溶液及び前記対象細胞を収容する収容手段と、前記収容手段の周囲に配設される一対の対向電極と、前記対向電極間に印加する電圧を生成する直流電流を供給する直流電源と、前記直流電源から供給される直流電流に基づいて、正負に極性が変化する間に一定電位値レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルス、及び、前記バーストパルスを構成する基準パルスよりも高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、前記対象細胞に対して印加する制御を行うパルス制御手段とを備えることから、非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルスによって、対象細胞に対して、正負極のいずれか一方に極性が偏ったパルスが印加されることから、当該極性の偏りによって対象細胞の外膜にチャージされる電荷量を調整することで電気的ダメージを抑制しつつ、一方で、溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動させることで、対象細胞が導入物質を受容しやすい最適な状況が形成され、後続する前記高電圧パルスの印加によって、対象細胞を損傷することなく、大量の導入物質を対象細胞の内部に導入することができる。
【0019】
本願に開示する物質導入装置は、必要に応じて、前記対向電極の少なくとも一方が、他の電極と対向する側に、ピン形状又はレール形状の突起物を備えるものである。このように、本願に開示する物質導入装置は、前記対向電極の少なくとも一方が、他の電極と対向する側に、ピン形状又はレール形状の突起物を備えることから、当該突起物において放電位置の集中性(局所性)が高まることとなり、溶液中に浸漬された導入物質の集中性が高まり、また、対象細胞の外膜にチャージされる電荷量が調整されることによって、対象細胞を損傷することなく、一気に大量の導入物質を対象細胞の内部に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る物質導入装置の概要図、及び物質導入方法のフローチャートを示す。
図2】本発明の第1の実施形態に係る非対称なバーストパルスの波形例を示す。
図3】本発明の第1の実施形態に係る非対称なバーストパルス及び高電圧パルスの波形例、及び、本発明の第1の実施形態に係る物質導入装置の回路構成例を示す。
図4】本発明の第2の実施形態に係る物質導入装置の突起物の説明図を示す。
図5】本発明に係る物質導入装置を用いた物質導入の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る物質導入装置は、図1(a)に示すように、対象細胞100及び導入物質110を含有する溶液120を収容する収容手段21と、この収容手段21の周囲に配設される一対の対向電極22及び対向電極23と、この対向電極22及び対向電極23間に印加する電圧(後述のバーストパルス及び高電圧パルス)を生成(例えば、後述のバーストパルス生成部41及び高電圧パルス生成部42により生成)する直流電流を供給する直流電源3と、この直流電源3から供給される直流電流に基づいて、正負に極性が変化する間に一定電位値レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルス、及び、前記バーストパルスよりも高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、対象細胞100に対して印加する制御を行うパルス制御手段4とを備える構成である。
【0022】
対象細胞100は、生物の受精卵に限らず、各種細胞,小動物,植物等が挙げられる。導入物質110は、シクロヘキシミド(CX)やアクチノマイシンD(AD)等のタンパク質合成を阻害する各種の阻害剤、各種タンパク質,遺伝子(DNAやRNA)などが挙げられる。この他、医薬用途として、細胞標識試薬(細胞染色用蛍光標識試薬、酸化ストレス標識試薬等)を対象細胞100内に導入することもできる。また、例えば、化学物質(例えば、ビスフェノールA、エストラジオール等)の生体に対する影響評価にも用いることができる。前記溶液120は、導入物質110を溶解する媒体であれば、特に制限されず、例えば、水溶液、懸濁液、ゲルなどの形態とすることができる。
【0023】
前記収容手段21は、プラスティック製の容器を用いることができる。対向電極22及び対向電極23は、一般に用いられている電極素材であれば特に限定されず、例えば、ステンレス,デュラルミン,銅やプラチナが挙げられる。
【0024】
前記直流電源3は、前記対向電極にバーストパルスと高電圧パルスを供給するパルス電源として、後述するバーストパルス生成部41及び高電圧パルス生成部42を充電する。即ち、この直流電源3は、例えば、図1(a)に示すように、バーストパルスを生成するためのバーストパルス用電源31と、高電圧パルスを生成するための高電圧パルス用電源32とから構成される。
【0025】
前記パルス制御手段4は、直流電源3の直流電圧のオン時間、デューティ比、及び/又は極性を制御することによって、対向電極22及び対向電極23間に、前記バーストパルス又は高電圧パルスを発生させる。このパルス制御手段4は、例えば、図1(a)に示すように、前記バーストパルスを生成するバーストパルス生成部41と、前記高電圧パルスを生成する高電圧パルス生成部42と、前記バーストパルス及び前記高電圧パルスを印加するタイミング(前記バーストパルス及び前記高電圧パルスを構成する正負パルスの印加電荷量(パルス幅を含む)、パルス数、前記バーストパルス及び前記高電圧パルス間の出力間隔)を調整するタイミング調整部43と、対向電極22及び対向電極23間に前記バーストパルス及び前記高電圧パルスを出力する出力制御部44を備える構成とすることができる。
【0026】
上記の物質導入装置を用いた物質導入方法を、図1(b)のフローチャートに沿って、以下説明する。
【0027】
先ず、前記収容手段21の内部で、導入物質110を含有する溶液120中に対象細胞100を浸漬させる。この導入物質110を含有する溶液120中に浸漬された対象細胞100に対して、正負に極性が変化する間に一定電位値レベルとして零レベルを所定時間維持してなる非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルス(非対称バーストパルスともいう)を印加する(S1:バーストパルス印加工程)。このように、非対称の基準パルスが同一周期で繰り返されるバーストパルスによって、対象細胞100に対して、正負極のいずれか一方に極性が偏った電荷が連続してチャージされることがないため、生体の外膜に対する電気的ダメージを抑制しつつ、一方で、溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動させられることで、導入物質が導入され易い状況が形成されることとなる。
【0028】
この本実施形態に係る非対称なバーストパルスは、例えば、図2(a)に示すように、正極側の基準パルス(図中のA)と負極側の基準パルス(図中のB)とが異なる波高値をもつように構成することができる。
【0029】
波高値としては、例えば、正極側の電圧(Vp)(波高値)を20Vとして、負極側の電圧(Vn)(波高値)を−10Vとすることができる。本実施形態に係る非対称なバーストパルスの周期の数(n)は、1〜400とすることができるが、対象細胞100に対する電気的ダメージを抑制するという点から、好ましくは100〜200であり、例えば、100とすることができる。
【0030】
このような構成により、正負極性間における波高値の違いによって、対象細胞100に印加されるパルスの強度が、経時的に交互に変わることから、正負極のいずれか一方に極性が偏った電荷が連続してチャージされることがないため、電気的なダメージを抑制しつつ、一方で、溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向にさらに移動させられることで、導入物質110がさらに導入され易い状況が形成されることとなり、当該状況下において、高電圧パルスが短時間印加されることによって、対象細胞100を損傷することなく、さらに大量の導入物質110を一気に対象細胞に導入することができる。
【0031】
上述したように、本実施形態に係る非対称なバーストパルスは、前記バーストパルスを構成する基準パルスが正負極側で異なる波高値を有する構成とすることができるが、同図(b)に示すように、正負極側のパルスにおけるデューティ比を異ならせる構成とすることもできる。
【0032】
オン時間及びオフ時間は、数マイクロ秒〜数秒とすることができる。オン時間については、例えば、正極側のオン時間(Tp)を300マイクロ秒(μs)として、負極側のオン時間(Tn)を30マイクロ秒(μs)以上300マイクロ秒(μs)未満とすることができる。オフ時間については、例えば、正極側のオフ時間(Tpn)を100マイクロ秒(μs)、負極側のオン時間(Tn)を100マイクロ秒(μs)とすることができる。印加される電圧については、例えば、±50Vとすることができ、例えば、正極側の電圧(Vp)を20Vとして、負極側の電圧(Vn)を−20Vとすることができる。
【0033】
この場合には、正負極側でデューティ比が異なることから、対象細胞100に与えられるパルス電圧のタイミングが正負極側で異なることにより、パルス電圧が印加されない時間が長短交互に変動することとなり、正負極のいずれか一方に極性が偏った電荷が対象細胞100に連続してチャージされることがないため、電気的なダメージを抑制しつつ、より効率的に導入物質が移動しさらに導入され易い状況が形成されることとなる。
【0034】
また、上記の本実施形態に係る非対称なバーストパルスは、同図(c)に示すように、各基準パルスの印加電荷量を順次減衰させて構成することができる。この場合には、対象細胞100に与えられるバーストパルスの大きさが経時的に減衰することにより、後続する高電圧パルスが印加される直前には、前記バーストパルスの強度が、バーストパルス印加初期の基準パルスよりも小さくなることから、本実施形態に係るバーストパルスが対象細胞100及び導入物質110に与える上述した作用を維持しつつも、前記高電圧パルスと前記バーストパルスの波高値との差異が高められ、対象細胞に対して導入物質をより受け入れ易い状況が形成されることとなる。
【0035】
次に、このバーストパルスを印加後、対象細胞100に対して、このバーストパルスよりも、高電圧且つ短時間の高電圧パルスを、1オン時間分印加する(S1:高電圧パルス印加工程)。この高電圧パルスは、前記バーストパルスを構成する各正負の基準パルスのうち、印加電荷量の少ない極性の側と同極性で印加することが好ましい。このように、この高電圧パルスが、前記バーストパルスにより対象細胞100内にチャージされた電荷の極性と異なる極性で印加されることから、前記バーストパルスにより対象細胞100の外膜にチャージされた電荷と逆の極性の電荷を前記高電圧パルスが重畳することに起因して対象細胞に余分なダメージを与えることが抑制されることとなり、この高電圧パルスの印加によって、さらに対象細胞を損傷することなく、より多くの導入物質を対象細胞の内部に導入することができる。
【0036】
本実施形態に係る高電圧パルスのオン時間は、特に制限されないが、好ましくは、15ナノ秒(ns)〜200ナノ秒(ns)であり、例えば、100ナノ秒(ns)とすることができる。また、本実施形態に係る高電圧パルスの電圧値は、特に制限されないが、好ましくは、1kV〜10kVであり、例えば、3kVとすることができる。
【0037】
本実施形態に係る非対称なバーストパルス及び高電圧パルスは、例えば、図3(a)に示すように、バーストパルスの印加後、時間間隔(ΔT)を空けた後に、高電圧パルスを正極側又は負極側のいずれかの極側で1オン時間分印加する。この時間間隔(ΔT)としては、特に制限されないが、好ましくは、10マイクロ秒以上であり、より好ましくは、1ミリ〜数百ミリ秒であり、例えば、100ミリ秒(ms)とすることができる。1ミリ秒以下では電気ダメージが増加する傾向が強くなる。
【0038】
本実施形態に係るバーストパルス及び高電圧パルスは、上記のように、対象細胞100に対して、前記バーストパルスを印加後、前記高電圧パルスが印加されることによって、対象細胞100を損傷することなく、一気に大量の導入物質110を対象細胞100の内部に導入することができる。この顕著な効果を奏するメカニズムは未だ詳細には解明されていないが、非対称なバーストパルスによって、正負極のいずれか一方に極性が偏った電荷が連続してチャージされることがないため、対象生体(の外膜)に対する過度な電気的なダメージが抑制され、一方で溶液中に浸漬された導入物質が正負極のいずれか一方の方向に移動させられることで、導入物質が導入され易い状況が形成されることになり、当該状況下において、高電圧パルスが短時間印加されることによって、非対称なバーストパルスによる重さのある導入物質110を動かす作用とこの高電圧パルスによる外膜に対する一時的な穴の形成が相俟って、対象細胞100を損傷することなく、一気に導入物質110が対象細胞100の内部に導入されるものと推察される。
【0039】
尚、本実施形態において、このようなバーストパルス及び高電圧パルスという2つの異なるパルスを発生させることは、例えば、図3(b)のような回路構成のシステムを構築することにより、実現することができる。即ち、パルス制御手段4が、2つの異なる極性の出力を持つRC放電回路(同極性、逆極性)の切換制御によって、直流電源31から供給される電源を元にバーストパルスを生成するバーストパルス生成部41と、直流高電圧電源32から供給される電源によって、複数のブルームライン線路から成るブルームラインジェネレータで高電圧矩形波パルスを生成する高電圧パルス生成部42と、遅延パルス発生器の制御によって、これらバーストパルス及び高電圧パルスを上記の時間間隔(ΔT)だけ遅延させて発生させるタイミング調整部43と、バーストパルス生成部41と高電圧パルス生成部42から出力されるバーストパルス及び高電圧パルスを出力する出力制御部44とを備える構成とすることができる。尚、高電圧パルスを発生させるための電気パルスを遅延パルス発生器からブルームラインジェネレータに伝送する際には、ブルームラインジェネレータが動作するときに発生する電気的な外部影響を抑えるために、E/Oコンバーター等を使用して光ファイバー伝送を用いることが好ましい。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る物質導入装置は、上記第1の実施形態における対向電極22及び対向電極23の少なくとも一方が、他の電極と対向する側に、ピン形状又はレール形状の突起物を備えるものである。この突起物は、例えば、図4に示されるように、ピン形状のピン型突起物22a、又は、レール形状のレール型突起物22bである。この突起物によって、バーストパルス及び高電圧パルスによる放電位置の集中性(局所性)がこの突起物において高まることとなり、溶液中に浸漬された導入物質の集中性が高まり、また、対象細胞の外膜にチャージされる電荷量を調整されることによって、対象細胞を損傷することなく、一気に大量の導入物質を対象細胞の内部に導入することができる。
【0041】
尚、上記各実施形態において、バーストパルス(非対称バーストパルス)は、正負に極性が変化する間に零レベルを所定時間維持する構成としたが、所定時間維持される電位値レベルは、零レベルに限定されず、当該変化する正負の極性の中間値であれば、任意の電位値レベルを用いることができる。
【0042】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0043】
(実施例1)
上記の物質導入装置を用いて、導入物質をシクロヘキシミド(CX)、アクチノマイシンD (AD)として、これらをそれぞれ混合した溶液中に設置された産卵後のメダカ卵に対して、非対称なバーストパルスと高電圧パルスを印加し、同溶液中に約2時間静置した後、洗浄し、その後の様子を観測した。正極側のパルス幅TP(オン時間(Tp)) (=300us)と負極側のパルス幅TN(オン時間(Tn)) (30us〜300us,印加なし)の比による生存率と死亡率の変化を確認した。実験条件を以下に示す(パラメタは上記の図3(a)に記載されたものと同じ)。
【0044】
【表1】
【0045】
上記の実験条件のうち、TP:TN=300μs:150μs、TP:TN=300μs:60μs、TP(300μs)のみ:TN無し、の各場合のバーストパルス及び高電圧パルスについて、各々、図4(b)〜(d)に示す。得られた結果を、図5(a)に示す。
【0046】
図5では、バーストパルス及び高電圧パルスを印加後、3日までに死亡が確認された卵の割合(死亡)、パルス印加後、3日目において、死亡・発生の遅れなどの異常が確認されなかった卵の割合(正常)、バーストパルス及び高電圧パルスを印加後、3日目において発生遅れなどの異常が確認された卵の割合(異常)を各々示す(サンプル数:12個/条件)。また、図中、“control”は導入物質が混合されていない溶液中のメダカ卵にバーストパルスと高電圧パルスを印加しただけのものを指し、“CX”はシクロヘキシミド、“AD”はアクチノマイシンD、“TP:TN = ”は図3(a)で上述した各極側のオン時間を示す。また、“VN無し”は、VPのみを100回印加したものである。
【0047】
この結果から、コントロール(control)では、正極側のパルスのみ[VP(Vp)のみ(VN(Vn)無し)]の場合、正常な個体の割合は8%と低かったことから、電気的ダメージによる影響が大きかったことがわかった。これは、個体の外膜の片側に対するチャージ(蓄積)の電荷量が大きくなることに起因するものと考えられる。また、バーストパルスにおいて、正極側と負極側のパルスを同じ比率にした場合(TP:TN=300μs:300μs)には、個体の死亡はほとんど発生しなかったことから、固体に対して電気的な影響はほとんど与えられなかったことがわかった。これは、バーストパルスの印加によって個体の外膜に生じるチャージ(蓄積)とディスチャージ(放電)の電荷量が同量であったことに起因するものと考えられる。負極側の基準パルス(VN(Vn))を加えた場合には、正常な個体の割合は平均78 %(67%〜92%)となり、電気的ダメージの影響が抑制された。
【0048】
シクロヘキシミド(CX)の導入については、正常な個体の割合は0 %で、すべての個体で主にCX導入による異常(発生遅れ)または死亡が発生した。さらに負極側のパルス(負極性パルス)のオン時間(パルス幅;TN(Tn))が短いほど、死亡率が上昇する傾向が見られた(300μs では8%の死亡率が、30μsでは75 %に上昇した)。これは、CXの導入量増加に起因するものと考えられる。これは、非対称なバーストパルス(TP≠TN)の印加によって、個体の外膜で電荷のチャージ(蓄積)とディスチャージ(放電)が各々異なる電荷量で生じ、個体に与える電気的ダメージが抑えられるとともに、当該バーストパルスにより比較的低電圧且つ長時間の電気的エネルギーが印加されることによって、導入物質(CX)が溶液中で一方向に動かされ、後続する高電圧パルスの印加によって、個体に導入される導入物質(CX)の増加(CXによる死亡率の増加)が引き起こされたものと考えられる。
【0049】
アクチノマイシンD(AD)の導入については、78%〜92 %の個体にAD導入による異常(発生遅れ)または死亡が発生した。負極側のパルス(負極性パルス)のオン時間(パルス幅;TN(Tn))が短い(100μs、60μs 、30μs)場合に死亡率が50%を超えた。これらの結果より、非対称なバーストパルスは、導入物質に対する電気的なダメージを抑制しており、導入物質の導入量を増加することができた。
【0050】
(実施例2)
上記の物質導入装置を用いて、産卵後のメダカ卵を、溶液中にシクロヘキシミド(CX)の有無のケースで、非対称なバーストパルス及び高電圧パルスを印加後、同溶液に2時間静置後、洗浄し、その後の様子を観測した。正極側の電圧(Vp)(波高値)、負極側の電圧(Vn)(波高値)を、12Vとし、バーストパルスの数(n)を、100、200、400とした結果を図5(b)に示す。この結果から、非対称なバーストパルスにおけるバーストパルスの数(n)は、100〜200の範囲において良好な結果が得られることがわかった。
【0051】
(実施例3)
上記の物質導入装置を用いて、産卵後のメダカ卵を、非対称なバーストパルス及び高電圧パルスの有無のケースで、濃度5μM、50μMのビスフェノールA(BPA)および0.37nMのエストラジオールに2時間暴露後、洗浄した。以下の表に、外液50μMでビスフェノールAを取り込ませた場合の卵内液中のビスフェノールAのガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)による実測値を示す。50μMのビスフェノールAにメダカ卵を2時間浸漬しただけでは、取り込み量は極めて少なく、卵内液濃度は約2μM程度であったが、非対称なバーストパルス及び高電圧パルスを印加することにより、約90μMと飛躍的に内液濃度は上がっており、外液の濃度と同じかそれ以上の濃度になるようにビスフェノールAをメダカ卵内部に取り込むことができた。
【0052】
【表2】
【符号の説明】
【0053】
100 対象細胞
110 導入物質
120 溶液
21 収容手段
22 対向電極
22a ピン型突起物
22b レール型突起物
23 対向電極
3 直流電源
31 バーストパルス用電源
32 高電圧パルス用電源
4 パルス制御手段
41 バーストパルス生成部
42 高電圧パルス生成部
43 タイミング調整部
44 出力制御部
図1
図2
図4
図5
図3