【文献】
Cell. Mol. Life Sci.,2001年10月,Vol.58, No.11,pp.1627-1635
【文献】
Mol. Cell.,2007年 1月26日,Vol.25, No.2,pp.207-217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合成ペプチドは、前記(A)膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列として、配列番号1〜18のうちから選択されるいずれかのアミノ酸配列、若しくは該選択されたアミノ酸配列のうちの1個又は数個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成されたアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の細胞増殖促進剤。
前記合成ペプチドは、前記(A)で規定されるアミノ酸配列のN末端側またはC末端側に隣接して前記(B)で規定されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の細胞増殖促進剤。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記特許文献1〜3に記載されるような従前の細胞増殖促進能を有するペプチドとは異なる構成のペプチドであって、bFGFと同等若しくはそれ以上の細胞増殖促進効果を発揮し得る人工ペプチドの提供を目的とする。また、そのようなペプチドを有効成分とする細胞増殖促進剤(薬学的組成物)の提供を他の目的とする。また、そのようなペプチドを使用して所定の目的細胞を生産する方法の提供を他の目的とする。
【0007】
本発明によって提供される細胞増殖促進剤は、ここで開示される少なくとも1種の細胞増殖促進能を有するペプチド(以下「細胞増殖促進能を有するペプチド」という。)を有効成分(即ち細胞増殖促進に関与する物質)として含むことで特徴付けられる。
即ち、上記細胞増殖促進剤の有効成分として使用し得る本発明に係るペプチドは、そのペプチド鎖中に以下の(A)と(B)にそれぞれ規定される部分アミノ酸配列、即ち、
(A)膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列と、
(B)配列番号19〜103のうちから選択されるいずれかのアミノ酸配列、若しくは該選択されたアミノ酸配列のうちの1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列と、
を有する人為的に合成されたペプチドである。
典型的には、ここで開示される細胞増殖促進剤は、薬学上許容され得る少なくとも1種の担体(例えば上記ペプチドの安定性向上に資する少なくとも1種の基材、或いは生理食塩水や各種の緩衝液等の液状媒体)を含む。
【0008】
本発明者は、本来は別の機能を有するペプチド若しくは所定のペプチド中の特定の機能により画定された部分(即ちペプチドモチーフ若しくはドメイン)を構成するアミノ酸配列を複数種組み合わせて構築した合成ペプチドがbFGFに匹敵する若しくはそれを上回る細胞増殖促進活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記(A)に規定されるアミノ酸配列は、膜透過性ペプチドのアミノ酸配列であり、上記(B)に規定されるアミノ酸配列は、例えば神経分化誘導活性を有するペプチドモチーフに該当するアミノ酸配列や或いは細胞核の構造を支えるタンパク質として知られるプレラミンA(prelamin A)のC末端の部分アミノ酸配列である。かかるアミノ酸配列の具体例が配列番号19〜103としてここで開示されている。
従って、ここで開示される細胞増殖促進剤は、化学合成(若しくは生合成)によって容易に人為的に製造され得るペプチドを有効成分とするため、高価なbFGF等の細胞増殖因子を大量に使用することなく(典型的にはbFGFの代替物として)目的とする真核細胞の増殖を促進することができる。また、高価なbFGFその他の細胞増殖因子の使用を削減できるため、細胞増殖を伴う細胞培養や生理活性物質等の生産にかかるコストの低減を実現することができる或いはコスト増を抑制することができる。
【0009】
ここで開示される好ましい一態様の細胞増殖促進剤では、上記合成ペプチド(細胞増殖促進ペプチド)として、上記(A)膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列として配列番号1〜18のうちから選択されるいずれかのアミノ酸配列、若しくは該選択されたアミノ酸配列のうちの1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
配列番号1〜18としてここで開示されているアミノ酸配列は、上記(A)膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列の典型例であり、本発明の実施に好適に採用することができる。タンパク質を核内の核小体へ局在化させるシグナル配列であり核小体局在シグナル(NoLS:Nucleolar localization signal、非特許文献1参照)として知られるいずれかのアミノ酸配列(典型的には配列番号1〜15、特には配列番号14,15)を採用することが特に好ましい。
【0010】
また、ここで開示される好ましい他の一態様の細胞増殖促進剤では、上記合成ペプチド(細胞増殖促進ペプチド)を構成する全アミノ酸残基数が50以下である。このような短いペプチド鎖のペプチドは化学合成が容易であり、且つ、安価で取扱性に優れるため、細胞増殖促進剤の成分として好ましい。
【0011】
また、ここで開示される好ましい他の一態様の細胞増殖促進剤では、上記合成ペプチド(細胞増殖促進ペプチド)が上記(A)で規定されるアミノ酸配列のN末端側またはC末端側に隣接して上記(B)で規定されるアミノ酸配列を含む。
このような構成のペプチドは、特に細胞増殖促進能に優れる。該ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が30以下であるものが、シンプルな構成であり化学合成も容易であるために特に好ましい。
本発明によって提供される合成ペプチド(細胞増殖促進ペプチド)の好ましい具体例として配列番号104〜111のうちから選択されるいずれかのアミノ酸配列を有するペプチド(特に全アミノ酸残基数が50以下若しくは30以下のもの)、或いは配列番号104〜111のうちから選択されるいずれかのアミノ酸配列から構成されているペプチドが挙げられる。このような合成ペプチド(細胞増殖促進ペプチド)を含む細胞増殖促進剤は、特にヒト若しくはヒト以外の哺乳動物由来の細胞(例えばいずれかの種類の幹細胞)の増殖を促進する用途に好適である。
【0012】
また、本発明は、他の側面として、少なくとも1種の真核細胞を増殖させる(典型的には生体外で増殖させる、若しくは生体内で増殖させる)ことにより、該真核細胞若しくは該増殖した細胞由来の生合成産物を生産する方法であって、ここで開示されるいずれかの細胞増殖促進剤(換言すればここで開示されるいずれかの細胞増殖促進ペプチド)を該増殖対象の真核細胞に対して少なくとも1回供給することを特徴とする方法を提供する。
かかる生産方法によると、高価なbFGFその他の細胞増殖因子の使用を削減できるため、細胞増殖による細胞自体の生産や生理活性物質等の生産にかかるコストの低減を実現することができる或いはコスト増を抑制することができる。
また、被験体(患者)の患部の修復や再生を促進させる目的に、ここで開示される生産方法を好適に実施することができる。即ち、ここで開示される方法は、修復や再生に資する細胞を生体外で高効率に増殖(生産)することができるため、本方法の実施によって効率よく生体外で増殖させた細胞を、被験体(患者)の体内に導入することによって、修復や再生に要する時間を短縮することができる。
【0013】
ここで開示される上記生産方法の好ましい一態様では、上記真核細胞がヒト若しくはヒト以外の哺乳動物由来の細胞である。ここで開示される細胞増殖促進ペプチドは、この種の細胞の増殖促進に好適に使用することができる。特に上記真核細胞の好適例として、未分化状態にあるいずれかの種類の幹細胞が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば細胞増殖促進ペプチドの一次構造や鎖長)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばペプチド合成、細胞培養技法、ペプチドを成分とする薬剤組成物の調製に関するような一般的事項)は、細胞工学、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学、タンパク質工学、分子生物学、衛生学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明では、場合に応じてアミノ酸をIUPAC-IUBガイドラインで示されたアミノ酸に関する命名法に準拠した1文字表記(但し配列表では3文字表記)で表す。
なお、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、常に左側がN末端側であり右側がC末端側である。
また、本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【0016】
本明細書において「人為的に合成された細胞増殖促進ペプチド」とは、そのペプチド鎖がそれのみで独立して自然界に安定的に存在するものではなく、人為的な化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって製造され、所定の系(例えば神細胞増殖促進剤を構成する組成物)の中で安定して存在し得るペプチド断片をいう。
本明細書において「ペプチド」とは、複数のペプチド結合を有するアミノ酸ポリマーを指す用語であり、ペプチド鎖に含まれるアミノ酸残基の数によって限定されないが、典型的には全アミノ酸残基数が概ね100以下、好ましくは50以下(更に好ましくは30以下)のような比較的分子量の小さいものをいう。
【0017】
本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。また、本明細書において所定のアミノ酸配列に対して「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する細胞増殖促進能を損なうことなく、1個又は数個(例えば2個又は3個)のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列)、或いは、所定のアミノ酸配列について1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が付加(挿入)した若しくは欠失した配列等は、本明細書でいうところの改変アミノ酸配列に包含される典型例である。
また、本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で結ばれたポリマー(核酸)を指す用語であり、ヌクレオチドの数によって限定されない。種々の長さのDNAフラグメント及びRNAフラグメントが本明細書におけるポリヌクレオチドに包含される。また、「人為的に設計されたポリヌクレオチド」とは、そのヌクレオチド鎖(全長)がそれ単独で自然界に存在するものではなく、化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって人為的に合成されたポリヌクレオチドをいう。
【0018】
ここで開示される細胞増殖促進剤は、本発明者によって見出された少なくとも1種の細胞に対して良好な細胞増殖促進活性を有する合成ペプチド(即ち細胞増殖促進ペプチド)を有効成分として含有することで特徴付けられる組成物である。
上述のとおり、ここで開示される細胞増殖促進ペプチドは、部分アミノ酸配列として、上記(A)で規定される膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列(以下「(A)パート配列」と略称する場合がある。)を有する。
(A)パート配列は、細胞膜及び/又は核膜を通過し得る膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列であれば特に限定なく使用することができる。例えば、本明細書の配列表における配列番号1〜18に示すアミノ酸配列およびそれらの改変アミノ酸配列(膜透過性を保持しているものに限られる。)は、(A)パート配列を構成するアミノ酸配列として好ましい。具体的には以下のとおりである。
【0019】
即ち、配列番号1のアミノ酸配列は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子)由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号2のアミノ酸配列は、核小体タンパク質の1種(ApLLP)由来の合計19アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号3のアミノ酸配列は、HSV−1(単純ヘルペスウイルス タイプ1)のタンパク質(γ(1)34.5)由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号4のアミノ酸配列は、HIC(human I-mfa domain-containing protein)のp40タンパク質由来の合計19アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号5のアミノ酸配列は、MDV(Marek病ウイルス)のMEQタンパク質由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号6のアミノ酸配列は、アポトーシスを抑制するタンパク質であるSurvivin- deltaEx3由来の合計17アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号7のアミノ酸配列は、血管増殖因子であるAngiogenin由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号8のアミノ酸配列は、核リンタンパク質であってp53腫瘍抑制タンパク質と複合体を形成するMDM2由来の合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号9のアミノ酸配列は、ベータノダウイルスのタンパク質であるGGNNVα由来の合計9アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号10のアミノ酸配列は、NF−κB誘導性キナーゼ(NIK)由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号11のアミノ酸配列は、Nuclear VCP-like protein由来の合計15アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号12のアミノ酸配列は、核小体タンパク質であるp120由来の合計18アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号13のアミノ酸配列は、HVS(ヘルペスウイルスsaimiri)のORF57タンパク質由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号14のアミノ酸配列は、細胞内情報伝達に関与するプロテインキナーゼの1種であるヒト内皮細胞に存在するLIMキナーゼ2(LIM Kinase 2)の第491番目のアミノ酸残基から第503番目のアミノ酸残基までの合計13アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号15のアミノ酸配列は、IBV(トリ伝染性気管支炎ウイルス:avian infectious bronchitis virus)のNタンパク質(nucleocapsid protein)に含まれる合計8アミノ酸残基から成る核小体局在シグナル(Nucleolar localization sequence)に対応する。
配列番号16のアミノ酸配列は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:Human Immunodeficiency Virus)のTATに含まれるタンパク質導入ドメイン由来の合計11アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号17のアミノ酸配列は、上記TATを改変したタンパク質導入ドメイン(PTD4)の合計11アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号18のアミノ酸配列は、ショウジョウバエ(Drosophila)の変異体であるAntennapediaのANT由来の合計18アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
これらのうち、特にNoLSに関連するアミノ酸配列(又はその改変アミノ酸配列)が好ましい。特に、配列番号14や15に示すようなNoLS関連のアミノ酸配列が細胞増殖促進ペプチドの(A)パート配列として好ましい。
【0020】
一方、細胞増殖促進ペプチドの(B)パート配列を構成するアミノ酸配列は、上記(A)パート配列と組み合わせることにより良好な細胞増殖促進活性を有するペプチドが構築し得るものとして本発明者により見出された配列(ペプチドモチーフ)であり、配列番号19〜103に列挙されている。具体的には以下のとおりである。
【0021】
即ち、配列番号19〜36に示す各アミノ酸配列は、SOCS系タンパク質として同定された各種タンパク質のBC−ボックスに含まれるアミノ酸配列である(非特許文献2〜5参照)。ここでSOCS系タンパク質とは、エロンジンA(ElonginA)と複合体を形成して転写調節因子として働くことが知られているエロンジンBC(ElonginBC)コンプレックス(具体的にはエロンジンC(ElonginC)の一部)に結合し得る領域(アミノ酸配列)であるSOCS−ボックスを有する種々のSOCSタンパク質(サイトカイン情報伝達のサプレッサー)及びそれらのファミリータンパク質の総称である。
具体的には、mSOCS−1(配列番号19),mSOCS−2(配列番号20),mSOCS−3(配列番号21),mSOCS−4(配列番号22),mSOCS−5(配列番号23),hSOCS−6(配列番号24),hSOCS−7(配列番号25),hRAR−1(配列番号26),hRAR−like(配列番号27),mWSB−1(配列番号28),mWSB−2(配列番号29),mASB−1(配列番号30),mASB−2(配列番号31),hASB−3(配列番号32),LRR−1(配列番号33),hASB−7(配列番号34),mASB−10(配列番号35),hASB−14(配列番号36)に含まれるBC−ボックスのN末端から15個の連続するアミノ酸残基から成るアミノ酸配列に対応する。
また、特に詳細な説明は省略するが、配列番号37〜97は、ウイルス(HIV、AdV、SIV等)や哺乳動物から同定された種々のSOCS系タンパク質のBC−ボックスに含まれるアミノ酸配列に対応する。例えば、配列番号92および配列番号96は、ヒトから同定されたSOCS系タンパク質(MUF1)のBC−ボックスに含まれるアミノ酸配列である。また、配列番号97は、マウスから同定されたSOCS系タンパク質mCIS(cytokine-inducible SH2-containing protein)のBC−ボックスに含まれるアミノ酸配列である。
【0022】
また、配列番号98は、中枢神経系の神経細胞に特異的に発現することが知られているフォン・ヒッペル・リンドー(VHL)タンパク質のアミノ酸配列のN末端から157番目〜171番目迄の合計15アミノ酸残基から成るアミノ酸配列に対応する(特許文献4参照)。
また、配列番号99〜102は、低酸素誘導因子(HIF−1:Hypoxia-Inducible Factor 1)を構成する二つのサブユニット(即ちHIF−1αとHIF−1β)のうちの一つであるHIF−1αのPAS−Aドメイン(即ちPer-Arnt-Sim ホモロジードメインのサブドメインA)に結合するHIF−1α結合タンパク質であって活性化プロテインCキナーゼ受容体として同定されたタンパク質「RACK1(a Receptor of Activated Protein Kinase C)」中のWD6ドメイン、即ちエロンジンCに結合し得る領域のアミノ酸配列に対応する(非特許文献6〜8参照)。
また、配列番号103は、近年、幹細胞の分化誘導シグナルとしての機能が示唆されているプレラミンA(prelamin A)タンパク質のN末端から647番目〜661番目迄の合計15アミノ酸残基から成るアミノ酸配列に対応する(特許文献5参照)。
【0023】
ここで開示される細胞増殖促進ペプチドのペプチド鎖(アミノ酸配列)は、上述したような(A)パート配列と、(B)パート配列とを適宜組み合わせることにより構築される。(A)パート配列と(B)パート配列のいずれが相対的にC末端側(N末端側)に配置されてもよい。また、(A)パート配列と(B)パート配列とは隣接して配置されるのが好ましい。即ち、(A)パート配列と(B)パート配列との間には、両配列部分に包含されないアミノ酸残基が存在しないか存在しても1〜3個程度が好ましい。
好ましくは、細胞増殖促進ペプチドは、少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されているものが好ましい。アミノ酸残基(典型的にはペプチド鎖のC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基のアミド化により、合成ペプチドの構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)を向上させ得る。
【0024】
細胞増殖促進活性を失わない限りにおいて、(A)パート配列と(B)パート配列を構成するアミノ酸配列以外の配列(アミノ酸残基)部分を含み得る。特に限定するものではないが、かかる部分配列としては(A)パート配列と(B)パート配列部分の3次元形状(典型的には直鎖形状)を維持し得る配列が好ましい。該細胞増殖促進ペプチドは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下が望ましく、50以下が好ましい。30以下が特に好ましい。このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、容易に細胞増殖促進ペプチドを提供することができる。なお、ペプチドのコンホメーション(立体構造)については、使用する環境下(生体外若しくは生体内)で細胞増殖促進能を発揮する限りにおいて、特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はへリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。かかる観点から、細胞増殖促進剤に適用する細胞増殖促進ペプチドとしては、直鎖状であり比較的低分子量(典型的には50以下(特に30以下)のアミノ酸残基数)のものが好適である。
【0025】
全体のアミノ酸配列に対する(A)パート配列と(B)パート配列の占める割合(即ちペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数に占める(A)パート配列と(B)パート配列を構成するアミノ酸残基数の個数%)は、細胞増殖促進活性を失わない限り特に限定されないが、当該割合は概ね60%以上が望ましく、80%以上が好ましい。90%以上が特に好ましい。
なお、本発明の細胞増殖促進ペプチドとしては、全てのアミノ酸残基がL型アミノ酸であるものが好ましいが、細胞増殖促進活性を失わない限りにおいて、アミノ酸残基の一部又は全部がD型アミノ酸に置換されているものであってもよい。
【0026】
ここで開示される細胞増殖促進ペプチドのうちペプチド鎖の比較的短いものは、一般的な化学合成法に準じて容易に製造することができる。例えば、従来公知の固相合成法又は液相合成法のいずれを採用してもよい。アミノ基の保護基としてBoc(t-butyloxycarbonyl)或いはFmoc(9-fluorenylmethoxycarbonyl)を適用した固相合成法が好適である。
ここで開示される細胞増殖促進ペプチドは、市販のペプチド合成機(例えば、PerSeptive Biosystems社、Applied Biosystems社等から入手可能である。)を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列、修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
【0027】
或いは、遺伝子工学的手法に基づいて細胞増殖促進ペプチドを生合成してもよい。このアプローチは、一般にポリペプチドと呼ばれるようなペプチド鎖の比較的長いペプチドを製造する場合に好適である。すなわち、所望する細胞増殖促進ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(ATG開始コドンを含む。)のDNAを合成する。そして、このDNAと該アミノ酸配列を宿主細胞内で発現させるための種々の調節エレメント(プロモーター、リボゾーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、発現レベルを制御する種々のシスエレメントを包含する。)とから成る発現用遺伝子構築物を有する組換えベクターを、宿主細胞に応じて構築する。
一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするポリペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)からポリペプチドを単離し、精製することによって、目的の細胞増殖促進ペプチドを得ることができる。一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞(例えばイースト、昆虫細胞)に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするポリペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)からポリペプチドを単離し、精製することによって、目的の細胞増殖促進ペプチドを得ることができる。
なお、組換えベクターの構築方法及び構築した組換えベクターの宿主細胞への導入方法等は、当該分野で従来から行われている方法をそのまま採用すればよく、かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0028】
例えば、宿主細胞内で効率よく大量に生産させるために融合タンパク質発現システムを利用することができる。すなわち、目的の細胞増殖促進ペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子(DNA)を化学合成し、該合成遺伝子を適当な融合タンパク質発現用ベクター(例えばノバジェン社から提供されているpETシリーズおよびアマシャムバイオサイエンス社から提供されているpGEXシリーズのようなGST(Glutathione S-transferase)融合タンパク質発現用ベクター)の好適なサイトに導入する。そして該ベクターにより宿主細胞(典型的には大腸菌)を形質転換する。得られた形質転換体を培養して目的の融合タンパク質を調製する。次いで、該タンパク質を抽出及び精製する。次いで、得られた精製融合タンパク質を所定の酵素(プロテアーゼ)で切断し、遊離した目的のペプチド断片(設計した細胞増殖促進ペプチド)をアフィニティクロマトグラフィー等の方法によって回収する。このような従来公知の融合タンパク質発現システム(例えばアマシャムバイオサイエンス社により提供されるGST/Hisシステムを利用し得る。)を用いることによって、本発明の細胞増殖促進ペプチドを製造することができる。
或いは、無細胞タンパク質合成システム用の鋳型DNA(即ち細胞増殖促進ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む合成遺伝子断片)を構築し、ペプチド合成に必要な種々の化合物(ATP、RNAポリメラーゼ、アミノ酸類等)を使用し、いわゆる無細胞タンパク質合成システムを採用して目的のポリペプチドをインビトロ合成することができる。無細胞タンパク質合成システムについては、例えばShimizuらの論文(Shimizu et al., Nature Biotechnology, 19, 751-755(2001))、Madinらの論文(Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(2), 559-564(2000))が参考になる。これら論文に記載された技術に基づいて、本願出願時点において既に多くの企業がポリペプチドの受託生産を行っており、また、無細胞タンパク質合成用キット(例えば、日本の東洋紡績(株)から入手可能なPROTEIOS(商標)Wheat germ cell-free protein synthesis kit)が市販されている。
従って、利用する(A)パート配列ならびに(B)パート配列をひとたび決定し、ペプチド鎖を設計しさえすれば、そのアミノ酸配列に従って無細胞タンパク質合成システムによって目的の細胞増殖促進ペプチドを容易に合成・生産することができる。例えば、日本の(株)ポストゲノム研究所のピュアシステム(登録商標)に基づいて本発明の細胞増殖促進ペプチドを容易に生産することができる。
【0029】
ここで開示される細胞増殖促進ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドは、従来公知の方法によって容易に製造(合成)することができる。すなわち、設計したアミノ酸配列を構成する各アミノ酸残基に対応するコドンを選択することによって、細胞増殖促進ペプチドのアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列が容易に決定され、提供される。そして、ひとたびヌクレオチド配列が決定されれば、DNA合成機等を利用して、所望するヌクレオチド配列に対応するポリヌクレオチド(一本鎖)を容易に得ることができる。さらに得られた一本鎖DNAを鋳型として用い、種々の酵素的合成手段(典型的にはPCR)を採用して目的の二本鎖DNAを得ることができる。
本発明によって提供されるポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもよく、RNA(mRNA等)の形態であってもよい。DNAは、二本鎖又は一本鎖で提供され得る。一本鎖で提供される場合は、コード鎖(センス鎖)であってもよく、それと相補的な配列の非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
本発明によって提供されるポリヌクレオチドは、上述のように、種々の宿主細胞中で又は無細胞タンパク質合成システムにて、細胞増殖促進ペプチド生産のための組換え遺伝子(発現カセット)を構築するための材料として使用することができる。
本発明によると、新規なアミノ酸配列の細胞増殖促進ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが提供される。例えば、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が50以下(好ましくは30以下)であって、配列番号104〜111で示されるアミノ酸配列或いは該配列の改変アミノ酸配列、または該配列を含むアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む(又はそれら配列から実質的に構成された)人為的に設計されたポリヌクレオチドが提供される。
【0030】
好適な本発明の細胞増殖促進ペプチドは少なくとも1種の真核細胞に対して高い細胞増殖促進活性を有する。このため、細胞増殖促進剤の有効成分として好適に使用し得る。なお、細胞増殖促進剤に含有される細胞増殖促進ペプチドは、細胞増殖促進活性を損なわない限りにおいて、塩の形態であってもよい。例えば、常法に従って通常使用されている無機酸又は有機酸を付加反応させることにより得られ得る該ペプチドの酸付加塩を使用することができる。或いは、細胞増殖促進活性を有する限り、他の塩(例えば金属塩)であってもよい。本明細書及び特許請求の範囲に記載の「ペプチド」は、かかる塩形態のものを包含する。
【0031】
ここで開示される細胞増殖促進剤は、有効成分である細胞増殖促進ペプチドをその細胞増殖促進活性が失われない状態で保持し得る限りにおいて、使用形態に応じて薬学(医薬)上許容され得る種々の担体を含み得る。希釈剤、賦形剤等としてペプチド医薬において一般的に使用される担体が好ましい。細胞増殖促進剤の用途や形態に応じて適宜異なり得るが、典型的には、水、生理学的緩衝液、種々の有機溶媒が挙げられる。適当な濃度のアルコール(エタノール等)水溶液、グリセロール、オリーブ油のような不乾性油であり得る。或いはリポソームであってもよい。また、細胞増殖促進剤に含有させ得る副次的成分としては、種々の充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、表面活性剤、色素、香料等が挙げられる。
細胞増殖促進剤の形態に関して特に限定はない。例えば、典型的な形態として、液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、軟膏、水性ジェル剤等が挙げられる。また、注射等に用いるため、使用直前に生理食塩水又は適当な緩衝液(例えばPBS)等に溶解して薬液を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
なお、細胞増殖促進ペプチド(主成分)及び種々の担体(副成分)を材料にして種々の形態の薬剤(組成物)を調製するプロセス自体は従来公知の方法に準じればよく、かかる製剤方法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。処方に関する詳細な情報源として、例えばComprehensive Medicinal Chemistry, Corwin Hansch監修,Pergamon Press刊(1990)が挙げられる。この書籍の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
【0032】
ここで開示される細胞増殖促進剤(細胞増殖促進ペプチド)の適用対象細胞は特に制限されず、種々の生物種の真核細胞の増殖能を向上させることができる。
特に、ヒト又はヒト以外の動物(特に哺乳動物)の細胞が適用対象として好ましい。また、医学上の価値から、特に幹細胞を対象とすることが好ましい。この種の幹細胞として胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、間葉系幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞、造血幹細胞、等が挙げられる。その他、体細胞(皮膚線維芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、等)や生殖細胞も増殖対象として好ましい。細胞増殖の観点から幹細胞は特に未分化状態のもの(即ち分化誘導処理が行われていない状態の幹細胞)を使用することが好ましい。
【0033】
ここで開示される細胞増殖促進剤は、その形態及び目的に応じた方法や用量で使用することができる。
例えば、生体外(インビトロ)で細胞(例えば樹立細胞株)を培養して増殖させる場合においては、ここで開示される細胞増殖促進ペプチド(即ち該ペプチドを含む細胞増殖促進剤)の適当量を、培養(増殖)対象の真核細胞に対し、培養過程のいずれかの段階、好ましくは培養開始と同時若しくは培養開始後の早い段階で培地に添加するとよい。
添加量及び添加回数は、培養する細胞の種類、細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類、等の条件によって異なり得るため特に限定されないが、一般的な真核細胞(特にヒトを含む哺乳動物細胞)を培養する場合、培地中の細胞増殖促進ペプチド濃度が概ね0.1μM〜100μMの範囲内、好ましくは0.5μM〜20μM(例えば1μM〜10μM)の範囲内となるように、1〜複数回添加する(例えば培養開始時ならびに細胞の継代時や培地交換時に合わせて追加添加する)ことが好ましい。
ここで開示される細胞増殖促進剤(細胞増殖促進ペプチド)をインビトロ培養系に添加することにより、目的とする細胞自体若しくは該細胞が産生する生合成産物(例えば種々の生理活性物質や酵素類)を効率よく生産することができる。しかも高価なbFGF等の増殖因子を使用しないか又はその使用量を低減し得るため、生産コストの低減を図ることができる。
【0034】
或いはまた、生体内(インビボ)で細胞(例えば所定の部位に移植した組織片若しくは細胞塊)を増殖させる場合においては、ここで開示される細胞増殖促進剤(即ち細胞増殖促進ペプチド)の適当量を液剤として、静脈内、筋肉内、皮下、皮内若しくは腹腔内への注射によって患者(即ち生体内)に所望する量だけ投与することができる。或いは、錠剤等の固体形態のものや軟膏等のゲル状若しくは水性ジェリー状のものを直接患部(例えば火傷や創傷のような体表面)に投与することができる。或いは経口投与若しくは座薬の形態で導入してもよい。これにより、生体内で、典型的には患部又はその周辺に存在する増殖させたい目的の細胞の増殖速度を向上させることができる。なお、添加量及び添加回数は、増殖させたい細胞の種類、存在部位、等の条件によって異なり得るため特に限定されない。
ここで開示される細胞増殖促進剤(細胞増殖促進ペプチド)を生体内の必要な部位に投与することにより、その細胞増殖促進活性によって、神経再生能力、血管新生能力、皮膚再生能力等の向上を実現することができる。また、細胞増殖能の向上により、例えば、皮膚の老化防止、移植臓器の早期定着、交通事故その他の物理的障害による創傷部や火傷部の早期修復を実現することができる。また、例えば、パーキンソン病、脳梗塞、アルツハイマー病、脊髄損傷による身体の麻痺、脳挫傷、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳腫瘍、網膜変性症等の神経疾患を再生医療的アプローチによって治療することに資する薬剤組成物として使用することができる。
【0035】
或いはまた、生体から一時的に又は永久的に摘出した細胞材料、即ち生組織や細胞塊(例えば体性幹細胞の培養物)に、適当量の細胞増殖促進剤(細胞増殖促進ペプチド)を付与することによって、高価なbFGF等の増殖因子を大量に用いることなく生体外(インビトロ)で目的細胞(延いては組織や器官)を効率よく生産することができる。
また、ここで開示される細胞生産方法(インビトロでの細胞生産方法)や細胞増殖促進剤を採用することによって生体外(インビトロ)で効率よく生産(増殖)した目的細胞(或いは細胞数の増えた組織や器官)を、修復や再生が必要とされる患部に(即ち患者の生体内に)導入することにより、当該修復や再生に要する時間を短縮することができる。
【0036】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0037】
<実施例1:ペプチド合成>
計11種類のペプチド(サンプル1〜11)を後述するペプチド合成機を用いて製造した。表1には、これら合成ペプチドのアミノ酸配列等の情報を列挙している。
【0039】
表1に示すように、サンプル1のペプチド(配列番号104)は、N末端側に(B)パート配列として配列番号98の上記VHLタンパク質由来のアミノ酸配列を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(A)パート配列として配列番号14の上記LIMキナーゼ2由来のアミノ酸配列(NoLS)を有する合計28アミノ酸残基から成るペプチドである。
また、サンプル2のペプチド(配列番号105)は、N末端側に(B)パート配列として配列番号99の上記RACK1由来のアミノ酸配列を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(A)パート配列として配列番号14の上記LIMキナーゼ2由来のアミノ酸配列(NoLS)を有する合計27アミノ酸残基から成るペプチドである。
また、サンプル3のペプチド(配列番号106)は、N末端側に(A)パート配列として配列番号14の上記LIMキナーゼ2由来のアミノ酸配列(NoLS)を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(B)パート配列として配列番号103の上記プレラミンA由来のアミノ酸配列を有する合計28アミノ酸残基から成るペプチドである。
また、サンプル4のペプチド(配列番号107)は、N末端側に(A)パート配列として配列番号14の上記LIMキナーゼ2由来のアミノ酸配列(NoLS)を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(B)パート配列として配列番号98の上記VHLタンパク質由来のアミノ酸配列を有する合計28アミノ酸残基から成るペプチドである。
また、サンプル5のペプチド(配列番号108)は、N末端側に(A)パート配列として配列番号17の上記PTD4のアミノ酸配列を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(B)パート配列として配列番号98の上記VHLタンパク質由来のアミノ酸配列を有する合計26アミノ酸残基から成るペプチドである。
また、サンプル6のペプチド(配列番号109)は、N末端側に(A)パート配列として配列番号15の上記IBVのNタンパク質由来のアミノ酸配列(NoLS)を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(B)パート配列として配列番号98の上記VHLタンパク質由来のアミノ酸配列を有する合計23アミノ酸残基から成るペプチドである。
また、サンプル7のペプチド(配列番号110)は、N末端側に(A)パート配列として配列番号16の上記HIVのTAT由来のアミノ酸配列を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(B)パート配列として配列番号98の上記VHLタンパク質由来のアミノ酸配列を有する合計26アミノ酸残基から成るペプチドである。
また、サンプル8のペプチド(配列番号111)は、N末端側に(A)パート配列として配列番号17の上記PTD4のアミノ酸配列を有し、該配列に隣接してそのC末端側に(B)パート配列として配列番号24の上記hSOCS−6由来のアミノ酸配列を有する合計26アミノ酸残基から成るペプチドである。
【0040】
また、表1に示すように、サンプル9は、(A)パート配列である配列番号14の上記LIMキナーゼ2由来のアミノ酸配列のみから成る合計13アミノ酸残基のペプチドである。
また、サンプル10は、(A)パート配列である配列番号17の上記PTD4のアミノ酸配列のみから成る合計11アミノ酸残基のペプチドである。
また、サンプル11は、(A)パート配列である配列番号15の上記IBVのNタンパク質由来のアミノ酸配列のみから成る合計11アミノ酸残基のペプチドである。
【0041】
なお、いずれのペプチドも、C末端アミノ酸のカルボキシル基(−COOH)はアミド化(−CONH
2)されている。いずれのペプチドも、市販のペプチド合成機(Intavis AG社製品)を用いてマニュアルどおりに固相合成法(Fmoc法)を実施して合成した。なお、ペプチド合成機の使用態様自体は本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0042】
<実施例2:合成ペプチドの細胞増殖促進活性評価>
上記実施例1で得られた細胞増殖促進ペプチド(サンプル1〜8)及び比較例として合成した(A)パート配列のみから成るペプチド(サンプル9〜11)のそれぞれについて細胞増殖促進活性を調べた。また、対象として市販されるbFGFを細胞増殖促進剤として使用した実験区をサンプル12とした。また、対象区としてペプチド無添加区(勿論bFGFを添加していない。)をサンプル13とした。評価試験の詳細は以下のとおりである。合成した各サンプルペプチドは、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶かし、ペプチド濃度が1mMのストック液を調製した。
【0043】
ラットの骨髄由来の幹細胞(間葉系幹細胞)を供試細胞とした。具体的には、供試幹細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS:Gibco社製品)、2mMのL−グルタミン、50ユニット/mLのペニシリン、及び50μg/mLのストレプトマイシンを含むダルベッコのMEM培地(DMEM培地:Gibco社製品)で継代培養した。2継代目(パッセージ2)を本評価試験に使用した。
而して、予め10ng/mLのbFGFを含む上記DMEM培地で一晩プレ培養した供試幹細胞を回収し、細胞数が1ウェルあたり1×10
3個となるように96穴(ウェル)プレートの各ウェルに播種した。このときの培地量はウェルあたり100mLとした。
次いで、ウェル中のペプチド濃度が2μMとなるように、各ウェルにサンプル1〜11のいずれかのペプチドの上記ストック液を注入した。また、比較のため、一部のウェルに濃度が10ng/mLとなるように市販のbFGF(PeproTech社製品)を添加した(サンプル12)。また、いずれのサンプルペプチドもbFGFを添加しないウェルを設けた(サンプル13)。
【0044】
上記のようにしてサンプルペプチド若しくはbFGFを添加後、当該96穴(ウェル)プレートを、CO
2インキュベータ内に配置し、37℃、5%CO
2条件下で静置培養した。なお、培地の交換は一日おきとした。交換培地は培養開始時に使用したものと同じである(即ち、サンプルペプチド若しくはbFGFの添加区では同様にサンプルペプチド若しくはbFGFを交換培地にも添加した。)。
かかる培養試験中において、培養開始時点(day0)と、培養開始から2日経過時点(day2)と、培養開始から4日経過時点(day4)に、一部のウェルに発色試薬として「水溶性テトラゾリウム塩(WST−8)」を添加した。添加から2時間インキュベートした後、該発色試薬を添加した細胞培養液を回収した。そして、テトラゾリウム塩の還元に基づき波長450nmの吸光度(OD
450)を測定する比色法により、細胞増殖の程度を評価した。結果を表2に示す。
【0046】
表2に示す吸光度から明らかなように、ここで開示される細胞増殖促進ペプチド(サンプル1〜8)を添加した培養区では、bFGFを添加した培養区(サンプル12)と同等かそれ以上の細胞増殖能の向上が認められた。このことは、これらサンプルペプチドが極めて良好な細胞増殖促進活性を有するペプチドであることを示している。特に、(A)パート配列としてNoLS由来のアミノ酸配列を有するペプチド(例えばサンプル1〜4,6)やTAT由来のアミノ酸配列を有するペプチド(サンプル7)は、特に顕著な細胞増殖促進活性を有していた。
図1、
図2、
図3は、それぞれ、サンプル1、2、3を添加した培養区の培養開始から3日経過時点で撮影した顕微鏡写真である。これら顕微鏡写真と
図4のサンプル13の培養区(即ちペプチド無添加区)の培養開始から3日経過時点で撮影した顕微鏡写真とを比較すると、ここで開示される細胞増殖促進ペプチドの細胞増殖促進活性の高さが視覚的にも確認された。
また、詳細なデータは示していないが、本実施例において増殖・生産された供試幹細胞を回収し、市販の材料を用いてこの種の幹細胞に対して行われる一般的な骨分化誘導処理を行ったところ、正常な骨分化が認められた。このことは、ここで開示される細胞増殖促進ペプチド(細胞増殖促進剤)によると、増殖対象の細胞に異常(例えば癌化)をきたすことなく正常に細胞増殖が促進され得ることを示している。
【0047】
<実施例3:顆粒剤の調製>
サンプル1のペプチド50mgと結晶化セルロース50mg及び乳糖400mgとを混合した後、エタノールと水の混合液1mLを加え混練した。この混練物を常法に従って造粒し、細胞増殖促進ペプチドを主成分とする顆粒剤(即ち、顆粒状の細胞増殖促進剤)を得た。