特許第6011917号(P6011917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011917
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】合成樹脂製角形容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20161011BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B65D1/02 221
   B65D1/00 120
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-170088(P2012-170088)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28630(P2014-28630A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】上杉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】布施 佳広
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩通
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/075252(WO,A2)
【文献】 特開2007−290761(JP,A)
【文献】 特開2001−315741(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/067419(WO,A2)
【文献】 米国特許第04387816(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4ケの側壁(5)で構成される胴部(4)と、該胴部(4)にテーパー筒状の肩部(3)を介して立設された口筒部(2)と、前記4ケの側壁(5)のうち相対する一対の第1側壁(5A)に前記胴部(4)の略全高さ範囲に亘って形成された減圧吸収パネル(10)と、を有してなる有底四角筒状の合成樹脂製角形容器であって、
前記減圧吸収パネル(10)の外周に、前記第1側壁(5A)の表面から容器内方に向かう立上り壁面(14)を有する凸リブ(13)が、前記減圧吸収パネル(10)を有する第1側壁(5A)の幅方向の両端位置に、これと隣接して配置される減圧吸収パネル(10)を有しない他方の第2側壁(5B)を用いて形成されていることを特徴とする合成樹脂製角形容器。
【請求項2】
減圧吸収パネル(10)、可動自在に設けられたパネル部(11)と前記パネル部(11)の周囲を取り囲む周溝(12)とを有して形成され、凸リブ(13)前記周溝(12)から立上り壁面(14)を介して連続する構成とされている請求項1記載の合成樹脂製角形容器。
【請求項3】
第1側壁(5A)に対する立上り壁面(14)の傾斜角75°以上90°以下の範囲で形成されている請求項1又は2記載の合成樹脂製角形容器。
【請求項4】
周溝(12)の底部からパネル部(11)前面に続くパネル傾斜面(15)の、第1側壁(5A)に対する傾斜角度40°以上50°以下の範囲で形成されている請求項1ないし3のいずれか一項に記載の合成樹脂製角形容器。
【請求項5】
凸リブ(13)の頂部に小溝(16)が形成されている請求項1ないしのいずれか一項に記載の合成樹脂製角形容器。
【請求項6】
パネル部(11)の平面形状亀甲形状で形成されている請求項1ないしのいずれか一項に記載の合成樹脂製角形容器。
【請求項7】
4ケの側壁(5)で構成される胴部(4)と、該胴部(4)にテーパー筒状の肩部(3)を介して立設された口筒部(2)と、前記4ケの側壁(5)のうち相対する一対の第1側壁(5A)に前記胴部(4)の略全高さ範囲に亘って形成された減圧吸収パネル(10)と、前記減圧吸収パネル(10)の外周に、前記一対の第1側壁(5A)の表面から容器内方に向かう立上り壁面(14)を有する凸リブ(13)が形成された有底四角筒状の合成樹脂製角形容器の製造方法であって、
金型(20)内に加熱状態のプリフォーム(P)を設置し、加圧エアを口筒部(2)からプリフォーム(P)内に供給してブロー成形する第1工程と、前記第1工程中に前記金型(20)内を移動自在に設けられた入り子(24)を押し込んでブロー中のプリフォーム(P)の相対する胴部の両側壁に前記減圧吸収パネル(10)及び前記凸リブ(13)を形成する第2工程と、を有することを特徴とする合成樹脂製角形容器の製造方法。
【請求項8】
第2工程が、凸リブ(13)の頂部に小溝(16)を形成する工程を含むものである請求項記載の合成樹脂製角形容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製の角形容器に関し、特には高温で充填される飲料用の合成樹脂製角形容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す。)樹脂製等の合成樹脂製容器は水、スポーツ飲料、お茶、ジュース等の飲料用として、例えば特許文献1に示すような胴部の平断面形状を角取りした正方形状の角形容器が幅広く使用されている。
【0003】
この種の容器が、所謂耐熱角形ボトルとして使用される場合、即ち内容液を殺菌の目的で80〜95℃程度の高温で充填する耐熱ボトルの用途では、充填後の内容液の温度の低下に伴ない内部が減圧状態となる。このため、耐熱ボトルの胴部には、減圧状態における胴部の周壁の局所的な陥没状の変形を防いだり、外観的に目立たないようにする減圧吸収機能を発揮させるための減圧吸収パネルが形成されている。
【0004】
また、内容量が350ml以下の比較的小型の角形ペットボトルでは、減圧吸収パネルを形成する面積が制限されるので、減圧吸収機能を十分発揮させるために、縦長矩形状の減圧吸収パネルを胴部の高さ範囲のほぼ全面に亘って形成している。
【特許文献1】特開2011−31900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大量に生産されるペットボトルの分野では、省資源、材料費削減の点から、軽量化、すなわち壁厚の薄肉化が要請されている。
しかし、一方的な軽量化による薄肉化は、胴部の周壁の面剛性や座屈強度を低下させ、減圧吸収機能が十分に発揮され難くなるという問題がある。
【0006】
また角形ボトル自体の形状が変形して外観が損なわれやすくなるため、内容液の充填ラインや自動販売機内での詰まり等のトラブルが発生しやすくなるという問題もある。
【0007】
そこで本発明は、減圧吸収パネルを有する比較的小型の合成樹脂製角形容器おいて、薄肉であっても、容器の剛性や座屈強度を確保しながら減圧吸収機能を十分に発揮することを可能とする合成樹脂製角形容器及びその製造方法を創出することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段のうち、第1発明の主たる構成は、
4ケの側壁で構成される胴部と、胴部にテーパー筒状の肩部介して立設された口筒部と、4ケの側壁のうち相対する一対の第1側壁に胴部の略全高さ範囲に亘って形成された減圧吸収パネルと、を有してなる有底四角筒状の合成樹脂製角形容器であって、減圧吸収パネルの外周に、第1側壁の表面から容器内方に向かう立上り壁面を有する凸リブが、減圧吸収パネルを有する第1側壁の幅方向の両端位置に、これと隣接して配置される減圧吸収パネルを有しない他方の第2側壁を用いて形成されていることを特徴とする、と云うものである。
【0009】
第1発明の主たる構成では、減圧吸収パネルの周囲に形成された凸リブが、容器内方に立ち上がる立上り壁面を備えており、容器を軽量化及び薄肉化しても、この立上り壁面がより高い剛性や座屈強度の確保を達成する。
また凸リブを形成する一方の面を立上り壁面で形成し、他方の面を第2側壁で形成することにより、剛性や座屈強度に優れた凸リブを達成する。
【0010】
また本発明の他の構成は、上記記載の発明において、減圧吸収パネル、可動自在に設けられたパネル部とパネル部の周囲を取り囲む周溝とを有して形成され、凸リブ周溝から立上り壁面を介して連続する構成とされている、と云うものである。
【0011】
上記構成では、パネル部と凸リブとが周溝を介して連結される構成となり、高い剛性や座屈強度の確保しつつ減圧吸収時のパネル部の適切な可動を達成する。
【0014】
また本発明の他の構成は、上記のいずれかに記載の発明において、第1側壁に対する立上り壁面の傾斜角75°以上90°以下の範囲で形成されている、と云うものである。
【0015】
上記構成では、凸リブの形状がシャープとなり、高い剛性や座屈強度の発揮を達成する。
【0016】
また本発明の他の構成は、上記いずれかに記載の発明において、周溝の底部からパネル部前面に続くパネル傾斜面(15)の、第1側壁に対する傾斜角度が40°以上50°以下の範囲で形成されている、と云うものである。
【0017】
上記構成では、減圧吸収パネルが有効に機能すると共に、減圧吸収パネルを有する第1側壁に垂直に作用する外力及びこれと直交する第2側壁に対して垂直に作用する外力に対して略均等の傾斜角度を有することになるから、高い剛性や座屈強度の発揮を達成し得る。
【0018】
また本発明の他の構成は、上記いずれかに記載の発明において、凸リブの頂部に小溝が形成されている、と云うものである。
【0019】
上記構成では、少なくとも減圧吸収パネルを有する第1側壁に隣接して直交配置された第2側壁に対して垂直方向から作用する外力に対する剛性や座屈強度の維持を達成する。
【0020】
また本発明の他の構成は、上記いずれかに記載の発明において、パネル部の平面形状亀甲形状で形成されている、と云うものである。
【0021】
上記構成では、比較的大きな減圧吸収量の確保を達成する。
【0022】
次に、第2発明の主たる構成は、4ケの側壁で構成される胴部と、胴部にテーパー筒状の肩部を介して立設された口筒部と、4ケの側壁のうち相対する一対の第1側壁に胴部の略全高さ範囲に亘って形成された減圧吸収パネルと、減圧吸収パネルの外周に、一対の第1側壁の表面から容器内方に向かう立上り壁面を有する凸リブが形成された有底四角筒状の合成樹脂製角形容器の製造方法であって、
金型内に加熱状態のプリフォームを設置し、加圧エアを口筒部からプリフォーム内に供給してブロー成形する第1工程と、第1工程中に金型内を移動自在に設けられた入り子を押し込んでブロー中のプリフォームの相対する胴部の両側壁に減圧吸収パネル及び凸リブを形成する第2工程と、を有することを特徴とすることを特徴とする、と云うものである。
【0023】
第2発明である合成樹脂製角形容器の製造方法の主たる構成では、ブロー成形中に所定のタイミングで入り子を押し込むことにより、減圧吸収パネルとその外周に凸リブを有する合成樹脂製角形容器の製造を達成する。
【0024】
また本発明の他の構成は、上記記載の発明において、第2工程が、凸リブの頂部に小溝を形成する工程を含むものである、と云うものである。
【0025】
上記構成では、第2工程において、減圧吸収パネル及び凸リブを形成と同時に、凸リブの頂部に小溝を一体的に形成することを達成する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1に記載の第1発明の主たる構成においては、軽量化及び薄肉化しても十分な減圧吸収機能を発揮することができると共に、高い剛性や座屈強度を備えた合成樹脂製角形容器とすることができる。
特に減圧吸収パネルに垂直方向から作用する荷重に対する剛性や座屈強度を高めることができる。
【0027】
また請求項2に記載の、減圧吸収パネル、可動自在に設けられたパネル部と前記パネル部の周囲を取り囲む周溝とを有して形成され、凸リブ周溝から立上り壁面を介して連続する構成では、パネル部と凸リブとの間に深さ寸法の深い周溝を配設することで可動量が大きくなり、減圧吸収量を大幅に増大させることが可能となる。
【0029】
また請求項に記載の、第1側壁に対する立上り壁面の傾斜角75°以上90°以下の範囲で形成されている構成では、周溝から凸リブに続く立上り壁面が略垂直となるため、凸リブをシャープな形状とすることができる。これにより、特に減圧吸収パネルに対して垂直となる方向の剛性や座屈強度を向上させることが可能となる。
【0030】
また請求項に記載の、周溝の底部からパネル部前面に続くパネル傾斜面の、第1側壁に対する傾斜角度を40°以上50°以下の範囲で形成されている構成では、パネル部が効率良く可動することが可能となることから大きな可動量による減圧吸収量の増大と、あらゆる方向から作用する外力に対しての剛性や座屈強度を向上させることができる。
【0031】
また請求項に記載の、凸リブの頂部に小溝が形成されている構成では、特に容器に対するZ方向(垂直荷重)の座屈強度及び胴部に対するY方向(横荷重)の剛性を向上させることができる。
【0032】
また請求項に記載の、パネル部の平面形状亀甲形状で形成されている構成では、比較的大きな面積を確保することができるため、大きな減圧吸収量を確保することができる。
【0033】
次に、請求項に記載の第2発明の主たる構成においては、第1工程により、金型に取付けたプリフォームの内部に加圧エア等を供給して内圧を付与することにより、プリフォームが膨張して延伸されたブロー容器の胴部及び底部を形成することができる。そして、第2工程により、ブロー成形された中間形状の容器の胴部側壁に対し、十分な減圧吸収量を発揮する減圧吸収パネルの成形と高い座屈強度を発揮する凸リブの成形とを同時に行うことができる。
【0034】
また請求項に記載の、第2工程が、凸リブの頂部に小溝を形成する工程を含むものであるとの構成では、特に胴部のY方向(横荷重)に対する剛性とZ方向(垂直荷重)に対する座屈強度を向上させることを可能とする小溝の成形を、パネル部及び凸リブの成形と同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の合成樹脂製角形容器の一実施例を示す正面図である。
図2図1に示す合成樹脂製角形容器の側面図である。
図3図1に示す合成樹脂製角形容器の上面図である。
図4図1に示す合成樹脂製角形容器の底面図である。
図5図1に示す合成樹脂製角形容器を図3の矢印V方向から見た状態を示す図である。
図6図1のIV−IV線において切断した状態を示す横断面図である。
図7図1のIIV−IIV線において切断した状態を示す縦断面図である。
図8図1のIV−IV線において切断した断面の他の実施例を示す横断面図である。
図9】本発明の合成樹脂製角形容器の製造方法の一工程として金型の構造の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の合成樹脂製角形容器の一実施例を示す正面図、図2図1に示す合成樹脂製角形容器の側面図、図3図1に示す合成樹脂製角形容器の上面図、図4図1に示す合成樹脂製角形容器の底面図、図5図1に示す合成樹脂製角形容器を図3の矢印V方向から見た状態を示す図、図6図1のIV−IV線において切断した状態を示す横断面図、図7図1のIIV−IIV線において切断した状態を示す縦断面図である。
【0037】
図1以下に示す合成樹脂製角形容器1(以下、「容器1」という)は、PET樹脂製の軽量で且つ薄肉な2軸延伸ブロー成形品であり、例えば全高さが150mm、容量が185ml、重量は19g乃至21gからなる比較的小型で薄肉軽量の角形の容器1である
容器1は、上側の角部の4箇所及び下側の角部の4箇所を略三角形の角取り面1aで角取りすることにより正面方向及び側面方向から見た形状が略亀甲形状であり、且つ高さ方向の中心部における断面形状が略正方形状であって全体的には略四角筒状からなる胴部4と、この胴部4の上端にテーパー筒状からなる肩部3を連設し、この肩部3の上端に、外周面に螺条およびネックリングを設けた円筒状の口筒部2を起立設した形状である。なお、胴部4の下端には底部6が設けられている。
【0038】
胴部4は、略亀甲形状からなる4ケの側壁5を有し、このうち互いに対向し合う一方の第1側壁5A,5Aと同じく互いに対向し合う他方の第2側壁5B,5Bとが互い略直交するように配設されて構成されている。
【0039】
第1側壁5Aには、胴部4の略全高さ範囲に亘る減圧吸収パネル10が形成されている。減圧吸収パネル10は、容器1の内方及び外方に対し可動自在に設けられたパネル部11と、このパネル部11の周囲を取り囲むように陥没形成された周溝12とを有して構成されている。そして、この減圧吸収パネル10の外側の周囲には、容器1の外方向に突出する凸リブ13が一対に形成されている。
【0040】
より詳細に説明すると、減圧吸収パネル10は最深部を周溝12とし、この周溝12の内側に周溝12から外方向にパネル傾斜面15を介して略亀甲形状に膨出形成されたパネル部11が設けられている。また周溝12の外側の位置には、この周溝12から立上り壁面14を介して連続する凸リブ13が形成されている。
【0041】
上記のように凸リブ13の一方の面(内側の面)は周溝12から続く立上り壁面14で形成されるが、高さ方向の中心領域M(図1参照)では、他方の面(外側の面)が第2側壁5Bを利用して形成されている。
【0042】
ここで図6に示すように、凸リブ13の内側の面を構成する立上り壁面14の傾斜角度、すなわち減圧吸収パネル10を有する一方の第1側壁5Aに対する立上り壁面14の傾斜角度θ1は、75°以上90°以下の範囲が好ましい。この範囲に設定すると、凸リブ13の形状をシャープにすることができ、特に減圧吸収パネル10に対して垂直となる方向(図6のY方向)に対する剛性や座屈強度を向上させることが可能となる。
【0043】
またパネル部11の一部を構成するパネル傾斜面15の傾斜角度、すなわち減圧吸収パネル10を有する一方の第1側壁5Aに対するパネル傾斜面15の傾斜角度θ2は、40°以上50°以下の範囲が好ましい。
【0044】
このような範囲にすると、パネル部11が効率良く可動することが可能となり大きな可動量による減圧吸収量の増大が見込める。またパネル傾斜面15は、パネル部11に垂直に作用するY方向の外力、及びこれと直交する第2側壁5Bに対して垂直に作用するX方向の外力に対して略均等の傾斜角度を有することになるため、胴部4の剛性や座屈強度を高める効果が期待できる。
【0045】
図8図1のIV−IV線において切断した断面の他の実施例を示す横断面図である。
図8に他の実施例として示す容器1の横断面図が、上記図6の実施例に示した横断面図と異なる点は凸リブ13の頂部に小溝16を形成した点にあり、その他の構成は図6の実施例と同様である。
このように凸リブ13の頂部に小溝16を形成した構成では、特に減圧吸収パネル10を有しない第2側壁5Bに対して垂直となるX方向の剛性を維持して座屈強度を向上させることができる。
【0046】
次に、本実施形態による容器1の製造方法を説明する。
図9は本発明の合成樹脂製角形容器の製造方法の一工程として金型の構造の概略を示す縦断面図である。
【0047】
容器1は、図9に示すように、ブロー成形用の割り金型20により成形される。割り金型20は、左成形金型部21、右成形金型部22、ストレッチロッド23及び左成形金型部21と右成形金型部22とで形成される金型内を自在に移動する入り子24等を備えて構成されている。入り子24の外縁には減圧吸収パネル10の外側に周溝12を形成するための突状部24aが周設されている。なお、必要に応じて容器1の底部6を金型内方に突き出させるための突き上げロッド25を備える場合もある。
【0048】
金型20による容器1の成形においては、左成形金型部21、右成形金型部22を用いて両側から加熱状態にあるプリフォームPを挟み込む。
そして、加熱されたプリフォームPの口筒部2からの加圧エアを供給し、ストレッチロッド23による押し下げ引き伸ばしにより、二軸延伸された中間形状の容器を形成する(第1工程)。
【0049】
次に図9に示すように、左右の入り子24,24を互いに接近する方向に同時に移動させる。そして、突状部24aを中間形状の容器の胴部に対して両側から同時に押し込むことにより、一方の第1側壁5A,5Aにパネル部11及び周溝12を有する減圧吸収パネル10及び凸リブ13が同時に形成される(第2工程)。
【0050】
一方の入り子24は左成形金型部21内に設けられたスライド上面21aとスライド下面21bを基準面として、他方の入り子24は右成形金型部22内に設けられたスライド上面22aとスライド下面22bを基準面として、それぞれスライド移動できるようになっている。そして、スライド上面21a,22a及びスライド下面21b,22bの延長線上に容器1の凸リブ13の頂部がそれぞれ位置するように設定されている。
【0051】
入り子24,24を移動させるタイミングは、第1工程の途中、すなわちプリフォームPが二軸延伸されて膨出変形する過程の任意のタイミングで行うことができる。そして、このタイミングの調整はエアー圧力、スライド量等を調整しながら入り子24,24をスライド上面21a,22a及びスライド下面21b,22bに沿ってスライド移動させて中間形状の容器の胴部に当接させ、さらに入り子24,24の上先端部24b及び下先端部24cを各凸リブ13の頂部に相当する部分に押し込むことにより、凸リブ13の頂部に小溝16が形成されることになる。
【0052】
最後に割り金型20が分割され、内部から容器1が取り出される。金型20から取り出された容器1は、第1側壁5A,5Aに減圧吸収パネル10とその周囲に設けられる凸リブ13、さらに加えて小溝16が一体に形成された構成であり、軽量で薄肉に形成しても高い剛性や座屈強度を有すると共に、大きな減圧吸収機能を発揮するため、耐熱ボトルとしての十分な機能を備えたものとなる。
【0053】
次に、入り子を移動させないで形成したパネル部を有する合成樹脂製角形容器(容器サンプルA)、入り子を移動させて形成したパネル部を有する合成樹脂製角形容器(容器サンプルB)及び入り子を移動させて形成したパネル部を有すると共に凸リブ13の頂部に小溝16を備えた合成樹脂製角形容器(容器サンプルC)について減圧吸収量及びボトル剛性についての測定結果を以下に説明する。
表1は減圧吸収量の測定結果を示し、表2はボトル剛性の測定結果を示している。なお、表1、2中のZ方向は垂直荷重(図1参照)、Y方向はパネル部に対する横荷重(図6参照)、X方向は胴部に対する横荷重(図6参照)をそれぞれ示している。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
減圧吸収量の測定方法及びボトル剛性の測定方法は以下の通りである。
(減圧吸収容量の測定方法)
充填されたボトル中の水を1ccずつ抜いていき、ボトルが変形するまでの抜水量と減圧度を測定する。
(座屈強度の測定法)
Z方向(垂直荷重)用の座屈強度測定器として島津製作所製のAGXR−2000を使用し、垂直荷重を降下速度50mm/minにて加えて空ボトルが変形するまでの座屈強度を測定する。
(胴部剛性の測定法)
Y方向(横荷重)及びX方向(横荷重)用の強度測定器として島津製作所製のAGXR−2000を使用し、φ20mmの丸棒をボトル中央部径方向に設置し、Y方向及びX方向にそれぞれに横荷重を降下速度50mm/minにて加えて胴部が変形するまでの強度をそれぞれ測定する。
【0057】
(減圧吸収容量の測定結果)
減圧吸収容量は、表1のテストNo.1,2に示すように、同じボトル重量19gの容器であっては、容器サンプルBの方が容器サンプルAに比較して約1.85倍程度大きいこと、及び同じボトル重量21gの容器であっては、容器サンプルBと容器サンプルCとはほぼ同等であることが分かる。
【0058】
(Z方向(垂直荷重)の座屈強度の測定結果)
またZ方向の座屈強度は、表2のテストNo.1,2に示すように、同じボトル重量19gの容器であっては、容器サンプルBの方が容器サンプルAに比較して約23.4%程度優れていること、及び表2のテストNo.3,4に示すように、同じボトル重量21gの容器であっては、容器サンプルCの方が容器サンプルBに比較して約9.0%程度優れていることが分かる。
【0059】
(Y方向(横荷重)の強度の測定結果)
またY方向の強度は、表2のテストNo.5,6に示すように、同じボトル重量19gの容器であっては、容器サンプルBの方が容器サンプルAに比較して約2倍程度優れていること、及び表2のテストNo.7,8に示すように、同じボトル重量21gの容器であっては、容器サンプルBと容器サンプルCとはほぼ同等であることが分かる。
【0060】
(X方向(横荷重)の強度の測定結果)
さらにX方向の強度は、表2のテストNo.9,10に示すように、同じボトル重量19gの容器であっては、容器サンプルBの方が容器サンプルAに比較して若干劣ることになるが、表2のテストNo.11,12に示すように、ボトル重量を21gとした場合には、容器サンプルCは容器サンプルBとはほぼ同等の強度を維持することが分かる。
【0061】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、第1側壁5A、第2側壁5Bの形状及びパネル部11の形状が略亀甲形状の場合を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば縦長矩形状などその他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の成樹脂製角形容器及びその製造方法は、薄肉の比較的小型のボトルにおいて、容器の剛性や座屈強度を確保しながら減圧吸収機能を十分に発揮するものであり、耐熱角形ボトル分野での幅広い用途展開が期待される。
【符号の説明】
【0063】
1 ; 容器
1a ; 角取り面
2 ; 口筒部
3 ; 肩部
4 ; 胴部
5 ; 側壁
5A ; 第1側壁(側壁)
5B ; 第2側壁(側壁)
6 ; 底部
10 ; 減圧吸収パネル
11 ; パネル部
12 ; 周溝
13 ; 凸リブ
14 ; 立上り壁面
15 ; パネル傾斜面
16 ; 小溝
20 ; 割り金型
21 ; 左成形金型部
21a; スライド上面
21b; スライド下面
22 ; 右成形金型部
22a; スライド上面
22b; スライド下面
23 ; ストレッチロッド
24 ; 入り子
24a; 突状部
24b; 上先端部
24c; 下先端部
25 ; 突き上げロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9