(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6011954
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ビートハーベスタにおけるビート茎葉処理用フイーラ―ホイールタッパの下限位置調整機構
(51)【国際特許分類】
A01D 23/02 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
A01D23/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-4827(P2016-4827)
(22)【出願日】2016年1月13日
【審査請求日】2016年1月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501402523
【氏名又は名称】日農機製工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073656
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 直義
(72)【発明者】
【氏名】安久津 昌義
(72)【発明者】
【氏名】小倉 尚勝
(72)【発明者】
【氏名】中川 勇
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3833629(JP,B2)
【文献】
特許第4705477(JP,B2)
【文献】
特開2003−1589(JP,A)
【文献】
実公平3−31132(JP,Y2)
【文献】
仏国特許発明第1252752(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00 − 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ等に牽引されるハーベスタの架台基盤に四点平行リンクと上下付勢バネを介して上下平行移動可能に軸支された支持フレーム(7)に、外周面に凹凸接地縁片を形成したフイーラホイール(9)を軸支し、該支持フレーム(7)の下部にカッター(10)を一体結合したフイーラホイールタッパ(3)において、前記支持フレーム(7)の後方へ向けて係合アーム(11)を一体形成するとともに、架台(2)に上部受け入れ部(13)、(13)と左右開放フレーム(14)、(14)を有する係合支持部材(12)を前記フイーラホイールタッパ(3)の係合アーム(11)に対向配設し、前記係合支持部材(12)は、上部受け入れ部(13)、(13)間に前記係合アーム(11)を受け止める係止部材(16)を開閉可能に設けるとともにその下方の左右開放フレーム(14)、(14)に前記係合アーム(11)の先端回動軌跡に沿った複数のピン孔(15)群を円弧状に形成し、フイーラホイールタッパ(3)の係合アーム(11)を前記係合支持部材(12)の閉鎖時係止部材(16)に係止させたうえで、左右開放フレーム(14)、(14)の相対する任意の平行ピン孔(15)、(15)間にタッパ本体の前記係合アーム(11)を係合させる受け部材(18)を差し換えピン(19)を介して着脱可能に置換できる構成にしたことを特徴とするフイーラホイールタッパの下限位置調整機構
【請求項2】
係合支持部材(12)の上部に係合アーム(11)を支持する係止部材(16)を回動梃子部材(20)とともに枢支し、回動梃子部材(20)の自由端側と係止部材(16)間にスプリング(17)を架設したことをさらに特徴とする請求項1記載のフイーラホイールタッパの下限位置調整機構
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等で牽引されるビートハーベスタに取付けて、圃場を走行しながらビート列のビート茎葉部と頭頂部をカッターで切断するフイーラホイールタッパの下限位置調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ビートハーベスタは、
図6に例示するように、ビートの収穫と同時並行でビート頭頂部茎葉を切断するために、刃先を矢印A進行方向に向けたカッターを一体に取付けたフィーラホイールタッパ(以下、タッパという)を具備している。
この茎葉処理作業は駆動力により作業機牽引速度よりも若干速い速度(例えば1.2倍程)で回転するフイーラホイールの支持フレームに水平カッターを取り付けたタッパが使用され、フイーラホイール本体の外周凹凸縁辺をビート頭頂部に若干食い込ませて押しあて、速度の違いでビートを後方へ蹴るようにして走行しながらビート茎葉を含む頭頂部をカッターで切断するようになっている。
【0003】
タッパは平行リンク機構を介して支持されており、これによりビートの圃場面に追従して上下動するが、天候や畝の土質・形崩れなどでタッパの急激な上下移動が起こるとビートの深切りなどの損失が生ずる。これを防止するために、必要に応じて、従来はタッパ支持フレームの先端を下限設定チェーンで吊り下げ、チェーン長さを調整することによってタッパの高低を予め調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開20077−116964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のタッパ高さ調整機構は、重いタッパを持ち上げながらチエ―ンの長さを調整してタッパ下限位置を設定する構成であるため一人作業では困難であった。
また、タッパは不使用時には架台後部のブラケットに係止させて格納状態に保持する必要があるが、この作業も重いタッパ本体の持ち上げとブラケットへの係着を同時に操作しなければならないため一人作業は一層困難であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、重いフイーラホイールタッパの下限位置を簡単な操作で任意位置に調整でき、且つ、所定の格納位置に着脱することができるフイーラホイールタッパの高さ調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、トラクタ等に牽引されるハーベスタの架台基盤に四点平行リンクと上下付勢バネを介して上下平行移動可能に軸支された支持フレームに、外周面に凹凸接地縁片を形成したフイーラホイールを軸支し、該支持フレームの下部にカッターを一体結合したフイーラホイールタッパにおいて、前記支持フレームの後方へ向けて係合アームを一体形成するとともに、架台に上部受け入れ部と左右開放フレームを有する係合支持部材を前記フイーラホイールタッパの係合アームに対向配設し、前記係合支持部材は、上部受け入れ部に前記係合アームを受け止める係止部材を開閉可能に設けるとともにその下方の左右開放フレームに前記係合アームの先端回動軌跡に沿った複数のピン孔群を円弧状に形成し、フイーラホイールタッパの係合アームを前記係合支持部材の閉鎖時係止部材に係止させたうえで、左右開放フレームの相対する任意の平行ピン孔間にタッパ本体の前記係合アームを係合させる受け部材を差し換えピンを介して着脱可能に置換することによりフイーラホイールタッパの高さ(下限位置)を調整できるようにしたことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記係合支持部材の上部に係合アームを支持する係止部材を回動梃子部材とともに枢支し、回動梃子部材と係止部材間に梃子を回動により付勢を反転するスプリングを架設する。
【発明の効果】
【0009】
タッパ後端の係合アームを係合支持部材の閉鎖係止部材に係支させ、タッパの自重を受けない環境下で、任意のピン孔にピンを差し換えるだけでタッパの下限位置(高さ)を安全、且つ、容易に調節することができる。
【0010】
タッパ後端の係合アームを係合部材の上部に係着するだけでタッパが格納状態に保持される。従って、タッパの格納状態―使用状態の切り替え操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるタッパ下限位置調整機構の側面図
【
図2a】一部を縦断面図で示した
図1の要部作用説明図
【
図2b】一部を縦断面図で示した
図1の要部作用説明図
【
図5a】本発明によるタッパ下限位置調整機構の作用説明図
【
図5b】本発明によるタッパ下限位置調整機構の作用説明図
【
図5c】本発明によるタッパ下限位置調整機構の作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を添付の図面に基づいて説明する。
本発明は、上記フイーラホイールタッパ3において、タッパ3を軸着した支持フレーム7の後方へ向けて係合アーム11を一体形成するとともに、ハーベスタ後方の架台2に前記タッパ3の係合アーム11の先端が選択的に係止される係合支持部材12が対向配設されている。
【0013】
前記係合支持部材12は上部受け入れ部13の下方に左右対の開放フレーム14、14を一体に有し、該開放フレーム14、14には前記タッパ側係合アーム11の先端回動軌跡に対応する位置に複数対のピン孔15群が上下方向に円弧状に形成されている。
円弧状に形成されたピン孔群15の相対するピン孔15、15間にピン19を通して支持された受け部材18が装着されており、ピン19の位置換えで受け部材18を任意の高さに調整できる構成になっている。
【0014】
他方、係合支持部材12の上部には左右フレーム14、14間を選択的に開閉して閉鎖時には前記係合アーム11先端を支持し、開放時には左右フレーム14、14間を開放して前記係合アーム11の下方通過を許容する係止部材16が回動梃子部材20と切換えスプリング17を介して配設されている。
【0015】
かくして、
図2a、
図5aに示すように、係合支持部材12の回動梃子部材20を下方係止位置に回動させることによりスプリング17で係止部材16を閉鎖位置に付勢させて該係止部材16上に係合アーム11を保持させる。この状態はタッパ3の格納状態でもあるが、係合アーム11の自重がかかっていない状態にあるので、タッパ3を人力で支えることなく受け部材18のピン19を任意の位置に差し換える位置設定操作に専念できる。
【0016】
次いで、
図2b、
図5bに示すように、係合支持部材12の回動梃子部材20を上方係止位置に回動させるとスプリング17の付勢反転により係止部材16が上方へ付勢されることにより左右フレーム14、14間が開放され、係合アーム11は、
図5cに示すように、予め設定した受け部材18に係合される。
なお、図の実施例では係合アーム11の先端を係合させる係止部材16の当接面を爪状の先細のテーパー面に形成して解放状態への以降操作がスムースに行われるようにしてある。
【産業上の利用可能性】
【0017】
ビート収穫作業においてタッパの下限位置調整が容易になり、安全な一人作業が可能になる。
【符号の説明】
【0018】
1…ビート収穫作業機
2…架台
3…フイーラホイールタッパ
4…基盤
5…四点リンク
6…バネロッド
7…支持フレーム
8…凹凸接地縁辺
9…フイーラホイール
10…カッター
11…係合アーム
12…係合支持部材
13…上部受け入れ部
14…左右開放フレーム
15…ピン孔
16…係止部材
17…スプリング
18…受け部材
19…ピン
20…回動梃子部材
【要約】
【課題】タッパの下限位置を簡単な操作で任意の下限位置に調整できる高さ調整機構を提供する。
【課題を解決するための手段】上下平行移動可能に軸支された支持フレームに、外周面に接地凹凸縁片を形成したフイーラホイールを軸支し、該支持フレームの下部にカッターを一体結合したフイーラホイールタッパにおいて、前記支持フレームの後方へ向けて係合アームを一体形成する。他方、上部受け入れ部と左右開放フレームを有する係合支持部材を前記タッパの係合アームに対向配設する。前記係合支持部材は、上部受け入れ部材間に前記係合アームを受け止める係止部材を開閉可能に設けるとともにその下方の左右開放フレームに前記係合アームの先端回動軌跡に沿った複数のピン孔群を円弧状に形成する。左右開放フレームの相対する任意の平行ピン孔間に前記係合アームを係合させる受け部材を差し換えピンを介して着脱可能に置換できる構成にする。
【選択図】
図1