(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光素子およびこの発光素子から発光された光をモニタするためのモニタ光を受光する受光素子が基板上に実装された光電変換装置と、光伝送体との間に配置された状態で、前記発光素子と前記光伝送体とを光学的に結合可能とされた光レセプタクルであって、
前記発光素子からの前記光の入射および前記受光素子に向けた前記モニタ光の出射が行われる光レセプタクル本体における第1の面と、
この第1の面と反対側の前記光レセプタクル本体における第2の面上に、前記第1の面に対して所定の第1の傾斜角を有するように配置され、前記第1の面に入射した前記発光素子の前記光における一部の光が臨界角よりも大きい入射角で内部入射し、この内部入射した一部の光を、前記光伝送体に結合すべき結合光として前記光伝送体側に全反射させる結合光全反射面と、
この結合光全反射面によって全反射された前記結合光の前記光伝送体に向けた出射が行われる前記光レセプタクル本体における第3の面と、
前記第2の面上に、前記結合光全反射面に隣接するようにして前記第1の面に対して所定の第2の傾斜角を有するように配置され、前記第1の面に入射した前記発光素子の光における前記一部の光以外の他の一部の光が臨界角よりも大きい入射角で内部入射し、この内部入射した他の一部の光を、前記モニタ光として、前記結合光から分離された状態で前記第3の面側に全反射させる第1のモニタ光全反射面と、
前記第2の面上における前記第1のモニタ光全反射面に対する前記モニタ光の全反射方向側の位置に、前記結合光の光路上から逸脱するようにして前記第1の面に対して所定の第3の傾斜角を有するように配置され、前記第1のモニタ光全反射面によって全反射された前記モニタ光が臨界角よりも大きい入射角で内部入射し、この内部入射したモニタ光を前記第1の面における前記受光素子に対応する位置に向けて全反射させる第2のモニタ光全反射面と
を備ており、
前記結合光全反射面と前記第1のモニタ光全反射面とは、前記発光素子の光の内部入射方向ならびに前記結合光および前記モニタ光の全反射方向に直交する方向において点接触、または、前記結合光および前記モニタ光の全反射方向において線接触するように配置され、
前記第2のモニタ光全反射面は、前記第2の面上に凹設された凹部の内斜面からなること
を特徴とする光レセプタクル。
前記第1のモニタ光全反射面は、前記第1の面に対して前記第1の傾斜角を有するように配置されていることによって、前記モニタ光を前記結合光と一体の状態で全反射させ、
前記モニタ光は、前記第2のモニタ光全反射面において前記結合光から分離されること
を特徴とする請求項1に記載の光レセプタクル。
前記第1の面上における前記発光素子に対応する位置に、前記発光素子の光を前記結合光全反射面および前記第1のモニタ光全反射面に向けて入射させる第1のレンズ面が配置され、
前記第3の面上に、前記結合光を前記光伝送体に向けて出射させる第2のレンズ面が配置され、
前記第1の面上における前記受光素子に対応する位置に、前記モニタ光を前記受光素子に向けて出射させる第3のレンズ面が配置されていること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光レセプタクル。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバを用いた光通信には、面発光レーザ(例えば、VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の発光素子を備えた光モジュールが用いられていた。
【0003】
この種の光モジュールには、光レセプタクルと称される光モジュール部品が用いられており、この光レセプタクルは、発光素子から出射された通信情報を含む光を光ファイバの端面に結合させることによって、光ファイバを介した光送信に用いられるようになっていた。
【0004】
また、従来から、光モジュールにおいては、温度変化に対する発光素子の出力特性の安定化や光出力の調整を目的として、発光素子から出射された光(強度や光量)をモニタ(監視)するための種々の提案がなされていた。
【0005】
例えば、特許文献1および特許文献2においては、TO−CANと称されるパッケージに、発光素子とともにモニタ用の受光素子を内包した光電変換装置を利用し、発光素子からの出射光の一部をパッケージのガラス窓においてモニタ光として受光素子側に反射させることが提案されている。
【0006】
しかしながら、このようなCANパッケージ型の光電変換装置は、高周波の駆動になると、発光素子に接続された配線の部分から電磁波が漏れることによってクロストークが生じる場合があり、このような場合には、10Gbps以上の高速通信に対応することが困難となる。さらに、CANパッケージを使ったモジュールは、光レセプタクルの最大径が、例えばTO−46というCANの場合、6〜7mmになり、小型化が難しい。
【0007】
これに対して、回路基板に発光素子が実装された基板実装型の光電変換装置においては、CANパッケージ型のようなクロストークの問題はなく、また、部品点数およびコストの削減ならびに小型化が可能等の利点を有する。しかし、その一方で、ガラス窓を有しないため、光電変換装置側にモニタ光を発生させる機能を備えることは困難であった。
【0008】
そこで、これまでにも、例えば、特許文献3に示すように、基板実装型の光電変換装置に対応すべく、光レセプタクル側に、発光素子からの出射光の一部をモニタ光として受光素子側に反射させるための反射面を形成することによって、モニタをともなう安定的な高速通信を実現するための提案がなされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献3に記載の発明においては、発光素子の光が、光レセプタクルを透過した後に、光ファイバの端面において光電変換装置の基板に垂直な方向に取り出されるように構成されている。
【0011】
しかるに、光モジュールの使用態様によっては、発光素子の光を、光ファイバの端面において基板に沿った方向に取り出すことが求められる場合があり、このような場合に、モニタをともなう光送信を好適に行うためには、光の取り出し方向が異なる特許文献3に記載の発明とは自ずと違った新たな手法が求められる。
【0012】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、発光素子の光を光伝送体において基板に沿った方向に取り出すようなモニタをともなう光送信を、適正かつ低コストで実現することができる光レセプタクルおよびこれを備えた光モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る光レセプタクルの特徴は、発光素子およびこの発光素子から発光された光をモニタするためのモニタ光を受光する受光素子が基板上に実装された光電変換装置と、光伝送体との間に配置された状態で、前記発光素子と前記光伝送体とを光学的に結合可能とされた光レセプタクルであって、前記発光素子からの前記光の入射および前記受光素子に向けた前記モニタ光の出射が行われる光レセプタクル本体における第1の面と、この第1の面と反対側の前記光レセプタクル本体における第2の面上に、前記第1の面に対して所定の第1の傾斜角を有するように配置され、前記第1の面に入射した前記発光素子の前記光における一部の光が臨界角よりも大きい入射角で内部入射し、この内部入射した一部の光を、前記光伝送体に結合すべき結合光として前記光伝送体側に全反射させる結合光全反射面と、この結合光全反射面によって全反射された前記結合光の前記光伝送体に向けた出射が行われる前記光レセプタクル本体における第3の面と、前記第2の面上に、前記結合光全反射面に隣接するようにして前記第1の面に対して所定の第2の傾斜
角を有するように配置され、前記第1の面に入射した前記発光素子の光における前記一部の光以外の他の一部の光が臨界角よりも大きい入射角で内部入射し、この内部入射した他の一部の光を、前記モニタ光として、前記結合光から分離された状
態で前記第3の面側に全反射させる第1のモニタ光全反射面と、前記第2の面上における前記第1のモニタ光全反射面に対する前記モニタ光の全反射方向側の位置に、前記結合光の光路上から逸脱するようにして前記第1の面に対して所定の第3の傾斜角を有するように配置され、前記第1のモニタ光全反射面によって全反射された前記モニタ光が臨界角よりも大きい入射角で内部入射し、この内部入射したモニタ光を前記第1の面における前記受光素子に対応する位置に向けて全反射させる第2のモニタ光全反射面とを備
ており、前記結合光全反射面と前記第1のモニタ光全反射面とは、前記発光素子の光の内部入射方向ならびに前記結合光および前記モニタ光の全反射方向に直交する方向において点接触、または、前記結合光および前記モニタ光の全反射方向において線接触するように配置され、前記第2のモニタ光全反射面は、前記第2の面上に凹設された凹部の内斜面からなることにある。
【0014】
そして、この請求項1に係る発明によれば、第1の面に入射した発光素子の光を、結合光全反射面における全反射および第1のモニタ光全反射面または第2のモニタ光全反射面における全反射によって結合光とモニタ光とに分離することができるので、発光素子の光を光伝送体において基板に沿った方向に取り出すようなモニタをともなう光送信を、光レセプタクル本体の面形状のみによって適正かつ低コストで実現することができる。また、モニタ光の全反射方向を、第1のモニタ光全反射面に対する第3の面側としたことにより、光レセプタクル本体の小型化ひいては更なる低コスト化を図ることができる。
更に本発明によれば、第1のモニタ光全反射面においてモニタ光が結合光から分離されるように構成することによって、設計コンセプトに応じた第2のモニタ光全反射面のレイアウトの自由度を広げることができ、例えば、第2のモニタ光反射面を有する凹部を深く形成して光レセプタクル材料の使用量の低減を図りたい場合や、前記凹部を浅く形成して光レセプタクルを金型を用いて樹脂成形する場合における離型性の向上および機械的強度の向上を図りたい場合等に柔軟に対応することができる。このとき、結合光全反射面と第1のモニタ光全反射面とを、発光素子の光の内部入射方向ならびに結合光およびモニタ光の全反射方向に直交する方向において点接触するように配置すれば、前記凹部を深く形成するコンセプトに確実に対応することができる。一方、結合光全反射面と第1のモニタ光全反射面とを、結合光およびモニタ光の全反射方向において線接触するように配置すれば、結合光全反射面と第1のモニタ光全反射面とを段差面を介さずに直接的に接続して表面積を少なくすることができるので、前記凹部を浅く形成して離型性を向上させるコンセプトにより見合った(離型性についての相乗効果が期待できる)構成を実現することができる。
【0017】
さらに、請求項
2に係る光レセプタクルの特徴は、請求項
1において、更に、前記結合光全反射面と前記第1のモニタ光全反射面とは、前記点接触するように配置され、前記第2のモニタ光全反射面は、前記結合光の光路よりも前記第1の面側に
逸脱するようにして配置されている点にある。
【0018】
そして、この請求項
2に係る発明によれば、前述のように、凹部を深く形成して光レセプタクル材料の使用量を低減することができるので、更なる低コスト化を図ることができる。
【0019】
さらにまた、請求項
3に係る光レセプタクルの特徴は、請求項
1において、更に、前記第2のモニタ光全反射面は、前記結合光の光路よりも前記第2の面側に
逸脱するようにして配置されている点にある。
【0020】
そして、この請求項
3に係る発明によれば、前述のように、凹部を浅く形成して離型性を向上させることができ、ひいては、歩留まりの向上による更なる低コスト化を図ることができる。
【0021】
また、請求項
4に係る光レセプタクルの特徴は、請求項
1〜
3いずれか1項において、更に、前記第1のモニタ光全反射面および前記第2のモニタ光全反射面は、複数配置されている点にある。
【0022】
そして、この請求項
4に係る発明によれば、モニタ光量の増加や複数の受光素子を用いたモニタに対応することができる。
【0023】
さらに、請求項
5に係る光レセプタクルの特徴は、請求項
1〜
3のいずれか1項において、更に、前記結合光全反射面と前記第1のモニタ光全反射面とは、前記線接触するように配置され、前記第1のモニタ光全反射面は、前記結合光全反射面に対して前記結合光の全反射方向側に配置されている点にある。
【0024】
そして、この請求項
5に係る発明によれば、凹部を浅く形成する場合における光路設計が行い易くなる。
【0025】
さらにまた、請求項
6に係る光レセプタクルの特徴は、請求項1において、更に、前記第1のモニタ光全反射面は、前記第1の面に対して前記第1の傾斜角を有するように配置されていることによって、前記モニタ光を前記結合光と一体の状態で全反射させ、前記モニタ光は、前記第2のモニタ光全反射面において前記結合光から分離される点にある。
【0026】
そして、この請求項
6に係る発明によれば、第1のモニタ光全反射面と結合光全反射面とを同一平面状に形成することができるので、構成を簡素化して更なる低コスト化を図ることができる。
【0027】
また、請求項
7に係る光レセプタクルの特徴は、請求項1〜
6のいずれか1項において、更に、前記第1の面上における前記発光素子に対応する位置に、前記発光素子の光を前記結合光全反射面および前記第1のモニタ光全反射面に向けて入射させる第1のレンズ面が配置され、前記第3の面上に、前記結合光を前記光伝送体に向けて出射させる第2のレンズ面が配置され、前記第1の面上における前記受光素子に対応する位置に、前記モニタ光を前記受光素子に向けて出射させる第3のレンズ面が配置されている点にある。
【0028】
そして、この請求項
7に係る発明によれば、レンズ面を利用して、結合光およびモニタ光の結合効率を向上させることができる。
【0029】
さらに、請求項
8に係る光モジュールの特徴は、請求項1〜
7のいずれか1項に記載の光レセプタクルと、請求項1に記載の光電変換装置とを備えた点にある。
【0030】
そして、この請求項
8に係る発明によれば、第1の面に入射した発光素子の光を、結合光全反射面における全反射および第1のモニタ光全反射面または第2のモニタ光全反射面における全反射によって結合光とモニタ光とに分離することができるので、発光素子の光を光伝送体において基板に沿った方向に取り出すようなモニタをともなう光送信を、光レセプタクル本体の面形状のみによって適正かつ低コストで実現することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、発光素子の光を光伝送体において基板に沿った方向に取り出すようなモニタをともなう光送信を、適正かつ低コストで実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る光レセプタクルおよびこれを備えた光モジュールの実施の形態について、
図1〜
図29を参照して説明する。
【0034】
図1は、本実施形態における光モジュール1の概要を、本実施形態における光レセプタクル2の縦断面図とともに示す概略構成図である。また、
図2は、
図1に示す光レセプタクル2の平面図である。さらに、
図3は、
図1に示す光レセプタクル2の下面図である。なお、
図1に示す光レセプタクル2の外形は、
図2のA−A断面形状に相当する。
【0035】
図1に示すように、本実施形態における光レセプタクル2(光レセプタクル本体)は、光電変換装置3と光伝送体としての光ファイバ5との間に配置されるようになっている。
【0036】
ここで、
図1の光電変換装置3は、基板実装型の光電変換装置3とされている。すなわち、
図1に示すように、光電変換装置3は、光レセプタクル2の下端面2aに対して平行に配置される半導体基板(回路基板)6における光レセプタクル2側の面(上面)に、この面に対して垂直方向(上方向)にレーザ光Laを出射(発光)させる1つの発光素子7を有しており、この発光素子7は、前述したVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)を構成している。また、光電変換装置3は、半導体基板6における光レセプタクル2側の面上であって、発光素子7に対する
図1における右方位置に、発光素子7から出射されたレーザ光Laの出力(例えば、強度や光量)をモニタするためのモニタ光Lmを受光する1つの受光素子8を有している。この受光素子8は、フォトディテクタであってもよい。さらに、図示はしないが、半導体基板6における光レセプタクル2側の面上には、受光素子8によって受光されたモニタ光Lmの強度や光量に基づいて発光素子7から発光されるレーザ光Laの出力を制御する制御回路等の電子部品が実装されており、この電子部品は、配線を介して発光素子7および受光素子8に電気的に接続されている。このような光電変換装置3は、例えば、半導体基板6と光レセプタクル2との間に配置された接着剤(例えば、熱/紫外線硬化性樹脂)等の公知の固定手段によって光レセプタクル2に取り付けられることにより、光レセプタクル2とともに光モジュール1を構成するようになっている。
【0037】
また、
図1に示すように、光ファイバ5は、端面5a側の所定長さの部位が、この部位を保持する円筒状のフェルール9とともに、光レセプタクル2に形成された筒状の光ファイバ取付部4内に取り付けられている。この取り付け状態において、光ファイバ5における端面5a側の部位(光ファイバ取付部4内に収容された部位)は、半導体基板6に対して平行となっている。なお、光ファイバ5は、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバのいずれであってもよい。
【0038】
そして、光レセプタクル2は、このような光電変換装置3と光ファイバ5との間に配置された状態で、発光素子7と光ファイバ5の端面5aとを光学的に結合させるようになっている。
【0039】
この光レセプタクル2について更に詳述すると、
図1に示すように、光レセプタクル2は、各種の光学面を有する主要部の外形が略長方形状に形成されている。すなわち、
図1および
図2に示すように、光レセプタクル2の主要部は、第1の面としての水平な下端面2aと、第2の面としての上端面2bと、第3の面としての右端面2cと、左端面2d、前端面2eおよび後端面2fとの各面によって大まかな外形を構成している。また、下端面2aと上端面2bとは互いに平行とされている。なお、前述した光ファイバ取付部4は、右端面2cから右方に延出するように形成されている。
【0040】
このような光レセプタクル2は、例えば、ポリエーテルイミド等の樹脂材料を用いた射出成形によって一体的に形成することができる。
【0041】
図1に示すように、光レセプタクル2の下端面2a上には、下端面2aに対して上方に凹入された断面略矩形状の第1の凹部10が形成されている。この第1の凹部10の内底面10aは、下端面2aに平行とされている。そして、この第1の凹部10の内底面10a上における発光素子7に臨む(対応する)左端部近傍位置には、
図1に示すように、1つの第1のレンズ面11が形成されている。この第1のレンズ面11は、下面図(
図3)において円形状を呈するとともに、発光素子7側に凸面を向けた球面または非球面の凸レンズ面に形成されている。なお、第1のレンズ面11上の光軸OA(1)の位置は、発光素子7の中心部に対してレーザ光Laの出射方向において合致して(位置合わせされて)いることが望ましい。また、第1のレンズ面11上の光軸OA(1)の軸方向は、第1の凹部10の内底面10aに直交していてもよい。
【0042】
このような第1のレンズ面11には、
図1に示すように、光レセプタクル2に光電変換装置3が取り付けられた状態において、発光素子7から出射されたレーザ光Laが下方から入射する。そして、第1のレンズ面11は、入射したレーザ光Laを、収束(例えば、コリメート)させて光レセプタクル2の内部へと進行させる。
【0043】
また、
図1および
図2に示すように、上端面2b上における第1のレンズ面11に上方において対向する位置には、結合光全反射面14および第1のモニタ光全反射面15が配置されている。
図2および
図4に示すように、結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15とは、
図2の縦方向(
図1の紙面垂直方向)において互いに点接触するように配置(以下、並列配置と称する)されている。なお、このような配置(接触)の方向は、両全反射面14、15におけるレーザ光Laの内部入射方向ならびにファイバ結合光Lcおよびモニタ光Lmの全反射方向に直交する方向に相当する。このように並列配置された結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15とは、
図2および
図5に示すように、平面図において、両全反射面14、15の間に、同図の横方向に延びる唯一の境界線BLを呈するとともに、この境界線BL上に第1のレンズ面11上の光軸OA(1)を含むようになっている。また、
図4に示すように、結合光全反射面14は、下端面2aに対して
図4における反時計回りに45°(第1の傾斜角の一例)の傾斜角を有する傾斜平面に形成されている。ただし、同図においては、結合光全反射面14の傾斜角の基準が、便宜上、下端面2aに平行な矢印にとられているが、実物の下端面2aに基準をとった場合でも同一の傾斜角(45°)が得られることは言うまでもない。さらに、
図4に示すように、第1のモニタ光全反射面15は、下端面2aに対して
図4における反時計回りに38°(第2の傾斜角の一例)の傾斜角を有する傾斜平面に形成されている。さらにまた、このように傾斜角が互いに異なる結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15とは、点接触部位以外の部位において、光軸OA(1)に平行な段差面145によって接続されている。また、これら結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15とは、
図1に示すように、上端面2b上に凹設された第2の凹部16の内底面のみからなる。なお、
図2においては、結合光全反射面14が前方(前端面2e)側に配置され、第1のモニタ光全反射面15が後方(後端面2f)側に配置されているが、前後が逆になってもよい。また、
図1に示すように、第2の凹部16の内側面16aには、光レセプタクル2を金型を用いて樹脂成形する場合における離型性を確保するための抜きテーパ(傾斜面)が形成されていてもよい。
【0044】
ここで、結合光全反射面14には、
図1および
図5に示すように、第1のレンズ面11を通過した発光素子7のレーザ光Laにおける一部(
図5に示す光束断面における下半部)のレーザ光Laが、
図1における下方側(光レセプタクル2の内部側)から臨界角よりも大きい入射角で内部入射する。そして、結合光全反射面14は、この内部入射した一部のレーザ光Laを、光ファイバ5の端面5aに結合すべきファイバ結合光Lcとして、
図1における右方に向けて全反射させる。なお、光レセプタクル2の形成材料としてSABIC社製のUltem(登録商標)を用いる場合には、波長850nmに対する屈折率が1.64となるため、この場合における臨界角は、ほぼ38°となる。
【0045】
一方、第1のモニタ光全反射面15には、
図1および
図5に示すように、第1のレンズ面11を通過した発光素子7のレーザ光Laにおける結合光全反射面14への入射光以外の他の一部(
図5に示す光束断面おける上半部)のレーザ光Laが、
図1における下方側(光レセプタクル2の内部側)から臨界角よりも大きい入射角で内部入射する。そして、第1のモニタ光全反射面15は、この内部入射した他の一部のレーザ光Laを、モニタ光Lmとして、ファイバ結合光Lcから分離された状態で、
図1における右下方に向けて全反射させる。
【0046】
さらに、
図1および
図2に示すように、上端面2b上における第1のモニタ光全反射面15に対してモニタ光Lmの全反射方向側の位置には、第2のモニタ光全反射面17が配置されている。
図6に示すように、第2のモニタ光全反射面17は、下端面2aに対して
図6における時計回りに54°(第3の傾斜角の一例)の傾斜角を有する傾斜平面に形成されている。この第2のモニタ光全反射面17は、
図1に示すように、上端面2b上に、ファイバ結合光Lcの光路上から逸脱するように凹設された第3の凹部18の内底面のみからなる。また、本実施形態において、第3の凹部18は、下端面2a側に向かって深く凹設されているため、
図1に示すように、第2のモニタ光全反射面17は、ファイバ結合光Lcの光路よりも下端面2a側(下方)に位置されている。なお、
図1に示すように、第3の凹部18の内側面18aには、光レセプタクル2を金型を用いて樹脂成形する場合における離型性を確保するための抜きテーパ(傾斜面)が形成されていてもよい。
【0047】
このような第2のモニタ光全反射面17には、
図1に示すように、第1のモニタ光全反射面15によって全反射された後に光レセプタクル2の内部の光路上を進行したモニタ光Lmが、
図1における左上方側から臨界角よりも大きな入射角で内部入射する。そして、第2のモニタ光全反射面17は、この内部入射したモニタ光Lmを、受光素子8側となる左下方に向けて全反射させる。
【0048】
さらにまた、
図1に示すように、光レセプタクル2の主要部の右端面2cは、光ファイバ5の端面5aに臨む第2のレンズ面12に形成されている。この第2のレンズ面12は、外周が円形状に形成されているとともに、光ファイバ5の端面5a側に凸面を向けた球面または非球面の凸レンズ面に形成されている。なお、第2のレンズ面12上の光軸OA(2)は、光ファイバ5の端面5aにおける中心部の法線上に位置されていることが望ましい。
【0049】
このような第2のレンズ面12には、
図1に示すように、結合光全反射面14によって全反射された後に光レセプタクル2の内部の光路上を進行したファイバ結合光Lcが、
図1における左方から内部入射する。
【0050】
そして、第2のレンズ面12は、この内部入射したファイバ結合光Lcを、収束させて光ファイバ5の端面5aに向けて出射させる。このようにして、ファイバ結合光Lcが光ファイバ5の端面5aに結合される。
【0051】
また、
図1および
図3に示すように、第1の凹部10の内底面10a上における第1のレンズ面11に対する右方位置であって、受光素子8に対向する位置には、第3のレンズ面13が形成されている。
図1および
図3に示すように、第3のレンズ面13は、下面図において楕円形状を呈するととともに受光素子8側から見た外形が円形状を呈するような受光素子8側に凸面を向けた球面または非球面の凸レンズ面に形成されている。なお、
図1に示すように、第3のレンズ面13上の光軸OA(3)は、下端面2aに対して傾きを有している。
【0052】
このような第3のレンズ面13には、
図1に示すように、第2のモニタ光全反射面17によって全反射されたモニタ光Lmが、
図1における右上方側(光レセプタクル2の内部側)から内部入射する。そして、第3のレンズ面13は、この内部入射したモニタ光Lmを、収束させつつ受光素子8に向けて出射させる。このようにして、モニタ光Lmが受光素子8に結合される。
【0053】
以上の構成によれば、第1のレンズ面11に入射した発光素子7のレーザ光Laを、結合光全反射面14における全反射および第1のモニタ光全反射面15における全反射によってファイバ結合光Lcとモニタ光Lmとに分離することができるので、ファイバ結合光Lcを光ファイバ5の端面5aにおいて半導体基板6に沿った方向に取り出すようなモニタをともなう光送信を、光レセプタクル2の面形状のみによって適正かつ低コストで実現することができる。また、モニタ光Lmの全反射方向を、第1のモニタ光全反射面15に対する右端面2c側としたことにより、モニタ光Lmを左端面2d側に全反射させる構成と比較して、光レセプタクル2の左右の寸法を小さく抑えることができるので、光レセプタクル2の小型化ひいては更なる低コスト化を図ることができる。
【0054】
また、上記構成によれば、第2のモニタ光全反射面17をファイバ結合光Lcの光路よりも下端面2a側に配置することにより、第3の凹部18を深く形成して光レセプタクル2の形成材料の使用量を低減することができるので、更なる低コスト化を図ることができる。このようなコンセプトに基づく構成は、第1のモニタ光全反射面15においてモニタ光Lmがファイバ結合光Lcから分離されるようになっていること、とりわけ、第1のモニタ光全反射面15と結合光全反射面14とが並列配置されていることによって、設計上無理なく実現できている。
【0055】
なお、前述したように、上記構成においては、結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15との境界線BL(
図2、
図5参照)上に、第1のレンズ面11上の光軸OA(1)が含まれているが、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、例えば、光軸OA(1)を両全反射面14、15の境界線BLに対していずれか一方の全反射面14、15側にずらすことによって、ファイバ結合光Lcとモニタ光Lmとの光強度比を上記構成(1:1)と異ならせるようにしてもよい。
【0056】
また、これ以外にも、本発明には、以下に示すような種々の変形例を適用してもよい。
【0057】
(第1の変形例)
例えば、
図7〜
図9に示すように、第2のモニタ光全反射面17を、ファイバ結合光Lcの光路よりも上端面2b側に配置するとともに、このように配置された第2のモニタ光全反射面17におけるモニタ光Lmの適切な全反射が確保されるように、第1のモニタ光全反射面15の傾斜角および第2のモニタ光全反射面17の傾斜角を
図4、
図6の場合と異ならせるようにしてもよい。
【0058】
具体的には、
図8に示すように、本変形例において、第1のモニタ光全反射面15の傾斜角は、
図4の場合よりも大きい値(50°)に設定され、また、
図9に示すように、第2のモニタ光全反射面17の傾斜角は、
図6の場合よりも小さい値(45°)に設定されている。
【0059】
このように構成すれば、第3の凹部18を浅く形成して、第3の凹部18の表面積を抑えることができるので、光レセプタクル2を金型を用いて射出成形する場合における離型性を向上させることができ、また、機械的強度を高めることができる。
【0060】
(第2の変形例)
また、
図10〜
図13に示すように、第1のモニタ光全反射面15を、結合光全反射面14の前後(
図10における紙面垂直方向)に2つ並列配置するとともに、第2のモニタ光全反射面17を、各第1のモニタ光全反射面15に対応するように前後に間隔を設けて2つ配置してもよい。なお、
図10は、
図11のB−B断面図に相当する。
【0061】
図11に示すように、本変形例においては、2つの第2のモニタ光全反射面17の間に、ファイバ結合光Lcの光路が確保されるようになっている。また、
図10に示すように、各第2のモニタ光全反射面17は、ファイバ結合光Lcの光路よりも下端面2a側に配置されている。さらに、
図12に示すように、2つの第1のモニタ光全反射面15の傾斜角は、互いに同一角(38°)とされ、一方、2つの第2のモニタ光全反射面17の傾斜角も、互いに同一角とされている。さらにまた、2つの第2のモニタ光全反射面17の配置位置は、
図10における横方向および縦(高さ)方向において同一位置とされている。また、
図11に示すように、2つの第1のモニタ光全反射面15は、いずれも、結合光全反射面14よりも前後(同図における上下)に大きく形成されいる。
【0062】
このように構成すれば、第1のモニタ光全反射面15への総入射光量を、結合光全反射面14への入射光量よりも多くすることができるので、モニタ光Lmの受光量を増やすことができる。
【0063】
ただし、本変形例においては、結合光全反射面14の幅(前後の寸法)に応じて、結合光全反射面14への入射光量(すなわち、ファイバ結合光Lcの光量)と第1のモニタ光全反射面15への総入射光量(すなわち、モニタ光Lmの光量)とを任意に調整することができる。
【0064】
(第3の変形例)
また、
図14〜
図18に示すように、第2の変形例に対して、2つの第2のモニタ光全反射面17の配置位置を左右にずらすとともに、各第2のモニタ光全反射面17にそれぞれ対応するように、受光素子8および第3のレンズ面13を2つずつ配置してもよい。なお、
図14は、
図15のC−C断面図に相当する。
【0065】
図17に示すように、本変形例においては、前方側の第1のモニタ光全反射面15の傾斜角が、第2の変形例(38°)とは異なり、41°に設定されている。一方、
図18の示すように、2つの第2のモニタ光全反射面17については、いずれも傾斜角が55°に設定されている。
【0066】
このように構成すれば、2つの受光素子8を用いたモニタに対応することができる。この場合には、例えば、一方の受光素子8によって光強度をモニタし、他方の受光素子8によって波長をモニタするようにしてもよい。
【0067】
(第4の変形例)
さらに、
図19および
図20に示すように、第3の変形例に対して、後方側の第2のモニタ光全反射面17を、ファイバ結合光Lcの光路よりも上端面2b側に配置してもよい。なお、
図20に示すように、本変形例においては、後方側の第1のモニタ光全反射面15の傾斜角が、第3の変形例(38°)とは異なり、50°に設定されている。
【0068】
(第5の変形例)
さらにまた、
図21〜
図24に示すように、結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15とを、ファイバ結合光Lcおよびモニタ光Lmの全反射方向において線接触するように配置(以下、直列配置と称する)してもよい。なお、
図21に示すように、本変形例において、第1のモニタ光全反射面15は、結合光全反射面14に対してファイバ結合光Lcの全反射方向側(右側)に直列配置されている。また、
図23に示すように、結合光全反射面14の傾斜角は、下端面2aに対して同図の反時計回りに45°に設定され、また、第1のモニタ光全反射面15の傾斜角は、下端面2aに対して同図の反時計回りに50°に設定されている。さらに、
図21に示すように、第2のモニタ光全反射面17は、ファイバ結合光Lcの光路よりも上端面2b側に配置されている。
【0069】
このように構成すれば、第3の凹部18を浅く形成して射出成形時の離型性を向上させようとする場合における光路設計を容易に行うことができる。また、結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15とを段差面を介さずに直接的に接続して表面積を少なくすることができるので、離型性を向上させることに対する相乗効果を期待することができる。
【0070】
(第6の変形例)
また、
図25〜
図28に示すように、本発明の特徴を備えつつ、更に、モニタをともなう光送信の多チャンネル化に対応するように構成してもよい。
【0071】
すなわち、本変形例において、光電変換装置3は、発光素子7および受光素子8が、
図25における紙面垂直方向に沿って複数(8個)整列形成されたものとされている。また、本変形例においては、光ファイバ5が、発光素子7および受光素子8の整列方向と同方向に沿って発光素子7および受光素子8と同数整列配置されるようになっている。なお、
図25において、各光ファイバ5は、多芯一括型のコネクタ19内に収容された状態で公知の取付手段を介して光レセプタクル2に取り付けられている。
【0072】
そして、このような光電変換装置3および光ファイバ5の構成に応じて、光レセプタクル2は、各発光素子7−各光ファイバ5間の光路および各発光素子7−各受光素子8間の光路を形成し得るように、結合光全反射面14、第1のモニタ光全反射面15、第2のモニタ光全反射面17および第1〜第3のレンズ11〜13が、発光素子7、光ファイバ5の端面5aおよび受光素子8にそれぞれ対応する位置に、発光素子7、光ファイバ5および受光素子8と同数ずつ配置されている。なお、
図25に示す光レセプタクル2は、
図26のD−D断面に相当する。
【0073】
本変形例によれば、各発光素子7ごとのレーザ光Laを、結合光全反射面14および第1のモニタ光全反射面15において各発光素子7ごとのファイバ結合光Lcとモニタ光Lmとに分離することができるので、モニタをともなう多チャンネルの光送信を適正かつ低コストで行うことができる。
【0074】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更してもよい。
【0075】
例えば、前述した実施形態においては、第1のモニタ光全反射面15を結合光全反射面14と異なる傾斜角に設定していたが、
図29に示すように、両全反射面14、15を同一の傾斜角に設定することによって、両全反射面14、15を同一平面状に形成してもよい。この場合に、モニタ光Lmは、第1のモニタ光全反射面15において、ファイバ結合光Lcと一体の状態で全反射され、その後、第2のモニタ光全反射面17においてファイバ結合光Lcから分離された状態で全反射されることになる。
【0076】
このように構成すれば、結合光全反射面14と第1のモニタ光全反射面15との形状を簡素化することができるので、更なる低コスト化を図ることができる。
【0077】
また、本発明は、光導波路等の光ファイバ5以外の光伝送体に適用してもよい。