特許第6011967号(P6011967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011967
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】積層コイルおよび積層コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20161011BHJP
   H02K 3/26 20060101ALI20161011BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20161011BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20161011BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01F27/28 L
   H02K3/26 Z
   H02K15/04 Z
   H01F5/00 J
   H01F41/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-226371(P2012-226371)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-78641(P2014-78641A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 径裕
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/004483(WO,A1)
【文献】 特開2005−160143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 5/00
H01F 41/04
H02K 3/26
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状であるとともに一部がスリット(8)で分断される複数枚の導電金属製の導電板(6)が、前記スリット(8)の位置を順次オフセットしつつ積層され、その積層状態での通電経路を螺旋状とすべく積層方向で隣接する前記導電板(6)同士が前記スリット(8)の一側および他側で接合される積層コイルにおいて、
導電性を有する金属素材(22)の両面に該金属素材(22)よりも軟質である絶縁皮膜(7)が被着されて成る複合素材(11)から形成される複数枚の前記導電板(6)が、その導電板(6)の両面に被着された前記絶縁皮膜(7)を対向させつつ積層され、積層方向で隣接する前記導電板(6)のうち一方の前記導電板(6)の前記スリット(8)の一側と、他方の前記導電板(6)の前記スリット(8)の他側とが、積層方向で隣接する前記導電板(6)の一方に形成されて他方の前記導電板(6)側に突出するとともに前記スリット(8)の一側に配置される突部(9)と、前記絶縁皮膜(7)のうち前記突部(9)の側面を覆う部分を剥離しつつ該突部(9)を受け入れるようにして前記他方の前記導電板(6)に形成されて前記スリット(8)の他側に配置される圧入孔(10)とから電気的接続を得るようにして圧入接合部(5)で圧入接合されていることを特徴とする積層コイル。
【請求項2】
請求項記載の積層コイルを製造するための積層コイルの製造方法であって、
導電金属から成る帯状の金属素材(22)の両面に該金属素材(22)よりも軟質である絶縁皮膜(7)が予め被着された複合素材(11)に複数の前記導電板(6)に個別に対応した前記突部(9)を形成する突部形成工程と、前記複合素材(11)に複数の前記導電板(6)に個別に対応した前記圧入孔(10)を穿孔する圧入孔穿孔工程と、一部がスリット(8)で分断された環状であって前記突部(9)および前記圧入孔(10)を前記スリット(8)の両側に有する複数枚の前記導電板(6)をその両面に前記絶縁皮膜(7)が被着したままで前記複合素材(11)から切り出す切り出し工程と、該切り出し工程で切り出した複数枚の前記導電板(6)を相互に対応する前記突部(9)および前記圧入孔(10)を対向させるようにしつつ順次積層する積層工程と、前記絶縁皮膜(7)のうち前記突部(9)の側面を覆う部分を剥離するようにして該突部(9)を前記圧入孔(10)に圧入しつつ積層状態にある複数枚の前記導電板(6)を積層方向に圧縮して積層コイルを形成する圧入組立工程とを実行することを特徴とする積層コイルの製造方法。
【請求項3】
前記圧入組立工程では、前記突部(9)の前記圧入孔(10)への圧入によって剥離して前記突部(9)の側面から除去した絶縁皮膜(7)を複数枚の前記導電板(6)間に圧縮、保持することを特徴とする請求項記載の積層コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状であるとともに一部がスリットで分断される複数枚の導電金属製の導電板が、前記スリットの位置を順次オフセットしつつ積層され、その積層状態での通電経路を螺旋状とすべく積層方向で隣接する前記導電板同士が前記スリットの一側および他側で接合される積層コイルおよび積層コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線断面積が大きい平角線を巻きあげて高効率なコイル、所謂エッジワイス型のインダクタコイルを製作するにあたって、平角線を一巻ずつ順次巻き上げる作業は、コイルの設定容量が大きいものほど平角線が太くなるので巻き上げ難くなり、製作時間を要するのでコストが高くなる上に、緊密に巻くことが困難であることからコイルを所望の形状に仕上げることが難しい、という課題がある。このような課題を解決するために、所望の環状の形状とした複数枚の導電板を、順次接合して積層することで積層コイルを得るようにしたが、特許文献1および特許文献2で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−363514号公報
【特許文献2】特開2001−167930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されたものでは、環状であるとともに一部がスリットで始端および終端に分断された形状を有する複数枚の導電板を、スリットの位置を順次オフセットしつつ積層し、積層方向で隣接する導電板の終端および始端を溶接あるいはろう付けで接合するようにしている。このため溶接による場合には、溶接時の熱で導電板が変形してしまう可能性があり、レーザー溶接による場合には、適切なエアギャップ管理をしなければならないので導電板を1枚ずつ養生して溶接する工程を繰り返す必要があり、積層コイルの組立に時間がかかってしまう。またろう付けによる場合には、接触不良を起こさないようにするために、接合面、はんだおよびはんだ条件の管理に手間がかかる上、導電板を銅板としたときには銅がはんだに溶けだしたりすることで固着強度や伝動伝導率の低下を生じたりする等の懸念材料が多く、手間がかかってしまう。
【0005】
また特許文献2で開示されたものでは、C字型、U字型またはL字型に形成される導電板および絶縁材を螺旋状となるように交互に積層し、導電部としてのはんだまたは導電性接着材で導電板同士を接合するようにしている。このため絶縁性を考慮して絶縁板の厚みを所定量確保しようとすると、絶縁材の厚み分だけ、はんだまたは導電性接着剤の使用量が増えるので、手間がかかる上にコスト高となり、また絶縁材および導電板相互の位置を定める構成となっていないので組立てに時間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、手間がかからないようにして容易に製作可能としてコスト低減を図った積層コイルと、その積層コイルを適切に製造可能とした積層コイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、環状であるとともに一部がスリットで分断される複数枚の導電金属製の導電板が、前記スリットの位置を順次オフセットしつつ積層され、その積層状態での通電経路を螺旋状とすべく積層方向で隣接する前記導電板同士が前記スリットの一側および他側で接合される積層コイルにおいて、導電性を有する金属素材の両面に該金属素材よりも軟質である絶縁皮膜が被着されて成る複合素材から形成される複数枚の前記導電板が、その導電板の両面に被着された前記絶縁皮膜を対向させつつ積層され、積層方向で隣接する前記導電板のうち一方の前記導電板の前記スリットの一側と、他方の前記導電板の前記スリットの他側とが、積層方向で隣接する前記導電板の一方に形成されて他方の前記導電板側に突出するとともに前記スリットの一側に配置される突部と、前記絶縁皮膜のうち前記突部の側面を覆う部分を剥離しつつ該突部を受け入れるようにして前記他方の前記導電板に形成されて前記スリットの他側に配置される圧入孔とから電気的接続を得るようにして圧入接合部で圧入接合されていることを第1の特徴とする。
【0008】
本発明は、第の特徴の積層コイルを製造するための積層コイルの製造方法であって、導電金属から成る帯状の金属素材の両面に該金属素材よりも軟質である絶縁皮膜が予め被着された複合素材に複数の前記導電板に個別に対応した前記突部を形成する突部形成工程と、前記複合素材に複数の前記導電板に個別に対応した前記圧入孔を穿孔する圧入孔穿孔工程と、一部がスリットで分断された環状であって前記突部および前記圧入孔を前記スリットの両側に有する複数枚の前記導電板をその両面に前記絶縁皮膜が被着したままで前記複合素材から切り出す切り出し工程と、該切り出し工程で切り出した複数枚の前記導電板を相互に対応する前記突部および前記圧入孔を対向させるようにしつつ順次積層する積層工程と、前記絶縁皮膜のうち前記突部の側面を覆う部分を剥離するようにして該突部を前記圧入孔に圧入しつつ積層状態にある複数枚の前記導電板を積層方向に圧縮して積層コイルを形成する圧入組立工程とを実行することを第2の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、第の特徴の構成に加えて、前記圧入組立工程では、前記突部の前記圧入孔への圧入によって剥離して前記突部の表面から除去した絶縁皮膜を複数枚の前記導電板間に圧縮、保持することを第の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば、導電性を有する金属素材の両面に絶縁皮膜が被着されて成る複合素材から形成されるとともに両面に絶縁皮膜が形成されたままの複数枚の導電板が絶縁皮膜を対向させつつ積層され、積層方向で隣接する導電板のうち一方の導電板のスリットの一側と、他方の導電板のスリットの他側とが圧入接合部で接合されるので、溶接またはんだ付け等の手間のかかる作業が不要であり、スリットの一側に配置される突部と、スリットの他側に配置されて前記突部を圧入させる圧入孔とで圧入接合部を構成するので、積層方向で隣接する導電板同士の電気的接続を容易に達成することができ、しかも突部を圧入孔に圧入する際に、絶縁皮膜のうち突部の側面を覆っていた部分が剥離するので、絶縁皮膜が両面に被着した状態で積層される複数枚の導電板同士の電気的接続を得るにあたって絶縁皮膜の一部を剥離、除去するといった手間のかかる作業が不要であり、これによって安価な積層コイルを得ることができる。
【0011】
本発明の第の特徴によれば、金属素材の両面に絶縁皮膜が予め被着された複合素材に突部を形成する突部形成工程と、複合素材に複数の導電板に個別に対応した圧入孔を穿孔する圧入孔穿孔工程と、複数枚の導電板をその両面に絶縁皮膜が被着したままで複合素材から切り出す切り出し工程と、複数枚の前記導電板を相互に対応する突部および圧入孔を対向させて順次積層する積層工程と、絶縁皮膜のうち突部の側面を覆う部分を剥離するようにして該突部を圧入孔に圧入しつつ複数枚の導電板を積層方向に圧縮して積層コイルを形成する圧入組立工程とを実行するので、絶縁皮膜の一部を剥離させる専用作業を不要として製作工程の短縮を図り、積層コイルを安価に製作することができる。
【0012】
さらに本発明の第の特徴によれば、圧入孔への圧入によって剥離して突部の表面から除去した絶縁皮膜を導電板間に圧縮、保持するので、剥離した絶縁皮膜を除去する作業が不要であり、製作工程をより短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】積層コイルの一部を示す縦断面図である。
図2】導電板の形状を示すために積層順に導電板を並べて示す図である。
図3】積層コイルの製造装置を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図1図3を参照しながら説明すると、先ず図1において、この積層コイルは、銅等の導電金属から成る複数枚の横断面矩形状の導電板6,6,6…が、それらの導電板6,6,6…の両面に被着された絶縁皮膜7,7,7…を対向させつつ、通電経路が螺旋状となるように積層、接合されて成るものである。
【0015】
図2において、前記導電板6,6,6…は、環状であるとともに一部がスリット8,8,8…で分断された形状を有するものであり、この実施の形態では、全体として矩形状に形成される導電板6の一部がスリット8で分断される。
【0016】
しかも両面に絶縁皮膜7,7,7…が被着された前記各導電板6,6,6…は、前記スリット8,8,8…の位置を積層順に順次オフセットしつつ前記絶縁皮膜7,7,7…を対向させて積層され、積層方向で隣接する前記導電板6,6のうち一方の前記導電板6の前記スリット8の一側と、他方の前記導電板6の前記スリット8の他側とが、電気的接続を得るようにして圧入接合部5,5,5…で接合される。
【0017】
前記圧入接合部5は、積層方向で隣接する前記導電板6の一方に形成されて他方の前記導電板6側に突出するとともに前記スリット8の一側に配置される突部9と、前記絶縁皮膜7のうち前記突部9の側面を覆う部分を剥離しつつ前記突部9を受け入れるようにして前記他方の前記導電板6に形成されて前記スリット8の他側に配置される圧入孔10とから成り、積層方向両端の導電板6,6を除く複数の導電板6,6,6…には、前記スリット8,8,8…の一側に配置されて積層方向の一方に突出する突部9,9,9…と、該突部9,9,9…を受け入れるようにして前記スリット8,8,8…の他側に配置される圧入孔10,10,10…とが設けられる。
【0018】
積層方向両端の導電板6,6には、図2の左端位置に示すように、完成後の積層コイルを外部回路と接続するために外側方に延出する接続端子部6a…が設けられるので、前記突部9および前記圧入孔10のいずれか一方が設けられるだけであり、前記突部9および前記圧入孔の両方が設けられることはない。
【0019】
積層コイルを製造するにあたっては、図3で示すような製造装置が用いられるものであり、この製造装置は、銅等の導電金属から成る帯状の金属素材22の両面に該金属素材22よりも軟質なエナメル樹脂等から成る絶縁皮膜7が予め被着された状態でロール16に巻かれた複合素材11を上下で対をなす複数組のローラ12,13…間を通すことで矯正する矯正装置17と、その矯正装置17を通った前記複合素材11を上下で対をなすローラ14,15で挟んで送る送り装置18と、送り装置18から送られて来る複合素材11に部分的なプレス加工を行う順送プレス装置19と、順送プレス装置19でのプレス加工後に両面に絶縁皮膜7,7,7…が被着された状態で導電板6,6,6…を打ち抜いて型枠内に積層した後に積層状態にある複数枚の前記導電板6,6,6…を積層方向に圧縮して圧入組み立てする積層装置20と、積層装置20での圧入組み立てによって製造された積層コイルを搬出するコンベア等の搬出装置(図示せず)とを備え、前記矯正装置17、前記送り装置18、前記順送プレス装置19、前記積層装置20および前記搬出装置の一連の作動は制御装置21で自動制御される。
【0020】
前記複合素材11に部分的なプレス加工を行う前記順送プレス装置19は、突部形成工程行程、圧入孔穿孔工程および切り出し工程を実行するのであるが、それらの工程を実行する前に、複合素材11から導電板6,6,6…を切り出すことで生じる駄肉となる部分で前記複合素材11に位置決め孔を穿孔する工程を前記順送プレス装置19は実行する。前記位置決め孔は、たとえば矩形状の前記導電板6,6,6…の周囲の四隅に穿孔され、それらの位置決め孔に、前記順送プレス装置19が備える位置決めピンを嵌装することで、前記送り装置18から送られて来る複合素材11が前記順送プレス装置19でのプレス加工時に確実に位置決め保持されることになる。それによって精度のよい導電板6,6,6…が形成され、ひいては積層コイルが精度よく製造されることになる。
【0021】
前記突部形成工程は、前記複合素材11に複数の前記導電板6,6,6…に個別に対応した前記突部9,9,9…を、前記絶縁皮膜7,7,7…で覆われたまま前記複合素材11の一面から突出するように形成する工程である。
【0022】
前記圧入孔穿孔工程は、前記複合素材11に複数の前記導電板6,6,6…に個別に対応した前記圧入孔10,10,10…を、複合素材11とその両面の絶縁皮膜7,7を貫通するようにして穿孔する工程である。
【0023】
而して前記順送プレス装置19は、積層コイルにおいて積層方向の一端に位置する導電板6を形成する部分の前記複合素材11には、前記突部形成工程で前記突部9を形成するものの前記圧入孔穿孔工程で圧入孔10を穿孔することはなく、また前記積層方向の他端に位置する導電板6を形成する部分の前記複合素材11には、前記圧入孔穿孔工程で前記圧入孔10を穿孔するものの前記突部形成工程で前記突部9を形成することはない。
【0024】
前記切り出し工程は、一部がスリット8,8,8…で分断された環状であって前記突部9,9,9…および前記圧入孔10,10,10…を前記スリット8,8,8…の両側に有する複数枚の前記導電板6,6,6…をその両面に前記絶縁皮膜7,7,7…が被着したままで前記複合素材11から切り出す工程である。
【0025】
また前記順送プレス装置19は、その切り出し工程で積層コイルにおいて積層方向の両端に位置する導電板6,6をその両面に前記絶縁皮膜7,7,7…が被着したままで前記複合素材11から切り出すにあたっては、前記接続端子部6a…を一体に有するようにして導電板6,6を切り出す。
【0026】
なお前記順送プレス装置19から前記積層装置20に導電板6,6,6…を容易に搬送するために、前記順送プレス装置19での前記切り出し工程の終了後に、この実施の形態では、導電板6,6,6…のおおよその内外形を形成した後も依然として導電板6,6,6…を複合素材11に保持するために、複合素材11のうち駄肉となる部分と、前記導電板6,6,6…とは、狭隘な枝部(図示せず)で連結されたままである。
【0027】
また前記突部形成工程は、突部9,9,9…の形成時にその突部9,9,9…の周囲で複合素材11が寄り集まるので、導電板6,6,6…の内形および外形を切り出す前記切り出し工程に先んじて前記突部9,9,9…を形成することが望ましい。
【0028】
積層装置20は、前記順送プレス装置19でのプレス加工後に、積層工程および圧入組立工程を実行するものであり、前記積層工程は、前記順送プレス装置19での切り出し工程で切り出した複数枚の前記導電板6,6,6…を相互に対応する前記突部9,9,9…および前記圧入孔10,10,10…を対向させるようにしつつ順次積層する工程である。
【0029】
前記圧入組立工程は、前記絶縁皮膜7,7,7…のうち前記突部9,9,9…の側面を覆う部分を剥離しながら該突部9,9,9…を前記圧入孔10,10,10…に圧入するようにしつつ、積層状態にある複数枚の前記導電板6,6,6…を上方もしくは下方から油圧等で積層方向に圧縮して積層コイルを形成する工程であり、この圧入組立工程で、積層方向で隣接する導電板6,6の一方のスリット8の一側と、他方の前記導電板6の前記スリット8の他側とが、電気的接続を得るようにして圧入接合部5で接合されることになる。
【0030】
しかも前記圧入組立工程では、前記突部9,9,9…の前記圧入孔10,10,10…への圧入によって剥離して前記突部9,9,9…の側面から除去した絶縁皮膜7,7,7…を複数枚の前記導電板6,6,6…間に圧縮、保持する。
【0031】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、積層コイルは、環状であるとともに一部がスリット8,8,8…で分断された形状を有する複数枚の導電板6,6,6…が、前記スリット8,8,8…の位置を順次オフセットしつつ積層されるとともに、積層方向で隣接する前記導電板6,6のうち一方の前記導電板6の前記スリット8の一側と、他方の前記導電板6の前記スリット8の他側とが電気的接続を得るようにして圧入接合部5で接合されて成るものであるので、溶接、接着またはんだ付け等の手間のかかる作業が不要であり、通電経路が螺旋状となるような電気的接続が容易に得られるようにして、安価な積層コイルを得ることができる。
【0032】
しかも前記導電板6,6,6…は、導電性を有する金属素材22の両面に該金属素材22よりも軟質である絶縁皮膜7が被着されて成る複合素材11から形成されており、導電板6,6,6…相互間に別体の絶縁材を挟むことが不要である。
【0033】
また前記圧入接合部5が、積層方向で隣接する前記導電板6,6の一方に形成されて他方の前記導電板6側に突出するとともに前記スリット8の一側に配置される突部9と、前記絶縁皮膜7のうち前記突部9の側面を覆う部分を剥離しつつ前記突部9を受け入れるようにして他方の前記導電板6に形成されて前記スリット8の他側に配置される圧入孔10とから成るので、積層方向で隣接する導電板6,6同士の電気的接続を容易に達成することができ、しかも突部9を圧入孔10に圧入する際に、絶縁皮膜7のうち突部9の側面を覆っていた部分が剥離するので、絶縁皮膜7,7…が両面に被着した状態で積層される複数枚の導電板6,6,6…同士の電気的接続を得るにあたって絶縁皮膜7,7,7…の一部を剥離、除去するといった手間のかかる作業が不要であり、これによっても安価な積層コイルを得ることができる。
【0034】
さらに積層コイルを製造するにあたっては、導電金属から成る帯状の金属素材22の両面に該金属素材22よりも軟質である絶縁皮膜7が予め被着された複合素材11に複数の前記導電板6,6,6…に個別に対応した前記突部9,9,9…を形成する突部形成工程と、前記複合素材11に複数の前記導電板6,6,6…に個別に対応した前記圧入孔10,10,10…を穿孔する圧入孔穿孔工程と、一部がスリット8,8,8…で分断された環状であって前記突部9,9,9…および前記圧入孔10,10,10…を前記スリット8,8,8…の両側に有する複数枚の前記導電板6,6,6…をその両面に前記絶縁皮膜7,7…が被着したままで前記複合素材11から切り出す切り出し工程と、該切り出し工程で切り出した複数枚の前記導電板6,6,6…を相互に対応する前記突部9,9,9…および前記圧入孔10,10,10…を対向させるようにしつつ順次積層する積層工程と、前記絶縁皮膜7,7,7…のうち前記突部9,9,9…の側面を覆う部分を剥離するようにして該突部9,9,9…を前記圧入孔10,10,10…に圧入しつつ積層状態にある複数枚の前記導電板6,6,6…を積層方向に圧縮して積層コイルを形成する圧入組立工程とを実行するので、絶縁皮膜7,7,7…の一部を剥離させる専用作業を不要として製作工程の短縮を図り、積層コイルを安価に製作することができる。
【0035】
また圧入組立工程では、前記突部9,9,9…の前記圧入孔10,10,10…への圧入によって剥離して前記突部9,9,9…の側面から除去した絶縁皮膜7,7,7…を複数枚の前記導電板6,6,6…間に圧縮、保持するので、剥離した絶縁皮膜7,7,7…を除去する作業が不要であり、製作工程をより短縮化することができる。
【0036】
さらに積層コイルを製造するための矯正装置17、送り装置18、順送プレス装置19、積層装置20および搬出装置の一連の作動を制御装置21で自動制御することによって、効率良く積層コイルを製造することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0038】
5・・・圧入接合部
6・・・導電板
7・・・絶縁皮膜
8・・・スリット
9・・・突部
10・・・圧入孔
11・・・複合素材
22・・・金属素材
図1
図2
図3