(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物における前記仮想読取点を互いに位置が異なった任意の複数箇所として定めると共に、各箇所の座標と、前記回転中心点と、各箇所における前記外周輪郭の接線と座標軸との交差角度と、各箇所に対応する実際の前記読取点の座標とに基づいて前記傾斜角度をそれぞれ割り出し、これらの平均値を前記補正手段により補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の板状物製造装置。
仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物における前記仮想読取点を互いに位置が異なった任意の複数箇所として定めると共に、各箇所の座標と、前記回転中心点と、各箇所における前記外周輪郭の接線と座標軸との交差角度と、各箇所に対応する実際の前記読取点の座標とに基づいて前記傾斜角度をそれぞれ割り出し、これらの平均値を前記補正工程により補正することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の板状物製造方法。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや、太陽電池等に使用される板ガラスは、その製造工程において、レーザーやウォータージェット等を用いた切断により所望の形状、サイズに切り出された後、その端面に対し、砥石等を用いた研削を実施して、端面仕上げを行うのが通例となっている。
【0003】
この端面仕上げは、例えば、特許文献1に開示されるように、加工台等に板ガラスを載置した後、当該板ガラスの端面(表面の外周輪郭)に沿った軌道上を、砥石が走行することでなされる。この軌道は、板ガラスの輪郭形状に応じて、端面仕上げの実施前に予め設定されており、矩形の板ガラスの場合には、例えば、
図8に示すように、XY座標上において、砥石100がX軸、Y軸と平行に走行するように、その軌道Sが設定される。
【0004】
従って、この場合には、同図に二点鎖線で表すように、端面仕上げの対象となる板ガラスGは、その長辺がX軸と平行(短辺がY軸と平行)となった姿勢で、加工台(図示省略)に載置されることが理想である。そのため、この理想姿勢で載置することを目的として、板ガラスGの端面と当接させて、当該板ガラスGの位置決めを実行するための複数のガイド(図示省略)を設置する場合がある。
【0005】
しかしながら、このようなガイドを設置した場合であっても、同図に実線で表すように、板ガラスGが、ある回転中心点Oを中心として、不可避に理想姿勢から傾斜した姿勢で、加工台に載置されてしまう場合がある。この状態で軌道Sに沿って砥石100を走行させると、研削による削り代が、適正量に対して過大となる部位と、過小となる部位とが発生する。そして、過大となる部位においては、研削抵抗が増加したり、板ガラスGの破損を招いたりする不具合が生じ、過小となる部位においては、板ガラスGを所望の品質に端面仕上げできない不具合が生じる。
【0006】
このような不具合の発生を防止するため、例えば、外周輪郭における直線部の一つである長辺において、任意の二点の位置P
100、P
101の座標を、センサー等を用いて読み取った後、読み取り結果から、板ガラスGが理想姿勢から傾斜した傾斜角度θを割り出す。そして、この割り出されたθの値に基づいて、軌道Sを回転中心点Oの周りに角度θだけ傾斜させる補正を実施する。このようにすれば、研削による端面仕上げを好適に行うことができる。
【0007】
なお、この場合、板ガラスGが、回転中心点Oを中心として、理想姿勢から傾斜した傾斜角度θは、P
100、P
101の座標をP
100(X
100,Y
100)、P
101(X
101,Y
101)とすれば、下記の式から容易に求めることができる。
【数1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、従来から大量に製造されている矩形状の板ガラスに加えて、端面(表面の外周輪郭)が曲線のみで構成される等、直線部が存在しない形状を有した板ガラスの需要が高まっており、その製造量が増加するに至っている。このことに起因して、上述のような態様によって端面仕上げを行う場合には、下記のような難点がある。
【0010】
例えば、板ガラスの輪郭形状が楕円である場合において、当該板ガラスが、理想姿勢から傾斜した姿勢で加工台に載置されると、その端面に直線部が存在しないことに起因して、直線部が存在する矩形の板ガラス等とは異なり、理想姿勢からの傾斜角度を割り出すことが困難であった。そのため、端面仕上げの円滑な実施が妨げられ、板ガラスの製造効率を悪化させるような事態を招いていた。
【0011】
なお、このような問題は、板ガラスのみでなく、例えば、ガラス積層体や、樹脂板の表裏面に薄肉の板ガラスを貼り合せた積層体(合わせガラス)、金属板、セラミック板、半導体板等の板状物において、その外周輪郭が曲線のみで構成されているような場合に、当該板状物に端面仕上げを実施する際にも生じている問題である。さらには、端面仕上げに限らず、板状物に穴開け処理、フォトマスク処理や、印刷処理、塗布処理等の製造関連処理を行う場合も同様であった。
【0012】
上記事情に鑑みなされた本発明は、板状物の輪郭形状によらず、当該板状物への円滑な製造関連処理の実施を可能とすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、板状物を保持する保持部と、保持された前記板状物に製造関連処理を施す処理部とを備えた板状物製造装置において、仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物における表面の任意の位置に定められ且つ座標原点となる回転中心点と、前記表面の外周輪郭における任意の位置に定めた仮想読取点の座標と、該仮想読取点における外周輪郭の接線と座標軸との交差角度と、実際に保持された前記板状物における表面の外周輪郭と前記仮想読取点を座標軸と平行に通過する座標軸平行直線との交点に位置する実際の読取点の座標と、に基づいて、実際に保持された前記板状物が、前記回転中心点を中心として前記理想姿勢から傾斜した傾斜角度を割り出し、この割り出された傾斜角度を補正する補正手段を有すると共に、該補正手段により前記傾斜角度が補正された状態で、前記板状物に製造関連処理を施すように構成したことに特徴付けられる。ここで、「板状物」とは、板ガラス、ガラス積層体、板ガラスと樹脂板とを貼り合わせた積層体、金属板、セラミック板、半導体板等を含む(以下、同様)。また、「製造関連処理」とは、端面仕上げ、穴開け処理、フォトマスク処理、印刷処理、塗布処理等を含む(以下、同様)。さらに、「仮想読取点における外周輪郭の接線」とは、仮想読取点が外周輪郭の曲線部に位置する場合には、当該仮想読取点における接線を意味し、仮想読取点が外周輪郭の直線部に位置する場合には、この直線部と重なって延びる直線を意味する(以下、同様)。
【0014】
このような構成によれば、仮想的に理想姿勢で保持された板状物における三つの要素(回転中心点、仮想読取点の座標、外周輪郭の接線と座標軸との交差角度)と、実際に保持された板状物における一つの要素(読取点の座標)との四つの要素のみに基づいて、傾斜角度を割り出すことができる(詳しくは、後述する実施形態を参照)。これにより、補正手段による傾斜角度の補正を極めて簡便に行うことが可能となるため、板状物の輪郭形状によらず、板状物に対する製造関連処理を円滑に実施することができる。
【0015】
上記の構成において、前記座標がXY座標であり、前記仮想読取点の座標を(X
0,Y
0)、前記接線とX軸との交差角度をθ
0、前記座標軸平行直線に沿った前記仮想読取点に対する前記読取点の変位をΔYとして、前記傾斜角度θの値を、数2の式により割り出すようにしてもよい。
【数2】
さらに、仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物について、X軸と、前記仮想読取点及び前記回転中心点を通過する直線との、交差角度をθ
1として、前記傾斜角度θの値を、数3の式、或いは、数4の式により割り出すようにしてもよい。
【数3】
【数4】
【0016】
上記の構成において、仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物における前記仮想読取点を互いに位置が異なった任意の複数箇所として定めると共に、各箇所の座標と、前記回転中心点と、各箇所における前記外周輪郭の接線と座標軸との交差角度と、各箇所に対応する実際の前記読取点の座標とに基づいて前記傾斜角度をそれぞれ割り出し、これらの平均値を前記補正手段により補正することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、四つの要素の組(回転中心点、仮想読取点の座標、外周輪郭の接線と座標軸との交差角度、読取点の座標)を一組とした各組(回転中心点以外の3つの要素は互いに異なる)に基づいて割り出された一つ一つの傾斜角度の値と、真の傾斜角度の値(真値)との間に、大きな誤差が発生している場合であっても、個々に割り出された傾斜角度の値について平均値をとれば、誤差が互いに打ち消されやすくなる。そのため、この平均値と、真の傾斜角度の値とを略等しくすることができ、より正確に傾斜角度を割り出すことが可能となる。
【0018】
また、上記課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、保持部に保持された板状物に製造関連処理を施す板状物製造方法において、仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物における表面の任意の位置に定められ且つ座標原点となる回転中心点と、前記表面の外周輪郭における任意の位置に定めた仮想読取点の座標と、該仮想読取点における外周輪郭の接線と座標軸との交差角度と、実際に保持された前記板状物における表面の外周輪郭と前記仮想読取点を座標軸と平行に通過する座標軸平行直線との交点に位置する実際の読取点の座標と、に基づいて、実際に保持された前記板状物が、前記回転中心点を中心として前記理想姿勢から傾斜した傾斜角度を割り出し、この割り出された傾斜角度を補正する補正工程を有すると共に、該補正工程で前記傾斜角度が補正された後に、前記板状物に製造関連処理を施すことに特徴付けられる。
【0019】
このような方法によれば、上記の板状物製造装置について、既に述べた事項と同様の作用効果を享受することができる。
【0020】
上記の方法において、前記座標がXY座標であり、前記仮想読取点の座標を(X
0,Y
0)、前記接線とX軸との交差角度をθ
0、前記座標軸平行直線に沿った前記仮想読取点に対する前記読取点の変位をΔYとして、前記傾斜角度θの値を、数2の式により割り出すようにしてもよい。
【数2】
さらに、仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物について、X軸と、前記仮想読取点及び前記回転中心点を通過する直線との、交差角度をθ
1として、前記傾斜角度θの値を、数3の式、或いは、数4の式により割り出すようにしてもよい。
【数3】
【数4】
【0021】
上記の方法において、仮想的に理想姿勢で保持された前記板状物における前記仮想読取点を互いに位置が異なった任意の複数箇所として定めると共に、各箇所の座標と、前記回転中心点と、各箇所における前記外周輪郭の接線と座標軸との交差角度と、各箇所に対応する実際の前記読取点の座標とに基づいて前記傾斜角度をそれぞれ割り出し、これらの平均値を前記補正工程により補正することが好ましい。
【0022】
このようにすれば、上記の板状物製造装置について、既に述べた事項と同様の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、補正手段による傾斜角度の補正を極めて簡便に行うことが可能となるため、板状物の輪郭形状によらず、当該板状物への円滑な製造関連処理の実施が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。なお、本実施形態においては、板状物は板ガラスであり、表面の輪郭形状が楕円である板ガラスに、製造関連処理として研削による端面仕上げを施す場合を例に挙げて説明している。しかしながら、後述のように、本発明に係る板状物製造装置、及び板状物製造方法は、このような態様に限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る板状物製造装置を示す側面図であり、
図2は、その平面図である。これらの図に示すように、板状物製造装置1は、板ガラスGを保持する加工台8と、板ガラスGの端面Gaを研削する砥石4を保持すると共に、軌道Sに沿って走行させる工具保持部2と、端面Gaの任意の位置における座標を読み取る座標読取部5と、板ガラスGにおける各情報(詳細は後述する)が登録されると共に、これらの情報に基づいて工具保持部2の動きを制御する制御部11とを主要な要素として構成される。
【0027】
加工台8は、定位置に固定されて設置されると共に、板ガラスGが載置される載置面9を有しており、載置面9は、板ガラスGと同様に、その輪郭形状が楕円に形成されている。また、載置面9は、板ガラスGの表面の外周輪郭を形成する端面Gaが加工台8から食み出すように、当該板ガラスGに対して一回り小さい面積を有する。さらに、載置面9には、板ガラスGに対して負圧を作用させることにより、当該板ガラスGを吸着して、加工台8に固定するための多数の吸引孔10が設けられている。この吸引孔10のそれぞれは、図示省略の吸着手段(例えば、真空ポンプ等)と接続されている。加えて、加工台8には、板ガラスGを理想姿勢(詳細は後述する)で載置すべく、端面Gaと当接して、板ガラスGの位置決めを実行するための複数のガイド(図示省略)が備えられている。このガイドは、位置決めの実行時には、予め定まった固定位置で待機すると共に、位置決めが完了すると、砥石4との接触を防止するため、固定位置から退避するように構成されている。ここで、板ガラスGの加工台8からの食み出し寸法は、当該板ガラスGの板厚寸法に対して50%以上で、且つ300%以下であることが好ましい。
【0028】
制御部11には、
図3に二点鎖線で表すように、仮想的に理想姿勢で加工台8(図示省略)に保持された板ガラスGに関して、(1)表面における任意の位置に定められると共にXY座標の原点となり、且つ当該板ガラスGの理想姿勢からの傾きを補正する中心点となる回転中心点Oと、(2)板ガラスGの輪郭形状と、(3)端面Gaにおける任意の位置に定められ、且つ座標読取部5が読み取る予定位置となる単数、又は複数の仮想読取点P
0の座標との(1)〜(3)の情報が登録される。また、
図3に実線で表すように、理想姿勢から回転中心点Oの周りに、未知の傾斜角度θだけ傾斜した姿勢で、実際に加工台8に保持された板ガラスGに関して、(4)座標読取部5により、表面の外周輪郭を形成する端面Gaと仮想読取点P
0をY軸と平行に通過する座標軸平行直線YYとの交点に位置する実際の読取点P
1の座標の情報が登録される。また、登録された(2)板ガラスGの輪郭形状の情報に基づいて、砥石4が走行する軌道Sを設定し、工具保持部2に伝達することが可能となっている。なお、板ガラスGの輪郭形状は、図示省略の輪郭形状測定器(例えば、コントレーサ)によって割り出される。さらに、制御部11は、登録された(1)〜(4)の情報に基づいて、未知の傾斜角度θの値を割り出すと共に、割り出されたθの値(仮想読取点P
0が複数である場合は、それぞれに基づいて割り出された複数のθの値における平均値)を工具保持部2に伝達することが可能となっている。ここで、本実施形態において、「理想姿勢」とは、板ガラスGの輪郭形状である楕円において、楕円の長径がX軸と重なると共に、短径がY軸と重なるように、板ガラスGが加工台8に保持された場合の姿勢をいう。
【0029】
工具保持部2は、
図2に示すように、スピンドル3の先端側(下方側)に取り付けられ、且つ当該スピンドル3の周りを任意の回転数で回転する砥石4を保持している。砥石4は、端面Gaの上下端に位置する両エッジに対して、同時に研削を実行し、面取りを施すことが可能となっており、厚み方向の中央側から上方側、及び下方側に向かって、漸次にその径が拡大するテーパー部を有している。また、工具保持部2は、制御部11から伝達された軌道Sに沿って砥石4を走行させるため、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向(X方向、及びY方向は、それぞれXY座標におけるX軸、Y軸と平行)に自在に移動可能な構成となっている。そして、工具保持部2のZ方向への移動によって、砥石4と板ガラスGの端面Gaとの高さ位置を合致させると共に、工具保持部2のX方向、Y方向への動きに追従して、砥石4がX方向、Y方向に移動することで、軌道Sに沿って走行し、端面Gaに端面仕上げを施すように構成されている。さらに、工具保持部2は、制御部11から伝達された傾斜角度θの値に基づいて、砥石4が走行する軌道Sを、回転中心点Oを中心として、θだけ傾斜させる補正を実行することが可能となっている。
【0030】
座標読取部5は、工具保持部2に固定されたシリンダー7に内包されるピストン12と連結されている。また、シリンダー7は、Z方向に沿って長手とされると共に、その内部空間は、図示省略の空気圧縮手段(例えば、エアコンプレッサー)と接続されており、内部空間内の空気圧を調整することが可能となっている。これにより、座標読取部5は、X方向、及びY方向には、工具保持部2の動きに追従して移動すると共に、シリンダー7内の空気圧の変化に伴ってピストン12が上下動することにより、工具保持部2から独立してZ方向に移動可能な構成とされている。さらに、座標読取部5の下部には、接触式のセンサー6が備えられており、当該センサー6が、座標読取部5のY方向への移動により、加工台8に載置された板ガラスGの端面Gaと当接して、
図3に示す読取点P
1の座標を読み取るように構成されている。なお、このセンサー6としては、非接触式のものを用いてもよい。ここで、センサー6の繰り返し読み取り精度は、0.01mm以下であることが好ましい。
【0031】
以上の構成から、本実施形態においては、加工台8が、板ガラスGを保持する保持部を構成し、砥石4が、保持された板ガラスGに端面仕上げを施す処理部を構成している。また、工具保持部2が傾斜角度θを補正する補正手段を構成している。
【0032】
以下、上記の板状物製造装置1を用いた板状物製造方法について説明する。なお、板状物製造方法について説明するための各図面において、板ガラスG以外の要素については図示を省略している。また、本実施形態においては、仮想読取点P
0の数を二点としているが、後述のように、本発明に係る板状物製造方法は、このような態様に限定されるものではない。
【0033】
まず、板ガラスGが実際に加工台8に保持される前に、予め制御部11に対して、以下の(1)〜(3)の情報が登録される。すなわち、
図4に示すように、仮想的に理想姿勢で加工台8に保持された板ガラスGに関して、(1)回転中心点Oの位置と、(2)板ガラスGの輪郭形状と、(3)二点の仮想読取点P
0(P
01、及びP
02)の各々の座標との情報が登録される。また、制御部11に登録された(2)板ガラスGの輪郭形状の情報に基づいて、砥石4が走行する軌道Sが設定される。ここで、仮想読取点P
01の位置とP
02の位置とは、Y軸を基準として線対称な位置とすることが好ましい。なお、以下の説明において、この二点の仮想読取点P
0のX座標を、P
01については、X
01と表記し、P
02については、X
02と表記する。
【0034】
これにより、同図に示すように、仮想読取点P
0の各々における端面Gaの接線L
0(L
01、及びL
02)が定まると共に、これらの接線L
0とX軸との交差角度θ
0(θ
01、及びθ
02)が定まる。また、副次的にX軸と、仮想読取点P
0及び回転中心点Oを通過する直線との、交差角度θ
1(θ
11、及びθ
12)が定まる。
【0035】
次に、ガイドを固定位置に待機させた状態で、板ガラスGを加工台8に載置すると共に、ガイドと端面Gaとを当接させることで、当該板ガラスGの位置決めを実行する。なお、この際、加工台8に予め目印を付けておき、この目印と回転中心点Oとが合致するように載置することが好ましい。このようにすれば、板ガラスGにおいて、理想姿勢からの傾斜のみでなく、回転中心点Oの位置までもがずれるような事態の発生を回避できる。そして、位置決めが完了すると、載置面9に設けられた吸引孔10により、板ガラスGに負圧を作用させ、当該板ガラスGを加工台8に固定する。その後、ガイドを固定位置から退避させる。このようにして、板ガラスGが実際に加工台8に保持される。
【0036】
このとき、
図5に示すように、実線で表した実際に加工台8に保持された板ガラスGは、二点鎖線で表した仮想的に理想姿勢で加工台8に載置された板ガラスGから、不可避に回転中心点Oの周りに、未知の傾斜角度θだけ傾斜した姿勢で保持されている。この状態下において、実際に保持された板ガラスGに関して、表面の外周輪郭を形成する端面Gaと仮想読取点P
0をY軸と平行に通過する座標軸平行直線YYとの交点に位置する実際の読取点P
1(P
11、及びP
12)の座標をセンサー6で読み取る。読取点P
11を読み取る際には、センサー6をXY座標平面上において、X=X
01に沿ってY方向へ移動させ、板ガラスGの端面Gaと当接させる。同様に、読取点P
12を読み取る際には、センサー6をX=X
02に沿ってY方向へ移動させることで、センサー6を板ガラスGの端面Gaと当接させる。これにより、読取点P
1の座標が読み取られ、これらの座標の情報が制御部11に登録される。
【0037】
以上から、未知の傾斜角度θを割り出すための4つの要素、すなわち、仮想的に理想姿勢で加工台8に保持された板ガラスGについての、回転中心点Oの位置と、仮想読取点P
0(P
01、及びP
02)の座標と、接線L
0(L
01、及びL
02)とX軸との交差角度θ
0(θ
01、及びθ
02)と、実際に保持された前記板状物についての、読取点P
1(P
11、及びP
12)の座標との情報が得られると共に、これらの情報が制御部11に登録される。
【0038】
ここで、これら4つの要素のうち、仮想読取点P
0と、接線L
0とX軸との交差角度θ
0と、読取点P
1との3つの要素については、上述のように、要素毎に二つずつパラメーターが存在するが、これらのうち、一方の組のパラメーター(P
01、θ
01、P
11)と回転中心点Oとに基づいて、未知の傾斜角度θを割り出す過程と、他方の組のパラメーター(P
02、θ
02、P
12)と回転中心点Oとに基づいて、未知の傾斜角度θを割り出す過程とは同一である。そこで、以下の説明においては、一方の組のパラメーター(P
01、θ
01、P
11)と回転中心点Oとに基づいて、未知の傾斜角度θを割り出す過程にのみ着目して説明をする。
【0039】
上述のように、仮想読取点P
0の座標と、読取点P
1の座標との情報が得られたことで、
図6(
図5において丸で囲ったE部を拡大した図)に示すように、座標軸平行直線YYに沿った仮想読取点P
0に対する読取点P
1の変位ΔYが得られる。ここで、仮想的に理想姿勢で加工台8に保持された板ガラスGにおける仮想読取点P
0は、実際に加工台8に保持された板ガラスGが、理想姿勢から回転中心点Oの周りに、未知の傾斜角度θだけ傾斜していることにより、同図に軌跡Rで示すように、実際に加工台8に保持された板ガラスGにおいては、点P
0´に移動している。この点P
0´の座標P
0´(X
0´,Y
0´)は、
【数5】
で表される。
【0040】
また、仮想読取点P
0における端面Gaの接線L
0も、回転中心点Oの周りに未知の傾斜角度θだけ傾斜して移動する。これにより、点P
0´における端面Gaの接線L
0´は、その傾きがtan(θ
0+θ)で表されることから、接線L
0´のXY平面上における方程式は、
【数6】
で表される。そして、数6の式にX=X
0を代入したときのYの値をY
1とすると、Y
1の値は、
【数7】
で表される。これにより、同図に示す点Qの座標Q(X
0,Y
1)が判明する。
【0041】
ここで、座標軸平行直線YYに沿った仮想読取点P
0に対する読取点P
1の変位ΔYの値と、座標軸平行直線YYに沿った仮想読取点P
0と点Qとの間の距離(Y
1−Y
0)とが略等しいものと近似できることから、ΔY≒Y
1−Y
0より、ΔYの値は、
【数2】
で表される。この数2の式を、例えば二分法を用いて、θについて解くことにより、未知の傾斜角度θの値が割り出される。また、同様にして、他方の組のパラメーター(P
02、θ
02、P
12)と回転中心点Oとに基づいて、未知の傾斜角度θの値を割り出すことが可能である。そして、これら二つのθの値の平均値を制御部11から工具保持部2に伝達する。
【0042】
これにより、制御部11から伝達された平均値の値に基づいて、
図7に示すように、補正工程として、工具保持部2が、砥石4が走行する軌道Sを、回転中心点Oを中心としてθだけ傾斜させる。その結果、研削による削り代が、適正量に対して過大となる部位、及び過小となる部位を発生させることなく、板ガラスGの端面Gaに端面仕上げが施される。
【0043】
このような方法によれば、仮想的に理想姿勢で加工台8に保持された板ガラスGにおける三つの要素(回転中心点O、仮想読取点P
0の座標、端面Gaの接線L
0とX軸との交差角度θ
0)と、実際に加工台8に保持された板ガラスGにおける一つの要素(読取点P
1の座標)との四つの要素のみに基づいて、未知の傾斜角度θを割り出すことができる。これにより、工具保持部2による傾斜角度θの補正を極めて簡便に行うことが可能となるため、板ガラスGの輪郭形状によらず、板ガラスGに対する端面仕上げを円滑に実施することができる。
【0044】
また、仮想読取点P
0の数を二点としたことで、一方の組のパラメーター(P
01、θ
01、P
11)と回転中心点Oとに基づいて、或いは、他方の組のパラメーター(P
02、θ
02、P
12)と回転中心点Oとに基づいて割り出された各傾斜角度θの値と、真の傾斜角度の値(真値)との間に、大きな誤差が発生している場合であっても、各傾斜角度θの値について平均値をとれば、誤差が互いに打ち消されやすくなる。そのため、この平均値と、真の傾斜角度の値とを略等しくすることができ、より正確に傾斜角度θを割り出すことが可能となる。
【0045】
なお、上述の方法においては、未知の傾斜角度θを割り出す式として、数2の式を用いているが、傾斜角度θは、以下に示す数3の式、或いは、数4の式によっても割り出すことが可能である。
【0046】
すなわち、数2の式の両辺をX
0(ただし、X
0≠0)で割ると共に、tan(θ
0+θ)に加法定理を適用し、tanθ
1=Y
0/X
0を用いると、数2の式は、以下のように変形することができる。
【数8】
【0047】
ここで、1−tanθtanθ
0の項のうち、tanθtanθ
0は、1よりも十分に小さいものとして無視すると、1−tanθtanθ
0≒1と近似できる。ただし、この近似は、θ
0の値が、−45°<θ
0<45°の場合に適用することが好ましい。さらに、傾斜角度θの値は実用上において、1°以下と極めて小さい値をとるため、tanθ≒θ、sinθ≒θ、cosθ≒1と近似できる。これにより、数8の式は、
【数9】
と整理することができる。この数9の式をθについて解くと、
【数3】
となる。この数3の式から得られる解(θ)は、二つ存在するが、一方は非現実的な値となるため、いずれが正しい解であるかは容易に判別することが可能である。ただし、tanθ
0tanθ
1の値が−1に近くなると、二つの解のいずれが正しいのか判別が困難となる。
【0048】
さらに、数9の式において、tanθ
0tanθ
1の値が−1から十分に外れている場合、第一項は、他の項と比較して十分に小さくなり、無視することができる。これにより、以下の式が得られる。
【数4】
【0049】
ここで、本発明に係る板状物製造装置の構成、及び板状物製造方法は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、板状物として板ガラスを使用した態様となっているが、板状物は板ガラスの他、ガラス積層体、板ガラスと樹脂板とを貼り合わせた積層体(合わせガラス)、金属板、セラミック板、半導体板等であってもよい。また、上記の実施形態においては、板状物(板ガラス)の輪郭形状が楕円となっているが、外周輪郭が曲線のみで形成された他の輪郭形状であってもよいし、矩形や菱形等の外周輪郭に直線が含まれる輪郭形状であってもよい。さらに、製造関連処理としては、研削による端面仕上げの他、穴開け処理、フォトマスク処理、印刷処理、塗布処理等であってもよい。
【0050】
加えて、仮想読取点の数は、必ずしも二点でなくともよく、一点のみであってもよいし、三点以上であってもよい。ただし、板状物の輪郭形状が線対称な形状を有する場合には、仮想読取点の数を偶数とし、これらの位置を線対称な配置とすることが好ましい。
【0051】
また、上記の実施形態においては、XY座標の座標軸は、X軸と楕円の長径とが重なると共に、Y軸と楕円の短径とが重なる態様となっているが、この限りではなく、X軸と短径とが重なると共に、Y軸と長径とが重なる態様としてもよい。すなわち、XY座標の取り方は、上記の実施形態に限定されるものではない。加えて、上記の実施形態においては、板ガラスの理想姿勢として、楕円の長径がX軸と重なり、短径がY軸と重なる姿勢とされているが、X軸と長径が交差すると共に、Y軸と短径が交差するような姿勢を理想姿勢としても構わない。
【0052】
さらに、上記の実施形態においては、工具保持部が補正手段を構成しているが、この限りではない。例えば、制御部で割り出された傾斜角度を工具保持部ではなく、加工台に伝達する構成とし、加工台が回転中心点の周りに、割り出された傾斜角度に応じて傾斜することで、補正を実行する構成としてもよい。つまり、このようにした場合には、加工台が補正手段を構成することになる。
【0053】
加えて、上記の実施形態においては、工具保持部がX方向、Y方向、Z方向に移動する構成とされているが、工具保持部を固定して設置すると共に、加工台がX方向、Y方向、Z方向に移動する構成としてもよい。また、例えば、X方向、Y方向、Z方向のうち、工具保持部がX方向、Y方向にのみ移動する構成とすると共に、加工台がZ方向にのみ移動する構成としてもよい。