特許第6012036号(P6012036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012036ピストンの組付方法及びこれに用いるガイド治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012036
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ピストンの組付方法及びこれに用いるガイド治具
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20161011BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B23P21/00 303C
   B23P19/00 304A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-167174(P2012-167174)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-24165(P2014-24165A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】左武 康司
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−075956(JP,A)
【文献】 特開2002−018655(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/114757(WO,A1)
【文献】 特開昭63−169235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
B62D 41/00−67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン及び該ピストンに一端が取り付けられたコンロッドをシリンダの一端側から挿入し、コンロッドの他端を、シリンダの他端側に配されたクランクピンに取り付けるピストンの組付方法であって、
コンロッドの他端に設けられた一対のボルト穴に、他端を自由端とした一対のガイド治具の一端を装着する工程と、前記一対のガイド治具の他端を、コンロッドの他端よりも、シリンダの中心軸から離反する側に配した状態で、前記一対のガイド治具を先行させてコンロッド及びピストンをシリンダ内に挿入し、前記一対のガイド治具の間にクランクピンを配しながら、コンロッドの他端をクランクピンに嵌合させる工程と、前記一対のボルト穴から前記一対のガイド治具を取り外す工程と、コンロッドの他端をクランクピン取り付ける工程とを順に行うピストンの組付方法。
【請求項2】
ピストン及び該ピストンに一端が取り付けられたコンロッドをシリンダ内に挿入し、コンロッドの他端をクランクピンに取り付けるにあたり、コンロッドの他端に設けられたボルト穴に装着されるガイド治具であって、
前記ボルト穴に挿入可能な保持部と、前記保持部から他端側に延び、他端を自由端とし、他端を、コンロッドの他端よりも、シリンダの中心軸から離反する側に配置可能であるガイド部と、前記保持部の外周に設けられた弾性部材とを備え、
前記保持部を前記ボルト穴の内周に挿入することで前記弾性部材を内径方向に弾性変形させ、その弾性復元力で前記保持部を前記ボルト穴に保持可能としたガイド治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンをエンジン本体に組み付ける方法及びこれに用いるガイド治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンのエンジン本体への組み付けは、ピストン及びこのピストンに一端が取り付けられたコンロッドをシリンダ内に挿入し、コンロッドの他端をクランクピンに取り付けることで行われる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1では、コンロッドの他端とシリンダの内周面との干渉を回避するためのガイド治具(ピストン挿入補助装置)が示されている。具体的には、シリンダの一方側から挿入したガイド治具をシリンダの他方側に待機させたコンロッドに装着し、シリンダの一方側に配されたガイド治具とシリンダの他方側に配されたピストンの双方を保持しながらコンロッドをシリンダ内に挿入することで、コンロッドの軸直交方向(シリンダの半径方向)の移動を規制している。これにより、コンロッドの端部とシリンダ内周面との接触を回避し、シリンダ内周面の損傷を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−34215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1の方法では、最初にシリンダの一方側からガイド治具のみを挿入する工程を要するため、工数が増えてコスト高を招く。また、ガイド治具をシリンダの一方側から挿入するためのスペースが必要となるため、設備の大型化を招く。
【0006】
本発明が解決すべき課題は、ピストンをエンジンに組み付けるにあたり、組付工数を削減すると共に、設備をコンパクト化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ピストン及び該ピストンに一端が取り付けられたコンロッドをシリンダの一端側から挿入し、コンロッドの他端を、シリンダの他端側に配されたクランクピンに取り付けるピストンの組付方法であって、コンロッドの他端に設けられた一対のボルト穴に、他端を自由端とした一対のガイド治具の一端を装着する工程と、一対のガイド治具を先行させてコンロッド及びピストンをシリンダ内に挿入し、一対のガイド治具の間にクランクピンを配しながら、コンロッドの他端をクランクピンに嵌合させる工程と、一対のボルト穴から一対のガイド治具を取り外す工程と、コンロッドの他端にクランクピンを取り付ける工程とを順に行うピストンの組付方法を提供する。
【0008】
このように、他端を自由端としたガイド治具をコンロッドに装着し、ガイド治具を先行させてコンロッド及びピストンをシリンダ内に挿入すれば、ガイド治具とシリンダ内周面とが接触することでコンロッドがガイドされる。これにより、コンロッドの軸心とシリンダの軸心とがおおよそ一致するため、コンロッドの端部とシリンダ内周面とが多少接触しても、シリンダの内周面に品質に影響を与えるような損傷は生じない。また、一対のガイド治具の間にクランクピンを配しながら、コンロッドの他端をクランクピンに嵌合させることにより、コンロッドの他端がクランクピンに対しておおよそ位置決めされるため、コンロッドの他端のエッジがクランクピンと接触しても、クランクピンに品質に影響を与えるような損傷は生じない。以上のように、他端を自由端としたガイド治具をコンロッドに装着することで、コンロッドとシリンダ及びクランクピンとが多少接触する恐れはあるが、その接触によりシリンダの内周面やクランクピンの外周面が損傷することは回避できる。これにより、ガイド治具を予めコンロッドのボルト穴に装着してから、コンロッド及びピストンをシリンダ内に挿入することが可能となるため、上記の特許文献1のようにシリンダの他端側(クランクピン配設側)からガイド治具のみを挿入する工程が不要となり、組付工数が削減されるとともに、このためのスペースが不要となるため設備のコンパクト化が図られる。
【0009】
上記の組付方法に使用するガイド治具として、例えば、ボルト穴に挿入可能な保持部と、保持部から他端側に延び、他端を自由端としたガイド部と、保持部の外周に設けられた弾性部材とを備え、保持部をボルト穴の内周に挿入することで、弾性部を内径方向に弾性変形させ、その弾性復元力で保持部をボルト穴に保持可能としたガイド治具を使用することができる。このガイド治具は、保持部をボルト穴に挿入することによりワンタッチで装着することができると共に、ボルト穴からガイド治具を引き抜くことによりワンタッチで取り外すことができるため、着脱作業性がよく、作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、シリンダの他端側(クランクピン配設側)からガイド治具のみを挿入する工程が不要となるため、ピストンの組付工数を削減できると共に、設備をコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るピストン組付方法のガイド治具装着工程を示す部分断面図である。
図2図1の拡大断面図である。
図3】ガイド治具の断面図である。
図4図3のX−X線における断面図である。
図5】上記ピストン組付方法のピストン挿入工程を示す断面図である。
図6】上記ピストン組付方法のピストン挿入工程を示す断面図である。
図7】上記ピストン組付方法のピストン挿入工程を示す断面図である。
図8】上記ピストン組付方法のガイド治具取り外し工程を示す断面図である。
図9】上記ピストン組付方法のクランクピン取付工程を示す断面図である。
図10】ガイド治具の他の例を示す断面図である。
図11】ガイド治具の他の例を示す断面図である。
図12】コンロッド及びガイド治具の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係るピストン組付方法は、ガイド治具装着工程(図1参照)と、ピストン挿入工程(図5〜7参照)と、ガイド治具取り外し工程(図8参照)と、クランクピン取付工程(図9参照)とを経て行われる。尚、本実施形態では、シリンダ2の軸心が鉛直方向となるようにシリンダブロック1を配置し、ピストン3及びコンロッド4をシリンダ2の上方から挿入する場合を示す(図5等参照)。
【0014】
まず、図1に示すように、上端にピストン3が取り付けられたコンロッド4の下端に、ガイド治具10を装着する(ガイド治具装着工程)。コンロッド4の下端には、クランクピン5の外周面を支持する半円筒面4aと、半円筒面4aの図中左右両側に設けられた下端面4bと、下端面4bに開口したボルト穴4cとを有する。図示例では、ボルト穴4cの上端が閉塞されている。ボルト穴4cは、図2に示すように、上方部分に形成された雌ネジ部4dと、雌ネジ部4dの下方に形成され、下端面4bに開口した円筒面4eとを有する。
【0015】
ガイド治具10は、図3に示すように、保持部11と、保持部11から下方に延びるガイド部12と、保持部11の外周に設けられた弾性部材13とを備える。
【0016】
保持部11は、コンロッド4のボルト穴4cの内周に挿入される挿入部11aと、挿入部11aの下方に設けられ、ガイド部12が固定される固定部11bとを有する。挿入部11aは、外周面に環状溝11a1が形成され、環状溝11a1の上方には、上方に向けて漸次縮径したテーパ面が形成される。弾性部材13は、弾性材料(例えば金属)で形成され、内径方向に弾性変形可能とされる。本実施形態の弾性部材13は、図4に示すように、一部を切り欠いたリング状に形成され、挿入部11aの環状溝11a1に装着される。ガイド治具10をボルト穴4cに装着していない状態では、弾性部材13と環状溝11a1の溝底との間に半径方向の隙間が形成され、これにより、弾性部材13が弾性的に縮径可能な状態とされる。
【0017】
ガイド部12は、円筒形状を成し、湾曲可能とされ、上端が保持部11の固定部11bの外周面に取り付けられる。図示例のガイド部12は、外筒12aと内筒12bとからなる。外筒12aは、上下方向に延びる円筒形状を成し、シリンダ2の内周面を傷つけないように、少なくともシリンダ2よりも軟らかい材料で形成され、例えば樹脂、具体的にはゴムで形成される。内筒12bは、上下方向に延びる円筒形状を成し、外筒12aの内周面に接触した状態で配される。内筒12bは、外筒12aよりも剛性の高い材料で形成され、例えば、金属線をコイル状に巻いて円筒形状としたもので構成される。
【0018】
上記のガイド治具10の保持部11の挿入部11aを、コンロッド4の下端面4bに開口したボルト穴4cに挿入する(図1の矢印参照)。このとき、図2に示すように、挿入部11aの外周に設けられた弾性部材13が、弾性的に縮径する。このとき、弾性部材13の弾性復元力で円筒面4eを内径側から押し付けることで、ガイド治具10がボルト穴4cに保持される。このように、弾性部材13の弾性復元力のみでガイド治具10をボルト穴4cに保持させることで、ガイド治具10の挿入部11aをボルト穴4cに挿入するだけで、ガイド治具10をボルト穴4cにワンタッチで簡単に装着することができる。尚、図示例ではコンロッド4のボルト穴4cに下方からガイド治具10を装着しているが、装着方向は任意であり、例えば図示例のピストン3及びコンロッド4を上下反転させて、ボルト穴4cにガイド治具10を上方から装着してもよい。
【0019】
また、弾性部材13がボルト穴4cの雌ネジ部4dに達すると、弾性部材13の押し付け力で雌ネジ部4dが損傷する恐れがあるため、弾性部材13は雌ねじ部4dに到達しない構成とすることが好ましい。図示例では、保持部11の肩面11cをコンロッド4の下端面4bに当接させた状態で、弾性部材13が雌ネジ部4dよりも下方に配されるようにしている。尚、円筒面4eは、コンロッド4の下端面4bの研削加工時の位置決め穴としての機能や、雌ネジ部4dの逃げ部としての機能を果たすことができればよく、それ程高精度である必要はないため、弾性部材13を押し付けることにより多少傷付いても、その後の加工工程や製品の性能に影響することはない。
【0020】
ボルト穴4cに装着したガイド部材10は、図1に示すように、ガイド部12を若干湾曲させ、ガイド部12の下端がコンロッド4の下端よりも外側(コンロッド4の軸心から離反する側)に配されるようにしておく。
【0021】
次に、コンロッド4の一対のボルト穴4cに、下端を自由端とした一対のガイド治具10を装着した状態で、ピストン3及びコンロッド4をシリンダ2の内周に挿入する(ピストン挿入工程)。具体的には、図5に示すように、クランクピン5をシリンダ2の直下に配した状態で、ピストン3、コンロッド4、及びガイド治具10の一体品(以下、ピストンアッシAと言う。)をシリンダ2の上方から下降させ、ガイド治具10を先行させてシリンダ2の内周に挿入する。この作業を作業者が行う場合は、例えば作業者が一方の手でピストン3を保持して下降させながら、他方の手で一対のガイド治具10のガイド部12の下端をシリンダ2の内周に挿入するようにガイドする。
【0022】
その後、作業者がピストン3を保持しながらピストンアッシAをさらに下降させ、コンロッド4の下端をシリンダ2の内周に挿入する(図6参照)。このとき、一対のガイド治具10のガイド部12の下端がコンロッド4の下端よりも外側に配されていることで、ガイド部12の下端とシリンダ2の内周面とが接触し、これによりコンロッド4がシリンダ2に対しておおよそ芯出しされるため、コンロッド4が大きく傾いてシリンダ2の内周面を損傷する事態を回避できる。特に、ピストンアッシAはピストン3のみが保持されており、コンロッド4の下端は自由端となっているため、仮にコンロッド4の下端がシリンダ2の内周面に接触しても、コンロッド4をシリンダ2に押し付けるような力は発生せず、シリンダ2の内周面が損傷することはない。また、ガイド部12の外筒12aはゴム等の柔らかい材料で形成されているため、この外筒12aをシリンダ2の内周面に接触させることで、ガイド部12との接触によるシリンダ2の内周面の損傷を防止できる。
【0023】
さらにピストンアッシAを下降させると、図7に示すように、ピストン3がシリンダ2の内周に挿入される。このとき、コンロッド4の下端は自由端であるため、図示のようにコンロッド4の下端の大径部がシリンダ2より下方まで達すると、コンロッド4の下端が自由に揺動可能となり、コンロッド4の半円筒面4aの水平方向位置がクランクピン5に対して大きくずれる恐れがある。そこで、図示のように、一対のガイド治具10のガイド部12の間にクランクピン5を配することで、コンロッド4の下端がクランクピン5に対して位置決めされ、コンロッド4の半円筒面4aがクランクピン5の真上に配される。このような効果を確実に得るためには、コンロッド4の下端の大径部がシリンダ2より下方に達する前に(すなわちコンロッド4の下端が自由に揺動可能となる前に)、一対のガイド部12の間にクランクピン5が配されるように、ガイド部12の長さを設定することが好ましい。
【0024】
この状態でさらにピストンアッシAを下降させると、図8に示すように、コンロッド4の半円筒面4aとクランクピン5の外周面とが嵌合する。尚、コンロッド4の下端面4bの内側のエッジ(半円筒面4aとの間の角部)がクランクピン5の外周面と僅かに干渉する場合があるが、一対のガイド治具10でガイドされることで、コンロッド4の半円筒面4aのクランクピン5に対する水平方向のオフセット量は極僅かである。このため、クランクピン5の外周面のうち、コンロッド4のエッジが接触し得る部分はほぼ鉛直面であるため、干渉による衝撃は小さく、クランクピン5の外周面が損傷する事態を回避できる。また、このようにコンロッド4の下端のエッジとクランクピン5の外周面とが接触することで、コンロッド4の下端がガイドされ、コンロッド4の半円筒面4aをクランクピン5の外周面に確実に嵌合させることができる。
【0025】
その後、シリンダブロック1の他のシリンダにも、上記と同様にピストンアッシAを装着する。このとき、他のシリンダの下方のクランクピンは、上記のクランクピン5と位相が異なるため、クランクシャフトを回転させて、各シリンダの直下にクランクピンを配する必要がある。この場合、既にコンロッド4の下端を嵌合させたクランクピン5がクランクジャーナルを中心に回転することで、コンロッド4の下端に装着されたガイド治具10もクランクピン5と共に回転し、ガイド治具10のガイド部12がシリンダブロック1の内部と干渉する恐れがある。このとき、上記のように、ガイド部12を湾曲可能とし、且つ、外筒12aをゴム等の軟らかい材料で形成することで、ガイド部12でシリンダブロック1の内部を損傷する事態を防止できる。
【0026】
その後、図8に矢印で示すように、コンロッド4のボルト穴4cからガイド治具10を取り外す(ガイド治具取り外し工程)。このとき、ガイド治具10は、弾性部材13の弾性復元力のみでボルト穴4cの円筒面4eに保持されているため、ガイド部12を下方に引き抜くことで、ガイド治具10をボルト穴4cから簡単に取り外すことができる。
【0027】
その後、図9に示すように、クランクピン5の下方にベアリングキャップ6を配置し、コンロッド4の半円筒面4aとベアリングキャップ6の半円筒面6aとの間にクランクピン5を配した状態で、コンロッド4とベアリングキャップ6とをボルト7で固定する(クランクピン取付工程)。以上により、ピストン3のエンジンへの組付が完了する。尚、クランクピン5の外周面と、コンロッド4の半円筒面4a及びベアリングキャップ6の半円筒面6aとの間には、それぞれ図示しない軸受メタルが配されている。
【0028】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、弾性部材13がリング状に形成した場合を示したが、これに限らず、例えば図10に示すように、挿入部11aの外周面の円周方向複数箇所に半径方向の穴11a2を設け、この穴11a2に設けられたボール13a及びこれを外径向きに付勢するバネ13bで、弾性部材13を構成してもよい。挿入部11aをボルト穴4cに挿入すると、ボール13aを介してバネ13bが圧縮され、弾性部材13が内径方向に弾性変形する。このときの弾性部材13の弾性復元力により、ボール13aがボルト穴4cの内周面(円筒面4e)に押し付けられ、この押し付け力でガイド治具10がボルト穴4cに保持される。
【0029】
また、上記の実施形態では、弾性部材13の弾性復元力でガイド治具10をボルト穴4cに保持させる場合を示したが、これに限られない。例えば図11に示すように、ガイド治具10の挿入部11aの外周面に雄ネジ部11a3を形成し、この雄ネジ部11a3とボルト穴4cの雌ネジ部4dとをネジ結合してガイド治具10をボルト穴4cに保持させてもよい(図示省略)。ただし、このようにガイド治具10をボルト穴4cにネジ結合すると、ガイド治具10をボルト穴4cに強固に固定できる反面、ガイド治具10のボルト穴4cに対する着脱作業に手間がかかる。また、雄ネジ部11a3と雌ネジ部4dとを螺号させることで、ネジ部が削れて切り屑が生じる場合があるため、この切り屑がコンロッド4とベアリングキャップ6との合わせ面や、コンロッド4とクランクピン5との摺動面に入り込んで不具合を招く恐れがある。以上の理由から、ガイド治具10のボルト穴4cへの装着は、上述の実施形態のように弾性部材13の弾性復元力により行うことが好ましい。
【0030】
また、上記の実施形態では、コンロッド4のボルト穴4cが非貫通である場合を示したが、ボルト穴4cが貫通している場合にも、本発明に係る組付方法を適用することができる。この場合、上記のガイド治具10のほか、図12に示すガイド治具20を使用することができる。ガイド治具20は、保持部21とガイド部22とからなり、保持部21をボルト穴4cの上端開口部で係止することでボルト穴4cに保持される。図示例では、保持部21が、ボルトヘッド21a及び軸部21bを有するボルトからなり、ボルトヘッド21aがボルト穴4cの上端開口部に係止されると共に、軸部21bの外周面にガイド部22の上端が固定される。ガイド部22は、少なくともシリンダ2の内周面よりも軟らかい材料で円筒形状に形成され、例えば、ゴム等の樹脂で形成される。
【0031】
また、上記の実施形態では、シリンダ2の軸心が鉛直方向となるようにシリンダブロック1を配置した場合を示したが、これに限らず、シリンダ2の軸心が鉛直方向に対して傾斜した方向(例えば水平方向)となるようにシリンダブロックを配置してもよい。ただし、この場合、ピストン3及びコンロッド4をシリンダ2の内周に挿入する際に、自重によりコンロッド4がシリンダ2の内周面に押し付けられるため、上記の実施形態と比べてシリンダ2の内周面が損傷する恐れが高くなる。従って、シリンダ2の内周面の損傷を確実に防止するためには、上記の実施形態のように、シリンダ2の軸心を鉛直方向として、ピストン3及びコンロッド4をシリンダ2の上方から挿入することが好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 シリンダブロック
2 シリンダ
3 ピストン
4 コンロッド
4c ボルト穴
4d 雌ネジ部
4e 円筒面
5 クランクピン
6 ベアリングキャップ
10 ガイド治具
11 保持部
12 ガイド部
13 弾性部材
A ピストンアッシ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12