(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012042
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】保存剤としてのバニリン誘導体の使用、保存方法、化合物、および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20161011BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20161011BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20161011BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 9/00 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20161011BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20161011BHJP
C07C 49/175 20060101ALI20161011BHJP
C07C 49/255 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
A61K8/35
A23L33/10
A61K9/107
A61K47/10
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/04
A61Q5/06
A61Q5/12
A61Q9/00
A61Q11/00
A61Q19/10
C07C49/175
C07C49/255
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-531474(P2012-531474)
(86)(22)【出願日】2010年9月16日
(65)【公表番号】特表2013-506644(P2013-506644A)
(43)【公表日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】FR2010051926
(87)【国際公開番号】WO2011039445
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年1月10日
【審判番号】不服2015-7569(P2015-7569/J1)
【審判請求日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】0956843
(32)【優先日】2009年10月1日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/248,999
(32)【優先日】2009年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】0958082
(32)【優先日】2009年11月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ダルコ
【合議体】
【審判長】
内藤 伸一
【審判官】
小久保 勝伊
【審判官】
小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−053408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8
A61Q
A01N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の少なくとも1種の化合物の
、化粧品、皮膚科用、医薬、栄養補助食品、または口腔化粧品組成物中における保存剤としての使用
【化1】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和)、もしくはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【請求項2】
前記化合物が、
(i)R2が、Hであり、R3が、OHで場合により置換されている、メチル、エチル、プロピル、ブチル、もしくはペンチル基;またはC2〜C6アルケニル基を表す;あるいは
(ii)R2が、CH3を表し、R3が、(i)C1〜C10アルキル基;(ii)C2〜C10アルケニル基;または(iii)構造-CH2-CH(OH)-R5(R5は、直鎖C1〜C10アルキル基を表す)のヒドロキシアルキル基を表す
式(I)に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、次の化合物から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【化2】
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、次の化合物から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【化3】
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、次の化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【化4】
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、単独でまたは混合物として、組成物の重量に対して0.01%〜5重量%の割合で存在している、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物が、シリコーン脂肪物質;非シリコーン脂肪物質;8〜32個の炭素原子を有する脂肪酸;合成エステルおよびエーテル;鉱物または合成物由来の直鎖または分岐炭化水素;8〜26個の炭素原子を有する脂肪アルコール;水;C2〜C6アルコール;グリコール、ケトン;増粘剤、乳化剤、界面活性剤、ゲル化剤、有効な化粧剤、芳香剤、充填剤、染料、保湿剤、ビタミン、およびポリマーから選択される少なくとも1種の成分を含む生理学的に許容される媒体を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が、顔、身体、もしくは唇の皮膚を化粧するための製品;アフターシェイブゲルもしくはローション;除毛クリーム;身体衛生用組成物;医薬組成物;固形組成物;加圧噴射剤も含むエアロゾル組成物;毛髪セット用ローション、毛髪スタイリングクリームもしくはゲル、染色組成物、毛髪修復用ローション、パーマネントウェーブ組成物、脱毛に抗するためのローションもしくはゲル;または口腔歯科使用のための組成物の形態をしている、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
化粧品、皮膚科用、医薬、栄養補助食品、または口腔化粧品組成物を保存する方法におい
て式(I)の少なくとも1種の化合物を組み込むことにあることを特徴とする方法
【化5】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和)、もしくはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【請求項10】
式(I')の化合物
【化6】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和
)を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【請求項11】
(i)R2が、Hであり、R3が、OHで場合により置換されている、エチル、プロピル、ブチル、もしくはペンチル基;またはC2〜C6アルケニル基を表す;あるいは
(ii)R2が、CH3を表し、R3が、(i)C1〜C10アルキル基;(ii)C2〜C10アルケニル基;または(iii)構造-CH2-CH(OH)-R5(R5は、直鎖C1〜C10アルキル基を表す)ヒドロキシアルキル基を表す、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
次の式の、請求項10または11に記載の化合物。
【化7】
【請求項13】
式(I)の少なくとも1種の化合物
およびシリコーン脂肪物質;非シリコーン脂肪物質;グリコール、ケトン;増粘剤、乳化剤、界面活性剤、ゲル化剤、芳香剤、充填剤、染料、保湿剤、ビタミン、およびポリマーから選択される少なくとも1種の成分を含む生理学的に許容される媒体を含む化粧品、皮膚科用、または医薬組成物
【化8】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和)、もしくはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【請求項14】
式(I)の少なくとも1種の化合物を含む栄養補助食品または口腔化粧品組成物
【化9】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和)、もしくはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【請求項15】
前記式(I)の化合物が、次の化合物から選択される、請求項13または14に記載の組成物。
【化10】
【請求項16】
前記式(I)の化合物が、次の化合物から選択される、請求項13から15のいずれか一項に記載の組成物。
【化11】
【請求項17】
前記式(I)の化合物が、次の化合物である、請求項13から16のいずれか一項に記載の組成物。
【化12】
【請求項18】
前記式(I)の化合物が、単独でまたは混合物として、組成物の重量に対して0.01%〜5重量%の割合で存在している、請求項13から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
シリコーン脂肪物質;非シリコーン脂肪物質;8〜32個の炭素原子を有する脂肪酸;合成エステルおよびエーテル;鉱物または合成物由来の直鎖または分岐炭化水素;8〜26個の炭素原子を有する脂肪アルコール;水;C2〜C6アルコール;グリコール、ケトン;増粘剤、乳化剤、界面活性剤、ゲル化剤、有効な化粧剤、芳香剤、充填剤、染料、保湿剤、ビタミン、およびポリマーから選択される少なくとも1種の成分を含む生理学的に許容される媒体を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
顔、身体、もしくは唇の皮膚を化粧するための製品;アフターシェイブゲルもしくはローション;除毛クリーム;身体衛生用組成物;固形組成物;加圧噴射剤も含むエアロゾル組成物;毛髪セット用ローション、毛髪スタイリングクリームもしくはゲル、染色組成物、毛髪修復用ローション、パーマネントウェーブ組成物、脱毛に抗するためのローションもしくはゲル;または口腔歯科使用のための組成物の形態をしている、請求項13および15から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
式(I)の少なくとも1種の化合物を含む、化粧品、皮膚科用、医薬、栄養補助食品、または口腔化粧品組成物のための保存剤
【化13】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和)、もしくはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、化粧用、皮膚科用、または医薬、さらには栄養補助食品、または口腔化粧品組成物中の保存剤としてのバニリン誘導体の使用に関する。本発明はまた、化粧品、皮膚科または薬学、さらには栄養補助食品、または口腔化粧品に、特に、保存剤として使用することができる新規化合物、またこの化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品または皮膚科用組成物中に化学的保存剤を導入することは一般的に行われており、これらの保存剤は、これらの組成物を急速に使用に不適な状態にすることのある組成物中の微生物の増殖に対抗するためのものである。例えば、組成物の製造中に組成物中で増殖できる微生物から、また、使用者が組成物を取り扱う際に、特に、瓶の中の製品を指で取り出す際に組成物中に入れてしまう可能性のある微生物から、組成物を保護することが特に必要である。一般に使用される化学的保存剤は、具体的には、パラベン、有機酸、またはホルムアルデヒド放出化合物である。しかし、これらの保存剤は、比較的高いレベルで存在する場合、特に敏感肌に対して、刺激を引き起こすという欠点を有している。さらに、環境のために、消費者は、環境にやさしい、具体的には、生態毒性のない保存剤をますます探している。さらに、通常使用される保存剤の有効性は変わりやすく、それらの配合は、特には、不相容性、さらには不安定化、配合物、特にエマルジョンの問題をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Asian Natural Products Research、2006年、8(8)、683〜688頁
【非特許文献2】Helv. Chimica Acta、2006年、89(3)、483〜495頁
【非特許文献3】Chem. Pharm. Bull.、2006年、54(3)、377〜379頁
【非特許文献4】Bioorg. J. Med. Chem. Lett.、2004年、14(5)、1287〜1289頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、特に、現存する化合物の抗微生物スペクトルと少なくとも同じまたはさらにはより広い抗微生物スペクトルを有し、かつ従来技術の欠点を有さない、特に、微生物汚染からの化粧品配合物の保護を可能にすると同時に十分な忍容性がある特定の物理化学的性質を有する新規な保存剤を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の一主題は、式(I)の少なくとも1種の化合物の、具体的には、化粧品、皮膚科用、医薬、栄養補助食品、または口腔化粧品組成物中における保存剤としての使用である。
【0006】
【化1】
【0007】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和)、もしくはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【0008】
用語「保存剤」は、汚染因子に対して組成物を保存するために前記組成物に一般に添加される物質を意味するためのものである。有利なことに、本発明による式(I)の化合物は、抗微生物剤および/または抗菌剤および/または抗真菌剤として使用される。
【0009】
本発明の別の主題は、化粧品、皮膚科用、医薬、栄養補助食品、または口腔化粧品組成物を保存する方法において、前記組成物中に式(I)の少なくとも1種の化合物を組み込むことにあることを特徴とする方法である。
【0010】
好ましくは、化合物は、
(i)R2が、Hであり、R3が、OHで場合により置換されている、メチル、エチル、プロピル、ブチル、もしくはペンチル基、特に、構造-CH
2-CH(OH)-R5(R5は、直鎖C1〜C4アルキル基を表す);またはC2〜C6アルケニル基、特に、基-CH=CH-R4(R4は、直鎖C1〜C4アルキル基を表す)を表す;あるいは
(ii)R2が、CH
3を表し、R3が、(i)C1〜C10アルキル基、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシル;(ii)C2〜C10アルケニル基、特に、基-CH=CH-R4(R4は、直鎖C1〜C6アルキル基を表す);または(iii)構造-CH
2-CH(OH)-R5(R5は、直鎖C1〜C10、好ましくはC4〜C10アルキル基を表す)のヒドロキシアルキル基を表す
式(I)に相当する。
【0011】
式(I)の化合物の混合物を使用することはもちろんできる。好ましくは、組成物は、式(I)の保存剤以外の保存剤を含まない。特に、組成物は、パラベンを含有していない。
【0012】
式(I)のある種の化合物は、新規であり、また本発明の主題を形成するものであり;それらは以下の式(I')の化合物である。
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、
R2は、水素原子を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C6アルキル基(飽和);または直鎖C2〜C6アルケニル基(C=C不飽和)、もしくはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基を表す;
あるいは、R2は、メチルまたはエチル基を表し、R3は、ヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C1〜C12アルキル基(飽和);またはヒドロキシル基で場合により置換されている直鎖C2〜C12アルケニル基(C=C不飽和)を表す]。
【0015】
好ましくは、式(I')において、
(i)R2が、Hであり、R3が、OHで場合により置換されている、エチル、プロピル、ブチル、もしくはペンチル基、特に、構造-CH
2-CH(OH)-R5(R5は、直鎖C1〜C4アルキル基を表す);またはC2〜C6アルケニル基、特に、基-CH=CH-R4(R4は、直鎖C1〜C4アルキル基を表す)を表す;あるいは
(ii)R2が、CH
3を表し、R3が、(i)C1〜C10アルキル基、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシル;(ii)C2〜C10アルケニル基、特に、基-CH=CH-R4(R4は、直鎖C1〜C6アルキル基を表す);または(iii)構造-CH
2-CH(OH)-R5(R5は、直鎖C1〜C10、好ましくはC4〜C10アルキル基を表す)のヒドロキシアルキル基を表す。
【0016】
具体的には、次の式(I)または(I')の化合物を挙げることができる。
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
式(I)または式(I')の少なくとも1種の化合物を含む化粧品、皮膚科用、または医薬組成物もまた、本発明の主題を形成するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
当業者なら、式(I)の化合物を一般知識に基づいて容易に調製することができる。特に、次の参考文献を挙げることができる:J. Asian Natural Products Research、2006年、8(8)、683〜688頁;Helv. Chimica Acta、2006年、89(3)、483〜495頁;Chem. Pharm. Bull.、2006年、54(3)、377〜379頁;およびBioorg. J. Med. Chem. Lett.、2004年、14(5)、1287〜1289頁。
【0021】
したがって、式(I)の化合物は、次の方法でエチルバニリンから調製することができる。
【0023】
式(I)の化合物は、単独でまたは混合物として、化粧品、皮膚科用、または医薬組成物中に、組成物の重量に対して0.01%〜5重量%、具体的には0.1%〜2.5重量%の割合で使用することができる。
【0024】
化粧品、皮膚科用、または医薬組成物はさらに、化粧品、皮膚科、または生理学的に許容される媒体、すなわち、顔または身体の皮膚、唇、毛髪、まつ毛、眉、および爪などのケラチン材料と適合する媒体を含む。
【0025】
本発明による組成物は、特に局所施用用に通常使用される任意のガレヌス形態、具体的には、水溶液または水/アルコール溶液、水中油型(O/W)、油中水型(W/O)、または複合型(3重:W/O/WまたはO/W/O)エマルジョン、水性ゲル、あるいは小球(これらの小球は、ナノスフェアやナノカプセルなどのポリマーナノ粒子、またはイオン性および/もしくは非イオン性タイプの脂質小胞(リポソーム、ニオソーム、またはオレオソーム)であってよい)を使用した水相中に脂肪相を含む分散液、ナノエマルジョン、あるいは薄膜の形態とすることができる。これらの組成物は、通常の方法に従って調製される。
【0026】
本発明による組成物は、多少流動性を有してもよく、白色または有色のクリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペースト、またはフォームの外観を有してもよい。それらは、場合により、エアロゾルの形態で皮膚に施用することができる。それらはまた、固体形態、例えば、スティック形態とすることができる。
【0027】
本発明による組成物は、具体的には、次の形態とすることができる:
顔、身体、もしくは唇の皮膚を化粧するための製品;
アフターシェイブゲルもしくはローション;
除毛クリーム;
シャワーゲルやシャンプーなどの身体衛生用組成物;
医薬組成物;
石けんやクレンジングバーなどの固形組成物;
加圧噴射剤(pressurized propellent)も含むエアロゾル組成物;
毛髪セット用ローション、毛髪スタイリングクリームもしくはゲル、染色組成物、毛髪修復用ローション(hair-restructuring lotion)、パーマネントウェーブ組成物、脱毛に抗するためのローションもしくはゲル;または
口腔歯科使用のための組成物。
【0028】
その中で化合物を使用することができる生理学的に許容される媒体、またその構成成分、その量、組成物のガレヌス形態、および前記組成物の調製方法は、当業者ならその一般知識に基づいて、所望の組成物のタイプに応じて選択することができる。
【0029】
特に、組成物は、企図された施用分野で通常使用されるどんな脂肪物質も含むことができる。具体的には、シリコーン油、ゴム、およびワックスなどのシリコーン脂肪物質、また、植物、鉱物、動物、および/または合成物由来の油、ペースト、およびワックスなどの非シリコーン脂肪物質を挙げることができる。油は、揮発性でも不揮発性でもよい。シリコーン油には、室温で液体またはペースト状の、直鎖または環状シリコーン鎖を有する揮発性または不揮発性のポリジメチルシロキサン(PDMS)、具体的には、シクロヘキサシロキサンなどのシクロポリジメチルシロキサン;懸垂しているかまたはシリコーン鎖の末端にある、2〜24個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、またはフェニル基を含むポリジメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、またはトリメチルシロキシケイ酸2-フェニルエチル、およびポリメチルフェニルシロキサンを挙げることができる。植物由来の炭化水素系油には、4〜10個の炭素原子を含有する脂肪酸の液体トリグリセリド、例えば、ヘプタン酸トリグリセリドまたはオクタン酸トリグリセリド、あるいは、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、骨髄油、ブドウの種油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アンズ油、マカダミア油、アララ油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ホホバ油、およびシアバター油を挙げることができる。また、使用することができる脂肪物質として、以下のものも挙げることができる:
8〜32個の炭素原子を含有する脂肪酸;
合成エステルおよびエーテル、具体的には、式R
1COOR
2およびR
1OR
2(式中、R
1は、8〜29個の炭素原子を含有する脂肪酸残基を表し、R
2は、3〜30個の炭素原子を含有する、分岐または非分岐炭化水素系鎖を表す)、例えば、ピュアセリン油、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、またはイソステアリン酸イソステアリル;ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、脂肪族アルコールヘプタン酸エステル、脂肪族アルコールオクタン酸エステル、および脂肪族アルコールデカン酸エステル;ポリオールエステル、例えば、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコール;ならびにペンタエリスリトールエステル、例えば、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル;
鉱物または合成物由来の直鎖または分岐炭化水素、例えば、揮発性または不揮発性の流動パラフィン、およびその誘導体、ペトロラタム、ポリデセン、ならびにパーリーム(Parleam)油などの水素化ポリイソブテンなど;
8〜26個の炭素原子を含有する脂肪アルコール、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびその混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコール、またはリノレイルアルコール。
【0030】
組成物はまた、水を含む水性媒体、エタノールやイソプロパノールなどのC2〜C6アルコールを含有する水性アルコール媒体、またはC2〜C6アルコール、具体的には、エタノールおよびイソプロパノール、プロピレングリコールなどのグリコール、ならびにケトンなどの標準的な有機溶媒を含む有機媒体を含むことができる。
【0031】
本発明による組成物はまた、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、ゲル化剤、有効な化粧剤、芳香剤、充填剤、染料、保湿剤、ビタミン、およびポリマーなど、化粧品および皮膚科学の分野で慣習的な補助剤を含むことができる。想定される分野で通常使用するこれらの様々な補助剤の量は、例えば、組成物の総重量の0.001%〜20%である。これらの補助剤およびその濃度は、本発明による化合物の有利な特性に有害でないものでなければならない。
【0032】
本発明による組成物のpHは、組成物が少なくとも1種の水相(例えば、水溶液、エマルジョン)を含む場合、好ましくは4〜9、好ましくは4〜7、有利なことには5〜6である。
【0033】
次の例示的実施例において、本発明をより非常に詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
本発明による化合物の抗微生物活性の決定
式(I)の化合物の抗微生物効果を、チャレンジ試験または人為的汚染法によって評価した。
【0035】
試験した化合物
【0036】
【化6】
【0037】
プロトコール
チャレンジ試験の方法は、採取した微生物菌株(細菌、酵母、およびカビ)で試料を人為的に汚染させ、接種の7日後に再度生存可能となった微生物の数を評価することからなる。
【0038】
式(I)の化合物の効果を実証するために、化粧品用配合物に約10
6cfu(コロニー形成単位)/gを接種した後、本発明による化合物をそれぞれ2%含有する化粧品用配合物の抗微生物活性を同じ配合物単独(対照)と比較した。
【0039】
化粧品用配合物(重量%)
トリステアリン酸ソルビタン(CrodaのSpan 65 V(登録商標)) 0.9%
ステアリン酸ポリエチレングリコール(40 OE)(CrodaのMyrj 52 P(登録商標)) 2.0%
モノステアリン酸グリセリル/ジステアリン酸グリセリル(36/64)/ステアリン酸カリウム混合物 3.0%
植物由来の脂肪酸(53/44/3のステアリン酸/パルミチン酸/ミリスチン酸) 1.0%
セチルアルコール 3.8%
ミリスチン酸ミリスチル 2.0%
シクロペンタシロキサン 5.0%
充填剤 0.8%
グリセロール 3.0%
水素化イソパラフィン 7.2%
白色ペトロラタム 4.0%
水 全体を100%にする量
【0040】
微生物培養物
5種の純粋な微生物培養物を使用する。
【0041】
【表1】
【0042】
グラム陰性細菌[大腸菌(Escherichia coli)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)]、グラム陽性細菌[大便レンサ球菌(Enterococcus faecalis)]、酵母[カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)]、およびカビ[黒色コウジ菌(Aspergillus niger)]を、細菌および酵母に関しては接種の前日に、カビに関しては接種の5日前に継代培養培地にそれぞれ播種する。
【0043】
接種当日:
細菌および酵母に関しては、分光光度計において544nmの透過光で光学濃度が35%〜45%の懸濁液が得られるように、トリプトン塩希釈剤中で懸濁液をそれぞれ調製する;
カビに関しては、6〜7mlの回収溶液で寒天を洗浄して、胞子を採取し、懸濁液を滅菌チューブまたはフラスコ中に回収する。
【0044】
微生物懸濁液をホモジナイズした後、0.2mlの接種材料を各薬瓶へ入れ(懸濁液は純粋で使用:1×10
8〜3×10
8cfu/ml)、微生物懸濁液を含む製品(=化粧品用配合物)20gを、スパチュラを使用してホモジナイズする。
【0045】
製品中に存在する微生物の含有量は、製品1g当たり微生物10
6個の濃度にホモジナイズした後に相当する、すなわち、10
8微生物/mlを含有する接種材料を1%接種した後に相当する。22℃±2℃でかつ暗所において微生物と製品とを7日間接触させた後、10倍希釈を行い、製品中に残存する復活可能な微生物の数を数える。
【0046】
結果
【0047】
【表2】
【実施例2】
【0048】
以下のもの(重量%)を含むエマルジョンを調製する:
トリステアリン酸ソルビタン(CrodaのSpan 65 V(登録商標)) 0.9%
ステアリン酸ポリエチレングリコール(40 OE)(CrodaのMyrj 52 P(登録商標)) 2%
モノステアリン酸グリセリル/ジステアリン酸グリセリル(36/64)/ステアリン酸カリウム混合物 3%
植物由来の脂肪酸(53/44/3のステアリン酸/パルミチン酸/ミリスチン酸) 1%
グリセロール 3%
シクロペンタシロキサン 5%
水素化イソパラフィン 7.2%
白色ペトロラタム 4%
セチルアルコール 4%
ミリスチン酸ミリスチル 2%
充填剤 0.8%
実施例1で試験した化合物 2%
水 全体を100%にする量
【実施例3】
【0049】
以下のもの(重量%)を含むO/Wエマルジョンを調製する:
水酸化ナトリウム 0.03%
液体ペトロラタム 10%
パルミチン酸2-エチルヘキシル 10%
酢酸エチル/シクロヘキサン混合液中で重合させたアクリル酸/メタクリル酸ステアリルのコポリマー 0.1%
グリセロール 5%
セチルステアリルグルコシドとセチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物(12/46/42) 2.45%
実施例1で試験した化合物 2%
微生物学的に清浄な脱イオン水 全体を100%にする量
【実施例4】
【0050】
以下のもの(重量%)を含むローションを調製する:
アラントイン 0.05%
塩化ナトリウム 0.09%
クエン酸 全体をpH7±0.2にする量
ヤグルマソウ水(cornflower water) 1%
ヘキシレングリコール(2-メチル-2,4-ペンタンジオール) 1%
グリセロール 5%
N-ココイルアミドエチル-N-エトキシカルボキシメチルグリシン酸ナトリウム 1.1%
ラウリルエーテル硫酸ナトリウム/ラウリルエーテル硫酸マグネシウム(80/20)40 OE(52% SM) 0.45%
実施例1で試験した化合物 1.5%
微生物学的に清浄な脱イオン水 全体を100%にする量