【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のスイッチング電源装置で行われる通信方法は、過電流と過電圧を検出したフラグ情報等の少量のデータ情報を通信することは容易であるが、多量のデータ情報を通信することについての考慮が不十分であり、制御の高度化、多機能化に対応することが難しい。
【0007】
例えば、上記の過電流検出情報、過電圧検出情報等の7ビット以外にも、出力電圧設定値を自動調整する制御などを行う場合は、出力電圧測定値情報として少なくとも8ビット(分解能256段階)が必要である。その他の制御を考えると、出力電流測定値情報(8ビット)、複数箇所の温度情報(例えば、2箇所の場合は16ビット)、出力電圧設定値情報(8ビット)、冷却用ファンの回転数情報(8ビット)、リモートON/OFF情報(1ビット)等の49ビットも必要になる。したがって、これらを単純に合計すれば、合計53ビットを更新サイクルの1単位としたデータ情報の伝送を行わなければならない。
【0008】
電源システムに用いられるシリアル通信方式は、代表的なものとして、UART方式(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、I2C方式(Inter Integrated
Circuit)が挙げられる。これらの通信方式は、各方式に対応した通信モジュールが標準搭載されたデジタルプロセッサが多く市販されていることから、比較的採用しやすい方式といえる。また、I2C方式は、PMBus(Power Management Bus)と呼ばれるスイッチング電源制御用の通信方式にも採用されている。
【0009】
例えば、特許文献1のスイッチング電源装置にUART方式を適用する場合を考えると、UARTモジュールは、比較的安価なデジタルプロセッサにも搭載されている点で有利であるが、通常、1つの通信フレームで7〜9ビットのデータ情報しか取り扱うことができないので、上記の53ビットという多量のデータ情報を1単位として伝送するためには6〜9の通信フレームを要し、常時全53ビットを1単位として通信すると、情報の更新に時間がかかるという問題がある。例えば、何らかの原因で過電流状態になった時、過電流検出回路が過電流検出情報を瞬時に発生させたとしても、過電流検出情報の伝送に時間がかかると、保護回路の動作開始が遅れてしまう。また、上記の53ビットの情報は、デジタルプロセッサ内の通信用メモリに格納され、通常、1通りの通信が終了する毎に新しく更新されるので、1通りの通信に時間がかかると、上記の過電流検出情報が発生してから通信用メモリが更新されるまでの時間も長くなるので、さらに保護回路の動作が遅れることになる。
【0010】
一方、特許文献1のスイッチング電源装置にI2C方式を適用した場合を考えると、I2Cモジュールは、1単位のデータ情報としてUARTモジュールよりもビット数の多いデータ情報を取り扱うことができるが、それでも高速な応答を求められる制御には十分とは言えない。したがって、通常のUART方式の場合と同様に、過電流検出情報等の素早く伝送するのが好ましい情報の伝送が遅れるという問題ある。
【0011】
また、I2Cモジュールは、比較的高価なデジタルプロセッサにしか搭載されていない。さらに、互いに絶縁された入力側及び出力側のデジタルプロセッサの間で双方向の通信を行う場合、I2C方式では、一方向の信号伝送しかできないフォトカプラのような手頃な絶縁素子は使用できず、双方向の信号伝達に対応した特別な絶縁手段(高価な素子、外形の大きい素子など)を使用しなければならない。したがって、装置のコストが増加し、外形も大型化するという問題があった。
【0012】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、安価なデジタルプロセッサの間で信頼性の高い通信を実現し、制御の高度化、高機能化の要求に対応できる電源装置及び電源装置内部の通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、入力電圧を所定の出力電圧に変換して出力する電力変換部と、前記電力変換部の動作を制御又は監視する制御回路とを備えた電源装置であって、
前記制御回路には、互いの間で一方向又は双方向の通信が可能な複数のデジタルプロセッサが設けられ、前記各デジタルプロセッサには、通信用のUARTモジュールと、通信の処理手順を規定する通信制御プログラムと、通信を行う際に使用される通信用メモリと、前記通信制御プログラムを実行し、前記UARTモジュール
、及び前記通信用メモリに対して処理の指令を出すCPUとが設けられ、
送信側となる前記デジタルプロセッサの前記通信用メモリには、素早く伝送することが好ましい情報である高速データ情報
が格納された高速データ送信メモリと、前記高速データ情報以外のデータ情報であって、前記高速データ情報と比較して伝送速度が要求されない低速データ情報が
、アドレスが付与されて格納され
た低速データ送信メモリと、送信側の前記CPUが前記低速データ送信メモリ内の特定のアドレスを指定するアドレス指定情報が書き込まれる低速データ送信バッファメモリとが設けられ、
送信側の前記デジタルプロセッサが受信側の前記デジタルプロセッサに向けてデータを送信するとき、送信側の前記CPUの指令により、前記低速データ情報が複数の部分情報に区分され、
送信側の前記CPUが前記部分情報を送信対象に指定し、該CPUの指令により、前記低速データ送信バッファメモリに、指定された前記部分情報、及び対応する前記アドレス指定情報が書き込まれ、前記高速データ送信メモリに格納されている前記高速データ情報を含む高速通信フレームと
前記低速データ送信バッファメモリに格納されている前記部分情報を含む低速通信フレームとを組み合わせた通信パケットが複数形成され、送信側の前記UARTモジュールが、前記高速及び低速通信フレームを前記通信パケットの単位で順番に送信することによって、前記高速データ情報及び前記低速データ情報が伝送される電源装置である。
【0014】
前記制御回路が入力側と出力側とに分けて互いに絶縁され、複数の
前記デジタルプロセッサは、入力側の前記制御回路と出力側の前記制御回路のそれぞれに設けられ、絶縁素子を通じて通信を行う構成でもよい。
【0015】
送信側となる前記デジタルプロセッサの前記通信用メモリには、1バイトの前記高速データ情報が格納される
前記高速データ送信メモリと、1バイト毎にアドレスが付与され、前記高速データ情報以外の複数バイトの前記低速データ情報が格納される
前記低速データ送信メモリと、送信側の前記CPUが前記低速データ送信メモリ内の特定のアドレスを指定する
前記アドレス指定情報、及び該特定のアドレスにおける上位4ビット又は下位4ビットの何れかを指定する上位下位指定情報が書き込まれ、さらに、指定された前記アドレス指定情報及び前記上位下位指定情報に対応する領域に格納されている前記部分情報が書き込まれる
前記低速データ送信バッファメモリとが設けられ、
送信側の前記デジタルプロセッサが受信側の前記デジタルプロセッサに向けてデータ送信を行うとき、送信側の前記CPUが1つの前記部分情報を送信対象に指定し、該CPUの指令により、前記低速データ送信バッファメモリに、指定された前記部分情報、対応する前記アドレス指定情報、及び対応する前記上位下位指定情報が書き込まれ、送信側の
前記UARTモジュールは、前記高速データ送信メモリに格納されている高速データ情報を含む高速通信フレームと、前記低速データ送信バッファメモリに格納されている情報を含む低速通信フレームとを組み合わせて1つの通信パケットを形成し、受信側の前記UARTモジュールに向けて送信し、
送信側の前記CPUが次の前記部分情報を送信対象に指定し、該CPUの指令により、前記低速データ送信バッファメモリに、指定された前記部分情報、対応する前記アドレス指定情報、及び対応する前記上位下位指定情報が書き込まれ、送信側の
前記UARTモジュールが同様の動作を行い、前記高速及び低速通信フレームを前記通信パケットの単位で順番に送信する構成であることが好ましい。
【0016】
また、受信側となる前記デジタルプロセッサの前記通信用メモリには、取得した前記高速通信フレームに含まれる1バイトの
前記高速データ情報が格納される高速データ受信メモリと、取得した前記低速通信フレームに含まれる前記アドレス指定情報が書き込まれる受信アドレスメモリと、取得した前記低速通信フレームに含まれる前記部分情報が、該低速通信フレームに含まれる前記上位下位指定情報に対応する領域に書き込まれる低速データ受信バッファメモリと、1バイト毎にアドレスが付与され、複数バイトの
前記低速データ情報が書き込まれる低速データ受信メモリとが設けられ、
受信側の前記デジタルプロセッサが送信側の前記デジタルプロセッサからデータを受信するとき、1つの前記通信パケットを受信すると、受信側の前記CPUの指令により、受信した前記高速通信フレームに含まれる前記高速データ情報が、前記高速データ受信メモリに格納され、受信した前記低速通信フレームに含まれる前記アドレス指定情報が前記受信アドレスメモリに書き込まれ、受信した前記低速通信フレームに含まれる前記部分情報が、前記低速データ受信バッファメモリの所定の領域であって、該低速通信フレームに含まれる前記上位下位指定情報に対応する領域に書き込まれ、前記低速データ受信バッファメモリに書き込まれた前記部分情報が、前記低速データ受信メモリの所定の前記アドレスであって、前記受信アドレスメモリに書き込まれた前記アドレス指定情報に対応する前記アドレスに格納され、
さらに、複数の
前記通信パケットについて同様の動作を行い、前記高速データ情報及び前記低速データ情報が、前記高速データ受信メモリ及び低速データ受信メモリに格納される構成であることが好ましい。
【0017】
送信側の前記デジタルプロセッサが受信側の前記デジタルプロセッサに向けてデータ送信を行うとき、送信側の前記CPUの指令により、前記アドレス指定情報が同じで前記上位下位指定情報が異なる前記低速通信フレームを有する前記通信パケット同士を組み合わせた通信セグメントが複数形成され、送信側の前記UARTモジュールが前記高速及び低速通信フレームを前記通信セグメントの単位で順番に送信することによって、前記高速データ情報及び前記低速データ情報が伝送される構成にしてもよい。
【0018】
また、本発明は、入力電圧を所定の出力電圧に変換して出力する電力変換部と、前記電力変換部の動作を制御又は監視する制御回路とを備え、前記制御回路内に、互いの間で一方向又は双方向の通信が可能なUARTモジュールを有する複数のデジタルプロセッサが設けられた電源装置における電源装置内部の通信方法であって、
送信側のデジタルプロセッサは、
通信用メモリを有し、前記通信用メモリには、素早く伝送することが好ましい情報である高速データ情報
が格納された高速データ送信メモリと、前記高速データ情報以外のデータ情報であって、前記高速データ情報と比較して伝送速度が要求されない低速データ情報
が、アドレスが付与されて格納された低速データ送信メモリと、送信側の前記CPUが前記低速データ送信メモリ内の特定のアドレスを指定するアドレス指定情報が書き込まれる低速データ送信バッファメモリとが設けられ、
受信側の前記デジタルプロセッサに向けてデータ送信するとき、前記低速データ情報を複数の部分情報に区分し、
送信する前記部分情報について、前記低速データ送信バッファメモリに、指定された前記部分情報、及び対応する前記アドレス指定情報を書き込み、前記高速データ送信メモリに格納されている前記高速データ情報を含む高速通信フレームと
前記低速データ送信バッファメモリに格納されている前記部分情報を含む低速通信フレームとを組み合わせた通信パケットを複数形成し、
送信側の前記UARTモジュールから前記高速及び低速通信フレームを前記通信パケットの単位で順番に送信することによって、前記高速データ情報及び前記低速データ情報を伝送する電源装置内部の通信方法である。
【0019】
送信側となる前記デジタルプロセッサの前記通信用メモリには、あらかじめ、1バイトの
前記高速データ情報が格納される
前記高速データ送信メモリと、1バイト毎にアドレスが付与され、前記高速データ情報以外の複数バイトの前記低速データ情報が格納される
前記低速データ送信メモリと、送信側の前記CPUが前記低速データ送信メモリ内の特定のアドレスを指定する
前記アドレス指定情報、及び該特定のアドレスにおける上位4ビット又は下位4ビットの何れかを指定する上位下位指定情報が書き込まれ、さらに、指定された前記アドレス指定情報及び前記上位下位指定情報に対応する領域に格納されている前記部分情報が書き込まれる
前記低速データ送信バッファメモリとが設けられ、
送信側の前記デジタルプロセッサが受信側の前記デジタルプロセッサに向けてデータを送信するとき、送信する1つの前記部分情報について、前記低速データ送信バッファメモリに、該部分情報、対応する前記アドレス指定情報、及び対応する前記上位下位指定情報を書き込み、前記高速データ送信メモリに格納されている高速データ情報を含む高速通信フレームと、前記低速データ送信バッファメモリに格納されている情報を含む低速通信フレームとを組み合わせて1つの通信パケットを形成し、送信側の前記UARTモジュールから受信側の前記UARTモジュールに向けて送信し、
さらに、次の通信パケットについて同様の動作を行い、前記高速及び低速通信フレームを前記通信パケットの単位で順番に送信することによって、前記高速データ情報及び前記低速データ情報を伝送する構成であることが好ましい。
【0020】
また、受信側となる前記デジタルプロセッサの前記通信用メモリには、あらかじめ、取得した前記高速通信フレームに含まれる1バイトの
前記高速データ情報が格納される高速データ受信メモリと、取得した前記低速通信フレームに含まれる前記アドレス指定情報が書き込まれる受信アドレスメモリと、取得した前記低速通信フレームに含まれる前記部分情報が、該低速通信フレームに含まれる前記上位下位指定情報に対応する領域に書き込まれる低速データ受信バッファメモリと、1バイト毎にアドレスが付与され、複数バイトの
前記低速データ情報が書き込まれる低速データ受信メモリとが設けられ、
受信側の前記デジタルプロセッサが送信側の前記デジタルプロセッサからデータを受信するとき、1つの前記通信パケットを受信すると、受信した前記高速通信フレームに含まれる前記高速データ情報を前記高速データ受信メモリに格納し、受信した前記低速通信フレームに含まれる前記アドレス指定情報を前記受信アドレスメモリに書き込み、受信した前記低速通信フレームに含まれる前記部分情報を、
前記低速データ受信バッファメモリの所定の領域であって、該低速通信フレームに含まれる前記上位下位指定情報に対応する領域に書き込み、
前記低速データ受信バッファメモリに書き込まれた前記部分情報を、前記低速データ受信メモリの所定の前記アドレスであって、前記受信アドレスメモリに書き込まれた前記アドレス指定情報に対応する前記アドレスに格納し、
さらに、複数の
前記通信パケットについて同様の動作を行い、前記高速データ情報及び前記低速データ情報を、前記高速データ受信メモリ及び低速データ受信メモリに格納する構成であることが好ましい。
【0021】
送信側の前記UARTモジュールは、前記高速通信フレーム及び前記低速通信フレームを時間を空けずに1つの前記通信パケットとして送信し、複数の
前記通信パケットを所定の基準時間を空けて送信し、受信側の前記デジタルプロセッサは、先の前記通信フレームの受信動作の終了と、後の前記通信フレームの受信動作の開始との間に時間が空いている場合、通信エラーが発生したと判断する構成にすることができる。
【0022】
また、送信側の前記UARTモジュールは、前記高速通信フレーム及び前記低速通信フレームを時間を空けずに1つの前記通信パケットとして送信し、複数の
前記通信パケットを所定の基準時間を空けて送信し、受信側の前記デジタルプロセッサは、次の前記通信パケットを受信した場合、前の前記通信パケットの受信動作の終了と、次の前記通信パケットの受信動作の開始との間の時間が前記基準時間を超えると、通信エラーが発生したと判断する構成にすることができる。
【0023】
さらに、送信側の前記デジタルプロセッサが受信側の前記デジタルプロセッサに向けてデータ送信を行うとき、前記アドレス指定情報が同じで前記上位下位指定情報が異なる前記低速通信フレームを有する前記通信パケット同士を組み合わせた通信セグメントを複数形成し、送信側の前記UARTモジュールが前記高速及び低速通信フレームを前記通信セグメントの単位で順番に送信することによって、前記高速データ情報及び前記低速データ情報を伝送する構成にしてもよい。
【0024】
この場合、受信側の前記デジタルプロセッサは、1つの前記通信セグメントを構成する先の前記通信パケットに含まれる
前記アドレス指定情報と、後の前記通信パケットに含まれる
前記アドレス指定情報とが異なっている場合、通信エラーが発生したと判断する構成にすることができる。
【0025】
また、受信側の前記デジタルプロセッサは、1つの前記通信セグメントを構成する先の前記通信パケットに含まれる
前記上位下位指定情報と、後の前記通信パケットに含まれる
前記上位下位指定情報とが同じ場合、通信エラーが発生したと判断する構成にすることができる。