特許第6012053号(P6012053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012053濃縮供給物を使用してオステオポンチンを単離する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012053
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】濃縮供給物を使用してオステオポンチンを単離する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20161011BHJP
   C07K 1/36 20060101ALI20161011BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20161011BHJP
   A23J 1/20 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C07K1/18
   C07K1/36
   C07K14/47
   !A23J1/20
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-555901(P2013-555901)
(86)(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公表番号】特表2014-508157(P2014-508157A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2012053749
(87)【国際公開番号】WO2012117120
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】11156826.7
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/448,775
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508335831
【氏名又は名称】アーラ フーズ エーエムビーエー
【氏名又は名称原語表記】Arla Foods amba
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ベルテルセン,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイス,ペータ ラングボー
(72)【発明者】
【氏名】トルグヴァソン,チィリネ
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−519239(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0125525(US,A1)
【文献】 International Dairy Journal,2006年,Vol.16,p.370-378
【文献】 Protein Expression and Purification,2003年,Vol.30,p.238-245
【文献】 Protein Expression and Purification,1997年,Vol.9,p.309-314
【文献】 Journal of Food Science,2005年,Vol.70, No.4,E295-E300
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)オステオポンチンを含んでなり、25℃でpH3.6〜6.5の範囲のpHと、25℃で4〜10mS/cmの範囲の導電率とを有し、50〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなる、ミルク由来供給物を提供するステップと、
b)前記ミルク由来供給物をアニオン交換媒体に接触させることを含む、前記ミルク由来供給物にアニオン交換クロマトグラフィーを実施するステップと、
c)前記アニオン交換媒体に結合するタンパク質を回収し、それによって単離オステオポンチンを含んでなる組成物を得るステップと
を含んでなることを特徴とする、ミルク由来供給物からオステオポンチンを単離する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法が、さらに、ステップb)とステップc)との間に、前記アニオン交換媒体を洗浄するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、5.0未満の等電点(pI)を有する追加的タンパク質をさらに含んでなることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、50〜150g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、75〜125g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、乳清由来供給物を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、甘性乳清由来供給物を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、前記ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも1%(w/w)の量のCMPを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、前記ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、1〜40%(w/w)の範囲の量のCMPを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、前記ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも1%(w/w)の量のα−ラクトアルブミンを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、前記ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも1%(w/w)の量のβ−ラクトグロブリンを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、25℃でpH3.8〜5.5の範囲のpHを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、25℃で導電率4.5〜9.0mS/cmの範囲の導電率を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、25℃で導電率4〜7mS/cmの範囲の導電率を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法において、前記ミルク由来供給物が、25℃で導電率7〜10mS/cmの範囲の導電率を有することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法において、回収された前記組成物が、濃縮、透析濾過、溶媒蒸発、噴霧乾燥、およびタンパク質結合カチオン置換からなる群から選択される、1つまたは複数の工程ステップをさらに受けることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乳清、甘性乳清または酸性乳清ベースの供給物などのミルク由来供給物から、オステオポンチンを単離する方法に関する。具体的には、本方法は、比較的高タンパク質濃度と狭い範囲のpHと導電率のミルク由来供給物の使用を伴い、それは驚くことに、化学的に複雑な供給物からのオステオポンチンの非常に効率的な単離を提供することが証明された。
【背景技術】
【0002】
オステオポンチンは、酸性で高度にリン酸化されたシアル酸に富む、カルシウム結合タンパク質である。オステオポンチンは、1モルのオステオポンチンあたり、およそ28モルの結合リン酸塩を含有し、1モルのオステオポンチンあたり、およそ50モルのCaに結合する。
【0003】
オステオポンチン(OPN)は、骨再形成、異所性石灰化阻害、および細胞接着と移動、ならびにいくつかの免疫機能などの、多数の生物学的過程と関係があるとされる、多機能生理活性タンパク質である。オステオポンチンは、サイトカイン様特性を有し、Tヘルパー1免疫応答の開始における基本要因である。オステオポンチンは、ほとんどの組織と体液中に存在し、最大濃度はミルク中に見られる。
【0004】
OPNの異所性石灰化阻害機能を裏付けて、OPN欠損マウスを使用した生体内モデルは、タンパク質の外からの添加に際して、石灰化の減少を示した。これに加えて、OPNはシュウ酸カルシウム一水和物結晶の成長と凝集を抑制し得るので、OPNは、腎結石の形成に対する尿道の防御に関与する。
【0005】
ミルク中のOPNの生物学的役割は明らかでない;しかしいくつかの機能が仮定され得た。オステオポンチンは、乳腺の発達と分化に関与することが報告されており、初期乳汁分泌において乳腺中に高レベルのOPN発現が観察されている。さらに高度にアニオン性であるタンパク質の性質は、OPNがカルシウムイオンと可溶性複合体を形成できるようにして、それによってミルク中の意図されないカルシウムの結晶化と沈殿が抑制される。
【0006】
学術文献中では、オステオポンチンは、典型的に骨またはミルクから精製され、典型的に20mg/Lの濃度で牛乳中に存在する。ミルク中では、オステオポンチンは乳清タンパク質であるが、Ca2+レベル次第では、カゼインミセルとある程度結びつくこともある。酸性乳清が、オステオポンチンの工業生産のための好ましい原料である。酸性乳清が成形される場合、Ca2+が乳清相に漏出するにつれて、オステオポンチンはカゼインミセルから放出されると考えられる。この側面により、酸性乳清はオステオポンチンの直接的原料となる。同じ理由で、甘性乳清は、わずかにより低いオステオポンチン含量を有する。さらに甘性乳清は、κ−カゼインの酵素的切断からのカゼイノマクロペプチド(CMP)を含有する。CMPはオステオポンチンと多数の生化学的類似点を有し、どちらも小型で可撓性の酸性リン酸化糖タンパク質である。上記の理由からCMPとオステオポンチンは、イオン交換樹脂との結合においてかなり類似すると思われ、それはCMP含有原料からのオステオポンチンの精製において問題を引き起こす。別の側面は、チーズ製造のために使用されるタンパク質分解酵素によるオステオポンチン分解の恐れである。これらの3つの側面が、工業生産および科学的研究の双方において、オステオポンチン精製のためのこの原料の利用の回避につながることもあった。
【0007】
国際公開第02/28413 A1号パンフレットは、低pHアニオン交換によって、ミルクおよび酸性乳清などの原材料から、オステオポンチン含有組成物を製造する方法を記載する。国際公開第02/28413 A1号パンフレットでは、工程原材料も得られる製品もいずれも、アニオン交換体と結合して、オステオポンチンの結合を抑制することが知られているCMPの一種であるcGMPを含有してはならないと、強調される。
【0008】
国際公開第01/149741 A2号パンフレットは、ミルク材料を可溶性カルシウムと混合し、混合物のpHを調節して、オステオポンチンを溶液中に保ちながら、その他の乳清タンパク質成分を選択的に沈殿させることで、オステオポンチンをミルク材料から精製する方法を記載する。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、驚くことに、先行技術に見られる先入観に反して、供給物中の競合タンパク質の存在にもかかわらず、アニオン交換によって、複雑なミルク由来供給物から、高収率かつ高純度でオステオポンチンを単離し得ることを発見した。本発明者らは、オステオポンチンの収率と純度に、供給物の導電率が特に重要であることを見出し、ミルク由来供給物からのオステオポンチンの単離に最適な導電率の範囲を特定した。
【0010】
したがって本発明の一態様は、
a)オステオポンチンを含んでなり、25℃でpH3.6〜6.5の範囲のpHと、25℃で4〜10mS/cmの範囲の導電率とを有する、ミルク由来供給物を提供するステップと、
b)ミルク由来供給物をアニオン交換媒体に接触させることを含む、前記ミルク由来供給物にアニオン交換クロマトグラフィーを実施するステップと、
c)任意選択的に、アニオン交換媒体を洗浄するステップと、
d)アニオン交換媒体に結合するタンパク質を回収し、それによって単離オステオポンチンを含んでなる組成物を得るステップと
を含んでなる、ミルク由来供給物からオステオポンチンを単離する方法に関する。
【0011】
本発明の態様は、例えば、
a)オステオポンチンを含んでなり、25℃でpH3.6〜6.5の範囲のpHと、25℃で4〜10mS/cmの範囲の導電率とを有し、50〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなる、ミルク由来供給物を提供するステップと、
b)ミルク由来供給物をアニオン交換媒体に接触させることを含む、前記ミルク由来供給物にアニオン交換クロマトグラフィーを実施するステップと、
c)任意選択的に、アニオン交換媒体を洗浄するステップと、
d)アニオン交換媒体に結合するタンパク質を回収し、それによって単離オステオポンチンを含んでなる組成物を得るステップと
を含んでなる、ミルク由来供給物からオステオポンチンを単離する方法に関してもよい。
【0012】
上述の利点に加えて、本方法は、より費用効率が高いアニオン交換媒体の使用と、アニオン交換媒体1kgあたりのオステオポンチンのより高い収率を可能にする。本方法の別の利点は、実施例5で実証されるようなアニオン交換サイクルあたりのステオポンチン収率の改善である。
【0013】
水溶液の「導電率」(時に「比導電率」と称される)は、溶液が電気を伝導する能力の尺度である。導電率は、例えば2枚の電極間の溶液のAC抵抗の測定によって判定されてもよく、結果は、典型的に1cmあたりのミリジーメンス(mS/cm)単位で示される。導電率の測定値は、例えばEPA(US米国環境保護庁)法120.1号に従って測定されてもよい。
【0014】
本発明のさらなる態様は、本方法によって得られる、オステオポンチン含有組成物に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、オステオポンチン含有組成物それ自体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、導電率5.5mS/cmにおけるオステオポンチンの純度および収率に対する、甘性乳清由来供給物のpHの影響である。
図2図2は、pH4.3におけるオステオポンチンの純度と収率に対する、甘性乳清由来供給物の導電率の影響である。
図3図3は、pH4.3におけるOPNの純度と収率に対する、酸性乳清由来供給物の導電率の影響である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のとおり、本発明の一態様は、
a)オステオポンチンを含んでなり、25℃でpH3.6〜6.5の範囲のpHと、25℃で4〜10mS/cmの範囲の導電率とを有し、50〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなる、ミルク由来供給物を提供するステップと、
b)ミルク由来供給物をアニオン交換媒体に接触させることを含む、前記ミルク由来供給物にアニオン交換クロマトグラフィーを実施するステップと、
c)任意選択的に、アニオン交換媒体を洗浄するステップと、
d)アニオン交換媒体に結合するタンパク質を回収し、それによって単離オステオポンチンを含んでなる組成物を得るステップと
を含んでなる、ミルク由来供給物からオステオポンチンを単離する方法に関する。
【0018】
方法のステップは、典型的に、例えばステップa)、b)、c)、およびd)の順序で実施される。しかし本発明のいくつかの実施形態では、方法のステップc)が省かれ、この場合、方法は、ステップa)、b)、およびd)を含んでなる。
【0019】
本発明の文脈で「オステオポンチンの単離」という用語は、ステップd)において、アニオン交換媒体から回収されたタンパク質総重量に対して、少なくとも70%(w/w)、好ましくは少なくとも80%(w/w)、なおもより好ましくは少なくとも90%(w/w)の重量%へのオステオポンチンの濃縮に関する。オステオポンチンの単離は、ステップd)において、アニオン交換媒体から回収されたタンパク質総重量に対して、例えば少なくとも97%(w/w)などの少なくとも95%(w/w)の重量%へのオステオポンチンの濃縮を伴ってもよい。
【0020】
本方法は、例えばCMP含有ミルク由来供給物など、5.0未満の等電点(pI)を有する追加的なタンパク質を含んでなるミルク由来供給物からのオステオポンチンの選択濃縮を改善するのに、特に有用である。「選択濃縮」という用語は、オステオポンチンと、ミルク由来供給物のその他のタンパク質総量との間のモル比を増大させることと、理解されるべきである。
【0021】
タンパク質の等電点は、好ましくは25℃での等電点電気泳動によって測定される。
【0022】
本発明の文脈で「ミルク由来供給物」という用語は、アニオン交換媒体に接触する液体供給物に関する。
【0023】
ミルク由来供給物は、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、ラクダ、ラマ、ウマおよび/またはシカからのミルクなど、1つまたは複数の哺乳類起源からのミルクに由来する。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は牛乳に由来する。
【0024】
本発明の文脈で、「ミルク由来供給物」、「甘性乳清由来供給物」、「酸性乳清由来供給物」、および「乳清由来供給物」という用語は、総タンパク質量の少なくとも50%(w/w)が、それぞれミルク、甘性乳清、酸性乳清または乳清に由来する供給物に関する。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物の総タンパク質量の少なくとも90%(w/w)、好ましくは実質的に全てが、ミルク、甘性乳清、酸性乳清または乳清に由来する。
【0025】
本発明の文脈で、「ミルク」という用語は、乳汁分泌中に哺乳類の乳腺から得られる液体に関する。「ミルク」という用語は、広義に解釈されるべきであり、生乳、すなわち乳腺から直接得られる液体と、例えば脱脂乳または全乳など、元の生乳と比較して乳脂肪濃度が低下している規格化乳製品の双方を包含する。
【0026】
乳清は、ミルクからのチーズまたはカゼイン製造中に生じる水様副産物に言及する総称である。
【0027】
本発明の文脈で、「甘性乳清」という用語は、例えば黄色チーズの製造中に起きる、レンネットベースのミルクの凝固中に得られる乳清に関する。
【0028】
本発明の文脈で、「酸性乳清」という用語は、例えばカテージチーズまたはクワルク製造中、またはカゼイン/カゼイネートの製造中に起きる、ミルクの化学的または生物学的酸性化において得られる乳清に関する。
【0029】
本発明の文脈で、「乳清(serum whey)」、「天然乳清」または「乳清(lactoserum)」としても知られている「乳清」という用語は、それから乳脂肪とカゼインミセルが除去されたミルクに関する。しかし乳清は、典型的に、ミセルが除去される前に、天然カゼインミセルから解離した、いくらかの遊離カゼイン種を含有する。乳清は、例えば孔径およそ0.1マイクロメートルのフィルターまたはメンブランを通過させて脱脂乳を精密濾過し、得られた透過液を乳清として収集することで、製造されてもよい。乳清は、Evans et al.に従って製造されてもよい。
【0030】
理解されるであろうように、ミルク、甘性乳清、酸性乳清または乳清は、ミルク由来供給物を調製するためのいくつかの工程ステップを受けていてもよい。
【0031】
ミルクまたはミルク関連製品の処理は、典型的に、低温殺菌(例えば72℃で15秒間)、または高温殺菌(例えば85℃で20秒間)などの1つまたは複数の加熱処理工程を伴う。
【0032】
代案としては、または加えて、処理は、1つまたは複数の濾過ステップを伴ってもよい。精密濾過を使用して、微生物を除去し、または代案としてはカゼインを濃縮してもよい。例えば限外濾過またはナノ濾過を使用して、ホエータンパク質または乳清タンパク質を濃縮してもよい。
【0033】
代案としては、または加えて、処理は、例えば脱脂乳から脂肪を分離し、および/またはミルクから微生物を分離するための1つまたは複数の遠心分離ステップ伴ってもよい。
【0034】
代案としては、または加えて、処理は、水を除去し、したがってタンパク質および/またはミネラルなどの乾燥物質を濃縮するための1つまたは複数の蒸発ステップを伴ってもよい。
【0035】
処理はまた、1つまたは複数のpH調節を含んでなってもよい。例えば酸性化もまた使用して、カゼインを凝析してもよく、処理がイオン交換クロマトグラフィーを伴う場合は、pH調節がさらに重要なこともある。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、濾過加熱処理乳清、またはα−ラクトアルブミンおよび/またはβ−ラクトグロブリン枯渇乳清など、その他の乳タンパク質画分の製造からのもう1つのプロセス流を含んでなる。
【0037】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、乳清由来供給物を含んでなり、またはさらにはそれから本質的になる。ミルク由来供給物は、例えば乳清であってもよく、好ましくは、例えば乳清限外濾過により得られる残余分の形態の乳清タンパク質濃縮物である。
【0038】
中ミルク由来供給物のオステオポンチンの含量は、特定の供給物タイプに依存する。本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.01〜20%(w/w)の範囲の量のオステオポンチンを含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.05〜5%(w/w)の範囲の量のオステオポンチンを含んでなってもよい。ミルク由来供給物は、例えば0.1〜2%(w/w)の範囲の量のオステオポンチンを含んでなってもよい。
【0039】
代案としてはミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.1〜1%(w/w)の範囲の量のオステオポンチンを含んでなってもよい。
【0040】
本発明の文脈では、1つまたは複数の小成分または1つまたは複数の機能から「本質的になる」と記述される製品、成分、方法、または方法段階は、1つまたは複数の具体的に言及される小成分または1つまたは複数の具体的に言及される機能からなるが、本発明の基本的および新規特性に実質的に影響を及ぼさない、1つまたは複数の追加的な不特定の小成分成分または機能もまた含んでもよい。
【0041】
上述したように、本方法は、5.0未満のpIを有するタンパク質などの複雑な供給物、すなわちオステオポンチンの単離を妨げる分子実体を含有する供給物から、オステオポンチンを単離するのに特に効果的である。このようなタンパク質は、アニオン交換媒体の官能基について、オステオポンチンと競合することが分かっている。
【0042】
5.0未満のpIを有するタンパク質の例は、α−ラクトアルブミン、プロテオースペプトン−3、プロテオースペプトン−5、およびプロテオースペプトン−8と、カゼイノマクロペプチドおよび/またはカゼイノリンペプチドなどのカゼイン由来ペプチドである。したがって追加的なタンパク質は、α−ラクトアルブミン、プロテオースペプトン−3、プロテオースペプトン−5、およびプロテオースペプトン−8、カゼイン由来ペプチド、カゼイノマクロペプチド、カゼイノリンペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群からの1つまたは複数のタンパク質を含んでなってもよい。遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼインは、5.0未満のpI値を有するタンパク質の他の例である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも0.1%(w/w)の量の5.0未満のpIを有する追加的なタンパク質を含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも0.5%(w/w)の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。
【0044】
代案としては、例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも2%(w/w)の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。理解されるであろうように、5.0未満のpIを有する追加的なタンパク質はオステオポンチンを含まないが、典型的に、指定範囲のpIを有する1つまたは複数のその他のタンパク質を含む。
【0045】
本発明の別の実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.1〜50%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する追加的なタンパク質を含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.5〜40%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。代案としては、例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、2〜25%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。
【0046】
例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.1〜20%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.3〜15%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。代案としては、例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.5〜10%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。
【0047】
本発明本発明のさらなる実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、1〜50%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する追加的なタンパク質を含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、10〜45%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。代案としては、例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、15〜40%(w/w)の範囲の量の5.0未満のpIを有する、追加的なタンパク質を含んでなってもよい。
【0048】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、5.0未満のpIを有する追加的なタンパク質は4.5未満のpI、好ましくは4.0未満のpIを有する。
【0049】
本発明の文脈で「タンパク質」という用語は、ポリペプチドの大型凝集体と、単一ポリペプチド鎖およびジ−またはトリ−ペプチドなどのペプチドとの双方を包含する。化学的に、タンパク質は、いわゆるペプチド結合によって連結する、異なるおよび/または同一アミノ酸を含んでなるポリマーである。
【0050】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、カゼイノマクロペプチド(CMP)をさらに含んでなる。
【0051】
本発明の文脈で、「CMP」または「カゼイノマクロペプチド」という用語は、レンネット酵素への曝露時に、κ−カゼインから放出される小型タンパク質に関する。CMPは、タンパク質のグリコシル化変異体および非グリコシル化変異体の双方を包含する。タンパク質のグリコシル化変異体は、時にカゼイノグリコマクロペプチド(cGMP)と称される。
【0052】
本発明のその他の好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、甘性乳清由来供給物を含んでなり、またはさらにはそれから本質的になる。ミルク由来供給物は、例えば甘性乳清であってもよく、好ましくは、例えば甘性乳清の限外濾過によって得られる残余分の形態である、甘性乳清タンパク質濃縮物である。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、酸性乳清由来供給物を含んでなってもよく、またはさらにはそれから本質的になる。ミルク由来供給物は、例えば酸性乳清であってもよく、好ましくは、例えば酸性乳清の限外濾過によって得られる残余分の形態である、酸性乳清タンパク質濃縮物である。
【0054】
本発明の文脈で、「乳清タンパク質濃縮物」、「甘性乳清タンパク質濃縮物」、または「酸性乳清タンパク質濃縮物」という用語は、それぞれ元の乳清、甘性乳清、または酸性乳清に中存在する総タンパク質量の少なくとも80%(w/w)を含有して、水性組成物の乾燥重量に対して、少なくとも25%(w/w)の総タンパク質含量を有する水性組成物に関する。
【0055】
しかし本発明の別の実施形態では、ミルク由来供給物は、酸性乳清由来供給物でない。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、例えば甘性乳清由来供給物などのミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して少なくとも1%(w/w)の量のCMPを含んでなる。例えば甘性乳清由来供給物などのミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも5%(w/w)、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、好ましくは少なくとも10%(w/w)、なおもより好ましくは少なくとも15%(w/w)の量のCMPを含んでなってもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、例えば甘性乳清由来供給物などのミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも1〜40%(w/w)の範囲の量のCMPを含んでなる。例えば甘性乳清由来供給物などのミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、5〜35%(w/w)の範囲、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、好ましくは10〜30%(w/w)の範囲、なおもより好ましくは15〜25%(w/w)の範囲の量のCMPを含んでなってもよい。
【0058】
本発明者らは、驚くことに、本方法において、供給物が乳清またはその濃縮物をベースとする場合、沈殿が成形されることを観察した。沈殿は、アニオン交換処理中に問題を引き起こして、その堅牢性を低下させる。
【0059】
本発明者らは沈殿を調査して、それが遊離β−カゼインまたは遊離α−カゼインなどの溶解形態で存在していた、沈殿カゼイン種を含有するという徴候を見出した。
【0060】
本発明の文脈で、「遊離β−カゼイン」または「遊離α−カゼイン」という用語は、ミルク製品の天然カゼインミセルに結合していないβ−カゼイン分子またはα−カゼイン分子に関する。このような遊離β−カゼインまたは遊離α−カゼインとしては、β−カゼインまたはα−カゼインの溶解単一分子、またはα−カゼインおよび/またはβ−カゼインの小型凝集体が挙げられる。β−カゼインの単一分子は、例えばこれもまた遊離β−カゼインの一例である、小型β−カゼインミセルを形成することが知られている。
【0061】
したがって本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、遊離α−カゼインと遊離β−カゼインをさらに含んでなる。遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼインは、典型的に乳清由来供給物中に存在する。
【0062】
本発明者らは、アニオン交換に先だって、ミルク由来供給物から沈殿を除去することで、この沈殿問題を解決し得ることを見出した。したがって本発明のいくつかの好ましい実施形態では、方法のステップa)は、ミルク由来供給物を形成するために酸性化された液体から、沈殿を除去することを伴う。このような除去は、例えば酸性化された液体の遠心分離または濾過を伴ってもよい。
【0063】
別の沈殿問題解決策は、沈殿が限定的であり、または不在でさえある、例えばpH5.0〜6.5の範囲の供給物pHの使用である。
【0064】
したがってミルク由来供給物は、5.0〜6.5の範囲のpH、好ましくは5.0〜6.0の範囲のpHを有してもよい。
【0065】
このpH範囲でアニオン交換を実施する場合、20〜40℃などの15℃を超える供給/処理温度を使用することが、さらに提言される。この温度範囲内では、溶解β−カゼインは、ミルクの天然カゼインミセルと混同すべきでない小型β−カゼインミセルを形成し、これらのβ−カゼインミセルは、単一β−カゼイン分子程にはアニオン交換工程を妨げないようである。
【0066】
したがってステップb)におけるミルク由来供給物およびアニオン交換物質の温度は、15〜40℃の範囲、好ましくは20〜38℃の範囲であってもよい。
【0067】
ミルク由来供給物は、例えばミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも0.5%(w/w)の遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼイン総量を含んでなってもよい。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも2%(w/w)の遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼイン総量を含んでなってもよい。ミルク由来供給物は、例えばミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも10%(w/w)の遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼイン総量を含んでなってもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、0.5〜40%(w/w)の範囲の量の遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼイン総量を含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、2〜20%(w/w)の範囲の量の遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼイン総量を含んでなってもよい。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、5〜15%(w/w)の範囲の量の遊離α−カゼインおよび遊離β−カゼイン総量を含んでなってもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも1%(w/w)の量のα−ラクトアルブミンを含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも10%(w/w)、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、好ましくは少なくとも20%(w/w)、なおもより好ましくは少なくとも30%(w/w)の量のα−ラクトアルブミンを含んでなってもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、1〜50%(w/w)の範囲の量のα−ラクトアルブミンを含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、5〜40%(w/w)の範囲の量、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、好ましくは10〜35%(w/w)の範囲、なおもより好ましくは12〜30%(w/w)の範囲のα−ラクトアルブミンを含んでなってもよい。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも1%(w/w)の量のβ−ラクトグロブリンを含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、少なくとも15%(w/w)、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、好ましくは少なくとも30%(w/w)、なおもより好ましくは少なくとも40%(w/w)の量のβ−ラクトグロブリンを含んでなってもよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、1〜70%(w/w)の範囲の量のβ−ラクトグロブリンを含んでなる。例えばミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、10〜65%(w/w)の範囲の量、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、好ましくは20〜60%(w/w)の範囲、なおもより好ましくは35〜55%(w/w)の範囲のβ−ラクトグロブリンを含んでなってもよい。
【0073】
カゼインは、約4.6以下のpH値で沈殿することが知られている。したがって本発明のいくつかの実施形態では、約3.6〜4.6の範囲のpHを有するミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、最大で1%(w/w)などの比較的低濃度のカゼインを有することが好ましい。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、最大で0.1%のカゼイン(w/w)を含んでなる。ミルク由来供給物が、さらには、ミルク由来供給物のタンパク質総量に対して、最大で0.01%のカゼイン(w/w)を含んでなることが好ましいこともある。
【0075】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、6〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなる。例えば、ミルク由来供給物は、50〜150g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなってもよい。さらには、ミルク由来供給物が、75〜125g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなることが、好ましいこともある。
【0076】
代案としては、ミルク由来供給物は、50〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなってもよい。例えば、ミルク由来供給物は、50〜150g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなってもよい。さらには、ミルク由来供給物が、75〜150g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなることが、好ましいこともある。
【0077】
ミルク由来供給物が、75〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなることが、好ましいこともある。
【0078】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、少なくとも6g/Lミルク由来供給物のタンパク質総量を含んでなる。例えばミルク由来供給物は、少なくとも50g/Lミルク由来供給物のタンパク質総量を含んでなってもよい。さらには、ミルク由来供給物が、少なくとも75g/Lミルク由来供給物のタンパク質総量を含んでなることが、好ましいこともある。
【0079】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、25℃でpH3.8〜6.0の範囲のpHを有する。好ましくは、25℃におけるミルク由来供給物のpHは、pH4.0〜5.5の範囲である。なおもより好ましくは、25℃におけるミルク由来供給物のpHは、例えばpH4.3〜4.5などのpH4.2〜5.0の範囲である。
【0080】
ミルク由来供給物の所望の導電率は、例えば以下によって得られてもよい:
−水の部分的除去によってミルク由来供給物を濃縮し、および/または塩の添加によって、導電率増大をもたらすこと、または
−塩の除去によってミルク由来供給物を脱塩し、および/または水の添加によって、導電率低下をもたらすこと。
【0081】
水性液から水および/または塩を除去する技術は、当業者に良く知られている。
【0082】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、25℃で4.5〜9.0mS/cmの範囲の導電率を有する。例えばミルク由来供給物の導電率は、25℃で5.0〜8.0mS/cmの範囲であってもよい。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物の導電率が、25℃で5.5〜7.0mS/cmの範囲であることが、なおもより好ましいこともある。
【0083】
ミルク由来供給物は、例えば25℃で4〜7mS/cmの範囲の導電率を有してもよい。代案としては、ミルク由来供給物は、25℃で7〜10mS/cmの範囲の導電率を有してもよい。代案としては、ミルク由来供給物は、25℃で5〜8mS/cmの範囲の導電率を有してもよい。
【0084】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、25℃で4〜7mS/cmの範囲の導電率と、25℃でpH3.6〜5.0の範囲のpHを有する。
【0085】
本発明のその他の好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、25℃で7〜10mS/cmの範囲の導電率と、25℃でpH5.0〜6.5の範囲のpHを有する。
【0086】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ミルク由来供給物は、25℃で5〜8mS/cmの範囲の導電率と、25℃でpH4.0〜5.5の範囲のpHを有する。
【0087】
例えばミルク由来供給物は、25℃で5〜6mS/cmの範囲の導電率と、25℃でpH4.2〜5.0の範囲のpHを有してもよい。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態では、ミルク由来供給物は、3.6〜6.5の範囲pHを有し、
−pHが3.6〜5.0の範囲の場合、導電率は少なくとも4mS/cmで、最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmであり、
−pHが5〜6.5の範囲の場合、導電率は、少なくともcond.min=1.33mS/cmpH−2.67mS/cmで、最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmである。
【0089】
したがってこれらの実施形態の供給物のpHが例えばpH6.0の場合、導電率は、少なくともcond.min=1.33mS/cm6.0−2.67mS/cm=5.3mS/cmで、最大でcond.max=1.38mS/cm6.0+1.03mS/cm=9.3mS/cmである。
【0090】
例えばミルク由来供給物は、3.6〜5.0の範囲のpHと、少なくとも4mS/cmの導電率、および最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmを有してもよい。
【0091】
代案としては、ミルク由来供給物は、5.0〜6.5の範囲のpHと、少なくとも少なくともcond.min=1.33mS/cmpH−2.67mS/cm、および最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmの導電率を有してもよい。
【0092】
それが特に明記されない限り、導電率およびpH値は、25℃の温度を有する供給物中で測定される。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態では、アニオン交換媒体は、固相と、1つまたは複数のカチオン基とを含んでなる。
【0094】
好ましくは、カチオン基の少なくともいくつかは、固相表面に付着し、および/または固相表面を通じて接近可能な孔表面に付着する。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態では、アニオン交換媒体の固相は、複数の粒子、フィルター、およびメンブランからなる群から選択される、1つまたは複数の構成要素を含んでなる。
【0096】
固相は、例えば多糖類を含んでなってもよく、またはさらにはそれから本質的になる。架橋多糖類が、特に好ましい。有用な多糖類の例は、セルロース、アガロース、および/またはデキストランである。
【0097】
代案としては、固相は、非炭水化物ポリマーを含んでなってもよく、またはさらにはそれから本質的になる。有用な非炭水化物ポリマーの例は、メタクリレート、ポリスチレン、および/またはスチレン−ジビニルベンゼンである。
【0098】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、カチオン基はアミノ基を含んでなり、またはさらにはそれから本質的になる。三級アミノ基が特に好ましく、適切なpH条件下で四級アンモニウム基をもたらす。四級アンモニウム基は、アニオン交換媒体に強力なアニオン交換特性を提供する。
【0099】
代案としては、または加えて、カチオン基は、1つまたは複数の一級または二級アミノ基を含んでなってもよい。かなりの量の一級または二級アミノ基が、典型的に、弱いアニオン交換特性をアニオン交換媒体に提供する。
【0100】
サイクルあたりの最適タンパク質負荷は、アニオン交換クロマトグラフィーシステムのデザインと、アニオン交換媒体の特性に依存する。
【0101】
圧力、流速などをはじめとする、アニオン交換クロマトグラフィー中の処理条件は、実際の工程実施、使用装置、および使用アニオン交換媒体に依存する。
【0102】
ステップb)におけるミルク由来供給物の温度は、典型的に、微生物の増殖、およびタンパク質とアニオン交換媒体の熱損傷を回避するのに十分低いが、許容可能粘度を提供するのに十分高い。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップb)におけるミルク由来供給物の温度は、2〜40℃の範囲である。好ましくは、ステップb)におけるミルク由来供給物の温度は、4〜20℃の範囲、なおもより好ましくは6〜12℃の範囲である。
【0104】
アニオン交換クロマトグラフィーと、その工業的実施に関するさらなる詳細は、あらゆる目的のために、参照によって本明細書に援用するScopesに見ることができる。
【0105】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本発明の方法は、ミルク由来供給物に接触させた後、アニオン交換媒体を洗浄溶液で洗浄するステップc)を含んでなる。有用な洗浄溶液は、アニオン交換媒体から、緩く結合する分子を除去できる、典型的に中性または弱酸性pHの水性溶液である。洗浄液として、例えば脱ミネラル水、または例えば0.1MのNaClなどの中性pHの塩化ナトリウム水溶液を使用してもよい。
【0106】
本発明のその他の好ましい実施形態では、本発明の方法は、ステップc)を含有しない。
【0107】
本発明のステップd)は、アニオン交換媒体に結合するオステオポンチンの回収を伴う。回収は、典型的に、アニオン交換媒体を溶出剤に接触させて、得られた溶出液、すなわち溶出剤とアニオン交換媒体から放出された分子とを収集することで、実施される。
【0108】
常態では溶出剤は、結合オステオポンチンをアニオン交換媒体から放出させるのに十分なイオン強度および/またはpHを有する、水溶液である。有用な溶出剤の例は、中性pHの1.0MのNaCl、CaCl、KCl、MgCl、またはその組み合わせなどの塩水溶液である。
【0109】
回収組成物は、例えば組成物を脱塩および濃縮し、引き続いてそれを粉末に転換するための追加的な工程ステップを受けてもよい。
【0110】
したがって本発明のいくつかの好ましい実施形態では、回収組成物は、濃縮、透析濾過、溶媒蒸発、噴霧乾燥、およびタンパク質結合カチオン置換からなる群から選択される、1つまたは複数の工程ステップをさらに受ける。
【0111】
例えば、回収組成物は、濃縮ステップを受けてもよい。
【0112】
代案としては、または加えて、回収組成物は透析濾過ステップを受けてもよい。
【0113】
代案としては、または加えて、回収組成物は蒸発ステップを受けてもよい。
【0114】
代案としては、または加えて、回収組成物は噴霧乾燥ステップを受けてもよい。
【0115】
本発明の好ましい実施形態では、回収組成物は、以下のステップを受ける:
i)例えば限外濾過による濃縮、
ii)例えば水中での透析濾過、
iii)任意選択的に、例えば蒸発による、別の濃縮ステップ、
iv)ステップii)またはiii)の水性組成物を例えばCaClなどの水溶性カルシウム塩に接触させることによる、カチオン置換、
v)低温殺菌、および
vi)低温殺菌組成物を粉末に変えるための噴霧乾燥。
【0116】
本方法は、バッチプロセスまたは半バッチプロセスとして実施してもよい。半バッチプロセスは、例えば第1のおよび第2のアニオン交換カラムを稼働して、第2のアニオン交換カラム上でステップc)および/またはd)を実施しながら、第1のアニオン交換カラム上でステップb)を実施することで、またはその逆で、実施してもよい。
【0117】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ミルク由来供給物からオステオポンチンを単離する方法は、
a)オステオポンチンを含んでなり、25℃でpH3.6〜6.5の範囲のpHと、25℃で4〜10mS/cmの範囲の導電率とを有する、ミルク由来供給物であって、50〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなり、5.0未満の等電点(pI)を有する追加的なタンパク質をさらに含んでなる、ミルク由来供給物を提供するステップと、
b)ミルク由来供給物をアニオン交換媒体に接触させることを含む、前記ミルク由来供給物にアニオン交換クロマトグラフィーを実施するステップと、
c)任意選択的に、アニオン交換媒体を洗浄するステップと、
d)アニオン交換媒体に結合するタンパク質を回収し、それによって単離オステオポンチンを含んでなる組成物を得るステップと
を含んでなる。
【0118】
本発明の別の好ましい実施形態では、ミルク由来供給物からオステオポンチンを単離する方法は、
a)オステオポンチンを含んでなるミルク由来供給物を提供するステップであって、ミルク由来供給物を有する前記ミルク由来供給物は、3.6〜6.5の範囲のpHを有し、
−pHが3.6〜5.0の範囲の場合、導電率は少なくとも4mS/cmで、最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmであり、
−pHが5.0〜6.5の範囲の場合、導電率は少なくともcond.min=1.33mS/cmpH−2.67mS/cmで、最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmであり、
50〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなる、ステップと、
b)ミルク由来供給物をアニオン交換媒体に接触させることを含む、前記ミルク由来供給物にアニオン交換クロマトグラフィーを実施するステップと、
c)任意選択的に、アニオン交換媒体を洗浄するステップと、
d)アニオン交換媒体に結合するタンパク質を回収し、それによって単離オステオポンチンを含んでなる組成物を得るステップと
を含んでなる。
【0119】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、ミルク由来供給物からオステオポンチンを単離する方法は、
a)オステオポンチンを含んでなるミルク由来供給物を提供するステップであって、ミルク由来供給物を有する前記ミルク由来供給物は、3.6〜6.5の範囲のpHを有し、
−pHが3.6〜5.0の範囲の場合、導電率は少なくとも4mS/cmで、最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmであり、
−pHが5.0〜6.5の範囲の場合、導電率は少なくともcond.min=1.33mS/cmpH−2.67mS/cmで、最大でcond.max=1.38mS/cmpH+1.03mS/cmであり、
50〜250g/Lミルク由来供給物の範囲のタンパク質総量を含んでなり、5.0未満の等電点(pI)を有する追加的なタンパク質をさらに含んでなる、ステップと、
b)ミルク由来供給物をアニオン交換媒体に接触させることを含む、前記ミルク由来供給物にアニオン交換クロマトグラフィーを実施するステップと、
c)任意選択的に、アニオン交換媒体を洗浄するステップと、
d)アニオン交換媒体に結合するタンパク質を回収し、それによって単離オステオポンチンを含んでなる組成物を得るステップと
を含んでなる。
【0120】
さらに本発明の態様は、本明細書に記載される方法によって得られ得る、オステオポンチン含有組成物に関する。
【0121】
本発明について、特定の実施形態を参照して上で説明した。しかし上述した以外のその他の実施形態も本発明の範囲内で等しく可能である。特に明記されない限り、本発明の異なる特徴および様々な実施形態および態様のステップは、本明細書に記載されるもの以外の方法で組み合わせられてもよい。
【実施例】
【0122】
実施例1 電導度制御甘性乳清濃縮物からのオステオポンチン濃縮
プロトコル
以下の精製実験は、13.3mL(170mm×10mm)カラムに充填された、強力なアニオン交換樹脂Q−Sepharose Bigbeadsを装着した、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)装置上で実施された。流速は、全ての実験において、装入、洗浄、および溶出全体を通じて、3.33ml/分に維持した。原料は甘性乳清タンパク質単離物であり、各実験において70gの総タンパク質量をカラムに装入した。原料中のCMP含量を分析した。原料サンプルを最終タンパク質濃度10%w/vに希釈し、これ以降pH(4.7mS/cmでpH3.0〜5.7)および導電率(pH4.3で2.3〜10.3mS/cm)は、それぞれHClおよびNaClの添加によって調節した。床体積の3倍の100mMのNaCl、pH5.0溶液によって、非結合タンパク質をカラムから洗い流した。引き続いて、溶出液中にタンパク質が検出されなくなるまで、カラムに1MのNaCl、pH5.0溶液を通過させて、結合タンパク質を溶出した。
【0123】
以下の技術を使用して、各溶出液サンプルについて、オステオポンチン(OPN)、CMP、および総タンパク質の含有量を分析した。
【0124】
総タンパク質量の測定
溶出液の総タンパク質含量は、Cohenで記載されるように、標準ケルダール消化によって測定した。
【0125】
HPLC法によるOPN定量化
分析原理:
0.22μmフィルターを通してサンプルを濾過し、PharmaciaからのカラムMonoQ HR 5/5(1ml)によるHPLCを実施して、280nmで検出した。外部標準法(既知のOPN含量の標準物質のピーク面積との比較)によって、サンプル濃度を計算した。方法の特異性が低いため、例えばSDS−PAGEによる測定(Laemmli,1970)で、サンプルが比較的純粋なOPNを含んでなることが、この分析手順の必要条件である。
【0126】
試薬:OPN標準物質;ミリQ水、HPLC等級;NaCl、Merck;トリスHCl、Sigma
緩衝液A:10mMのNaCl、20mMのトリスHCL、pH8.0
緩衝液B:0.8MのNaCl、20mMのトリスHCl、pH8.0

標準検量線は、緩衝液A中のOPN標準の濃度範囲が1〜10mg/mlである、5つの標準物質から作成した。全ての標準物質は、カラムへの装入前に、0.22μmフィルターによって濾過した。
【0127】
試料採取および前処理:
分析のためのサンプルが標準検量線の範囲外にある場合は、それらをHPLC等級のミリQ水で希釈した。溶出剤からの多量のNaClが存在する場合にも、OPNのアニオン交換樹脂への結合を可能にするために、希釈が必要なことがあった。25μLの1〜10mg/mLのOPNに相当する量を分析のために注入した。サンプルは、HPLCへの注入前に、0.22μmフィルターを通して濾過した。
【0128】
HPLC条件:流速1ml/分、注入量25μL、勾配:0%Bで0〜3分間、0〜60%Bで3〜17分間、60〜100%Bで17〜30分間、100%Bで30〜33分間、100〜0%Bで33〜34分間、0%Bで34〜40分間。
【0129】
結果の計算および表示:
標準曲線を参照して、用いられた希釈を観察することで、各サンプル中のOPNの濃度を計算した。
【0130】
現文脈でケルダール消化によって判定される大部分または全てのタンパク質はOPNであったため、OPN特異的Jones係数7.17を使用して、OPNと総タンパク質量間の比率によって、純度を計算した。
【0131】
HPLCによる主要乳清タンパク質の定量化
ゲル透過クロマトグラフィーによる、主要乳清タンパク質、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、およびCMP(カゼイノグリコマクロペプチド)の分離および定量化。
【0132】
付属プレカラムPWxl(6mm4cm)と直列に連結されたTSKgel3000PWxl(7.8mmx30cm)の2本のカラム(Tosohass,日本)を使用して、ゲル透過クロマトグラフィーを実施した。
【0133】
システムの較正のための標準溶液は、以下からなった:500.0mlの0.02Mのリン酸緩衝液7.5に溶解された、225mgのCMP、225mgのα−ラクトアルブミン、および50mgのβ−ラクトグロブリン。
【0134】
サンプルの前処理:粉末サンプルを1mg/mlでリン酸緩衝液に溶解し、可溶化のために一晩置いた。代案としては、液体サンプルをリン酸緩衝液で希釈して、およそ0.1%のタンパク質含量を得た。タンパク質含量が0.1%未満であった場合は、サンプルを希釈せずに測定した。カラムへの注入前に、0.22μmのフィルターを通過させて、全てのサンプルを濾過した。
【0135】
結果の計算および表現:
以下に従って、サンプル中の個々のタンパク質の百分率を計算した:
A×0.1×F、式中、

A=サンプル中で測定された面積
0.1=0.1%溶液のための換算係数
F=希釈係数(100,000/mgサンプル重量)
B=0.1%標準溶液中の個々のタンパク質の計算された面積
【0136】
結果
CMP含量
甘性乳清原料中のCMP含量は20.1%であったが、驚くことに、実施例1の濃縮OPN組成物中では、CMPは不検出であった。
【0137】
オステオポンチンの純度と収率に対する供給物pHの影響:
図1に示される、装入供給物のpH価を変動させる第1の一連の実験は、pH3からおよそpH4.3へのpH増大と共に、OPN収率(供給物中の70gの総タンパク質量からのOPNのmg)が増大することを示す。pH4.3を超えるpHの増大時に、高収率は維持される。得られたOPN調製品中のOPNの純度は、低pH価では非常に高いが、pHがおよそpH4.5を超えて増大すると純度は緩慢に低下するが、およそpH6.5まではなおも許容可能である。しかし高純度OPNの最良の収率は、pH3.8〜5.5のpH範囲、特にpH4.3〜4.5の範囲で得られる。
【0138】
オステオポンチンの純度と収率に対する供給物の導電率の影響:
導電率を変動させる一連の実験からの結果は、図2に示される。低導電率では収率が高い一方、純度は低い。導電率を増大させると純度は増大し、およそ5.5mS/cmで100%に達する。導電率をさらに増大させると純度は高いままである一方、導電率がおよそ10mS/cmを超えると、OPNの収率は低下し始める。しかし高純度OPNの最良の収率は、4.5〜9.0mS/cmの範囲、特に5〜8mS/cmの範囲の導電率で得られるようである。
【0139】
考察/結論
pHの影響:
図1から、およそpH3.6未満のpH価では、OPNはその電荷が低下するようであり、したがって樹脂のカチオン基への結合が低下する。およそpH4.5を超えるpH価では、供給物のその他のタンパク質が負に帯電して樹脂に結合し始めるようになるので、OPNの純度は低下し始める。したがって本発明者らは、供給物が大量のCMPを含有するのにもかかわらず、高収率で高純度のOPNが単離される最適pH価の範囲をpH3.6〜6.5の範囲と特定した。得られるOPN調製品中で、CMPは不検出である。
【0140】
導電率の影響:
図2から、およそ4mS/cm未満の導電率では、その他のタンパク質が樹脂に結合し得るので、OPN純度は低下するようである。導電率がおよそ6mS/cmを超えると、OPNの樹脂への結合がさらに弱くなり、収率は緩慢に低下するが、およそ10mS/cmの導電率までは許容可能である。したがって本発明者らは、OPN生産のために、およそ4〜10mS/cmの狭い範囲が最適であると特定した。この狭い範囲内では、およそ20%のCMPを含有する原料からでさえも、高収率かつ高純度でOPNを単離し得る。
【0141】
いくつかの追加的な実験を実施して、甘性乳清ベース供給物中の特許請求されるpH/導電率範囲を探索したが、追加的な実験は上述の結論を裏付ける。
【0142】
実施例2 電導度制御酸性乳清濃縮物からのオステオポンチンの濃縮
以下の精製実験は、実施例1と同様のFPLC装置上で実施した。しかし原料は、10%(w/w)の総タンパク質含量を有する酸性乳清濃縮物であり、およそ70gの総タンパク質量がカラムに装入された。
【0143】
濃縮酸性乳清を異なる程度に希釈して、2.5〜10mS/cmの範囲の導電率を生じさせた。実施例1に記載される方法によって、供給物および溶出液中のOPNおよび総タンパク質量を測定した。HClの添加によってpHを4.3に調節し、原料をアニオン交換カラムに装入した。床体積の3倍の0.1MのNaClによって非結合タンパク質をカラムから洗い流し、引き続いて、溶出液中にタンパク質が検出されなくなるまで、カラムに1MのNaCl溶液を通過させて、結合タンパク質を溶出した。
【0144】
濃縮酸性乳清からのOPNの濃縮における、OPNの純度と収率に対する導電率の影響は図3に示される。
【0145】
図3のデータは、記載される手順による、酸性乳清からのOPNの濃縮を示す。甘性乳清が原料として使用された実施例1と同様に、供給物の低導電率が、生成物の純度を犠牲にして収率を増大させることが、再度観察された。しかし酸性乳清由来供給物は、大量のCMPを含有しないので、影響は、供給物が甘性乳清に由来する場合程には、OPNの濃縮に有害でない。酸性乳清由来供給物は、微量成分を含有し、その結合は、CMPの結合回避で用いられるのと同じパラメータ設定によって、最小化し得る。したがって実施例1で特定されたOPN単離の狭い最適範囲は、酸性乳清からのOPN単離にも同様に適用されることが観察され得る。
【0146】
本発明者らはいくつかの追加的な実験を実施して、酸性乳清ベースの供給物中の特許請求されるpH/導電率範囲を探索したが、追加的な実験は上述の知見を裏付ける。
【0147】
実施例3 電導度制御乳清濃縮物からのオステオポンチンの濃縮
先の実施例に従って、開示される方法によるOPN生産のための原料として、乳清を使用し得る。乳清は、カゼインミセルを除去するように、24℃の脱脂乳の精密濾過(フィルター孔径およそ0.1ミクロン)によって製造される。その後、HClによって乳清サンプルをpH4.3またはpH4.7に調節し、ダイアフィルター処理して、4〜10mS/cmの範囲の導電率と、およそ5%または10%(w/w)の総タンパク質含量を得た。引き続いて、実施例1に記載されるように、およそ5℃でのアニオン交換によって、変性乳清サンプルからOPNを濃縮した。
【0148】
結果と観察
実施された試行は、乳清に由来する供給物もまた、本方法で使用してもよいことを実証した。
【0149】
驚くことに、処理中に未確認の沈殿が観察され、数サイクルのアニオン交換後に、アニオン交換物質の目詰まりまたは汚染が生じた。沈殿の問題は、アニオン交換に先だって、濾紙を通して酸性化乳清を濾過することで解決された。本発明者らは、沈殿が、天然カゼインミセルが除去された際に乳清中に留まる、遊離α−および遊離β−カゼインなどの溶解カゼイン種と関連している徴候を見た。
【0150】
考察/結論
乳清が、カゼインを除去するように脱脂乳を精密濾過して製造されるのに対し、甘性および酸性乳清は、それぞれレンネットまたは酸の作用によるカゼインの沈殿によって、カゼインが枯渇される。その結果、全ての3つのカテゴリーのミルク由来供給物は、カゼインの沈殿および軟凝集のためにアニオン交換クロマトグラフィー手順を妨げ得る、天然カゼインミセルを本質的に含まない。
【0151】
本発明者らは、溶解カゼインがアニオン交換中に問題を引き起こす徴候を見た。この問題は、例えばマイクロフィルターを使用して、アニオン交換に先だってミルク由来供給物を濾過することで、解決し得る。
【0152】
代案としては、アニオン交換ステップは、例えばpH5.0〜6.5の範囲など、沈殿が限定的であり、または不在でさえあるpHで実施してもよい。このpH範囲でアニオン交換を実施する場合、20〜40℃などの15℃を超える供給/処理温度を使用することが、さらに提言される。この温度範囲内では、溶解β−カゼインは、ミルクの天然カゼインミセルと混同すべきでない小型β−カゼインミセルを形成し、これらのβ−カゼインミセルは、単一β−カゼイン分子程にはアニオン交換工程を妨げないようである。
【0153】
実施例4 電導度制御なしの甘性乳清濃縮物からのオステオポンチンの濃縮
以下の精製実験は、実施例1と同様のFPLC装置上で実施した。原料は甘性乳清単離物であり、およそ1gの総タンパク質量をカラムに装入した。限外濾過によって、甘性乳清をカラム装入前に濃縮し、等容積の水の添加後にダイアフィルター処理して、最後に等容積の水で再度希釈した。得られた導電率は、2.1mS/cmであった。実施例1に記載される方法によって、供給物および溶出液中のCMPおよび総タンパク質量を測定した。OPNの量は、供給物および溶出液の双方の中の干渉タンパク質のために、測定され得なかった。表1のOPNデータは、実施例1からの実験中の既知の収率から推定される。
【0154】
HClの添加によってpHを4.3に調節し、原料をアニオン交換カラムに装入した。床体積の3倍の水によって非結合タンパク質をカラムから洗い流し、以下、溶出液中にタンパク質が検出されなくなるまで、カラムに1MのNaCl溶液を通過させて、結合タンパク質を溶出した。

【0155】
考察/結論:
表1のデータは、記載される処置による酸性乳清タンパク質の濃縮を示す。しかしOPNは、供給物中の酸性乳清タンパク質の微量画分を構成するために、わずかな程度にのみ濃縮される。例えばCMPもまた樹脂に結合し、供給物中に高濃度で存在するので、このタンパク質は、樹脂の結合能力を大量に消費する。したがってこの手順は、OPN生産のために十分でない。
【0156】
実施例5 比較および結論(実施例1と実施例4の比較)
実施例1および4の処理のいくつかの特性が、下の表2で比較される。

【0157】
結論
表2で要約されるように、実施例1の方法は、OPNの濃縮について、実施例4の方法よりもはるかにより特異的である。したがって実施例1の処理では、サイクルあたりカラムにより多くのタンパク質を装入し得て、サイクルあたりのOPNの収率がはるかにより高い。この方法が事実上純粋なOPNをもたらすのに対し、実施例4の生成物ではCMPが優勢である。
【0158】
参考文献
Cohen:Julius B.Cohen,Practical Organic Chemistry,1910年
Evans et al.:Evans et al.,“Comparison of composition,sensory,and volatile components of thirty−four percent whey protein and milk serum protein concentrates”,J.Dairy Sci.92:4773−4791,2009年
Scopes:Protein Purification:Principles and Practice;Robert K.Scopes;第3版,Springer Verlag New York,Inc.,ISBN 0−387−94072−3
国際公開第02/28413 A1号パンフレット
国際公開第01/149741 A2号パンフレット
国際公開第99/33415 A1号パンフレット
図1
図2
図3