【実施例】
【0051】
以下に製造例、実施例および製剤例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(製造例1)
5−アセタミド−4−グアニジノ−9−O−オクタノイル−2、3、4、5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラソン酸
【化4】
(1)US6340702(特許第3209946号公報)の実施例35(i)に記載された5−アセタミド−4−(N,N’−ビス−t−ブチロキシカルボニル)グアニジノ−9−O−オクタノイル−2,3,4,5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラノソン酸ジフェニルメチル(3.46g,4.1mmol)を塩化メチレン(27ml)およびトリフルオロ酢酸(14ml)に溶解し、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧下にて濃縮乾固した後、トルエン(5ml)で3回共沸乾固した。得られた油状物を酢酸エチル(10ml)に溶解した。この溶液を飽和重曹水(50ml)に注加し、20%炭酸ナトリウム水溶液を加えpH8.5に調整した。室温で3時間撹拌した後、塩酸(3ml)でpH5.0に調整し、室温で1時間撹拌した。さらに氷冷下で1時間撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過し、外温50℃にて10時間真空乾燥した。空気中で1日間放置し、標記化合物を水和物結晶として得た。(0.97g,収率51%)。
【0053】
赤外線吸収スペクトル(KBr)νmax cm
-1: 3412, 2929, 2856, 1676, 1401, 1320, 1285, 1205, 1137, 722.
1H核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CD
3OD)δppm: 5.88(1H, d, J=2.5 Hz), 4.45 (3H, m), 4.27 (1H, dd, J=10.0 Hz, 10.0 Hz), 4.15 (1H, m), 3.47 (2H, m), 3.42 (3H, s), 2.37 (2H, t, J=7.4 Hz), 2.10 (3H, s), 1.31 (2H, m), 1.20-1.40 (8H, m), 0.85-0.95 (3H, m).
13C核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CD
3OD)δppm: 176.5, 173.7, 164.7, 158.9, 146.7, 108.7, 80.1, 78.0, 69.3, 66.8, 61.4, 52.4, 35.1, 32.8, 30.2, 30.1, 26.0, 23.7, 22.8, 14.4.
(2)標記化合物は以下の方法によっても得られた。
【0054】
US6340702(特許第3209946号公報)の実施例35(ii)に記載された5−アセタミド−4−グアニジノ−9−O−オクタノイル−2、3、4、5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラソン酸トリフルオロ酢酸塩(3.0g,5.1mmol)を逆相カラムクロマトグラフィー[コスモシル75C18PREP(ナカライテスク)、100g]に付し、メタノール/水(0/1−1/1−2/1)を用いて溶出させた。目的物を含む分画を減圧下にて濃縮し、析出した結晶を吸引濾過し、減圧下にて乾燥した。空気中で1日間放置し、標記化合物を水和物結晶として得た(1.2g,収率49%)。得られた化合物の物性データは、上記(1)で得られた化合物と一致した。
【0055】
(製造例2)
5−アセタミド−4−グアニジノ−2、3、4、5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラソン酸
【化5】
US6340702(特許第3209946号公報)の実施例28(viii)に記載された5−アセタミド−4−グアニジノ−2、3、4、5−テトラデオキシ−7−O−メチル−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノピラソン酸トリフルオロ酢酸塩(3.0g,5.1mmol)をイオン交換樹脂カラム[Dowex−50W;(i)水,(ii)5%アンモニア水溶液]で精製した後、次いで逆相カラムクロマトグラフィー[コスモシル75C18PREP(ナカライテスク);水]で精製した。目的物を含む画分を減圧下にて濃縮し、得られた固体をメタノールで洗浄し、濾取し、乾燥して、標記化合物(1.43g)を無色固体として得た。
【0056】
1H核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CD
3OD)δppm: 5.64(1H, d, J=2.0 Hz), 4.43 (2H, m), 4.22 (1H, dd, J=10.0 Hz, 10.0 Hz), 4.00 (1H, m), 3.85 (1H, dd, J=10.0 Hz, 2.4 Hz), 3.68 (1H, dd, J=10.0 Hz, 5.5 Hz), 3.58 (1H, m), 3.43 (3H, s).
なお、製造例2の化合物は、製造例1の化合物が体内で代謝されて生成される化合物である。すなわち、製造例1の化合物は、製造例2の化合物のプロドラッグであり、製造例2の化合物は活性本体である。
(実施例1)ノイラミニダーゼ阻害活性試験
以下の試験は、Nature, 2005年,第437巻, p.1108に記載された方法に準じた方法に従って行われた。
【0057】
ノイラミニダーゼ活性が800乃至1200蛍光単位になるように希釈したH5N1型ウイルス液、および、0.01乃至100000nMに調整した試験化合物を混合し、37℃で30分間反応した後、基質である0.1mMの2'-(4-methylumbelliferyl)-α-D-N-acetylneuraminic acidを加え、さらに37℃で1時間反応させた。その後、360nmの励起波長および465nmの蛍光波長を測定した。得られた蛍光強度から試験化合物が無添加である場合を100としたときの、各濃度での試験化合物の阻害率(%)を算出し、50%の酵素阻害活性を与える試験化合物の濃度(IC
50)を算出した。結果を表1に示す。
【0058】
本発明の治療剤または予防剤の有効成分は、オセルタミビル感受性および耐性のH5N1型インフルエンザウイルス株に対して強力なノイラミニダーゼ阻害活性を有し、オセルタミビル耐性のH5N1型インフルエンザウイルス株に対しても優れた阻害活性を示した。
【0059】
(表1)ノイラミニダーゼ阻害活性(IC
50,nM)
オセルタミビル感受性株: A/Hanoi/30408/2005 (clone 7)
オセルタミビル耐性株: A/Hanoi/30408/2005 (clone 9)
(実施例2)ウイルス増殖阻害活性試験
H5N1型インフルエンザウイルスを一つのwellあたり50乃至100個のプラークを形成するようにMDCK細胞に接種し、37℃で1時間吸着させた後、0.1乃至1000nMの濃度の試験化合物を含む寒天培地を重層し、MDCK細胞を2日間培養した。その後、19%メタノールに溶解した0.1%クリスタルバイオレットにて固定染色し、プラーク数およびプラークの直径を測定した。面積を基として阻害率を算出するため、全プラークの直径の二乗の和を計算し、試験化合物が無添加である場合を100%としたときの各濃度での試験化合物の阻害率(%)を算出し、50%のウイルス増殖阻害活性を与える試験化合物の濃度(IC
50)を算出した。結果を表2に示す。
【0060】
本発明の治療剤または予防剤の有効成分は、オセルタミビル感受性および耐性のH5N1型インフルエンザウイルス株に対して強力なウイルス増殖阻害活性を有し、ザナミビルに比較して極めて優れたウイルス増殖阻害活性を示した。
【0061】
(表2)ウイルス増殖阻害活性(IC
50,nM)
オセルタミビル感受性株: A/Hanoi/30408/2005 (clone 7)
オセルタミビル耐性株: A/Hanoi/30408/2005 (clone 9)
(実施例3)マウス感染治療試験1
Balb/cマウスに生理食塩水のみまたは生理食塩水に溶解した種々の濃度の試験化合物を経鼻的に投与し、投与7日後に、H5N1型インフルエンザウイルスを経鼻的に接種して、感染させる。感染の1日、2日および3日後にマウスの肺を採取し、肺中に含まれるH5N1型インフルエンザウイルスを定量することにより、H5N1型インフルエンザウイルスの増殖抑制効果を調べる。
【0062】
本発明の治療剤または予防剤の有効成分を投与されたマウスでは、生理食塩水のみを投与されたマウスに比較して、肺中のウイルス量が有意に減少する。
【0063】
(実施例4)マウス感染治療試験2
実施例3と同様にして試験化合物を投与し、H5N1型インフルエンザウイルスを接種したマウスの生存を感染の20日後まで観察する。
【0064】
生理食塩水のみを投与されたマウスは感染20日後までにほぼ全例が死亡するが、本発明の治療剤または予防剤の有効成分を投与されたマウスは感染20日後においても生存例が認められる。
【0065】
具体的には、H5N1トリインフルエンザウイルス感染患者より分離したA/Hanoi/UT30408(clone7)/2005 (H5N1)を80pfu(プラーク形成ユニット)含む溶液50μlをマウス(BALB/C、メス、6週令)に経鼻的に滴下感染した。製造例1の化合物を生理食塩水に、あるいは3%タミフルドライシロップ(登録商標)(リン酸オセルタミビル)を蒸留水に溶解した。製造例1の化合物を70あるいは700μg/kg/50μlの投与量になるよう、リン酸オセルタミビルを0.5、5あるいは50mg/kg/200μlになるように調製し、製造例1の化合物は感染の2時間後に1回経鼻投与し、リン酸オセルタミビルは感染の2時間後に1回、以降1日2回5日間、計10回、経口投与した。結果は、感染後6日、8日、10日、15日、20日の生存マウス数で示した。なお、試験は、各群10匹で行った。
【0066】
(表3)
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。