【文献】
Proteomics Clin. Appl.,2012年11月 8日,vol.6,pp.574-580
【文献】
Biochemical and Biophysical Research Communications,2009年,vol.386,pp.223-226
【文献】
Journal of Microbiological Methods,2012年 1月,vol.89,pp.79-82
【文献】
Rapid detection of food pathogens using RNA aptamers-immobilized slide,Journal of Nanoscience and Nanotechnology,2012年 7月,vol.12 no.7,要約
【文献】
Screening of High-affinity DNA Aptamers to Salmonella Antigen by SELEX Technique,FOOD SCIENCE,2011年,vol.32 no.13,要約
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の核酸分子は、前述のように、下記(a)〜(d)からなる群から選択された少なくとも一つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とするサルモネラに結合する核酸分子である。
(a)配列番号1〜17のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、サルモネラに結合するポリヌクレオチド
(c)前記(a)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、サルモネラに結合するポリヌクレオチド
(d)前記(a)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、サルモネラに結合するポリヌクレオチド
【0017】
本発明において、「サルモネラに結合する」とは、例えば、前記サルモネラに対する結合能を有している、または、前記サルモネラに対する結合活性を有しているともいう。本発明の核酸分子と前記サルモネラとの結合は、例えば、表面プラズモン共鳴分子相互作用(SPR;Surface Plasmon resonance)解析等により決定できる。前記解析は、例えば、ProteON(商品名 BioRad社)が使用できる。
【0018】
サルモネラの種類は、例えば、O4群、O7群および/またはO9群に属するものがあげられる。O4群のサルモネラは、例えば、
Salmonella typhimurium、
Salmonella paratyphi B、
Salmonella fyrisがあげられ、O7群のサルモネラは、例えば、
Salmonella infantis、
Salmonella singapore、
Salmonella brenderupがあげられ、O9群のサルモネラは、例えば、
Salmonella enteritidis、
Salmonella typhi、
Salmonella dublinがあげられる。本発明の核酸分子は、例えば、サルモネラの生菌および/または死菌に結合する。
【0019】
本発明の核酸分子は、例えば、サルモネラ以外の細菌と比較して、サルモネラに対して特異的に結合する。前記サルモネラ以外の細菌は、例えば、リステリア属、エッシェリシア属である。本発明の核酸分子は、例えば、サルモネラ以外の細菌と比較して、サルモネラに対して優れた結合力を示す。サルモネラに対する前記結合力を示す本発明の核酸分子の解離定数は、例えば、1μM以下であり、好ましくは、500nM以下である。
【0020】
本発明の核酸分子において、前記(a)〜(d)のポリヌクレオチドの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。前記ポリヌクレオチドは、後述するように、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基を含むDNAであり、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。本発明の核酸分子は、例えば、以下、DNAアプタマーともいう。
【0021】
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、後述するように、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを2つ以上含んでもよい。前記2つ以上のポリヌクレオチドは、同じ配列でもよいし、異なる配列でもよい。また、後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、さらに、リンカーおよび/または付加配列等を有してもよい。
【0022】
前記(a)のポリヌクレオチドは、前記配列番号1〜17のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0023】
SAL−204(配列番号1)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGCGGGGGTGGATAGTACAGGGTGGGTAGGGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−236(配列番号2)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGTTGGGGGTAGGCGCTGGGGTGGGTGGGAGCGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−230(配列番号3)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGCGGAGGGTGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−203(配列番号4)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGGGCGGAGTTGTGGGGGGTCGGGGGGTGGCGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−219(配列番号5)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGGGATCGGTGCTGCGGGGGTGGGTGGAGCGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−256(配列番号6)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGTCGGGGGTAGTGCCGGGGGTTGGGTGGGCAGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−242(配列番号7)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGGGTGCTATGTGGTTGGGGGGGGGAGGGAGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−278(配列番号8)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGTGGTAGGGAGATGTGGGGGTGGGTAGGAGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−262(配列番号9)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGCCGCGTGAAGAGGTGGGGGGGGTGGGCGCGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−396(配列番号10)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTTGCGGGTGTTGTGGGGGTGGGTTGGTGGGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−445(配列番号11)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTCCGGGGTGGGGGGGGGAGGTGGTGGTGTGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−437(配列番号12)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGGCGGCTACGGGGTGGGTGGGAGTAACTGGGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−409(配列番号13)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGGGCCTGGTAGGTTGGTGGGGGTGGGGAGGGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−455(配列番号14)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGCGTGCGGTGGAGAGGTGGGGGGGTGGGCCGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−107(配列番号15)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGGGTGGTGGGTGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−431(配列番号16)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTGGAGCGGGGTGGGTGTGGTGGGTGAGGGACAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−123(配列番号17)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTTGGGTGTGGTGGGTGGGGGAGGTGGTATGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
【0024】
前記(b)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(b)のポリヌクレオチドが、サルモネラに結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(a)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜60個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1または2個である。本発明において、塩基数および配列数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1〜5塩基」との記載は、「1、2、3、4、5塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0025】
前記(c)において、「同一性」は、例えば、前記(c)のポリヌクレオチドが、サルモネラに結合する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、80%以上、85%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0026】
前記(d)において、「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」は、例えば、前記(a)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2
nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0027】
前記(d)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2
nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0028】
前記(b)〜(d)のポリヌクレオチドは、特に制限されない。前記(a)〜(d)のポリヌクレオチドは、例えば、大腸菌
Eschericia coliに実質的に結合しない。「実質的に結合しない」とは、例えば、前記核酸分子と大腸菌との結合を検出した際に、検出限界以下であることも含む。
【0029】
前記(b)〜(d)のポリヌクレオチドは、特に制限されず、具体例としては、以下のような配列が例示される。下記配列は、前述した、SAL‐204(配列番号1)、SAL−230(配列番号3)、SAL−242(配列番号7)、SAL−278(配列番号8)、SAL−262(配列番号9)、SAL−396(配列番号10)、SAL−445(配列番号11)、SAL−437(配列番号12)、SAL−455(配列番号14)、SAL−107(配列番号15)、SAL−431(配列番号16)を小型化したポリヌクレオチドである。
【0030】
SAL−204_s46 (配列番号21)
GGGGGTGGATAGTACAGGGTGGGTAGGGGGCAAAGGTTTCGGACGG
SAL−204_rand(配列番号22)
GCGGGGGTGGATAGTACAGGGTGGGTAGGGGG
SAL−230_s48 (配列番号23)
GGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGCGGAGGGTGGGCAAAGGTTTCGGACGG
SAL−230_rand(配列番号24)
GGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGCGGAGGGTGGG
SAL−242_s46 (配列番号25)
TATGTGGTTGGGGGGGGGAGGGAGGGCAAAGGTTTCGGACGGACAT
SAL−242_rand(配列番号26)
GGGTGCTATGTGGTTGGGGGGGGGAGGGAGGG
SAL−278_s49 (配列番号27)
TGAATTGTGGTAGGGAGATGTGGGGGTGGGTAGGAGGGCAAAGGTTTCG
SAL−278_rand(配列番号28)
GTGGTAGGGAGATGTGGGGGTGGGTAGGAGGG
SAL−262_s36 (配列番号29)
GGTGGGGGGGGTGGGCGCGGCAAAGGTTTCGGACGG
SAL−262_rand(配列番号30)
GCCGCGTGAAGAGGTGGGGGGGGTGGGCGCGG
SAL−396_s55 (配列番号31)
CCCTAAAGTTGCGGGTGTTGTGGGGGTGGGTTGGTGGGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−396_rand(配列番号32)
TTGCGGGTGTTGTGGGGGTGGGTTGGTGGG
SAL−445_s44 (配列番号33)
GGGGTGGGGGGGGGAGGTGGTGGTGTGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−445_rand(配列番号34)
TCCGGGGTGGGGGGGGGAGGTGGTGGTGTG
SAL−437_s41 (配列番号35)
GGCGGCTACGGGGTGGGTGGGAGTAACTGGGCAAAGCCGTC
SAL−437_rand(配列番号36)
GCGGCTACGGGGTGGGTGGGAGTAACTGGG
SAL−455_s42 (配列番号37)
GGTGGAGAGGTGGGGGGGTGGGCCGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−455_rand(配列番号38)
CGTGCGGTGGAGAGGTGGGGGGGTGGGCCG
SAL−107_s43 (配列番号39)
GGTTGGTGGGGGGTGGGTGGTGGGTGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−107_rand(配列番号40)
TTGTGGTTGGTGGGGGGTGGGTGGTGGGTG
SAL−431_s56 (配列番号41)
CTTGTCCCTAAAGTGGAGCGGGGTGGGTGTGGTGGGTGAGGGACAAAGCCGTCGAG
SAL−431_rand(配列番号20)
TGGAGCGGGGTGGGTGTGGTGGGTGAGGG
【0031】
本発明の核酸分子において、例えば、前記(a)は、例えば、(a’)配列番号20〜41のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドであってもよく、この場合、前記(b)〜(d)において、前記(a)のいずれかの塩基配列は、前記(a’)のいずれかの塩基配列に読み替えることができる。
【0032】
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドの配列を1つ含んでもよいし、前記ポリヌクレオチドの配列を複数含んでもよい。後者の場合、複数のポリヌクレオチドの配列が連結して、一本鎖のポリヌクレオチドを形成していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記ポリヌクレオチドの配列は、それぞれの末端において、直接的または間接的に連結していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、同じでもよいし、異なってもよい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、同じであることが好ましい。前記ポリヌクレオチドの配列を複数含む場合、前記配列の数は、特に制限されず、例えば、2以上であり、好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、より好ましくは、2または3である。
【0033】
前記リンカーは、特に制限されない。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、1〜200塩基長であり、好ましくは1〜20塩基長であり、より好ましくは3〜12塩基長であり、さらに好ましくは5〜9塩基長である。前記リンカーの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記リンカーの具体例として、例えば、例えば、ポリデオキシチミン(ポリdT)、ポリデオキシアデニン(ポリdA)、AとTの繰り返し配列であるポリdAdT等があげられ、好ましくはポリdT、ポリdAdTである。
【0034】
本発明の核酸分子において、前記ポリヌクレオチドは、一本鎖ポリヌクレオチドであることが好ましい。前記一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、自己アニーリングによりステム構造およびループ構造を形成可能であることが好ましい。前記ポリヌクレオチドは、例えば、ステムループ構造、インターナルループ構造および/またはバルジ構造等を形成可能であることが好ましい。
【0035】
本発明の核酸分子は、例えば、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、例えば、一方の一本鎖ポリヌクレオチドは、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含み、他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、制限されない。前記他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドに相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドがあげられる。本発明の核酸分子が二本鎖の場合、例えば、使用に先立って、変性等により、一本鎖ポリヌクレオチドに解離させることが好ましい。また、解離した前記(a)〜(d)のいずれかの一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前述のように、ステム構造およびループ構造を形成していることが好ましい。
【0036】
本発明において、「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実際にステム構造およびループ構造を形成すること、ならびに、ステム構造およびループ構造が形成されていなくても、条件によってステム構造およびループ構造を形成可能なことも含む。「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実験的に確認した場合、および、コンピュータ等のシミュレーションで予測した場合の双方を含む。
【0037】
本発明の核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基である。前記ヌクレオチド残基は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の核酸分子は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基のみから構成されるDNA、1もしくは数個のリボヌクレオチド残基を含むDNA等があげられる。後者の場合、「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜91個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜7個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。
【0038】
本発明の核酸分子は、例えば、1もしくは数個の修飾化ヌクレオチド残基を含んでもよい。前記「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜91個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜7個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。
【0039】
前記修飾化ヌクレオチド残基は、例えば、修飾化デオキシリボヌクレオチド残基および修飾化リボヌクレオチド残基があげられる。前記修飾化ヌクレオチド残基は、例えば、前記ヌクレオチド残基における糖残基が修飾されたものがあげられる。前記糖残基は、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基があげられる。前記ヌクレオチド残基における修飾部位は、特に制限されず、例えば、前記糖残基の2’位および/または4’位があげられる。前記修飾は、例えば、メチル化、フルオロ化、アミノ化、チオ化等があげられる。前記修飾化ヌクレオチド残基は、例えば、塩基としてピリミジン塩基(ピリミジン核)を有するヌクレオチド残基が修飾されたもの、または、塩基としてプリン塩基(プリン核)を有するヌクレオチド残基が修飾されたものがあげられ、好ましくは前者である。以下、ピリミジン塩基を有するヌクレオチド残基をピリミジンヌクレオチド残基といい、修飾されたピリミジンヌクレオチド残基を修飾化ピリミジンヌクレオチド残基といい、プリン塩基を有するヌクレオチド残基をプリンヌクレオチド残基といい、修飾されたプリンヌクレオチド残基を修飾化プリンヌクレオチド残基という。前記ピリミジンヌクレオチド残基は、例えば、ウラシルを有するウラシルヌクレオチド残基、シトシンを有するシトシンヌクレオチド残基、チミンを有するチミンヌクレオチド残基等があげられる。前記修飾化ヌクレオチド残基において、塩基がピリミジン塩基の場合、例えば、前記糖残基の2’位および/または4’位が修飾されていることが好ましい。前記修飾化ヌクレオチド残基の具体例は、例えば、リボース残基の2’位が修飾された、2’−メチル化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−メチル化−シトシンヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−アミノ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−アミノ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−チオ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−チオ化−シトシンヌクレオチド残基等があげられる。
【0040】
前記ヌクレオチド残基における塩基は、例えば、アデニン(a)、シトシン(c)、グアニン(g)、チミン(t)およびウラシル(u)の天然塩基(非人工塩基)でもよいし、非天然塩基(人工塩基)でもよい。前記人工塩基は、例えば、修飾塩基および改変塩基等があげられ、前記天然塩基(a、c、g、tまたはu)と同様の機能を有することが好ましい。前記同様の機能を有する人工塩基は、例えば、グアニン(g)に代えて、シトシン(c)に結合可能な人工塩基、シトシン(c)に代えて、グアニン(g)に結合可能な人工塩基、アデニン(a)に代えて、チミン(t)またはウラシル(u)に結合可能な人工塩基、チミン(t)に代えて、アデニン(a)に結合可能な人工塩基、ウラシル(u)に代えて、アデニン(a)に結合可能な人工塩基等があげられる。前記修飾塩基は、例えば、メチル化塩基、フルオロ化塩基、アミノ化塩基、チオ化塩基等があげられる。前記修飾塩基の具体例としては、例えば、2’−メチルウラシル、2’−メチルシトシン、2’−フルオロウラシル、2’−フルオロシトシン、2’−アミノウラシル、2’−アミノシトシン、2−チオウラシル、2−チオシトシン等があげられる。本発明において、例えば、a、g、c、tおよびuで表わされる塩基は、前記天然塩基の他に、前記天然塩基のそれぞれと同様の機能を有する前記人工塩基の意味も含む。
【0041】
本発明の核酸分子は、例えば、1もしくは数個の人工核酸モノマー残基を含んでもよい。前記「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜91個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜7個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。前記人工核酸モノマー残基は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられる。前記モノマー残基における核酸は、例えば、前述と同様である。
【0042】
本発明の核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、前記修飾化ヌクレオチド残基および/または前記人工核酸モノマー残基を有することが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、5’末端または3’末端に、数10kDaのPEG(ポリエチレングリコール)またはデオキシチミジン等が結合してもよい。
【0043】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは3’末端である。前記付加配列は、特に制限されない。前記付加配列の長さは、特に制限されず、例えば、1〜200塩基長であり、好ましくは1〜50塩基長であり、より好ましくは1〜25塩基長、さらに好ましくは18〜24塩基長である。前記付加配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記付加配列は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記付加配列の具体例として、例えば、ポリdT、ポリdA等があげられる。
【0044】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに標識物質を有してもよい。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは5’末端である。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体、酵素等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488、Alexa647等のAlexa色素等があげられる。
【0045】
前記標識物質は、例えば、前記核酸分子に直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、間接的に連結してもよい。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、前述の例示を援用できる。
【0046】
本発明の核酸分子は、例えば、担体に固定化して使用できる。前記本発明の核酸分子は、例えば、5’末端および3’末端のいずれかを固定化することが好ましく、より好ましくは3’末端である。本発明の核酸分子を固定化する場合、例えば、前記核酸分子は、前記担体に、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。後者の場合、例えば、前記付加配列を介して固定化することが好ましい。
【0047】
本発明の核酸分子の製造方法は、特に制限されず、例えば、化学合成を利用した核酸合成方法等、遺伝子工学的手法、公知の方法により合成できる。
【0048】
本発明の核酸分子は、前述のように、前記サルモネラに結合性を示す。このため、本発明の核酸分子の用途は、前記サルモネラへの結合性を利用する用途であれば、特に制限されない。本発明の核酸分子は、例えば、前記サルモネラに対する抗体に代えて、種々の方法に使用できる。
【0049】
本発明の核酸分子によれば、例えば、前記サルモネラを検出でき、これによって、前記サルモネラを検出できる。前記サルモネラの検出方法は、特に制限されず、前記サルモネラと前記核酸分子との結合を検出することによって、行える。
【0050】
<検出方法>
本発明の検出方法は、前述のように、サルモネラの検出方法であって、試料と前記本発明の核酸分子とを接触させ、前記試料中のサルモネラと前記核酸分子とを結合させることにより、前記試料中のサルモネラを検出する工程を含むことを特徴とする。本発明の検出方法は、前記本発明の核酸分子を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。
【0051】
本発明によれば、前記本発明の核酸分子が、サルモネラに特異的に結合することから、例えば、サルモネラと前記核酸分子との結合を検出することによって、試料中のサルモネラを特異的に検出可能である。具体的には、例えば、試料中のサルモネラの有無またはサルモネラの量を分析可能であることから、定性または定量も可能といえる。本発明によれば、サルモネラの中でも、例えば、O4群、O7群および/またはO9群に属するサルモネラを、特異的に検出できる。
【0052】
本発明において、前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、生体由来、飲食品由来、環境由来等の試料があげられる。前記生体は、特に制限されず、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ等の非ヒト哺乳類、鳥類、魚類等の動物の生体があげられる。前記生体由来の試料は、例えば、排泄物、体液、皮膚、肉、粘膜、体毛等があげられる。前記飲食品由来の試料は、例えば、飲料、食品、食品原料等があげられる。前記環境由来の試料は、例えば、生物、水、土壌、大気等があげられる。前記水試料は、例えば、地下水、河川水、海水、生活排水等があげられる。また、前記環境由来の試料は、例えば、食品加工場、調理場等における付着物があげられる。
【0053】
前記試料は、例えば、採取したものを、そのまま本発明の検出方法に使用してもよいし、前記採取物を種として培地で培養を行い、得られた培養物を本発明の検出方法に試料として使用してもよい。前記試料は、例えば、検出結果の信頼性を向上できることから、前記採取物中に含まれる細菌量を増加させた前記培養物を使用することが好ましい。前記培養方法は、特に制限されず、例えば、従来公知の方法が採用できる。培養に使用する培地は、特に制限されず、増殖培地として、例えば、カゼインペプトン 17g/L、ソイペプトン 3g/L、塩化ナトリウム 5g/L、リン酸二カリウム 2.5g/L、ブドウ糖 2.5g/L(pH7.3)等を含むTSV培地、サルモネラ用の選択培地として、例えば、大豆ペプトン 5g/L、塩化ナトリウム 8g/L、リン酸二水素カリウム 1.6g/L、塩化マグネシウム六水和物 40g/L、マラカイトグリーン 0.04g/L(pH5.2)等を含むRV培地等が使用でき、これらを、順次併用してもよい。本発明の検出方法によれば、例えば、増殖培地で培養した培養試料を、そのまま使用できる。前記本発明の核酸分子は、サルモネラに対して特異的に結合することから、例えば、様々な細菌が含まれる前記培養試料であっても、特異的にサルモネラに結合し、この結合を検出可能だからである。
【0054】
前記試料は、例えば、細菌が生存する生菌試料でもよいし、細菌が死滅した死菌試料でもよい。前者は、例えば、前述のように採取したものをそのまま使用したり、前記培養物をそのまま使用する場合があげられる。後者は、例えば、前記本発明の核酸分子との接触前または接触時において、前記試料に含まれる細菌に対する死滅処理を施す場合があげられる。前記死菌処理は、例えば、加熱処理があげられる。具体例としては、例えば、前記試料を95℃〜100℃で10分間加熱処理した後、前記本発明の核酸分子と接触させる形態があげられる。前記試料中にサルモネラが存在する場合、サルモネラが拡散する可能性がある。しかしながら、予め、前記試料に死滅処理を施すことによって、検出時におけるサルモネラの拡散を十分に防止し、安全性を維持することができる。
【0055】
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記固体試料の場合、例えば、前記核酸分子と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、液体と混合して、液体試料として使用することが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液、培地等があげられる。
【0056】
前記検出工程は、例えば、前記試料と前記核酸分子とを接触させて、前記試料中サルモネラと前記核酸分子とを結合させる接触工程と、前記サルモネラと前記核酸分子との結合を検出する結合検出工程とを含む。また、前記検出工程は、例えば、さらに、前記結合検出工程の結果に基づいて、前記試料中のサルモネラの有無または量を分析する工程を含む。
【0057】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記核酸分子との接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0058】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4〜37℃であり、好ましくは18〜25℃であり、接触時間は、例えば、10〜120分であり、好ましくは30〜60分である。
【0059】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触は、例えば、カリウムイオン(K
+)およびマグネシウムイオン(Mg
2+)の存在下で行うことが好ましい。カリウムイオンは、例えば、カリウム化合物により供給できる。前記カリウム化合物は、例えば、液体中で、イオン化してカリウムイオンを遊離する、イオン供与体があげられる。前記カリウム化合物は、例えば、カリウム塩が使用でき、具体例として、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム等があげられる。マグネシウムイオンは、例えば、マグネシウム化合物により供給できる。前記マグネシウム化合物は、例えば、液体中で、イオン化してマグネシウムイオンを遊離する、イオン供与体があげられる。前記マグネシウム化合物は、例えば、マグネシウム塩が使用でき、具体例として、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等があげられる。
【0060】
前記接触工程において、前記核酸分子に接触させる前記試料中の細菌量は、特に制限されない。前記核酸分子100pmolあたり、例えば、細菌10
5〜10
7cellsを接触させることが好ましく、より好ましくは10
6〜10
7cellsである。また、カリウムイオンおよびマグネシウムイオン存在下で接触工程を行う場合、前記核酸分子200fmolあたり、カリウムイオンは、例えば、100〜1000nmolであり、より好ましくは500〜1000nmolであり、さらに好ましくは500nmolであり、マグネシウムイオンは、例えば、100〜1000nmolであり、より好ましくは100〜500nmolであり、さらに好ましくは100nmolである。
【0061】
前記接触工程において、前記核酸分子は、例えば、担体に固定化された固定化核酸分子でもよいし、未固定の遊離した核酸分子でもよい。後者の場合、例えば、容器内で、前記試料と接触させる。前記核酸分子は、例えば、取扱性に優れることから、前記固定化核酸分子が好ましい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。
【0062】
前記結合検出工程は、前述のように、前記試料中のサルモネラと前記核酸分子との結合を検出する工程である。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中のサルモネラの有無を分析(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中のサルモネラの量を分析(定量)できる。
【0063】
そして、前記サルモネラと前記核酸分子との結合が検出できなかった場合は、前記試料中にサルモネラは存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中にサルモネラが存在すると判断できる。また、予め、サルモネラの細菌数と、結合量との相関関係を求めておき、前記相関関係に基づいて、前記結合量から、前記試料中のサルモネラの細菌数を分析することもできる。
【0064】
前記サルモネラと前記核酸分子との結合の検出方法は、特に制限されない。前記方法は、例えば、物質間の結合を検出する従来公知の方法が採用でき、具体例として、前述のSPR、蛍光偏光法等があげられる。また、前記結合は、例えば、前記サルモネラと前記核酸分子との複合体の検出でもよい。
【0065】
前記蛍光偏光法は、一般に、偏光励起光を前記標識物質に照射した際、前記標識物質から発せられる蛍光が、前記標識物質で標識された分子の分子量に応じて異なった偏光度を示すという特性に基づく測定方法である。本発明においては、例えば、前記標識物質で標識化した前記核酸分子(標識化核酸分子)を使用することで、前記蛍光偏光法により前記サルモネラと前記核酸分子との結合を検出することができる。具体的には、前記標識化核酸分子は、サルモネラと未結合の状態とサルモネラと結合した状態を比較した場合、前者は、相対的に分子量が小さいため、相対的に偏光度が高く、一方、後者は、相対的に分子量が大きいため、相対的に偏光度が低い。このため、例えば、試料と接触させる前の前記標識化核酸分子の偏光度と、前記試料と接触させた後の前記標識化核酸分子の前記偏光度とを比較することで、サルモネラと前記標識化核酸分子との結合を検出できる。また、サルモネラと未結合の前記標識化核酸分子およびサルモネラと結合した前記標識化核酸分子の少なくとも一方の偏光度を評価基準として、前記試料と接触させた後の前記標識化核酸分子の偏光度を評価することでも、サルモネラと前記標識化核酸分子との結合を検出できる。
【0066】
前記蛍光偏光法によれば、例えば、前記本発明の核酸分子を、前記標識物質で標識化するのみで、センサとして容易に使用できる。また、前記標識物質は、その種類によって検出波長が異なるため、例えば、試料の種類に応じて前記標識物質を選択することで、前記試料由来の蛍光の影響を低減することもできる。
【0067】
前記標識化核酸分子は、例えば、前記本発明の核酸分子が前記標識物質で標識化されていればよく、その標識方法は、特に制限されない。
【0068】
前記標識化核酸分子としては、例えば、前記本発明の核酸分子に前記標識物質が連結した形態があげられる。この形態は、例えば、前述の記載が援用でき、前記本発明の核酸分子に、前記標識物質が直接的に連結してもよいし、前述のようにリンカー等を介して前記標識物質が間接的に連結してもよい。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、0〜10塩基長であり、好ましくは0〜7塩基長であり、より好ましくは、0〜5塩基長である。前記標識物質は、例えば、前記本発明の核酸分子のいずれの部位に連結されてもよく、具体例としては、5’末端および3’末端があげられ、両末端に連結してもよいし、いずれか一方の末端に連結してもよく、好ましくは、5’末端である。
【0069】
前記標識化核酸分子としては、この他に、例えば、前記本発明の核酸分子と、これに相補的であって且つ標識物質が連結した相補鎖(以下、「標識化相補鎖」ともいう)とを含み、前記核酸分子と前記標識化相補鎖とがハイブリダイズしたハイブリッド分子があげられる。
【0070】
前記相補鎖は、例えば、前記本発明の核酸分子の一部に相補的な配列を有していればよく、前記相補的な配列のみから構成されてもよいし、前記相補的な配列を含んでもよい。前記相補鎖は、前記本発明の核酸分子のどの領域に対して相補的でもよく、好ましくは、5’末端領域または3’末端領域に相補的である。また、例えば、前記本発明の核酸分子が、その5’末端または3’末端にリンカーを有し、前記相補的な配列は、前記リンカーに相補的であることが好ましい。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、10〜30塩基長であり、好ましくは15〜25塩基長であり、より好ましくは、18〜24塩基長である。前記相補鎖の長さは、特に制限されず、例えば、10〜30塩基長であり、好ましくは15〜25塩基長であり、より好ましくは、18〜24塩基長である。
【0071】
前記標識化相補鎖において、前記標識物質は、例えば、前記相補鎖のいずれの部位に連結されてもよく、具体例としては、5’末端および3’末端があげられ、両末端に連結してもよいし、いずれか一方の末端に連結してもよい。前記標識化相補鎖が、前記本発明の核酸分子の3’末端領域に相補的な場合、前記標識物質は、前記相補鎖の5’末端に連結することが好ましく、前記標識化相補鎖が、前記本発明の核酸分子の5’末端領域に相補的な場合、前記標識物質は、前記相補鎖の3’末端に連結することが好ましい。
【0072】
前記標識物質は、特に制限されず、前述した例示を援用でき、中でも前記蛍光物質および前記色素が好ましい。
【0073】
前記蛍光偏光法を採用する場合、本発明の検出方法は、例えば、前記試料と前記核酸分子とを接触させ、前記試料中のサルモネラと前記標識化核酸分子とを結合させる接触工程と、前記標識化核酸分子に偏光励起光を照射して、前記標識化核酸分子の偏光度を測定する測定工程と、前記測定工程における測定結果と評価基準とを比較し、サルモネラと前記標識化核酸分子との結合を検出する工程を検出する検出工程を含むことが好ましい。
【0074】
前記測定工程において、前記偏光励起光の波長および前記偏光度の検出波長は、特に制限されず、例えば、前記標識物質の種類に応じて適宜設定できる。具体例として、前記標識物質がAlexa647の場合、前記偏光励起光の波長は、例えば、620〜680nmであり、偏光度の検出波長は、例えば、660〜800nmである。前記偏光励起光の照射時間は、特に制限されず、例えば、1ナノ〜5ナノ秒があげられる。
【0075】
前記検出工程において、前記評価基準は、例えば、予め決定してもよいし、測定ごとに決定してもよい。前記評価基準としては、例えば、サルモネラ未結合の基準、サルモネラ結合の基準が設定できる。前者の基準は、例えば、サルモネラが結合していない前記標識化核酸分子のみの偏光度であり、後者の基準は、例えば、サルモネラが結合した前記標識化核酸分子の偏光度である。
【0076】
前者の基準を用いる場合は、例えば、前記測定工程における測定値が、前記基準よりも高ければ、サルモネラが存在すると判断でき、また、前記基準よりも相対的に高ければ、相対的に多くのサルモネラが存在すると判断できる。他方、前記測定工程における測定値が、前記基準と同程度または低ければ、サルモネラが存在しないと判断できる。前者の基準は、例えば、前記接触工程前の前記標識化核酸分子の偏光度でもよい。
【0077】
また、後者の基準を用いる場合は、例えば、前記測定工程における測定値が、前記基準よりも低ければ、サルモネラが存在しないと判断できる。他方、前記測定工程における測定値が、前記基準と同程度または高ければ、サルモネラが存在すると判断でき、また、前記基準よりも相対的に高ければ、相対的に多くのサルモネラが存在すると判断できる。
【0078】
また、前記基準は、サルモネラの量と偏光度との相関関係であってもよい。例えば、複数の既知濃度のサルモネラと所定量の前記標識化核酸分子とを接触させ、各濃度のサルモネラに結合した前記標識化核酸分子の偏光度を測定することにより、前記相関関係を示す相関式が得られる。そして、この相関式と、前記測定工程における測定値とから、前記試料におけるサルモネラの量を判断することができる。
【0079】
<検出試薬およびキット>
本発明の検出試薬は、前述のように、サルモネラの検出試薬であって、前記本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出試薬は、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の検出試薬を使用すれば、前述のように、例えば、前記サルモネラの検出等を行うことができる。
【0080】
本発明の検出キットは、前述のように、サルモネラの検出キットであって、前記本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出キットは、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の検出キットを使用すれば、前述のように、例えば、前記サルモネラの検出等を容易に行うことができる。
【0081】
本発明の検出キットは、例えば、前記本発明の核酸分子の他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、前記試料を培養するための培地、緩衝液、マグネシウム化合物およびカリウム化合物、使用説明書等があげられる。
【0082】
本発明の検出試薬および検出キットは、例えば、前記本発明の核酸分子の説明を援用でき、また、その使用方法についても、前記本発明の核酸分子および前記本発明の検出方法を援用できる。
【0083】
<検出デバイス>
本発明の検出デバイスは、前述のように、サルモネラの検出デバイスであって、前記本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出デバイスは、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の検出デバイスを使用すれば、前述のように、例えば、前記サルモネラの検出等を行うことができる。
【0084】
本発明の検出デバイスは、例えば、さらに担体を有し、前記担体に前記核酸分子が配置されている。前記核酸分子は、前記担体に固定化されていることが好ましい。前記担体の種類および前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。本発明の検出デバイスの使用方法は、特に制限されず、前記本発明の核酸分子および前記本発明の検出方法を援用できる。
【実施例】
【0085】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【0086】
[実施例1]
各アプタマーについて、サルモネラに対する結合能を確認した。
【0087】
(1)アプタマー
下記ポリヌクレオチドを合成し、実施例のアプタマーとした。
SAL−107(配列番号15)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGGGTGGTGGGTGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL‐204(配列番号1)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGCGGGGGTGGATAGTACAGGGTGGGTAGGGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−230(配列番号3)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGCGGAGGGTGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−242(配列番号7)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGGGTGCTATGTGGTTGGGGGGGGGAGGGAGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−262(配列番号9)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGCCGCGTGAAGAGGTGGGGGGGGTGGGCGCGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−278(配列番号8)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGTGGTAGGGAGATGTGGGGGTGGGTAGGAGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−396(配列番号10)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTTGCGGGTGTTGTGGGGGTGGGTTGGTGGGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−431(配列番号16)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTGGAGCGGGGTGGGTGTGGTGGGTGAGGGACAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−437(配列番号12)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGGCGGCTACGGGGTGGGTGGGAGTAACTGGGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−445(配列番号11)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTCCGGGGTGGGGGGGGGAGGTGGTGGTGTGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−455(配列番号14)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGCGTGCGGTGGAGAGGTGGGGGGGTGGGCCGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
【0088】
比較例として、サルモネラに結合する公知のアプタマー(SAL−33)を使用した(非特許文献1:Molecular and Cellular Probes 23、 2009、 20-28)。前記アプタマーの配列を以下に示す。
SAL−33(配列番号18)
TTTGGTCCTTGTCTTATGTCCAGAATGCTATGGCGGCGTCACCCGACGGGGACTTGACATTATGACAGATTTCTCCTACTGGGATAGGTGGATTAT
【0089】
また、40塩基長のランダム配列(N)
40を含む配列番号19で表わされるオリゴヌクレオチドからなるDNAを複数含むDNAライブラリーを、ネガティブコントロールN40とした。下記配列において、「N」は、デオキシリボヌクレオチド残基であり、その核酸は、アデニン、グアニン、シトシンおよび/またはチミンとした。
N40(配列番号19)
CCTGCACCCAGTGTCCC-(N)
40-GACGGAGAGGAGGACGG
【0090】
前記アプタマーは、その3’末端に、24塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。
【0091】
(2)細菌試料
細菌は、
Salmonella enteritidis、
Salmonella typhimurium、
Salmonella infantis、
Citrobacter freundiiおよび
Eschericia coli(DH5a)を使用した。各細菌を、100℃、10分間の加熱処理によって、死滅させた。前記死滅した細菌を、光路長1cmでの波長600nmの吸光度が0.1となるように、PBS緩衝液(137mmol NaCl、8.1mmol Na
2HPO
4、2.68mmol KCl、1.48mmol KH
2PO
4、pH7.4)で希釈した。この希釈試料を、以下のSPRに使用した。
【0092】
(3)SPRによる結合能の解析
結合能の解析には、ProteON XPR36(BioRad社)を、その使用説明書にしたがって使用した。
【0093】
まず、前記ProteON専用のセンサーチップとして、ストレプトアビジンが固定化されたチップ(商品名 ProteOn NLC Sensor Chip、BioRad社)を、前記ProteON XPR36にセットした。前記センサーチップのフローセルに、超純水(DDW)を用いて、5000nmol/Lのリガンドをインジェクションし、シグナル強度(RU:Resonance Unit)が約1000RUになるまで結合させた。前記リガンドは、24塩基長のデオキシチミジンの5’末端をビオチン化した、ビオチン化ポリdTを使用した。そして、前記チップの前記フローセルに、SPRバッファーを用いて、400nmol/Lの前記ポリdA付加アプタマーを、流速25μL/minで80秒間インジェクションし、シグナル強度が約700RUになるまで結合させた。続いて、前記希釈試料(Abs.600=0.1)を、SPRバッファーを用いて、流速50μL/minで120秒間インジェクションし、引き続き、同じ条件で、SPRバッファーを流して洗浄を行った。前記希釈試料のインジェクションおよび前記SPRバッファーによる洗浄に並行して、シグナル強度の測定を行った。
【0094】
前記SPRバッファーの組成は、50mmol/L Tris、100mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2、0.05% Tween(登録商標)20とし、pHは、7.4とした。
【0095】
そして、前記希釈試料のインジェクション開始を0秒として、115秒〜125秒におけるRUの最大値(RU
max)と、355〜365秒におけるRUの平均値(RU
constant)とを求め、RU
constant/RU
maxを算出した。RU
maxは、試料のインジェクション時におけるアプタマーへのターゲットの結合量を示し、RU
constantは、洗浄時におけるアプタマーへのターゲットの結合量を示す。RU
constant/RU
maxは、値が高い程、アプタマーとターゲットとの結合が、洗浄によって乖離し難いことを意味する。
【0096】
RU
maxの結果を下記表1に、RU
constant/RU
maxの結果を
図1および
図2に示す。
図1および
図2は、各細菌に対する各アプタマーの結合能を示すグラフであり、
図1(A)が
Salmonella enteritidis、(B)が
Salmonella typhimurium、(C)が
Salmonella infantis、
図2が
Citrobacter freundiiに対する各アプタマーの結合能を示すグラフである。
図1および
図2のグラフにおいて、縦軸は、RU
constant/RU
maxである。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すように、実施例のいずれのアプタマーも、大腸菌には結合しなかった。また、
図2に示すように、実施例のアプタマーは、
Citrobacter freundiiに対し、インジェクション時に若干の結合(RU
max)を示すものの、洗浄により解離した結果、RU
constant/RU
maxがマイナス(実質的に結合無し)を示した。これに対して、比較例の公知アプタマーSAL−33は、
Citrobacter freundiiに結合し、洗浄後も結合が維持された。
【0099】
さらに、
図1に示すように、実施例のいずれのアプタマーも、比較例の公知アプタマーより、
Salmonella enteritidisに対して優れた結合能を示し、
Salmonella typhimuriumおよび
Salmonella infantisに対しても、優れた結合能を示した。中でも、SAL−230、SAL−262、SAL−396、SAL−431およびSAL−437は、前記希釈試料のインジェクション時において優れた結合能を示し、且つ、洗浄によっても、サルモネラとの結合が十分に維持できた。これらの結果から、実施例のアプタマーは、優れた結合能でかつ特異的に各サルモネラに結合できることがわかった。
【0100】
[実施例2]
各アプタマーについて、サルモネラに対する結合能を確認した。
【0101】
(1)アプタマー
下記ポリヌクレオチドを合成し、実施例のアプタマーとした。
SAL−123(配列番号17)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGTTGGGTGTGGTGGGTGGGGGAGGTGGTATGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
SAL−219(配列番号5)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGGGATCGGTGCTGCGGGGGTGGGTGGAGCGGGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−236(配列番号2)
GGTATCAACGCCTCTCAGTGAATTGTTGGGGGTAGGCGCTGGGGTGGGTGGGAGCGCAAAGGTTTCGGACGGACATATC
SAL−409(配列番号13)
GGAAATCTGCCCTTGTCCCTAAAGGGCCTGGTAGGTTGGTGGGGGTGGGGAGGGCAAAGCCGTCGAGTGGGTATTC
【0102】
(2)SPRによる結合能の解析
サルモネラとして、
Salmonella enteritidisを使用し、アプタマーとして、前記(1)のアプタマーを使用した以外は、前記実施例1と同様にして、結合能を解析した。RU
maxの結果を下記表2に、RU
constant/RU
maxの結果を
図3に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
前記表2および
図3に示すように、実施例のいずれのアプタマーも、大腸菌には結合せず、
Salmonella enteritidisに対して、優れた結合能を示した。
【0105】
[実施例3]
アプタマーを用いたELAA(Enzyme‐linked Aptamer Assay)により、サルモネラの検出を行った。
【0106】
(1)アプタマー
前記実施例1で使用したSAL−230(配列番号3)、SAL−262(配列番号9)、SAL−396(配列番号10)、SAL−431(配列番号16)、SAL−437(配列番号12)、SAL−242(配列番号7)、SAL−107(配列番号15)、SAL‐204(配列番号1)、SAL−278(配列番号8)、SAL−455(配列番号14)を使用した。
【0107】
前記アプタマーは、その3’末端に、24塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するELAAに使用した。
【0108】
(2)細菌試料
前記実施例と同様に、
Salmonella enteritidis、
Salmonella typhimurium、
Salmonella infantisおよび
Eschericia coli(DH5a)の死滅細菌を使用した。前記細菌を、光長1cmでの波長600nmの吸光度が0.1となるように、PBS緩衝液で希釈した。この希釈試料を、以下のELAAで使用した。
【0109】
(3)ELAA
使用した試薬等の組成を以下に示す。
固相化液:
PBS緩衝液(137mmol NaCl、8.1mmol Na
2HPO
4、2.68mmol KCl、1.48mmol KH
2PO
4、pH7.4)
ブロッキング液:
Protein Free(TBS)ブロッキングバッファー(PIERCE社)
希釈液:
50mmol/L Tris−HCl(pH7.4)、100mmol/L NaCl、1mmol/L MgCl
2、5mmol/L KCl
洗浄液:
PBS緩衝液(137mmol NaCl、8.1mmol Na
2HPO
4、2.68mmol KCl、1.48mmol KH
2PO
4、pH7.4)、0.05% Tween20
基質:
TMBE Peroxidase Substrate ELISA(MOSS社)
停止液:
0.5N(0.25mol/L) H
2SO
4【0110】
96穴プレート(商品名 Nunc-Immuno(登録商標) plate, Maxisorp(登録商標)、Nunc社)に、前記希釈試料を、ウェルあたり100μL添加し、4℃で一晩吸着させた。前記ウェルを200μLの洗浄液で洗浄後、ブロッキング液を200μL加え、室温で1時間インキュベートした。インキュベート後、前記ウェルを200μLの前記洗浄液で3回洗浄し、前記希釈試料中の死菌を固定化したプレートを作製した。
【0111】
そして、希釈液で、前記ポリdA付加アプタマーを1μmol/Lに希釈した後、前記ウェルに100μL添加し、室温で1時間インキュベートした。つぎに、希釈液で1μmol/Lに希釈したビオチン化ポリdTを、前記ウェルに100μL添加し、室温で1時間インキュベートした。前記ビオチン化ポリdTは、前記実施例1と同じものを使用した。これにより、プレートに固定化された死菌にアプタマーが結合し、さらに、前記アプタマーにおけるポリdAに、ビオチン化ポリdTが結合する。
【0112】
続いて、前記ウェルを洗浄液で洗浄した後、1000倍希釈したストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP、GE社、#RPN1231V)を100μL添加し、室温で30分間反応させた。さらに、前記ウェルを洗浄液で洗浄した後、基質100μLを添加し、室温で15分間、発色反応させた。その後、前記ウェルに100μLの停止液を加え、反応を停止した後、プレートリーダー(商品名 Microplate Reader Sunrise Remote、TECAN社)で、波長450nmの吸光度を測定した(n=3)。
【0113】
また、ブランクとして、前記ポリdAアプタマーを未添加とし、前記死菌が固定化されたプレートに、前記ビオチン化ポリdTを添加して、同様にELAAを行った。
【0114】
そして、ブランクの吸光度を1として、各反応について相対値を求めた。これらの結果を
図4に示す。
図4は、アプタマーとサルモネラとの結合を示すグラフである。
図4において、縦軸は、前記結合能を示す波長450nmの吸光度の相対値である。各アプタマーについて、各アプタマーについて、(A)が
Salmonella enteritidis、(B)が
Salmonella typhimurium、(C)が
Salmonella infantisに対する結合能を示す。
【0115】
図4に示すように、実施例のいずれのアプタマーも、ネガティブコントロール(polydT)と比較して、サルモネラに対して優れた結合能を示した。
【0116】
[実施例4]
各アプタマーについて、サルモネラに対する結合を確認した。
【0117】
(1)アプタマー
前記SAL−230(配列番号3)およびSAL−278(配列番号8)を小型化した下記ポリヌクレオチドを合成し、実施例のアプタマーとした。前記アプタマーは、さらに、その3’末端に、20塩基長のポリdAを付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。
SAL−230_s48 (配列番号23)
GGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGCGGAGGGTGGGCAAAGGTTTCGGACGG
SAL−230_rand(配列番号24)
GGTTGTGGTTGGTGGGGGGTGCGGAGGGTGGG
SAL−278_s49 (配列番号27)
TGAATTGTGGTAGGGAGATGTGGGGGTGGGTAGGAGGGCAAAGGTTTCG
SAL−278_rand(配列番号28)
GTGGTAGGGAGATGTGGGGGTGGGTAGGAGGG
【0118】
(2)SPRによる結合能の解析
サルモネラとして
Salmonella enteritidis、
Salmonella typhimuriumおよび
Salmonella infantisを使用し、アプタマーとして、前記(1)のアプタマーを使用した以外は、前記実施例1と同様にして、結合能を解析した。
【0119】
RU
maxの結果を下記表3に、RU
constant/RU
maxの結果を
図5に示す。
図5は、各サルモネラに対する各アプタマーの結合能を示すグラフである。
図5のグラフにおいて、縦軸は、RU
constant/RU
maxである。各アプタマーについて、(A)が
Salmonella enteritidis、(B)が
Salmonella typhimurium、(C)が
Salmonella infantisに対する結合能を示す。
【0120】
【表3】
【0121】
図5に示すように、実施例のいずれのアプタマーも、(A)
Salmonella enteritidis、(B)
Salmonella typhimuriumおよび(C)
Salmonella infantisに対して優れた結合能を示した。この結果から、実施例のアプタマーは、優れた結合能で各サルモネラに結合できることがわかった。
【0122】
[実施例5]
アプタマーを用いたELAAにより、サルモネラの検出を行った。
【0123】
(1)アプタマー
前記実施例4の小型化アプタマーである、SAL−230_s48(配列番号23)、SAL−230_rand(配列番号24)、SAL−278_s49(配列番号27)およびSAL−278_rand(配列番号28)を使用した。また、前記SAL−204、SAL−242(配列番号7)、SAL−262(配列番号9)、SAL−396(配列番号10)、SAL−445(配列番号11)、SAL−437(配列番号12)、SAL−455(配列番号14)、SAL−107(配列番号15)およびSAL−431(配列番号16)を小型化した下記ヌクレオチドを合成し、実施例のアプタマーとした。前記アプタマーは、その3’末端に、20塩基長のポリdAを付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するELAAに使用した。また、ネガティブコントロールとして、前記実施例1と同様のN40を使用し、その3’末端に、同様にしてポリdAを付加し、前記ELAAに使用した。
SAL−204_s46 (配列番号21)
GGGGGTGGATAGTACAGGGTGGGTAGGGGGCAAAGGTTTCGGACGG
SAL−204_rand(配列番号22)
GCGGGGGTGGATAGTACAGGGTGGGTAGGGGG
SAL−242_s46 (配列番号25)
TATGTGGTTGGGGGGGGGAGGGAGGGCAAAGGTTTCGGACGGACAT
SAL−242_rand(配列番号26)
GGGTGCTATGTGGTTGGGGGGGGGAGGGAGGG
SAL−262_s36 (配列番号29)
GGTGGGGGGGGTGGGCGCGGCAAAGGTTTCGGACGG
SAL−262_rand(配列番号30)
GCCGCGTGAAGAGGTGGGGGGGGTGGGCGCGG
SAL−396_s55 (配列番号31)
CCCTAAAGTTGCGGGTGTTGTGGGGGTGGGTTGGTGGGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−396_rand(配列番号32)
TTGCGGGTGTTGTGGGGGTGGGTTGGTGGG
SAL−445_s44 (配列番号33)
GGGGTGGGGGGGGGAGGTGGTGGTGTGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−445_rand(配列番号34)
TCCGGGGTGGGGGGGGGAGGTGGTGGTGTG
SAL−437_s41 (配列番号35)
GGCGGCTACGGGGTGGGTGGGAGTAACTGGGCAAAGCCGTC
SAL−437_rand(配列番号36)
GCGGCTACGGGGTGGGTGGGAGTAACTGGG
SAL−455_s42 (配列番号37)
GGTGGAGAGGTGGGGGGGTGGGCCGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−455_rand(配列番号38)
CGTGCGGTGGAGAGGTGGGGGGGTGGGCCG
SAL−107_s43 (配列番号39)
GGTTGGTGGGGGGTGGGTGGTGGGTGCAAAGCCGTCGAGTGGG
SAL−107_rand(配列番号40)
TTGTGGTTGGTGGGGGGTGGGTGGTGGGTG
SAL−431_s56 (配列番号41)
CTTGTCCCTAAAGTGGAGCGGGGTGGGTGTGGTGGGTGAGGGACAAAGCCGTCGAG
SAL−431_rand(配列番号20)
TGGAGCGGGGTGGGTGTGGTGGGTGAGGG
【0124】
(2)ELAA
サルモネラとして、
Salmonella enteritidisを使用し、アプタマーとして、前記(1)のアプタマーを使用した以外は、前記実施例3と同様にしてサルモネラの検出を行った。ブランクの吸光度を1として、各反応について相対値を求めた結果を
図6に示す。
【0125】
図6は、アプタマーとサルモネラの結合を示すグラフである。
図6において、縦軸は、前記結合能を示す波長450nmの吸光度の相対値である。
図6に示すように、実施例のいずれのアプタマーも、サルモネラに対して、前記ネガティブコントロールN40(O pool)よりも優れた結合能を示した。
【0126】
[実施例6]
各アプタマーについて、サルモネラに対する結合の特異性を確認した。
【0127】
(1)アプタマー
前記実施例4の小型化アプタマーSAL−278_rand(配列番号28)を使用した。前記アプタマーは、その3’末端に、24塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。また、ネガティブコントロールとして、30塩基のランダム配列(N)
30を含む配列番号42で表されるオリゴヌクレオチドを複数含むDNAライブラリーを、ネガティブコントロールN30とし、その3’末端に、同様にしてポリdAを付加し、後述するSPRに使用した。下記配列において、「N」は、N40と同様とした。
N30(配列番号42)
CCTGCACCCAGTGTCCC-(N)
30-GACGGAGAGGAGGACGG
【0128】
(2)細菌試料
細菌は、
Salmonella enteritidis(SE)、
Salmonella typhimurium(ST)、
Eschericia coli O157:H7(0157)、
Listeria monocytogenes 4a(LM4a)および
Listeria monocytogenes 1/2a(LM1/2a)を使用した以外は、前記実施例1(2)と同様にして、希釈試料を調製し、以下のSPRに使用した。
【0129】
(3)SPRによる結合能の解析
前記SPRバッファーの組成を、40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2、0.05% Tween(登録商標)20とし、pHを、7.4とした以外は、前記実施例1(3)と同様にして、結合能を解析した。RU
maxおよびRU
constantの結果を
図7に示す。
【0130】
図7は、アプタマーの結合能を示すグラフである。
図7において、(A)は、RU
maxの結果を示し、(B)は、RU
constantの結果を示す。
図7において、横軸は、アプタマーの種類を示し、(A)において、縦軸は、RU
maxを示し、(B)において、縦軸は、RU
constantを示す。
図7に示すように、SAL−278_randは、ネガティブコントロールに対して、サルモネラに優れた結合能を示した。また、SAL−278_randは、
Eschericia coli O157:H7、
Listeria monocytogenes 4aおよび
Listeria monocytogenes 1/2aには結合せず、
Salmonella enteritidisおよび
Salmonella typhimuriumのみに対して、優れた結合能を示した。
【0131】
[実施例7]
標識化相補鎖とアプタマーとをハイブリダイズした標識化アプタマーを用いた蛍光偏光法により、サルモネラの検出を行った。
【0132】
(1)標識化アプタマー
まず、前記実施例4の小型化アプタマーSAL−278_rand(配列番号28)の3’末端に、24塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーを調製した。このポリdA付加アプタマー(1nmol/L)を、95℃で3分処理した後、1分間氷冷してフォールディングさせた。
【0133】
他方、標識化相補鎖として、24塩基長のデオキシチミジンの5’末端をAlexa647(Invitrogen社製)で標識した標識化ポリdTを調製した。そして、SB1T緩衝液(40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2、0.05% Tween(登録商標)20、pH7.4)中で、前記フォールディングさせた前記ポリdA付加アプタマーと前記標識化ポリdTとを、室温で10分間インキュベートし、前記ポリdA付加アプタマーのポリdA部分に前記標識化ポリdTをハイブリダイズさせ、標識化ハイブリッドアプタマーを調製した。
【0134】
また、ネガティブコントロールとして、前記小型化アプタマーに代えて前記実施例1と同様のN40を使用し、その3’末端に、同様にしてポリdAを付加し、前記標識化ポリdTをハイブリダイズさせ、標識化ハイブリッドアプタマーを調製した。
【0135】
(2)細菌試料
細菌は、
Salmonella enteritidis(SE)、
Salmonella typhimurium(ST)、
Eschericia coli O157:H7(O157)、
Listeria monocytogenes 4a(LM4a)および
Listeria monocytogenes 1/2a(LM1/2a)を使用し、PBS緩衝液に代えて、前記SB1T緩衝液を使用した以外は、前記実施例1(2)と同様にして、希釈試料を調製した。また、前記希釈試料に代えて、SB1T緩衝液を使用し、これをコントロールとした。
【0136】
(3)蛍光偏光法による解析
前記(1)で調製した1nmol/Lの前記標識化ハイブリッドアプタマー1μLに、前記希釈試料中の死菌の濃度が10
8細胞/mLとなるよう前記希釈試料を添加し、室温15分間反応させた。これにより、前記標識化アプタマーとサルモネラとの複合体を形成させた。前記反応後、Infinite M1000 Pro(TECAN社製)を用いて、前記反応液の蛍光偏光度を測定した。偏光励起光の波長は、635nmとし、偏光度の検出波長は、665nmとした(以下、同様)。偏光度の測定結果を
図8に示す。
【0137】
図8は、蛍光偏光度の結果を示すグラフである。
図8において、横軸は、アプタマーの種類を示し、縦軸は、蛍光偏光度を示す。前記ポリdA付加アプタマーには、前記標識化ポリdTがハイブリダイズしているため、前記ポリdA付加アプタマーのアプタマー部分にサルモネラが結合すると、分子量の増大により、蛍光偏光度が増加する。
図8に示すように、SAL−278_randは、ネガティブコントロールよりも、サルモネラに対して高い蛍光偏光度を示した。このことから、蛍光偏光度により、SAL−278_randがサルモネラに結合することがわかった。また、SAL−278_randは、
Eschericia coli O157:H7、
Listeria monocytogenes 4aおよび
Listeria monocytogenes 1/2aに対して、ネガティブコントロールと同等の蛍光偏光度を示した。このことから、蛍光偏光度により、SAL−278_randがサルモネラ以外に結合しないことがわかった。
【0138】
[実施例8]
アプタマーを用いた蛍光偏光法により、サルモネラの検出を行った。
【0139】
(1)標識化アプタマー
前記実施例4の小型化アプタマーSAL−278_rand(配列番号28)を用いて、以下に示すように、3種類の標識化アプタマーを調製した。1つ目の標識化アプタマーは、標識化相補鎖とハイブリダイズさせた標識化ハイブリッドアプタマーであり、前記実施例7と同じものを使用した。2つ目の標識化アプタマーは、前記小型化アプタマーの5’末端に5塩基のポリdTを付加し、前記ポリdTの5’末端をAlexa647で標識したものを使用した(5’末端標識アプタマー)。3つ目の標識化アプタマーは、前記小型化アプタマーの3’末端に5塩基のポリdTを付加し、前記ポリdTの3’末端をAlexa647で標識したものを使用した(3’末端標識アプタマー)。
【0140】
また、ネガティブコントロールとして、前記実施例6のN30を使用し、3’末端に20塩基のポリAを付加し、前記標識化ポリdTをハイブリダイズさせた標識化ハイブリッドアプタマーを使用した。
【0141】
(2)細菌試料
細菌は、
Salmonella typhimuriumを用い、PBS緩衝液に代えてSB1T緩衝液を使用した以外は、前記実施例1(2)と同様にして、希釈試料を調製した。また、前記希釈試料に代えて、SB1T緩衝液を使用し、これをコントロールとした。
【0142】
(3)蛍光偏光法による解析
前記(1)の各標識化アプタマーを使用した以外は、前記実施例7(3)と同様にして、蛍光偏光度を測定した。蛍光偏光度の測定結果を
図9に示す。
【0143】
図9は、蛍光偏光度の結果を示すグラフである。
図9において、横軸は、アプタマーの種類を示し、縦軸は、蛍光偏光度を示す。前記各標識化アプタマーは、それぞれ標識物質で標識化されているため、前記各標識アプタマーのアプタマー部分にサルモネラが結合すると、分子量の増大により、蛍光偏光度が増加する。
図9に示すように、標識化ハイブリッドアプタマー(ハイブリッド)、前記5’末端標識アプタマー(5’標識)および前記3’末端標識アプタマー(3’標識)は、それぞれ、ネガティブコントロールよりも、サルモネラに対して高い蛍光偏光度を示した。中でも、前記5’末端標識アプタマーおよび前記3’末端標識アプタマーは、高い蛍光偏光度を示し、特に、前記5’末端標識アプタマーが、極めて高い蛍光偏光度を示した。これらの結果から、蛍光偏光法により、SAL−278_randが、サルモネラに結合することがわかった。
【0144】
[実施例9]
アプタマーを用いた蛍光偏光法により、サルモネラの検出を行った。
【0145】
(1)アプタマー
前記実施例8の5’末端標識アプタマーを使用した。また、ネガティブコントロールとして、前記実施例1のN40の3’末端に20塩基のポリdAを付加し、前記標識化ポリdTをハイブリダイズさせた標識化ハイブリッドアプタマーを使用した。
【0146】
(2)細菌試料
細菌は、
Salmonella typhimuriumを用い、PBS緩衝液に代えてSB1T緩衝液を使用した以外は、前記実施例1(2)と同様にして、SB1T希釈試料を調製した。また、PBS緩衝液に代えて、トリプトソーヤブイヨン(TSB)培養液を使用した以外は、前記実施例1(2)と同様にして、TBS希釈試料を調製した。
【0147】
(3)蛍光偏光法による解析
前記(1)の標識化アプタマーを使用し、前記希釈試料における死菌の濃度が、所定濃度(10
6細胞/mL、10
7細胞/mLまたは10
8細胞/mL)となるように前記各希釈試料を添加した以外は、前記実施例7(3)と同様にして、前記反応液の蛍光偏光度を測定した。蛍光偏光度の測定結果を
図10に示す。
【0148】
図10は、蛍光偏光度の結果を示すグラフである。
図10において、(A)は、前記SB1T希釈試料を用いた結果であり、(B)は、前記TBS希釈試料を用いた結果である。
図10(A)および(B)において、横軸は、サルモネラの濃度を示し、縦軸は、蛍光偏光度を示す。
図10(A)および(B)に示すように、前記SBT1希釈試料および前記TBS希釈試料のいずれを使用した場合も、ネガティブコントロールに対して、高い蛍光偏光度を示し、10
6細胞/mLのサルモネラ濃度であっても、蛍光偏光法により、サルモネラを検出できることがわかった。
【0149】
[実施例10]
アプタマーを用いたELAAにより、アプタマーのサルモネラに対する解離定数を測定した。
【0150】
(1)アプタマー
前記実施例1で使用したSAL−278(配列番号8)の3’末端をビオチン化したビオチン化アプタマーを使用した。
【0151】
(2)細菌試料
前記実施例3と同様に、
Salmonella enteritidisおよび
Salmonella typhimuriumの死滅細菌を使用した。前記細菌を、1×10
8細胞/mLとなるように、PBS緩衝液で希釈した。この希釈試料を、以下のELAAで使用した。
【0152】
(3)ELAA
プレートとして、96穴プレート(商品名 PS−MICROPLATE、greinar bio−one社)を用いた以外は、前記実施例3と同様にして、前記希釈試料中の死菌を固定化したプレートを作製した。そして、前記希釈液で、前記ポリdA付加アプタマーを所定濃度(0.06、0.125、0.25、0.5、1または2μmol/L)に希釈した後、前記ウェルに100μL添加した以外は、前記実施例3と同様にして、波長450nmの吸光度を測定した(n=3)。
【0153】
また、ブランクとして、前記ビオチン化アプタマーを未添加とし、同様にELAAを行った。そして、前記吸光度のフィッティングカーブから、前記ビオチン化アプタマーのサルモネラに対する解離定数を算出した。
【0154】
これらの結果を
図11に示す。
図11は、アプタマーとサルモネラとの結合を示すグラフである。
図11において、横軸は、アプタマーの濃度を示し、縦軸は、前記結合能を示す波長450nmの吸光度を示し、図中の黒抜きの丸(●)は、
Salmonella enteritidisを用いた場合の結果を示し、白抜きの丸(○)は、
Salmonella typhimuriumを用いた場合の結果を示す。
【0155】
図11に示すように、前記ビオチン化アプタマーの濃度依存的に、吸光度が上昇した。また、SAL−278の
Salmonella enteritidisのに対する解離定数は、540nMであり、
Salmonella typhimuriumに対する解離定数は310nMであった。これらの結果から、SAL−278が、サルモネラに対し極めて優れた結合力を示すことがわかった。
【0156】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0157】
この出願は、2012年11月13日に出願された日本出願特願2012−249665を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。