(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の運転中には貯蔵タンク内の液体還元剤をポンプにより圧送するとともに還元剤噴射弁によって内燃機関の排気通路に前記液体還元剤を噴射する一方、前記内燃機関の停止時には還元剤供給経路内に残留する前記液体還元剤を前記貯蔵タンクに吸い戻すように前記液体還元剤の流れる方向を流路切換弁で切換可能であり、前記ポンプと前記貯蔵タンクとを接続する第1の還元剤通路に備えられた三方向切換弁により、前記ポンプと前記貯蔵タンクとを連通し前記ポンプ側の前記第1の還元剤通路を大気から遮断した状態とする第1の状態と、前記ポンプ側の第1の還元剤通路を大気開放する第2の状態と、に切換可能に構成された還元剤供給装置の制御方法において、
前記内燃機関の停止後に前記三方向切換弁が前記第1の状態でかつ前記還元剤噴射弁が閉弁した状態で前記流路切換弁を前記第1の還元剤通路と前記ポンプの出口側が連通するようにし前記吸い戻し制御を開始し、その後前記還元剤噴射弁を開弁し、前記吸い戻し制御の終了時には前記ポンプを停止した後に、前記三方向切換弁を前記第2の状態とし、さらに所定時間経過後に、前記流路切換弁を前記第1の還元剤通路と前記ポンプの入り口側が連通するように切換えることを特徴とする還元剤供給装置の制御方法。
液体還元剤を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンク内の液体還元剤を圧送するポンプと、圧送される前記液体還元剤を内燃機関の排気通路内に噴射する還元剤噴射弁と、前記液体還元剤の流れる方向を切換える流路切換弁と、を備え、前記内燃機関の停止時に還元剤供給経路内に残留する前記液体還元剤を前記貯蔵タンクに吸い戻す制御を実行可能な還元剤供給装置において、
前記ポンプと前記貯蔵タンクとを接続する第1の還元剤通路に三方向切換弁を備え、前記三方向切換弁は前記ポンプと前記貯蔵タンクとを連通し前記ポンプ側の前記第1の還元剤通路を大気から遮断した状態とする第1の状態と、前記ポンプ側の前記第1の還元剤通路を大気開放する第2の状態と、に切換可能であり、
前記吸い戻し制御の実行時には前記三方向切換弁が前記第1の状態でかつ前記還元剤噴射弁が閉弁した状態で前記流路切換弁を前記第1の還元剤通路と前記ポンプの出口側を連通するようにし前記吸い戻し制御を開始し、その後前記還元剤噴射弁を開弁し、前記吸い戻し制御の終了時には前記ポンプを停止した後に、前記三方向切換弁を前記第2の状態とし、さらに所定時間経過後に、前記流路切換弁を前記第1の還元剤通路と前記ポンプの入口側が連通するように切換えることを特徴とする還元剤供給装置。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載された内燃機関の排気には窒素酸化物(NO
X)が含まれている。このNO
Xを浄化する排気浄化装置の一つとして、内燃機関の排気通路中に配置された選択還元触媒と、選択還元触媒の上流側で尿素水溶液等のアンモニア由来の液体還元剤を噴射するための還元剤供給装置とを備えた排気浄化装置が知られている。この排気浄化装置は、選択還元触媒中で、排気中のNO
Xと液体還元剤から生成されるアンモニアとを還元反応させ、NO
Xを窒素や水等に効率的に分解するものとなっている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給装置の一態様として、ポンプ及び還元剤噴射弁を備え、貯蔵タンク内の液体還元剤をポンプによって圧送するとともに、排気管に固定された還元剤噴射弁を介して液体還元剤を排気管内に供給する形式の還元剤供給装置がある。
【0004】
ここで、液体還元剤として尿素水溶液を使用する場合、できる限り尿素水溶液の凍結が生じないように、凍結温度が最も低くなる濃度の尿素水溶液が用いられる。ただし、尿素水溶液の凍結温度は低くても−11℃程度であり、寒冷地等においては尿素水溶液の供給が停止されている期間において尿素水溶液が凍結するおそれがある。また、尿素水溶液の供給が停止されている期間において、尿素水溶液中の水分が蒸発して濃度が上昇し、尿素水溶液の融点が上昇することによって凍結しやすくなるおそれもある。
【0005】
尿素水溶液が凍結すると、次回の始動時に長時間の解凍時間が必要になったり、その体積が膨張して還元剤供給装置の構成部品が破損したりするおそれがある。そのため、内燃機関の停止時には、還元剤供給装置内に残留する尿素水溶液を貯蔵タンク内に吸い戻す制御が行われることが一般的である。尿素水溶液の吸い戻し制御は、尿素水溶液を圧送するポンプを逆回転させたり、あるいは、尿素水溶液の流路の接続を切り換えたりすることで、尿素水溶液の供給経路内を減圧することによって行われる。この尿素水溶液の吸い戻し制御は、還元剤噴射弁を開いた状態にするとともにポンプを駆動させて、所定期間実施されるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、還元剤噴射弁の噴孔や還元剤供給経路の途中において尿素水溶液中の尿素が結晶化して、部分的あるいは全面的な詰まりを生じていると、尿素水溶液の吸い戻し動作中に、還元剤供給装置内に過大な負圧が発生する。吸い戻し制御の終了時に過大な負圧が存在していると、ポンプの駆動を停止した後に貯蔵タンク内からポンプ側に尿素水溶液が再充填され、尿素水溶液の凍結や、次回の始動時の意図しない噴射を生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、液体還元剤の吸い戻し制御の終了後に、液体還元剤がポンプ側に再充填されにくくなる還元剤供給装置、及びそのような還元剤供給装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、内燃機関の運転中には貯蔵タンク内の液体還元剤をポンプにより圧送するとともに還元剤噴射弁によって内燃機関の排気通路に前記液体還元剤を噴射する一方、前記内燃機関の停止時には還元剤供給経路内に残留する前記液体還元剤を前記貯蔵タンクに吸い戻すように構成された還元剤供給装置の制御方法において、前記内燃機関の停止時に前記吸い戻し制御を開始し、前記吸い戻し制御の終了時に前記ポンプと前記貯蔵タンクとを接続する還元剤通路を大気開放することを特徴とする還元剤供給装置の制御方法が提供され、上述した課題を解決することができる。
【0010】
すなわち、本発明の還元剤供給装置の制御方法によれば、液体還元剤の吸い戻し制御が終了したときに、ポンプと貯蔵タンクとを接続する還元剤通路が大気開放されるため、還元剤供給経路に過大な負圧が残留していた場合であっても、貯蔵タンク内の液体還元剤がポンプ側に再充填されることを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明の還元剤供給装置の制御方法を実施するにあたり、前記還元剤通路に三方向切換弁を備え、前記吸い戻し制御の実行時には前記ポンプと前記貯蔵タンクとを連通させ、前記吸い戻し制御の終了時には前記ポンプを停止した後に、前記ポンプ側の還元剤通路を大気開放することが好ましい。このように三方向切換弁を切換えることとすれば、大気開放側に液体還元剤が流れることがなく、大気開放側の弁が液体還元剤の凍結、凝固によって固着するおそれがなくなる。その結果、通路の切換動作の不具合を低減することができる。
【0012】
また、本発明の別の態様は、液体還元剤を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンク内の液体還元剤を圧送するポンプと、圧送される前記液体還元剤を内燃機関の排気通路内に噴射する還元剤噴射弁と、を備え、前記内燃機関の停止時に還元剤供給経路内に残留する前記液体還元剤を前記貯蔵タンクに吸い戻す制御を実行可能な還元剤供給装置において、前記ポンプと前記貯蔵タンクとを接続する還元剤通路に三方向切換弁を備え、前記三方向切換弁は前記ポンプと前記貯蔵タンクとを連通する第1の状態と、前記ポンプ側の還元剤通路を大気開放する第2の状態と、に切換可能であり、前記吸い戻し制御の実行時には前記第1の状態とする一方、前記吸い戻し制御の終了時には前記第2の状態とすることを特徴とする還元剤供給装置である。
【0013】
すなわち、本発明の還元剤供給装置によれば、液体還元剤の吸い戻し制御が終了したときに、ポンプと貯蔵タンクとを接続する還元剤通路を大気開放する三方向切換弁を備えているため、還元剤供給経路に過大な負圧が残留していた場合であっても、貯蔵タンク内の液体還元剤がポンプ側に再充填されることを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明の還元剤供給装置を構成するにあたり、前記三方向切換弁を、前記貯蔵タンク側の前記還元剤通路の末端よりも前記ポンプに近い位置の前記還元剤通路に設けることが好ましい。このようなポンプ側の位置に三方向切換弁を設けることにより、三方向切換弁とポンプとの間の還元剤通路の容量を小さくすることができ、ポンプ側への再充填量をより少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照して、本発明の還元剤供給装置、及び還元剤供給装置の制御方法に関する実施の形態について具体的に説明する。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0017】
[第1の実施の形態]
1.排気浄化装置の全体構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20が備えられた排気浄化装置10の全体構成の一例を説明するために示す図である。
排気浄化装置10は、排気中のNO
Xを浄化するための装置であり、図示しないディーゼルエンジン等の内燃機関の排気通路11に設けられている。排気浄化装置10は、排気通路11の途中に介装された還元触媒13と、還元触媒13よりも上流側の排気通路11内に液体還元剤を供給するための還元剤供給装置20とを備えている。
【0018】
還元触媒13は、排気中のNO
Xの還元を促進する機能を有する触媒であり、液体還元剤から生成されるアンモニアを吸着するとともに、触媒に流れ込む排気中のNO
Xをアンモニアによって選択的に還元する触媒である。本実施の形態の還元剤供給装置20は、液体還元剤として尿素水溶液が用いられるものであり、尿素水溶液が排気通路11中で熱分解あるいは加水分解することによりアンモニアが生成されるようになっている。
【0019】
2.還元剤供給装置
(1)基本的構成
図1において、還元剤供給装置20は、液体還元剤が収容される貯蔵タンク21と、液体還元剤を圧送するポンプユニット30と、液体還元剤を排気通路11内に噴射する還元剤噴射弁25とを備えている。ポンプユニット30は、ポンプ23及び流路切換弁33を備えている。還元剤噴射弁25、ポンプ23、及び、流路切換弁33は、ECU40によって駆動制御が行われるものとなっている。
【0020】
ポンプ23と貯蔵タンク21とは第1の還元剤通路27によって接続され、ポンプ23と還元剤噴射弁25とは第2の還元剤通路28によって接続されている。このうち、第2の還元剤通路28には、第2の還元剤通路28内の圧力、すなわち、還元剤噴射弁25に圧送される液体還元剤の圧力を検出するための圧力検出手段として、圧力センサ31が設けられている。ポンプ23と、第1の還元剤通路27及び第2の還元剤通路28とは、流路切換弁33を介して接続されている。第1の還元剤通路27の貯蔵タンク21側の端部は、液体還元剤の吸い上げを可能にするために、貯蔵タンク21の底面近傍に位置している。
【0021】
流路切換弁33は、ポンプ23によって圧送される液体還元剤が流れる方向を、貯蔵タンク21側から還元剤噴射弁25側に流れる正方向と、還元剤噴射弁25側から貯蔵タンク21側に流れる逆方向とに切換える機能を有している。本実施の形態にかかる還元剤供給装置20において、流路切換弁33は、非通電状態で第1の還元剤通路27をポンプ23の入り口側23aに連通するとともに第2の還元剤通路28をポンプ23の出口側23bに連通する一方、通電状態で第1の還元剤通路27をポンプ23の出口側23bに連通するとともに第2の還元剤通路28をポンプ23の入り口側23aに連通するように構成されている。
【0022】
すなわち、内燃機関の運転状態においては、液体還元剤を還元剤噴射弁25側に供給するために、流路切換弁33への通電は行われない。一方、内燃機関の停止時においては、還元剤供給装置20内の液体還元剤を貯蔵タンク21内へ吸い戻すために、流路切換弁33に対して通電される。
【0023】
なお、内燃機関の停止時に、液体還元剤を貯蔵タンク21に吸い戻し可能とする構成は、流路切換弁33を設ける例に限られない。例えば、逆回転可能なポンプを用いることによって液体還元剤を吸い戻し可能に構成することもできる。
【0024】
また、第2の還元剤通路28の途中には、他端が貯蔵タンク21に接続されたリターン通路29が分岐して設けられている。リターン通路29の貯蔵タンク21側の端部は、貯蔵タンク21内の気相部分に接続されている。
なお、貯蔵タンク21にはエアブリザード等が設けられており、内部の圧力が大気圧で保たれるように構成されている。
【0025】
リターン通路29の途中には、流路面積が小さくされた絞り部37が設けられ、第2の還元剤通路28内の圧力を高められようになっている。また、絞り部37よりも貯蔵タンク21側のリターン通路29には、液体還元剤が貯蔵タンク21側から第2の還元剤通路28側に流れないようにするための一方向弁35が設けられている。一方向弁35は省略されていても構わない。
【0026】
なお、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20においてはポンプユニット30内に圧力センサ31が設けられているが、第2の還元剤通路28のどの位置に設けられていても構わない。
【0027】
ポンプ23は、ECU40による通電制御によって、所定の流量の液体還元剤を圧送する。本実施の形態において、ポンプ23は電磁駆動ポンプが用いられており、駆動デューティ比が大きいほどポンプ23の出力(吐出流量)が大きくなるものとなっている。
【0028】
液体還元剤の噴射制御時においては、圧力センサ31によって検出される第2の還元剤通路28内の圧力値(以下、この値を「検出圧力」と称する。)Puが、あらかじめ設定された所定の目標圧力Pu_tgtで維持されるように、ポンプ23の出力がフィードバック制御される。具体的に、第2の還元剤通路28に圧送される液体還元剤を、リターン通路29を介して貯蔵タンク21に循環させながら、ECU40は、第2の還元剤通路28に設けられた圧力センサ31によって検出される検出圧力Puと、あらかじめ設定された所定の目標圧力Pu_tgtとの差分ΔPuに基づいてポンプ23の出力をPID制御する。
【0029】
また、液体還元剤を貯蔵タンク21に吸い戻す場合においては、ポンプ23の出力はあらかじめ設定された一定の状態に固定される。ただし、液体還元剤の吸い戻し制御時においても、第2の還元剤通路28内の負圧の状態を見ながらポンプ23の出力を制御するようにしてもよい。
【0030】
還元剤噴射弁25は、通電制御によって開閉制御が行われ、所定量の液体還元剤を排気通路11内に噴射する。本実施の形態において、還元剤噴射弁25は、非通電状態で閉弁し通電状態で開弁する、電磁式のオンオフ弁が用いられている。ECU40は、所定の演算式に基づいて目標噴射量Qdv_tgtを求めるとともに、第2の還元剤通路28内の検出圧力Puが目標圧力Pu_tgtとなっていることを前提として、あらかじめ定められた噴射サイクルごとに、目標噴射量Qdv_tgtに応じた駆動デューティ比を決定して、還元剤噴射弁25の通電制御を行う。還元剤噴射弁25の駆動デューティ比とは、一噴射サイクル中の開弁時間の割合を意味する。
【0031】
また、ポンプ23と貯蔵タンク21とを接続する第1の還元剤通路27に三方向切換弁39が設けられている。この三方向切換弁39は、ポンプ23側の通路を貯蔵タンク21側に連通する第1の状態と、ポンプ23側の通路を大気開放する第2の状態とで切換可能になっている。この三方向切換弁39は、ECU40によって通電制御されるものであり、通電している状態で第1の状態となり、通電を停止した状態で第2の状態となる。
【0032】
本実施の形態にかかる還元剤供給装置20に備えられた三方向切換弁39は、ポンプ23側の第1の還元剤通路27が大気開放される第2の状態では、貯蔵タンク21側の通路が遮断されるようになっている。
【0033】
3.電子制御装置(ECU)
図2は、本実施形態のECU40のうちの液体還元剤の吸い戻し制御に関連する部分について機能的なブロックで表した構成例を示している。
このECU40は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、回収制御指示部41と、流路切換弁制御部43と、ポンプ駆動制御部45と、還元剤噴射弁駆動制御部47と、三方向切換弁駆動制御部49とにより構成されている。具体的に、これらの各部はマイクロコンピュータによるプラグラムの実行によって実現されるものとなっている。
【0034】
この他、ECU40には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の図示しない記憶素子やタイマカウンタ、ポンプ23、流路切換弁33、還元剤噴射弁25、三方向切換弁39への通電を行うための駆動回路等が備えられている。また、ECU40には、内燃機関のキースイッチのオンオフ信号や圧力センサ31のセンサ値が入力され、検出圧力Pu等の値が記憶素子に記憶されるようになっている。
【0035】
回収制御指示部41は、例えば、内燃機関のキースイッチがオフになったことをきっかけとして、液体還元剤の回収制御の開始指令Sp1を生成する。また、回収制御指示部41は、あらかじめ定められた所定時間が経過したときに、回収制御の終了指令Sp2を生成する。
【0036】
流路切換弁制御部43は、内燃機関の停止時に、回収制御の開始指令Sp1が生成されてから回収制御の終了指令Sp2が生成されるまでの期間、流路切換弁33を通電状態として、液体還元剤が逆方向に流れるように維持するための制御信号を流路切換弁の駆動回路に対して出力する。
【0037】
ポンプ駆動制御部45は、内燃機関の停止時に、回収制御の開始指令Sp1が生成されてから回収制御の終了指令Sp2が生成されるまでの期間、あらかじめ定められた一定の出力でポンプ23が駆動されるよう、ポンプの駆動回路に対して制御信号を出力する。
【0038】
還元剤噴射弁駆動制御部47は、内燃機関の停止時に、回収制御の開始指令Sp1が生成されてから回収制御の終了指令Sp2が生成されるまでの期間、還元剤噴射弁25を開弁状態で保持するための制御信号を還元剤噴射弁の駆動回路に対して出力する。本実施の形態において、還元剤噴射弁駆動制御部47は、流路切換弁33への通電及びポンプ23の駆動開始後、少し遅れて、還元剤噴射弁25を開弁状態にする。
【0039】
三方向切換弁駆動制御部49は、内燃機関の停止時に、回収制御の開始指令Sp1が生成されてから回収制御の終了指令Sp2が生成されるまでの期間、三方向切換弁39に通電して、ポンプ23と貯蔵タンク21とを連通させるための制御信号を三方向切換弁の駆動回路に対して出力する。一方、三方向切換弁駆動制御部49は、回収制御の終了時に、三方向切換弁39への通電を停止させて、ポンプ23側の第1の還元剤通路27を大気開放する。
【0040】
4.還元剤供給装置の制御方法
(1)吸い戻し制御の概要
以下、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20において、ECU40によって実行される液体還元剤の吸い戻し制御の概要について説明する。
図3は、還元剤噴射弁25の詰まり発生時及び詰まり不発生時それぞれの場合における第2の還元剤通路28内の検出圧力Puの経時変化と、流路切換弁33の駆動状態と、還元剤噴射弁25の駆動状態と、ポンプ23の駆動状態と、三方向切換弁39の駆動状態とをそれぞれ示している。検出圧力Puの径時変化を示すグラフにおいて、実線Aが詰まり不発生時、破線Bが詰まり発生時の検出圧力Puの推移をそれぞれ示している。
【0041】
t0の時点で、内燃機関のキースイッチがオフにされると、還元剤噴射弁25が一旦閉じられるとともに、ポンプ23の出力が、あらかじめ定められた値(duty=N)に設定される。次いで、t1の時点で流路切換弁33に通電を開始し、液体還元剤が、還元剤噴射弁25側から貯蔵タンク21側へ流れるようにする。このt1の時点から、第2の還元剤通路28内の検出圧力Puが低下し始める。
【0042】
その後、t2の時点で、還元剤噴射弁25を開弁する。このとき、第2の還元剤通路28内の検出圧力Puは大気圧Pairよりも低く、負圧状態となっている。流路切換弁33への通電を開始してから還元剤噴射弁25を開弁するまでに時間を空けるのは、第2の還元剤通路28内が正圧の状態で還元剤噴射弁25を開弁すると、液体還元剤が排気通路11内に漏出してしまうからである。還元剤噴射弁25を開弁することによって、還元剤噴射弁25の噴孔を介して排気(空気)が還元剤供給経路内に導入され、液体還元剤を効率的に貯蔵タンク21に吸い戻すことができるようになる。
【0043】
その後も還元剤噴射弁25に詰まりが生じなければ、第2の還元剤通路28内の検出圧力Puは、比較的小さい負圧状態で維持される(実線Aを参照)。一方、還元剤噴射弁25に詰まりが生じると、第2の還元剤通路28内が過大な負圧状態となる(破線Bを参照)。
【0044】
その後、あらかじめ定められた所定時間が経過したt3の時点で、ポンプ23の駆動を停止(duty=0)した後、さらにt4の時点で、三方向切換弁39への通電を停止し、ポンプ23側の第1の還元剤通路27を大気開放する。これにより、第2の還元剤通路28内の検出圧力Puが大気圧Pairに復帰する。このとき、ポンプ23側の第1の還元剤通路27が貯蔵タンク21に連通していないことから、たとえ、還元剤噴射弁25に詰まりが生じており、第2の還元剤通路28内が過大な負圧状態になっていた場合であっても、貯蔵タンク21内の液体還元剤がポンプ23側に再充填されることがない。
【0045】
その後、t5の時点で、流路切換弁33への通電を停止するとともに、還元剤噴射弁25を閉弁して、液体還元剤の吸い戻し制御を終了する。
【0046】
(2)フローチャート
次に、ECU40によって実行される液体還元剤の吸い戻し制御の具体例について、
図4のフローチャートに基づいて説明する。以下のフローチャートに示される液体還元剤の吸い戻し制御は、内燃機関の停止時において実行されるものとなっている。
【0047】
まず、ECU40は、
図4のステップS11において内燃機関の停止を検知すると、ステップS12において、回収制御の開始指令Sp1を生成する。次いで、ECU40は、ステップS13において、流路切換弁33を通電停止状態とし、還元剤噴射弁25を閉弁状態とし、三方向切換弁39を通電状態とする。
【0048】
次いで、ECU40は、ステップS14において、ポンプ23の出力をあらかじめ定めた所定の値(duty=N)にセットして、ポンプ23を駆動させる。次いで、ECU40は、ステップS15において、流路切換弁33に通電を開始し、液体還元剤が還元剤噴射弁25側から貯蔵タンク21側に流れるように流路を切り換える。これにより、ポンプ23による液体還元剤の吸い戻しが開始される。吸い戻し制御が実行されている間は、第2の還元剤通路28内の検出圧力Puが負圧状態で維持される。
【0049】
その後、ECU40は、ステップS16において、還元剤噴射弁25を通電状態にし、開弁させる。還元剤噴射弁25の開弁を遅らせるのは、第2の還元剤通路28内が正圧の状態で開弁すると、排気通路11内に液体還元剤が漏出するおそれがあるからである。ただし、開弁時期を遅らせることは本発明において必須の事項ではない。
【0050】
次いで、ECU40は、ステップS17において、液体還元剤の吸い戻しを開始してから所定時間が経過した時点で回収制御の終了指令Sp2を生成し、これに伴い、ステップS18において、ポンプ23の駆動を停止する。さらに、ECU40は、ステップS19において、三方向切換弁39への通電を停止する。これにより、ポンプ23側の第1の還元剤通路27が大気開放され、第2の還元剤通路28内が過大な負圧状態となっていたとしても、貯蔵タンク21内の液体還元剤がポンプ23側に再充填されることがない。
【0051】
次いで、ECU40は、ステップS20において流路切換弁33への通電を停止するとともに、ステップS21において還元剤噴射弁25への通電を停止して、液体還元剤の吸い戻し制御を終了する。
【0052】
5.効果
以上説明したように、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20、及び還元剤供給装置20の制御方法は、内燃機関の停止時に液体還元剤の吸い戻し制御を実行する際に、吸い戻し制御の終了時にポンプ23と貯蔵タンク21とを接続する第1の還元剤通路27を大気開放することとしている。したがって、例えば、還元剤噴射弁25の詰まり等により、第2の還元剤通路28内に過大な負圧が生じていた場合であっても、貯蔵タンク21内の液体還元剤がポンプ23側に再充填されることを防ぐことができる。
【0053】
また、本実施の形態にかかる還元剤供給装置20の制御方法においては、液体還元剤の吸い戻し制御終了時に、ポンプ23を停止した後、三方向切換弁39への通電を停止して、ポンプ23側の第1の還元剤通路27を大気開放することとしている。したがって、液体還元剤が大気開放側に流れることを確実に防いで、液体還元剤の凍結、凝固によって大気開放側の弁が固着するおそれを低減することができる。
【0054】
本実施の形態にかかる還元剤供給装置20、及び還元剤供給装置20の制御方法は、本発明の一態様を例示するものにすぎず、上述の実施の形態は、本発明の主旨の範囲内において変更することができる。
【0055】
例えば、上述の実施の形態では、三方向切換弁39を貯蔵タンク21内において第1の還元剤通路27に設けることとしているが、
図5に示すように、三方向切換弁39を、貯蔵タンク21側の第1の還元剤通路27の端部よりも、ポンプ23に近い位置の第1の還元剤通路27に設けるようにしてもよい。このように三方向切換弁39を配置すれば、三方向切換弁39とポンプ23との間の第1の還元剤通路27の容量を小さくすることができ、ポンプ23側への再充填量をより少なくすることができる。