【実施例】
【0013】
図1は、波形ボード製造システム1の全体構成を示す構成図である。
波形ボード製造システム1は、木材を桂剥きして薄い板材に加工する桂剥き装置2、桂剥きによって得られた薄い板材を所定の大きさにカットして板材とする切断装置3、板材を波形に加工する波形加工装置4、波形に加工された波形板材を綺麗な波形に整形する整形装置5、整形された波形板材をその形状で安定化させる安定化装置6、および波形板材を平板と接着する接着装置7を備えている。
【0014】
桂剥き装置2は、伐採し乾燥させた木材Aを回転可能に載置する回転支持ローラ11と、回転支持ローラ11上に載置された木材Aを薄く桂剥きするための刃12と、桂剥きした薄い板材Bを搬送するベルトコンベア13とを有している。これにより、木材Aを周方向に薄く連続的に桂剥きしていき、木材Aの外周よりも長い板材Bを得ることができる。すなわち、得られた板材Bは、幅方向が木材Aの芯方向で、長手方向が木材Aの周方向となる。
【0015】
切断装置3は、板材Bを切断する裁断刃15および裁断刃15の下方で裁断時の台となる裁断台16と、この裁断刃15の裁断方向(図示上下方向)と直行する方向へ板材Bを搬送するベルトコンベア13とを有している。これにより、板材Bを所望の長さで切断して複数の板材Cを得ることができる。この板材Cは、長手方向が木材Aの周方向で、幅方向(短手方向)が木材Aの芯方向となる。
【0016】
波形加工装置4は、所定温度(50℃以上100℃以下が好ましい)の水分が含まれた板材Cを波形に加工して波形板材Dを得る装置であり、整形装置5は、波形板材Dをヒータ59と第3プレス治具45と第4プレス治具48により加熱プレスしてねじれ等のない美しい状態に整形して波形板材Eを得る装置であり、安定化装置6は、冷却ユニット69と第5プレス治具65と第6プレス治具68により波形板材Eを冷却プレスして美しい波形を長期間維持できる波形板材Fを作成する装置である。この波形板材Fは、板材Cの幅方向(短手方向)である木材Aの芯方向には湾曲させず、板材Cの長手方向である木材Aの周方向に凹凸をつけて波型に湾曲させたものである。これらの波形加工装置4、整形装置5、および安定化装置6の詳細については後述する。
【0017】
接着装置7は、波形板材Fに平板Gを接着剤で接着する。この接着において、接着装置7は、平板Gの片面全面に接着剤を塗布するのではなく、波形板材Fの凸部の中央付近のみ、すなわち最も凸となっている部分のみに接着材を塗布し、この接着材により平板Gに波形板材Fを接着する。従って、波形板材Fの波打つ表面のうち平板Gと接触する部位は接着剤で固定され、平板Gと接触しない部位は接着剤が塗布されずに木の素材がそのまま露出する。これにより、木材の良さを最大限に活かしつつ、平板Gと波形板材Fを接着することができる。
【0018】
図示の例では波形板材Fの片面に1枚の平板Gを接着し、波形板材Fにおける2面の波形表面のうち片面が完全に露出して見えるようになっている。これにより、木材の美しい波形面が視認され、美しい意匠性を発揮できる。
【0019】
なお、図示の例に限らず、波形板材Fの両面に平板Gを接着し、波形表面が見えないようにしてもよい。この場合、ダンボール状の板材として提供することができ、同じ厚さの一般的な板材に比べて波形板材Fの空間部分の存在によって軽量な板材とし、かつ、強度も保つことができる。
【0020】
また、平板Gを適宜の意匠に穴あけしておき、この穴あきの平板Gを波形板材Fと接着してもよい。この場合、平板Gの穴部分に波形板材Fの波形表面が見えるため、美しい意匠を提供することができる。
【0021】
図2は、波形加工装置4の構成を示す縦断左側面図である。
波形加工装置4は、直方体形状の本体21を有している。本体21の内部には、外周面に凹凸を有する2つのローラ状の第1プレス治具25と第2プレス治具27が上下に対向配置されている。この第1プレス治具25と第2プレス治具27は、波形板材Dの横幅(図示奥行方向)よりも軸方向の長さが長いローラであり、回転軸と
平行に真っ直ぐ伸びる凸部31が周方向に等間隔に配置されている。隣り合う凸部31の間には、凹部32が形成されている。なお、波形加工装置4には、第1プレス治具25と第2プレス治具27を加熱する図示省略する加熱手段(ヒータ)が設けられている。この加熱手段により第1プレス治具25と第2プレス治具27が加熱され、加工対象となる板材Cも加熱されて、板材Cの加工を容易にしている。
【0022】
第1プレス治具25と第2プレス治具27は、最も近接する位置のクリアランスが加工対象の板材Cの板厚と同一かほぼ同一に調整されている。このクリアランスおよび板材Cの板厚は、0.5mm〜1.0mmが好ましい。
【0023】
波形加工装置4の前方(図示右側)には、板材Cを搬送する搬送台22が設けられている。この搬送台22から板材Cが第1プレス治具25と第2プレス治具27の間に搬送されている。
【0024】
波形加工装置4の後方(図示左側)には、プレス加工されて波形になった波形板材Dを搬送する搬送台23が設けられている。この搬送台23の上を波形板材Dが搬送される形で排出される。
【0025】
以上の構成の波形加工装置4は、所定温度(50℃以上100℃以下)の水分が含まれた板材Cの供給を受けて、第1プレス治具25と第2プレス治具27の間で加熱プレスすることで波形に加工し、波形板材Dを排出する。
【0026】
図3は、整形装置5の構成を示す斜視図である。
整形装置5は、長方形の台部49と、台部49の左右両側に設けられて上下方向に真っ直ぐ伸びるガイドアーム42,42と、ガイドアーム42,42の上部内側に設けられた天井部41と、天井部41と台部49の間でガイドアーム42,42に沿って上下方向へスライド移動するスライド44とを備えている。
【0027】
スライド44の底面には、略水平に配置された第3プレス治具45が設けられている。この第3プレス治具45は、底面に凸部51と凹部52とが交互に配置された波型のプレス面を有している。このプレス面は、奥行き方向に真っ直ぐ伸伸びる複数の凸部51と凹部52が同じ高さ同じ間隔で同一平面上に
平行配置された形状である。
【0028】
台部49の上面には、略水平に配置された第4プレス治具48が設けられている。この第4プレス治具48は、底面に凸部51と凹部52とが交互に配置された波型のプレス面を有している。このプレス面は、奥行き方向に真っ直ぐ伸伸びる複数の凸部51と凹部52が同じ高さ同じ間隔で同一平面上に
平行配置された形状である。また、第4プレス治具48の凸部51は、第3プレス治具45の凹部52に対向し、第4プレス治具48の凹部52は、第3プレス治具45の凸部51に対向するように配置されている。これにより、スライド44と共に第3プレス治具45が下降すると、第3プレス治具45と第4プレス治具48の間に波型の薄い空間ができ、この空間に配置されて第3プレス治具45と第4プレス治具48に挟まれた波形板材Eを歪みのない波形に整形することができる。
【0029】
また、スライド44と台部49は、第3プレス治具45と第4プレス治具48をそれぞれ加熱するヒータ59(加熱手段)が内臓されている。これにより、第3プレス治具45と第4プレス治具48を所望の温度(例えば110℃以上でかつ炭化しない温度)に加熱できるようにしている。
【0030】
安定化装置6は、
図1に示したように整形装置5と同一の天井部41、ガイドアーム42、スライド44、および台部49を備えており、ヒータ59の代わりに冷却ユニット69(冷却手段)を備えている。この冷却ユニット69により、第5プレス治具65と第6プレス治具68を所望の温度(例えば25℃以下)に冷却できるようにしている。また、第3プレス治具45と第4プレス治具48の代わりに、第5プレス治具65と第6プレス治具68を備えている。第5プレス治具65と第6プレス治具68、および冷却ユニット69以外については、
図3に示した整形装置5と同一の構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0031】
図4は、各プレス治具の詳細な構成を説明する説明図である。
図4(A)は、第1プレス治具25および第2プレス治具27の詳細な構成を説明する一部拡大右側面図である。
第1プレス治具25および第2プレス治具27は、適宜の加熱装置によって加熱される。これにより、板材Cを加熱して板材Cを湾曲加工しやすくしている。
【0032】
第1プレス治具25および第2プレス治具27は、大きさ、形状、および材質共に同一であり、近接部位で互いの外周面同士が対向するように対向配置させる。
第1プレス治具25および第2プレス治具27の最も突出している凸部31は、第1プレス治具25および第2プレス治具27の凹部32より一回り小さく形成されている。この凸部31と凹部32のサイズ差は、凸部31の半径と凹部32の半径の差が、波形に加工しようとする板材Cの板厚(0.5mm〜1.0mm)とほぼ同じ長さとなるように構成されている。言い換えると、凸部31の直径W1と、凹部32の直径W2は、板材Cの板厚(0.5mm〜1.0mm)のほぼ2倍程度の差となるように構成されている。これにより、凸部31と凹部32が近接状態で互いに対向する半円部の隙間(クリアランス)が、板材Cの板厚(0.5mm〜1.0mm)と同じ略一定間隔の隙間となるように形成されている。
【0033】
また、凸部31と凹部32は、ほぼ半円に近いかそれ以上の領域に構成されており、2つの凹部32の間に位置する凸部31の基部側がくびれたように細くなるかそれに近い形状に形成されていてくびれ部33が設けられている。すなわち、凸部31の最大幅である直径W1よりも基部側の基部幅W3の方が短く形成されている。これにより、板材Cを所望の波型より若干強く湾曲させていくことができる。
【0034】
このように構成された凸部31と凹部32の間に板材Cを挟んで加圧することで、板材Cを良好に湾曲させることができる。この凸部31と凹部32が第1プレス治具25および第2プレス治具27の側周に沿って交互に設けられているため、第1プレス治具25と第2プレス治具27を回転させながら板材Cをプレスおよび搬送していくことで、板材Cは凹凸を繰り返して波型となる波形板材Dに加工される。また、くびれ部33の存在により、凸部31と凹部32が波形板材Dの全面に密着するわけではなく、波形の頂点部分をプレスしつつその間の部分を自然に任せることができ、平板の板材Cを波形に連続的に変形させることを支障なく実行できる。すなわち、凹凸に交互に湾曲変形させても板材Cに割れが生じる等の破損を防止でき、良好に安定して加工できる。
【0035】
この波形板材Dの凹凸の間隔L1は、隣り合う凸部31の頂点の間の間隔とほぼ同じ間隔となる。また、波形板材Dの凹凸部分の厚みL2(波形の振幅に相当)は、第1プレス治具25の凹部32の最も凹となる部位が最下位置となった位置と、第2プレス治具27の凹部32の最も凹となる部位が最上位置となった位置の間の距離とほぼ同じ長さとなる。この厚みL2は、間隔L1よりも短く、間隔L1の半分程度かそれ以下である。
【0036】
図4(B)は、第3プレス治具45と第4プレス治具48の詳細な構成を示す一部拡大正面図である。
第3プレス治具45と第4プレス治具48は、互いに凹凸が嵌合するよう対向して配置されており、それぞれに凸部51と凹部52が交互に配置されている。第3プレス治具45と第4プレス治具48は、いずれも、全ての凸部51の高さおよび配置間隔が均一で図示奥行方向に
平行であり、凸部51の頂点が一平面上に位置するように構成されている。また、第3プレス治具45と第4プレス治具48は、いずれも、全ての凹部52の低さおよび配置間隔が均一で図示奥行方向に
平行であり、凹部52の最凹点が一平面上に位置するように構成されている。
【0037】
隣り合う凸部51の頂点(凹部52の最凹点)の間の間隔L3は、
図4(A)とともに説明した波形板材Dの間隔L1と同一の長さに形成されている。これにより、第4プレス治具48の上に波形板材Dを置き、その上から第3プレス治具45とを下降させてプレスする際に、第3プレス治具45および第4プレス治具48の波形に波形板材Dの波形が沿うように容易かつ精度よく配置できる。従って、第3プレス治具45と第4プレス治具48で波形板材Dをプレスする際に波型の位置がずれていて波形板材Dが破損することを防止できる。
【0038】
また、第3プレス治具45の凸部51と第4プレス治具48の凸部51との高さの差である厚みL4(波形板材の波形高さ)は、波形板材Dの厚みL2(
図4(A)参照)と同一かほぼ同一に形成されている。これにより、波形板材Dに必要以上の力をかけることなく略均一にプレスでき、良好に波形板材Dを整形して波形板材Eを得ることができる。
【0039】
また、凸部51の円弧状部の幅W4は、凹部52の円弧状部の幅W5より狭く、
凸部51と凹部52の間の隙間(クリアランス)が波形板材Dの厚みと同一かほぼ同一に構成されている。すなわち、凸部51の円弧の半径と凹部52の円弧の半径の差は波形板材Dの厚みと同一かほぼ同一に構成されている。さらに、凸部51と凹部52の間に位置する傾斜部53についても、第3プレス治具45と第4プレス治具48の対抗面の隙間間隔(クリアランス)が波形板材Dの厚みと同一かほぼ同一に構成されている。
【0040】
また、傾斜部53については、
図4(A)に示した第1プレス治具25と第2プレス治具27の凸部31と凹部32の間のようにくびれておらず(つまり、くびれ部が無い)、凸部51から凹部52へなだらかな斜面となるように形成されている。この傾斜部53は、直線状とするか、直線に近いゆるやかなS字の湾曲に形成されている。この傾斜部53により、凸部51の基部側にはくびれがなく、基部から先端まで徐々に先細りする凸部51が形成される。
【0041】
以上の構成により、第3プレス治具45と第4プレス治具48は、波形板材Dの表裏両面の全面を所望の温度(100℃以上でかつプレス対象が炭化しない温度)に加熱しつつ略均等にプレスして波形板材E(
図1参照)に整形することができる。ヒータ59(
図3参照)によって加熱した第3プレス治具45と第4プレス治具48によってプレスすることで、波形板材Dにしっかりと型をつけて、ねじれのない美しい波型形状の波形板材E(
図1参照)に整形することができる。
【0042】
図4(C)は、安定化装置6(
図1参照)の第5プレス治具65と第6プレス治具68の詳細な構成を示す一部拡大正面図である。
第5プレス治具65と第6プレス治具68は、互いに凹凸が嵌合するよう対向して配置されており、それぞれに凸部71と凹部72が交互に配置されている。この凸部71と凹部72の配置、大きさ、および形状は、第3プレス治具45と第4プレス治具48の凸部51と凹部52の配置、大きさ、および形状と同一である。また、間隔L5、幅W6、および幅W7についても、
図4(B)に示した間隔L3、幅W4、および幅W5と同一である。また、また、厚みL6(波形板材の波形高さ)についても、厚みL4と同一かほぼ同一である。その他、第3プレス治具45と第4プレス治具48の形状は、第5プレス治具65と第6プレス治具68の形状と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
【0043】
以上の構成により、第5プレス治具65と第6プレス治具68は、波形板材Eの表裏両面の全面を所望の温度(25℃以下)に冷却しつつ略均等にプレスして波形板材Fとして安定化させることができる。冷却ユニット69によって冷却した第5プレス治具65と第6プレス治具68によってプレスすることで波形板材Eを瞬間冷却し、波形板材Eの型を安定化して波形板材Fとすることができる。これにより、波形板材Fが自然に型崩れあるいは伸びて凹凸が低くなるなど形状が変化することを防止できる。特に、波形板材Fが単板であり、合板のように接着材等が塗布されているものではないにもかかわらず、波型を安定して維持することが可能になる。
【0044】
以上に説明した波形ボード製造システム1により、
図5(A)の正面図の写真に示すように、平板が一方向へ等幅で波打った形状の美しい波形板材Fを得ることができる。この波形板材Fは、
図5(B)の斜視図の写真に示すように、木本来の木目が表面に現われ、
平行かつ等間隔に並ぶ波状の凹凸が美しい意匠を織りなす。この美しい波形板材Fを利用して、様々な製品に加工することができる。例えば、
図5(C)に示すように、板材の一部を文字や図形の形状に切り抜いて波形板材Fと重ねて張り合わせることで、切り抜き部分から木目の波状の造形が見える看板を作成することもできる。
【0045】
得られた単板の波形板材Fは、表面コーティングや他の部材との接着等を行わずとも、それ単体で形状が安定している。このため、波形板材Fが湿気等によって元の平板状に戻ることを防止することができる。従って、波形板材Fの片面または両面に平板を重ねて接着した状態であっても、波形板材Fが平板状に戻ろうとして応力がかかり変形や破損するということを防止できる。
【0046】
また、得られた単板の波形板材Fは、ねじれの無い安定した形状であるため、平面の上にがたつきなく載置できるとともに、平板との接着等を容易に行うことができる。またこれにより、凹凸の伸びる横方向は直線状で曲がらず、波形の波進行方向である縦方向には自由に湾曲することができる。
【0047】
この発明は、本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。
例えば、接着装置7を省略し、波形に形成した波形板材Fをそのまま使用するのみとしてもよい。この場合、波形の意匠を活かした製品づくりに活かせるとともに、ダンボール状の木製資材が欲しいような場合には、別途波形板材Fに平板を適宜接着することで実施することができる。
【0048】
また、波形板材Dに樹脂を含浸させ、その上で整形装置5での加熱プレスによる整形と安定化装置6による冷却プレスによる安定化を実行する、あるいは、波形板材Eに樹脂を含浸させ、その上で安定化装置6による冷却プレスによる安定化を実行するようにしてもよい。この場合、完成した波形板材Fに樹脂が含浸されていることにより、さらに長期間にわたって平板状に戻ろうとして変形することを防止できる。