特許第6012102号(P6012102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012102
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用蓋
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/06 20060101AFI20161011BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01M2/06 B
   H01M2/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-236505(P2012-236505)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-86375(P2014-86375A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英明
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−177089(JP,A)
【文献】 特開2005−044678(JP,A)
【文献】 特開平06−089707(JP,A)
【文献】 特開2014−002870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/06
H01M 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の蓋(1)の一部分に、該蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向に、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)、及び、前記筒状ブッシング(2)に接して該ブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)を備え、並びに、前記合成樹脂製の蓋(1)の外面に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に設けられた環状リブ(7)により仕切られた端子封孔部域(4)を備え、かつ、前記ブッシング(2)の開口部に極柱が挿通されて使用される鉛蓄電池用蓋において、合成樹脂製の突起部(6)が、前記合成樹脂製の蓋(1)の内面であって、かつ、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外側に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状又は円弧状に備えられており、かつ、前記突起部(6)の厚みが、1.0〜5.0mmであり、前記突起部(6)の高さが、筒状壁(3)の長さ方向の全長の5〜100%であることを特徴とする鉛蓄電池用蓋。
【請求項2】
前記合成樹脂製の突起部(6)が、前記環状リブ(7)より、前記極柱側に備えられている、請求項1記載の鉛蓄電池用蓋。
【請求項3】
合成樹脂製の蓋(1)の一部分に、該蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向に、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)、及び、前記筒状ブッシング(2)に接して該ブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)を備え、並びに、前記合成樹脂製の蓋(1)の外面に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に設けられた環状リブ(7)により仕切られた端子封孔部域(4)を備え、かつ、前記ブッシング(2)の開口部に極柱が挿通されて使用される鉛蓄電池用蓋において、前記合成樹脂製の筒状壁(3)に、蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向にスリット(5)が2〜8本設けられており、かつ、前記スリット(5)の幅が、0.1〜5.0mmであり、前記スリット(5)の深さが、スリット(5)が設けられる、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外表面から前記筒状ブッシング(2)の外表面までの最短距離の1/3〜2/3であることを特徴とする鉛蓄電池用蓋。
【請求項4】
合成樹脂製の蓋(1)の一部分に、該蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向に、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)、及び、前記筒状ブッシング(2)に接して該ブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)を備え、並びに、前記合成樹脂製の蓋(1)の外面に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に設けられた環状リブ(7)により仕切られた端子封孔部域(4)を備え、かつ、前記ブッシング(2)の開口部に極柱が挿通されて使用される鉛蓄電池用蓋において、合成樹脂製の突起部(6)が、前記合成樹脂製の蓋(1)の内面であって、かつ、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外側に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状又は円弧状に備えられており、かつ、前記突起部(6)の厚みが、1.0〜5.0mmであり、前記突起部(6)の高さが、筒状壁(3)の長さ方向の全長の5〜100%であり、かつ、前記合成樹脂製の筒状壁(3)に、蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向にスリット(5)が2〜8本設けられており、かつ、前記スリット(5)の幅が、0.1〜5.0mmであり、前記スリット(5)の深さが、スリット(5)が設けられる、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外表面から前記筒状ブッシング(2)の外表面までの最短距離の1/3〜2/3であることを特徴とする鉛蓄電池用蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用蓋に関し、更に詳しくは、蓋に生ずる亀裂の拡大を抑制し得る構造を備えた鉛蓄電池用蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、合成樹脂製の電槽と、この電槽の上部に融着又は接着された、電槽を閉じる合成樹脂製の蓋とを備えている。これらの電槽及び蓋は、通常、ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂等の合成樹脂で作製されている。通常、蓋の上部には端子部が設けられ、この端子部は、鉛又は鉛合金製のブッシングに挿入された、電槽内部から外部へと延在する鉛又は鉛合金製の極柱に備えられている。ここで、鉛又は鉛合金製のブッシングはインサート成形により蓋に設けられ、極柱は電槽外部で該ブッシングに溶接されて保持されている。また、このブッシングは、そのほぼ下半分(ブッシング基部)が、蓋と一体的に形成されている合成樹脂製の筒状壁の内面に接するようにしてインサート成形されている。しかし、ブッシングの金属材料と、該筒状壁の合成樹脂材料との間には、実質的に接着力が生ずることはない。そのため、ブッシング本体のほぼ下半分の外周に、環状凹凸部を上下方向に複数段に形成し、一方、上記の合成樹脂製の筒状壁には、それに対応する環状凹凸部を形成して、両者を噛み合わせて密着させることにより、電槽内の電解液が、ブッシングと合成樹脂製の筒状壁との間に侵入することを防止している(例えば、特許文献1の図1〜3参照)。
【0003】
このように、従来の鉛蓄電池では、ブッシング本体のほぼ下半分(ブッシング基部)の外周と、蓋と一体的に形成されている合成樹脂製の筒状壁との間に、上記のように種々の構造を施し、両者の噛み合わせを工夫して、両者の密着性を高めている。しかし、ブッシングと合成樹脂製の筒状壁とは完全に密着するわけではなく、その境界面には微小な隙間が存在する。従って、電池の使用時間の経過に伴って、上記の隙間を通して、電槽内の電解液が這い上がりブッシングを腐食させ、そして、それによりブッシングが膨張してしまう。これにより、ブッシングと合成樹脂製の筒状壁との境界面に更に隙間を生じさせる。この繰り返しにより、ブッシングの外周のほぼ全面に腐食層が形成され、更には、その体積膨張によりブッシングを取り巻く合成樹脂に亀裂が入り、その後も腐食層が大きくなるにつれて亀裂が拡大し、遂には、該亀裂が蓋の外面(表面)にまで到達するという現象が生ずる。蓋の外面にまで亀裂が到達すると電池全体の気密性が保てなくなり、電解液の消失及び漏れ、極板の劣化を促進するおそれがあった。
【0004】
上記問題を解決するために、電池全体の気密性を高めるべく、電極を保持する筒状のブッシング本体の外周に周方向に延びる複数の環状突起を一体に備え、これら環状突起が樹脂製の電池蓋にインサートされる鉛蓄電池用のブッシングの製造方法において、鋳型に液状の金属を流し込んで、前記ブッシング本体及び前記複数の環状突起を一体に鋳造する第1工程と、少なくとも一の前記環状突起を他の前記環状突起に向けて塑性変形させる第2工程とを備えることを特徴とするブッシングの製造方法が提案されている(特許文献2)。また、外周面に環状突起が複数段に形成され、その互いに隣り合う環状突起間の環状溝内に回転防止用のリブが形成され、前記環状突起の形成部が鉛蓄電池の電槽蓋の樹脂材料内にインサートされる鉛蓄電池用のブッシングにおいて、前記環状突起に凹部が形成されている鉛蓄電池用のブッシングが提案されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献2及び特許文献3において提案されたブッシングは電解液の這い上がりを抑制するものであり、上記のようにブッシングと合成樹脂製の筒状壁とは完全に密着するわけではなく、その境界面には微小な隙間が存在し、従って、ブッシングを腐食及び膨張させ、ブッシングを取り巻く合成樹脂に亀裂が入る可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−177089号公報
【特許文献2】特開2011−228258号公報
【特許文献3】特開2009−259541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、鉛又は鉛合金から成るブッシングに発生した腐食層が膨張し、それを取り囲む合成樹脂製の筒状壁に亀裂が入ったとしても、該亀裂の拡大を防止して、亀裂が蓋の外面(表面)まで到達することを効果的に抑制し得る鉛蓄電池用蓋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々の検討を試みた。まず、蓋と一体的に形成されている合成樹脂製の筒状壁に、亀裂がどのように発生して拡大し、そして、該亀裂がどのようにして蓋に到達して蓋を引き裂いてしまうのかを調査した。その結果、図8に示すように、筒状壁(3)の亀裂(A)は、蓋の内外面(裏表面)に対して略垂直な方向に発生し、かつ、筒状壁(3)の円周方向に左右に引き裂かれるようにして拡大していき、蓋の内面(裏面)付近にまで到達すると、蓋の内外面に対して水平方向に蓋を引き裂くようにして蓋に亀裂が拡大していくことを見出した。そこで、本発明者は、更なる検討を重ねた結果、このように亀裂が拡大していく方向に対して略垂直な方向に、蓋の内面(裏面)に、内側(電槽側)に突出する突起部を設ければ、これにより亀裂の拡大を効果的に抑制し得ることを見出した。また、蓋の外面(表面)上に端子封孔部域を形成する、極柱に対して略同心円状に設けられた環状リブの位置より、極柱側の蓋内面に前記突起部を設ければ、端子封孔部域は、そこに充填された接着剤、例えば、エポキシ樹脂系接着剤等により強固に接着固定されていることから、突起部が、端子封孔部域に充填された該接着剤と相互作用して、より一層亀裂の拡大を抑制し得ることを見出した。
【0008】
更に、本発明者は、合成樹脂製の筒状壁に、蓋の内外面(裏表面)に対して略垂直な方向にスリットを入れれば、該スリットの部分から優先的に亀裂を発生せしめ得ることを見出した。そして、合成樹脂製の筒状壁に、該スリットを2本以上入れておけば、各スリットから夫々亀裂が発生して、亀裂の本数を複数にすることができ、結果としてブッシングの腐食による膨張の応力を分散することができ、それにより各々の亀裂の成長を著しく抑制し得ることができて、亀裂が蓋の外面まで到達することを効果的に抑制し得ることを見出したのである。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)合成樹脂製の蓋(1)の一部分に、該蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向に、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)、及び、前記筒状ブッシング(2)に接して該ブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)を備え、並びに、前記合成樹脂製の蓋(1)の外面に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に設けられた環状リブ(7)により仕切られた端子封孔部域(4)を備え、かつ、前記ブッシング(2)の開口部に極柱が挿通されて使用される鉛蓄電池用蓋において、合成樹脂製の突起部(6)が、前記合成樹脂製の蓋(1)の内面であって、かつ、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外側に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状又は円弧状に備えられており、かつ、前記突起部(6)の厚みが、1.0〜5.0mmであり、前記突起部(6)の高さが、筒状壁(3)の長さ方向の全長の5〜100%であることを特徴とする鉛蓄電池用蓋である。
【0010】
好ましい態様として、
(2)前記合成樹脂製の突起部(6)が、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状に備えられている、上記(1)記載の鉛蓄電池用蓋、
(3)前記合成樹脂製の突起部(6)が、前記環状リブ(7)より、前記極柱側に備えられている、上記(1)又は(2)記載の鉛蓄電池用蓋、
(4)合成樹脂製の隆起部(8)が、前記合成樹脂製の蓋(1)の内面であって、かつ、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外側に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状又は円弧状に備えられており、かつ、前記隆起部(8)上に、前記合成樹脂製の突起部(6)が備えられている、上記(1)〜(3)記載の鉛蓄電池用蓋、
(5)前記筒状壁(3)、環状リブ(7)、突起部(6)、及び、任意的に隆起部(8)が、蓋(1)全体を成型する際に、一緒に同一の合成樹脂により一体的に成形されてなる、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用蓋、
(6)前記鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)が、合成樹脂製の筒状壁(3)の内面にインサート成形されてなる、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用蓋
を挙げることができる。
【0011】
また、本発明は、
(7)合成樹脂製の蓋(1)の一部分に、該蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向に、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)、及び、前記筒状ブッシング(2)に接して該ブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)を備え、並びに、前記合成樹脂製の蓋(1)の外面に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に設けられた環状リブ(7)により仕切られた端子封孔部域(4)を備え、かつ、前記ブッシング(2)の開口部に極柱が挿通されて使用される鉛蓄電池用蓋において、前記合成樹脂製の筒状壁(3)に、蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向にスリット(5)が2〜8本設けられており、かつ、前記スリット(5)の幅が、0.1〜5.0mmであり、前記スリット(5)の深さが、スリット(5)が設けられる、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外表面から前記筒状ブッシング(2)の外表面までの最短距離の1/3〜2/3であることを特徴とする鉛蓄電池用蓋である。
【0012】
好ましい態様として、
)前記スリット(5)が、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の、蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向の略全長に亘って設けられている、上記(7)記載の鉛蓄電池用蓋
を挙げることができる。
【0013】
加えて、本発明は、
)合成樹脂製の蓋(1)の一部分に、該蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向に、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)、及び、前記筒状ブッシング(2)に接して該ブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)を備え、並びに、前記合成樹脂製の蓋(1)の外面に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に設けられた環状リブ(7)により仕切られた端子封孔部域(4)を備え、かつ、前記ブッシング(2)の開口部に極柱が挿通されて使用される鉛蓄電池用蓋において、合成樹脂製の突起部(6)が、前記合成樹脂製の蓋(1)の内面であって、かつ、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外側に、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状又は円弧状に備えられており、かつ、前記突起部(6)の厚みが、1.0〜5.0mmであり、前記突起部(6)の高さが、筒状壁(3)の長さ方向の全長の5〜100%であり、かつ、前記合成樹脂製の筒状壁(3)に、蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向にスリット(5)が2〜8本設けられており、かつ、前記スリット(5)の幅が、0.1〜5.0mmであり、前記スリット(5)の深さが、スリット(5)が設けられる、前記合成樹脂製の筒状壁(3)の外表面から前記筒状ブッシング(2)の外表面までの最短距離の1/3〜2/3であることを特徴とする鉛蓄電池用蓋である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉛蓄電池用蓋は、蓋(1)の内面であって、かつ、筒状壁(3)の外側に、合成樹脂製の突起部(6)を備えている。従って、ブッシング(2)に発生した腐食層が膨張し、それを取り囲む筒状壁(3)に亀裂が入ったとしても、該亀裂の拡大を抑制して、亀裂が蓋(1)の外面(表面)まで到達することを効果的に抑制し得る。また、突起部(6)を、蓋(1)の外面に設けられた端子封孔部域(4)を仕切る環状リブ(7)より極柱側に設ければ、より一層、亀裂の拡大を抑制し得る。更に、合成樹脂製の筒状壁(3)に、蓋の内外面に略垂直な方向にスリットを入れれば、ブッシング(2)の腐食による膨張の応力を分散することができて、それにより1本の亀裂の成長を抑制し得て、亀裂が蓋(1)の外面(表面)にまで到達することを更に効果的に抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の鉛蓄電池用蓋の概略を示した要部断面図である。
図2図2は、本発明の鉛蓄電池用蓋の内面(裏面)の概略を示した要部斜視図である。
図3図3は、本発明の鉛蓄電池用蓋の外面(表面)の概略を示した平面図である。
図4図4は、本発明の鉛蓄電池用蓋の外面(表面)の概略を示した斜視図である。
図5図5は、本発明の鉛蓄電池用蓋の内面(裏面)の概略を示した平面図である。
図6図6は、本発明の鉛蓄電池用蓋の内面(裏面)の概略を示した斜視図である。
図7図7は、本発明の鉛蓄電池用蓋の他の実施態様の概略を示した要部断面図である。
図8図8は、従来の鉛蓄電池用蓋に発生した亀裂を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の鉛蓄電池用蓋の一実施態様の概略を図1〜6に示した。以下、これらの図を参照して本発明の鉛蓄電池用蓋を説明する。本発明の鉛蓄電池用蓋(1)は、合成樹脂により形成されている。合成樹脂としては、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂等が挙げられる。図1は、本発明の鉛蓄電池用蓋の一実施態様の概略を示した要部断面図である。図1に示されているように、該鉛蓄電池用蓋(1)の一部分には、該蓋(1)の内外面(裏表面)(1b、1a)に対して略垂直な方向に、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)、及び、前記筒状ブッシング(2)に接して該ブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)が備えられている。鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)は、該合成樹脂製の筒状壁(3)の内面に接するようにしてインサート成形することにより設けられている。また、筒状ブッシング(2)には、極柱を挿通するために開口部(2a)が設けられている。ここで、鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)と合成樹脂製の筒状壁(3)とは、好ましくは、図1に示されているように、筒状ブッシング(2)の下部外周に、環状凹凸部を上下方向に複数段に形成せしめ、筒状壁(3)には、それに対応する環状凹凸部を形成して、両者を噛み合わせて密着させるようにして構成されている。そして、このようにして密着させることにより、電槽内の電解液が、ブッシング(2)と合成樹脂製の筒状壁(3)との間に侵入することを防止している。
【0017】
一方、合成樹脂製の蓋(1)の外面(表面)(1a)には、筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状リブ(7)が設けられており、環状リブ(7)と、筒状ブッシング(2)の開口部に挿通される極柱(図示されていない)との間に端子封孔部域(4)が形成されている。端子封孔部域(4)には、プライマー塗布やフレーム処理後に接着剤、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤等が充填され固化されて、極柱(端子部)と環状リブ(7)との間において封口される。これにより、端子封孔部域(4)が接着剤により強固に固定されて鉛蓄電池が密閉される。
【0018】
ここで、該合成樹脂製の筒状壁(3)及び環状リブ(7)は、通常、該蓋(1)全体を成形する際に、一緒に、同一の合成樹脂材料により一体的に成形される。該筒状ブッシング(2)の開口部(2a)には、電槽内の極板群に接続された極柱(図示されていない)が挿通され、そして、極柱の外周面と筒状ブッシング(2)の上端近傍とが溶接より接合されて端子部が形成される。該鉛蓄電池用蓋(1)には、図3〜6に示されているように、上記の鉛又は鉛合金から成る筒状ブッシング(2)を伴う構造が、正負極の極柱のために通常2箇所に設けられている。
【0019】
本発明の鉛蓄電池用蓋は、蓋(1)の内面(裏面)(1b)であって、かつ、合成樹脂製の筒状壁(3)の外側に、電槽内部方向に突出した合成樹脂製の突起部(6)を備える。該合成樹脂製の突起部(6)は、筒状壁(3)の外側に、好ましくは、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状又は円弧状、より好ましくは環状に備えられている。また、該突起部(6)は、筒状壁(3)の外側に、好ましくは、筒状壁(3)から離れて備えられている。該突起部(6)を、前記筒状ブッシング(2)の中心線を含む平面で垂直に切断したときの断面形状は特に限定されるものではないが、三角形又は四角形であることが好ましい。該突起部(6)を設けることにより、筒状壁(3)に発生した亀裂が蓋(1)に拡大していくことを効果的に抑制し得る。突起部(6)の厚みは、好ましくは1.0〜5.0mmであり、より好ましくは2.0〜4.0mmである。また、突起部(6)の高さは、好ましくは筒状壁(3)の長さ方向の全長の5〜100%であり、より好ましくは50〜100%である。突起部の厚み及び/又は高さが上記上限を超えると、亀裂拡大の抑制効果が飽和し、一方、上記下限未満では、亀裂拡大の抑制効果が殆どない。ここで、突起部(6)の厚みは、その断面形状が三角形である場合のように厚みが一定でないときは、底辺部分、即ち、突起部の付け根の部分の厚みを言う。
【0020】
本発明の鉛蓄電池用蓋は、蓋(1)の内面(裏面)(1b)であって、かつ、合成樹脂製の筒状壁(3)の外側に、電槽内部方向に突出した合成樹脂製の隆起部(8)を更に備えることができる。該合成樹脂製の隆起部(8)は、筒状壁(3)の外側に筒状壁(3)に接して又は筒状壁(3)から離れて、前記筒状ブッシング(2)に対して略同心円状に環状又は円弧状、好ましくは環状に備えられている。図1に示すように、隆起部(8)は筒状壁(3)と一体化されており、かつ、蓋(1)の外面に存在する環状リブ(7)と一体化されて、これらが一緒になって端子封孔部域(4)を構成している。隆起部(8)を備える態様(図1)においては、突起部(6)は、隆起部(8)上に、電槽内部方向に突出するようにして備えられる。隆起部(8)上に突起部(6)を設けることにより、筒状壁(3)に発生した亀裂が蓋に拡大していくことを効果的に抑制し得る。また、突起部(6)は、蓋(1)の外面に存在する環状リブ(7)の位置より、極柱側、即ち、筒状壁(3)に近い位置に備えられていることが好ましい。これにより、突起部(6)が、端子封孔部域(4)に充填された接着剤との相互作用により、より一層亀裂の拡大を抑制し得る。ここで、環状の隆起部(8)及び突起部(6)は、通常、該蓋(1)全体を成形する際に、筒状壁(3)及び環状リブ(7)と一緒に、同一の合成樹脂材料により一体的に成形される。
【0021】
本発明の鉛蓄電池用蓋は、蓋(1)に備えられている合成樹脂製の筒状壁(3)にスリット(5)が設けられている。前記筒状壁(3)にスリット(5)を設けることにより、筒状壁に亀裂が入ったとしても、該亀裂の拡大を防止して、亀裂が蓋の外面(表面)(1a)まで到達することを効果的に抑制することができる。該スリット(5)は、蓋の内外面(裏表面)(1b、1a)に略垂直な方向に、2本以上、好ましくは2〜8本筒状壁(3)の表面に設けられている。スリット(5)は、蓋(1)の内外面に対して略垂直な方向における筒状壁(3)の全長の5%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは略全長に亘って設けられている。スリット(5)の幅は、好ましくは0.1〜5.0mmであり、より好ましくは0.5〜2.0mmである。また、スリット(5)の深さは、スリット(5)が設けられる、合成樹脂製の筒状壁(3)の外表面から筒状ブッシング(2)の外表面までの最短距離の1/3〜2/3であることが好ましく、1/3〜1/2であることがより好ましい。ここで、筒状壁(3)と筒状ブッシング(2)とが、上記のように、夫々の環状凹凸部により互いに噛み合っているときは、上記の最短距離は、合成樹脂製の筒状壁(3)の外表面から筒状ブッシング(2)の環状凸部の外表面までの最短距離となる。スリット(5)の幅及び/又は深さが上記上限を超えると、筒状壁(3)での亀裂の発生を却って助長することがあり、一方、上記下限未満では、亀裂がスリット(5)から発生し得ないことがある。スリット(5)の幅及び深さを上記範囲内にすることにより、筒状壁(3)上での亀裂の発生を極力抑えながら、かつ、亀裂をスリット(5)部分から適確に発生させかつその著しい成長を抑制することができる。該スリット(5)は、通常、成形型にスリット部を設けておくことにより成形する。
【0022】
以下の実施例において、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
図1〜6に記載されている鉛蓄電池用蓋と同様の蓋(1)を作製した。鉛から成る筒状ブッシング(2)をPP(ポリプロピレン)樹脂を使用してインサート成形して、蓋(1)とそれに備えられている筒状壁(3)、環状の隆起部(8)、環状の突起部(6)及び環状リブ(7)を一体的に成形して、本発明の鉛蓄電池用蓋(1)を作製した。該鉛蓄電池用蓋(1)の各寸法は下記の通りである。突起部(6)を、前記筒状ブッシング(2)の中心線を含む平面で垂直に切断したときの断面形状は三角形であった。
【0024】
蓋の寸法;縦(l):300mm、横(w):170mm、高さ(h):50mm(図4参照)
筒状ブッシング(2)の内径(開口部直径)(a):42mm、筒状ブッシング(2)の最大外径(d):52mm
筒状壁(3)の外径(b):58mm、筒状壁(3)の長さ方向の全長(c):25mm
突起部(6)の寸法;極柱の中心からの先端部までの距離(e):32mm、高さ(f):10mm(筒状壁(3)の長さ方向の全長(c)の40%)、厚み(付け根部分)(g):2mm
隆起部(8)の寸法;極柱の中心から端部までの距離(i):37mm、蓋内面から突出した高さ(j):5mm
環状リブ(7)の寸法;極柱の中心から端部までの距離(i):37mm、蓋外面から突出した高さ(m):4mm、厚み(n):2mm
【0025】
次いで、該蓋(1)に備えられた、2箇所の筒状ブッシング(2)の開口部(2a)に、夫々、正極及び負極の極柱を挿通して、電槽に固定しかつ各極柱の外周面と各筒状ブッシング(2)の上端近傍とを溶接した。次いで、該蓋(1)の外面(1a)に設けられている各端子封孔部域(4)にプライマー液を塗布した後、エポキシ樹脂系接着剤を充填して固化し、極柱(端子部)と環状リブ(7)との間を封口して鉛蓄電池を作製した。
【0026】
(実施例2)
突起部の高さ(f)を25mm(筒状壁(3)の長さ方向の全長(c)の100%)とした以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。
【0027】
(実施例3)
蓋(1)と一体的に備えられている筒状壁(3)の外面の相対向する位置にスリットを夫々1本、合計2本設けた以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。ここで、前記スリットは、筒状壁(3)の長さ方向の全長(25mm)に亘って、幅1.0mm、深さ1.0mmで設けた。また、筒状壁(3)の長さ方向に垂直な面で切断したときのスリットの断面形状は略二等辺三角形であった。
【0028】
(実施例4)
環状の突起部(6)を設けず、蓋(1)と一体的に備えられている筒状壁(3)の外面にスリットを2本設けた以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。スリットの位置、並びに、寸法及び形状は、実施例3と同一とした。
【0029】
(実施例5)
環状の突起部(6)を設けず、蓋(1)と一体的に備えられている筒状壁(3)の外面にスリットを2本設けた以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。スリットは、筒状壁(3)の最下部から上部(エポキシ樹脂系接着剤が充填された面を上部とする)に向かい長さ方向の半分(12.5mm)に亘って設けた以外は、スリットの位置、並びに、その他の寸法及び形状は、実施例3と同一とした。
【0030】
(実施例6)
環状の突起部(6)を設けず、蓋(1)と一体的に備えられている筒状壁(3)の外面にスリットを2本設けた以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。スリットの幅を5.0mmとし、かつ、深さを2.0mmとした以外は、スリットの位置、並びに、その他の寸法及び形状は、実施例3と同一とした。
【0031】
(実施例7)
環状の突起部(6)を設けず、蓋(1)と一体的に備えられている筒状壁(3)の外面にスリットを8本設けた以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。スリットの寸法及び形状は、実施例3と同一とした。また、スリットの位置は、筒状壁(3)の外面の相対向する位置に1本ずつ4組の合計8本を、各スリットの間隔が45度になるように設けた。
【0032】
(比較例1)
環状の突起部(6)を設けず、蓋(1)と一体的に備えられている筒状壁(3)の外面にスリットを1本設けた以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。スリットの寸法及び形状は、実施例3と同一とした。
【0033】
(比較例2)
環状の突起部(6)を設けなかったこと以外は、実施例1と同一にして鉛蓄電池を作製した。
【0034】
上記のようにして作製した実施例1〜6及び比較例1〜2の鉛蓄電池を使用して、夫々の蓋の耐久性試験を実施した。
【0035】
耐久性試験は、放電を放電電流200Aで3時間行った後、充電を充電電流200Aでの定電圧充電を実施した。前記定電圧値は2.45Vとし、充電時間は8時間とした。この充放電を1サイクルとし、3,000サイクル実施した後、夫々の鉛蓄電池を解体し、蓋の裏面のブッシング(2)を略同心円状に取り囲む合成樹脂製の筒状壁(3)の亀裂の程度を目視によって確認した。前記亀裂の程度は、亀裂が拡大し蓋内面(蓋裏面)にまで達しているものをB、亀裂が蓋内面にまで達していないものをGとした。また、亀裂の本数も併せて目視により確認した。
【0036】
表1に、実施例1〜7及び比較例1〜2の鉛蓄電池について、突起部の有無、スリットの有無、スリット幅、スリット深さ、亀裂の程度、亀裂の本数を夫々示した。
【0037】
【表1】
*:表1において、突起部の高さの単位%は、筒状壁(3)の長さ方向の全長(25.0mm)を100%としたとき、突起部の高さを筒状壁(3)の長さ方向の全長に対する%で示したものである。
【0038】
耐久性試験の結果、実施例1〜7において亀裂は認められたが、その亀裂はいずれも僅かであり、蓋外面(蓋表面)にまで到達する危険性は全くなかった。これは、本発明の鉛蓄電池用蓋に設けられた突起部により、亀裂の拡大が抑制されたため、及び、本発明の鉛蓄電池用蓋の筒状壁に設けられたスリットにより、1本の亀裂にかかる応力が分散されて、亀裂の拡大が抑制されたためであると考えられる。実施例1及び2は、突起部(6)の高さを変えたものである。実施例1では、亀裂が突起部の頂部にまで達していたのに対して、実施例1より突起部(6)を高くした実施例2では、亀裂は突起部の頂部にまで達していなかった。このように、突起部の高さを高くすると亀裂の拡大をより抑制し得ることが分かった。実施例3は、実施例1にはないスリット(5)を筒状壁(3)に2本設けたものである。実施例1では亀裂が1本であったのに対して、実施例3では亀裂が2本となった。しかし、亀裂1本当たりの亀裂の程度は大幅に制限されていた。このように、スリット(5)を設けると亀裂の拡大を大幅に抑制し得ることが分かった。実施例4は、実施例3には備えられている突起部(6)を備えていないものである。実施例3及び4のいずれにおいても、生じた亀裂は全てスリット(5)で抑制されており、突起部(6)の存在の有無による亀裂抑制の効果の差異を確認し得るに至るものではなかった。しかし、スリット(5)に加え突起部(6)を設ければ、スリット(5)と突起部(6)との少なくとも総和以上の効果により、より一層亀裂の拡大を抑制し得ると推定される。実施例5は、実施例4に対してスリット(5)の長さを短くしたものである。発生した亀裂の程度に差異は見られなかった。このことから、実施例4及び5におけるスリット(5)の長さの相違においては、亀裂の拡大の抑制に大きな変化がないことが分かった。実施例6は、実施例4に対してスリット(5)の幅及び深さを大きくしたものである。発生した亀裂の程度に差異は見られなかった。このことから、実施例4及び6におけるスリット(5)の幅及び深さの相違においては、亀裂の拡大の抑制に大きな変化がないことが分かった。実施例7は、実施例4に対してスリット(5)の本数を4倍の8本にしたものである。実施例7では、発生した亀裂の本数は4本と多かったが、1本ごとの亀裂の程度は著しく小さいものであった。このように、スリットの本数を増やすと、亀裂の本数が増加して応力が分散され、それにより亀裂の拡大がより一層抑制されることが分かった。それ故、亀裂が蓋外面に到達する可能性は著しく抑制されると考えられる。
【0039】
一方、比較例1及び2においては蓋に大きな亀裂が生じており、その亀裂はいずれも蓋外面(蓋表面)にまで達するようなレベルであった。特に、スリットを1本とした比較例1では、亀裂は著しく発達しており、該亀裂はスリット部分から発生し拡大したものと考えられる。このようにスリットを1本のみ設けたときは、スリットはむしろ亀裂を誘発する原因となることが分かった。これに対して、実施例3〜7のように、スリットを2本以上設けたときには、筒状壁に亀裂が発生しても、スリット1本に応力が集中することなく、亀裂の拡大を抑制できることが分かった。
【0040】
実施例1〜7においては、蓋に環状の隆起部(8)を設けた鉛蓄電池用蓋の耐久性試験の例を示したが、図7に示すような環状の隆起部(8)を有しない鉛蓄電池用蓋においても同様の結果が得られた。また、実施例3〜7においては、スリットを相対向する位置に設けた鉛蓄電池用蓋の耐久性試験の例を示したが、スリットの位置はこれに限定されることなく、合成樹脂製の筒状壁に、蓋の内外面に対して略垂直な方向にスリットを2本以上設けることで、同様の効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の鉛蓄電池用蓋は、発生した亀裂が蓋の外面(表面)まで到達することを効果的に抑制し得る故に、従来の鉛蓄電池用蓋に代わって、鉛蓄電池用蓋として広く使用されることが大いに期待される。
【符号の説明】
【0042】
1 鉛蓄電池用蓋
1a 蓋外面(蓋表面)
1b 蓋内面(蓋裏面)
2 筒状ブッシング
2a 開口部
3 筒状壁
4 端子封孔部域
5 スリット
6 突起部
7 環状リブ
8 環状の隆起部
A 亀裂
l 蓋の縦方向の寸法
w 蓋の横方向の寸法
h 蓋の高さ
a 筒状ブッシングの内径(開口部直径)
d 筒状ブッシングの最大外径
b 筒状壁の外径
c 筒状壁の長さ方向の全長
e 極柱の中心からの突起部の先端部までの距離
f 突起部の高さ
g 突起部の厚み
i 極柱の中心から隆起部の端部までの距離、及び、極柱の中心から環状リブの端部までの距離
j 蓋内面から突出した隆起部の高さ
m 蓋外面から突出した環状リブの高さ
n 環状リブの厚さ
図1
図7
図8
図2
図3
図4
図5
図6