(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の太陽電池セル(11)を直列接続してなり、負荷に電力を供給する太陽電池セルストリング(10S)を、1つ又は所定複数の前記太陽電池セル(11)からなる複数のクラスタ(12)に等分し、それらクラスタ(12)の状態を監視するクラスタ状態監視装置(100)において、
各前記クラスタ(12)の端末間の電圧をクラスタ電圧として検出するクラスタ電圧検出手段(32A,32B,33,34,35)と、
前記クラスタ電圧が、予め設定された単位時間当りの基準降圧量(ΔK)を超えて低下した特別降圧を検出する特別降圧検出手段(34,S13,S14)と、
前記特別降圧の検出頻度が予め設定された基準頻度を超えた前記クラスタ(12)を異常な前記クラスタ(12)と判定する異常判定手段(93,S32)とを備えたことを特徴とするクラスタ状態監視装置(100)。
正常であれば略同一の電圧を出力する複数の太陽電池モジュール(10)が直列接続されると共に、それら各太陽電池モジュール(10)毎の前記複数の太陽電池セル(11)毎に前記クラスタ(12)が構成され、
各前記太陽電池モジュール(10)毎に、前記クラスタ電圧検出手段(32A,32B,33,34,35)と前記特別降圧検出手段(34,S13,S14)とを含みかつその特別降圧検出手段(34,S13,S14)が前記特別降圧を検出する度に特別検出信号を無線送信するモジュール端末(30)が設けられると共に、
前記異常判定手段(93,S32)を有しかつ複数の前記モジュール端末(30)から前記特別検出信号を無線受信し、前記特別検出信号の受信頻度を前記特別降圧の検出頻度として前記異常判定手段(93,S32)にて前記異常の判定を行うデータ判定端末(90)とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のクラスタ状態監視装置(100)。
前記データ判定端末(90)には、異常と判定された前記クラスタ(12)を含む前記太陽電池モジュール(10)を特定して報知する異常モジュール報知手段(93,96,S33)が備えられたことを特徴とする請求項2又は3に記載のクラスタ状態監視装置(100)。
異常モジュール報知手段(93,96,S33)は、前記複数の太陽電池モジュール(10)の配置を示したモジュール配置図(Z1)を表示する表示手段(96)を備えて、前記モジュール配置図(Z1)のうち前記異常と判定された前記クラスタ(12)を含む前記太陽電池モジュール(10)を他の太陽電池モジュール(10)と区別して前記表示手段(96)に表示することを特徴とする請求項4に記載のクラスタ状態監視装置(100)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したバイパスダイオードは、クラスタが発電不能な状態になるまではオンしないので、従来のクラスタ状態監視装置では、劣化により太陽電池セルの内部抵抗が増加して発電量が低下するような異常を検出することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、発電可能な状態のクラスタの劣化を検出することが可能なクラスタ状態監視装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るクラスタ状態監視装置(100)は、複数の太陽電池セル(11)を直列接続してなり、負荷に電力を供給する太陽電池セルストリング(10S)を、1つ又は所定複数の太陽電池セル(11)からなる複数のクラスタ(12)に等分し、それらクラスタ(12)の状態を監視するクラスタ状態監視装置(100)において、各クラスタ(12)の端末間の電圧をクラスタ電圧として検出するクラスタ電圧検出手段(32A,32B,33,34,35)と、クラスタ電圧が、予め設定された単位時間当りの基準降圧量(ΔK)を超えて低下した
特別降圧を検出する
特別降圧検出手段(34,S13,S14)と、
特別降圧の検出頻度が予め設定された基準頻度を超えたクラスタ(12)を異常なクラスタ(12)と判定する異常判定手段(93,S32)とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のクラスタ状態監視装置(100)において、複数のクラスタ(12)を一纏めに固定してなる太陽電池モジュール(10)を複数直列接続して太陽電池セルストリング(10S)が構成され、各太陽電池モジュール(10)毎に、クラスタ電圧検出手段(32A,32B,33,34,35)と
特別降圧検出手段(34,S13,S14)とを含みかつその
特別降圧検出手段(34,S13,S14)が
特別降圧を検出する度に
特別検出信号を無線送信するモジュール端末(30)が設けられると共に、異常判定手段(93,S32)を有しかつ複数のモジュール端末(30)から
特別検出信号を無線受信し、
特別検出信号の受信頻度を
特別降圧の検出頻度として異常判定手段(93,S32)にて異常の判定を行うデータ判定端末(90)とを備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載のクラスタ状態監視装置(100)において、正常であれば略同一の電圧を出力する複数の太陽電池モジュール(10)が直列接続されると共に、それら各太陽電池モジュール(10)毎の複数の太陽電池セル(11)毎にクラスタ(12)が構成され、各太陽電池モジュール(10)毎に、クラスタ電圧検出手段(32A,32B,33,34,35)と
特別降圧検出手段(34,S13,S14)とを含みかつその
特別降圧検出手段(34,S13,S14)が
特別降圧を検出する度に
特別検出信号を無線送信するモジュール端末(30)が設けられると共に、異常判定手段(93,S32)を有しかつ複数のモジュール端末(30)から
特別検出信号を無線受信し、
特別検出信号の受信頻度を
特別降圧の検出頻度として異常判定手段(93,S32)にて異常の判定を行うデータ判定端末(90)とを備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載のクラスタ状態監視装置(100)において、データ判定端末(90)には、異常と判定されたクラスタ(12)を含む太陽電池モジュール(10)を特定して報知する異常モジュール報知手段(93,96,S33)が備えられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のクラスタ状態監視装置(100)において、異常モジュール報知手段(93,96,S33)は、複数の太陽電池モジュール(10)の配置を示したモジュール配置図(Z1)を表示する表示手段(96)を備えて、モジュール配置図(Z1)のうち異常と判定されたクラスタ(12)を含む太陽電池モジュール(10)を他の太陽電池モジュール(10)と区別して表示手段(96)に表示するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のクラスタ状態監視装置(100)では、複数のクラスタ(12)が負荷に直列接続されているので、それら全てのクラスタ(12)に流れる電流は同じである。しかしながら、クラスタ(12)の劣化により内部抵抗に差異が生じると、その内部抵抗による電圧降下により、クラスタ(12)の端末間の電圧であるクラスタ電圧に差異が生じる。そして、クラスタ(12)間の内部抵抗の差異は、太陽電池セルストリング(10S)に接続された負荷としての電機機器のオンにより電流が急増したときに、各クラスタ電圧の単位時間当りの降圧量の差異として現れる。これに対し、本発明のクラスタ状態監視装置(100)では、クラスタ電圧が、単位時間当りの基準降圧量を超えて低下した
特別降圧を検出し、その
特別降圧の検出頻度が基準頻度を超えたクラスタ(12)を異常のクラスタと判定するので、発電可能な状態のクラスタ(12)の劣化を検出することができる。また、全てのクラスタ(12)に共通して流れる電流の急増をトリガとして上記判定を行うので、判定の同時性も保たれる。
【0012】
請求項2及び3の構成によれば、複数の太陽電池モジュール(10)のそれぞれにモジュール端末(30)を設けて、
特別降圧の情報を無線送信するので、困難な信号配線の取り廻し作業を要せずに、複数の太陽電池モジュール(10)における
特別降圧の情報をデータ判定端末(90)に集めることができる。また、各太陽電池モジュール(10)のモジュール端末(30)は、正常時には
特別検出信号を無線送信しないで済むので、モジュール端末(30)における電力消費が抑えられる。
【0013】
請求項4のクラスタ状態監視装置(100)では、異常と判定されたクラスタ(12)を含む太陽電池モジュール(10)を特定して報知するので、メンテナンスが容易になる。その報知の具体例としては、各太陽電池モジュール(10)に識別番号を付しておき、異常と判定されたクラスタ(12)を含む太陽電池モジュール(10)の識別番号を特定して報知する構成としてもよいし、請求項5の発明のように、モジュール配置図(Z1)のうち異常と判定されたクラスタ(12)を含む太陽電池モジュール(10)を他の太陽電池モジュール(10)と区別して表示する構成としてもよい。請求項5の構成によれば、異常な太陽電池モジュール(10)の場所を容易に把握することができ、メンテナンス作業の効率が向上する。なお、異常な太陽電池モジュール(10)の識別番号を報知する構成とした場合には、例えば、識別番号と太陽電池モジュール(10)の配置との対応図を見て、異常な太陽電池モジュール(10)の場所を把握すればよい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を
図1〜
図9に基づいて説明する。
図1には、住居の屋根の上に設置された太陽電池モジュール10群が示されている。各太陽電池モジュール10は、
図2(A)に示すように、例えば複数の太陽電池セル11を縦横に2m×n個(例えば、mは「3」、nは「8」)のマトリクス状に配置してセル支持部材14に固定した構造になっている。それら2m×n個の太陽電池セル11は、
図2(B)に示すようにセル支持部材14に備えた正負のモジュール出力電極P1,P2の間に直列接続されている。
【0016】
太陽電池モジュール10が有する2m×n個の太陽電池セル11は、2m個(本実施形態では、16個)ずつ太陽電池セル11が連続してなるクラスタ12にグループ分けされている。換言すれば、太陽電池モジュール10は、同一構造のn個(本実施形態では、例えば3個)のクラスタ12を直列接続した構造になっている。
【0017】
各クラスタ12の両端末間には、バイパスダイオード13が各クラスタ12から逆バイアス電圧を受けるように接続され、クラスタ12が正常に発電を行っている間は、バイパスダイオード13がオフし、クラスタ12が発電不能になった場合に、バイパスダイオード13がオンするようになっている。
【0018】
各太陽電池モジュール10のセル支持部材14には、各クラスタ12の両端末間の電圧を検出するための第1〜第4の検出電極A1〜A4が備えられている。具体的には、第1の検出電極A1は、太陽電池モジュール10のうち高電位側のクラスタ12の正極に接続され、第2の検出電極A2は、高電位側のクラスタ12の負極と中央のクラスタ12の正極とに共通接続され、第3の検出電極A3は、中央のクラスタ12の負極と低電位側のクラスタ12の正極とに共通接続され、さらに、第4の検出電極A4は、低電位側のクラスタ12の負極に接続されている。
【0019】
図3に示すように、上記した複数の太陽電池モジュール10は、同じ複数個(例えば、6つ)ずつ直列接続されて複数のモジュールストリング10Sを構成している。また、それら複数のモジュールストリング10Sがパワーコンディショナー21に備えた1対の統括電極P3,P4の間に複数並列接続されている。そして、これら太陽電池モジュール10群とパワーコンディショナー21とから電源システム15が構成されている。
【0020】
なお、モジュールストリング10Sに含まれている全ての太陽電池セル11は、統括電極P3,P4を直列接続されて本発明の「太陽電池セルストリング」になっている。即ち、本実施形態では、モジュールストリング10Sに、本発明の「太陽電池セルストリング」が含まれた構成になっている。
【0021】
パワーコンディショナー21は、太陽電池モジュール10群が取り付けられた屋根の近く(例えば、屋根上)に設置され(
図1参照)、モジュールストリング10S群から直流電力を受電するインバータ及びDC/DCコンバータを含む電力変換回路22と、電力変換回路22のDC/DCコンバータ等から受電して作動する電力制御回路24とを備えている。そして、電力制御回路24が、電力変換回路22のインバータを制御してモジュールストリング10S群の直流出力を交流出力に変換する。また、電力変換回路22のインバータの出力は、出力先切替回路25を介して住居内の家電製品等の負荷(以下、「家電負荷」という)及び商用電源に接続されるか、それらの何れにも接続されない状態とに切り替えられる。なお、電力変換回路22のインバータが出力する電力のうち家電負荷に給電してもなお余った余剰電力は、商用電源の給電元である電力会社が買電するようになっている。
【0022】
図1に示すように、各太陽電池モジュール10の裏面には、それぞれモジュール端末30が取り付けられている。
図4に示すように、モジュール端末30は、第1と第2のマルチプレクサ32A,32Bとマイクロコントローラ34(以下、「MCU34」という)と差動増幅回路33とA/Dコンバータ35とROM/RAM38と無線送信回路36及び無線受信回路37とアイソレート電源31とを有している。第1と第2のマルチプレクサ32A,32Bは、それぞれ複数の入力端末と1つの出力端末とを備えていて、選択された任意の1つの入力端末が出力端末に接続されるようになっている。そして、各太陽電池モジュール10の第1〜第4の検出電極A1〜A4に接続されたラインがそれぞれ分岐し、それらの一方の分岐ライン群が第1マルチプレクサ32Aの入力端末群に接続される一方、他方の分岐ライン群が第2マルチプレクサ32Bの入力端末群に接続されている。また、第1及び第2のマルチプレクサ32A,32Bの出力端子は、差動増幅回路33の反転入力端子と非反転入力端子に接続されている。
【0023】
第1と第2のマルチプレクサ32A,32Bの制御用端子には、MCU34が接続されている。また、MCU34の内蔵メモリには、そのMCU34を含んだモジュール端末30が取り付けられている各太陽電池モジュール10に固有の識別番号及び送信前待機時間と、
特別降圧判定プログラムPG1等とが記憶されている。そして、MCU34は、所定周期で後に詳説する
特別降圧判定プログラムPG1(
図6参照)を割り込み実行して第1及び第2のマルチプレクサ32A,32Bを、順次、切り替え、各クラスタ12の出力電圧(以下、「クラスタ電圧」という)を、差動増幅回路33及びA/Dコンバータ35を通して順番に取り込む。
【0024】
アイソレート電源31は、トランス50や、同様の作用をする圧電トランスを備えていて、そのトランス50の一次コイル51の一方の端末に太陽電池モジュール10の第1,第2,第3の検出電極A1,A2,A3が並列接続されると共に、それら各並列ラインのそれぞれにダイオード56が備えられている。また、各ダイオード56は、それぞれカソード側が一次コイル51に接続されている。一次コイル51の他方の端末には、スイッチ素子としてのPNP型のトランジスタ57を介して太陽電池モジュール10の第4の検出電極A4が接続され、そのトランジスタ57のベースには、オシレータ41の出力が接続されている。また、オシレータ41の入力には、上記した第1,第2,第3の検出電極A1,A2,A3が、上記したダイオード56を介して共通接続されている。さらに、一次コイル51の両端末間には、コンデンサと抵抗とを直列接続してなるサージ電圧吸収回路58が接続されている。
【0025】
一方、トランス50の二次コイル52側には、整流回路53と共にレギュレータ54が接続されている。そして、レギュレータ54が整流回路53の出力を昇圧又は降圧し、これにより、アイソレート電源31から一定の直流電圧Vccの電力が出力されるようになっている。そして、その電力がモジュール端末30内の差動増幅回路33、A/Dコンバータ35,MCU34等に給電される。このアイソレート電源31を備えたことで、太陽電池モジュール10と差動増幅回路33、A/Dコンバータ35,MCU34等との間がアイソレートされるので、モジュール端末30によるクラスタ電圧の検出において、差動増幅回路33への入力電圧を各クラスタ電圧の基準に合わせることができるため、クラスタ電圧の正確な検出が可能になるし、乾電池を使用した場合のような電池切れの心配もない。また、このアイソレート電源31によれば、その給電元の複数のクラスタ12のうち一部に異常が生じても一定電圧Vccの直流電力を出力することができる。
【0026】
電源システム15の太陽電池モジュール10群全体の複数のモジュール端末30に対して1つのデータ判定端末90が設けられている。そして、これらモジュール端末30群とデータ判定端末90とから本発明に係るクラスタ状態監視装置100(
図1参照)が構成されている。そのデータ判定端末90は、
図5に示すように、無線送信回路91と無線受信回路92とCPU93とRAM94とROM95とモニタ96とLAN97とを備えている。そして、そのモニタ96には、例えば、
図6に示すように、全部の太陽電池モジュール10の配置(
図1参照)を示したモジュール配置
図Z1と、太陽電池モジュール10群とパワーコンディショナー21との間の配線を示したモジュール配線
図Z2とが表示されていて、正常時にはモジュール配置
図Z1及びモジュール配線
図Z2における各太陽電池モジュール10が例えば白色になっている。なお、同図に示したモジュール配置
図Z1及びモジュール配線
図Z2では、「1」〜「12」の各数字を囲んだ各四角形が、それぞれ太陽電池モジュール10に相当し、それら「1」〜「12」が各太陽電池モジュール10に固有の前述の識別番号に相当する。なお、LAN97を介したネットワークにより接続されたPCや携帯端末において、モニタ96に表示されているモジュール配置
図Z1等を表示したり、データ判定端末90にて得られたデータを保存、解析することも可能となっている。また、PCはインターネットを介し、スマートフォンなど無線端末によってもモジュールの状態を知ることができる。
【0027】
図7には、各モジュール端末30のMCU34が所定周期で実行する
特別降圧判定プログラムPG1が示されている。この
特別降圧判定プログラムPG1では、太陽電池モジュール10に含まれる上記n個のクラスタ12に、第1〜第nの順番が付されている。また、これら第1〜第nのクラスタ12を選択するためのカウンタiと、第1〜第nのクラスタ12を出力電圧(以下、「クラスタ電圧」という)の検出結果を格納しておくための第1データ格納部E1(i)(但し、i=1〜n)、第2データ格納部E2(i)(但し、i=1〜n)とがROM/RAM38の記憶領域に設定されている。
【0028】
そして、
特別降圧判定プログラムPG1が実行されると、カウンタiを更新するための最初にカウント処理(S11)が実行される。このカウント処理(S11)は、1回実行される度に、カウンタiが「1」から1ずつインクリメントされ、「n」までカウントされたら「1」に戻って同じカウント動作を繰り返す。即ち、
特別降圧判定プログラムPG1が実行される度に、カウンタiが「1」から「n」までの何れかの整数に順番に変化していく。
【0029】
カウント処理(S11)に次いで、データ取得処理(S12)が行われる。このデータ取得処理(S2)では、MCU34は、カウンタiの値に相当する第iのクラスタ12の正極と負極とを差動増幅回路33の反転入力端子と非反転入力端子に導通接続するように第1及び第2のマルチプレクサ32A,32Bを作動させて、第iのクラスタ12のクラスタ電圧を、差動増幅回路33及びA/Dコンバータ35を通して検出データとして取り込み、第1データ格納部E1(i)に格納する。本実施形態では、このようにしてクラスタ電圧が検出されるので、上記した第1及び第2のマルチプレクサ32A,32B、差動増幅回路33、MCU34及びA/Dコンバータ35が本発明の「クラスタ電圧検出手段」に相当する。
【0030】
次いで、第2データ格納部E2(i)に格納されている検出データ(初期状態では、例えば、「0」)の値から第1データ格納部E1(i)に格納されている前記検出データの値を差し引いた差分を検出変圧量ΔEとして演算し(S13)、検出変圧量ΔEが、予め定められている基準降圧量ΔKより大きいか否かを判別する(S14)。ここで、第2データ格納部E2(i)には、後述するステップ16の処理により、前回、第iのクラスタ12のクラスタ電圧を検出したときの検出データが格納されている。また、同じクラスタ12のクラスタ電圧が検出される周期は、
特別降圧判定プログラムPG1の周期のn倍であるから、検出変圧量ΔEは、単位時間(即ち、
特別降圧判定プログラムPG1の周期のn倍時間)当たりのクラスタ電圧の変圧量として演算される。つまり、これらステップS13,14の処理により、第iのクラスタ12のクラスタ電圧が、単位時間当りの基準降圧量ΔKを超えて低下しか否かが判別されることになる。よって、本実施形態では、これらステップS13,14の処理を行っているときのMCU34が、本発明に係る「
特別降圧検出手段」に相当する。
【0031】
第iのクラスタ12のクラスタ電圧が、単位時間当りの基準降圧量ΔKを超えて低下した場合、即ち、
特別降圧の場合には(S14でYES)、無線送信処理(S15)が実行される。この無線送信処理(S15)では、MCU34は、太陽電池モジュール10の識別番号と共に
特別降圧検出情報を無線送信回路36に無線送信させる。その際、MCU34は、
特別降圧を検出後に太陽電池モジュール10に固有の上記した送信前待機時間の経過を待ってから、無線送信回路36に識別番号及び
特別降圧検出情報を無線送信させる。これにより、複数のモジュール端末30の無線信号が重なり合って送信されることを防いでいる。また、本実施形態では、上記
特別降圧検出情報を含んだ無線信号が本発明に係る「
特別検出信号」に相当する。また、MCU34は、無線送信処理(S15)の終了後に、第1データ格納部E1(i)に格納されている検出データを、第2データ格納部E2(i)に格納してから(S16)、この
特別降圧判定プログラムPG1から抜ける。
【0032】
一方、検出変圧量ΔEが基準降圧量ΔKより大きくない場合には(S14でNO)、無線送信処理(S15)を行うことなく、第1データ格納部E1(i)に格納されている検出データを、第2データ格納部E2(i)に格納して(S16)この
特別降圧判定プログラムPG1から抜ける。
【0033】
図8には、データ判定端末90のROM95に記憶されている監視プログラムPG2が示されている。データ判定端末90のCPU93は、無線受信回路92が無線信号を受信する度に監視プログラムPG2を割り込み実行する。その監視プログラムPG2が実行されると、無線受信回路92が受信した無線信号が、
特別検出信号であるか否かをチェックする(S30)。具体的には、CPU93は、無線受信回路92から受信データを取得し、その受信データが、何れかの太陽電池モジュール10の識別番号と
特別降圧検出情報との両方を含んだ受信データであるか否かをチェックし、受信データに識別番号と
特別降圧検出情報との両方を含まれていなかった場合には、
特別検出信号でないと判断して(S30でNO)、監視プログラムPG2を終了する。
【0034】
受信データに識別番号と
特別降圧検出情報との両方が含まれていた場合には、
特別検出信号であると判断して(S30でYES)、
特別カウント処理(S31)を行う。
特別カウント処理(S31)では、受信データに含まれていた識別番号の
特別検出カウンタをインクリメントする。
【0035】
次いで、
特別カウント処理(S31)でインクリメントされた
特別検出カウンタの値jが、予め定められた基準値pを超えたか否かを判別する(S32)。即ち、
特別検出信号の送信元の太陽電池モジュール10において
特別降圧の検出頻度が基準頻度を超えたか否かを判別する。そして、
特別検出信号の送信元の太陽電池モジュール10において
特別降圧の検出頻度が基準頻度を超えていない場合には(S32でNO)、直ちにこの監視プログラムPG2から抜ける一方、
特別検出信号の送信元の太陽電池モジュール10において
特別降圧の検出頻度が基準頻度を超えた場合には(S32でYES)、上記したモジュール配置
図Z1及びモジュール配線
図Z2においてその太陽電池モジュール10に相当する部分を例えば表示色を白色から黄色に変える表示色変更処理(S33)を行ってから、この監視プログラムPG2から抜ける。
【0036】
なお、本実施形態では、上記したステップS32を実行しているときのCPU93が、本発明の「異常判定手段」に相当し、上記した表示色変更処理(S33)を実行しているCPU93及びモニタ96が本発明に係る「異常モジュール報知手段」に相当する。
【0037】
また、データ判定端末90は、例えば、所定時刻(例えば、正午)になると、全ての太陽電池モジュール10のモジュール端末30に向けて無線信号を出力して、各クラスタ12のクラスタ電圧の検出結果を返信するように指示する。これに対し、返信しない太陽電池モジュール10のモジュール端末30は、故障している判断して上記したモジュール配置
図Z1及びモジュール配線
図Z2における相当部分を、例えば赤色に変えて表示する。また、返信はあったがクラスタ電圧の検出結果が基準値を超えて低かった太陽電池モジュール10に関しては、例えば、鳥の糞の付着や断線等の異常があったと判断して、モジュール配置
図Z1及びモジュール配線
図Z2のうち相当部分を、例えば橙色に変えて表示する。
【0038】
本実施形態のクラスタ状態監視装置100の構成に関する説明は以上である。次に、このクラスタ状態監視装置100の作用効果について説明する。
【0039】
電源システム15(
図3参照)の各太陽電池セル11が太陽光を受けて発電し、モジュールストリング10S群全体から直流電力が出力されると、その直流電力がパワーコンディショナー21にて交流電力に変換される。そして、住居内の商用電源ラインに接続されている住居内の照明、洗濯機、エアコン、電子レンジ等の家電負荷に、その商用電源ラインを通して電源システム15から電力が供給される。
【0040】
ここで、電源システム15からの電力が、例えば、照明に使用されている状態で電子レンジのスイッチがオンされると、電源システム15にかかる負荷が急増し、全てのクラスタ12に共通して流れる電流が急増する。このとき、クラスタ12同士の間で内部抵抗に差異があると、それら内部抵抗による電圧降下により、クラスタ12の端末間の電圧であるクラスタ電圧にも差異が生じる。そして、クラスタ12間の内部抵抗に差異は、電流が急増したときの各クラスタ電圧の単位時間当りの降圧量の差異として現れる。なお、
図9(A)には、内部抵抗が異なるクラスタA,B,Cのクラスタ電圧が対比して示されている。同図では、クラスタCの内部抵抗よりクラスタBの内部抵抗が大きく、クラスタBの内部抵抗よりクラスタAの内部抵抗が大きくなっている。
【0041】
これに対し、本実施形態のクラスタ状態監視装置100では、クラスタ電圧が、予め設定された単位時間当りの基準降圧量を超えて低下した
特別降圧を検出し、
特別降圧の検出頻度が基準頻度を超えたクラスタ12を異常なクラスタ12と判定するので、発電可能な状態のクラスタ12の劣化を検出することができる。また、全てのクラスタ12に共通して流れる電流の急増をトリガとして上記判定を行うので、判定の同時性も保たれる。
【0042】
具体的には、
図9(A)と
図9(B)とに対応させて示すように、各クラスタA,B,Cのクラスタ電圧の検出周期が単位時間に相当し、内部抵抗が大きなクラスタほど単位時間当りの降圧量が大きくなり、それ故、単位時間当りの降圧量が基準降圧量を超える回数も多くなり、
特別検出信号の送信回数も増える。
【0043】
そして、
特別検出信号の送信回数が基準頻度を超えたか否かをチェックすることで、発電可能な状態のクラスタ12の劣化を検出することができる。また、本実施形態のクラスタ状態監視装置100では、発電可能だが劣化したクラスタ12を含む太陽電池モジュール10(即ち、異常な太陽電池モジュール10)を特定して報知する。具体的には、モニタ96のモジュール配置
図Z1及びモジュール配線
図Z2のうち異常な太陽電池モジュール10を他の太陽電池モジュール10と区別して表示するので、異常な太陽電池モジュール10の場所を容易に把握することができ、メンテナンス作業の効率が向上する。
【0044】
しかも、本実施形態のクラスタ状態監視装置100では、複数の太陽電池モジュール10のそれぞれにモジュール端末30を設けて、
特別降圧の情報を無線送信するので、困難な信号配線の取り廻し作業を要せずに、複数の太陽電池モジュール10における
特別降圧の情報をデータ判定端末90に集めることができる。また、各モジュール端末30は、正常時には
特別検出信号を無線送信しないで済むので、モジュール端末30における電力消費が抑えられる。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)前記実施形態のクラスタ状態監視装置100では、太陽電池モジュール10に含まれる複数のクラスタ12のそれぞれの電圧降下をチェックして、劣化したクラスタ12を含む太陽電池モジュール10を、異常な太陽電池モジュール10として特定して報知する構成になっていたが、各太陽電池モジュールそのものを1つのクラスタとし、各太陽電池モジュール10の出力の電圧降下をチェックして、前記実施形態と同様の処理を行うようにしてもよい。
【0047】
(2)前記実施形態のクラスタ状態監視装置100では、全ての太陽電池モジュール10のモジュール端末30群がデータ判定端末90に無線接続されていたが、ケーブル接続された構成にしてもよい。