(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記超音速圧縮機の前記流体制御装置(308)は、前記超音速圧縮機の前記第1動作モード中の前記第1流体の案内から、前記超音速圧縮機の前記第2動作モード中の前記第2流体の案内へ移行するように構成され、
前記超音速圧縮機の前記第1動作モードは始動モードであり、前記超音速圧縮機の前記第2動作モードは定常モードである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に明記しない限り、本明細書で示される図面は、本発明の主要な発明の特徴を例証するものとする。これらの主要な発明の特徴は、本発明の1つ又は複数の実施形態を含む様々なシステムにおいて適用可能であると考えられる。従って、図面は、本発明の実施に必要とされる当業者には既知の従来の特徴の全てを含むことを意図するものではない。
【0012】
以下の明細書及び後に続く請求項では、多数の用語を参照するが、これらは以下の意味を有するように定義されるものとする。
【0013】
数詞がないことや「前記」などの冠詞は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数形を含む。
【0014】
「任意」又は「任意選択的に」とは、これに続いて記載されている事象又は状況が起こる場合があり、又は起こらない場合もあることを意味し、この記載は当該事象が起こる場合と起こらない場合を含む。
【0015】
本明細書及び請求項全体を通じてここで使用される近似表現は、関連する基本機能の変化を生じさせることなく、許容的に変更することのできる任意の定量的表現を修飾するために適用することができる。従って、「約」及び「実質的に」などの1つ又は複数の用語によって修飾される値は、指定された厳密な値に限定されるものではない。少なくとも幾つかの事例において、近似表現は、値を測定するための計器の精度に対応し得る。ここで、及び明細書及び請求項全体を通じて、範囲限界は組み合わせ及び/又は置き換えが可能であり、そのような範囲は前後関係又は表現がそうでないことを示していない限り、識別され、ここに包含される部分範囲全てを含む。
【0016】
本明細書で使用する場合、「超音速圧縮機ロータ」という用語は、超音速圧縮機ロータの流体流路内に配設された超音速圧縮ランプを含む圧縮機ロータを意味する。更に、超音速圧縮機ロータは、それらが高速で回転軸の周囲を回転するように設計されて、ロータの流路内に配設された超音速圧縮ランプにおいて回転する超音速圧縮機ロータに直面する移動流体、例えば移動ガスが、超音速である相対流体速度を持つと言われるようになるので、「超音速」である。相対流体速度は、超音速圧縮ランプに直面する直前の流体速度と、超音速圧縮ランプにおけるロータ速度のベクトル差の点から定義することができる。この相対流体速度は、「局所超音速入口速度」とも呼ばれ、ある種の実施形態では、入口ガス速度と、超音速圧縮機ロータの流路内に配設された超音速圧縮ランプの接線速度の組み合わせである。超音速圧縮機ロータは、非常に高い接線速度、例えば300メートル/秒〜800メートル/秒の範囲の接線速度での動作用に設計されている。
【0017】
本明細書に記載の例示的なシステム及び方法は、始動及び定常動作中に流体を超音速圧縮機に案内し、流路スロートにおける超音速流の獲得及び維持を促進する超音速圧縮機始動支援システムを提供することによって、既知の超音速圧縮機の欠点を克服する。具体的には、始動支援システムは、少なくとも1つの流体源と、少なくとも1つの流体源及び流体流路の流体流路入口と流体連通して連結された流体制御装置とを含む。より詳細には、流体制御装置は、超音速圧縮機に第1流体を案内し、この第1流体は、超音速圧縮機の第1動作モード、即ち、始動動作中に流体流路のスロート部分において第1流体の超音速流の獲得を促進する流体特性を有する。また、より詳細には、流体制御装置は、超音速圧縮機に第2流体を案内し、この第2流体は、超音速圧縮機の第2動作モード、即ち、定常動作中に流体流路のスロート部分において第2流体の超音速流の維持を可能にする流体特性を有する。
【0018】
図1は、例示的な超音速圧縮機システム10(本明細書において、超音速圧縮機と呼ばれることもある)の概略図である。例示的実施形態において、超音速圧縮機システム10は、吸入セクション12と、吸入セクション12の下流に連結された圧縮機セクション14と、圧縮機セクション14の下流に連結された排出セクション16と、駆動アセンブリ18とを含む。圧縮機セクション14は、駆動軸22を含むロータアセンブリ20によって駆動アセンブリ18に連結される。例示的実施形態において、吸入セクション12、圧縮機セクション14、及び排出セクション16の各々は、圧縮機ハウジング24内に配置される。より詳細には、圧縮機ハウジング24は、流体入口26と、流体出口28と、キャビティ32を画定する内面30とを含む。キャビティ32は、流体入口26と流体出口28の間に延在し、流体を流体入口26から流体出口28に案内するように構成される。吸入セクション12、圧縮機セクション14、及び排出セクション16の各々は、キャビティ32内に配置される。代替的には、吸入セクション12及び/又は排出セクション16は、圧縮機ハウジング24内に配置しなくてもよい。
【0019】
例示的実施形態において、流体入口26は、流体流を流体源34から吸入セクション12に案内するように構成される。流体は、任意の流体、例えば、ガス、ガス混合物、及び/又は液体ガス混合物であってよい。吸入セクション12は、圧縮機セクション14と流体連通して連結されて、流体を流体入口26から圧縮機セクション14に案内する。吸入セクション12は、1つ又は複数の所定パラメータ、例えば速度、質量流量、圧力、温度、及び/又は任意の適切な流動パラメータを有する流体流を調節するように構成される。例示的実施形態において、吸入セクション12は、流体入口26と圧縮機セクション14の間に連結されて、流体を流体入口26から圧縮機セクション14に案内する入口案内翼アセンブリ36を含む。入口案内翼アセンブリ36は、圧縮機ハウジング24に連結され、圧縮機セクション14に対して固定される1つ又は複数の入口案内翼38を含む。
【0020】
圧縮機セクション14は、吸入セクション12と排出セクション16の間に連結されて、流体の少なくとも一部を吸入セクション12から排出セクション16に案内する。圧縮機セクション14は、駆動軸22に回転可能に連結される少なくとも1つの超音速圧縮機ロータ40を含む。超音速圧縮機ロータ40は、排出セクション16に案内されている流体の圧力を上昇させ、流体の体積を減少させ、且つ/又は流体の温度を上昇させるように構成される。排出セクション16は、超音速圧縮機ロータ40と流体出口28の間に連結されて、流体を超音速圧縮機ロータ40から流体出口28に案内する出口案内翼アセンブリ42を含む。出口案内翼アセンブリ42は、圧縮機ハウジング24に連結され、圧縮機セクション14に対して固定される1つ又は複数の出口案内翼43を含む。流体出口28は、出口案内翼アセンブリ42及び/又は超音速圧縮機ロータ40から、例えば、タービンエンジンシステム、流体処理システム、及び/又は流体貯蔵システム等の出力システム44に案内するように構成される。一実施形態では、駆動アセンブリ18は、駆動軸22を回転させて、入口案内翼アセンブリ36、超音速圧縮機ロータ40、及び/又は出口案内翼アセンブリ42の回転を生じさせるように構成してもよい。
【0021】
動作中、吸入セクション12は、流体を流体源34から圧縮機セクション14へと案内する。圧縮機セクション14は、流体を圧縮し、圧縮された流体を排出セクション16へと排出する。排出セクション16は、流体出口28を介して圧縮された流体を圧縮機セクション14から出力システム44に案内する。
【0022】
図2は、例示的な超音速圧縮機ロータ40の斜視図である。
図3は、超音速圧縮機ロータ40の分解斜視図である。
図4は、
図2に示す超音速圧縮機ロータ40の線4−4に沿った断面図である。
図3及び
図4に示す同一の構成部品は、
図2において使用されたのと同じ参照番号で表される。明確にするため、
図4は、第1半径方向寸法を図示するためのx軸、第2半径方向寸法を図示するための、x軸に垂直であるy軸、及び軸方向寸法を図示するための、x軸及びy軸に垂直であるz軸を示す。これらの基準軸が本明細書で使用される。
図4では、z軸がページの外に向けられている。例示的実施形態において、超音速圧縮機ロータ40は、ロータディスク48に連結される複数のベーン46を含む。ロータディスク48は環状ディスク本体50を含み、この環状ディスク本体50は、中心線軸54に沿ってディスク本体50を通って略軸方向に延在する内側キャビティ52を画定する。ディスク本体50は、半径方向内側面56と、半径方向外側面58と、端壁60とを含む。半径方向内側面56は、内側キャビティ52を画定する。内側キャビティ52は、略円筒形状を有し、中心線軸54の周囲に配向される。駆動軸22は、複数のロータ支持支柱51を介してロータディスク48に回転可能に連結され、ロータ支持支柱51は、それを通って駆動軸22が挿入される開口部53を画定する。端壁60は、内側キャビティ52から半径方向外方に、且つ半径方向内側面56と半径方向外側面58の間に延在する。端壁60は、中心線軸54に垂直に配向される半径方向に画定された幅62を有する。
【0023】
例示的実施形態において、各ベーン46は、端壁60に連結され、中心線軸54に略平行である軸方向66において端壁60から外方に延在する。各ベーン46は、入口縁68及び出口縁70を含む。入口縁68は、半径方向内側面56に隣接して配置される。出口縁70は、半径方向外面58に隣接して配置される。例示的実施形態において、超音速圧縮機ロータ40は、ベーン46の対74を含む。各ベーン46は、入口開口部76、出口開口部78、及び隣接するベーン46の各対74の間の流路80を画定するように配向される。流路80は、入口開口部76と出口開口部78の間に延在し、入口開口部76から出口開口部78までの矢印82で表される流れ経路(
図4に示す)を画定する。流れ経路82は、ベーン46に略平行に配向される。流路80は、流体を流れ経路82に沿って半径方向64に入口開口部76から出口開口部78に案内するように寸法決めされ、成形され、且つ配向される。入口開口部76は、隣接するベーン46の隣接する入口縁68の間に画定される。出口開口部78は、隣接するベーン46の隣接する出口縁70の間に画定される。各ベーン46は、各ベーン46が半径方向内側面56と半径方向外側面58の間に延在するように、入口縁68と出口縁70の間に半径方向に延在する。また、各ベーン46は、外面84と、対向する内面86とを含む。ベーン46は、外面84と内面86の間に延在して、流路80の軸方向高さ88を画定する。
【0024】
図2及び
図3を参照すると、例示的実施形態において、シュラウドアセンブリ90は、流路80(
図4に示す)がシュラウドアセンブリ90と端壁60の間に画定されるように、各ベーン46の外面84に連結される。シュラウドアセンブリ90は、内縁92及び外縁94を含む。内縁92は、略円筒状開口部96を画定する。シュラウドアセンブリ90は、内側円筒状キャビティ52が開口部96と同心になるように、ロータディスク48と同軸上に配向される。シュラウドアセンブリ90は、ベーン46の入口縁68がシュラウドアセンブリ90の内縁92に隣接して配置され、ベーン46の外縁70がシュラウドアセンブリ90の外縁94に隣接して配置されるように、各ベーン46に連結される。代替的には、超音速圧縮機ロータ40は、シュラウドアセンブリ90を含まない。そのような実施形態では、ダイヤフラムが流路80を少なくとも部分的に画定するように、ダイヤフラムアセンブリ(図示せず)がベーン46の各外面84に隣接して配置される。
【0025】
図4を参照すると、少なくとも1つの超音速圧縮機ランプ98は、流路80内に配置される。超音速圧縮ランプ98は、入口開口部76と出口開口部78の間に配置され、1つ又は複数の衝撃波100を流路80内に形成することができるように寸法決めされ、成形され、且つ配向される。
【0026】
超音速圧縮機ロータ40の動作中、吸入セクション12(
図1に示す)は、流体102を流路80の入口開口部76へと案内する。流体102は、入口開口部76に入る直前に第1速度、即ち、接近速度を有する。超音速圧縮機ロータ40は、回転方向矢印104によって表すように、第2速度、即ち、回転速度で中心線軸54の周囲を回転して、流路80に入る流体102が、入口開口部76で第3速度、即ち、入口速度を有するようになっており、この速度は、ベーン46に対して超音速である。流体102が超音速で流路80を通って案内されると、超音速圧縮ランプ98によって、衝撃波100を流路80内に形成して流体102の圧縮を促進することができ、流体102の圧力及び温度が上昇し、且つ/又は出口開口部78における体積が減少するようになっている。
【0027】
図5は、
図4に示す超音速圧縮機ロータ40の一部分の範囲5に沿った拡大断面図である。
図5に示す同一の構成部品は、
図2及び
図4において使用されたのと同じ参照番号で表される。明確にするため、
図5は、第1半径方向寸法を図示するためのx軸、第2半径方向寸法を図示するための、x軸に垂直であるy軸、及び軸方向寸法を図示するための、x軸及びy軸に垂直であるz軸を示す。
図5では、z軸がページの外に向けられている。例示的実施形態において、各ベーン46は、第1又は正圧面106と、対向する第2又は負圧面108とを含む。各正圧面106及び負圧面108は、入口縁68と出口縁70の間に延在する。
【0028】
例示的実施形態において、各ベーン46は、流路80が入口開口部76と出口開口部78の間で略半径方向に配向されるように、内側円筒状キャビティ52の周囲で円周方向に離間配置される。各入口開口部76は、入口縁68においてベーン46の正圧面106と隣接する負圧面108の間に延在する。各出口開口部78は、流れ経路82が半径方向64において半径方向内面56から半径方向外面58に半径方向外方に画定されるように、出口縁70において正圧面106と隣接する負圧面108の間に延在する。代替的には、隣接するベーン46は、入口開口部76が半径方向外面58に画定され、出口開口部78が半径方向内面56に画定されるように配向させて、流れ経路82が半径方向外面58から半径方向内面56に半径方向内方に画定されるようにしてもよい。例示的実施形態において、流路80は、正圧面106と隣接する負圧面108の間に画定され、流れ経路82に垂直である円周方向幅110を有する。入口開口部76は第1円周方向幅112を有し、これは出口開口部78の第2円周方向幅114よりも大きい。代替的には、入口開口部76の第1円周方向幅112は、出口開口部78の第2円周方向幅114よりも小さくても、等しくてもよい。例示的実施形態において、各ベーン46は、円弧形状で形成され、流路80が螺旋形状で画定され、一般に入口開口部76と出口開口部78の間で内方に収束するように画定されるように配向される。
【0029】
例示的実施形態において、流路80は、流れ経路82に沿って変動する断面積116を画定する。流路80の断面積116は、流れ経路82に垂直に画定され、流路80の円周方向幅110×流路の軸方向高さ88(
図3に示す)と等しい。流路80は、入口開口部76における第1面積、即ち、入口断面積118、出口開口部78における第2面積、即ち、出口断面積120、及び入口開口部76と出口開口部78の間に画定される第3面積、即ち、最小断面積122を有する。例示的実施形態において、最小断面積122は、入口断面積118及び出口断面積120よりも小さい。一実施形態では、最小断面積122は出口断面積120と等しく、出口断面積120及び最小断面積122の各々は入口断面積118よりも小さい。
【0030】
例示的実施形態において、超音速圧縮ランプ98は、ベーン46の正圧面106に連結され、流路80のスロート領域124を画定する。スロート領域124は、流路80の最小断面積122を画定する。代替的な実施形態では、超音速圧縮ランプ98は、ベーン46の負圧面108、端壁60、及び/又はシュラウドアセンブリ90に連結してもよい。更なる代替的な実施形態では、超音速圧縮機ロータ40は、各々が正圧面106、負圧面108、端壁60、及び/又はシュラウドアセンブリ90に連結される複数の超音速圧縮ランプ98を含む。そのような実施形態では、各超音速圧縮ランプ98は、集合的にスロート領域124を画定する。
【0031】
例示的実施形態において、スロート領域124は、流路80が、約1.01〜1.10の入口断面積118÷最小断面積122の比として定義される面積比を有するように、入口断面積118よりも小さい最小断面積122を画定する。一実施形態では、面積比が約1.07〜1.08である。
【0032】
例示的実施形態において、超音速圧縮ランプ98は、圧縮面126及び拡散面128を含む。圧縮面126は、第1、又は前縁130及び第2、又は後縁132を含む。前縁130は、後縁132よりも入口開口部76の近くに配置される。圧縮面126は、前縁130と後縁132の間に延在し、ベーン46から流れ経路82内に斜角134で配向される。圧縮面126は、圧縮領域136が前縁130と後縁132の間に画定されるように、隣接する負圧面108に向かって収束する。圧縮領域136は、流れ経路82に沿って前縁130から後縁132へと減少する、流路80の断面積138を有する。圧縮面126の後縁132は、スロート領域124を画定する。
【0033】
拡散面128は、圧縮面126に連結され、圧縮面126から出口開口部78へと下流に延在する。拡散面128は、第1端部140と、第1端部140よりも出口開口部78に近い第2端部142とを含む。拡散面128の第1端部40は、圧縮面126の後縁132に連結される。拡散面128は、第1端部140と第2端部142の間に延在する。拡散面128は、圧縮面126の第2端部132から出口開口部78へと増加する拡散断面積148を有する拡散領域146を画定する。拡散領域146は、スロート領域124から出口開口部78に延在する。代替的な実施形態では、超音速圧縮ランプは拡散面128を含まない。この代替的な実施形態において、圧縮面126の後縁132は、スロート領域124が出口開口部78に隣接して画定されるように、ベーン46の出口縁70に隣接して配置される。
【0034】
超音速圧縮機ロータ40の動作中、流体102は、ロータディスク48に対して超音速で内側円筒状キャビティ52から入口開口部76内に案内される。内側円筒状キャビティ52から流路80に入る流体102は、超音速圧縮ランプ98の前縁130に接触して、第1斜め衝撃波152を形成する。超音速圧縮ランプ98の圧縮領域136は、第1斜め衝撃波152を、前縁130から隣接するベーン46への流れ経路82に対して斜角に、且つ流路80内に配向させるように構成される。第1斜め衝撃波152は隣接するベーン46に接触し、第2斜め衝撃波154は、隣接するベーン46から流れ経路82に対して斜角で、超音速圧縮ランプ98のスロート領域124に向かって反射される。一実施形態では、圧縮面126は、第2斜め衝撃波154を、隣接するベーン46における第1斜め衝撃波152から、スロート領域124を画定する後縁132に延在させるように構成される。超音速圧縮ランプ98は、第1斜め衝撃波152及び第2斜め衝撃波154の各々を圧縮領域136内に形成させるように構成される。
【0035】
流体102が圧縮領域136を通過する時、流体102の速度は、流体102が第1斜め衝撃波152及び第2斜め衝撃波154の各々を通過するにつれて減少する。更に、流体102の圧力は上昇し、流体102の体積は減少する。例示的実施形態において、流体102がスロート領域124を通過する時、超音速圧縮ランプ98は、出口開口部78においてロータディスク48に対して超音速である出口速度を有するように流体102を調節するように構成される。超音速圧縮ランプ98は、更に、垂直衝撃波156をスロート領域124の下流且つ流路80内に形成させるように構成される。垂直衝撃波156は、流れ経路82に垂直に配向された衝撃波であり、流体が垂直衝撃波156を通過する時に、流体102の速度をロータディスク48に対して亜音速に減少させる。
【0036】
図6は、超音速圧縮機ロータ40(
図4及び5に示す)の各種条件における空気に関するスロート面積とスロート面積における相対マッハ数の関係のグラフ
図200である。相対マッハ数は、ロータの座標系における流体媒質の速度対そのような流体媒質の音速の比として定義されるため、流体媒質の音速が基準である。一般に、超音速圧縮機は、2つの高レベル動作モード、即ち、開始、又は始動モード、及び定常動作モードを有する。始動モードにおいて、超音速圧縮機ロータは、静止状態から比較的高い回転速度まで加速される。ロータに対して超音速圧縮機に導入される流体の速度は、最初は亜音速であるが、ロータの回転速度が上昇するにつれて始動モード中に上昇する。定常動作モードにおいて、超音速圧縮機ロータは、ほぼ一定の回転速度で回転し、付随する流体を圧縮するが、この流体は、ロータの座標系内で超音速を有する。
【0037】
従って、一般に、超音速圧縮機の動作の始動モード及び定常モードは、異なる流体流路形状を一般的に必要とする。具体的には、スロート内の超音速の獲得及び始動中の流体流路内のスロート領域の下流での垂直衝撃波の形成を促進するためには、定常動作中のスロート領域の下流での垂直衝撃波の維持に必要なより小さい、又はより狭いスロート面積とは対照的に、より大きい、又はより広いスロート面積が必要とされる。より広いスロート領域は、始動中のスロート領域内の超音速流の形成を促進するが、定常状態時の性能を低下させる。より狭いスロート領域は、定常状態性能を促進するが、始動中のスロート領域内の超音速流の形成の困難度を増加させる。
【0038】
グラフ200は、縦軸、即ち、スロート面積(A
*)対入口面積(A入口)の比に関する数値を0.6から1.0までの間で0.1ずつの無単位増分で表すy軸202を含む。グラフ200は、本明細書に記載された機構を例証するために完全非粘性ガス仮定を採用してプロットされており、実在ガスに関するプロットはある程度異なる可能性があることがわかるが、実質的に同様の作用は実質的に同様の利点が得られることが観察されるはずである。グラフ200はまた、横軸、即ち、流体速度に関する数値をマッハ数として1.0から2.0までの間で0.2ずつの増分で表すx軸204を含む。グラフ200は、超音速圧縮機ロータ40の始動動作に関する最小スロート面積対入口面積比を表す空気の始動曲線206を更に含む。これは、一定のA入口に関して、始動曲線206が、ロータがその回転速度を上昇させ、流体の相対マッハ数がそれと共に対応して増加する時に、斜め及び垂直衝撃波を形成/維持しながら始動状態中に超音速流体流を促進するのに必要な最小スロート面積と比例することを意味する。例えば、始動中の1.8のマッハ数の相対流体速度に関するA
*対A入口比の最小値は、約0.85であり、即ち、一定のA入口の場合、A
*の値はA入口の値の約85%である。従って、これらの状況に対して適切な垂直衝撃波を形成及び維持するためには、スロート面積の最小値は入口面積の値の85%である。
【0039】
始動曲線206は、超音速圧縮機ロータ40の定常動作に関する最小A
*対A入口比を表す空気の定常動作曲線208と対比される。これは、一定のA入口に関して、曲線208が、ロータがその回転速度を維持し、流体の相対マッハ数がそれと共に対応して維持される時に、斜め及び垂直衝撃波を維持しながら定常状態中に超音速流体流を促進するのに必要な最小スロート面積と比例することを意味する。例えば、定常動作中の1.8のマッハ数に関するA
*対A入口比の最小値は、約0.70であり、即ち、一定のA入口の場合、A
*の値はA入口の値の約70%である。従って、一定のA入口の場合、定常動作は、始動動作よりも小さなA
*を有するはずである。
【0040】
図7は、超音速圧縮機システム10で使用することができる例示的な超音速圧縮機始動支援システム300の概略断面図である。
図7は、超音速圧縮機ロータ40の一部分を示す。例示的実施形態において、以下で詳述されるように、始動支援システム300は、始動中は第1、又は始動流体を使用し、超音速圧縮機ロータが定常動作に加速する時は第2、又は定常流体に変更することにより有効スロート面積を調整することによって、始動モードから定常動作モードへの移行を促進する。
【0041】
例示的実施形態において、始動支援システム300は、複数の流体源302を含む。また、例示的実施形態では、2つの流体源、即ち、第1、又は始動流体源304及び第2、又は定常流体源306が存在しているが、複数の流体の使用については以下で詳述する。始動支援システム300はまた、本明細書に記載するような指導支援システム300の動作を可能にするための十分な流体流制御装置(図示せず)を含む流体制御装置308を備え、流体流制御装置としては、弁、配管、流量制限器、ポンプ、モータ、並びに電力、空気動力、及び/又は油圧動力供給装置が挙げられるが、これに限定されるものではない。流体制御装置308は、流路80の入口開口部76と流体連通して連結される。
【0042】
始動支援システム300は、流体制御装置308に動作可能に連結される制御システム310を更に含み、制御システム310は、アルゴリズムを含む十分なアナログ及び個別論理によってプログラムされ、本明細書に記載のように、流体制御装置308を含む超音速圧縮機始動支援システム300の動作を可能にするようにして実施される。例示的実施形態において、制御システム300は、パーソナルコンピュータ、リモートサーバ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、及び分散制御システム(DCS)を含むが、これに限定されるものではない少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0043】
動作中、後で詳しく述べるように、超音速圧縮機始動支援システム300は、始動流体(図示せず)を始動流体源304から入口開口部76に案内する。制御システム310は、ロータの回転速度及び始動流体速度を含むが、これに限定されるものではない所定の条件が得られるまで、始動流体を超音速圧縮機ロータ40に案内するように流体制御装置308を調整する。所定の始動流体速度が得られた時点で、制御システム310は、定常流体(図示せず)が始動流体源304からの始動流体と平行に定常流体源306から案内される時に、流体流路80内の超音速流体流の維持を促進することになる。制御システム310及び流体制御装置308は、始動流体流を漸減的に調整しながら定常流体流を漸増的に調整することによって、流体流路80内の適切な衝撃波形成を維持しながら徐々に始動流体を定常流体に置き換える。流体の置換が完了に近づくにつれて、始動流体流は実質的に停止し、流体流路80を通る流体流は実質的に定常流体流になり、制御システム310及び流体制御装置308は、流体速度、ロータ40の回転速度、及び圧縮比を含むが、これに限定されるものではない所定のパラメータが得られるまで、超音速圧縮機ロータ40の加速又は減速を再開する。代替的には、超音速圧縮機ロータ40をほぼ静止状態で保持するのではなく、ロータ40は、始動流体から定常流体への置換の間ずっと加速される。
【0044】
図8は、超音速圧縮機システム10及び超音速圧縮機始動支援システム300(共に
図7に示す)で使用することができる複数の流体の複数の特性の表形式図、即ち表320である。表320は、1気圧の圧力(101.3キロパスカル(kPa)、14.7ポンド/平方インチ(psi))且つ摂氏25度(℃)の温度(華氏77度(°F)、ケルビン温度298(°K))における、そこに記載された複数の流体の各々に関する3つの特性値を示す。表320に記載された流体は、空気、二酸化炭素(CO
2)、六フッ化硫黄(SF
6)、メタン(CH
4)、窒素(N
2)、プロパン(C
3H
8)、及びブタン(C
4H
10)である。そのような流体の第1特性はガンマ(γ)値である。γは、定圧比熱係数、即ち、Cp、対定積比熱係数、即ち、Cvの比によって決定される等エントロピー指数を表す無単位値である。超音速圧縮機の最小スロート面積値は、γ及び相対マッハ数の関数、即ち、流体媒質の相対速度対選択された流体媒質の音速の比として決定される。表320に記載された流体の第2特性は、グラム/モル(g/mol)を単位にしたモル質量である。表320に記載された流体の第3特性は、流体のメートル毎秒(m/s)を単位とした音速である。一般に、流体の音速は、流体組成及び温度を含むが、これに限定されるものではない特性の関数である。例えば、1気圧且つ298°Kにおける空気の346m/sの音速は、1気圧且つ298°KにおけるCO
2の269m/sの音速よりも速い。
【0045】
図9は、超音速圧縮機ロータ40(
図4及び5に示す)の各種条件における空気及びCO
2に関するスロート面積と相対流速の関係のグラフ
図340である。グラフ340は、本明細書に記載された機構を例証するために完全非粘性ガス仮定を採用してプロットされており、実在ガスに関するプロットはある程度異なる可能性があることがわかるが、実質的に同様の作用は実質的に同様の利点が得られることが観察されるはずである。グラフ340は、縦軸、即ち、スロート面積(A
*)対入口面積(A入口)の比に関する数値を0.3から1.0までの間で0.1ずつの無単位増分で表すy軸342を含む。グラフ340はまた、横軸、即ち、空気の音速によって正規化された流体速度に関する数値を1.0から2.0までの間で0.2ずつの増分で表すx軸344を含み、x軸344は、CO
2ではなく、空気に関する相対マッハ数を表す。グラフ340は、共に
図6に記載したような、空気の始動曲線206及び空気の定常動作曲線208を更に含む。
【0046】
グラフ340はまた、超音速圧縮機ロータ40の始動動作に関する最小スロート面積対入口面積比を表すCO
2の始動曲線346を含む。一定のA入口に関して、始動曲線346は、始動状態中の超音速CO
2流を促進すると共に、更に、ロータがその回転速度を上昇させ、CO
2流の相対マッハ数(
図9には図示せず)がそれと共に対応して増加する時に、斜め及び垂直衝撃波の形成/維持を促進するのに必要な最小スロート面積と比例する。説明のために、CO
2での始動中の1.8のマッハ数(空気の相対音速に基づく)に対応する相対流体速度に関するA
*対A入口比の最小値は、約0.76であり、即ち、一定のA入口の場合、A
*の値はA入口の値の約76%である。
【0047】
従って、始動ガスとしてCO
2を用いた始動は、空気による始動に必要とされるのよりも小さなスロート面積内での超音速流の発生を促進する。一定のスロート面積の場合、始動が完了した時点、即ち、超音速圧縮機ロータが維持回転速度に達した時点で、定常動作が空気によって独占的に行なわれるまで、次第にCO
2を空気に置き換えることができる。より具体的には、曲線208及び346の交差によって示すように、スロートにおける流体が空気の1.6のマッハ数に対応する超音速を得た時点で、約0.8の最小A
*対A入口比の値は、CO
2による始動及び空気による定常動作の場合と同じになる。従って、約0.8のA
*対A入口比を有する超音速圧縮機ロータ40は、CO
2流体によって始動させることができ、次いで、スロートにおけるCO
2流体の相対速度が空気の約マッハ1.6に対応する速度に達するようにロータ回転速度を上昇させることができ、その後、流体をCO
2から空気へと次第に変化させることができる。
【0048】
例えば、限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約1.6の空気の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、CO
2による始動は、入口の面積の約80%である最小スロート面積を必要とし、空気による定常動作は、入口の面積の約80%である最小スロート面積を必要とし、空気による始動は、入口の面積の約90%である最小スロート面積を必要とする。従って、約1.6の空気の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、CO
2による始動及び空気による定常動作を促進するのには、入口の面積の約80%のスロート面積で十分であることになる。更に、約10%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その10%は、入口の面積の約90%(空気による始動に関する)と入口の面積の約80%(CO
2による始動に関する)との違いを表すものである。このスロート面積の10%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0049】
代替的には、空気とCO
2との置換は、曲線208及び346が交差する速度とは異なる超音速で開始及び/又は実行することができる。超音速圧縮機ロータ40は、空気の任意の与えられた相対マッハ数に対して寸法決め及び構成することができ、CO
2の始動曲線346は空気の始動曲線206より下になって、CO
2による始動に対する最小スロート面積値が空気による始動に対する最小スロート面積値より小さくなるようになっている。従って、超音速圧縮機ロータ40のスロート面積は、所定の速度におけるCO
2の始動曲線346及び空気の定常動作曲線208の値のより大きなものとして決定される。このように、決定されたスロート面積は、空気の同じ相対マッハ数に対する空気の始動曲線206に関するものより小さく、それによって、始動及び定常動作の両方に実質的に同じ流体を用いたロータ40と同様のロータよりもより高い効率の動作を促進する。
【0050】
例えば、限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約1.4の空気の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、CO
2による始動は、入口の面積の約85%である最小スロート面積を必要とし、空気による定常動作は、入口の面積の約90%である最小スロート面積を必要とし、空気による始動は、入口の面積の約95%である最小スロート面積を必要とする。従って、約1.4の空気の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、CO
2による始動及び空気による定常動作を促進するのには、入口の面積の約90%のスロート面積で十分であることになる。更に、約5%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その5%は、入口の面積の約95%(空気による始動に関する)と入口の面積の約90%(空気による定常状態に関する)との違いを表すものである。このスロート面積の5%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0051】
また、例えば、同じく限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約1.8の空気の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、CO
2による始動は、入口の面積の約76%である最小スロート面積を必要とし、空気による定常動作は、入口の面積の約70%である最小スロート面積を必要とし、空気による始動は、入口の面積の約85%である最小スロート面積を必要とする。従って、約1.8の空気の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、CO
2による始動及び空気による定常動作を促進するのには、入口の面積の約76%のスロート面積で十分であることになる。更に、約9%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その9%は、入口の面積の約85%(空気による始動に関する)と入口の面積の約76%(CO
2による始動に関する)との違いを表すものである。このスロート面積の約9%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0052】
図10は、超音速圧縮機ロータ40(
図4及び5に示す)の各種条件における空気及びSF
6に関するスロート面積と相対流速の関係のグラフ
図350である。グラフ350は、縦軸、即ち、スロート面積(A
*)対入口面積(A入口)の比に関する数値を0.0から1.0までの間で0.2ずつの無単位増分で表すy軸352を含む。グラフ350はまた、横軸、即ち、空気の音速によって正規化された流体速度に関する数値を相対マッハ数として1.0から2.4までの間で0.2ずつの増分で表すx軸354を含み、x軸354は、SF
6ではなく、空気に関する相対マッハ数を表す。グラフ350は、共に
図6に記載したような、空気の始動曲線206及び空気の定常動作曲線208を更に含む。
【0053】
グラフ350はまた、超音速圧縮機ロータ40の始動動作に関する最小スロート面積対入口面積比を表すSF
6の始動曲線356を含む。一定のA入口に関して、曲線356は、始動状態中の超音速SF
6流を促進すると共に、更に、ロータがその回転速度を上昇させ、SF
6流の相対マッハ数(
図10には図示せず)がそれと共に対応して増加する時に、斜め及び垂直衝撃波の形成/維持を促進するのに必要な最小スロート面積と比例する。説明のために、SF
6での始動中の1.8のマッハ数(空気の相対音速に基づく)に対応する相対流体速度に関するA
*対A入口比の最小値は、約0.48であり、即ち、一定のA入口の場合、A
*の値はA入口の値の約48%である。
【0054】
従って、始動ガスとしてSF
6を用いた始動は、空気による始動に必要とされるのよりも小さなスロート面積内での超音速流の発生を促進する。一定のスロート面積の場合、始動が完了した時点、即ち、超音速圧縮機ロータが維持回転速度に達した時点で、定常動作が空気によって独占的に行なわれるまで、次第にSF
6を空気に置き換えることができる。より具体的には、空気の約2.4のマッハ数における曲線208及び356の交差によって示すように、約0.42の最小A
*対A入口比の値は、SF
6による始動及び空気による定常動作の場合と同じになる。従って、約0.42のA
*対A入口比を有する超音速圧縮機ロータ40は、SF
6流体によって始動させることができ、次いで、スロートにおけるSF
6流体の相対速度が空気の約マッハ2.4に対応する速度に達するようにロータ回転速度を上昇させることができ、その後、流体をSF
6から空気へと次第に変化させることができる。
【0055】
例えば、限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約2.4の空気の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、SF
6による始動は、入口の面積の約42%である最小スロート面積を必要とし、空気による定常動作は、入口の面積の約42%である最小スロート面積を必要とし、空気による始動は、入口の面積の約78%である最小スロート面積を必要とする。従って、約2.4の空気の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、SF
6による始動及び空気による定常動作を促進するのには、入口の面積の約42%のスロート面積で十分であることになる。更に、約36%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その36%は、入口の面積の約78%(空気による始動に関する)と入口の面積の約42%(SF
6による始動に関する)との違いを表すものである。このスロート面積の36%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0056】
代替的には、空気とSF
6との置換は、曲線208及び356が交差する速度とは異なる超音速で開始及び/又は実行することができる。超音速圧縮機ロータ40は、空気の任意の与えられた相対マッハ数に対して寸法決め及び構成することができ、SF
6の始動曲線356は空気の始動曲線206より下になって、SF
6による始動に対する最小スロート面積値が空気による始動に対する最小スロート面積値より小さくなるようになっている。従って、超音速圧縮機ロータ40のスロート面積は、所定の速度におけるSF
6の始動曲線356及び空気の定常動作曲線208の値のより大きなものとして決定される。このように、決定されたスロート面積は、空気の同じ相対マッハ数に対する空気の始動曲線206に関するものより小さく、それによって、始動及び定常動作の両方に実質的に同じ流体を用いたロータ40と同様のロータよりもより高い効率の動作を促進する。
【0057】
例えば、限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約2.0の空気の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、SF
6による始動は、入口の面積の約45%である最小スロート面積を必要とし、空気による定常動作は、入口の面積の約60%である最小スロート面積を必要とし、空気による始動は、入口の面積の約83%である最小スロート面積を必要とする。従って、約2.0の空気の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、SF
6による始動及び空気による定常動作を促進するのには、入口の面積の約60%のスロート面積で十分であることになる。更に、約23%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その23%は、入口の面積の約83%(空気による始動に関する)と入口の面積の約60%(空気による定常動作に関する)との違いを表すものである。このスロート面積の23%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0058】
また、例えば、同じく限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約2.5の空気の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、SF
6による始動は、入口の面積の約41%である最小スロート面積を必要とし、空気による定常動作は、入口の面積の約38%である最小スロート面積を必要とし、空気による始動は、入口の面積の約77%である最小スロート面積を必要とする。従って、約2.5の空気の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、SF
6による始動及び空気による定常動作を促進するのには、入口の面積の約42%のスロート面積で十分であることになる。更に、約35%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その35%は、入口の面積の約77%(空気による始動に関する)と入口の面積の約42%(SF
6による始動に関する)との違いを表すものである。そのようなスロート面積の約35%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0059】
図11は、
図4及び5に示す超音速圧縮機ロータの各種条件におけるメタン(CH
4)及びプロパン(C
3H
8)に関するスロート面積と相対流速の関係のグラフ図である。グラフ370は、本明細書に記載された機構を例証するために完全非粘性ガス仮定を採用してプロットされており、実在ガスに関するプロットはある程度異なる可能性があることがわかるが、実質的に同様の作用は実質的に同様の利点が得られることが観察されるはずである。グラフ370は、縦軸、即ち、スロート面積(A
*)対入口面積(A入口)の比に関する数値を0.0から1.0までの間で0.2ずつの無単位増分で表すy軸372を含む。グラフ370はまた、横軸、即ち、CH
4の音速によって正規化された流体速度に関する数値を1.0から2.4までの間で0.2ずつの増分で表すx軸374を含み、x軸374は、C
3H
8ではなく、CH
4に関する相対マッハ数を表す。
【0060】
グラフ370はまた、超音速圧縮機ロータ40の始動動作に関する最小スロート面積対入口面積比を表すCH
4の始動曲線376を含む。一定のA入口に関して、曲線376は、始動状態中の超音速CH
4流を促進すると共に、ロータがその回転速度を上昇させ、CH
4流の相対マッハ数(
図11には図示せず)がそれと共に対応して増加する時に、斜め及び垂直衝撃波の形成/維持を促進するのに必要な最小スロート面積と比例する。説明のために、CH
4での始動中の1.8のマッハ数(CH
4の相対音速に基づく)に対応する相対流体速度に関するA
*対A入口比の最小値は、約0.85であり、即ち、一定のA入口の場合、A
*の値はA入口の値の約85%である。
【0061】
始動曲線376は、超音速圧縮機ロータ40の定常動作に関するA
*対A入口比を表すCH
4の定常動作曲線378と対比される。これは、一定のA入口に関して、曲線378が、ロータがその回転速度を維持し、CH
4の相対マッハ数がそれと共に対応して維持される時に、斜め及び垂直衝撃波を維持しながら定常状態中に超音速CH
4流を促進するのに必要な最小スロート面積と比例することを意味する。例えば、定常動作中の1.8のマッハ数(CH
4の相対音速に基づく)に対応する相対流体速度に関するA
*対A入口比の最小値は、約0.68であり、即ち、一定のA入口の場合、A
*の値はA入口の値の約68%である。
【0062】
グラフ370はまた、超音速圧縮機ロータ40の始動動作に関する最小スロート面積対入口面積比を表すC
3H
8の始動曲線380を含む。一定のA入口に関して、曲線380は、始動状態中の超音速C
3H
8流を促進すると共に、更に、ロータがその回転速度を上昇させ、C
3H
8流の相対マッハ数(
図11には図示せず)がそれと共に対応して増加する時に、斜め及び垂直衝撃波の形成/維持を促進するのに必要な最小スロート面積と比例する。説明のために、C
3H
8での始動中の1.8のマッハ数(CH
4の相対音速に基づく)に対応する相対流体速度に関するA
*対A入口比の最小値は、約0.59であり、即ち、一定のA入口の場合、A
*の値はA入口の値の約59%である。
【0063】
従って、始動ガスとしてC
3H
8を用いた始動は、CH
4による始動に必要とされるのよりも小さなスロート面積内での超音速流の発生を促進する。一定のスロート面積の場合、始動が完了した時点、即ち、超音速圧縮機ロータが維持回転速度に達した時点で、定常動作がCH
4によって独占的に行なわれるまで、次第にC
3H
8をCH
4に置き換えることができる。より具体的には、曲線378及び380の交差によって示すように、スロートにおける流体がCH
4の約2.0のマッハ数に対応する超音速に達すると、約0.57の最小A
*対A入口比の値は、C
3H
8による始動及びCH
4による定常動作の場合と同じになる。従って、約0.57のA
*対A入口比を有する超音速圧縮機ロータ40は、C
3H
8流体によって始動させることができ、次いで、スロートにおけるC
3H
8流体の相対速度がCH
4の約マッハ2.0に対応する速度に達するようにロータ回転速度を上昇させることができ、その後、流体をC
3H
8からCH
4へと次第に変化させることができる。
【0064】
例えば、限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約2.0の空気の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、C
3H
8による始動は、入口の面積の約57%である最小スロート面積を必要とし、CH
4による定常動作は、入口の面積の約57%である最小スロート面積を必要とし、CH
4による始動は、入口の面積の約81%である最小スロート面積を必要とする。従って、約2.0のCH
4の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、C
3H
8による始動及びCH
4による定常動作を促進するのには、入口の面積の約57%のスロート面積で十分であることになる。更に、約24%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その24%は、入口の面積の約81%(CH
4による始動に関する)と入口の面積の約57%(C
3H
8による始動に関する)との違いを表すものである。このスロート面積の24%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0065】
代替的には、CH
4とC
3H
8との置換は、曲線378及び380が交差する速度とは異なる超音速で開始及び/又は実行することができる。超音速圧縮機ロータ40は、空気の任意の与えられた相対マッハ数に対して寸法決め及び構成することができ、C
3H
8の始動曲線380はCH
4の始動曲線376より下になって、C
3H
8による始動に対する最小スロート面積値がCH
4による始動に対する最小スロート面積値より小さくなるようになっている。従って、超音速圧縮機ロータ40のスロート面積は、所定の速度におけるC
3H
8の始動曲線380及びCH
4の定常動作曲線378の値のより大きなものとして決定される。このように、決定されたスロート面積は、CH
4の同じ相対マッハ数に対するCH
4の始動曲線376に関するものより小さく、それによって、始動及び定常動作の両方に実質的に同じ流体を用いたロータ40と同様のロータよりもより高い効率の動作を促進する。
【0066】
例えば、限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約1.8のCH
4の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、C
3H
8による始動は、入口の面積の約58%である最小スロート面積を必要とし、CH
4による定常動作は、入口の面積の約68%である最小スロート面積を必要とし、CH
4による始動は、入口の面積の約86%である最小スロート面積を必要とする。従って、約1.8のCH
4の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、C
3H
8による始動及びCH
4による定常動作を促進するのには、入口の面積の約68%のスロート面積で十分であることになる。更に、約18%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その18%は、入口の面積の約86%(CH
4による始動に関する)と入口の面積の約68%(CH
4による定常動作に関する)との違いを表すものである。このスロート面積の18%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0067】
また、例えば、同じく限定されるものではないが、超音速圧縮機ロータ40は、約2.2のCH
4の相対マッハ数の値での定常動作が得られるように寸法決め及び構成することができる。そのような構成において、C
3H
8による始動は、入口の面積の約53%である最小スロート面積を必要とし、CH
4による定常動作は、入口の面積の約47%である最小スロート面積を必要とし、CH
4による始動は、入口の面積の約78%である最小スロート面積を必要とする。従って、約2.2の空気の相対マッハ数によって動作するように設計された超音速圧縮機ロータ40では、C
3H
8による始動及びCH
4による定常動作を促進するのには、入口の面積の約53%のスロート面積で十分であることになる。更に、約25%のスロートの寸法縮小の利点が促進されることになり、その25%は、入口の面積の約78%(CH
4による始動に関する)と入口の面積の約53%(C
3H
8による始動に関する)との違いを表すものである。そのようなスロート面積の約25%の寸法縮小は、超音速圧縮機ロータ40の効率の向上を促進する。
【0068】
図7を参照すると、動作中、始動流体源304は、流体制御装置308及び制御システム310を介して入口開口部76に連結される。具体的には、制御システム310は、回転速度、質量流体流速、流体排出圧、流体相対速度、圧縮比、流体温度、及び時間パラメータを含むが、これに限定されるものではない複数の変数に基づいて、弁、ポンプ、モータ、並びに電力、空気動力、及び/又は油圧動力供給装置を含むが、これに限定されるものではない装置308内の構成部品を調整する。
【0069】
最初は、超音速圧縮機ロータ40は実質的に静止しており、第1、即ち、始動流体は、超音速圧縮機システム10の第1動作モード中に始動流体源304から流体流路入口76に案内され、その場合、超音速圧縮機システム10の第1動作モードは開始、又は始動モードである。例示的実施形態において、始動流体は、始動モード中に流体流路80のスロート部分124において超音速流の獲得を可能にする第1の複数の流体特性を有する。また、例示的実施形態において、始動流体としては、CO
2、SF
6、空気、C
3H
8、及びC
4H
10の少なくとも1つが挙げられるが、これに限定されるものではなく、始動流体特性は、第1音速値を含む。
【0070】
また、動作中、超音速圧縮機ロータ40、及びそこに案内される始動流体は、始動動作モード中に流体流路80のスロート部分124において始動流体を初期亜音速流から超音速流に加速する。
【0071】
更に、動作中、上記のように始動流体の所定速度に達した時点で、流体制御装置308及び制御システム310は、超音速圧縮機システム10の始動動作モード中の始動流体の案内から、第2動作モード中の第2、即ち、定常流体の案内へ移行するものであり、その場合、第2動作モードは定常モードである。従って、定常動作モード中に相対音速で定常流体を定常流体源306から流体流路入口76に案内することによって、流体流路80のスロート部分124における定常流体の超音速流の維持を促進する。例示的実施形態において、定常流体としては、空気、CO
2、N
2、CH
4、及び所定の重量パーセントのメタンを有する天然ガスの少なくとも1つが挙げられるが、これに限定されるものではない。定常流体は、始動流体の第1音速値よりも大きな第2音速値を有する。超音速圧縮機ロータ40は、始動流体から定常流体への移行中及び移行後、更に加速又は減速してもよく、或いはしなくてもよい。
【0072】
一実施形態において、始動流体及び定常流体は異なる単一ガスであり、例えば、これに限定されるものではないが、CO
2が始動流体であり、空気が定常流体であり、その場合、CO
2から空気への移行は空気の音速の約1.6倍の相対流体速度(
図9に示す)で実行される。代替的には、始動流体及び定常流体は異なるガス状混合物であり、例えば、これに限定されるものではないが、始動流体は、始動流体として上記したものを含む所定のガス混合物であり、定常流体は、定常流体として上記したものを含む所定のガス混合物である。
【0073】
更に、代替的には、始動流体及び定常流体は、実質的に同様の単一ガス及び/又は実質的に同様のガス状混合物である。より詳細には、始動流体及び定常流体は、実質的に同様の単一ガス及び/又は実質的に同様のガス状混合物の一方であり、その場合、始動流体は第1温度を有し、定常流体は第1温度とは異なる第2温度を有する。流体の音速は流体の温度の関数であって、流体の音速が温度の上昇と共に上昇するようになっている。更に、上記の通り、より低い音速を有する流体はより高い音速を有する流体よりも優れた始動流体になる。従って、例えば、限定されるものではないが、始動流体は第1温度の空気であってよく、定常流体は第2温度の空気であってよく、その場合、第2温度は第1温度よりも高い。
【0074】
更に、代替的には、始動流体及び定常流体は、上記したように、異なる単一ガス、異なるガス状混合物、実質的に同様の単一ガス、及び実質的に同様のガス状混合物の1つであるが、加えて、そのような流体は、同伴液体粒子及び/又は同伴固体粒子の少なくとも一方を含む。
【0075】
上記の超音速圧縮機始動支援システムは、始動動作中に超音速圧縮機システムの性能の効率を向上させる費用効果的な信頼性の高い方法を提供する。更に、超音速圧縮機始動支援システムは、スロート領域の下流の垂直衝撃波を形成及び維持するために一定の形状のスロート領域の使用を促進することによって、超音速圧縮機システムの作動効率の向上を促進する。より詳細には、超音速圧縮機始動支援システムは、始動及び定常動作中の適切な位置における垂直衝撃波の形成及び維持を促進する流体特性を有する少なくとも1つの流体を案内する少なくとも1つの流体源を含む。
【0076】
以上に、超音速圧縮機ロータを始動するシステム及び方法の例示的実施形態を詳細に説明した。このシステム及び方法は、本明細書に記載された特定の実施形態には限定されず、反対に、このシステムの構成部品及び/又はこの方法のステップは、本明細書に記載される他の構成部品及び/又はステップとは独立して別個に利用することができる。例えば、このシステム及び方法は、他のロータリーエンジンシステム及び方法と組み合わせて使用することもでき、本明細書に記載された超音速圧縮機システムだけを使用して実施することに限定されない。反対に、他の多くのロータリーシステム用途に関して、この例示的実施形態を実現し、利用することができる。
【0077】
本発明の様々な実施形態の特定の特徴が、一部の図面には示されており、別の図面には示されていないことがあるが、これは便宜上そうしたに過ぎない。更に、上記記載における「一実施形態」に対する言及は、記載の特徴を同様に組み込んだ付加的な実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図するものではない。本発明の原理に従って、ある図面の任意の特徴を、別の図面の任意の特徴と組み合わせて参照し、且つ/又は請求することができる。
【0078】
本明細書は、実施例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示し、更にあらゆる装置又はシステムを製作且つ使用すること及びあらゆる組み込まれた方法を実行することを含む本発明の実施を当業者が行なうのを可能にする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する同等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになるものとする。