(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダ(2)と、燃焼空気用の吸気窓(10)と、少なくとも1つの掃気通路(14)とを備え、前記シリンダ(2)内にピストン(5)がシリンダ縦軸線(50)の方向に往復動するように支持され、前記ピストン(5)が、連接棒(6)を介して、クランクケース(3)内に回転可能に支持されているクランク軸(7)を駆動し、前記連接棒(6)がピストンピン(15)を介して前記ピストン(5)と結合され、前記吸気窓(10)が、前記シリンダ(2)のシリンダ壁(11)に配置されて前記ピストン(5)のピストンスカート(30)によって開閉制御され、且つ前記吸気窓(10)は前記ピストン(5)の少なくとも1つの位置で完全に閉じており、前記ピストン(5)が前記シリンダ(2)内に形成された燃焼室(4)をクランクケース内部空間(9)から切り離し、且つピストン底部(31)を有し、該ピストン底部(31)の下面(32)が前記クランクケース(3)側にあり、前記シリンダ壁(11)に、前記燃焼室(4)に通じる排気口(12)が開口し、前記シリンダ(2)と前記クランクケース(3)とが仕切り面(20)によって互いに仕切られており、前記掃気通路(14)を介して燃焼空気が前記クランクケース内部空間(9)から前記燃焼室(4)内へ流動する2サイクルエンジンにおいて、
前記クランクケース内部空間(9)内に、前記吸気窓(10)に隣接する位置に第1の流動誘導要素(19,62)が配置され、該第1の流動誘導要素(19,62)が前記吸気窓(10)を通って流入する燃焼空気を前記ピストン底部(31)の前記下面(32)の方向へ誘導すること、
前記掃気通路(14)が連通開口部(37)でもって前記クランクケース(3)に開口し、前記連通開口部(37)が、前記排気口(12)の、前記クランクケース(3)側に配置されていること、
を特徴とする2サイクルエンジン。
前記第1の流動誘導要素(19,62)の進入面(24,63)の幅(c)が、前記クランク軸(7)の回転軸線(8)に対し平行に測った前記吸気窓(10)の幅(d)の少なくとも15%に相当していることを特徴とする、請求項1または2に記載の2サイクルエンジン。
前記連接棒(6)が前記ピストンピン(15)を取り囲んでいる上部連接棒小端部(33)を有し、前記第1の流動誘導要素(19,62)の前記進入面(24,63)の、前記クランク軸(7)の前記回転軸線(8)に対し平行に測った幅(c)が、前記上部連接棒小端部(33)の、前記クランク軸(7)の回転軸線(8)に対し平行に測った厚さ(b)の少なくとも80%に相当していることを特徴とする、請求項3に記載の2サイクルエンジン。
前記第1の流動誘導要素(19,62)が繰り抜き部(38,67)を有し、該繰り抜き部(38,67)内に、前記クランク軸(7)の回転時に前記連接棒(6)が侵入することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
前記クランクケース内部空間(9)が分割要素(42,47,54,60,75,90)によって第1の領域(58)と第2の領域(59)とに分割され、前記第1の領域(58)に前記吸気窓(10)が開口するとともに、前記第1の領域(58)内に前記第1の流動誘導要素(19,62)が配置され、前記第2の領域(59)内で前記クランク軸(7)が回転し、前記掃気通路(14)が前記第2の領域(59)に開口していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
前記第1の領域(58)と前記第2の領域(59)とが溢れ穴(46,65,82)を介して互いに連通し、前記ピストン(5)の下死点で前記溢れ穴(65,82)の自由流動横断面積が前記吸気窓(10)の流動横断面積のほぼ200%以下であることを特徴とする、請求項7に記載の2サイクルエンジン。
少なくとも1つの流動誘導要素(19,48,62,91)が前記分割要素(42,47,54,60,75,90)に配置されていることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
前記分割要素(60,75,90)が、前記ピストン(5)の下死点で前記第1の領域(58)を十分に充填する充填部材として形成されていることを特徴とする、請求項7から12までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
前記分割要素(60,75,90)とシリンダ壁(11)との間に環状隙間(69)が形成され、該環状隙間(69)内へ前記ピストンスカート(30)が前記ピストン(5)の下死点で侵入することを特徴とする、請求項7から15までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ピストンおよびピストンピンの冷却を改善したこの種の2サイクルエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の構成によって解決される。
【0006】
吸気口を介して流入する燃焼空気が第1の流動誘導要素によりピストン底部の下面方向へダイレクトに転向されることにより、ピストン底部と同様にこの方向にあるピストンピンとは非常に冷えた空気で冷却される。有利には、流入する燃焼空気は燃料および潤滑油をも含んでおり、このことは冷却効果をさらに改善させる。吸気口を介して流入する燃焼空気は、クランクケース内にある燃焼空気よりも著しく冷えており、その結果ピストンピンおよびピストンの冷却が改善される。
【0007】
有利には、ピストンがピストンスカートを有し、該ピストンスカートがピストン内部空間を少なくとも部分的に取り囲んでおり、第1の流動誘導要素がピストンの下死点でピストン内部空間内へ侵入する。これにより2サイクルエンジンの構成空間が小さくなり、流動誘導要素を吸気口のすぐ近くに配置することができる。第1の流動誘導要素の進入面の幅は、有利には、クランク軸の回転軸線に対し平行に測った吸気窓の幅の少なくとも15%に相当している。これにより、流入する燃焼空気の一部はピストン底部の下面へ転向される。なお、構成要素の幅とは最大幅である。進入面の幅は、合目的には、吸気口の幅の少なくともほぼ25%、特に少なくともほぼ50%、有利には少なくともほぼ75%、特に有利には少なくともほぼ100%である。できるだけ多くの燃焼空気がダイレクトにピストンへ転向されるようにするため、進入面の幅は有利には可能な限り大きいのがよい。この場合、進入面の可能な限り大きな幅は、ピストン内に提供される構成空間によって画成される。
【0008】
有利には、連接棒はピストンピンを取り囲んでいる上部連接棒小端部を有している。第1の流動誘導要素の進入面の、クランク軸の回転軸線に対し平行に測った幅は、上部連接棒小端部の、クランク軸の回転軸線に対し平行に測った厚さの少なくとも80%に相当している。なお、厚さとは最大厚さであり、すなわちクランク軸の回転軸線の方向における最大延在距離である。有利には、進入面の幅は連接棒の厚さよりも大きい。これにより、ピストンピン小端軸受がその全長にわたって好適に冷却されることが達成される。
【0009】
進入面を可能な限り大きくしたうえで2サイクルエンジンの構成空間を小さくするため、第1の流動誘導要素は繰り抜き部を有し、該繰り抜き部内に、クランク軸の回転時に連接棒が侵入する。
【0010】
第2の流動誘導要素が設けられ、該第2の流動誘導要素は、燃焼室に通じる排気口の、クランクケース側に配置され、ピストンの下死点ではピストンスカートのクランクケース側の縁に隣接した位置にある。この場合、第2の流動誘導要素は有利にはクランク軸の回転方向とは逆の方向に且つクランクアームの飛翔円に隣接して配置され、混合気をクランクケースからピストン底部の下面の方向に、そしてピストンピンへ、特にピストン小端軸受へ誘導する。第1の流動誘導要素を第2の流動誘導要素と組み合わせることにより、ピストン底部およびピストンピンの非常に好適な冷却が生じる。というのは、燃焼空気または混合気は吸気側によっても、これに対向する排気口側によってもピストン底部とピストンピンとへ誘導されるからである。
【0011】
有利には、クランクケース内部空間は分割要素によって第1の領域と第2の領域とに分割され、第1の領域に吸気窓が開口するとともに、第1の領域内に第1の流動誘導要素が配置され、第2の領域内でクランク軸が回転し、掃気通路は第2の領域に開口している。吸気口を介して流入する燃焼空気は流動誘導要素によってまずピストン下面へ誘導される。ピストン下降行程の際に燃焼空気は第1の領域から第2の領域へ移動する。分割により第1の領域から第2の領域への溢れが困難になり、その結果、吸気口を介して流入する燃焼空気はまずピストン底部とピストンピンとに達し、すぐに第2の領域へ流動することはない。掃気通路が第2の領域に開口していることにより、燃焼空気は第1の領域から第2の領域へ溢れざるを得ず、その後掃気通路を介して燃焼室へ溢れることができる。これにより好適なガス循環が達成される。
【0012】
有利には、第1の領域と第2の領域とは溢れ穴を介して互いに連通している。溢れ穴は有利には可能なかぎり小さく形成されている。ピストンの下死点で溢れ穴の自由流動横断面積は吸気窓の流動横断面積のほぼ200%以下である。特に有利には、流動横断面積は吸気窓の流動横断面積のほぼ150%以下、特にほぼ120%以下である。有利には、ピストンの下死点での溢れ穴の自由流動横断面積と吸気窓の流動横断面積はほぼ等しい。この場合、連接棒は溢れ穴を通じて突出しており、連接棒と溢れ穴の縁との間の隙間は、燃焼空気が第1の領域から第2の領域へ溢れるように非常に幅狭であるにすぎない。これによりクランクピン軸受の好適な冷却も達成される。進入する燃焼空気が燃料を含んでいると、同時にクランクピン軸受の好適な潤滑も得られる。ピストンの下死点では、有利には上部連接棒小端部は溢れ穴の領域にあり、その結果溢れ穴の自由流動横断面積は、溢れ穴内での上部連接棒小端部の横断面積を差し引いた溢れ穴の面積から得られる。
【0013】
少なくとも1つの流動誘導要素が分割要素に配置されていれば、簡潔な構成が得られる。流動誘導要素と分割要素とは有利には1つの部材として形成され、その結果個別部品数が少なくなる。分割要素が特に流動誘導要素をも含めてクランクケースに一体成形されていてもよい。噴射成形での製造の際にクランクケースを簡単に脱型することができるようにするため、有利には、クランクケースは2つのクランクケース半部分から構成され、これらのクランクケース半部分はシリンダ縦軸線に対し平行で且つクランク軸の回転軸線に対し垂直な1つの面内で互いに当接しあっている。しかしながら、分割要素が、クランクケースとシリンダとの間の仕切り面の領域に固定される別個の部材であるのも有利である。
【0014】
クランクケース内での混合気の予圧縮を向上させるため、分割要素が、ピストンの下死点で第1の領域を十分に充填する充填部材として形成されている。充填部材の大きな容積にもかかわらず、2サイクルエンジンの軽量化を達成するため、分割要素が中空に形成されているのが有利である。この場合、充填部材は薄壁に形成されている。合目的には、分割要素は、排気口に近い充填要素と、掃気部に近い2つの充填要素とを有し、該掃気部に近い充填要素は周方向において排気口に近い充填要素と第1の流動誘導要素との間に配置されている。この場合、流動誘導要素も有利には充填部材として形成されている。
【0015】
有利には、分割要素とシリンダ壁との間に環状隙間が形成され、該環状隙間内へピストンスカートがピストンの下死点で侵入する。この場合、環状隙間は可能な限り密封して実施されている。ピストンは下降行程の際に環状隙間内の体積物を排出させねばならず、上昇行程の際には対応的に環状隙間内へ燃焼空気および燃料を吸い込むので、環状隙間の良好な掃気が達成され、これによってこの領域でのシリンダ壁の良好な潤滑が達成される。環状隙間としての構成により、分割要素とシリンダ壁との間での高度なガス循環が保証されている。
【0016】
有利には、流動誘導要素はその機能にとって必要な構成要素のみから成っている。流動誘導要素の軽量化を達成するため、有利には流動誘導要素は、薄壁に形成され、且つ進入面と該進入面を位置決めする少なくとも1つの要素とから成っている。特に、進入面を位置決めする2つのアームが設けられている。有利には、流動誘導要素は、1つの進入面と該進入面を位置決めする複数個の要素とから成っている。流動誘導要素が薄壁に形成され、他の要素が流動誘導要素に統合されていてもよい。流動誘導要素の壁厚は有利にはほぼ5mm以下であり、特にほぼ3mm以下であり、特に有利にはほぼ2mm以下であり、その結果薄壁の構成が生じる。シリンダとクランクケースとは有利には仕切り面によって互いに仕切られている。流動誘導要素は仕切り面に隣接するように固定されている。流動誘導要素は仕切り面を起点としてシリンダまたはクランクケースに固定されていてよく、たとえば固定ねじを介して固定されていてよい。しかし、流動誘導要素は仕切り面内においてもシリンダとクランクケースとの間で保持されていてもよい。
【0017】
流動誘導要素の進入面は上部エッジを有し、上部エッジはピストン底部側にあり、流動を剥離させる。有利には、進入面の上部エッジは直線状に延在している。しかし、進入面が上部エッジにおいて凹状に延在していも有利である。従って、進入面は上部エッジにおいてシリンダ縦軸線の方向に湾曲している。進入面の上部エッジの湾曲部は、ピストンの外面の湾曲部とは逆方向に延在している。進入面は有利には少なくとも1つの方向で凹状に延在している。有利には、進入面は、シリンダ縦軸線を含む断面と、これに対し垂直で且つシリンダ縦軸線と垂直に交わる断面とで、凹状に湾曲して延在している。これによりピストン底部およびピストンピンボアへの良好な進入が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は2サイクルエンジン1を示している。2サイクルエンジン1は単気筒エンジンとして構成され、たとえばパワーソー、砥石切断機(ディスクグラインダ)、刈払い機等の手で操縦される作業機の駆動原動機として用いることができる。2サイクルエンジン1はシリンダ2を有し、シリンダ2内にはピストン5が往復動するように支持されている。ピストン5は、連接棒6を介して、クランクケース3内で回転軸線8のまわりに回転可能に支持されているクランク軸7を駆動する。ピストン5はシリンダ2内に形成されている燃焼室4を画成しており、燃焼室4内には点火プラグ13が突出している。シリンダ壁11には吸気窓10が配置され、該吸気窓10を介して燃焼空気が流動方向23に供給される。吸気窓10はシリンダ壁11に設けた、燃焼空気用供給通路の開口部である。有利には、燃焼空気は燃料および潤滑油をも含んでおり、その結果吸気窓10を介して燃料空気混合気が供給される。しかし、燃料をたとえばクランクケース内または掃気通路内に後で供給するようにすること、そして吸気窓10を介して純粋な燃焼空気を吸い込むようにしてもよい。吸気窓10に対向するように、燃焼室4に通じる排気口12がシリンダ壁11に開口している。吸気窓10と排気口12とはピストン5のピストンスカート30によって開閉制御される。
【0020】
ピストン5はピストン底部31を有し、ピストン底部31は燃焼室4をクランクケース内部空間9から仕切っている。連接棒6は、その上部連接棒小端部33において、ピストン小端軸受16を用いて、ピストン5に設けたピストンピン15で回動可能に支持されている。連接棒6は反対側端部に下部連接棒小端部34を有し、該下部連接棒小端部34にはクランクピン軸受17が配置され、該クランクピン軸受17をクランク軸7が貫通突出している。回転軸線8を境にして下部連接棒小端部34とは反対の側には、クランク軸7にクランクアーム18が設けられている。
【0021】
クランクケース内部空間9内には、吸気窓10に隣接して第1の流動誘導要素19が配置されている。第1の流動誘導要素19は進入面24を有している。ピストン底部31の下面32は、クランクケース内部空間9を画成している。
図1に図示したピストン5の上死点では、燃焼空気(有利には燃料と潤滑油とを含んでいる)は流動方向23において吸気窓10によって吸い込まれ、流動方向29において進入面24からピストン底部下面32およびピストンピン15のほうへ転向する。これによってピストン小端軸受16およびピストン底部31の良好な冷却が達成される。同時に、燃焼空気が燃料を含んでいれば、シリンダ壁11も流入してくる新鮮な混合気によって湿潤され、この新鮮な混合気をクランク軸7へダイレクトに到達させないので、シリンダ壁11の良好な潤滑も生じる。
【0022】
進入面24は、吸気窓10に隣接している下部エッジ21と、該下部エッジ21よりもピストン底部31により近い位置にある上部エッジ27とを有している。
図1の断面図では、上部エッジ27と下部エッジ21とは直線92上にある。直線92はシリンダ縦軸線50と角度αで交わっており、角度αは本実施形態ではほぼ60゜である。有利には角度αは可能な限り小さく、その結果燃焼空気はピストン底部31およびピストンピン15に対し可能な限り急傾斜で転向する。なお、図示した断面では進入面24は凹状に形成されている。これによって流動抵抗が小さくなる。
【0023】
図2は、ピストン5を、吸気窓10が完全に閉じている位置で示したものである。ピストン5の下降行程の際に燃料空気混合気はクランクケース内部空間9内で圧縮される。
図2は、さらに、進入面24が吸気窓10に隣接して配置されていることを示している。進入面24は吸気窓10の下三分の一の高さに配置されている。吸気窓10の下部エッジ25は、図示した縦断面図で進入面24の下部エッジ21をも含んでいる仮想の面26内にある。進入面24は仮想の面26の下方にあっても、または、仮想の面26のすぐ上方にあってもよい。図示した断面図では、進入面24の上部エッジ27は仮想の面28内にあり、仮想の面28は、吸気窓10とクランクケース3側の下半分と、有利にはたとえば下三分の一と交わっている。仮想の面26と28はシリンダ縦軸線50に対し垂直である。吸気窓10の下部エッジ25と、進入面24の下部エッジ21と、進入面24の上部エッジ27とは、円弧状に延在していてよい。進入面24の下部エッジ21を、シリンダ縦軸線50に関し吸気窓と同じ高さまたはその下方に配置する構成は、クランク軸7の回転軸線8に対し垂直で且つシリンダ縦軸線50を含むような断面に関わる。有利には、下部エッジ21を吸気窓の下部エッジ25と同じ高さまたはその下方に配置する構成は、シリンダ縦軸線50を含んでいる面に対し平行に延在するすべての断面にも与えられている。進入面24の下部エッジ21は、流動抵抗が小さくなるように吸気窓10に対し位置決めされている。
【0024】
図2が示すように、流動誘導要素19は繰り抜き部38を有し、該繰り抜き部38内には、ピストンの下降行程の際に連接棒6が突出する。
図2にはさらにクランク軸7の回転方向80が図示されている。
【0025】
図3が示すように、ピストンスカート30はピストン内部空間35を囲んでいる。この場合、ピストン内部空間35は全周にわたってピストンスカート30によって完全に取り囲まれておらず、実質的にピストン5の吸気窓10側及び排気口12側の側面で取り囲まれている。ピストン5の上死点では、流動誘導要素19はピストン内部空間35の下方にある。ピストン5の下死点(
図4では)、流動誘導要素19はピストン内部空間35内へ突出する。
図3は、上部連接棒小端部33がピストン小端軸受16および中空のピンとして形成されているピストンピン15とともに配置されていることをも示している。
【0026】
図4はピストン5を下死点で示している。流動誘導要素19は完全にピストン内部空間35内に配置されており、ピストンスカート30と上部連接棒小端部33との間にある。
【0027】
また、
図4が示すように、ピストン5の下死点で燃焼室4をクランクケース内部空間9と連通させる掃気通路14は、掃気窓36でもって燃焼室4に開口している。ピストン5の下死点では掃気窓36は完全に開いており、クランクケース内部空間9から来る燃料空気混合気は、掃気通路14をクランクケース3に連通させている連通開口部37を介して、掃気通路14および掃気窓36を燃焼室4内へ流入する。
【0028】
本実施形態では、掃気通路14はただ1つの連通開口部37でもってクランクケース3に開口している。複数個の連通開口部37を設けてもよく、有利にはそれぞれの掃気通路14に対し1つの連通開口部37を設ける。連通開口部37は排気口12のクランクケース3側に配置され、すなわち排気口12の下方に配置されている。掃気通路14はクランクケース3から燃焼室4への流動方向において排気口12の下方で2つの枝路に分かれており、これらの枝路はシリンダ2のまわりに螺旋状に案内され(
図5)、それぞれ2つの掃気窓36でもって燃焼室4に開口している。
【0029】
図5が示すように、クランク軸7の回転軸線8に対し平行に測った連接棒小端部33の厚さb(連接棒小端部の最大厚さを表わす)は、同様に回転軸線8に対し平行に測った進入面24の幅c(進入面24の最大幅を表わす)よりも小さい。幅cは厚さbよりも幾分小さくてもよい。幅cは有利には厚さbの少なくとも80%、合目的には少なくとも100%である。また
図5が示すように、進入面24は吸気窓10の幅dの大部分にわたって延在している。幅dは回転軸線8に対し平行に測ったものであり、吸気窓10の最大幅を表わしている。幅cは合目的には幅dの少なくともほぼ15%、特に少なくともほぼ25%、有利には少なくともほぼ50%、好ましくは少なくともほぼ75%、特に有利にはほぼ100%以上である。幅cは有利には組み立て比率に基づいた大きさでよい。
【0030】
また
図5が示すように、流動誘導要素19は、ピストンスカート30側に、本実施形態では湾曲した周面41を有し、その輪郭はほぼピストンスカート30の内側輪郭に対応しており、その結果流動誘導要素19とピストンスカート30との間には幅狭の隙間しか形成されていない。これにより、少量の燃料空気混合気しか吸気窓10からダイレクトにクランク軸7の方向に流れないよう保証される。幅cが吸気窓10の幅dよりも幾分小さいことにより、燃焼空気は流動誘導要素19の側方を通ってクランクケース内部空間9内へ流入することができる。しかし、燃料空気混合気は有利には連接棒小端部33の厚さbを介して実質的に連接棒小端部33のほうへ誘導される。
【0031】
図6と
図7は第1の流動誘導要素19の構成を示している。流動誘導要素19は2つのアーム22を有し、これらのアーム22は外側側方へ案内され、それらの間に繰り抜き部38が形成されている。
両アーム22はクランクケース内部空間9内で進入面24を位置決めして固定するために用いる。
両アーム22は固定ねじ39を用いてシリンダ2とクランクケース3との間の
仕切り面20(
図1)内にねじ止めされている。従って、流動誘導要素19は進入面24の位置決めおよび固定に必要な構成要素のみを含んでいるにすぎない。流動誘導要素19の他の固定態様も有利である。
【0032】
図8と
図9が示しているように、第1の流動誘導要素19は薄壁に形成されている。流動誘導要素19の壁厚kは
図13に示してある。壁厚kは有利には実質的に一定であり、その結果材料過多が避けられる。最大壁厚kは有利にはほぼ5mm以下であり、特にほぼ3mm以下であり、特に有利にはほぼ2mm以下である。両アーム22はほぼU字状の横断面を有し、その結果軽量で高い安定性が生じる。周面41も軽量化のために用いる繰り抜き部を有している。各アーム22は、クランクケース3に固定するため、その端部に固定穴40を有し、固定穴40を固定ねじ39が貫通突出する。進入面24の下部エッジ21と上部エッジ27とは直線状に延在しておらず、わずかに湾曲している。進入面24は上部エッジ27の長手方向に同様に凹状に延在している。従って、進入面24は流動方向29においても該流動方向29に対し横方向においても凹状に形成されている。
【0033】
図10は、第1の流動誘導要素19を分割要素42と一体に実施した実施形態を示している。分割要素42は実質的にプレートとして実施され、その隅角部の領域に固定穴43を有している。分割要素42はシリンダ2とクランクケース3との間に配置されてクランクケース3と螺合させてよい。分割要素42は第1の流動誘導要素19に対向して壁部分44を有し、壁部分44は
仕切り面20に対しほぼ平行にシリンダ2とクランクケース3との間に延在している。壁部分44は連接棒6のための繰り抜き部45を有している。壁部分44は溢れ穴46を画成しており、該溢れ穴46により燃焼空気または燃料空気混合気はピストン5の領域からクランク軸7の領域へ流れる。溢れ穴46は比較的大きく形成されている。
【0034】
図11は、流動誘導要素19が分割要素47と一体に形成されている他の実施形態を示している。
図12にも示したように、分割要素47はシリンダ2とクランクケース3との間の
仕切り面20の領域で固定ねじ52を用いてクランクケース3にねじ止めされている。分割要素47は第2の流動
誘導要素48を有し、該第2の流動誘導要素48はクランクアーム18の飛翔円に隣接してほぼピストンスカート30のクランクケース側下縁57の高さで、
図11には図示していない排気口12のクランクケース3側に配置されている。流動誘導要素48は、クランク軸7の回転方向80とは逆方向に
向けれられる進入面49を有している。これにより、クランクアーム18によって搬送されてきた混合気は流動誘導要素48からピストン内部空間35内へ誘導される。また
図11が示すように、流動誘導要素48も連接棒6のための繰り抜き部51を有している。
【0035】
分割要素47は、クランクケース内部空間9を、ピストン5に隣接していて吸気窓10が開口している第1の領域58と、クランク軸7が配置されている第2の領域59とに分割している。両領域58と59は分割要素47内に形成された溢れ穴46によって互いに結合されている。溢れ穴46は前記分割要素42の溢れ穴46に相当している。
【0036】
図12が示すように、第1の流動誘導要素19と第2の流動誘導要素48との間の周方向領域に側部要素53が配置されている。側部要素53はピストン5の下死点でピストンスカート30に隣接するように位置し、第1の領域58の容積を縮小させている。従って側部要素53は充填部材として作用する。
【0037】
図13ないし
図15は、
図11と
図12に示した分割要素47に実質的に対応している、分割要素54の他の実施形態を示している。分割要素54も第1の流動誘導要素19と第2の流動誘導要素48と側部要素53とを含んでいる。分割要素54は分割要素42に対応して固定板55を有し、固定板55は4つの固定穴56を有し、シリンダ2とクランクケース3との間に配置され、そこに固定されている。
図13ないし
図15の分割要素54は複数に分割して実施されていてよく、特に2分割に実施されていてよく、後で説明する
図22および
図23の実施形態と同様にクランクケースに一体に成形されていてよい。
【0038】
図16および
図17に示した実施形態では、充填部材として形成され、ピストン5下方の容積部を十分に充填してクランクケース3内での予圧縮を向上させる分割要素60が設けられている。分割要素60は第1の流動誘導要素62を含み、該第1の流動誘導要素62は連接棒6のための繰り抜き部66を有している。この繰り抜き部66を除けば、第1の流動誘導要素62は中実に形成されている。分割要素60は、排気口12に隣接して、排気口に近い充填要素61を有している。排気口に近い充填要素61は連接棒6のための繰り抜き部67を有している。分割要素60の外壁68とシリンダ壁11との間には環状隙間69が形成され、該環状隙間69は外部に対しおよびクランク軸7が配置されているクランクケース3の領域に対し十分に密封されている。
図17が示すように、ピストン5の下死点でピストンスカート30は完全にこの環状隙間69内に配置される。環状隙間69が十分に密封されていることにより、該密封隙間69内にある混合気は、ピストン5の下降行程の際にシリンダ壁11に沿って且つピストンスカート30の内面に沿ってピストン内部空間35内へ流入する。これによりシリンダ壁11の好適な潤滑が達成される。また
図17が示すように、排気口に近い充填要素61は、ピストン底部31とは逆の側に縁70を有し、縁70は環状隙間69の環状溝を形成し、ピストンスカート30の縁を取り囲んでいる。縁70はシリンダ2とクランクケース3との間の
仕切り面20まで案内され、そこで、シリンダ2とクランクケース3との間に配置されたパッキンによって密封されている。
【0039】
図16と
図17が示すように、分割要素60は第1の領域58を第2の領域59から分割している。環状隙間60は第1の領域58の一部であり、第2の領域59に対し密封されている。稜領域は溢れ穴65によった互いに連通しており、溢れ穴65には連接棒6が貫通突出している。燃焼空気は溢れ穴65のみを介して第1の領域58から第2の領域59へ到達することができる。また
図16が示すように、周方向において、排気口に近い充填要素61と第1の流動誘導要素62との間には、掃気部に近い充填要素64が配置されている。
図16が示すように、第1の流動誘導要素62は進入面63を有し、該進入面63は前記進入面24に対応して吸気窓10に隣接して配置されている。
【0040】
進入面63は、図示したシリンダ縦軸線50に対し平行な断面方向においては凹状に形成されている。進入面63は下部エッジ77を有し、下部エッジ77は仮想の面79内にある。進入面63のピストン底部31側の上部エッジ78は仮想の面81内にある。面79と81はシリンダ縦軸線50に対し垂直である。進入面63は、下部エッジ77に隣接して、有利には面79に対しほぼ接線方向に延在している。進入面63は下部エッジ77から上部エッジ78へ横断面にてほぼ四分の一円状に延在している。上部エッジ78での接線89は非常に急傾斜に延びている。接線89はシリンダ縦軸線と角度βを成し、角度βは有利にはほぼ20゜以下、特にほぼ10゜以下である。面79は吸気窓10の幾分下方にあり、面81は本実施形態では吸気窓10とその上部領域にて交わっている。面79は吸気窓の下部エッジ25(
図2)の領域にあってもよい。下部エッジ75を吸気窓の下部エッジ25とほぼ同じ高さまたはその下方に配置することにより、流動抵抗が小さくなる。上部エッジ78は、ピストン底部31と接触しない程度に可能な限りピストン底部31の近くに配置されている。上部エッジ78を可能な限りピストン底部31の近くに配置することにより、良好な流動誘導が達成され、よってピストン底部31の良好な冷却が達成される。進入面63は、本実施形態では、シリンダ縦軸線50の方向に測った吸気窓10のほぼ全高hにわたって延在している。高さhはシリンダ縦軸線50に平行な方向での吸気窓10の最大延在距離を表わしている。
【0041】
図18は、ピストン5の下死点でのピストン5および分割要素60の配置を示している。掃気部に近い充填要素64は、ピストン内部空間35(
図17)の外側に配置されている。掃気部に近い充填要素64の外面は湾曲しており、ピストンスカート30とともに筒状面を形成している。掃気部に近い充填要素64の外面は、ピストンスカート30の外面がある前記筒状面に対し、わずかに内側または外側へずれていてもよい。
【0042】
図19ないし
図21は分割要素30の詳細構成図である。掃気部に近い充填要素64はシリンダ壁11とピストン5の外面との間の領域を十分に充填している。掃気部に近い充填要素64は、ピストン5の下死点で、ピストン内部空間35の外側にして
図17に示したピストン5の細条部73に隣接した位置にある。細条部73はピストンピン15を保持している。
図19が示しているように、進入面63の上部エッジ78は直線を成している。
図17および
図20が示すように、溢れ穴65はクランク軸7の回転軸線8に対し垂直に測った長さeを有している。長さeは、シリンダ縦軸線50の方向において溢れ穴65の領域まで延在している繰り抜き部67の深さを含む溢れ穴65の全長を表わしている。繰り抜き部66も、ピストン5の下死点で上部連接棒小端部33が配置される領域まで延在していてよい。長さeと幅fとは、ピストン5の下死点で連接棒小端部33の中心の高さで測ったものである(
図17)。
図21には、回転軸線8に対し平行に測った溢れ穴65の幅fが示されている。長さeと幅fとは
図22にも示されている。排気口に近い充填要素61の外側輪郭はこの領域でのピストン5の内側輪郭に対応している。
【0043】
従って、分割要素60は、ピストン5の下死点でピストン内部空間35を十分に自由点する充填部材を形成している。この場合分割要素60のサイズは、与えられた製造公差においてピストン5と分割要素60との間に接触が生じないように、且つシリンダ縦軸線50の方向でのピストン5の支障のない運動が保証されるように選定されている。
【0044】
図23は、溢れ穴65内での連接棒小端部33を示している。この位置はピストン5の下死点に相当している。溢れ穴65は比較的小さく形成され、そのサイズは、上部連接棒小端部33と分割要素60との間の接触が不可能であるように選定されている。溢れ穴65の自由流動横断面積はピストン5の下死点で有利には吸気窓10の流動横断面積のたかだか200%、特に吸気窓10の流動横断面積の150%以下である。特に有利には、吸気窓10と溢れ穴65の流動横断面積は同じである。なお、吸気窓10の流動横断面はシリンダ壁11の流動横断面である。溢れ穴65の自由流動横断面積は、溢れ穴65内での上部連接棒小端部33の横断面積を差し引いた溢れ穴65の流動横断面積から得られる。溢れ穴65は
図13に示した溢れ穴46よりも著しく小さい。溢れ穴65は、ピストン5の下死点で溢れ穴65の領域に配置される上部連接棒小端部33よりも幾分大きいにすぎない。これにより、混合器が第1の領域58から第2の領域59へ溢れることのできる横断面積は非常に小さい。これにより、第1の領域58でのピストンおよびシリンダ壁11の良好な冷却、潤滑が達成される。連接棒小端部33の幅aは、有利には溢れ穴65の長さeの少なくとも60%であり、上部連接棒小端部33の厚さbは、有利には溢れ穴65の幅fの少なくとも80%である。この場合、組み立ての際に溢れ穴65を貫通するように連接棒6を差し込むことができるようにするため、溢れ穴65の幅fは上部連接棒小端部33の厚さbよりも大きくなければならない。
【0045】
図24の断面図が示しているように、上部連接棒小端部33と下部連接棒小端部34との間での連接棒6の横断面は、上部連接棒小端部33の領域での横断面よりも著しく小さい。それ故、溢れ穴65での自由流動横断面積は、ピストン5の下死点で最も小さく、ピストン5の上昇行程で大きくなる。
図24に図示した断面は、ピストン5の下死点での上部連接棒小端部33よりもクランク軸7の回転軸線8により近い位置にある。これによって
図24では繰り抜き部66と67の双方が見える。
【0046】
図20と
図21が示すように、排気口に近い充填要素61および第1の流動誘導要素62に隣接してそれぞれ傾斜面72が一体成形されている。傾斜面72はポケット74を画成しており、ポケット74内にはピストン5の細条部73(
図17)が突出している。細条部73を介して、ピストンピン15を保持しているピストンピンボアがピストン5に結合されている。傾斜面72により第1の領域58の容積を減少させることができる。第1の領域58を第2の領域59から仕切るため、
図21に図示した壁部分71が設けられている。壁部分71には傾斜面72が配置されている。
【0047】
図25は分割要素60の他の実施形態を示すもので、この実施形態では進入面63が上部エッジ83を有し、上部エッジ83は内側へ延在し、すなわちシリンダ縦軸線50のほうへ延在している。これにより、進入面63は上部エッジ83の領域で凹状に形成されている。進入面63は流動方向29(
図1)においても該流動方向29に対し垂直な方向でも凹状に湾曲している。従って、シリンダ縦軸線50に対し垂直な断面でも進入面63の凹状延在が生じる。
【0048】
図26に図示した実施形態では、進入面63は、シリンダ縦軸線50の方向にも湾曲して延在する上部エッジ84を有している。上部エッジ84はカーブするように形成され、外側へ落ち込んでいる2つの側部部分85と、円弧状の中央部分86とを有している。これら部分85と86の間には隆起部87が形成されている。
【0049】
図27は分割要素90の他の実施形態を示している。分割要素90は実質的に分割要素60に対応している。しかしながら、分割要素90では、排気口に近い充填要素の代わりに、第2の流動誘導要素91が設けられている。この第2の流動誘導要素91は
図11に図示した第2の流動誘導要素48にほぼ対応している。
【0050】
図16ないし
図24に図示した実施形態では、分割要素60は、シリンダ2とクランクケース3との間に保持されている別個の要素として形成されている。特にクランクケース3がクランク軸7の回転軸線8に対し垂直に且つシリンダ縦軸線50に対し平行に分割されている場合には、
図28および
図29に示したように分割要素75はクランクケース半部分に一体成形されている。クランクケース3の両半部分の間の仕切り面76は
図29と
図30に示されている。これにより、部品数が少ない簡潔な構成が生じる。分割要素75は実質的に分割要素60に対応して形成されている。分割要素75は中空に且つ薄壁に形成されており、その結果2サイクルエンジン1が軽量になる。分割要素の壁厚nは有利には5mm以下であり、特に3mm以下であり、特に有利には2mm以下である。なお、壁厚nは特に分割要素60の最大壁厚である。生じる中空空間88は
図32の断面図でも示されている。さらに、分割要素75は、射出成形法でクランクケース3を製造する際に脱型しやすいように構成されている。
【0051】
図30が示すように、進入面はシリンダ縦軸線に対し垂直な面でも凹状に形成されている。進入面63の上部エッジ83は湾曲して形成され、その中央領域において中央面93に対し間隔mを有しており、この間隔mは、上部エッジ83の端部での(進入面63の側部での)該上部エッジ83と中央面93との間隔lよりも小さい。なお中央面93とは、シリンダ縦軸線50とクランク軸7の回転軸線8とを含んでいる面である。従って、上部エッジ83はシリンダ縦軸線50の方向に見てシリンダ縦軸線50のほうへ湾曲している。上部エッジ83の湾曲部は、進入面63に隣接している領域においてピストン5の湾曲部とは逆方向に延在している。進入面83は2つの方向に、すなわち流動方向29(
図1)と該流動方向29に対し横方向において凹状に湾曲している。
【0052】
分割要素75は溢れ穴82を有し、該溢れ穴の、クランク軸7の回転軸線8に対し平行に測った幅gは、上部連接棒小端部33(
図3)の厚さbよりも小さい。幅gは、上部連接棒小端部33と下部連接棒小端部34との間の領域における連接棒6の厚さi(
図32を参照)よりも幾分大きいにすぎない。これにより、ピストン5のどの位置でも溢れ穴82の自由流動横断面積は非常に小さい。分割要素75は2分割に形成されているので、組み立ての際に連接棒6を分割要素75の両半部分の間に挿入することができ、溢れ穴82を貫通させて差し込む必要がない。それ故、分割要素75の2分割により、溢れ穴82は前記溢れ穴65よりも位置しるしく小さく形成されていることができる。
【0053】
上記のサイズはすべて、記載した方向における構成要素の最大サイズである。