(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<自走式掃除機の説明>
図1は本発明の実施形態に係る自走式掃除機の斜視図であり、
図2は
図1に示される自走式掃除機のA−A矢視断面図であり、
図3は
図1に示される自走式掃除機の底面図であり、
図4は筐体の蓋部が開放され集塵部が取り出された状態を示す
図2対応図であり、
図5は
図1に示される自走式掃除機の電気的な構成を示すブロック図である。以下、「自走式掃除機」を「掃除ロボット」と言う場合がある。
【0020】
本発明に係る掃除ロボット(自走式掃除機)1は、設置された場所の床面を自走しながら、床面上の塵埃を含む空気を吸い込み、塵埃を除去した空気を排気することにより床面上を掃除する掃除ロボットである。
掃除ロボット1は、円盤形の筐体2を備え、この筐体2の内部および外部に、回転ブラシ9、サイドブラシ10、本発明の集塵装置30、電動送風機22、一対の駆動輪29、後輪26および前輪27、各種センサを含む制御部等の構成要素が設けられている。
この掃除ロボット1において、前輪27が配置されている部分が前方部、後輪26が配置されている部分が後方部、集塵装置30が配置されている部分が中間部である。
【0021】
筐体2は、前方部における中間部との境界付近の位置に形成された吸込口6を有する平面視円形の底板2aと、筐体2に対して集塵装置30を出し入れする際に開閉する蓋部3を中間部に有している天板2bと、底板2aおよび天板2bの外周部に沿って設けられた平面視円環形の側板2cとを備えている。また、底板2aには前輪27、一対の駆動輪29および後輪26の下部を筐体2内から外部へ突出させる複数の孔部が形成され、天板2bにおける前方部と中間部との境界付近には排気口7が形成されている。なお、側板2cは、前後に二分割されており、側板前部はバンパーとして機能する。
【0022】
また、
図4に示されるように、筐体2の内部において、前方部にモータユニット20、電動送風機22、イオン発生装置25(
図5参照)等を収納する前方収納室R1を有し、中間部に集塵装置30を収納する中間収納室R2を有し、後方部に制御部の制御基板15、バッテリー14、充電端子4等を収納する後方収納室R3を有し、前方部と中間部との境界付近に吸引路11および排気路12を有している。吸引路11は吸込口6と中間収納室R2とを連通し、排気路12は中間収納室R2と前方収納室R1とを連通している。なお、これらの各収納室R1、R2、R3、吸引路11および排気路12は、筐体2の内部に設けられてこれらの空間を構成する仕切り壁39によって仕切られている。
【0023】
一対の駆動輪29は、平面視円形の筐体2の中心を通る中心線Cと直角に交わる一対の回転軸29aに固定されており、一対の駆動輪29が同一方向に回転すると筐体2が進退し、各駆動輪29が逆方向に回転すると筐体2が中心線Cの回りに回転する。
一対の回転軸29aは、図示しない一対のモータからそれぞれ個別に回転力が得られるように連結されており、各モータは筐体の底板2aに直接またはサスペンション機構を介して固定されている。
【0024】
前輪27はローラからなり、進路上に現れた段差に接地し、筐体2が段差を容易に乗り越えられるよう、駆動輪29が接地する床面Fから少し浮き上がるよう筐体2の底板2aの一部に回転可能に設けられている。
後輪26は自在車輪からなり、駆動輪29が接地する床面Fと接地するよう筐体2の底板2aの一部に回転可能に設けられている。
このように、筐体2に対して前後方向中間に一対の駆動輪29を配置し、前輪27を床面Fから浮かせ、掃除ロボット1の重量を一対の駆動輪29と後輪26によって支持できるよう、筐体2に対して前後方向に重量が配分されている。これにより、進路前方の塵埃を前輪27によって遮ることなく吸込口6に導くことができる。
【0025】
吸込口6は、床面Fに対面するよう筐体2の底面(底板2aの下面)に形成された凹部8の開放面である。この凹部8内には、筐体2と平行な回転軸心廻りに回転する回転ブラシ9が設けられており、凹部8の左右両側には垂直な回転軸心廻りに回転するサイドブラシ10が設けられている。回転ブラシ9は、回転軸であるローラの外周面に螺旋状にブラシを植設することにより形成されている。サイドブラシ10は、回転軸の下端にブラシ束を放射状に設けることにより形成されている。なお、回転ブラシ9の回転軸および一対のサイドブラシ10の回転軸は、筐体2の底板2aの一部に枢着されると共に、その付近に設けられた駆動モータとプーリおよびベルト等を含む動力伝達機構を介して連結されている。
【0026】
図3に示されるように、筐体2の底面と前輪27との間には床面Fを検知する床面検知センサ13が配置され、左右の駆動輪29の側部前方には同様の床面検知センサ19が配置されている。床面検知センサ13によって下り階段を検知すると、その検知信号が制御部に送信され、制御部が両駆動輪29が停止するよう制御する。また、床面検知センサ13が故障した場合、床面検知センサ19が下り階段を検知して両駆動輪29を停止することができるため、掃除ロボット1の下り階段への落下が防止されている。また、床面検知センサ19が、下り階段を検知すると、その検知信号が制御部に送信され、制御部が駆動輪29に下り階段を回避して走行するように制御してもよい。
【0027】
制御基板15には、掃除ロボット1における駆動輪29、回転ブラシ9、サイドブラシ10、電動送風機22等の各要素を制御する制御回路が設けられている。
筐体2の側板2cの後端には、バッテリー14の充電を行う充電端子4が設けられている。室内を自走しながら掃除する掃除ロボット1は、室内に設置されている充電台40に帰還する。これにより、充電台40に設けられた端子部41に充電端子4が接触し、バッテリー14の充電が行われる。商用電源(コンセント)に接続される充電台40は、通常、室内の側壁Sに沿って設置される。
バッテリー14は、充電端子4を介して充電台40から充電され、制御基板15、駆動輪29、回転ブラシ9、サイドブラシ10、電動送風機22、各種センサ等の各要素に電力を供給する。
【0028】
集塵装置30は、通常、筐体2内における両駆動輪29の回転軸29aの軸心よりも上方の中間収納室R2内に収納されており、集塵装置30内に捕集された塵埃を廃棄する際は、
図4に示されるように、筐体2の蓋部3を開いて集塵装置30を出し入れすることができる。
集塵装置30は、開口部31d(
図14参照)を有する集塵容器31と、集塵容器31の開口部31dを覆うフィルタ部33と、フィルタ部33と集塵容器31の開口部31dとを覆うカバー部32とを備えている。カバー部32およびフィルタ部33は、集塵容器31の前側の開口端縁に回動可能に軸支されている。
集塵容器31の側壁前部には、集塵装置30が筐体2の中間収納室R2内に収納された状態において、筐体2の吸引路11と連通する流入路34と、筐体2の排気路12と連通する排出路35とが設けられている。なお、集塵装置30についてさらに詳しくは後述する。
【0029】
掃除ロボット1全体の動作制御を行う制御部は、
図5に示されるように、CPU15aおよびその他の図示しない電子部品で構成された制御回路を有する制御基板15と、走行マップ18aを記憶する記憶部18、電動送風機22を駆動するためのモータドライバ22a、駆動輪29の走行モータ51を駆動するためのモータドライバ51a、筐体2内の排気口7付近に回動可能に設けられたルーバー17およびそれを駆動するための制御ユニット17a、臭いセンサ52およびその制御ユニット52a、湿度センサ53およびその制御ユニット53a、人感センサ54およびその制御ユニット54a、接触センサ55およびその制御ユニット55a等を備えて構成される。
【0030】
CPU15aは中央演算処理装置であり、記憶部18に予め記憶されたプログラムデータに基いて、モータドライバ22a、51aおよび制御ユニット17aに個別に制御信号を送信し、電動送風機22、走行モータ51およびルーバー17を駆動制御して、一連の掃除運転およびイオン放出運転を行う。
また、CPU15aは、ユーザーによる掃除ロボット1の動作に係る条件設定を操作パネル(図示省略)から受け付けて記憶部18に記憶させる。この記憶部18は、掃除ロボット1の設置場所周辺の走行マップ18aを記憶することができる。走行マップ18aは、掃除ロボット1の走行経路や走行速度などといった走行に係る情報であり、予めユーザーによって記憶部18に記憶させるか、あるいは掃除ロボット1自体が掃除運転中に自動的に記録することができる。
【0031】
臭いセンサ52は、筐体2の外部周辺の臭いを検知する。臭いセンサ52としては、例えば、半導体式や接触燃焼式の臭いセンサを用いることができる。掃除ロボット1の外部周辺の臭いを検知するために、例えば、筐体2の側板2cまたは天板2bから外部へ露出した状態で臭いセンサ52が配置される。CPU15aは制御ユニット52aを介して臭いセンサ52と接続されており、臭いセンサ52からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の臭い情報を得る。
【0032】
湿度センサ53は、筐体2の外部周辺の湿度を検知する。湿度センサ53としては、例えば、高分子感湿材料を用いた静電容量式や電気抵抗式の湿度センサを用いることができる。掃除ロボット1の外部周辺の相対湿度を検知するために、例えば、筐体2の側板2cまたは天板2bから外部へ露出した状態で湿度センサ53が配置される。CPU15aは制御ユニット53aを介して湿度センサ53と接続されており、湿度センサ53からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の湿度情報を得る。
【0033】
なお、走行マップ18aには、掃除ロボット1が設置される設置場所における所定閾値以上の臭気が漂う箇所および所定閾値以上に湿気が高い箇所が特定箇所として予め記憶されていてもよい。このようにすれば、CPU15aがこの特定箇所を筐体2の周辺環境に基づいて定めた箇所であると判断することができる。つまり、走行マップ18aが、臭いセンサ52および湿度センサ53と同様に、筐体2の周辺環境を検知する環境検知装置としての役割を果たすことになる。
【0034】
人感センサ54としては、例えば、赤外線、超音波、可視光等によって人の存在を検知する人感センサを用いることができる。掃除ロボット1の外部周辺の人の存在を検知するために、例えば、筐体2の側板2cまたは天板2bから外部へ露出した状態で人感センサ54が配置される。CPU15aは制御ユニット54aを介して人感センサ54と接続されており、人感センサ54からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の人の存在情報を得る。
【0035】
接触センサ55は、掃除ロボット1が走行時に障害物と接触したことを検知するために、例えば、筐体2の側板2cの前部に配置される。CPU15aは制御ユニット55aを介して接触センサ55と接続されており、接触センサ55からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の障害物の存在情報を得る。
【0036】
このように構成された掃除ロボット1において、掃除運転の指令により、電動送風機22、イオン発生装置25、駆動輪29、回転ブラシ9およびサイドブラシ10が駆動する。これにより、回転ブラシ9、サイドブラシ10、駆動輪29および後輪26が床面Fに接地した状態で、筐体2は所定の範囲を自走しながら吸込口6から床面Fの塵埃を含む空気を吸い込む。このとき、回転ブラシ9の回転によって床面F上の塵埃は掻き上げられて吸込口6に導かれる。また、サイドブラシ10の回転によって吸込口6の側方の塵埃が吸込口6に導かれる。
【0037】
吸込口6から筐体2内に吸い込まれた塵埃を含む空気は、
図2の矢印A1に示されるように、筐体2の吸引路11を通り、集塵装置30の流入路34を通って集塵容器31内に流入する。集塵容器31内に流入した気流は、フィルタ部33を通過してフィルタ部33とカバー部32との間の空間50に流入し、排出路35を通って筐体2の排気路12へ排出される。この際、集塵容器31内の気流に含まれる塵埃はフィルタ部33によって捕獲されるため、集塵容器31内に塵埃が堆積する。
【0038】
集塵装置30から筐体2の排気路12へ流入した気流は、
図2の矢印A2に示されるように前方収納室R1へ流入し、図示しない第1排気路および第2排気路を流通する。第1排気路を流通する気流にはイオン発生装置25が放出するイオン(プラズマクラスターイオン(登録商標))が含まれる。そして、筐体2の上面に設けた排気口7から、
図2の矢印A3に示されるように、後方の斜め上方にイオンを含む気流が排気される。これにより、床面F上の掃除が行われると共に、掃除ロボット1の排気に含まれるイオンによって室内の除菌および脱臭が行われる。このとき、排気口7から後方の斜め上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げが防止され、室内の清浄度を向上することができる。
また、図示省略するが、第1排気路を流通する気流の一部は、凹部8に導かれてもよい。このようにすれば、吸込口6から吸引路11に導かれる気流内にイオンが含まれるため、集塵装置30の集塵容器31内およびフィルタ部33の除菌および脱臭を行うことができる。
【0039】
また、掃除ロボット1は、左右の駆動輪29が同一方向に正回転して前進し、同一方向に逆回転して後退し、互いに逆方向に回転することにより中心線Cを中心に旋回する。例えば、掃除ロボット1は、掃除領域の周縁に到達した場合および進路上の障害物に衝突した場合、駆動輪29が停止し、左右の駆動輪29を互いに逆方向に回転して向きを変える。これにより、掃除ロボット1は、設置場所全体あるいは所望範囲全体に障害物を避けながら自走することができる。
【0040】
また、掃除ロボット1は、左右の駆動輪29と後輪26の3点で接地しており、前進時に急停止しても後輪26が床面Fから浮き上がらないようなバランスで重量配分されている。そのため、掃除ロボット1が前進中に下り階段の手前で急停止し、それによって掃除ロボット1が前のめりに傾いて下り階段へ落下するということが防止されている。なお、駆動輪29は、急停止してもスリップしないよう、溝を有するゴムタイヤをホイールに嵌め込んで形成されている。
また、集塵装置30が駆動輪29の回転軸29aの上方に配置されているため、集塵によって重量が増加しても掃除ロボット1の重量バランスが維持される。
【0041】
掃除ロボット1は、環境検知装置である臭いセンサ52、湿度センサ53、走行マップ18aおよび人感センサ54から得られる情報に基づいて独特の動作を実行することができる。例えば、掃除ロボット1は、環境検知装置が検知した周辺環境に基づいて定めた特定箇所に一定時間留まり、排気口7からイオンを含む気流を放出することができる。
掃除ロボット1は、掃除が終了すると充電台40に帰還する。これにより、充電端子4が端子部41に接してバッテリー14が充電される。
【0042】
また、掃除ロボット1は、充電台40に帰還した状態で電動送風機22およびイオン発生装置25を駆動することができる。これにより、排気口7から後方の斜め上方にイオンを含む気流が放出され、イオンを含む気流は側壁Sに沿って上昇し、室内の天井壁および対向する側壁に沿って流通する。この結果、イオンが室内全体に行き渡り、除菌効果や脱臭効果を向上させることができる。このように、掃除ロボット1は、イオン放出運転を単独で実行することも可能である。
【0043】
掃除ロボット1の上面には操作部が設けられており、操作部によって掃除運転およびイオン放出運転を実行させることができる。また、筐体2内に受信部を設けると共に、受信部に指令信号を発信する送信機を設けてリモコン操作できるようにしてもよい。また、スマートフォンと呼ばれる携帯電話からインターネット回線および室内に設けたルーターを介して指令信号を掃除ロボット1に送信して遠隔操作できるようにしてもよい。
【0044】
<集塵装置の詳細な説明>
(流入口について)
図4に示されるように、本発明の実施形態に係る掃除ロボット1は、離脱可能に装着される集塵装置30を備える。
図6〜9に示されるように、集塵装置30は塵埃を集塵する集塵容器31を有する。また、
図26に示されるように、集塵容器31は主に底部31x
1と側壁部31x
2とから構成され上方に側壁部31x
2の上端により規定された開口部31dを有する。そして、集塵装置30が掃除ロボット1から取り外され塵埃が廃棄される時を除き、通常、
図9に示されるように集塵容器31の開口部31dはフィルタ部33によって覆われる。
【0045】
図15〜17に示されるように、集塵装置30は、集塵容器31の開口部31dを上記フィルタ部33と共に覆うように、集塵容器31に対して開閉可能に軸支されたカバー部32を備えている。カバー部32内には、通常、上記フィルタ部33が圧入により収容されているが、フィルタ部33は必要に応じてカバー部32から離脱させることもできる。フィルタ部33をカバー部32から離脱可能とする構造については別の項目で詳述する。
【0046】
図7〜9に示されるように、集塵容器31の前方側の側壁部31x
2には掃除ロボット1の吸込口6(
図2参照)に連通する流入口31aが形成されている。流入口31aは、集塵容器31の底部31x
1より上で、なおかつフィルタ部33より下となる位置に形成されている。より具体的には、流入口31aは、フィルタ部33の近傍に隣接して位置するように側壁部31x
2の上端近傍に形成されている。
【0047】
この流入口31aからは上記吸込口6から塵埃と共に吸い込んだ空気を集塵容器31へと導く流入路34が前方へ向かって延びるように一体に形成されている。流入路34は、掃除ロボット1の吸込口6に連通する吸引路11に離脱可能に接続される流入路先端34a
1と、集塵容器31の側壁部31x
2に接続され上記流入口31aを形成する流入路基端34a
2とを有している。
【0048】
ここで、流入路34は、流入路先端34a
1から流入路基端34a
2へ向かうに従って底部31x
1との高低差が大きくなるように上傾斜状態で設けられる。これにより、流入口31aを集塵容器31の側壁部31x
2の上端近傍にフィルタ部33と隣接させて形成することが可能となる。この結果、集塵容器31の底部31x
1をロボット掃除機1の底板2a付近まで延設させることができ、集塵容量を大きく設計できる(
図2参照)。
【0049】
以上の構成によれば、集塵容器31の底部31x
1をロボット掃除機1の底板2a付近まで延設できるため、同じ平面寸法であっても集塵容量が必然的に大きくなる。これにより、集塵装置30においては塵埃が満杯になるまでの時間が長くなり、ロボット掃除機1の掃除継続時間を延長できる。また、ロボット掃除機1の大型化を招くこともない。
【0050】
また、上述の通り、集塵容器31の側壁部31x
2の上端近傍に流入口31aが形成されるので、集塵された塵埃は集塵容器31の底部31x
1から流入口31aまでの間、すなわち流入口31aよりも下に溜まることとなる。このため、
図4に示されるように掃除ロボット1の筐体2の蓋部3を開き、集塵装置30を上方へ引き上げるようにして取り出すことが可能となり、また、取り出し時に集塵された塵埃が集塵容器31から零れ落ちることも防止できる。
なお、集塵容器31の開口部31dは側壁部31x
2上端に位置することが好ましいが近傍でもよい。
以上説明したように、本発明の集塵装置30によれば、掃除機1本体からの取り出し時の塵埃の零れ落ち等の課題に対処し、この課題である問題を解消することが可能となる。つまり、流入口31aを集塵容器31の上位置に設けることで、取り出し時、集塵装置30等が多少傾くような場合でも、集塵された塵埃が流入口31aから零れ落ちるような問題がなくなる。また、集塵装置30を上方へと取り出すような場合には、さらに塵埃が零れ落ちるといった心配がなくなる。
【0051】
(流入路と排出路の配置について)
前記の通り、集塵装置30は、集塵容器31に対して開閉可能に軸支されたカバー部32を備えている。
図9に示されるように、カバー部32はフィルタ部33を通過した空気の出口となる排出口32aを有し、排出口32aからは排出路35が流入路34と重なるように前方へ向かって延びている。つまり、排出路35は流入路34と同一方向に延びている。
【0052】
また、
図9に示されるように、排出路35は、ロボット掃除機1の排気路12に離脱可能に接続される排出路先端35a
1と、カバー部32に接続され上記排出口32aを形成する排出路基端35a
2とを有している。排出路35は排出路基端35a
2から排出路先端35a
1へ向かうに従って流入路34と重なる対向部分が流入路34と平行に傾斜しており、排出路基端35a
2から排出路先端35a
1へ向かって末広がりとなる形状を有している。そして、流入路先端34a
1と排出路先端35a
1には外方へ張り出した面状の流入路フランジおよび排出路フランジが同一平面上に位置するようにそれぞれ形成されている。
【0053】
流入路フランジおよび排出路フランジが位置する平面は、ロボット掃除機1の中間収納室R2を構成する前方側の傾斜した仕切り壁39(
図4参照)と平行になるように設定されている。この仕切り壁39は下方へ向かうに従って中間収納室R2の前後方向の間隔が小さくなるように傾斜しているので、流入路フランジおよび排出路フランジもまた中間収納室R2の前方側の仕切り壁39と同様に傾斜することとなる。
【0054】
以上の構成によれば、排出路35が流入路34と重なるように流入路34と同一方向に延びるので、集塵装置30の前後方向の寸法を必要最小限の寸法に抑えることができる。また、排出路35のうち流入路34と対向する対向部分が流入路34と平行に傾斜して末広がりとなるので、集塵装置30の高さ方向の寸法を必要最小限の寸法に抑えつつ排気抵抗を抑えることができ、結果として塵埃を含んだ空気が集塵装置30へ流入する効率も向上する。
さらには、流入路フランジおよび排出路フランジが同一平面上に位置し、かつ中間収納室R2の前方側の仕切り壁39と同様に傾斜しているので、集塵装置30を中間収納室R2へセットすると、集塵装置30の前後方向の位置が自ずと定まり、吸引路11および排気路12との良好な接続が得られる。特に、流入路フランジおよび排出路フランジを同一平面状にすることができるため、掃除機1本体側の中間収納室R2側の吸引路11と、排気路12との密着状態を確保するための構成、設計が簡単になる。つまり、吸引路11と排気路12の端面を同一平面で傾斜させればよく、その端面には通常パッキン部材が設けられており、そのパッキン部材の密着状態を確実に確保できる。
なお、流入路先端34a
1と排出路先端35a
1は面状のフランジを有することが好ましいが、無くてもよい。
【0055】
(取っ手の係止機構について)
図6〜13に示されるように、カバー部32には、カバー部32に対して回動可能に軸支された取っ手36が設けられている。
図18〜20に示されるように、カバー部32の両側面には集塵装置30の前後方向と直交する方向に向かって突出する軸部32iがそれぞれ形成されている。
一方、
図21〜23に示されるように取っ手36は平面視でコの字形状に形成され、両端に貫通孔36bがそれぞれ形成されている。
このため、取っ手36の両端に形成された貫通孔36bにカバー部32の両側面に形成された軸部32iをそれぞれ嵌め入れるように挿入すると、カバー部32に対して取っ手36が回動可能となる。
【0056】
図18〜20に示されるように、カバー部32上面の後方側には取っ手36の形状と対応するように窪んだ収納部32gが形成されている。
図6〜9に示されるように、収納部32gは取っ手36が起立させられていないときに取っ手36をその窪みの中に収納し、集塵装置30の上面を平坦にする作用を担う。
また、カバー部32には、取っ手36を起立させる際に収納部32gに収納された取っ手36を摘み易くするために収納部32gのほぼ中央部分より更に広範囲に亘って窪んだ凹部32bが形成されている。また、
図32および33に示されるように、カバー部32の上面には後述するブラシ付き棒部材Kを収納する収納凹部32kが形成されている。
【0057】
したがって、
図4に示されるように、集塵装置30がロボット掃除機1に装着されている状態において、ユーザーが筐体2の蓋部3を開いて収納部32gに収納された取っ手36を摘んで上方へ回動させると、取っ手36は集塵装置30の上面よりも上方へ突出した起立状態となる。このため、ユーザーは起立状態となった取っ手36を把持して集塵装置30を上方へ引き上げることにより、ロボット掃除機1から集塵装置30を容易に取り出すことができる。
【0058】
図10に示されるように、取っ手36の軸支箇所には、カバー部32に対して取っ手36が回動させられ起立した状態となったときに互いに当接して取っ手36の回動を規制するための一対の規制部材38が設けられている。一対の規制部材38は、
図10および
図18〜20に示されるように取っ手36の軸支箇所の後方近傍で収納部32gから上方に突出する突起部38aと、
図10と
図21と
図23に示されるように取っ手36の両端部において取っ手36から突出する係止部36aとから構成されている。
【0059】
図16に示されるように、カバー部32に対して取っ手36が回動させられ起立状態となると、取っ手の係止部36aが軸支箇所の後方近傍で上方に突出する突起部38aに係止され、取っ手36の回動が規制される。さらにこの際、係止部36aとは反対側の取っ手36の表面が収納部32gとカバー部32の上面との間に形成された垂直面32cに当接することでも取っ手36の回動が規制される。
【0060】
図19〜23に示されるように、取っ手36の軸支箇所の近傍には、上述の規制部材38に加え、取っ手36を起立状態で解除可能にロックするための一対の隆起部32j、36cが形成される。この一対の隆起部32j、36cについても、取っ手36の回動を規制、起立状態を維持する一対の規制部材の機能を果たす。つまり、上述した一対の規制部材38(突起部38aと係止部36b)に代えて、一対の隆起部32j、36cを設けることでも、同一機構を果たし、同一効果を期待できる。また、これらを同時に設けることで、取っ手36を起立状態を維持させる効果が助長される。
また、一対の隆起部32j、36cはカバー部32の軸部32iの周囲と取っ手36の貫通孔36bの周囲にそれぞれ形成され、取っ手36が回動させられ互いに当接したときに取っ手36の両端部が広がるように弾性変形し、取っ手36の隆起部36cがカバー部32の隆起部32jを乗り越えることができるように傾斜面32j
1、36c
1をそれぞれ有している。
【0061】
取っ手36の隆起部36cがカバー部32の隆起部32jを乗り越えて取っ手36が起立状態となると、取っ手36の隆起部36cとカバー部32の隆起部32jが互いに当接し、取っ手36は起立状態を維持し、取っ手36の回動を規制する。特に、一対の隆起部32j、36cによる規制は、解除可能に起立状態をロックすることである。
なお、取っ手36の隆起部36cがカバー部32の隆起部32jを乗り越える際、取っ手36は両端部が広がるように弾性変形し元の状態に戻ろうとするため、取っ手36には取っ手36を起立状態へ強制的に導くような付勢力が作用し、ユーザーに取っ手36が起立状態にあることを明確に認識させることができる。上記付勢力は、取っ手36の起立状態を解除し、取っ手36を収納部32gに収納する際にも同様に作用する。
【0062】
以上の構成によれば、取っ手36の起立時に取っ手36は回動が規制され、起立状態を維持するように解除可能にロックされるため、ユーザーは集塵容器31やカバー部32を保持しなくても、取っ手36を把持することにより集塵装置30を安定した状態で持ち上げることができる。そして、集塵装置30を安定した状態で持ち上げることが可能になることから、集塵容器31の開放操作も容易になり、集塵された塵埃を確実に廃棄できるようになる。
なお、集塵容器31に対してカバー部32を係止する係止機構については後の項で詳細に説明する。
以上説明した本発明の集塵装置30において、取っ手36は一対の規制部材38または一対の隆起部32j、36c、また一対の規制部材38と一対の隆起部32j、36cの協働により起立状態が維持、あるいはロックされる。これは、集塵装置30を掃除機1本体からの取り出しを安定させる目的を達成できる。また、集塵装置30を安定させて取り出せることで、流入口31aからの塵埃の零れ落ちの課題、問題点を解消することにもなる。
【0063】
(集塵装置の重心と取っ手の配置について)
図13に示されるように、カバー部32が閉じられた状態において、取っ手36の軸支箇所は、集塵装置30の全体の重心Gよりも流入口31a側に距離L1だけずれて位置している。これにより、ユーザーが起立状態にある取っ手36を把持し、ロボット掃除機1から集塵装置30を引き上げると、取っ手36の軸支箇所と集塵装置30全体の重心Gとのずれにより集塵装置30全体が、時計回りに回動しようとする。このため、ユーザーによって持ち上げられた集塵装置30は自然に流入口31aが上方へ向くようになり、集塵された塵埃が流入口31aから不意に流出するような事態を防止できる。このような構成は、流入口31aと底部31x
1との高低差が小さい場合でも、集塵された塵埃が流入口31aから零れ落ちることを防止するのに有効である。
したがって、集塵装置30の重心Gに対して取っ手36の支持位置を、流入口31a側寄りにずらせる構成は、流入口31aからの塵埃を不用意な零れ落ちといった問題、課題を解消する一手段となる。
【0064】
図17に示されるように、カバー部32と集塵容器31との係止を解除して集塵容器31を開放すると、集塵容器31はカバー部32に対する軸支箇所を中心に回動し前方へ変位する。これに伴い、集塵装置30全体の重心Gも前方へ移動する。取っ手36の軸支箇所は、集塵容器31を開放したときの集塵装置30全体の重心Gとの水平方向の距離L2がなるべく小さくなるように設定されるとよい。これにより、ユーザーが取っ手36を把持し、集塵容器31を開放させた際に集塵装置30全体の重心Gと取っ手36の軸支箇所との水平方向のずれが小さくなり、ユーザーが意図せずともカバー部32の上面は自ずとほぼ水平に維持されるようになる。これにより、開放された集塵容器31の開口部31dを下方へ向けやすくなり集塵された塵埃の廃棄が容易になる。
【0065】
(係止機構について)
集塵容器31とカバー部32とを相対的に開放可能とするためには、それらを軸支する構成が必要となる。この構成を説明する前に、回動状態を規制する機構、つまり集塵容器31とカバー部32との相対的な開閉を規制する係止機構について説明する。
図9と
図17に示されるように、係止機構は、カバー部32側に設けられた係止爪32dを有する係止部32eと、集塵容器31側に設けられて係止爪32dを引っ掛ける突起31bとで構成される。係止部32eは、回動可能にカバー部32の軸支部分側と反対の側面に揺動可能に枢着され、図示しない弾発部材(例えば、板バネ、コイルスプリング等)によって係止爪32dを突起31bに係止させる方向に付勢している。
【0066】
また、係止部32eの付勢力に抗した方向に係止部32eを回動できるようにするために、カバー部32の側面における係止爪32dと反対側には凹み部32h(
図9等を参照)が形成されている。そのため、
図17に示されるように、突起31bに係止した係止部32eの上端を押すと、係止部32eの下端の係止爪32dが突起31bと離間し、係止状態が解かれる。これにより、集塵容器31がカバー部32に対し開放される。
また、係止機構において、カバー部32の側面の左右方向の中央部を窪ませた凹み部32h内に係止部32eが設けられているのに合わせて、集塵容器31の側面においても突起31bに対応する部分を窪ませた凹み部31e内に突起31bが設けられている。これにより、係止機構を集塵装置30から突出させないようにしている。そのため、この集塵装置30を掃除機本体の中間収納室R2に装着すると、係止機構の係止状態が不意に解除してしまうようなことがない。また、掃除機本体側の中間収納室R2の内側面を単純な平坦面に形成でき、係止機構部分に合わせた複雑な形状に形成する必要がなくなる。
【0067】
(集塵容器の軸支構造について)
一方、
図25と
図26に示されるように、フィルタ部33は、前記カバー部32に着脱可能に取付けられる。このフィルタ部33の上面とカバー32の下面との間には、
図9に示されるように空間50が形成されており、この空間50が排気空間となる。集塵容器31内からフィルタ部33を通過した空気は、排気空間50を経由して、集塵装置30から掃除機本体側へ排気される。つまり、
図2に示されるように、フィルタ部33を通過した空気は、掃除機本体側の排気路12と連通する排出路35へ導入される。そのため、カバー部32の流入路34側の側面に排出路35が一体成形されている。
【0068】
また、
図7と
図24に示されるように、カバー部32の排出路35の長手方向の両端部から外側へ向かって突出する一対の支持軸35aが一体成形されている。この支持軸35aに、集塵容器31に一体成形された一対の短筒状ボス部31cが軸支されている。このボス部31cは、集塵容器31の側面から突出して設けられており、支持軸35aが挿入される支持孔を有している。一対のボス部31cに一対の支持軸35aを挿入することで、カバー32が集塵容器31に対して回動可能に取り付けられる。
なお、変形例として、カバー部32にボス部が設けられ、集塵容器31に支持軸が設けられてもよい。また、一対の支持軸35aは、カバー部32に一体形成されている排出路35の側面から突出させるように設けている。つまり、カバー部32に設ければよいことであって、カバー部32本体に直接設けるようにしてもよい。
【0069】
図24と
図27に示されるように、一対の支持軸35aの一方には、付勢部材としてのコイルスプリング37が嵌め込まれている。そして、このコイルスプリング37の一端は、カバー部32側に、他端は集塵容器31の上記ボス部31c側に係止されている。このコイルスプリング37の付勢力によって、
図14〜
図17に示されるように、集塵容器31は大きく開放する。
一方、コイルスプリング37を省略した場合、カバー部32を水平状態に維持した状態で集塵容器31を自重により開放したときの開放角度は90度以下となる。しかし、カバー部32を水平状態から係止機構を下げた状態または上げた状態にすると、集塵容器31の開口部31dが閉じた状態または開口部31dが上に向いた状態になる。そのため、集塵容器31内の塵埃を排出し難くなり、集塵容器31が深いほど顕著になる。
このように集塵容器31から塵埃を排出し難い状態になると、両手を使って集塵容器31の開口部31dが下に向くように操作する必要がある。このような操作を行うのであれば、当然のこととして、集塵容器31を回動可能に軸支する構成の代わりに、集塵容器31からカバー部32を取り外しできる構成にする方が構造を簡略化できる。
【0070】
本発明においては、片手でも取っ手36を持ち、係止状態を解けば、
図17に示されるように、コイルスプリング37の付勢力によって90度を越える開放角度で集塵容器31の開口部31dが大きく開くため、開口部31dが下方を向くこととなり、集塵容器31内の塵埃を手を汚すことなく簡単に排出できる。この際、集塵容器31の底部31x
1が下に向くように傾斜し、開口部31dも下向きに傾斜し、集塵容器31の側壁部31x
2が開口部31dに向かって下方へ傾斜した状態となる。この状態は、集塵容器31内の塵埃を開口部31d側へ移動し易くしているため、廃棄処理の操作を簡単に行える。
【0071】
なお、本発明において開口部31dが下方を向くとは、集塵容器31に集塵された塵埃がその自重によって開口部31dから自然に排出されるように開口部31dが下向きになった状態を広く意味し、必ずしも開口部31dが鉛直下方に向いた状態のみを意味するものではない。
【0072】
集塵容器31を開放させる操作は、先に説明したとおり、係止機構による係止爪32dと突起31bとの係止を解くことで行われ、それにより集塵容器31が自動的に大きく開放する。また、取っ手36においては、一対の規制部材38または一対の隆起部32j、36c、またこれらの協働の作用により回動状態が規制されるため、取っ手36を持ちカバー部32を水平に維持した状態で、集塵容器31を開放することができる。そのため、前記のように、塵埃を排出しやすい状態、すなわち、集塵容器31の開口部31dが下方を向く状態で廃棄処理操作を行うことができる。
以上、本発明の集塵装置30によれば、集塵容器31内の集塵された塵埃の廃棄を処理の問題点、課題を解消するものである。つまり、集塵するための集塵容器31の開放角度を大きくすることを可能にしており、集塵された塵埃の廃棄処理操作を確実、かつ簡単にできる。
【0073】
(集塵容器の導入板について)
前記のように、本発明の集塵容器31の流入口31aは開口部31d付近の位置に形成されているため、流入口31aから集塵容器31内に吸引された空気はフィルタ部33に直接導かれることになる。これでは、空気中に含まれる塵埃が直接的にフィルタ部33で捕集されるため、フィルタ部33における流入口31aの近傍部分が局所的に目詰まりしやすくなる。このような点を解消するためにも、本発明はさらに
図9および
図34(A)に示されるように、本発明の集塵装置30には導入板34bが設けられている。
【0074】
この導入板34bは、集塵容器31の側壁部31x
2内面における流入口31aの近傍に配置されており、流入口31aから集塵容器31内へ流入した気流を底部31x
1側へ案内する。
導入板34bは、流入口31aの上縁に沿って配置された基端部34b
1と、底31x
1部側へ向けて端部が配置された先端部34b
2と、基端部34b
1と先端部34b
2とに連設された中間部34b
3とを有し、中間部34b
3は流入口31aから集塵容器31内へ導入された気流を徐々に底部31x
1へ案内する形状に形成されている。具体的には、中間部34b
3は、先端部34b
2が底部31x
1に対して垂直方向に向くように湾曲形状に形成されている。また、
図9および
図26に示されるように導入板34bは、基端部34b
1から先端部34b
2に亘って両側に側壁部34b
4を有しているため、全体としてダクト口形状に形成されている。
【0075】
また、
図26に示されるように導入板34bは、左右の側壁部34b
4と一体成形されたブロック形の取付部34b
5を有しており、集塵容器31の底面から突出した左右一対の突起部に一対の取付部34b
5が、例えば、ネジ止めや接着等により固定されている。
図2および
図9に示されるように、流入路34を斜め上方に向かって進む気流は、導入板34bによって流入口31aから徐々に集塵容器31の底面へ案内されるため、気流に与える抵抗が抑制され、この結果、吸引力の低下が抑制される。
流入口31aを覆い、かつ集塵容器31の底面と対向して開放されるダクト口形状の導入板34bを設けた点は、集塵容器31の流入口31aを上位置に形成した点と合わせて、集塵容器31を深い容器形に形成することを可能としている。
【0076】
前記のように、導入板34bを設けたことにより、流入口31aから集塵容器31内へ流入した気流は底面へと向かう。これにより塵埃の一部、例えば、大きな塵埃は底面に堆積し、空気中に含まれる小さな塵埃はフィルタ部33へと導かれる。その結果、フィルタ部33は直接的に流入口31aから吸気された空気中の塵埃を捕集することがなく、フィルタ部33の目詰まりが抑制される。しかも、フィルタ部33は、局所的に塵埃を捕集するといったことがなく、集塵容器31に堆積しなかった細かな塵埃をフィルタ全域で捕集できる。よって、フィルタ部33のメンテナンスおよび交換時期を延長することができる。なお、この場合、「メンテナンス」とは、フィルタ部33に付着した塵埃を除去する清掃作業である。
【0077】
図34(B)は導入板の変形例1を示す斜視図であり、
図34(C)は導入板の変形例2を示す斜視図である。
図34(B)に示された導入板34baは、集塵容器31の底面に近接する先端部34b
21が櫛歯状に形成されている。このようにすれば、導入板34baの櫛歯状先端部34b
21の隙間部分(スリット)を空気が通過する際、糸屑、髪の毛等の細長い塵埃が櫛歯部分に引っ掛かって捕集される。また、
図34(C)に示された導入板34bbは、格子状先端部34b
22を有しており、このようにしても同様の効果が得られる。
【0078】
本実施形態では、集塵容器31の軸支部分側に流入口31aおよび導入板34bが設けられている。そのため、
図17に示されるように、集塵容器31を開放して内部の塵埃を廃棄する際、塵埃が導入板34bに引っ掛かって集塵容器31内から排出されないという不具合がない。
【0079】
なお、本実施形態では、導入板34bが集塵容器31に設けられている場合を例示したが、フィルタ部33に設けられてもよい。この場合、例えば、フィルタ部33の枠体33bに導入板34bの基端部を一体状に連設させることができる。
また、カバー部32に導入板34bを設けてもよい。この場合、集塵容器31に対してフィルタ部33およびカバー部32を閉じた状態において、カバー部32側から集塵容器31側へ導入板34bを突出させるための切欠き部をフィルタ部33に形成すると共に、この切欠き部と導入板34bとの隙間を塞ぐシール部もカバー部32に設ける。また、カバー部32をフィルタ部33に対して回動させると導入板34bが切欠き部を通過できるように構成する。
【0080】
(集塵容器とフィルタ部とカバー部の軸支構造について)
図13に示されるように、フィルタ部33は、先に説明したように、通常、カバー部32内に収容保持された状態にある。そのため、カバー部32にフィルタ部33を着脱可能に設けることでも十分にその機能を期待できる。
一方、フィルタ部33に付着した塵埃を除塵するためには、フィルタ部33をカバー部32から取り外す必要がある。この際、集塵容器31を開放すると、カバー部32に装着されたフィルタ部33の塵埃が付着した面が露出する。そして、塵埃が付着した面を露出させたフィルタ部33をユーザーがカバー部32から手作業で取り外すことになるため、ユーザーの手が塵埃で汚れてしまう。
【0081】
この不具合を解消するために、本発明では、
図13に示されるように、集塵装置30の使用時にはフィルタ部33をカバー部32内に収容し、
図25に示されるように、フィルタ清掃時にはフィルタ部33がカバー部32から外れて集塵容器31の開口部31dを覆うことができるように、フィルタ部33が集塵容器31およびカバー部32に対して回動可能となっている。
すなわち、
図11、
図24および
図26に示されるように、カバー部32はフィルタ部33と集塵容器31の開口部31dとを覆うように集塵容器31に開閉可能に軸支されており、フィルタ部33も集塵容器31におけるカバー部32の軸支部分近傍に回動可能に軸支されている。
【0082】
フィルタ部33の軸支部分とカバー部32の軸支部分とは、同一軸心上に配置されてもよく、互いに平行な異なる軸心上に配置されていてもよいが、構造が簡素化できる上で同一軸心上に配置されていることが好ましい。
具体的には、
図24〜
図27に示されるように、集塵容器31は、先に説明したように開口部31dの近傍に所定間隔をもって同一軸心上に配置された前記一対の短筒状ボス部31cを有している。カバー部32の軸支部分は、集塵容器31の一対のボス部31cの間に設けられると共に、各ボス部31cの孔に挿入される一対の支持軸35aを有してなる。また、フィルタ部33の軸支部分は、集塵容器31の一対のボス部31cの両側に設けられると共に、各ボス部31cの孔に挿入される一対の支持軸33d
1を有してなる。
【0083】
詳しく説明すると、
図28〜
図30に示されるように、フィルタ部33は、空気を通過させながら塵埃を捕集するためのひだ状のフィルタ本体33aと、このフィルタ本体33aの周囲を囲む樹脂製(例えば、ABS樹脂)の枠体33bと、枠体33bの外周部に一体状に設けられたパッキン部材33b
1とを有してなる。この枠体33bの側面に、一対の突出片33dが一体成形されており、一対の突出片33dの各対向面にほぼ半球形の前記支持軸33d
1が一体成形されている。
フィルタ部33の一対の支持軸33d
1は半球形であることに加え、枠体33bと一対の突出片33dと一対の支持軸33d
1とは樹脂にて一体成形されているため、一対の支持軸33d
1の間を弾性的に容易に広げることができる。したがって、集塵容器31の各ボス部31cの孔にフィルタ部33の一対の支持軸33d
1を外側から容易に挿入することができる。
【0084】
図13と
図15に示されるように、カバー部32は、フィルタ部33を通過した空気を排出する前記排出路35の入口となる前記排出口32aを有している。そして、この排出口32aの近傍、具体的には、排出路35の両側に前記支持軸35aが一体成形されている(
図15参照)。
図24に示されるように、カバー部32の一対の支持軸35aの端面間の距離は、集塵容器31の一対のボス部31c内側の間の距離よりも僅かに長く設定されている。
よって、カバー部32を集塵容器31に取り付ける際は、一方のボス部31cに一方の支持軸35aを挿入した後、他方のボス部31cに他方の支持軸35aを斜めから押し込むことにより挿入できる。
【0085】
これにより、
図10〜
図17に示されるように、通常、フィルタ部33はカバー32の収容凹部内にパッキン部材33b
1にて圧入された状態で収納されており、カバー32とフィルタ部33とが集塵容器31に対して回動可能となっている。したがって、この軸支構造は、集塵容器31を開放して内部の塵埃を廃棄する操作には全く影響はない。しかも、フィルタ部33の一対の支持軸33d
1は、集塵容器31の一対のボス部31cがカバー部32の一対の支持軸35aから離脱するのを防止する規制部材を兼ねているため、このような規制部材を新たに設ける必要がないメリットが得られる。
【0086】
さらに、フィルタ部33の枠部33bの一対の突出片33dの弾性変形を利用して一対の支持軸33d
1の間を弾性的に広げることにより、フィルタ部33を集塵容器31の一対の短筒状軸部31cから容易に取り外すことができ、新しいフィルタ部33の取り付けも同様に弾性変形を利用できるため、フィルタ部33の交換を簡単に行うことができる。
また、フィルタ部33のフィルタ本体33aに付着した塵埃を除去する際は、
図25に示されるように、カバー部32を集塵容器31およびフィルタ部33に対して開放することにより、フィルタ部33のみが集塵容器31の開口部31dを覆うカバー部開放状態にセットすることができる。
図32に示されるように、この状態で、棒部材Kを矢印方向の左右に移動させてフィルタ本体33aの上面のひだ部に擦りつけて振動させることで除塵を行える。この除塵操作は、フィルタ本体33aの塵埃が付着した塵埃捕集面を集塵容器31内に収納した状態で行えるため、室内に塵埃を飛散させず、ユーザーも手を汚すことなく衛生的に簡単に行える。
【0087】
除塵操作後は、
図14〜
図17に示されるように、フィルタ部33をカバー部32に収容するように、フィルタ部33を回動させて集塵容器31を開放すれば、集塵容器31内の塵埃を廃棄することができる。
前記のように、フィルタ本体33aは、山と谷を繰り返すひだ状に形成されているため、山部分に棒部材Kを順次擦りつけることでフィルタ本体33aを振動させることができ、除塵効果を高めることができる(
図29、
図32参照)。これに加え、フィルタ面積が増加するため、フィルタ本体33aの目詰まりが抑制されており、除塵操作を頻繁に行わなくてもよくなるメリットが得られる。なお、フィルタ本体33aはこの形状に限定されるものではなく、一般的な平面状でもよいが、ひだ状の方が前記メリットを得ることができるため好ましい。
このように、フィルタ部33を集塵容器31に回動可能に軸支し、その軸支部分をカバー部32の集塵容器31に対する軸支部分と同一軸心上に配置することで、フィルタ部33の取り扱いが非常に利便性のよいものとなると共に、軸支構造を簡素化することができる。
【0088】
(フィルタ部を容易に回動させる構成について)
前記のように、フィルタ部33の枠体33bの全周囲には、ゴム、軟質樹脂等からなる薄い帯状のパッキン部材33b
1が一体状に設けられている(
図28参照)。
図13に示されるように、集塵容器31の開口部31dをフィルタ部33およびカバー部32にて覆うと、パッキン部材33b
1の下面が集塵容器31の開口部31dの開口端縁に当接するため、集塵容器31内の空気漏れが防止され、集塵容器31内が密封される。また、フィルタ部33をカバー部32内に収納した状態において、パッキン部材33b
1はカバー部32の内周面と圧接しており、これによりフィルタ部33はカバー部32に圧入された状態で保持されると共に、フィルタ部33を通過した後の排気空間50の密閉状態が確保されている。
【0089】
このような構成により、
図14〜
図17および
図26に示されるように、カバー部32に対し集塵容器31を開放(回動)させると、フィルタ部33はカバー部32内に圧入されて保持された状態を維持する。
フィルタ部33のフィルタ本体33aの除塵を行う場合、
図25および
図32に示されるように、フィルタ部33をカバー部32内から離脱させる必要があるが、集塵容器31に対して単にカバー部32を開放しただけでは、
図26に示されるように、フィルタ部33がカバー部32内に保持された状態を維持するため、フィルタ部33の塵埃捕集面が露出してしまい、ユーザーが塵埃捕集面に触れるという不具合を生じるおそれがある。
【0090】
このような不具合を解消するために、
図10と
図25に示されるように、フィルタ部33はパッキン部材33b
1の少なくとも1箇所に凸部33eを有し、カバー部32は凸部33eと対向する位置に凸部33eを露出させるための切欠き部32fを有している。
集塵容器31の開口部31dをカバー部32にて閉じた状態のとき(
図10参照)、凸部33eを指で押さえ、係止機構を解除し、カバー部32を開くことで、集塵容器31の開口部31dはフィルタ部33にて閉じられた状態を維持される(
図25参照)。つまり、ユーザーは、フィルタ部33の塵埃捕集面を外部に露出させることなく、簡単にフィルタ部33をカバー部32内から離脱させることができる。そして、前記のように、棒部材Kを用いてフィルタ部33を振動させることにより、塵埃捕集面に捕集された塵埃を集塵容器31内へ振り落とすことができる(
図32参照)。このとき、フィルタ部33のパッキン部材33b
1が集塵容器31の開口端縁に密着しているため、塵埃が集塵容器31内から外部に飛散しない。
【0091】
また、フィルタ部33の凸部33eは、フィルタ部33の軸支部分と反対側に設けられている。これにより、凸部33eを指で軽く押さえても容易にフィルタ部33をカバー部32から外すことができる。
また、指が凸部33eに引っ掛かり易くなるように、凸部33eはその露出部分に滑止め部を有している。
図31に示されるように、滑止め部は、例えば、ローレット加工面の如く、凸部33eの露出表面に形成された小さな凹凸群からなる。
【0092】
<他の実施形態>
本発明は図面に示された実施形態に限定されず、以下のように構成されてもよい。
(1)図面で示された集塵装置は、集塵容器31とカバー部32とフィルタ部33とが相対的に回動できるように相互に連結された軸支部分が、流入口31aおよび排出口32a側に配置されたものであるが、軸支部分は流入口31aおよび排出口32aと反対側に配置されてもよい。この場合、フィルタ部33と共にカバー部32にて集塵容器31の開口部31dを閉じた状態をロックする係止部32eおよび突起31bを、流入口31aおよび排出口32aの横に配置すればよい。また、集塵容器31内の塵埃を廃棄する際は、取っ手36を持って集塵容器31を開放した後、集塵容器31を縦にして流入口31aと軸支部分との間から塵埃を廃棄すればよい。
【0093】
(2)図面で示された集塵装置は、カバー部32の排気口32aを集塵容器31の流入口31aと同じ側に配置されたものであるが、排気口32aを流入口31aとは反対側に配置してもよい。この場合、係止部32eおよび突起31bを排出口32aの横に配置すればよい。なお、この構成(2)は前記構成(1)にも適用できる。
【0094】
(3)前記構成(2)を有する集塵装置は、吸込口を有するヘッド部がホースを介して掃除機本体に接続される通常の掃除機の集塵装置として適用可能である。この場合、集塵容器31の流入路34の傾斜を無くして水平にすることができる。