(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記線状の電極の複数本を、前記ベース電極の板面と平行な面内において間隔を置いて平行に配列しておき、これらの複数の線状電極とベース電極との間に同時に電圧を印加して、複数の線状電極とベース電極との間で同時にコロナ放電を生起させ、これらの線状電極とベース電極との間に形成される電界領域内に層状焼結体を曝すことを特徴とする請求項2に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記線状電極を、前記ベース電極の板面と平行な面内において線状電極の長さ方向に対して直交する方向に、ベース電極に対して相対的に移動させながら線状電極とベース電極との間に電圧を印加して、線状電極とベース電極との間でコロナ放電を生起させることを特徴とする請求項2、請求項3のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
少なくとも表面層が導電性を有しかつ超音波厚みセンサにおける第1の電極となるべき薄板状の支持体の板面に、前記層状焼結体が予め積層された状態で形成されており、前記支持体を前記ベース電極として用いて、その支持体表面と前記コロナ放電用電極との間でコロナ放電を生起させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記薄板状の支持体の板面に、複数の層状焼結体が間隔を置いて配列形成されており、その複数の層状焼結体を同時にコロナ放電による電界中に曝し、これによって複数の層状焼結体を同時に分極させることを特徴とする請求項5に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記薄板状の支持体の板面に、複数の層状焼結体が間隔を置いて配列形成されており、前記支持体を、その板面と平行な方向に、コロナ放電用電極に対して相対的に移動させながら、前記複数の層状焼結体のうちの1または2以上の層状焼結体を順次コロナ放電による電界中に曝し、これによって前記複数の層状焼結体を順次分極させることを特徴とする請求項5に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記層状焼結体の表面に、超音波厚みセンサにおける第2の電極となる導電層が予め形成されており、その状態でコロナ放電用電極とベース電極との間に電圧を印加してその間の層状焼結体に分極処理を施すことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記層状焼結体が、前記支持体の表面に酸化物系圧電材料を含む粘性液状物を塗布して焼結原料層を形成した後、その焼結原料層を加熱して焼成することにより形成されたものであることを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記層状焼結体が、前記粘性液状物として、平均粒径が1〜10μmの範囲内の酸化物系圧電材料粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルとを混合したものを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項10に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記層状焼結体が、前記粘性液状物として、平均粒径1〜10μmの酸化物系圧電材料粉末と、酸化物圧電材料の金属成分のアルコキシドの分解による平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末とを分散媒に分散させたスラリーもしくはペーストを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項10に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記層状焼結体が、前記粘性液状物として、酸化物系圧電材料からなる平均粒径が0.15〜0.25μmの超微粉末を分散媒に分散させたスラリーもしくはペーストを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項10に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
前記層状焼結体が、前記粘性液状物として、酸化物系圧電材料粉末および低融点ガラス粉末を分散媒に分散させたスラリーもしくはペーストを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項10に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理方法。
少なくとも表面が平坦でかつ導電性を有する電極台と、その電極台の表面から所定間隔だけ離れて電極台表面と平行に配設された導電性線材からなるコロナ放電用線状電極と、前記電極台と線状電極との間に電圧を印加するための分極用電源とを有し、金属薄板からなる支持体の一方の板面に酸化物系無機圧電材料からなる層状焼結体を積層形成してなる積層体を、前記電極台の表面に支持体の他方の板面が接するように載置して、前記線状電極と、それに対向するベース電極としての支持体との間に形成されるコロナ放電による電界領域内に、前記層状焼結体を曝すようにしたことを特徴とする超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理装置。
前記電極台と前記線状電極とのうちの一方を、電極台の表面に平行でかつ線状電極の長さ方向に対して直交する方向に、電極台と線状電極とのうちの他方に対して相対的に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項17〜請求項19のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系無機圧電材料焼結体の分極処理装置。
【背景技術】
【0002】
周知のように圧電素子を用いて超音波の送受信を行なって、各種の対象物、対象部位の検出や、各種測定、診断などを行なう装置は、従来から広く使用されている。例えば水中探査用のソナー、あるいは超音波探傷装置、超音波診断装置が従来から広く知られており、そのほか、金属板や金属管などの厚みを検出する厚みセンサにも、超音波センサが用いられている(例えば特許文献1、2など)。
このような超音波送受信用の圧電素子の材料としては、PZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3)で代表されるペロブスカイト結晶構造を有する酸化物系圧電材料(圧電セラミックス)が最も代表的である。
【0003】
ところでこの種の酸化物系圧電材料からなる圧電素子の製造方法としては、PZTなどの原料粉末を円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状に成形し、その成形体を焼結して、セラミック焼結体とし、その後、焼結体に電極を取り付けてから分極処理を施し、圧電素子とするのが一般的である(例えば特許文献3参照)。
具体的には、例えばPZT圧電素子の場合、先ずPbO、ZrO
2、TiO
2などのPZT用の原料粉末を所定の割合で配合し、その配合粉末に純水を加えてボールミルで混合粉砕し、乾燥して仮焼成し、再度粉砕して粉末とし、更に仮焼成してから再度粉砕して、ペロブスカイト型結晶構造を有するPZT粉末を得る。そしてそのPZT粉末に、PVA(ポリビニルアルコール)などのバインダを加えて混合し、適度の大きさの造粒粉とする。その後、造粒粉に圧力を加えて成形し、肉厚な円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状の成形体とする。更にその成形体を加熱してバインダを除去してから、高温に加熱して焼成(焼結)して、セラミック焼結体とし、その後、所定の製品形状(圧電素子形状)に加工した後、銀電極などの電極を焼付けなどにより取り付け、分極処理を行なって、圧電特性を付与するのが通常である。
【0004】
なお焼結体に対する分極処理としては、焼結体を一対の電極によって挟み、電極間に2000〜3000V/mm程度の高電圧(直流もしくはパルス)を印加するのが一般的である。この場合、高電圧により電極間での絶縁破壊による放電(火花放電:全路放電)が発生してしまうことを防止するため、シリコンオイル中に浸漬して、そのシリコンオイル中で電極間に高電圧を印加することが行なわれている。
【0005】
前述のような従来の酸化物系圧電素子の製造法においては、成形体を焼結する際に、1200〜1300℃程度の高温で加熱してすることが行なわれている。そしてこのように高温で焼成することによって、焼結体は、密度90%以上、通常は95%程度まで高密度化されて、緻密な焼結体を得ることができる。
【0006】
このように、従来の製造方法において焼結体の高密度化を図っていた理由は、次のように考えられる。
一般に、高い圧電特性を有する圧電素子ほど、高品質の圧電素子であると評価される。すなわち、分極処理後の圧電特性が高いほど、効率的に超音波を発振することが可能となり、超音波出力の高出力化が容易に図ることが可能となる。一方、酸化物系無機圧電材料からなる焼結体を用いた圧電素子では、焼結体が高密度となるほど、分極処理後の圧電特性が向上する。そこで、一般に使用される圧電素子では、焼結体の密度が90%程度以上、95%程度の高密度となるように製造するのが通常である。
【0007】
例えば、超音波ソナーの場合は、センサから検出対象物までの距離が著しく大きく、そのため、確実に対象物を捕捉するためには、大出力を必要とする。また超音波探傷装置の場合、たとえ検出すべき部位までの距離が短くても、検出すべき傷や欠陥の形状が一様ではなく、しかも傷や欠陥からの反射波と、傷や欠陥よりも遠い位置に存在する管外表面/外部空間の境界面からの反射波との2種の反射波の受信信号を峻別することが必要であり、そのためある程度大出力とする必要がある。さらに更に超音波診断装置の場合も、検査対象部位の形状が一様ではなく、しかも人体組織を透過する際の超音波の減衰が大きいことなどから、やはりかなりの大出力とする必要がある。そこで、これらの用途では、セラミック圧電素子はできるだけ高密度とすることが必要とされている。そして厚みセンサについても、他の用途と同様に高密度化することが常識とされていたのである。
なお、圧電素子を高出力化すれば、それに伴って反射波のエネルギも大きくなる。そして反射波のエネルギが過大であれば、反射波の受信信号中のノイズが大きくなってしまう。そこで従来、過大な反射波が予想される場合には、反射波を減衰させるためのダンパを組み込んでおくことも行なわれている。
【0008】
ところで従来の超音波厚みセンサでは、厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、各種設備の配管などの測定対象物の外表面に、水などの超音波媒体を介して押し当て、超音波の送受信を行なって厚みを測定するのが通常である。
しかるに、各種設備の配管は、金属管の外表面が保護材や断熱材などの外被によって覆われていることが多い。このような場合に超音波厚みセンサによって配管の厚み測定を行なう際には、測定個所の外被を除去して金属管の外表面に媒体を塗布もしくは供給する準備作業が必要となり、また厚み測定後には、媒体を拭き取り、更に外被を修復する修復作業を必要とする。したがって1回の厚み測定作業に多くの手間と時間を要さざるを得なかったのが実情である。
【0009】
更に、従来の超音波厚みセンサは、前述のように厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、測定対象物の外表面に水などの超音波媒体を介して押し当てるのが通常であるため、配管や容器外壁などにおける多数の個所の厚み測定を同時に行なうことは困難であり、そのため多数の個所の厚み測定データを得たい場合には、膨大な手間と時間を要さざるを得なかった。
また同様の理由から、厚みの経時的な測定データを連続して得ることは困難であった。
【0010】
一方、従来の製造方法によって得られた酸化物系無機圧電材料(セラミック圧電材料)を用いた圧電素子は、焼結体が緻密でかつ厚いバルク形状を有しているため、可撓性(フレキシビリティ;屈曲性)を全く有していないのが通常である。そのため、このような圧電素子を配管や容器外壁などを対象とする超音波厚みセンサに用いた場合、次のような問題があった。
すなわち、配管のうちでもその管径が小さい配管、すなわち外面の曲率半径が小さい配管の管壁や、配管におけるL字状に屈曲した部あるいはL字状に溶接した部分、すなわちエルボー部分、さらにはT字状に溶接した部分の隅部の如く、湾曲した部分(凸状もしくは凹状に湾曲した部分)の厚みを測定しようとした場合、その湾曲部分に探触子の前面を均一に当てることは困難であり、そのため測定誤差が大きくなったり、厚み測定が困難となったりする問題もあった。
【0011】
そこで本発明者等は、酸化物系無機圧電材料を用いた超音波厚みセンサとして、全体的に薄質で可撓性を示すことができるセンサ、すなわち測定対象個所の外表面が湾曲している場合でもその湾曲面に追従させて、湾曲面における厚み測定を確実に行なうことができ、しかも配管や容器外壁などの測定対象個所に厚みセンサを常時貼着させておくことにより、厚み測定前の準備作業や測定後の修復作業などを不要とし、これによって厚み測定の手間と時間を大幅に削減することができ、併せて多数の箇所の同時的な厚み測定や、連続的な厚み測定も可能とした超音波厚み測定センサを開発するべく、種々実験、検討を重ねた。
その結果、配管や容器などの厚み測定の場合、対象となる管壁や容器外壁の厚み(超音波を透過/反射させるべき距離)は数百μmからせいぜい十数mm程度と小さく、しかも反射面は一様な定形面となっており、更には、超音波探傷の場合のように2種以上の反射波の受信信号を峻別する必要もないため、他の用途よりも超音波出力が小さくても、確実に厚みを測定し得ることを知見した。言い換えれば、厚みセンサの場合は、他の用途よりも圧電効率が低くても、厚みセンサとして充分に機能させることができることを知見した。
【0012】
そしてさらに研究を進めたところ、PZTなどの酸化物系無機圧電材料からなる焼結体を、薄質な可撓性を有する支持体(たとえばステンレス鋼薄板などの金属薄板)上に70〜80%の比較的低い密度でポーラスに薄く層状に形成しておけば、可撓性(フレキシビリティ)を付与することが可能となり、しかもその場合、90%以上の高密度の焼結体と比較すれば圧電効率は低くなるが、数百μmからせいぜい十数mm程度の測定対象物の厚みを測定するには充分であることを見い出し、そのような低密度の層状焼結体(圧電セラミック層)を有する超音波厚みセンサの製造方法について、本発明者等は、既に別途特許出願を行なっている。
【0013】
ここで、酸化物系無機圧電材料からなる焼結体の分極処理に当たっては、従来一般には、前述のように焼結体を一対の分極用電極によって挟み、シリコンオイル中に浸漬させた状態で電極間に高電圧を印加する方法が適用されているが、このような従来方法では、分極処理後に、シリコンオイル浴中から取り出した焼結体の表面に付着しているシリコンオイルを洗浄や払拭によって除去することが必要となり、そのために多大な手間と時間を要するという問題がある。またこの場合、洗浄や払拭を行なっても充分にシリコンオイルを除去し切れないことも多く、その場合には、外観が悪くなるばかりでなく、その後の使用時などにおいて焼結体表面に周囲の塵埃が付着しやすくなるなど、種々の問題が生じてしまう。
【0014】
なお従来、有機材料の表面改質のための分極処理法としては、例えば特許文献4に示されているように、コロナ放電によって分極処理を行なうことが提案されている。すなわち平板上の下部電極の上面に分極処理対象の有機材料、たとえばポリ尿素膜を配置し、さらにその上方に針状電極を配して、針状電極と下部電極との間に高電圧を印加してコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電による電界(放電域)内に有機材料を曝すことによって分極処理を行う方法である。
【0015】
しかしながら、PZTで代表される酸化物系無機圧電材料からなる従来一般の焼結体については、コロナ放電によっては、厚みセンサ以外の一般的な圧電素子の用途に要求される程度まで充分に分極させることは困難であり、そのため、コロナ放電を酸化物系無機圧電材料からなる焼結体の分極処理に適用することは実際には行なわれていなかった。
【0016】
すなわち、分極の程度を表すパラメータとしては、分極測定のためのd33メーターによる測定値(d33値)を用いることが多いが、PZTなどの酸化物系圧電材料からなる90%以上の高密度の焼結体についてコロナ放電によって分極させようとした場合は、d33値として、焼結体を直接一対の電極で挟んでシリコンオイル中で分極処理を施した場合の1/10程度の値しか得られないことが確認されている。
このように従来一般に使用されている高密度の緻密な酸化物系無機圧電材料からなる焼結体では、その分極処理にコロナ放電を適用しても、一般的な用途で目標とされる程度までは充分に分極されず、そのため酸化物系無機圧電材料からなる焼結体については、その分極処理方法としてコロナ放電は実際上適用されていなかったのが実情である。
【0017】
そして、可撓性を示し得る超音波厚みセンサを製造するために酸化物系無機圧電材料からなる70〜80%の低密度の焼結体に対して分極処理を行う場合に、その分極処理方法として焼結体を一対の分極用電極により挟んでシリコンオイル中で高電圧を印加する従来法を適用すれば、前述のように分極処理後のシリコンオイル除去のための洗浄や払拭の問題、さらにはシリコンオイルの残留付着による問題の発生を避け得なかったのである。
【0018】
また一方、可撓性を示し得る超音波厚みセンサを量産的規模で多数製造するための方法として、本発明者等は、ステンレス鋼薄板などの薄質な板状の支持体の板面に、間隔を置いて多数の層状焼結体を形成し、その後、薄板状の支持体を各焼結体ごとに切り分けることによって、多数の超音波厚みセンサを一括的に製造する方法を提案している。
このような量産方法を実施する場合、各焼結体に対する分極処理は、薄板状支持体を切り分ける前の段階で一括して行う(一括分極)か、または薄板状支持体を切り分けた後に、個別に行なうこと(切り分け後の個別分極)が考えられる。
【0019】
ここで、分極処理として、焼結体を挟んでシリコンオイル中で高電圧を印加する従来方法を適用した場合、前者のケース(一括分極)では、多数の焼結体を分極用電極によって均一に密着状態で挟んで、すべての焼結体を均一に分極させるには、大きな困難を伴う。すなわち、薄板状支持体表面に形成された多数の層状焼結体は、厳密にはその厚みが同じとは言えず、そのため分極処理用電極によって多数の層状焼結体を支持体ごと挟んだ場合、層状焼結体の微妙な厚みの差に起因して、すべての層状焼結体に分極用電極を密着させることが困難なことが多い。また分極用電極を強制的にすべての層状焼結体に密着させようとして圧力を加えれば、多数の焼結体のうちの相対的に厚い焼結体に過大な力が加わって、その焼結体が破壊してしまうおそれがある。特に、密度が70〜80%という低密度のポーラスな焼結体の場合、その傾向が強くなる。
【0020】
また、後者のケース(切り分け後の個別分極)では、各焼結体を1個ずつ分極用電極によって挟んでシリコンオイル中で分極処理すれば、多数の超音波厚みセンサを製造するために長時間と多大な手間を要してしまい、分極処理工程が量産プロセスにおける生産性阻害要因となってしまう。すなわち、分極処理までのプロセスが量産に適した効率的な工程であっても、個別分極処理がネックとなって、高い生産性で効率的に多数の超音波厚みセンサを製造することが困難となってしまう。
【0021】
これらの観点から、高い生産性をもって多数の焼結体を能率よく分極処理し得る方法の開発が強く望まれている
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
図1〜
図3には、本発明の一実施形態の分極処理装置を用いて、本発明の分極処理方法を実施している状況を概略的に示す。なおこの実施形態は、分極対象の酸化物系圧電材料からなる焼結原料が、薄板状支持体としての金属薄板の板面上において焼結されて、その金属薄板上に層状焼結体が形成された積層体の状態とされており、その積層体の金属薄板(薄板状支持体)を、コロナ放電時における平板上のベース電極として利用して分極処理を行う場合の例である。
【0070】
図1〜
図3において、床面などの固定水平面上に設置された固定台1の上方に電極台3が位置しており、この電極台3は、固定台1に、昇降調整機構5を介して上下方向に位置調整に支持されている。例えば電極台3は、固定台1から垂直上方に伸びるガイド軸7によって昇降可能に支持されるとともに、油圧シリンダなどの流体圧シリンダあるいは回転螺子機構、その他、各種のリンク機構など、自動もしくは手動の任意の構成の昇降調整機構5によって昇降されるように構成されている。
前記電極台3は、その上面が水平な平坦面3Aとされており、またその電極台3は、基本的には少なくともその上面(平坦面)3Aが導電性を有する構成とされていればよいが、本実施形態の場合は、電極台3の全体がアルミニウムやアルミニウム合金、銅や銅合金、ステンレス鋼などの導電性材料からなる構成とされている。そしてこの電極台3は、接地電位を保つように、アース線9によって電気的に接地されている。なお電極台3には、必要に応じて、電熱ヒータや温水ヒータ、オイルヒータなどの図示しない加熱手段が組み込まれていても良い。
【0071】
さらに電極台3の上方には、コロナ放電用電極11として、直線状の導電性線材からなる1本または2本以上(図示の例では3本)の線状電極11A〜11Cが、その長さ方向が水平となるように(したがって電極台3の上面3Aと平行となるように)、かつ同じ水平面内において平行に等しい間隔Sで配設されている。これらの線状電極11A〜11Cは、タングステン(W)などの高融点導電材料によって外径50〜100μm程度の線材に作られたものである。そして線状電極11A〜11Cは、例えばアーム状の電極支持部材13から間隔をおいて下方に突出する一対の支持部13A、13B間に張設されて、水平状態を保つようになっている。また線状電極11A〜11Cは、直流高電圧電源からなる分極電圧印用の電源15の一方側(通常は正極側)に、リード線16を介して電気的に接続されている。
【0072】
以上のようにして、電極台3の上方の所定距離Gだけ離れた位置に、その電極台3の上面3Aと平行なコロナ放電用の線状電極11A〜11Cが配設された分極処理装置が構成されている。そして電極台3の上面3Aと線状電極11A〜11Cの間の距離Gは、昇降調整機構5によって電極台3の垂直方向位置を変えることによって、適宜調整可能となっている。
但し、場合によっては、電極台3の上下方向位置は固定しておく一方、電極支持部材13を昇降可能として、その電極支持部材13に昇降調整機構を設けておき、必要に応じて電極支持部材13を昇降させることによって線状電極11A〜11Cを上下動させ、これによって電極台3の上面3Aと線状電極11A〜11Cの間の距離Gを調整することも可能である。したがって、要は、電極台3の上面3Aと線状電極11A〜11Cの間の距離Gを調整する間隔調整手段として、電極台3と電極支持部材13のいずれかに昇降調整機構が設けられていれば良い。
【0073】
次に、
図1〜
図3に示される実施形態の分極処理装置を用いて、酸化物系圧電材料からなる層状焼結体に分極処理を施す方法、すなわち本発明の分極処理方法の一例について説明する。
【0074】
分極処理対象となる焼結体17は、ステンレス鋼や白金などの導電性を有する10〜150μm程度の薄質な金属薄板19を支持体(薄板状支持体)とし、その金属薄板19の一方の板面(上面)に、30〜150μm程度の薄い層状に形成されており、これによって層状焼結体17を含む積層体20が構成されている。ここで層状焼結体17は、後に改めて説明するように、酸化物系圧電材料、例えばチタン酸ジルコン酸鉛((Pb(Zr,Ti)O
3:略称PZT)、チタン酸ビスマス(Bi
4Ti
3O
12:略称BIT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)などを、その密度が70〜80%となるように、金属薄板19の板面上で焼成してなるものである。一方、金属薄板19は、薄い層状のPZTなどの焼結原料を焼成するに当たってその焼結原料を支持するための支持体として機能するとともに、焼成後の層状焼結体を支持するための支持体として機能し、さらに超音波厚みセンサにおいて層状焼結体(セラミック圧電体層)を挟む一対の電極のうちの一方の電極(後述する第1の電極)となるものであるが、本実施形態では、それにとどまらず、コロナ放電のための電圧印加時に、コロナ放電用電極(線状電極11A〜11C)の対極の平板状ベース電極としても機能するものである。
【0075】
前述のような層状焼結体17に分極処理を施すにあたっては、積層体20、すなわち金属薄板19の板面上に層状焼結体17が形成された積層体20を、金属薄板19の板面(下面)が電極台3の上面3Aに接するように載置する。この状態では、電極台3と金属薄板17との間が電気的に導通されて、金属薄板17が電極台3と同電位(通常は接地電位)となり、金属薄板17自体が、コロナ放電時の平板状ベース電極として機能し得ることになる。またこの状態では、層状焼結体17の上面は水平となっており、同じく水平に張設された線状電極11A〜11Cとの間に所定の間隔が存在する。
この状態で分極電圧印用電源15を駆動させれば、線状電極11A〜11Cと金属薄板19との間に高電圧が加えられ、これによって各線状電極11A〜11Cから金属薄板19に向けてコロナ放電が発生して、電界領域(放電域;電位差領域)が形成される。層状焼結体17は、金属薄板19に対して線状電極11A〜11Cの側に形成されているから、その層状焼結体17は、コロナ放電による電界に曝され、その結果、焼結体17が分極されることになる。
本発明者等の実験によれば、密度が70〜80%と低密度でかつ厚みが数百μmオーダー以下の薄質な層状焼結体であれば、コロナ放電によって、超音波厚みセンサとして必要な程度の分極特性、圧電特性が得られることが判明している。
なお、層状焼結体を構成している酸化物系圧電材料が、常温では比較的分極されにくい材料である場合には、既に述べたように分極処理装置として電極台3に予め加熱手段を組み込んだ構成を適用しておき、分極処理時に加熱手段を作動させて、電極台3および金属薄板19を介して層状焼結体19を、例えば80〜200℃程度に加熱し、その状態でコロナ放電を生起させて、分極を促進しても良い。
【0076】
なお本実施形態の場合、コロナ放電用電極としては、従来のコロナ放電において一般的な針状電極ではなく線状電極を用いているが、線状電極であっても、その径が小さければ、水平に伸びる線状電極の垂直断面で見れば点状となっており、そのため平板状ベース電極(金属薄板19)に向かってコロナ放電を生じさせることができる。しかも各線状電極からは、その線状電極の長さ方向に沿う帯状に電界が形成されるため、ある表面積を有する層状焼結体17に対して、その表面における広がりを持った領域を同時に電界に曝し、これによって層状焼結体のある広さの領域を、一斉に分極させることができる。
【0077】
特に本実施形態のように、線状電極11として平行な複数本のもの(11A〜11C)を設けておけば、同時に広い面積にわたって層状焼結体をコロナ放電による電界中に曝すことができる。
例えば
図1〜
図3に示す例では、間隔を置いて平行に配列された3本の線状電極11A、11B、11Cのそれぞれと平板状ベース電極に相当する金属薄板19との間には、それぞれコロナ放電によって電界領域(放電域)21A、21B、21Cが形成される。これらの電界領域21A、21B、21Cは、それぞれ線状電極11A、11B、11Cの長さ方向に沿う帯状の領域として、最大幅(金属薄板表面付近での幅)Wで形成される。そして各電界領域21A、21B、21Cの幅方向の端部付近が互いに重なり合うように、線状電極11A、11B、11Cの相互間の間隔S、および線状電極11A、11B、11Cと電極台3との間の距離Gを設定しておけば、金属薄板19上に形成されている層状焼結体17の全体が電界領域中に曝されることになり、その層状焼結体17の全体を同時に分極させることが可能となる。なおここで、コロナ放電には、本来は線状電極11A、11B、11Cと、ベース電極を兼ねる金属薄板19の表面との間の距離G
0の影響を受けるが、金属薄板19は通常は150μm程度以下と薄質であり、一方距離Gは数mmから十数mm程度であり、したがって距離G
0は距離Gと大きな差はなく、実質的に同じとみなすことができる。
【0078】
ここで、線状電極11A〜11Cと層状焼結体17との間でコロナ放電を適切に発生させるためには、線状電極11A〜11Cと金属薄板19の表面との間の距離G
0を、主として印加する電圧に応じて適切に調整することが望まれる。また印加する電圧は、層状焼結体の密度や厚み、焼結体材料(酸化物系圧電材料)の種類などに応じて定める必要がある。したがって、実際にコロナ放電による分極処理を実施するに当たっては、予め層状焼結体の密度や厚み、焼結体材料(酸化物系圧電材料)の種類などに応じて、線状電極11と電極台3の上面3Aとの間の距離Gを調整しておくことが望ましい。そこで本実施形態の場合、予め間隔調整手段としての昇降調整機構5によって電極台3を昇降させ、その上下方向の位置を調整することによって、層状焼結体12の表面の上下方向の位置を調整し、これにより上記の距離G、G
0を適切に調整しておくことが望ましい。
また、図示していないが、間隔調整手段としての昇降調整機構が、線状電極11を支持する電極支持部材13に設けられている場合には、その電極支持部材13を昇降させることによって、線状電極11の上下方向位置を変化させ、これによって上記の距離G、G
0を調整すれば良い。
【0079】
以上のようにして金属薄板19の板面上の層状焼結体17に分極処理が施された後、その金属薄板19と層状焼結体17とからなる積層体20を超音波厚みセンサに適用するに当たっては、電極台3上から積層体20を取り出して(あるいは電極台20上に載置したままの状態で)、
図4に示すように、層状焼結体17の表面(金属薄板19に対して反対側の面)に、第2の電極23を形成し、さらに第1の電極を兼ねる金属薄板19および第2の電極23に、リード線25A、25Bを取り付ければ、超音波厚みセンサ27が得られる。ここで、第2の電極23の形成のための具体的手段は特に限定されないが、例えば銀(Ag)などの電極用の導電性金属の粉末をペースト化しておき、そのペーストを層状焼結体表面に塗布して焼き付けたり、あるいは電極用の導電性金属の薄膜を層状焼結体の表面に載置もしくは貼着して焼き付けたりすれば良い。
【0080】
前述のような実施形態の方法によって製造された超音波厚みセンサの使用時の状況を
図5、
図6に示す。
図5、
図6に示しているように、第1の電極(金属薄板)19の片面が厚さ測定対象物(金属管の管壁、容器の外壁など)29の表面に接するように、接着剤31などを用いて超音波厚みセンサ27を貼り付けることによって、測定対象物29の厚みを随時測定することができる。なおこの際の接着剤31としては、銀ペースト、ガラスペースト、白金ペースト、金ペーストなどを使用すればよい。
【0081】
ここで、以上のようにして製造された超音波厚みセンサは、全体として第1の電極(金属薄板)、層状焼結体、第2の電極の3層構造からなる極めて薄型のものであって、配管の外側に保護や断熱などのために外被を設ける場合でも、配管組み立て時において予め配管の外面に接着しておき、その厚みセンサの外側から配管の保護や断熱のための外被を設け、その状態で配管設備をそのまま使用し、そのままの状態で適宜厚み測定をおこなうことができる。そしてその場合には、厚み測定前における外被の剥離や、測定後の外被修復作業が不要となり、また厚み測定前に対象物の表面に超音波媒体を塗布する作業、及び測定後に超音波媒体を拭き取る作業も不要となる。
また上記の超音波厚みセンサは、全体として薄質で可撓性を有しているため、特に
図6に示しているように、測定対象物29の表面が湾曲している場合であっても、その湾曲面に沿って超音波厚みセンサ27を接着して、湾曲部位における厚み測定を行なうことができる。
【0082】
以上の実施形態では、金属薄板(分極処理におけるベース電極;センサ製品における第1の電極)19の一方の板面に形成された層状焼結体17に対して分極処理を施した後に、第2の電極23を形成するものとして説明したが、分極処理を行う以前の段階において層状焼結体17の表面に第2の電極23を形成しておき、その後にコロナ放電による分極処理をおこなってもよい。その場合の分極処理状況を、本発明の第2の実施形態として、
図7、
図8に示す。
この場合、
図7、
図8に示しているように、分極処理時には、線状電極11(11A〜11C)と層状焼結体17との間(実際には層状焼結体17の表面)に第2の電極23が介在している状態で、線状電極11と金属薄板(第1の電極;ベース電極)19との間に高電圧を印加することになるが、本発明者等の実験によれば、このように第2の電極23が介在している状態でも、上記の高電圧によってコロナ放電が生じ、かつそのコロナ放電によって層状焼結体17が分極されることが判明している。
【0083】
次に、本発明の分極処理方法を実施するに当たっての望ましい処理条件、および分極対象の焼結体などの構成についての望ましい構成条件について説明する。
【0084】
〔分極処理の電極間距離、印加電圧および時間〕
分極のためのコロナ放電時におけるコロナ放電用電極としての線状電極11(11A〜11C)と、それに対向する平板状のベース電極(金属薄板19)との間の間隔G
0は、0.5〜2cm程度が好ましい。間隔G
0が0.5mm未満では、対向電極間の距離が小さすぎて、絶縁破壊による火花放電(全路放電)が生じてしまうおそれがあり、一方間隔G
0が2cmを越えれば、コロナ放電が生じにくくなってしまう。
また分極のためのコロナ放電時において印加する印加電圧は、間隔G
0によっても異なるが、通常は5000〜15000V程度が好ましい。5000V未満ではコロナ放電が生じにくくなり、一方15000Vを越えれば、細い線状電極が焼切れてしまうおそれがある。なお本発明者等の実験によれば、層状層状焼結体の密度が70〜80%で、かつ厚みが30〜150μm程度と薄質であれば、上記の電極間距離条件、印加電圧条件の範囲内でのコロナ放電によって、超音波厚みセンサとして必要な程度の分極特性(圧電特性)が得られることが確認されている。
さらに、高電圧を印加する時間、すなわちコロナ放電によって分極処理を行う時間は、1〜5分程度とすることが望ましい。分極処理時間が1分未満では、70〜80%の低密度の焼結体について、超音波厚みセンサとして必要な程度まで分極させることができなくなってしまうおそれがあり、一方、5分を越えて分極処理を行っても、70〜80%の低密度の焼結体ではそれ以上分極が進行せず、生産性を損なうだけである。但し、分極しにくい圧電材料の場合には、5分を越える長時間の分極処理を行うことも許容される。
なおこれらのコロナ放電による分極処理の条件は、層状焼結体の表面に予め第2の電極が形成されている状態で分極処理を行う場合と、第2の電極が形成されていない状態で分極処理を行なう場合とのいずれの場合にも共通して望ましい条件である。
【0085】
〔焼結体の種類〕
層状焼結体を構成する酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の種類、組成は、基本的には限定されないが、ペロブスカイト型結晶構造を有する強誘電体からなる酸化物系圧電材料であることが好ましく、そのうちでも、PZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3)、より具体的には、Pb(Zr
xTi
1−x)O
3〔但し0.5≦x≦0.7〕が好ましく、更に上記のxの値が0.52前後の組成のPZTが最も好ましい。その他、上記のPZT組成を基本として、それに微量添加元素として、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、Gdなどの1種又は2種以上を、それぞれ10重量%程度以下添加したものであってもよく、要は、PZT系(チタン酸ジルコン酸鉛系)の圧電セラミック材料と称される材料はすべて対象となる。さらに、PZT系圧電セラミック材料に限らず、その他のペロブスカイト型結晶構造を有する圧電セラミック材料、例えばLiNbO
3(ニオブ酸リチウム)など、またペロブスカイト結晶構造を持たないその他の圧電セラミック材料、例えばBi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)なども適用することができる。
【0086】
〔焼結体密度〕
層状焼結体の密度は、70〜80%の範囲内とする。
層状焼結体の密度が80%と越える高密度となれば、焼結体の剛性が高くなって、可撓性が劣る状態となり、その結果、厚みセンサとしての使用時においてセンサを湾曲させれば、焼結体が金属薄膜(第1の電極)から剥離したり、クラックが発生したりするおそれがあり、したがって厚さ測定対象の配管などの湾曲部分に適用することが困難となる。また、超音波厚みセンサの製造工程中、焼結原料を焼成する際に、密度が80%と越えるように加熱・焼成した場合、焼成時の収縮が大きくなって、金属薄膜(第1の電極)から剥離してしまうおそれが強く、その結果、第1の電極としての金属薄膜上に密着した層状焼結体を得ることが困難となる。
一方、層状焼結体の密度が70%未満の低密度では、焼結体内の空隙率が高すぎて、焼結体内部の粒子が充分に結合されていない状態となり、そのため、圧電センサ製造工程中の焼成後の工程におけるハンドリング時やセンサとしての使用時に層状焼結体が粉体状に剥落してしまうおそれがあり、また同時に、焼結体内部の空隙率が高くなって、厚さ測定のため超音波センサとして充分な圧電特性が得られなくなるおそれがある。
したがって層状焼結体の密度は、70〜80%の範囲内とする。
【0087】
〔層状焼結体の厚み〕
酸化物系圧電材料からなる層状焼結体の厚みは、平均で30〜150μmの範囲内とする。
層状焼結体の平均厚みが30μm未満では、その厚みが薄すぎてセンサーとしての能力が低くなる。一方、層状焼結体の平均厚みが150μmを越えれば、層状焼結体の剛性が大きくなって可撓性を損ない、超音波厚みセンサを湾曲させた時に、焼結体に割れが生じたり、第1の電極(金属薄板)から剥離してしまうおそれがある。
【0088】
〔金属薄板(第1の電極)の厚み〕
コロナ放電時におけるベース電極を兼ね、かつ超音波厚みセンサにおける第1の電極となる金属薄板の厚みは、15μm〜100μmとすることが好ましい。この金属薄板は、前述のように超音波厚みセンサ製造時において焼結原料、層状焼結体の支持体として機能し、かつ超音波センサ製品としての使用時においても層状焼結体(圧電セラミック層)の支持体、さらにセンサ製品の一方の電極としても機能するものであるが、その厚みが15μm未満では、強度が不充分で、センサ製造工程中のハンドリングに支障をきたすおそれがあるとともに、厚みセンサとしての使用時において変形あるいは破損してしまうおそれがある。一方、その厚みが100μmを越えれば、金属薄板の可撓性が失われて、厚みセンサ全体としてもその可撓性が劣ることとなり、そのため使用時において厚み測定対象の配管の湾曲部分に貼着することが困難となるおそれがある。
【0089】
〔第2の電極〕
第2の電極は、超音波厚みセンサ製品における一つの電極として、既に述べたように、コロナ放電による分極処理を行った後、あるいはそれ以前に層状焼結体の表面に形成されるものである。
この第2の電極の厚みは、平均で10〜100μmの範囲内のものとすることが好ましい。第2の電極の厚みが100μmを越えれば、厚みセンサの可撓性を損なうおそれがあり、一方10μm未満に薄く第2の電極を形成した場合、層状焼結体の表面の凹凸によって局部的に第2の電極が不連続となってしまうおそれがある。
第2の電極の材質は、導電性材料であれば特に限定されないが、例えば銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、その他、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などのうちの1種または2種以上を適宜選択すれば良い。またその第2の電極を形成するための手段も特に限定されず、銀ペーストや金ペースト、白金ペーストなどの導電性ペーストを層状焼結体の表面に塗布して焼き付けたり、あるいはこれらの導電性金属を層状焼結体の表面に溶射したり、さらにはこれらの導電性金属からなる薄膜を層状焼結体の表面に接合する、などの手段を適用すれば良い。
【0090】
既に述べたように、コロナ放電用の電極として線状電極を用いていれば、広い範囲わたって同時に焼結体を分極させることができる。したがって1枚の金属薄板の板面における多数の個所に、層状焼結体を相互に間隔を置いて形成しておいた場合においても、その多数の層状焼結体について同時に分極処理を行うことができる。このように1枚の金属薄板の板面に多数の層状焼結体を形成しておいた場合、その多数の層状焼結体に同時に分極処理を施した後に、隣り合う各層状焼結体の間において金属薄板を分断すれば、多数の超音波厚みセンサを一括して製造することが可能となり、超音波厚みセンサの量産的規模での製造に有利となる。
その場合の分極処理実施状況の例を、
図9、
図10に示す。
【0091】
図9、
図10において、支持体として比較的大きな面積を有するステンレス鋼などの金属薄板19が用いられている。そしてその金属薄板19の板面上の多数の個所に、それぞれ層状焼結体17が間隔を置いて形成されている。図示の例では、5行×5列のマトリックス状に合計25個の層状焼結体17が形成されて、積層体(大面積積層体)20が構成されている。また各層状焼結体17の表面には、それぞれ既に述べたような第2の電極23が形成されている
このような大面積積層体20を、前記同様に電極台3上に載置し、コロナ放電時において各線状電極11A〜11Cにより形成される電界領域(放電域)21A、21B、21Cが、すべての層状焼結体17を同時にカバーするように各線状電極11A〜11Cの長さおよび間隔、線状電極11A〜11Cと電極台3との距離を適切に設定しておけば、多数の層状焼結体17を同時に分極させることができる。
なお
図9、
図10では、各層状焼結体17の表面に第2の電極23が予め形成されている場合についてコロナ放電による分極処理を行う例として示しているが、第2の電極が形成されていない層状焼結体に対してコロナ放電による分極処理を行い、その後に第2の電極を焼結体表面に形成してもよいことはもちろんである。
【0092】
さらに、金属薄板19の板面上の多数の個所に、それぞれ層状焼結体17が間隔を置いて形成されている場合、その多数の層状焼結体を有する積層体の一部の領域にコロナ放電のための高電圧を加えながら、適宜の移動手段によって積層体を線状電極に対し相対的に移動させることによって、順次1以上の層状焼結体に分極処理を施すことができる。
このような方式に用いる連続分極処理装置の構成の一例を
図11〜
図13に示し、併せてその場合の分極処理方法について次に説明する。
【0093】
図11〜
図13において、電極台3としては、所定方向に移動可能な可動電極台として、ステンレス鋼などの導電材料からなる無端環状の移送用導電ベルト35が配設されている。この無端環状の移送用導電ベルト35は、その上面が水平となるようにプーリー37A,37Bに巻きかけられて、モータなどの駆動装置39によって水平方向に連続的に移動するように構成されている。したがってこの駆動装置39が、電極台3(移送用導電ベルト35)を移動させるための移動手段に相当する。そして移送用導電ベルト35は、電気的に接地され、またその全体が図示しない昇降調整機構によって上下方向の位置が調整されるようになっている。
【0094】
移送用導電ベルト35の上面側の上方には、
図1〜
図3に示したものと同様な線状電極11(11A〜11C)が配設されている。すなわち、3本の線状電極11A〜11Cが、電極支持部材13の支持部13A、13B間に水平かつ相互に平行に張設されている。これらの線状電極11A〜11Cは、分極電圧印用の電源15に電気的に接続されている
【0095】
このような連続分極処理装置を用いて、金属薄板19上に予め形成されている多数の層状焼結体17に分極処理を施すにあたっては、多数の層状焼結体17を有する積層体(長板状積層体)20を、金属薄板19が移送用導電ベルト35の上面に接するように、移送用導電ベルト35上に載置する。なお図示の例の場合、長板状の金属薄板19の幅方向に間隔を置いて5箇所に層状焼結体17が形成され、かつその長板状金属薄板19の長さ方向には、同様に間隔を置いて多数の層状焼結体17が形成されているものとする。また各層状焼結体17の表面には、それぞれ既に述べたような第2の電極23が形成されているものとする。そして線状電極11A〜11Cは、その長さ方向が長板状金属薄板19の幅方向と平行となるように(したがって金属薄板19上の5個の層状焼結体が並ぶ方向と平行となるように)設けられている。さらに可動電極台3としての移送用導電ベルト35は、線状電極11A〜11Cの長さ方向に対して直交する方向に沿って走行するように構成されている。
【0096】
この状態で移送用導電ベルト35を駆動して、その移送用導電ベルト35上に載置されている長板状積層体20を、その長さ方向に沿って水平方向に連続的に移動させながら、分極電圧印用の電源15を駆動させて、
図1〜
図3に示す第1の実施形態と同様に、線状電極11A〜11Cと金属薄板(ベース電極)19との間に高電圧を印加してその間でコロナ放電を発生させる。
これによって、長板状積層体20の多数の層状焼結体17が、順次コロナ放電によって形成される電界領域(放電域)21A、21B、21C内に送り込まれ(
図12参照)、その電界領域内に位置するいくつかの焼結体が同時に分極されながら、長板状積層体20の連続移動に伴って、順次多数の焼結体が分極されていくことになる。
【0097】
なお以上の説明では、可動電極台3としての移送用導電ベルト35を連続的に駆動させて、長板状金属薄板19を連続的に移動させながら、コロナ放電による分極を行なうものとしているが、場合によっては移送用導電ベルト35を間歇的に駆動させて、長板状金属薄板19を間歇的に移動させながら、コロナ放電による分極を行なってもよい。
【0098】
さらに、
図11〜
図13に示す例では、電極台3を可動電極台(移送用導電ベルト35)として、その電極台3上に載置されている積層体20を、線状電極11A〜11Cに対して連続的もしくは間歇的に移動させることとしているが、場合によっては、電極台3は移動しないようにしておく一方、線状電極11A〜11Cを、その長さ方向に対して直交する面内で電極台3の表面と平行な方向に連続的もしくは間歇的に移動するように構成しても良い。例えば、電極支持部材13を上記方向に移動可能に保持しておき、その電極支持部材を、図示しない移動手段によって移動させるように構成しても良い。
【0099】
また一方、
図11〜
図13では、各層状焼結体17の表面に第2の電極23が予め形成されている場合についてコロナ放電による分極処理を行う例として示しているが、第2の電極が形成されていない層状焼結体に対してコロナ放電による分極処理を行い、その後に第2の電極を層状焼結体の表面に形成してもよいことはもちろんである。
【0100】
なお本発明の分極処理方法において使用されるコロナ放電用電極としては、前述のように線状電極を用いることが望ましいが、場合によっては針状電極、すなわち金属薄板(ベース電極)の板面に向かって尖る針状の電極を用いることも許容される。その場合の例を、本発明の第3の実施形態として
図14に模式的に示す。
【0101】
図14において、コロナ放電用電極として、タングステン(W)などの高融点材料からなる線材の先端を尖らせてなる3本の針状電極33が、電極支持部材13から下方に突出するように、すなわち電極台3に向かって突出するように配設されている。なお各針状電極33の先端から電極台3までの距離は互いに等しい距離とされている。このように針状電極を用いた場合も、予め金属薄板19の板面に層状に焼結体17を形成しておき、その焼結体17を金属薄板ごと電極台3の上面に載置して、分極電圧印用の電源15を駆動させ、針状電極33と平板状ベース電極を兼ねる金属薄板19との間に高電圧を印加すれば、針状電極33から平板状ベース電極を兼ねる金属薄板19に向けてコロナ放電が生じる。そしてそのコロナ放電による電界に層状焼結体17が曝されることによって、焼結体17が分極される。
【0102】
ここで、針状電極を用いた場合は、線状電極を用いた場合よりもコロナ放電による電界領域が狭くなるが、複数本(図示の例では3本)の針状電極を並べておくことによって、ある程度広い面積にわたって同時に分極処理を施すことが可能となる。したがって比較的小面積の層状焼結体を分極処理する場合には、針状電極を用いることができる。
なお
図14の例では、分極処理に先立って層状焼結体の上面に第2の電極を形成しておき、その第2の電極が形成された状態の焼結体に分極処理を施す状況を示しているが、
図1〜
図3に示した第1の実施例と同様に、未だ第2の電極を形成していない状態で分極処理を施し、その後に第2の電極を層状焼結体の表面に形成しても良いことはもちろんである。
【0103】
以上のような各実施形態の分極処理の対象となる層状焼結体を製造する方法は、基本的には限定されないが、金属薄板上に薄質な状態で低密度(70〜80%)の層状焼結体を形成するための方法としては、次のP1〜P3(P4)の各工程からなるプロセスを適用することが望ましい。
すなわち、
P1:酸化物系圧電材料、例えばPZTなどの粉末を含む焼結原料として、スラリーもしくはペースト(ここではこれらを総称して粘性液状物と称する)を準備する(焼結原料調製工程)、
P2:前記金属薄板(分極処理時のベース電極兼製品センサの第1の電極)上に前記粘性液状物を塗布することによって、金属薄板上に焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程、
P3:前記焼結原料層を加熱することにより焼結原料を焼成し、これによって酸化物系圧電材料の層状焼結体を形成する焼成工程、
以上のP1〜P3の各工程からなるプロセスによって、金属薄板上に層状焼結体を形成した積層体を得ることができる。
また、分極処理前の段階で、予め層状焼結体の表面に第2の電極を形成してく場合は、上記の焼成工程P3の後に、第2電極形成工程P4を実施する。
以下にこれらの各工程P1〜P4について、具体的に説明する。
【0104】
〔焼結原料調製工程P1〕
この工程では、強誘電体からなる酸化物系圧電材料、例えばPZTなどの粉末を含むペーストあるいはスラリーなどの粘性液状物を調製(準備)する。
ここで、酸化物系圧電材料用の粉末としては、例えばPZT粉末などが、セラミック粉末製造メーカなどから市販されており、したがってこの種の市販のセラミック圧電素子用粉末を購入し、それを用いてペーストあるいはスラリーなどの粘性液状物を調製すれば良い。但し、原料粉末の調製から出発してもよいことはもちろんであり、そこで、原料粉末調製のための工程を、次に簡単に説明する。
【0105】
すなわち、PZTなどの原料となる酸化物などの粉末、例えばPbO、ZrO
2、TiO
2の各粉末を、目標とするPZT組成となるように配合するとともに、エタノールなどの溶媒やポリエチレンイミンなどの分散媒を適宜加えてボールミルなどにより混錬し、得られた混錬物(スラリー)を乾燥して混合粉末とする。さらにこの混合粉末を、粉体の状態で仮焼成する。この仮焼成は、通常は、大気雰囲気中で700〜900℃程度の温度において1〜20時間程度加熱すればよい。このような仮焼成によって、混合粉末の各成分(例えばPbO、ZrO
2、TiO
2)が相互に固溶して、ペロブスカイト型結晶構造を有するPZTが得られる。得られたPZT(但し仮焼成後の状態では塊状)を、ボールミルなどにより粉砕すれば、平均粒径1〜10μm程度のPZTなどの酸化物系圧電材料粉末が得られる。
【0106】
既に説明したように、対象となる酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の種類、組成は、基本的には限定されず、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)のほか、例えばLiNbO
3(ニオブ酸リチウム)、Bi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)などを使用することができる
。
【0107】
上述のような焼結原料として使用される粘性液状物(スラリーもしくはペースト)、すなわちPZTで代表される酸化物系圧電材料を含む粘性液状物としては、次のA〜Eのような態様のものがある。
A;平均粒径が1〜10μmの範囲内の酸化物系圧電材料粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルとを混合したもの。
B:平均粒径1〜10μmの酸化物系圧電材料粉末と、酸化物圧電材料の金属成分のアルコキシドの分解による平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末とを分散媒に分散させたスラリーもしくはペースト。
C;酸化物系圧電材料からなる平均粒径が0.15〜0.25μmの超微粉末を分散媒に分散させたスラリーもしくはペースト。
D;酸化物系圧電材料粉末および低融点ガラス粉末(代表的にはビスマス系ガラス粉末)を分散媒に分散させたスラリーもしくはペースト。
E;酸化物系圧電材料粉末を珪酸ソーダ溶液に分散させたペースト。
本発明の方法では、焼結原料として上記A〜Eのいずれの粘性液状物を調製しても良い。これらのA〜Eの粘性液状物のそれぞれの調製方法や望ましい条件については、後に改めて詳細に説明する。
【0108】
〔焼結原料層形成工程P2〕
この焼結原料層形成工程P2では、前述のようなステンレス鋼などからなる金属薄板の表面に、焼結原料としての粘性液状物(スラリーもしくはペースト)を塗布し、乾燥させて、焼結原料層を金属薄板上に形成する。
液状液状物を金属薄板上に塗布するための塗布手段は特に限定されないが、スプレーによって噴射塗布したり、あるいはロールコーターやスキージ、あるいは刷毛を用いて塗布するなど、一般の塗布・印刷において適用されている手段を任意に適用することができる。
【0109】
なお、所定の平面形状を有する焼結原料層を形成するためには、厚み方向に貫通する開口部が形成された薄板状もしくはシート状のマスク部材を予め用意しておき、そのマスク部材を金属薄板の上面に重ね合わせ、前述のような粘性液状物(ペーストもしくはスラリー)をマスク部材の上からスプレーなどによって塗布して、開口部内に粘性液状物を充填し、自然乾燥あるいは加熱乾燥によって粘性液状物を乾燥させてから、マスク部材を除去すればよい。このようにすれば、均一な厚みで所定の平面形状を有する焼結原料層を容易に形成することができる。特に
図9、
図10に示す例、あるいは
図11〜
図13に示す例に使用されている積層体20、すなわち支持体としての金属薄板19の板面に多数の層状焼結体17が間隔を置いて形成されている積層体20を得る場合には、前記マスク部材に、その厚み方向に貫通する多数の開口部を、間隔を置いて形成しておき、そのマスク部材を金属薄板に重ね合わせた後、マスク部材の上面側から多数の開口部内に粘性液状物(焼結原料)を一斉に充填すれば、金属薄板の板面に多数の焼結原料層が配列形成された状態とすることができ、これを焼成すれば、金属薄板上に多数の層状焼結体が分散形成された積層体を容易に得ることが可能となる。
【0110】
ここで、粘性液状物を塗布して乾燥させた状態では、乾燥前の状態から収縮して、乾燥前の1/2〜1/4程度の厚みとなるが、乾燥後の状態での厚み(したがって後述する焼成工程開始直前の段階での厚み)は、70〜200μmの範囲内とすることが望ましい。焼成工程開始直前の段階での厚みが70μm未満では、焼成後の層状焼結体の厚みが薄すぎて、センサを屈曲させた時に第1の電極としての金属薄板から剥離するおそれがある。一方、焼成工程開始直前の段階での厚みが200μmを越えれば、焼成後の層状焼結体の厚みも厚くなりすぎ、その結果、充分な可撓性を層状焼結体に与えることが困難となるおそれがある。
そしてこのように乾燥後の厚みを確保するためには、粘性液状物の塗布・乾燥を複数回繰り返しても良い。
なお、金属薄板上に粘性液状物を塗布した後の乾燥は、次の焼成工程における焼結のための加熱の初期段階で行なっても良い。
【0111】
〔焼成工程P3〕
続いて、前述のようにして分極処理時のベース電極兼製品センサの第1の電極となるべき金属薄板の表面に焼結原料層を形成した後、その焼結原料層を加熱して焼成し、平均厚みが30〜150μmで、密度が70〜80%の範囲内の層状焼結体を形成する。
【0112】
このような70〜80%の範囲内の密度の層状焼結体を形成するためには、粘性液状物として前記A〜Cのものを用いた場合は、焼成温度を600〜800℃の範囲内とし、また前記D、Eのものを用いた場合は、焼成温度を450〜550℃の範囲内とすることが好ましい。このように従来一般の酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の焼成温度よりも低い焼成温度でも、本実施形態の場合は超音波厚みセンサとして必要な圧電特性を示す焼結体密度を充分に得ることができる。
【0113】
ここで、粘性液状物として前記A〜Cのものを用いた場合に焼成温度が800℃を超える高温となれば、また粘性液状物として前記D、Eのものを用いた場合に焼成温度が450℃を超える高温となれば、焼成時に粉体粒子同士の焼結反応が急速に進行して、密度が80%以下の層状焼結体を得ることが困難となる。一方、粘性液状物として前記A〜Cのものを用いた場合に焼成温度が600℃未満の低温となれば、また粘性液状物として前記D、Eのものを用いた場合に焼成温度が450℃未満の低温となれば、粉体粒子同士の焼結反応が充分に進行せず、層状焼結体の密度を70%以上に高めることが困難となる。また焼成時の雰囲気は大気(空気)とすることが好ましい。さらに焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常は1〜10時間とすることが好ましい。
このような焼成工程によって、支持体およびベース電極、第1の電極を兼ねた金属薄板の表面に、所定の厚み、所定の密度の層状焼結体が形成された積層体が得られる。
【0114】
〔第2電極形成工程P4〕
この第2電極形成工程は、分極処理対象の積層体を、層状焼結体の上面に予め第2の電極が形成されているものとする場合に、焼成工程の後、分極処理の前に施す工程である。すなわちこの第2電極形成工程においては、超音波厚みセンサにおいて第1の電極(金属薄板)の対極となる第2の電極を、層状焼結体の上面(第1の電極となる金属薄板に対し反対側の面)に、望ましくは平均厚み10〜100μmで形成する。
【0115】
第2の電極の材料としては、既に述べたように導電性材料であれば特に限定されず、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、その他、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などのうちの1種または2種以上を適宜選択すれば良い。またその第2の電極を形成するための手段も特に限定されず、銀ペーストや金ペースト、白金ペーストなどの導電性ペーストを層状焼結体の表面に塗布して焼き付けたり、あるいはこれらの導電性金属を層状焼結体の表面に溶射したり、さらにはこれらの導電性金属からなる薄膜を層状焼結体の表面に接合する、などの手段を適用すれば良い。
これらの手法のうち、銀ペーストなどの導電性ペーストを塗布、焼き付ける方法によって第2の電極を形成する場合、厚み方向に貫通する開口部が形成されてなる薄板状もしくはシート状のマスク部材を予め用意しておき、そのマスク部材を、開口部が層状焼結体の表面の少なくとも一部において開口するように、層状焼結体の表面側に重ねて配置し、導電性ペーストをマスク部材の表面側から塗布して、焼き付けることが望ましい。
【0116】
このようにして、支持体およびベース電極、第1の電極を兼ねた金属薄板の一方の板面に酸化物系圧電材料からなる層状焼結体が形成され、さらに層状焼結体の表面に第2の電極が形成された積層体を得ることができる。
【0117】
なお、分極処理に供する段階の積層体が、第2の電極を形成していないものとする場合、最終的に超音波厚みセンサをするためには、上記の第2電極形成工程を分極処理の後に実施すれば良い。
【0118】
次に、前述の層状焼結体の製造方法における焼結原料調製工程で調製するべき酸化物系圧電材料を含む粘性液状物A〜Eのそれぞれについて、その調製方法や望ましい条件を説明する。
【0119】
〔A;平均粒径が1〜10μmの範囲内の酸化物系圧電材料粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルとを混合した粘性液状物〕
【0120】
平均粒径が1〜10μmの範囲内のPZTなどの酸化物系圧電材料粉末は、既に述べたように、PZT粉末塊などの酸化物系圧電材料粉末塊を、ボールミルなどにより粉砕することによって得ることができる。
ここで、酸化物系圧電材料粉末の粒径は平均粒径1〜10μmとしているが、これは、従来の一般的な手法、すなわち酸化物系圧電材料を構成する金属成分の酸化物の粉末を混合して焼成し、これを機械的に粉砕して得られる原料粉末は、通常平均粒径1〜10μm程度であるからである。ここで、原料粉末の平均粒径を1μm未満とすることは、粉砕効率の観点から困難であり、一方原料粉末の平均粒径を10μm超とすることは、燒結性の観点から問題となる。
【0121】
一方、上記の酸化物系圧電材料粉末の準備と並び、PZTなどの酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルを準備する。ここで準備するアルコキシドゾルは、上記の酸化物系圧電材料の原料となる酸化物の金属成分のアルコキシド、すなわち金属成分をM、アルキル基をRとし、一般式 M(OR)
Xで表される金属アルコキシドの混合ゾルである。例えばPZTの場合は、金属成分Mは、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、およびチタン(Ti)が主成分であるから、鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、およびチタンアルコキシドの各ゾルを用意する。一方、アルキル基Rは特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t―ブチル基、s−ブチル基などを適用することができる。より具体的には、PZTの場合、鉛アルコキシドとしては、鉛ジイソプロキシド、鉛ジブトキシドなど、またジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシドなど、チタンアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシドなどを用いることが好ましい。
【0122】
またこの場合、各アルコキシドゾルの配合は、その金属成分の割合が、目標とする酸化物系圧電材料における金属成分の割合と同等となるように定めることが望ましい。すなわち、一般式Pb(Zr
xTi
1−x)O
3で表されるPZTの場合、各アルコキシドの金属成分のモル比が、Pb:Zr:Ti=1:x:1−xの割合となるように配合することが望ましい。
但し、Pb(Zr
xTi
1−x)O
3〔但し0.5≦x≦0.7〕のPZT組成を基本として、それに微量添加元素として、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、Gdなどの1種又は2種以上を添加したPZT系圧電セラミック材料を対象とする場合、アルコキシドゾルとしては、必ずしもこれらの微量元素金属のアルコシシドまで含んでいなくても良く、主成分であるPb、Zr、Tiのアルコキシドを含んでいればで充分である。もちろん場合によっては、これらの微量添加元素の金属アルコキシドを含むゾルであってもよい。
【0123】
なお、酸化物系圧電材料の種類(複合酸化物の構成)によっては、その複合酸化物の複数の構成金属のうち、ある金属についてはアルコキシドを用い、他の金属についてはアルコキシド以外の有機金属塩(たとえば酢酸金属塩)を用いて、これらの混合物をゾル化して使用することもあり(例えばBi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)やLiNbO
3(ニオブ酸リチウム)の場合など)、本明細書ではこのような場合についても、その混合ゾルをアルコキシドゾルに含めるものとする。
【0124】
以上のようなアルコキシドゾルを得るための方法は特に限定されるものではなく、常法に従えば良く、例えば各金属アルコキシドを溶剤に溶解するなどの方法によれば良い。
【0125】
上述のような酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な粉末(平均粒径1〜10μm)と、同じ酸化物系圧電材料の金属成分を有するアルコキシドゾルとを、エタノールやブタノール、酢酸エチルなどの適宜の溶剤を用いて混合、混錬し、乾燥させれば、焼結原料としての前記Aの粘性液状物(ペースト)が得られる。
なお、上記の酸化物系圧電材料粉末とアルコキシドゾルの混合比は特に限定しないが、通常は、同じ金属成分で比較して、原料粉末中の金属成分に対するアルコキシドゾル中の金属成分のモル比が、0.2〜1.0の範囲内となるように混合することが望ましい。上記のモル比が0.2未満では、アルコキシドゾルが少なすぎて、焼成工程においてゾルの分解生成物が焼結助剤として充分に機能せず、そのため低温での焼結が困難となり、一方上記のモル比が1.0を越えれば、アルコキシドゾルが多すぎて、金属薄板上で焼成したときに、比較的粗大な原料粉末の粒子が充分に結合されず、層状焼結体が粉っぽくなり、飛散または剥落してしまうおそれが大きくなる。
【0126】
このような比較的粗大な酸化物系圧電材料の粉末(平均粒径1〜10μm)と、同じ酸化物系圧電材料の金属成分を有するアルコキシドゾルとを混合した粘性液状物A(ペースト)を、焼成工程において金属薄板上で加熱して焼成する過程では、粗大な酸化物系圧電材料粉末の粒子(平均粒径1〜10μm)の間に存在しているアルコキシドが分解し、超微粉末状の分解生成物が生成され、かつその分解生成物が、比較的粗大な酸化物系圧電材料粉末の粒子を焼結結合させる役割、すなわち焼結助剤として機能する。しかもその分解生成物は、それ自体でPZTなどの目標とする酸化物系セラミック圧電材料組成を有するため、圧電特性を向上させる機能も果たす。したがってこのように比較的粗大な原料粉末とともにアルコキシドゾルを混合して焼成することにより、比較的低温でも焼結が進行し、かつ圧電特性も向上する。
なおこの場合の焼成工程では、既に述べたように加熱温度を600〜800℃の範囲内とすることが好ましい。
【0127】
〔B:平均粒径1〜10μmの酸化物系圧電材料粉末と、酸化物圧電材料の金属成分のアルコキシドの分解による平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末とを分散媒に分散させた粘性液状物(スラリーもしくはペースト)〕
【0128】
平均粒径が1〜10μmの範囲内のPZTなどの酸化物系圧電材料粉末は、既に述べたように、PZT粉末塊などの酸化物系圧電材料粉末塊を、ボールミルなどにより粉砕することによって得ることができる。
【0129】
ここで、酸化物系圧電材料粉末の粒径は平均粒径1〜10μmとしているが、これは、従来の一般的な手法、すなわち酸化物系圧電材料を構成する金属成分の酸化物の粉末を混合して焼成し、これを機械的に粉砕して得られる原料粉末は、通常平均粒径1〜10μm程度であるからである。ここで、原料粉末の平均粒径を1μm未満とすることは、粉砕効率の観点から困難であり、一方原料粉末の平均粒径を10μm超とすることは、燒結性の観点から問題となる。
【0130】
一方、上記の酸化物系圧電材料粉末の準備と並び、PZTなどの酸化物系圧電材料の微粉末(平均粒径0.1〜1.0μm程度)をアルコキシド分解法によって生成しておく。
PZTなどの酸化物系圧電材料の微粉末をアルコキシド分解法によって生成するための具体的方法は、従来知られているアルコキシド分解法と同様であればよく、特に限定されるものではないが、通常は、PZTなどの酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドの混合ゾルを、例えば水を加えて加水分解すれば良い。なおここで言うアルコキシドゾルは、前述のAの粘性液状物を調製する際に用いたアルコキシドゾルと同様なものであれば良く、そこでその詳細は省略する。
【0131】
以上のようなアルコキシドゾルを、前述のように加水分解すれば、酸化物系圧電材料からなる平均粒径0.1〜1.0μmの微細粉末(アルコキシド分解微粉末)が得られる。ここで、アルコキシド分解微粉末の平均粒径を0.1μm未満とすることは、一般的なアルコキシド分解法では困難であり、一方、1.0μmを越える大径粒子では、焼成工程において後述する焼結助剤の機能が期待できなくなる。
【0132】
前述のような酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な原料粉末(平均粒径1〜10μm)と、同じ酸化物系圧電材料からなるアルコキシド分解による微細な原料粉末(平均粒径0.1〜1.0μm)とを、エタノールや酢酸エチルなどの適宜の溶剤を用いて混合、混錬し、乾燥させれば、焼結原料としての粘性液状物Bが得られる。
【0133】
なお、上記の比較的粗大な酸化物系圧電材料粉末とアルコキシド分解微粉末との混合比は特に限定しないが、通常は、同じ金属成分で比較して、酸化物系圧電材料粉末中の金属成分に対するアルコキシド分解微粉末中の金属成分のモル比が、0.2〜1.0の範囲内となるように混合することが望ましい。上記のモル比が0.2未満では、アルコキシド分解微粉末が少なすぎて、焼成工程においてその微粉末が焼結助剤として充分に機能せず、低温での焼結が困難となり、一方上記のモル比が1.0を越えれば、アルコキシド分解微粉末が多すぎて、金属薄板上で焼成したときに、比較的粗大な原料粉末の粒子が充分に結合されず、層状焼結体が粉っぽくなり、飛散または剥落してしまうおそれが強くなる。
【0134】
このような粘性液状物Bを用いた場合、焼成工程では、比較的粗大な酸化物系圧電材料粉末の粒子(平均粒径1〜10μm)の間に存在しているアルコキシド分解微粉末(平均粒径0.1〜1.0μm)が、比較的粗大な酸化物系圧電材料粉末の粒子を焼結結合させる役割、すなわち焼結助剤として機能する。しかもその微粉末自体も、PZTなどの目標とする酸化物系セラミック圧電材料組成であるため、圧電特性を向上させる機能も果たす。したがってこのように比較的粗大な酸化物系圧電材料粉末とともにアルコキシド分解微粉末を混合した粘性液状物を焼成することにより、比較的低温でも焼結が進行し、かつ圧電特性も向上する。なおこの場合、焼成温度は、前述の粘性液状物Aと同様に、600〜800℃の範囲内とすることが望ましい。
【0135】
〔C:酸化物系圧電材料からなる平均粒径が0.15〜0.25μmの超微粉末を分散媒に分散させた粘性液状物(スラリーもしくはペースト)〕
【0136】
上述のような平均粒径が0.15〜0.25μmという超微粉末の酸化物系圧電材料粉末を得るための方法は特に限定されるものではないが、既に述べたようにボールミルなどによる粉砕によって得られた比較的粗大(平均粒径0.5〜10μm程度)なPZTなどの粉末を、さらに湿式ビーズミルを用いて粉砕することによって得ることができる。
湿式ビーズミルは、粉砕対象の原料粉末と粉砕媒体のビーズを、水などの液体からなる分散媒とともに粉砕室に装入し、アジテータ(撹拌用ロータ)を数千rpmで高速回転させることによりビーズを撹拌して運動エネルギを与え、その運動するビーズにより原料粉末に対する摩擦、せん断、衝突などにより、粉末を超微粒子化するものである。ここで、粉砕媒体のビーズとしては、直径0.1mm〜1mm程度、一般には0.5mm程度の硬質物質からなる球体粒子が用いられる。またその硬質物質としては、セラミックス、ガラス、金属などがあるが、通常はジルコニア、ジルコニア強化型アルミナなどが好ましい。
なお湿式ビーズミルにおける分散媒としては、水のほか、エタノールなどのアルコール、その他ヘキサン等を用いることができる。
【0137】
ここで、超微粉末の平均粒径が0.25μmを越えれば、後の焼成工程において、600〜800℃の比較的低温の焼成温度では、所定の密度(例えば70〜80%)まで緻密化することが困難となり、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性が得られなくなるおそれがある。一方、平均粒径が0.15μm未満となるまで超微粉化することは、生産性を阻害してコストアップを招くばかりでなく、凝集の原因となる問題もある。
このようにして得られた超微粉末は、分散媒に分散したスラリー状となっており、分散媒の種類によっては、そのスラリーをそのまま金属薄板上に塗布する粘性液状物Cとして用いても良いが、通常は、一旦乾燥させて乾燥超微粉末とした後、改めてペースト化することが好ましい。
【0138】
このペースト化のための工程では、前述のようにして得られた平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末を分散媒とともに混錬して、ペースト塗布に適した粘度を有する超微粉末ペーストとする。
具体的には、微粉末用の公知の分散・混錬機を使用して分散媒とともに混錬すれば良いが、例えば3本ロールミル、すなわち3本のロールの回転差を利用した分散・混錬機を用いることが好ましい。なおこの際に用いる分散媒の種類は特に限定されず、エタノール、あるいはブチルカルビトール、PVBエタノールなどを用いることができる。またこのペースト化工程で生成するペーストは、その粘度が1000〜10000mPa・sであることが好ましい。ペーストの粘度が1000mPa・s未満では、その塗布時において、ペーストを金属薄板上に均一な厚みで形成することが困難となり、一方10000mPa・sを越えれば、粘度が高すぎてレベリングなどの平滑化などにおいて問題が生じるおそれがある。
【0139】
上述のように酸化物系圧電材料粉末からなる平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末を分散媒とともに混錬したペースト(粘性液状物C)を焼結原料として金属薄板上に塗布して乾燥させた後、加熱して焼成する工程では、酸化物系圧電材料粉末の粒子が著しく微細であるため、低い600〜800℃の焼成温度でも粉末粒子間が結合されて、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性を示す焼結体密度(70〜80%)を充分に得ることができる。
【0140】
〔D:酸化物系圧電材料粉末および低融点ガラス粉末(代表的にはビスマス系ガラス粉末)を分散媒に分散させた粘性液状物(スラリーもしくはペースト)〕
【0141】
この場合も、前記A、Bの粘性液状物を調製する場合と同様に、PZTなどの酸化物系圧電材料からなる平均粒径0.5〜10μm程度の粉末を準備しておく。その具体的な方法は、既に述べたと同様である。
【0142】
一方、ビスマス(Bi)系ガラスなどの低融点ガラスの粉末を準備し、圧電材料粉末(PZTなどの圧電セラミック用粉末)を低融点ガラス粉末と混合するとともに、適宜の分散媒に分散させて、焼結原料の粘性液状物Dとしてのペーストを調製する。
ここで、低融点ガラスとしては、軟化点(軟化開始温度)が450℃より低いガラスを選択すればよく、上記のビスマス系ガラスのほか、リン酸系ガラス、ホウリン酸系ガラス、バナジウムホウ酸系ガラス、アルカリ珪酸系ガラスなど、さらにはPbO−SiO
2―B
2O
3系などの鉛系ガラスも使用可能であるが、ビスマス系ガラスが最も望ましい。
【0143】
ここで、ビスマスの酸化物であるBi
2O
3は、単独ではガラス化しないが、他の酸化物(ガラス形成酸化物)、例えばSiO
2、B
2O
3、P
2O
5、Li
2Oなどのうちから選ばれた1種または2種以上と組み合わせることによってガラス化して、低融点のガラスを形成し得ることが知られている。具体的なビスマス系ガラスとしては、Bi
2O
3―SiO
2系ガラス、Bi
2O
3―Li
2O系ガラス、Bi
2O
3―B
2O
3系ガラスなどがある。
上記のBi
2O
3―SiO
2系ガラスは、
xBi
2O
3・(100−x)SiO
2
但し、x=35〜65mol%、
と表せ、またBi
2O
3―Li
2O系ガラスは、
xLi
2O・(100−x)Bi
2O
3
但し、x=20〜40mol%または70〜80mol%、
と表せ、さらにBi
2O
3―B
2O
3系ガラスは、
xBi
2O
3・(100−x)B
2O
3
但し、x=30〜80mol%、
と表せる。これらのビスマス系ガラスは、いずれも軟化点が450℃よりも低く、本発明においてPZTなどの酸化物系圧電材料粉末と混合する低融点ガラスとして好適に使用することができる。
なお、いずれのビスマス系ガラスにおいても、必要に応じ、さらにその他の酸化物として、PbO、ZnO、SrO、BaO、CuO、Al
2O
3、Fe
2O
3、MgO、CeOのうちの1種又は2種以上を含有していても良い。
【0144】
またここで使用するビスマス系ガラスなどの低融点ガラス粉末の粒径は、平均で1.0〜20.0μmの範囲内が好ましい。低融点ガラス粉末の平均粒径が1μm未満では、微粉末とするためのコストの上昇を招き、一方20.0μmを越えれば、最終的に得られる層状焼結体中においてPZTなどの圧電材料粒子の間に介在するガラス相が大きすぎて、分極処理後の圧電特性を損なうおそれがある。
【0145】
また、PZTなどの酸化物系圧電材料粉末とビスマス系ガラスなどの低融点ガラス粉末との配合割合は、圧電材料粉末と低融点ガラス粉末の合計を100重量部とすれば、低融点ガラス粉末が15〜25重量部となるように配合することが望ましい。低融点ガラス粉末が15重量部未満では、後の焼成工程において低融点ガラス粉末の溶融物もしくは軟化物によって圧電材料粉末の粒子を物理的に結合する効果が充分に得られず、そのため層状焼結体が脆くなって金属薄板から剥離してしまうおそれがある。一方、低融点ガラス粉末が25重量部を越えれば、最終的に得られる層状焼結体中においてPZTなどの圧電材料粒子の間に介在するガラス相の量が多すぎて、分極処理後の圧電特性を損なうおそれがある。
【0146】
さらに圧電材料粉末と低融点ガラス粉末を分散させる分散媒は、特に限定されるものではなく、ブチルカルビトール、エタノール、酢酸エチルなど、適宜の溶剤や水を用いればよい。また圧電材料粉末と低融点ガラス粉末に対する分散媒の割合も特に限定されるものではないが、第1の実施形態について説明したと同様に、分散、混練して得られるペーストの粘度が1000〜20000mPa・sとなるように分散媒の割合を定めることが望ましい。
【0147】
このようにPZTなどの圧電材料粉末をビスマス系ガラスなどの低融点ガラス粉末と混合して分散媒に分散、混合してなるペーストは、焼結原料の粘性液状物Dとして、金属薄板上に塗布し、乾燥後、焼成工程に供される。
この焼成工程では、加熱温度を450〜550℃の範囲内とすることが好ましい。この場合、焼結原料中の酸化物系圧電材料粉末の粒子間にビスマス系ガラスなどの低融点ガラスの粉末粒子が介在しており、この低融点ガラスの粉末粒子が、450〜550℃の温度域での加熱時において溶融もしくは軟化を開始し、それが酸化物系圧電材料粉末粒子間のバインダとして機能して、酸化物系圧電材料粉末粒子の相互間を物理的に結合させることができる。したがって、450〜550℃の温度域で焼成することによって、密度はさほど増大させることなく酸化物系圧電材料粉末粒子間がある程度強固に結合された層状焼結体を得ることができるのである。
【0148】
ここで、焼成温度が450℃未満では、低融点ガラス粉末を混合していても、焼成時における低融点ガラス粉末粒子の溶融もしくは軟化が不充分となることがあり、その場合には酸化物系圧電材料粉末粒子を充分に結合させることが困難となるおそれがある。一方、焼成温度が550℃を越えれば、焼成時に酸化物系圧電材料粉末粒子同士の直接的な焼結反応が進行して、密度が80%以下の層状焼結体を得ることが困難となる。なお焼成温度は、450〜550℃の範囲内でも、特に480〜530℃の範囲内が好ましい。
【0149】
〔E:酸化物系圧電材料粉末を珪酸ソーダ溶液に分散させた粘性液状物(ペースト)〕
【0150】
この場合、前記と同様にして準備された平均粒径0.5μm〜10μm程度のPZTなどの酸化物系圧電材料粉末を、珪酸ソーダ溶液に分散、混合させて、焼結原料としての粘性液状物(ペースト)を調製する。
【0151】
ここで、珪酸ソーダ(珪酸ナトリウム)は、一般式[Na
2O・nSiO
2]と表されるものであり、通常は常温で水和物の形態、すなわち、〔Na
2O・nSiO
2・xH
2O〕の状態となっている。ここで、Na
2Oに対するSiO
2のモル比nは、連続的に変化させることができ、n=1のNa
2O・SiO
2、すなわちNa
2SiO
3と表されるものはメタ珪酸ナトリウムと称され、常温では水和物の状態で固体(結晶)となっている。またモル比nが、1.5〜4の珪酸ナトリウムは、低濃度の水溶液は、高粘度のいわゆる水ガラスとなることが知られている。
ここで、PZTなどの酸化物系圧電材料粉末を分散させる珪酸ソーダ溶液に使用する珪酸ナトリウムは、モル比nが0.5〜1.5程度のもの、とりわけモル比nが1のメタ珪酸ナトリウムを使用することが望まれるが、それに限定されるものではない。
【0152】
また、PZTなどの酸化物系圧電材料粉末を珪酸ソーダ溶液に分散、混合させるに当たっては、圧電材料粉末100重量部に対して、珪酸ソーダ溶液中の珪酸ナトリウム(Na
2O・nSiO
2)分が20〜40重量部、好ましくは25〜35重量部となるように定めることが望ましい。ここで、珪酸ナトリウム分が20重量部未満では、低温(450〜550℃)での焼成時において酸化物系圧電材料粉末粒子を強固に結合することが困難となるおそれがあり、一方40重量部を越えれば、相対的に圧電材料粉末の割合が過少となって、焼成―分極処理後の圧電特性に悪影響を及ぼして、超音波膜厚センサとして必要な圧電特性が得られなくなるおそれがある。
【0153】
なお、PZTなどの圧電材料粉末を分散させる珪酸ソーダ溶液の濃度は、ペースト化の容易さや、金属薄板表面への付着させやすさ(塗布性、印刷性)の観点から適宜定めればよい。すなわち珪酸ソーダ溶液の濃度が低すぎれば、金属薄板表面にある程度の厚みでペースト層を形成することが困難となり、一方珪酸ソーダ溶液の濃度が高すぎれば、PZTなどの圧電材料粉末を均一に分散させることが困難となる。そこで通常は、珪酸ソーダ溶液の濃度は、5〜20wt%の範囲内とすることが望ましい。
またこのペーストは、その粘度が1000〜10000mPa・sであることが好ましい。ペーストの粘度が1000mPa・s未満では、ペーストをメタライズ層上に均一な厚みで形成することが困難となり、一方20000mPa・sを越えれば、粘度が高すぎてレベリングなどの平滑化などにおいて問題が生じるおそれがある。
【0154】
このようにPZTなどの酸化物系圧電材料粉末を珪酸ソーダ溶液に分散、混合してなるペーストは、焼結原料の粘性液状物Eとして金属薄板上に塗布して乾燥させた後、次の焼成工程に供される。
【0155】
ここで、上記のペースト(粘性液状物E)を金属薄板表面で乾燥させれば、珪酸ソーダ溶液の水分が消失するに伴い、珪酸ソーダ溶液中から珪酸ナトリウムの結晶がPZTなどの圧電材料粉末粒子の間に析出する。すなわち、隣り合う酸化物系圧電材料粉末粒子の相互間の空隙に珪酸ナトリウムの析出結晶からなる微粉末が介在した状態となる。なおこのとき、珪酸ナトリウムの析出形態は、使用した珪酸ナトリウムにおけるNa
2Oに対するSiO
2のモル比nによっても異なるが、nが1付近の場合(すなわちメタ珪酸ナトリウム組成付近の場合)、水和物(Na
2O・nSiO
2・xH
2O)の結晶となるのが通常である。
【0156】
また焼成工程では、加熱温度を450〜550℃の範囲内とすることが好ましい。このような450〜550℃の温度域は、従来の一般的なPZTなどの圧電材料粉末の焼成温度(1200℃程度)よりも格段に低いが、粘性液状物Eを用いた場合、珪酸ソーダ溶液に由来して、焼結原料中の圧電材料粉末の粒子間に珪酸ナトリウム水和物の結晶微粉末が析出しており、この珪酸ナトリウム水和物の結晶微粉末の一部が、450〜550℃の温度域での加熱時において溶融もしくは軟化を開始し、それが酸化物系圧電材料粉末粒子間のバインダとして機能して、酸化物系圧電材料粉末粒子の相互間を物理的に結合させることができる。したがって、450〜550℃の温度域で焼成することによって、密度はさほど増大させることなく(すなわち70〜80%という比較的低密度の状態で)、圧電材料粉末粒子間がある程度強固に結合された層状焼結体を得ることができる。
【0157】
ここで、焼成温度が450℃未満では、珪酸ソーダを用いていても、焼成時における珪酸ナトリウム水和物の結晶微粉末の溶融もしくは軟化が不充分となり、そのため酸化物系圧電材料粉末粒子を充分に結合させることが困難となるおそれがある。一方、焼成温度が550℃を越えれば、焼成時に酸化物系圧電材料粉末粒子同士の直接的な焼結反応が進行して、密度が80%以下の層状焼結体を得ることが困難となる。なお焼成温度は、450〜550℃の範囲内でも、特に480〜530℃の範囲内が好ましい。
【0158】
なお、以上の説明では、層状焼結体を支持するための薄板状の支持体(コロナ放電における平板上のベース電極、および超音波厚みセンサとしての第1の電極を兼ねるもの)として、ステンレス鋼などの金属薄板を用いることとしているが、基本的には、支持体は、ベース電極および第1の電極として機能させるべく、少なくとも表面に導電性が付与されているものであれば良い。したがって例えばジルコニア系セラミックスからなる薄い基板の板面に、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、その他、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)など、導電性を有しかつ耐高温酸化特性に優れた金属をメタライズした薄板状の支持体を使用することも許容される。すなわち、ジルコニア系セラミックスは、各種のセラミックスのうちでも、一般に靭性、延性が優れていて、薄質であれば、ある程度の可撓性を示すことができ、そのため本発明で対象としている超音波厚みセンサにおいて、金属薄板の代わりに使用することができる。特にジルコニア系セラミックスのうちでも、部分安定化ジルコニアは、靭性、延性に優れており、したがって超音波厚みセンサに使用することができる。部分安定化ジルコニアとしては、イットリウム(Y)で代表される希土類元素の酸化物(例えばイットリア:Y
2O
3)や酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)、あるいは酸化カルシウム(カルシア:CaO)などがある。これらのうちでも、イットリアを安定化剤として添加したイットリア部分安定化ジルコニア(3YSZ)を用いることが、特性(可撓性)およびコスト面から最も望ましい。
【0159】
但し、このようにジルコニア系セラミックスからなる基板の表面を導電性金属でメタライズしたものを支持体として用いる場合、そのメタライズ層を基板の上面だけに形成している場合は、これを
図1〜
図3に示す分極処理装置の電極台3の上面に載置しただけでは、メタライズ層はコロナ放電用の線状電極11A〜11Bの対極電位(通常は接地電位)とはならない。すなわちコロナ放電時のベース電極として機能しない。そこで、その場合は、メタライズ層を別の手段によって電気的に接地させる必要がある。例えば、メタライズ層の周縁付近に別の導電部材を接触させるなどの手段を講じる必要がある。なおその場合は、電極台3としては、特に導電性を持たないものであっても良い。
一方メタライズ層を。ジルコニア系セラミックスからなる基板の上面のみならず、下面にも形成しておき、かつ上面のメタライズ層と下面のメタライズ層とが電気的に導通するように、例えば基板の端面にもメタライズ層を形成しておけば、
図1〜
図3に示されるような分極処理装置の導電性を有する電極台の上面に載置するだけで、メタライズ層をベース電極として機能させることが可能である。
【0160】
以下に本発明の実施例および比較例を記す。
【実施例1】
【0161】
この実施例1は、酸化物系圧電材料としてPZTを用い、そのPZTからなる密度が約75%の層状焼結体を、厚み50μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み60μmで形成して積層体とし、その積層体の層状焼結体に、
図1〜
図3に示すような線状電極を用いた分極処理装置によってコロナ放電による分極処理を行った例である。但し、層状焼結体の表面に第2の電極は形成していない状態で分極処理を行なった。
ここで、層状焼結体は、その大きさ、形状(上面側から見た大きさ、形状)は、10mm×10mmの方形とした。また線状電極としては、外径が100μm、長さが150mmの3本のタングステン線材を用い、その3本の線状電極を、相互の間隔が30mmとなるように平行に配列しておいた。そして中央の線状電極の中心の下方に層状焼結体の中心が位置するように、層状焼結体を金属薄板ごと、SUS316からなる電極台の上面に載置し、線状電極と電極台との間に電圧を印加して、コロナ放電による分極処理を実施した。
【0162】
ここで、分極処理は、次のような種々異なる条件に変化させて実施した。
すなわち、電極台を昇降調整機構によって昇降させることによって、電極台の上面から線状電極までの距離Gを変化させることにより、ベース電極を兼ねる金属薄板表面と針状電極との間隔G
0を、5〜25mmに変化させた。また線状電極と電極台との間の印加電圧も5000〜9000Vに変化させた。さらに分極処理時間(電圧印加時間)は、1分または5分とした。
【0163】
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べた。その結果を表1に示す。なお表1において、「電圧」は、コロナ放電のための印加電圧(kV)、「距離」は、電極台表面と線状電極との間の距離Gを示す。ここで金属薄板の厚みは、上記の距離よりも格段に小さく、したがって上記の距離は、線状電極と金属薄板との間の間隔G
0とみなすことができる。
なおd33メータによる測定値(d33値)は、超音波圧電振動が生じない場合は0(ゼロ)であり、95%以上の高密度のPZT焼結体(従来の圧電素子用PZT焼結体)では300〜400の値となるが、数mmから十数mm程度の薄い測定対象物の厚み測定を行なう場合には、10〜30程度の値で充分である。
【0164】
【表1】
【0165】
表1において、d33値が0.1または0.2のケース(実験番号2〜4)は、実質的にコロナ放電が生じず、焼結体も実質的に分極されなかったものと解される。一方、d33値が20〜30のケース(実験番号1、5〜7)は、コロナ放電が生じ、焼結体も超音波厚みセンサとして必要な程度の分極特性を示したと解される。そして表1に示す結果から、印加電圧と距離を相互の関係の下に適切に調整することによって、コロナ放電を生起させ、かつそれにより焼結体を分極させて、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性が得られることが確認された。
【0166】
なおこの実施例1における層状焼結体は、焼結原料を前記粘性液状物Aとし、次のようにして作成したものである。
すなわち、PZT用の原料粉末として、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)の粉末を用意し、これらを、PbO:1モル、ZrO
2:0.5モル、TiO
2:0.5モルの割合で配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、アルミナるつぼに入れて、アルミナの蓋をし、850℃、10時間の熱処理(仮焼成)を行い、ペロブスカイト型結晶構造を有するPZT粉末塊を得た。そのPZT粉末塊を粉砕し、300ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2μmのPZT粉末とし、乾燥させた。
【0167】
一方、鉛アルコキシドとして鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムアルコキシドとしてジルコニウムテトラブトキシド、チタンアルコキシドとしてチタンテトライソプロポキシドを用意し、これらをPb:Zr:Ti=1:0.5:0.5のモル比となるように配合してキシレンに溶解させ、そのアルコキシドゾルに、前述の平均粒径2μmのPZT粉末を加えてボールミルにより混練して、アルコキシドゾル‐PZT混合分散液(スラリー状の粘性液状物A)を得た。
【0168】
次いでそのアルコキシドゾルーPZT混合分散液を、前記金属薄板の中央に、10mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。具体的な塗布方法としては、金属薄板の表面に、10mm角の開口部が形成されるように100μm厚のテープでマスキングし、ロールコーターで前記開口部にアルコキシドゾルーPZT混合分散液を100μm厚で塗布した。
塗布後、乾燥させてから、700℃で熱処理を行うことにより、PZTを焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において1時間保持したのち、炉令した。これにより、焼成されたPZTからなる厚み50μm、密度約75%の圧電材料層状焼結体が、金属薄板の上に焼き付けられた積層体を得た。
【0169】
なお、前述のようにして金属薄板上の層状焼結体に分極処理が施された積層体サンプル(表1の実験番号1、5〜7のもの)について、層状焼結体の表面に、7mm丸の大きさで第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付け、平均厚み20μmの第2の電極(銀電極)を形成して、超音波厚みセンサとした。そしてその可撓性を調べるため、曲率半径30mmで全体的に湾曲させる試験を行なったところ、層状焼結体に割れが生じたり、剥離したりすることがないこと、したがって良好な可撓性を有することが確認された。さらに、実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例2】
【0170】
この実施例2は、PZTからなる密度が約75%の層状焼結体を、焼結原料として実施例1と同様なアルコキシドゾルーPZT混合分散液(粘性液状物A)を用いて、厚み150μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み60μmで形成し、さらにその表面に超音波厚みセンサの第2の電極として平均厚み20μmの銀電極を形成して積層体とし、これについて、
図7、
図8に示すような線状電極を用いた分極処理装置によってコロナ放電による分極処理を行った例である。
こで、層状焼結体の大きさ、形状は実施例1と同様とし、第2の電極は、層状焼結体の表面に、7mm丸の大きさで銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付けて、平均厚み30μmで形成した。また線状電極としては、実施例1と同様に3本のタングステン線材を用い、線状電極の中心の下方に第2電極の中心(層状焼結体の中心に対応)が位置するように、層状焼結体を金属薄板ごと、SUS316からなる電極台の上面に載置し、線状電極と電極台との間に電圧を印加して、コロナ放電による分極処理を実施した。
ここで、分極処理は、実施例1における実験番号1、4〜7のそれぞれと同じ条件で行ない、分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、実施例1と同様に、d33値として15〜20の値が得られた。
なお、分極処理後の各サンプルを用いた超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例3】
【0171】
この実施例3は、PZTからなる密度が約73%の層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物B(酸化物原料混合加熱法により製造した比較的粗大なPZT粉末と、アルコキシド分解法によって製造されたPZT微粉末との混合物を分散媒に分散させたペースト)を用いて、厚み50μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み60μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に、分極処理を行った例である。
【0172】
すなわち、先ずPZT微粉末をアルコキシド分解法で調製した。具体的には、鉛アルコキシドとして鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムアルコキシドとしてジルコニウムテトラブトキシド、チタンアルコキシドとしてチタンテトライソプロポキシドを用意し、これらをPb:Zr:Ti=1:0.5:0.5の割合になるように配合して、50℃で水を加えて加水分解し、平均粒径が0.15μmのアルコキシド分解PZT微粉末を得た。
【0173】
また、比較的粗大なPZT粉末用の原料粉末として、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)の粉末を用意し、これらを、PbO:1モル、ZrO
2:0.5モル、TiO
2:0.5モルの割合で配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、アルミナるつぼに入れて、アルミナの蓋をし、850℃、10時間の熱処理(仮焼成)を行い、ペロブスカイト型結晶構造を有するPZT粉末塊を得た。そのPZT粉末塊を粉砕し、300ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2μmのPZT粉末とし、乾燥させた。
【0174】
前述のようにして得られた平均粒径0.15μmのアルコキシド分解PZT微粉末と、平均粒径2μmのPZT粉末とを、同じ金属成分で比較して、PZT粉末1モルに対しアルコキシド分解PZT微粉末0.3モルの割合で混合し、分散媒(溶剤)としてブチルカルビトールを加えて混錬し、粘性液状物Bとしてのペーストを得た。
【0175】
次いでそのペーストを、実施例1と同様な、SUS304からなる金属薄板の中央に、
10mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。塗布後、乾燥させてから、700℃で熱処理を行うことにより、PZTを焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において30分保持したのち、炉令した。これにより、焼成されたPZTからなる厚み60μm、密度約73%の層状焼結体が、金属薄板上に焼き付けられた積層体が得られた。
【0176】
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していない積層体サンプル、および実施例2と同様に層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成した積層体サンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離Gは10mm、印加電圧は9000V、電圧印加時間は5分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として20〜25の値が得られた。
【0177】
なお、前述のようにして分極処理が施された各サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていないサンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されているサンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例4】
【0178】
この実施例4は、PZTからなる密度が約75%の層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物C(PZTからなる平均粒径が0.15〜0.25μmの超微粉末を分散媒に分散させたペースト)を用いて、厚み100μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み60μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に分極処理を行った例である。
【0179】
すなわち、PZT用の原料粉末として、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)の粉末を用意し、これらを、PbO:1モル、ZrO
2:0.5モル、TiO
2:0.5モルの割合で配合するとともに、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルを用いて混練してスラリーとし、そのスラリーを乾燥させて、混合粉末塊を得た。その混合粉末塊をアルミナるつぼに入れ、アルミナの蓋をした状態で、850℃10時間加熱(仮焼成)することにより、ペロブスカイト型結晶構造を有するPZT粉末を得た。
そのPZT粉末を粗粉砕したのち、ボールミルを用いて、平均粒径2.2μmの粉末を得た。次に、その粉末を、湿式ビーズミルを用いて、平均粒径0.2μmとなるまで粉砕した。なお湿式ビーズミルにおけるビーズ(粉砕媒体)としては、粒径0.5mmのジルコニアを用い、また分散媒としては水を用いた。
得られた超微粉スラリーを乾燥して、平均粒径0.2μmのPZT超微粉末を得た。
このPZT超微粉末に、分散媒としてブチルカルビトールを添加して、3本ロールミルで混練することにより、超微粉末のペースト(粘性液状物C)を得た。
【0180】
次いでそのペーストを、実施例1と同様なSUS304からなる金属薄板の中央に、10×10mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。
塗布後、乾燥させてから、700℃で熱処理を行うことにより、PZTを焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において30分保持したのち、炉令した。これにより、焼成されたPZTからなる厚み60μm、密度約75%の層状焼結体が、金属薄板上に焼き付けられた積層体が得られた。
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していないサンプル、および実施例2と同様にして層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成したサンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離Gは8mm、印加電圧は8000V、電圧印加時間は5分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として18〜25の値が得られた。
【0181】
さらに、前述のようにして分極処理が施された各サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていないサンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されているサンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例5】
【0182】
この実施例5は、PZTからなる密度が約75%の層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物D(PZT粉末、および低融点ガラス粉末としてのビスマス系ガラス粉末を分散媒に分散させたペースト)を用いて、厚み100μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み60μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に、分極処理を行った例である。
【0183】
すなわち、酸化物系圧電材料粉末として、実施例1と同様にして平均粒径2.2μmのPZT粉末を調製し、そのPZT粉末を、平均粒径が2.5μmのビスマス系ガラス粉末と混合するとともに、分散媒としてブチルカルビトール系溶剤を加え、ロールミルによって混練して、焼結原料としてのペースト(粘性液状物D)を作成した。ここで、ビスマス系ガラス粉末としては、Bi
2O
3―SiO
2系ガラス、すなわちxBi
2O
3・(100−x)SiO
2で、x=50mol%のものを用いた。またPZT粉末とビスマス系ガラス粉末との配合割合は、PZT粉末80重量部に対しビスマス系ガラス粉末20重量部とした。なお得られたペーストの粘度は、2000mPa・sであった。
【0184】
次いでそのペーストを、実施例1と同様にして、SUS304からなる金属薄板の中央に、直径10mmの円形状に厚さ100μmで塗布した。
塗布後、乾燥させてから、700℃で熱処理を行うことにより、PZTを焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において30分保持したのち、炉令した。これにより、焼成されたPZTからなる平均厚み60μm、密度約75%の層状焼結体が金属薄板上に焼き付けられた積層体が得られた。
【0185】
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していない積層体サンプル、および実施例2と同様にして層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成した積層体サンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離Gは10mm、印加電圧は8000V、電圧印加時間は5分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として20〜25の値が得られた。
【0186】
なお、前述のようにして分極処理が施された各サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていないサンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されているサンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例6】
【0187】
この実施例6は、PZTからなる密度が約73%の層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物E(PZT粉末を珪酸ソーダ溶液に分散させたペースト)を用いて、厚み100μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み60μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に、分極処理を行った例である。
【0188】
すなわち、実施例5と同様にして、平均粒径2.2μmのPZT粉末を得、そのPZT粉末を、10wt%濃度の珪酸ソーダ溶液に分散、混合させて、焼結原料ペースト(粘性液状物E)を調製した。ここで、珪酸ソーダとしては、Na
2Oに対するSiO
2のモル比nが1のメタ珪酸ナトリウムNa
2SiO
3を用い、またPZT粉末100重量部に対して10wt%濃度の珪酸ソーダ溶液が30重量部となるように混合した。したがってペースト中の珪酸ソーダの割合は、PZT粉末100重量部に対して3重量部程度である。また得られたペーストの粘度は、2000mPa・sであった。
【0189】
次いでそのペーストを、実施例1と同様にして、SUS304からなる金属薄板の中央に、8mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。
塗布後、乾燥させてから、700℃で熱処理を行うことにより、PZTを焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において30分保持したのち、炉令した。これにより、焼成されたPZTからなる厚み60μm、密度約73%の層状焼結体が、金属薄板上に焼き付けられた積層体が得られた。
【0190】
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していない積層体サンプル、および実施例2と同様にして層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成した積層体サンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離Gは10mm、印加電圧は8000V、電圧印加時間は3分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として15〜25の値が得られた。
【0191】
なお、前述のようにして分極処理が施された各サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていないサンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されてるサンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例7】
【0192】
この実施例7は、Bi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)からなる層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物A(BIT粉末と、BITの金属成分のゾルとの混合物のスラリー)を用いて、厚み50μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み85μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に、分極処理を行った例である。
【0193】
すなわち、BIT用の原料粉末として、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)の粉末を用意し、これらを、Bi
2O
3:2モル、TiO
2:3モルの割合で配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、アルミナるつぼに入れて、アルミナの蓋をし、800℃、10時間の熱処理(仮焼成)を行い、BIT粉末塊を得た。そのBIT粉末塊を粉砕し、300ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2μmのBIT粉末とし、乾燥させた。
【0194】
また、チタンアルコキシドとしてのチタンブトキシドのブタノール溶液と、酢酸ビスマスの混合液(金属成分であるビスマスとチタンの比はモル比でBi:Ti=4:3)をBi−Tiゾルとした。
そして上記のBi−Tiゾルと、平均粒径2μmのBIT粉末とを重量比で2:1の割合で混合して、焼結原料のスラリー(粘性液状物A)とした。
【0195】
次いでそのスラリー(粘性液状物A)を、実施例1と同様にしてSUS304からなる金属薄板上への塗布、乾燥、焼成を実施し、BITからなる層状焼結体が金属薄板上に形成された積層体を得た。なお焼成工程における加熱は、650℃で0,5時間行なった。またBITからなる層状焼結体(圧電セラミック層)の厚みは85μmであり、またその密度は、約75%であった。
【0196】
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していない積層体サンプル、および実施例2と同様にして層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成した積層体サンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離Gは5mm、印加電圧は8000V、電圧印加時間は5分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として10〜15の値が得られた。
【0197】
なお、前述のようにして分極処理が施された各サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていないサンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されているサンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例8】
【0198】
この実施例8は、Bi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)からなる層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物C(BITからなる平均粒径が0.2μmの超微粉末を分散媒に分散させたペースト)を用いて、厚み25μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み85μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に、分極処理を行った例である。
【0199】
すなわち、BIT用の原料粉末として、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)の粉末を用意し、これらを、Bi
2O
3:2モル、TiO
2:3モルの割合で配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、アルミナるつぼに入れて、アルミナの蓋をし、850℃、10時間の熱処理(仮焼成)を行い、BIT粉末塊を得た。そのBIT粉末塊を粉砕し、300ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2.2μmのBIT粉末とし、乾燥させた。
【0200】
さらに、そのBIT粉末を、湿式ビーズミルを用いて、平均粒径0.2μmとなるまで粉砕した。なお湿式ビーズミルにおけるビーズ(粉砕媒体)としては、粒径0.5mmのジルコニアを用い、また分散媒としては水を用いた。得られた超微粉スラリーを乾燥させた後、分散媒としてブチルカルビトールを添加して、3本ロールミルで混練することにより、平均粒径0.2μmの超微粉末のペースト(粘性液状物C)を得た。
【0201】
次いでそのペースト(粘性液状物C)を、実施例1と同様にしてSUS304からなる金属薄板上への塗布、乾燥、焼成を実施し、BITからなる層状焼結体が金属薄板上に形成された積層体を得た。なお焼成工程における加熱は、650℃で0.5時間行なった。またBITからなる層状焼結体(圧電セラミック層)の厚みは85μmであり、またその密度は、約75%であった。
【0202】
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していない積層体サンプル、および実施例2と同様にして層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成した積層体サンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離Gは6mm、印加電圧は9000V、電圧印加時間は5分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として10〜15の値が得られた。
【0203】
なお、前述のようにして分極処理が施された各サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていないサンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されているサンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例9】
【0204】
この実施例9は、Bi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)からなる層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物D(BIT粉末、および低融点ガラス粉末としてのビスマス系ガラス粉末を分散媒に分散させたペースト)を用いて、厚み50μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み100μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に、分極処理を行った例である。
【0205】
すなわち、酸化物系圧電材料粉末として、実施例7と同様にして平均粒径2.2μmのBIT粉末を調製し、そのBIT粉末を、平均粒径が2.5μmのビスマス系ガラス粉末と混合するとともに、分散媒としてブチルカルビトール系溶剤を加え、ロールミルによって混練して、焼結原料としてのペースト(粘性液状物D)を作成した。ここで、ビスマス系ガラス粉末としては、Bi
2O
3―SiO
2系ガラス、すなわちxBi
2O
3・(100−x)SiO
2で、x=50mol%のものを用いた。またPZT粉末とビスマス系ガラス粉末との配合割合は、PZT粉末80重量部に対しビスマス系ガラス粉末20重量部とした。なお得られたペーストの粘度は、2000mPa・sであった。
【0206】
次いでそのペースト(粘性液状物D)を、実施例1と同様にしてSUS304からなる金属薄板上への塗布、乾燥、焼成を実施し、BITからなる層状焼結体が金属薄板上に形成されたものを得た。なお焼成工程における加熱は、650℃で0.5時間行なった。またBITからなる層状焼結体(圧電セラミック層)の厚みは100μmであり、またその密度は、約75%であった。
【0207】
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していない積層体サンプル、および実施例2と同様にして層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成した積層体サンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離は5mm、印加電圧は8000V、電圧印加時間は5分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として10〜15の値が得られた。
【0208】
なお、前述のようにして分極処理が施された各積層体サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていない積層体サンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されている積層体サンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、可撓性を調べたところ、実施例1と同様に良好な可撓性を有することが確認された。また実際に厚み測定に供したところ、実施例1と同様に、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【実施例10】
【0209】
この実施例10は、LiNbO
3(ニオブ酸リチウム)からなる層状焼結体を、焼結原料として前述の粘性液状物A(ニオブ酸リチウム粉末と、ニオブ酸リチウムの金属成分のゾルとの混合物のスラリー)を用いて、厚み100μmのSUS304からなる金属薄板の表面に、平均厚み70μmで形成した場合について、実施例1(第2の電極無しで分極処理)もしくは実施例2(第2の電極有りで分極処理)と同様に、分極処理を行った例である。
【0210】
すなわち、ニオブ酸リチウム用の原料粉末として、炭酸リチウム(Li
2CO
3)と酸化ニオブ(Nb
2O
3)をLiとNbの割合がモル比で1:1になるように配合し、エタノールを分散媒、ポリエチレンイミンを分散剤としてポリエチレンイミンを使用し、ボールミルを用いて24時間、湿式混練を行った。混練終了後、バットの上で乾燥し、乾燥後、1000℃で10時間熱処理した。この熱処理により反応し、X線回折法で分析したところ、純粋なLiNbO
3になっていることが確認された。この状態では、熱処理により粉が固く固着していることから、150μm以下の大きさに粗粉砕した後、ボールミルに入れて、ジルコニアボールとともに回転させながら24時間粉砕を行った。平均粒径2μmまで粉砕されていることを確認した後、乾燥して、LiNbO
3粉末とした。
また、ニオブアルコキシドとしてのニオブエトキシドのエタノール溶液と酢酸リチウムとの混合液(ニオブとリチウムのモル比は1:1)をLi−Nbゾルとした。
そして上記のLi−Nbゾルと、平均粒径2μmのLiNbO
3粉末とを重量比で2:1の割合で混合して、焼結原料のスラリー(粘性液状物A)とした。
【0211】
次いでそのスラリー(粘性液状物A)を、実施例1と同様にしてSUS304からなる金属薄板上への塗布、乾燥、焼成を実施し、ニオブ酸リチウムからなる層状焼結体が金属薄板上に形成されたものを得た。なお、焼成工程における加熱は、650℃で0.5時間行なった。またニオブ酸リチウムからなる層状焼結体(圧電セラミック層)の厚みは70μmであり、またその密度は、約77%であった。
【0212】
そして、実施例1と同様に第2の電極を層状焼結体の上面に形成していないサンプル、および実施例2と同様にして層状焼結体の上面に第2の電極(銀電極)を形成したサンプルとを用意した。これらを実施例1もしくは実施例2と同様に電極台状に載置して、実施例1、実施例2と同様に分極処理を行った。なおこの場合の電極台と線状電極との間の距離Gは5mm、印加電圧は8000V、電圧印加時間は5分とした。
分極処理後の層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、第2の電極を形成していないサンプル、および第2の電極(銀電極)を形成したサンプルのいずれにおいても、d33値として10〜15の値が得られた。
【0213】
なお、前述のようにして分極処理が施された各サンプルのうち、予め第2の電極が形成されていないサンプルについては、実施例1と同様に第2の電極(銀電極)を形成して超音波厚みセンサとし、一方予め第2の電極(銀電極)が形成されているサンプルについては、実施例2と同様にそのまま超音波厚みセンサとし、これらの超音波厚みセンサについて、その可撓性を調べるため、曲率半径30mmで全体的に湾曲させる試験を行なったところ、いずれも層状焼結体に割れが生じたり、剥離したりすることがないこと、したがって良好な可撓性を有することが確認された。さらに、実際にステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
【0214】
[比較例1]
この比較例1は、従来の一般的な分極処理方法、すなわち一対の分極処理用電極によって焼結体を直接挟み、シリコンオイル中で高電圧を印加して分極させる方法を、実施例2と同様な低密度(密度約75%)のPZTからなる層状焼結体に適用した例である。
すなわち、実施例2と同様にして、PZTからなる層状焼結体をSUS304からなる金属薄板上に形成し、さらに層状焼結体の表面に第2の電極(銀電極)を形成して、超音波厚みセンサ用積層体を得た。その積層体を、一対の分極処理用電極によって挟むとともに、シリコンオイル中に浸漬して、450Vの電圧を150℃で2分間印加し、分極処理を行った。
分極処理後、前記各実施例と同様にd33メータによって分極状況を調べたところ、d33値は、実施例2の場合とほぼ同等の20となることが確認された。
この結果からは、各実施例に示すような低密度の焼結体では、コロナ放電による分極処理でも、従来の一般的な分極処理方法を適用した場合と同程度(超音波厚みセンサとして使用可能な程度)の圧電特性が得られることが分かる。
但し、比較例1のように従来の一般的な分極処理方法を適用した場合には、火花放電防止のためにシリコンオイルに浸漬して分極処理する必要があり、その点に問題がある。
【0215】
[比較例2]
この比較例2は、PZTからなる層状焼結体を、白金からなる金属薄板の板面に、約90%の高密度で形成した場合に、コロナ放電による分極処理を施した例である。
すなわち、焼成条件以外は実施例1と同様にして、白金からなる金属薄板の板面に、平均厚みが80μmで密度が約90%のPZTからなる層状焼結体を形成して積層体とし、その積層体について、実施例1と同様に、コロナ放電による分極処理を施した。なお焼成条件は、従来の一般的なPZT圧電材料の焼成条件に倣って、1200℃×1時間とした。
分極処理後の積層体サンプルの層状焼結体について、実施例1と同様に第2の電極を形成してから、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、d33値は、実施例1の場合とほぼ同等の25程度となることが判明した。この値は、高密度のPZT焼結体について従来の一般的な分極方法(シリコンオイル中において一対の電極で挟んでの分極処理)で分極させた場合の1/10程度に過ぎない。このd33値からは、本発明で対象としている超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性は有していると言うことができる。しかしながら、可撓性は実質的に有しておらず、実施例1と同様に曲率半径30mmで全体的に湾曲させる試験を行なったところ、層状焼結体に直ちに割れが生じて、剥離してしまうことが判明した。したがって、可撓性を有することが必要とされる用途、すなわち配管や屈曲部位の如く湾曲した測定対象の厚み測定には不適当である。
【実施例11】
【0216】
この実施例11は、酸化物系圧電材料として実施例1と同様にPZTを用い、そのPZTからなる密度が約75%の層状焼結体を、厚み25μmのSUS304からなる大きな面積(10cm×10cm)を有する金属薄板の表面の合計100個所に、マトリックス状(10×10)にそれぞれ平均厚み60μmで形成し、その大面積積層体の各層状焼結体に、
図7、
図8に示すような線状電極を用いた分極処理装置を用いてコロナ放電による分極処理を同時に施した例である。なお第2の電極に関しては、実施例1と同様に第2の電極が各層状焼結体の上面に予め形成されていないサンプルと、実施例2と同様に予め第2の電極(銀電極)が各層状焼結体の上面に予め形成されているサンプルとを用意し、両者についてコロナ放電による分極処理を行なった。
【0217】
ここで、大面積金属薄板の板面上の各層状焼結体は、直径5mmの円形状とし、隣り合う層状焼結体の相互の間隔は5mmとした。また線状電極としては、外径が50μm、長さが150mmの3本のタングステン線材を用い、その3本の線状電極を、相互の間隔が35mmとなるように平行に配列しておいた。そして中央の線状電極の中心の下方に大面積積層体の中心が位置するように、大面積積層体をSUS316からなる電極台の上面に載置し、線状電極と電極台との間に電圧を印加して、コロナ放電による分極処理を実施した。分極処理条件は、印加電圧9000V、線状電極と電極台との間の距離Gは1.5cmとし、処理時間(電圧印加時間)は5分とした。
【0218】
分極処理後の各層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、いずれの層状焼結体でも、d33値として20〜25の値が得られた。
したがってこの結果から、多数の層状焼結体について同時にコロナ穂電による分極処理を施した場合でも、それぞれ超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を有する焼結体が得られることが確認された。
【0219】
なおこの実施例11において、PZTからなる各層状焼結体を大面積金属薄板の板面にマトリックス状に形成するに当たっては、次のような方法を適用した。
すなわち、焼結原料としては、実施例1と同様に、前記粘性液状物Aとして、酸化物系圧電材料粉末としてのPZT粉末と、PZTの金属成分のアルコキシドゾルとの混合物のスラリーを調製した。
【0220】
一方、第1のマスク部材として、SUS304からなる厚み50μmの10cm×10cm角の方形状薄板を用意した。この第1のマスク部材薄板には、それぞれ直径5mmの円形状の開口部を、それぞれ間隔を置いてマトリックス状に合計100箇所に形成しておいた。なお隣り合う開口部の相互間の間隔は、第1のマスク部材薄板の方形の一方の辺に平行な方向では5mmとして、その方向に10個の開口部が並ぶように、また、その辺に直交する方向でも5mmとして、その方向に10個の開口部が並ぶようにした。
その第1のマスク部材を、SUS304からなる厚み50μmの金属薄板(10cm×10cm角の方形状)の一方の板面に重ね合わせた。そいて前述のアルコキシドゾルーPZT混合分散液(スラリー)を、エアースプレーによって第1のマスク部材の板面上に塗布して、各開口部内にスラリーを充填して、自然乾燥により乾燥させた。なお実際にはこの操作を複数回繰り返して、乾燥後の厚みが100μmとなるようにした。
その後、第1のマスク部材を除去して、第1の電極となるべき金属薄板上に、5mmの間隔を置いてマトリックス状に合計100個所に焼結原料層が分散形成されている状態とした。
【0221】
次いで、焼成工程として、700℃で熱処理を行うことにより、各焼結原料層を焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において1時間保持したのち、炉令した。これにより、SUS304からなる金属薄板の板面上に、焼成されたPZTからなる厚み60μmの層状焼結体が、間隔を置いてマトリックス状に合計100箇所に焼き付けられた大面積積層体を得た。
【0222】
また、分極処理に先立って、第2の電極を各層状焼結体の表面に予め形成した大面積積層体サンプルを作成するに当たっては、上記と同様にして各層状焼結体を大面積金属薄板の板面にマトリックス状に形成した後、次のようにして第2の電極を形成した。
すなわち、第2のマスク部材として、SUS304からなる厚み50μmの10cm×10cm角の方形状薄板を用意した。この第2のマスク部材薄板には、予めそれぞれ前記各層状焼結体の中央に対応する位置に、5mm丸の開口部を、合計100個形成しておき、それを各層状焼結体の上面側に重ね合わせた。そして、スキージを用いて第2のマスク部材の表面に第2の電極用の銀ペーストを塗布し、各開口部内に銀ペーストを充填した後、500℃で焼き付け、各層状焼結体の表面に平均厚み20μmの第2の電極(銀電極)を形成した。
【実施例12】
【0223】
この実施例12は、酸化物系圧電材料として、実施例7と同様に、Bi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)を用い、そのBITからなる密度が約75%の層状焼結体を、実施例11と同様に、厚み50μmのSUS304からなる大きな面積(10cm×10cm)を有する金属薄板の表面の合計100個所に、マトリックス状(10×10)にそれぞれ平均厚み60μmで形成し、その大面積積層体の各層状焼結体に、
図7、
図8に示すような線状電極を用いた分極処理装置を用いてコロナ放電による分極処理を同時に施した例である。なお第2の電極に関しては、実施例1と同様に第2の電極が各層状焼結体の上面に予め形成されていないサンプルと、実施例2と同様に予め第2の電極(銀電極)が各層状焼結体の上面に予め形成されているサンプルとを用意し、両者についてコロナ放電による分極処理を行なった。
【0224】
なお焼結原料としては、実施例7と同様に調製された粘性液状物A(BIT粉末と、BITの金属成分のゾルとの混合物のスラリー)を用いた。またそのスラリーの塗布(マトリックス状の焼結原料層の形成)は、実施例11と同様な第1のマスク部材を用いて行ない、焼成条件は実施例7と同様とした。さらに分極処理前の大面積積層体サンプルとして、各層状焼結体の表面に第2の電極を形成したものを用意するに当たっては、実施例11中に記載した方法と同様に、第2のマスク部材を用いた。
【0225】
分極処理後の各層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、いずれの層状焼結体でも、d33値として10〜15の値が得られた。
したがってこの結果から、酸化物系圧電材料としてBITを用い、多数の層状焼結体について同時にコロナ穂電による分極処理を施した場合でも、それぞれ超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を有する焼結体が得られることが確認された。
【実施例13】
【0226】
この実施例13は、酸化物系圧電材料として、実施例10と同様に、酸化物系圧電材料としてLiNbO
3(ニオブ酸リチウム)を用い、そのLiNbO
3からなる密度が約75%の層状焼結体を、実施例11と同様にして、厚み40μmのSUS304からなる大きな面積(10cm×10cm)を有する金属薄板の表面の合計100個所に、マトリックス状(10×10)にそれぞれ平均厚み60μmで形成し、その大面積積層体の各層状焼結体に、
図7、
図8に示すような線状電極を用いた分極処理装置を用いてコロナ放電による分極処理を同時に施した例である。
なお第2の電極に関しては、実施例1と同様に第2の電極が各層状焼結体の上面に予め形成されていないサンプルと、実施例2と同様に予め第2の電極(銀電極)が各層状焼結体の上面に予め形成されているサンプルとを用意し、両者についてコロナ放電による分極処理を行なった。
【0227】
また焼結原料としては、実施例10と同様に調製された粘性液状物A(Li−Nbゾルと、平均粒径2μmのLiNbO
3粉末との混合物のスラリー)を用いた。またそのスラリーの塗布(マトリックス状の焼結原料層の形成)は、実施例11と同様に第1のマスク部材を用いて行ない、焼成条件は実施例10とほぼ同様とした。さらに分極処理前の大面積積層体サンプルとして、各層状焼結体の表面に第2の電極を形成したものを用意するに当たっては、実施例11中に記載した方法と同様に、第2のマスク部材を用いた。
【0228】
分極処理後の各層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、いずれの層状焼結体でも、d33値として10〜15の値が得られた。
したがってこの結果から、酸化物系圧電材料としてLiNbO
3を用い、多数の層状焼結体について同時にコロナ穂電による分極処理を施した場合でも、それぞれ超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を有する焼結体が得られることが確認された。
【実施例14】
【0229】
この実施例14は、酸化物系圧電材料としてPZTを用い、そのPZTからなる密度が約76%の層状焼結体を、厚み50μmのSUS304からなる長板状(100mm×150mm)の金属薄板の表面の合計150個所に、マトリックス状にそれぞれ平均厚み60μmで形成し、その長板状積層体の各層状焼結体に、
図11〜
図13に示すような連続分極処理装置を用いてコロナ放電による分極処理を連続的に施した例である。なお第2の電極に関しては、実施例1と同様に第2の電極が各層状焼結体の上面に予め形成されていないサンプルと、実施例2と同様に予め第2の電極(銀電極)が各層状焼結体の上面に予め形成されているサンプルとを用意し、両者についてコロナ放電による連続分極処理を行なった。
【0230】
焼結原料としては、実施例1と同様に調製された粘性液状物A(PZTの金属成分のアルコキシドゾルとの混合物のスラリー)を用いた。またそのスラリーの塗布(マトリックス状の焼結原料層の形成)は、実施例11と同様な第1のマスク部材を用いて行ない、長板状の金属薄板の幅方向に5mmの間隔を置いて10個所、長さ方向に、5mmの間隔を置いて15個所、合計150個所に、直径5mmの円形状に焼結原料層を形成した。焼成条件は実施例1と同様として、長板状金属薄板の板面にマトリックス状にPZTからなる層状焼結体(密度約76%)が形成された長板状積層体を得た。なお、分極処理前の長板状積層体サンプルとして、各層状焼結体の表面に第2の電極を形成したものを用意するに当たっては、実施例11中に記載した方法と同様に、第2のマスク部材を用いた。
このような長板状積層体サンプルを、
図11〜
図13に示すような連続分極処理装置における可動電極台(ステンレス製無端環状ベルト)上に、その長さ方向が可動電極台の移動方向に沿うように載置し、可動電極台を連続的に移動させながら、コロナ放電による連続分極処理を行った。ここで線状電極としては、外径100mmのタングステン(W)からなる3本のものを用い、線状電極の長さは200mm、各線状電極間の間隔は35mmとした。
なお分極処理条件は、印加電圧9000V、線状電極と電極台との間の距離Gは0.5cm、移動速度は10mm/min.とした。
【0231】
分極処理後の各層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、いずれの層状焼結体でも、d33値として20〜25の値が得られた。
したがってこの結果から、多数の層状焼結体について連続的にコロナ穂電による分極処理を施した場合でも、それぞれ超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を有する焼結体が得られることが確認された。
【実施例15】
【0232】
この実施例15は、酸化物系圧電材料として実施例7、実施例12と同様に、Bi
4Ti
3O
12(チタン酸ビスマス:BIT)を用い、そのBITからなる密度が約74%の層状焼結体を、厚み100μmのSUS304からなる長板状(100mm×150mm)の金属薄板の表面の合計150個所に、マトリックス状にそれぞれ平均厚み60μmで形成し、その長板状積層体の各層状焼結体に、
図11〜
図13に示すような連続分極処理装置を用いてコロナ放電による分極処理を連続的に施した例である。なお第2の電極に関しては、実施例1と同様に第2の電極が各層状焼結体の上面に予め形成されていないサンプルと、実施例2と同様に予め第2の電極(銀電極)が各層状焼結体の上面に予め形成されているサンプルとを用意し、両者についてコロナ放電による連続分極処理を行なった。
【0233】
焼結原料としては、実施例7、実施例12と同様に調製された粘性液状物A(BIT粉末と、BITの金属成分のゾルとの混合物のスラリー)を用いた。またそのスラリーの塗布(マトリックス状の焼結原料層の形成)は、実施例11と同様な第1のマスク部材を用いて行ない、実施例14と同様に、長板状の金属薄板の幅方向に5mmの間隔を置いて10個所、長さ方向に5mmの間隔を置いて15個所、合計150個所に、直径5mmの円形状に焼結原料層を形成した。焼成条件は実施例7、実施例12と同様として、長板状金属薄板の板面にマトリックス状にBITからなる多数の層状焼結体(密度約74%)が形成された長板状積層体を得た。なお、分極処理前の長板状積層体サンプルとして、各層状焼結体の表面に第2の電極を形成したものを用意するに当たっては、実施例11中に記載した方法と同様に、第2のマスク部材を用いた。
このような長板状積層体サンプルを、
図11〜
図13に示すような連続分極処理装置における可動電極台(ステンレス製無端環状ベルト)上に、その長さ方向が可動電極台の移動方向に沿うように載置し、可動電極台を連続的に移動させながら、コロナ放電による連続分極処理を行った。ここで線状電極としては、外径100μmのタングステンからなる3本のものを用い、線状電極の長さは200mm、各線状電極間の間隔は35mmとした。
なお分極処理条件は、印加電圧9000V、線状電極と電極台との間の距離は0.5cm、移動速度は10mm/min.とした。
【0234】
分極処理後の各層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、いずれの層状焼結体でも、d33値として10〜15の値が得られた。
したがってこの結果から、酸化物系圧電材料としてBITを用い、多数の層状焼結体について連続的にコロナ穂電による分極処理を施した場合でも、それぞれ超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を有する焼結体が得られることが確認された。
【実施例16】
【0235】
この実施例16は、酸化物系圧電材料として実施例10、実施例13と同様に、酸化物系圧電材料としてLiNbO
3(ニオブ酸リチウム)を用い、そのLiNbO
3からなる密度が約75%の層状焼結体を、厚み50μmのSUS304からなる長板状(100mm×150mm)の金属薄板の表面の合計150個所に、マトリックス状にそれぞれ平均厚み80μmで形成し、その長板状積層体の各層状焼結体に、
図11〜
図13に示すような線状電極を用いた連続分極処理装置を用いてコロナ放電による分極処理を連続的に施した例である。なお第2の電極に関しては、実施例1と同様に第2の電極が各層状焼結体の上面に予め形成されていないサンプルと、実施例2と同様に予め第2の電極(銀電極)が各層状焼結体の上面に予め形成されているサンプルとを用意し、両者についてコロナ放電による連続分極処理を行なった。
【0236】
焼結原料としては、実施例10、実施例13と同様に調製された粘性液状物A(Li−Nbゾルと、平均粒径2μmのLiNbO
3粉末との混合物のスラリー)を用いた。またそのスラリーの塗布(マトリックス状の焼結原料層の形成)は、実施例11と同様な第1のマスク部材を用いて行ない、実施例14と同様に、長板状の金属薄板の幅方向に5mmの間隔を置いて10個所、長さ方向に、5mmの間隔を置いて15個所、合計150個所に、直径5mmの円形状に焼結原料層を形成した。焼成条件は実施例10、実施例13と同様として、長板状金属薄板の板面にマトリックス状にLiNbO
3からなる多数の層状焼結体(密度約75%)が形成された長板状積層体を得た。なお、分極処理前の長板状積層体サンプルとして、各層状焼結体の表面に第2の電極を形成したものを用意するに当たっては、実施例11中に記載した方法と同様に、第2のマスク部材を用いた。
このような長板状積層体サンプルを、
図11〜
図13に示すような連続分極処理装置における可動電極台(ステンレス製無端環状ベルト)上に、その長さ方向が可動電極台の移動方向に沿うように載置し、可動電極台を連続的に移動させながら、コロナ放電による連続分極処理を行った。ここで線状電極としては、外径100μmのタングステンからなる3本のものを用い、線状電極の長さは200mm、各線状電極間の間隔は35mmとした。
なお分極処理条件は、印加電圧9000V、線状電極と電極台との間の距離は0.5cm、移動速度は10mm/min.とした。
【0237】
分極処理後の各層状焼結体について、d33メータを用いてその分極状況を調べたところ、いずれの層状焼結体でも、d33値として10〜15の値が得られた。
したがってこの結果から、酸化物系圧電材料としてLiNbO
3を用い、多数の層状焼結体について連続的にコロナ穂電による分極処理を施した場合でも、それぞれ超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を有する焼結体が得られることが確認された。
【0238】
以上、本発明の好ましい実施形態、実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。