(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
覆域の少なくとも一部が同じである複数pのレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号毎に、瞬時値が尖頭値と見なし得る時点または期間を識別する尖頭識別手段と、
前記尖頭識別手段によって識別された時点または期間に共通の座標系に対するマッピングを施すマッピング手段と、
前記複数pのレーダ信号の相互間で、前記マッピングの下で個別に得られた時点または期間毎に共通集合を得る偽像抑圧手段と
を備えたことを特徴とするレーダ信号処理装置。
【背景技術】
【0002】
港湾等における船舶の航行の安全性は、AIS(Automatic
Identification System)等の航行援助機器や国際VHF等の通信手段の組み合わせにより各船舶の航行の管制を可能とするVTS(Vessel
Traffic Service)によって確保され、効率化が図られている。
【0003】
このようなVTSでは、所定の航路や海上において管制の対象となる船舶の測位および測距は、異なるサイトに設置されて少なくとも覆域の一部が同じであるレーダによって得られたレーダ信号にレーダ信号処理が施されることにより、該当する船舶が位置し得る海域や航路の全てが安定に覆域として確保される。
【0004】
図3は、VTSにおけるレーダ測位系の構成例を示す図である。
図において、信号変換部31aの入力には、第一のレーダ(以下、「レーダa」という。)によって受信されたレーダ信号Saが与えられる。また、信号変換部31bの入力には、第二のレーダ(以下、「レーダb」という。)によって受信されたレーダ信号Sbが与えられる。信号変換部31aの出力は、目標検知部32aおよび追尾処理部33aを介して統合処理部34の第一の入力に接続される。信号変換部31bの出力は、目標検知部32bおよび追尾処理部33bを介して統合処理部34の第二の入力に接続される。統合処理部34の出力は、図示されない処理装置に接続される。
【0005】
なお、以下では、レーダaおよびレーダbはそれぞれ地理的に隔たった異なるサイトに設置され、かつ両者の覆域は、上記管制の対象となる船舶が航行し得る海域(航路)を共通に含むと仮定する。また、以下では、上記レーダ信号Sa、Sbについては、何れも、測位の対象となる船舶から到来した反射波をAスコープとして示すと仮定する。
【0006】
このような構成のレーダ測位系では、信号変換部31a、31bは、それぞれレーダ信号Sa、Sbを復調し、これらの復調の結果を個別にAスコープとして示す信号SAa、SAbを生成する。
【0007】
目標
検知部32a、32bは、上記信号SAa、SAbを取り込んでスキャン方向およびスイープ方向に対応付けて蓄積し、例えば、PPIスコープ上における個々の物標を個別に識別すると共に、これらの物標毎に位置・形状・寸法等を示す情報の列Ia、Ibを生成する。
【0008】
追尾処理部33a、33bは、上記情報の列Ia、Ibを個別に取り込み、該当する情報の列で示される船舶等の物標を捕捉して追尾(ユニークな識別の付与、移動先の推定および現在位置の把握、異なる物標との衝突の予測および警報を実現する。)し、その追尾の下で個別に得られた追尾情報Ta、Tbを生成する。
【0009】
統合処理部34は、上記追尾情報Ta、Tbに、既述の異なるサイトの間における地理的な格差を是正するマッピングを施した後、そのマッピングの下でこれらの追尾情報Ta、Tbを一本化する統合処理を施すことにより追尾情報Tを生成すると共に、その追尾情報Tを所定の情報処理(後続して行われるべきレーダ信号処理、操舵支援等の処理)の演算対象とする。
【0010】
したがって、レーダaとレーダbとの一方のみでは物標の検知が不可能な航路や海域(以下、「不感領域」という。)に位置する船舶も上記追尾および航行の管制の対象となる。
【0011】
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下に列記する特許文献1および特許文献2がある。
【0012】
(1) 「レーダ覆域を同一とする複数のレーダからのレーダ信号を各別に入力してデジタル化するビデオ処理部と、ビデオ処理部において処理されたレーダビデオ信号を各別に入力して直交座標走査方式のレーダビデオ信号に変換する走査変換部と、複数レーダによる死角および偽像を最少とするレーダ間の相関情報を記憶する相関制御情報記憶部と、走査変換部において変換された変換レーダビデオ信号を相関制御情報記憶部に記憶された相関情報に伴って合成する相関合成処理部と、相関合成処理部により合成されたレーダビデオ信号の走査によってレーダ映像を直交座標表示する表示部とを備える」ことによって、「複数のレーダからのレーダ映像を死角が最小となるように合成するとともに偽像が最小となるレーダ映像を表示する」点に特徴があるマルチレーダ合成表示装置…特許文献1
【0013】
(2) 「レーダ探知信号から、当該レーダ探知信号に含まれるエコー画像に対応する物標の位置を捕捉・追尾するレーダ信号処理装置において、捕捉・追尾しようとする物標に対して複数回スキャンして得たエコートレイル画像と、所定方向へ移動する物標に対して複数回スキャンしたときに得られるエコートレイル画像に相当するテンプレートとのマッチングをとることにより、マッチしたテンプレートに対応する物標の移動方向を、捕捉・追尾すべき物標の移動方向として検知する移動方向検知手段を設ける」ことによって、「αβトラッカーやカルマンフィルタなどの追尾フィルタだけに頼らず、物標の運動推定を確実に行い、追尾誤りを発生しにくくした」点に特徴があるレーダ信号処理装置…特許文献2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、
図3に示す従来例では、レーダaおよびレーダbの何れにおいても、これらのレーダと異なるレーダから到来した干渉波によって、実存しない物標の誤検知が行われ、かつ個別に数マイル程度の近レンジで生じた多重反射に起因する偽像によっても同様に誤検知が行われる可能性があった。
【0016】
さらに、従来例では、上記偽像は、レーダaとレーダbとの何れか一方のみで発生している場合であっても、既述の統合処理の下で実存する物標として検知されるために、このような偽像が発生する海域(地域)に、実存する物標が侵入した場合には、一般に、その物標と偽像との峻別が困難であるために、該当する目標の乗り移り(スワップ)やロストが発生する可能性があった。
【0017】
このように従来例では、干渉波や偽像に起因する誤検知により、追尾の精度および安定性が低下し、かつ必ずしも高く維持できない可能性が高かった。
【0018】
なお、従来、上述した偽像に起因する誤検知等は、例えば、既述の特許文献2に開示されるように、「複数のレーダから得られた各レーダ信号を直交座標走査方式のレーダビデオ信号に変換し、これらのレーダビデオ信号の論理積合成することにより、偽像を最小化するマルチレーダ合成表示装置(以下、単に「論理積合成方式」という。)」によって、幾分なりとも緩和される可能性があった。
【0019】
しかし、このような論理積合成方式は、論理積合成の対象が既述のレーダビデオ信号であり、かつレーダaおよびレーダbの覆域における地形や地物と、探知されるべき船舶との地理的な配置や分布によっては、例えば、
図4の破線枠内に示すように、偽像を示すレーダ信号(レーダビデオ信号)の波形の内、特に瞬時値が小さい部位に多様な雑音が付帯し、かつ頻繁に変化し得るために、追尾処理の精度や応答性が大幅に低下し、実際には適用できない場合が多かった。
【0020】
本発明は、多様な形態で生じる偽像による測位や測距の精度の低下を確度高く安定に回避できるレーダ信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載の発明では、尖頭識別手段は、覆域の少なくとも一部が同じである複数pのレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号毎に、瞬時値が尖頭値と見なし得る時点または期間を識別する。マッピング手段は、前記尖頭識別手段によって識別された時点または期間に共通の座標系に対するマッピングを施す。偽像抑圧手段は、前記複数pのレーダ信号
の相互間で、前記マッピングの下で個別に得られた時点または期間
毎に共通集合を得る。
【0022】
すなわち、複数pのレーダが共有する覆域の部位に位置する物標は、これらのレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号に外乱や雑音が重畳されている状態であっても、測位や測距が精度よく達成される。しかも、このような雑音として重畳された偽像の成分は、複数pのレーダが設置されたサイトの間でほぼ無相関であるとの前提の下で排除され、あるいは大幅に抑圧される。
【0023】
請求項2に記載の発明では、マッピング手段は、覆域の少なくとも一部が同じである複数pのレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号に、共通の座標系に対するマッピングを施す。尖頭識別手段は、前記マッピングの下で前記複数pのレーダ信号毎に、瞬時値が尖頭値と見なし得る時点または期間を識別する。偽像抑圧手段は、前記複数pのレーダ信号
の相互で、個別に得られた時点または期間
毎に共通集合を得る。
【0024】
すなわち、複数pのレーダが共有する覆域の部位に位置する物標は、これらのレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号に外乱や雑音が重畳されている状態であっても、測位や測距が精度よく達成される。しかも、このような雑音として重畳された偽像の成分は、複数pのレーダが設置されたサイトの間でほぼ無相関であるとの前提の下で排除され、あるいは大幅に抑圧される。
【発明の効果】
【0031】
本発明が適用された測位系や測距系では、従来例に比べて性能が低下することなく、偽像の抑圧が確度高く安定に図られる。
【0032】
また、本発明が適用された測位系や測距系では、備えられたレーダの台数が有効に活用されることによって性能が低下することなく、偽造の抑圧が従来例に比べて確度高く安定に図られる。
【0033】
したがって、本発明によれば、従来例に比べて性能が低下することなく、所望の覆域に位置する物標の測位および測距が精度よく安定に達成される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
【0036】
図において、信号変換部11aの入力には、既述のレーダaによって受信された反射波を示すレーダ信号Saが与えられる。また、信号変換部11bの入力には、既述のレーダbによって受信された反射波を示すレーダ信号Sbが与えられる。これらの信号変換部11a、11bの出力は、マッピング部12の第一および第二の入力にそれぞれ接続される。マッピング部12の第一の出力は偽像処理部13および覆域補間部14の第一の入力に接続され、そのマッピング部12の第二の出力は偽像処理部13および覆域補間部14の第二の入力に接続される。偽像処理部13および覆域補間部14の出力は、合成処理部15の第一および第二の入力にそれぞれ接続される。合成処理部15の出力は、追尾処理部16を介して図示されない処理装置に接続される。
【0037】
図2は、本実施形態における信号変換部の動作を示す図である。
以下、
図1および
図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
信号変換部
11aは、以下の処理を行う。
【0038】
(1) レーダ信号Saを復調し、その復調の結果をAスコープとして示す信号SAa(
図2(a))を生成する。
(2) 上記信号SAaの瞬時値の列を時系列の順に蓄積しつつ解析し、その信号SAaの波形の瞬時値が所定の閾値thを超える期間または時点に該当するか否かを示す2値信号SBa(
図2(b))を時系列の順に生成する。
【0039】
また、信号変換部
11bは、レーダ信号Sbに同様の処理を施すことにより、そのレーダ信号Sbに対応した信号SAbおよび2値信号SBbを生成する。
【0040】
さらに、信号変換部
11a、
11bは、偽像の成分の立ち上がりや立ち下がりに重畳され得る雑音の尖頭値より大きな値、あるいはこれらの雑音の実測および監視の下で求められて適宜更新される値に、上記閾値thを設定する。
【0041】
したがって、これらの2値信号SBa、SBbで示される偽像および実存する物標については、上記雑音の成分が無用に残存する可能性が大幅に低く抑えられる。
【0042】
マッピング部12は、これらの2値信号SBa、SBbに、上記異なるサイトの間における地理的な格差を是正するマッピングを施し、そのマッピングの下でこれらの2値信号SBa、SBbに対応する信号SMa、SMbを生成する。
【0043】
偽像処理部13は、レンジ方向、スキャン方向およびスイープ方向の全てまたは一部との対応の下でこれらの信号SMa、SMbの論理積をとることにより、レーダa、レーダbがそれぞれ設置されたサイトの周辺における地形や地物の分布等に応じた多重反射に起因する偽像の成分(レーダ信号Sa、Sbの間において無相関と見なし得る。)の抑圧や大幅な軽減が図られた信号SFIrを生成する。
【0044】
一方、覆域補間部14は、上記信号SMaの成分の内、レーダaが設置されたサイトの周辺における地形や地物の分布等に起因する不感地帯RISaの成分CISaを抽出する。さらに、覆域補間部14は、同様に信号SMbの成分からレーダbの不感地帯RISbの成分CISbを抽出する。
【0045】
なお、偽像処理部13および覆域補間部14は、上記マッピングの結果を維持しつつ既述の処理を行う。
【0046】
合成処理部15は、このようにして偽像の成分の抑圧(または大幅な軽減)が図られた信号SFIRに、上記不感地帯RISa、RISbに示す成分CISa、CISbを合成することにより、合成信号SCを生成する。
【0047】
追尾処理部16は、以下の処理を行う。
(1) 上記合成信号SCを取り込んでスキャン方向およびスイープ方向に対応付けて蓄積し、例えば、PPIスコープ上に位置する船舶等の物標(既述の期間や時点として示される。)を個別に識別すると共に、これらの物標毎に位置を示す情報Iの列を生成する。
【0048】
(2) 上記情報Iの列で個別に示される船舶等の物標を捕捉して追尾(ユニークな識別の付与、移動先の推定、現在位置の把握、異なる物標との衝突の予測および警報を実現する。)し、その追尾の下で個別に得られた追尾情報Tを生成する。
【0049】
(3) その追尾情報Tを所定の情報処理(後続して行われるべきレーダ信号処理、操舵支援等の処理)の演算対象とする。
【0050】
すなわち、本実施形態によれば、従来例に比べて、偽像が追尾の対象となる可能性が大幅に少なくなるために、スワップやロストが確度高く安定に回避される。
【0051】
したがって、本実施形態では、従来例に比べて、レーダaとレーダbとがそれぞれ設置されるサイトの地理的な配置に柔軟に適応し、かつ偽像の抑圧が精度よく安定に図られると共に、これらのレーダの覆域の有効な活用が可能となる。
【0052】
なお、本実施形態では、レーダ信号Sa、Sbは、追尾の対象となるべき船舶等の位置の特定に好適な2値信号SBa、SBbに変換されることによって、このような物標の形状や寸法の識別が特に行われていない。
【0053】
しかし、このような形状および寸法については、本発明に、多様な公知技術が併せて適用されることによって識別されてもよい。
【0054】
また、本発明の特徴は、本実施形態では、信号変換部11a、11b、マッピング部12、偽像処理部13、覆域補間部14、合成処理部15および追尾処理部16によって行われる既述のレーダ信号処理の手順にあり、このようなレーダ信号処理は、公知の多様なレーダ信号処理の過程に如何なる形態で組み込まれてもよく、かつPGA等のハードウェア、DSP等によって実行されるソフトウェアとの双方もしくは何れか一方として実現されてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態では、既述の論理積演算は、例えば、重み付き積分(総和平均)、相乗平均等のように、実質的な相関処理で代替されてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、既述の処理は、2台のレーダaおよびレーダbによって与えられるレーダ信号Sa、Sbに施されている。
【0057】
しかし、本発明では、このような構成に限定されず、3台以上のレーダによって個別に与えられるレーダ信号に対して既述の処理と同様の処理が施されてもよい。
【0058】
さらに、本実施形態では、既述の閾値thについては、必ずしも一定でなくてもよく、例えば、以下に列記する要件の全てまたは任意の組み合わせを満たす値として設定されてもよい。
【0059】
(1) レーダaおよびレーダbによって放射される送信波の電力およびその電力の地理的な照射密度(空中線系の指向性、利得、スキャン・スイープの有無および速度、適用されるべきレンジに適したパルス幅および送信波の尖頭電力、ならびにその送信波に適用された変調方式およびレーダ方式等に基づいて定まる。)に適応する。
(2) 操作者による指示
【0060】
(3) 覆域に存在する既知の目標(例えば、航路に配置されたブイ)から到来する反射波のレベルを好適な値とする自動制御や手動の操作による設定や指示
(4) レーダaおよびレーダbに設定された運用の形態に適したレーダ方程式に整合し、かつレンジ方向に好適である。
【0061】
(5) 検知されるべき目標の反射源としての特性および分布に適合する。
(6) 受信波(レーダ信号)の瞬時値が尖頭値となる時点として識別されることを目的として、その受信波(レーダ信号)の波形に追従して逐次更新される。
【0062】
また、本発明は、レーダaおよびレーダbの空中線系の何れもがスキャンしていない(主ローブの方向が一定である)場合であっても、同様に適用可能である。
【0063】
さらに、本発明では、マッピングは、既述のPPIスコープに限定されず、共通の指示方式や座標系であるならば、最終的な指示に適用される指示方式と異なってもよい。
【0064】
また、本発明は、VTSに限定されず、複数のレーダによって個別に与えられるレーダ信号に対して既述の処理と同様の処理を施すことにより、偽像の抑圧や大幅な緩和が図られるべき系であれば、同様に適用可能である。
【0065】
さらに、本発明は、複数のレーダは、固定点に設置されていなくてもよく、例えば、大型の船舶の甲板やマストの上に所定の間隔を隔てて設置された場合にも、同様に適用可能である。
【0066】
また、本実施形態では、レーダaおよびレーダbは、パルスレーダ方式のレーダでなくてもよく、例えば、パルス圧縮レーダ方式等の一次レーダ方式のレーダであってもよい。
【0067】
さらに、本実施形態では、追尾の対象となるべき物標の位置を精度よく識別することが要求される場合には、その物標から到来した反射波の瞬時値が尖頭値となる時点(例えば、既述の期間の中点で代替されてもよい。)が既述の期間から識別されてもよい。
【0068】
また、本発明では、既述の期間や時点として検知されるべき物標(またはその物標の重心)の位置は、追尾の目的だけではなく、レーダ信号処理の過程で行われるさまざまな処理の演算対象として求められてもよい。
【0069】
さらに、本発明は、電波を用いたレーダに限定されず、例えば、光や音波等の多様な波動信号の反射波に基づいて所望の物標の測位や測距が行われるべき多様な系に同様に適用可能である。
【0070】
また、本実施形態では、覆域補間部14によって、レーダaやレーダbの不感地帯の補間が行われているが、このような補間は、検知されるべき物標が位置し得る領域にこれらのレーダの不感地帯が無い場合には、行われなくてもよい。
【0071】
さらに、本実施形態では、マッピング部12は、信号変換部11a、11bの後段に配置されているが、レーダ信号Sa、Sbの瞬時値の列が所望の精度でマッピング可能であるならば、
図1に破線で示すように、これらの信号変換部11a、11bの前段に配置されてもよい。
【0072】
また、信号変換部11a、11bによって行われる復調等の処理と、マッピング部12によって行われるマッピングとの双方または何れか一方の過程では、レーダaおよびレーダbの空中線系と同期してこれらの空中線系の指向性に起因して生じるレーダ信号Sa、Sbのレベルの偏差の圧縮が図られてもよい。
【0073】
さらに、本実施形態では、船舶等の物標が位置し得る航路や海域の内、既述の不感地帯に該当せず、かつ偽像が発生し得ない既知の領域については、偽像処理部13によって行われる既述の処理が省略されてもよい。
【0074】
また、本発明では、搭載されるレーダの台数が「3」以上である場合には、偽像の抑圧は、個々のレーダから与えられたレーダ信号の瞬時値、あるいは既述の期間や時点の多数決判定や重み付き積分により実現されてもよい。
【0075】
さらに、本発明が適用された測位系や測距系では、物標が位置し得るレンジが広範であり、あるいはこのような物標の距離が大きい場合には、レーダ信号Sa、Sbの瞬時値のレンジ方向における減少がそのレンジ方向に昇順に大きく重み付けられることによって、各部のダイナミックレンジや演算対象の値域の有効な活用が図られ、性能の向上および安定化が図られてもよい。
【0076】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0077】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「特許請求の範囲」、「課題を解決するための手段」および「発明の効果」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0078】
以下、本願の出願当初における段落0025〜0030の記載を転記し、かつ文言「請求項3」、「請求項4」、「請求項5」をそれぞれ「〔3〕」、「〔4〕」、「〔5〕」と表記する。
〔3〕 〔3〕に記載の発明では、尖頭識別手段は、覆域の少なくとも一部が同じである複数p(「3」以上の奇数)のレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号毎に、瞬時値が尖頭値と見なし得る時点または期間を識別する。マッピング手段は、前記尖頭識別手段によって識別された時点または期間に共通の座標系に対するマッピングを施す。偽像抑圧手段は、前記一部の覆域の内、前記マッピングの下で前記複数pのレーダ信号の半数未満(<(p/2))から個別に得られた時点または期間の共通集合に属する時点または期間を、前記半数未満のレーダ信号以外のレーダ信号の何れかから得る。
すなわち、複数p(「3」以上の奇数)のレーダが共有する覆域の部位に位置する物標は、これらのレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号に外乱や雑音が重畳されている状態であっても、これらのレーダによって個別に得られるレーダ信号の間における多数決判定の下で測位や測距が精度よく達成される。しかも、このような雑音として重畳された偽像の成分は、複数pのレーダが設置されたサイトの間でほぼ無相関であるとの前提の下で排除され、あるいは大幅に抑圧される。
〔4〕 〔4〕に記載の発明では、マッピング手段は、覆域の少なくとも一部が同じである複数p(「3」以上の奇数)のレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号に、共通の座標系に対するマッピングを施す。尖頭識別手段は、前記マッピングの下で前記複数pのレーダ信号毎に、瞬時値が尖頭値と見なし得る時点または期間を識別する。偽像抑圧手段は、前記一部の覆域の内、前記マッピングの下で前記複数pのレーダ信号の半数未満(<(p/2))から個別に得られた時点または期間の共通集合に属する時点または期間を、前記半数未満のレーダ信号以外のレーダ信号の何れかから得る。
すなわち、複数p(「3」以上の奇数)のレーダが共有する覆域の部位に位置する物標は、これらのレーダによって個別に受信された複数pのレーダ信号に外乱や雑音が重畳されている状態であっても、これらのレーダによって個別に得られるレーダ信号の間における多数決判定の下で測位や測距が精度よく達成される。しかも、このような雑音として重畳された偽像の成分は、複数pのレーダが設置されたサイトの間でほぼ無相関であるとの前提の下で排除され、あるいは大幅に抑圧される。
〔5〕 〔5〕に記載の発明では、請求項1、2、〔3〕または〔4〕の何れか1項に記載のレーダ信号処理装置において、補完手段は、前記複数pのレーダ毎に、前記マッピングの下で不感領域が覆域に該当する他のレーダの何れかによって受信されたレーダ信号の瞬時値が尖頭値と見なし得る時点または期間で、前記不感領域を補完する。合成手段は、前記偽像抑圧手段によって得られる共通集合と、前記補完手段によって補完された不感領域とを合成する。
すなわち、複数pのレーダに共通である覆域内に位置する物標の測位または測距は、これらのレーダの個々の不感領域が何れも欠けることなく、かつ偽像が高い確度で残存することなく実現される。
[
6] 請求項2
に記載のレーダ信号処理装置において、
前記マッピング手段は、
前記マッピング過程で、前記複数pのレーダ信号の瞬時値に、前記複数pのレーダに代わる仮想的なレーダ、または前記複数pのレーダの何れか1つに対するレンジ方向におけるレベルの格差が圧縮される重み付けを施す
ことを特徴とするレーダ信号処理装置。
【0079】
このような構成のレーダ信号処理装置では、請求項2
に記載のレーダ信号処理装置において、前記マッピング手段は、前記マッピング過程で、前記複数pのレーダ信号の瞬時値に、前記複数pのレーダに代わる仮想的なレーダ、または前記複数pのレーダの何れか1つに対するレンジ方向におけるレベルの格差が圧縮される重み付けを施す。
【0080】
すなわち、マッピングの対象となる物標が位置し得るレンジが広範であったり、このような物標の距離が長い場合であっても、そのマッピング処理の過程で適用可能な演算対象の値域の有効な活用が図られる。
【0081】
したがって、本発明が適用された測位系や測距系は、性能が高められ、かつ安定に維持される。
【0082】
[
7] 請求項1
に記載のレーダ信号処理装置において、
前記偽像抑圧手段は、
前記複数のレーダ信号によって個別に得られ、かつ前記一部の覆域の内、前記複数pのレーダの何れでも偽像が生じないことが既知である特定の覆域を前記共通集合をとる演算の対象外とする
ことを特徴とするレーダ信号処理装置。
【0083】
このような構成のレーダ信号処理装置では、請求項1
に記載のレーダ信号処理装置において、前記偽像抑圧手段は、前記複数のレーダ信号によって個別に得られ、かつ前記一部の覆域の内、前記複数pのレーダの何れでも偽像が生じないことが既知である特定の覆域を前記共通集合をとる演算の対象外とする。
【0084】
すなわち、上記偽像が生じ得ない特定の覆域に対して施される無用な処理の省略が図られる。
【0085】
したがって、本発明が適用された測距系および測位系では、性能が低下することなく応答性が高められ、かつ消費電力およびコストの削減が図られる。
【0086】
[
8] 請求項1
、2、〔3〕ないし
〔7〕の何れか1項に記載のレーダ信号処理装置において、
前記尖頭識別手段は、
前記複数pのレーダ信号毎に、瞬時値と、前記複数pのレーダにレンジ方向に成立するレーダ方程式で定まる閾値との大小関係として、前記時点または前記期間を識別する
ことを特徴とするレーダ信号処理装置。
【0087】
このような構成のレーダ信号処理装置では、請求項1
、2、〔3〕ないし
〔7〕の何れか1項に記載のレーダ信号処理装置において、前記尖頭識別手段は、前記複数pのレーダ信号毎に、瞬時値と、前記複数pのレーダにレンジ方向に成立するレーダ方程式で定まる閾値との大小関係として、前記時点または前記期間を識別する。
【0088】
すなわち、マッピングの対象となる物標が位置し得るレンジが広範であったり、このような物標の距離が長い場合であっても、そのマッピング処理の過程では、複数pのレーダの特性や性能の下で、適用可能な演算対象の値域の有効な活用が図られる。
【0089】
したがって、本発明が適用された測位系や測距系は、性能が高められ、かつ安定に維持される。
【0090】
[
9] 請求項1
、2、〔3〕ないし
〔7〕の何れか1項に記載のレーダ信号処理装置において、
前記尖頭識別手段は、
前記複数pのレーダ信号毎に、瞬時値と、レンジ方向における波形の包絡線と所定の重みw(0<w<1)との積、または前記包絡線と所定のマージンΔとの差として与えられる閾値との大小関係として、前記時点または前記期間を識別する
ことを特徴とするレーダ信号処理装置。
【0091】
このような構成のレーダ信号処理装置では、請求項1
、2、〔3〕ないし
〔7〕の何れか1項に記載のレーダ信号処理装置において、前記尖頭識別手段は、前記複数pのレーダ信号毎に、瞬時値と、レンジ方向における波形の包絡線と所定の重みw(0<w<1)との積、または前記包絡線と所定のマージンΔとの差として与えられる閾値との大小関係として、前記時点または前記期間を識別する。
【0092】
すなわち、マッピングの対象となる物標が位置し得るレンジが広範であったり、このような物標の距離が長い場合であっても、そのマッピング処理の過程では、複数pのレーダの特性や性能の下で、適用可能な演算対象の値域の有効な活用が図られる。
【0093】
したがって、本発明が適用された測位系や測距系は、性能が高められ、かつ安定に維持される。
【0094】
[
10]
〔8〕または
〔9〕に記載のレーダ信号処理装置において、
前記尖頭識別手段は、
前記複数pのレーダ毎に、送信電力と、検知されるべき目標の反射源として特性もしくは分布と、前記目標が位置し得る領域に対して照射される送信波の密度との全てまたは一部に適した値に、前記閾値を維持する
ことを特徴とするレーダ信号処理装置。
【0095】
このような構成のレーダ信号処理装置では、請求項
〔8〕または
〔9〕に記載のレーダ信号処理装置において、前記尖頭識別手段は、前記複数pのレーダ毎に、送信電力と、検知されるべき目標の反射源として特性もしくは分布と、前記目標が位置し得る領域に対して照射される送信波の密度との全てまたは一部に適した値に、前記閾値を維持する。
【0096】
すなわち、物標が位置し得るレンジが広範であったり、このような物標の距離が長い場合であっても、その物標と複数pのレーダのそれぞれとの間に形成される伝搬路と、その伝搬路を伝搬する信号との実体に即した形態による測位や測距が実現される。
【0097】
したがって、本発明によれば、各部の構成および性能だけではなく、上記複数pのレーダの覆域における地形や地物の分布に適した測位や測距が確度高く安定に実現される。