(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012242
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】複合材料によるX線コリメータ
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20161011BHJP
G21K 1/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
A61B6/03 320K
G21K1/02 M
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-99344(P2012-99344)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2012-228515(P2012-228515A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】13/093,936
(32)【優先日】2011年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・デミイアノヴィッチ,セカンド
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−093332(JP,A)
【文献】
特開2000−308634(JP,A)
【文献】
特開2002−017855(JP,A)
【文献】
特開2009−232955(JP,A)
【文献】
特表2000−504961(JP,A)
【文献】
特開2005−106799(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0069088(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
G21K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機式断層写真法(CT)システムにおいてX線ビームを成形する患者前置コリメータ(50)であって、該患者前置コリメータ(50)のアセンブリは、
第一の材料密度を有する第一の材料で構成された基材(52)と、
該基材(52)に機械的に結合されて、前記第一の材料密度よりも大きく高周波電磁エネルギを遮断するのに十分な第二の材料密度を有する成形可能な材料を含む第二の材料で構成された挿入材(54)と
を備えており、
前記基材(52)は、前記挿入材(54)を当該基材(52)に固着させて成形するための複数の構造的特徴(56、58、60)を含んでおり、前記挿入材(54)の前記成形可能な材料は前記複数の構造的特徴(56、58、60)との接続を形成して、前記基材(52)と当該挿入材(54)とを機械的に結合し、
前記基材(52)の前記複数の構造的特徴(56、58、60)は、
前記基材(52)に形成された複数のアンダーカット(56)と、
前記基材(52)を通して形成されており、座ぐり穴(60)を形成されて有する複数の孔(58)と
を含んでいる、患者前置コリメータ(50)。
【請求項2】
前記挿入材(54)は、
前記基材(52)に形成された前記アンダーカット(56)と嵌合するように構成されている突起(68)を各対向辺に有する面(66)と、
該面(66)から外向きに延在し、前記基材(52)を通して形成された前記孔(58)を通って延在するように構成されている複数のアンカ(70)と
を含んでいる、請求項1に記載の患者前置コリメータ(50)。
【請求項3】
前記複数のアンカ(70)の各々が、前記面(66)に対して末梢側の当該アンカ(70)の端部に配置された円形フランジ(74)をさらに含んでおり、各々の円形フランジ(74)が前記基材(52)のそれぞれの座ぐり穴(60)に嵌合するように構成されている、請求項2に記載の患者前置コリメータ(50)。
【請求項4】
計算機式断層写真法(CT)システムにおいてX線ビームを成形する患者前置コリメータ(50)であって、該患者前置コリメータ(50)のアセンブリは、
第一の材料密度を有する第一の材料で構成された基材(52)と、
該基材(52)に機械的に結合されて、前記第一の材料密度よりも大きく高周波電磁エネルギを遮断するのに十分な第二の材料密度を有する成形可能な材料を含む第二の材料で構成された挿入材(54)と
を備えており、
前記基材(52)は、前記挿入材(54)を当該基材(52)に固着させて成形するための複数の構造的特徴(56、58、60)を含んでおり、前記挿入材(54)の前記成形可能な材料は前記複数の構造的特徴(56、58、60)との接続を形成して、前記基材(52)と当該挿入材(54)とを機械的に結合し、
前記基材(52)及び前記挿入材(54)は一つのコリメータ・ブレード(51)を形成し、当該患者前置コリメータ(50)は、開口(53)を介設させて有する一対のコリメータ・ブレード(51)を含んでいる、患者前置コリメータ(50)。
【請求項5】
前記コリメータ・ブレード(51)の少なくとも一方の位置が調節自在であるため、前記開口(53)の寸法及び形状が、高周波電磁エネルギ・ビームが通過するのに伴って該高周波電磁エネルギ・ビームを成形するように可変となる、請求項4に記載の患者前置コリメータ(50)。
【請求項6】
前記第一の材料はアルミニウム及び/又は鋼の一方を含んでいる、請求項1に記載の患者前置コリメータ(50)。
【請求項7】
前記第二の材料はタングステンを含浸させたプラスチックを含んでいる、請求項1に記載の患者前置コリメータ(50)。
【請求項8】
計算機式断層写真法(CT)システムにおいてX線ビームを成形する患者前置コリメータ(50)であって、該患者前置コリメータ(50)のアセンブリは、
第一の材料密度を有する第一の材料で構成された基材(52)と、
該基材(52)に機械的に結合されて、前記第一の材料密度よりも大きく高周波電磁エネルギを遮断するのに十分な第二の材料密度を有する成形可能な材料を含む第二の材料で構成された挿入材(54)と
を備えており、
前記基材(52)は、前記挿入材(54)を当該基材(52)に固着させて成形するための複数の構造的特徴(56、58、60)を含んでおり、前記挿入材(54)の前記成形可能な材料は前記複数の構造的特徴(56、58、60)との接続を形成して、前記基材(52)と当該挿入材(54)とを機械的に結合し、
前記挿入材(54)を前記基材(52)に機械的に結合するための接着剤又は締結具を含まない、患者前置コリメータ(50)。
【請求項9】
前記挿入材(54)は、被覆成形された挿入材及び射出成形された挿入材の一方を含んでいる、請求項1に記載の患者前置コリメータ(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は一般的には、計算機式断層写真法(CT)イメージングに関し、さらに具体的には、CTイメージング・システムの一部として用いられる複合材料による患者前置X線コリメータ(プリ・ペイシェント・コリメータ)及び複合材料による患者前置X線コリメータを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムでは、X線源が患者又は手荷物のような被検体又は物体へ向けてファン(扇形)形状のビームを放出する。以下では、「被検体」及び「対象」「物体」等の用語は、撮像されることが可能な任意の物体を含むものとする。ビームは被検体によって減弱された後に放射線検出器のアレイに入射する。検出器アレイにおいて受光される減弱後のビーム放射線の強度は典型的には、被検体によるX線ビームの減弱量に依存する。検出器アレイ内の各々の検出器素子が、各々の検出器素子によって受光される減弱後のビームを示す別個の電気信号を発生する。電気信号はデータ処理システムへ伝送されて解析され、ここから最終的に画像を形成する。
【0003】
動作時には、X線源及び検出器アレイは、撮像平面内で被検体を中心としてガントリの周りで回転する。X線源は典型的には、焦点においてX線を放出するX線管の形態にあり、X線は発散型の線形経路に沿ってX線ビームとして放出される。X線ビームの断面を成形し、成形ビームを患者を通して検出器アレイへ向けて照射するために、患者前置コリメータが用いられる。検出器アレイは典型的には、X線ビームをコリメートするコリメータと、コリメータに隣接して設けられてX線を光エネルギへ変換するシンチレータと、隣接するシンチレータから光エネルギを受け取ってここから電気信号を発生するフォトダイオードとを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6556657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CTイメージング・システムでは、X線ビームを成形するのに用いられる患者前置コリメータは従来、モノリシックなタングステン片を機械加工することにより構築されている。タングステンから患者前置コリメータを形成することは、材料の放射線遮断能力及び構造特性のため適当であった。しかしながら、タングステンは高価な材料であり機械加工が困難であることが認められている。加えて、患者撮影範囲の拡大、回転速度の高速化、及びボア寸法の大径化を具現化した新式のCTイメージング・システムでは、タングステンから形成される患者前置コリメータは望ましいとは言えなくなっている。すなわち、かかる新式のCTイメージング・システムでは、回転中心からの半径が増大し、ガントリの構成要素の回転速度が高速化し、また撮影範囲の広いシステムではビームを遮断するのに必要な患者前置コリメータの寸法が大きくなるため、患者前置コリメータに加わる求心加速度(すなわちG負荷)が著しく増大する。患者前置コリメータに加わる重量及び力は、CTイメージング・システムの動的均衡、及びコリメータの移動し易さに影響するため、問題となる。
【0006】
また、鉛も、材料密度と関連して理想的な放射線遮断能力を呈するので患者前置コリメータを構築する材料候補として認められている。残念ながら、タングステン患者前置コリメータの利用と同様に、鉛が高密度であるということは、鉛で構築された患者前置コリメータが新式のCTイメージング・システムではG負荷に影響されることを意味する。加えて、鉛は、過度に軟質であるためモノリシック材料として有用でなく、また「有害物質の使用制限指令」(RoHS)に適合しないことが認められている。
【0007】
従って、高密度材料の遮断力を低密度基材材料の構造支持性と組み合わせ、従って、堅牢性、放射線遮断能力、及びRoHS適合性を保存しつつコリメータの重量及び費用を節減した患者前置コリメータを設計することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、CTイメージング・システムの一部として用いられる複合材料による患者前置X線コリメータを提供する方法及び装置に関するものである。
【0009】
本発明の一つの観点によれば、計算機式断層写真法(CT)システムにおいてX線ビームを成形する患者前置コリメータが、第一の材料密度を有する第一の材料で構成された基材と、この基材に機械的に結合されて、第一の材料密度よりも大きく高周波電磁エネルギを遮断するのに十分な第二の材料密度を有する成形可能な材料を含む第二の材料で構成された挿入材とを含んでいる。基材は、挿入材を基材に固着させて成形するための複数の構造的特徴を含んでおり、挿入材の成形可能な材料はこれら複数の構造的特徴との接続を形成して、基材と挿入材とを機械的に結合する。
【0010】
本発明のもう一つの観点によれば、計算機式断層写真法(CT)システムに用いられる患者前置コリメータを製造する方法が、複数の幾何学的特徴を有するように、第一の材料から基材を形成するステップと、第一の材料の材料密度よりも大きく高周波電磁エネルギを遮断するのに十分な材料密度を有する材料を含む第二の材料を、挿入材を形成するように基材に固着させて成形するステップとを含んでいる。第二の材料は基材に固着させて射出成形されて、当該第二の材料が複数の幾何学的特徴との機械的結着を形成して、基材に挿入材を固定するようにする。
【0011】
本発明のさらにもう一つの観点によれば、計算機式断層写真法(CT)システムが、走査対象を収容する開口を有する回転式ガントリと、対象へ向けて高周波電磁エネルギ・ビームを投射するように構成されている高周波電磁エネルギ投射線源と、高周波電磁エネルギ投射線源と対象との間に配置されて、高周波電磁エネルギ・ビームを形成するように構成されたコリメータであって、一対のブレードを含むコリメータとを含んでいる。CTシステムはまた、対象を通過した高周波電磁エネルギを検出して、検出された高周波数電磁エネルギに応答して検出器出力を発生するように構成されている検出器アレイと、検出器アレイに接続されて、検出器出力を受け取るように構成されているデータ取得システム(DAS)と、DASに接続されて、DASによって受け取られた検出器出力から対象の画像を再構成するように構成されている画像再構成器とを含んでいる。コリメータに関して述べると、コリメータの各々のブレードはさらに、第一の材料で形成されて、複数の幾何学的特徴を形成されて含んでいる金属基材と、基材に機械的に結合されて、第一の材料の材料密度よりも大きい材料密度を有する放射線遮断材料で形成された挿入材とを含んでおり、挿入材は複数の幾何学的特徴を介して金属基材に機械的に結合されて、ブレードが金属基材及び挿入材を結合するための接着剤及び締結具を含まないようにする。
【0012】
他の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本発明を実施するために現状で思量される好適な実施形態を示す。
【
図1】CTイメージング・システムの見取り図である。
【
図2】
図1に示すシステムのブロック概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による
図1及び
図2のCTイメージング・システムに用いられる患者前置コリメータ・アセンブリの遠近展開図である。
【
図4】本発明の一実施形態による
図3の患者前置コリメータ・アセンブリの基材の遠近図である。
【
図5】本発明の一実施形態による
図3の患者前置コリメータ・アセンブリの挿入材の遠近図である。
【
図6】非侵襲型小包検査システムと共に用いられる患者前置コリメータ・アセンブリを組み入れたCTシステムの見取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の動作環境を64スライス型計算機式断層写真法(CT)システムに関連して説明する。但し、当業者には、本発明が他のマルチ・スライス型構成での利用にも同等に適用可能であることが認められよう。また、本発明をX線の検出及び変換に関連して説明する。但し、当業者はさらに、本発明が他の高周波電磁エネルギの検出及び変換にも同等に適用可能であることを認められよう。本発明を「第三世代」CTスキャナに関連して説明するが、本発明は他のCTシステムでも同等に適用可能である。
【0015】
図1には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム10が、「第三世代」CTスキャナに典型的なガントリ12を含むものとして示されている。ガントリ12はX線源14を有し、X線源14は、ガントリ12の反対側に位置する検出器アセンブリ又はコリメータ18へ向けてX線のビームを投射する。
図2を参照すると、検出器アセンブリ18は、複数の検出器20及びデータ取得システム(DAS)32によって形成されている。複数の検出器20は、患者22を透過する投射X線16を感知し、DAS32は後続の処理のためにデータをディジタル信号へ変換する。各々の検出器20が、入射X線ビームの強度を表わし従って患者22を透過した減弱後のビームを表わすアナログ電気信号を発生する。X線投影データを取得するための1回の走査の間に、ガントリ12及びガントリ12に装着されている構成部品は回転中心24の周りを回転する。
【0016】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26によって制御される。制御機構26は、X線制御器28とガントリ・モータ制御器30とを含んでおり、X線制御器28はX線源14に電力信号及びタイミング信号を供給し、ガントリ・モータ制御器30はガントリ12の回転速度及び位置を制御する。画像再構成器34が、標本化されてディジタル化されたX線データをDAS32から受け取って高速再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ36への入力として印加され、コンピュータ36は大容量記憶装置38に画像を記憶させる。
【0017】
コンピュータ36はまた、キーボード、マウス、音声作動式コントローラ、又は他の任意の適当な入力装置のような何らかの形態の操作者インタフェイスを有するコンソール40を介して、操作者から命令及び走査用パラメータを受け取る。付設されている表示器42によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ36からの他データを観察することができる。操作者が供給した命令及びパラメータはコンピュータ36によって用いられて、DAS32、X線制御器28及びガントリ・モータ制御器30に制御信号及び情報を供給する。加えて、コンピュータ36は、電動テーブル46を制御するテーブル・モータ制御器44を動作させて、患者22及びガントリ12を位置決めする。具体的には、テーブル46は患者22を
図1のガントリ開口48を通して全体として又は部分的に移動させる。
【0018】
図2に示すように、CTシステム10はまた、ガントリ12に装着されてX線源14の近傍に配置された患者前置コリメータ50を含んでいる。コリメータ50は、X線ビーム16の断面を成形して、例えば矩形のような検出器アレイ18の形状に一致する形状にするように構築されている。このようにして、コリメータ50は、走査されている患者が不必要なX線量を被曝しない事を保証する。
【0019】
図3には、本発明の一実施形態によるコリメータ50の展開図が掲げられている。
図3に示すように、コリメータ50は、X線ビーム16(
図2)を通過させるために間に形成されている開口53の寸法を変化させるように互いに対して調節自在である一対のブレード51で形成されている。このようにして、開口53の寸法/形状を変化させるとX線ビーム16の断面が決まり、検出器アレイ18の形状に一致させる等のような所望の寸法/形状へのビームの制御及び修正を可能にする。
【0020】
図3に示すように、各々のブレード51はさらに、基材52と、該基材52に取り付けられた挿入材54とで形成されている。本発明の各実施形態によれば、基材52及び挿入材54が相異なる材料で構築されるので、コリメータ50の各々のブレード51が複合型の構成要素として形成される。さらに明確に述べると、基材52及び挿入材54は、相異なる密度を有する材料で形成される。各々のブレード51が低密度構造材料及び高密度放射線遮断材料から形成されて、得られる複合型の部材がコリメータ50の全体の重量及び費用を最小化しつつ放射線を選択的に遮断するように作用することを達成している。
【0021】
コリメータ50の各々のブレード51の基材52は、コリメータ50の全体重量及び費用を低減するように設計されつつ、コリメータ50に対する構造支持を提供してCTシステム10(
図1)のガントリ12への固定を考慮して構築される。このようなものとして、基材52は、コリメータ50に無駄な重量及び費用を加えずにコリメータ50の堅牢性を保存する能力に基づいて選択される低密度構造材料で構成される。本書で用いられる「低密度構造材料」との用語は、高周波電磁エネルギ(例えばX線放射線)が通過するのを遮断するのに十分でない密度を有する材料を指す。従って、本発明の各実施形態によれば、基材52は、アルミニウム、鋼、又は所望の構造特性を有するように機械加工され得る他の同様に許容可能な材料で形成され得る。このことについては後にあらためて詳述する。
【0022】
コリメータ50の挿入材54は、コリメータ50の内部で放射線遮断を提供するように構築される。このようなものとして、挿入材54は高密度放射線遮断材料で構成される。本書で用いられる「高密度放射線遮断材料」との用語は、高周波電磁エネルギ(例えばX線放射線)が通過するのを遮断するのに十分な密度を有する材料を指す。従って、本発明の各実施形態によれば、挿入材54は部分的には、タングステン、又は例えばX線源14(
図1)から放出されるX線のビーム16を遮断して成形するように作用する他の同様に許容可能な材料で形成され得る。実施形態の一例によれば、挿入材54は、タングステンを含浸させたプラスチックのような成形可能な高密度放射線遮断材料で形成されて、挿入材54が機械的結着を介して基材52に固定され得るようにする。このことについては後にあらためて詳述する。
【0023】
本発明の各実施形態によれば、コリメータ50の複合材料ブレード51は、基材52が接着剤又は機械的締結具(例えばボルト及びねじ等)を用いずに挿入材54に機械的に結着されるように構築される。実施形態の一例によれば、挿入材54は、機械的な被覆成形(over-molding)又は射出成形等を介して基材52に固着させて成形される成形可能な材料(例えばタングステンを含浸させたプラスチック)で形成され、分離不能のブレード51をコリメータ50に形成する。基材52と挿入材54との機械的結着を容易にするために、基材52は、挿入材54の固着成形時に基材52に挿入材54を「ロック」する複数の幾何学的特徴又は構造的特徴を設けて含むように構築される。
【0024】
図4には、本発明の実施形態の一例による基材52の詳細図が示されている。
図4に示すように、基材52は、挿入材54が機械的な被覆成形又は射出成形の工程を介して施工/形成されるときに挿入材54の嵌合を提供する複数の幾何学的/構造的特徴56、58、60を設けて含んでいる。基材52は、挿入材54を受け入れる一連のアンダーカット56を含んでおり、アンダーカット56は例えば挿入材配置域62の各対向辺に形成されている。基材52はまた、挿入材配置域62に隔設された一連の孔58を含んでおり、孔58は、挿入材54が配置される面の裏側の基材52の出口表面64に座ぐり穴60を有している。実施形態の一例では、アンダーカット56、及び座ぐり穴60付き孔58は、アルミニウム/鋼材料の標準的な機械加工手順等による機械加工操作を介して基材52に形成される。もう一つの実施形態によれば、成形工程において挿入材の高密度放射線遮断材料を導入するためのゲートとなる切り欠き65が、基材の背面に切り込まれる。
【0025】
図5には、本発明の実施形態の一例による挿入材54の詳細図が示されている。
図5に示すように、挿入材54は、基材52の挿入材配置域62に全体的に形成された主面66を含んでいる。実施形態の一例によれば、面66は曲面として形成されて、非対称のX線ビームを受け入れて、面の曲率半径に基づいてX線源14(
図1)からの配置を最適化し、十分なX線ビーム遮断を提供する。代替的には、面66はまた、本発明のもう一つの実施形態に従って平坦な(すなわち彎曲していない)面として形成されてもよいことが認められる。挿入材54には、面66の両端に形成されたリップ又は突起68が含まれており、リップ/突起68は、基材52(
図4)に形成されたアンダーカット56と嵌合するように形成されている。また、挿入材54には、面66の背面72から外へ、基材52に形成された孔58を通って下降して延在する一連のアンカ70が含まれている。面66に対して末梢側のアンカ70の端部には、アンカ70を基材52にロックするように孔58の座ぐり穴60に嵌合する円形フランジ74が形成されている。上に示したように、挿入材54は、機械的な被覆成形又は射出成形の工程を介して形成されているため、面66のリップ/突起68及びアンカ70が、基材52の幾何学的特徴56、58、60すなわち基材52の表面/内部に形成されたアンダーカット56及び座ぐり穴60付き孔58とのロック型の機械的結着を形成する。
【0026】
このように、本発明の一実施形態によれば、コリメータ50の各々のブレード51は、例えばアルミニウム片又は鋼片から基材52を先ず形成することにより製造されることができ、アルミニウム/鋼は、複数の幾何学的特徴を形成して有する基材を形成するように機械加工される。上述のように、幾何学的特徴は、内部に形成された一連のアンダーカット56及び座ぐり穴60付き孔58の形態にあってよい。基材52の機械加工時に、挿入材54は被覆成形又は射出成形の工程を介して基材に固着させて成形される。基材52への挿入材54の固着成形時に、挿入材に基材のアンダーカット56と嵌合する多数の突起68が形成される。加えて、挿入材54に基材52の孔58及び座ぐり穴60と嵌合する多数のアンカ70が形成される。挿入材54の基材52への固着成形によって、接着剤及び/又は締結具を一切必要とせずに基材に挿入材を固定する機械的結着が間に形成される。
【0027】
図6には、本発明の一実施形態による小包/手荷物検査システム100が示されており、小包/手荷物検査システム100は、
図3に示すような患者前置コリメータ50を組み入れている。
図6に示すように、小包/手荷物検査システム100は、小包又は手荷物を通過させ得る開口104を内部に有する回転式ガントリ102を含んでいる。回転式ガントリ102は、高周波電磁エネルギ源106と、
図6又は
図7に示すものと同様のシンチレータ・セルで構成されたシンチレータ・アレイを有する検出器アセンブリ108とを収容している。また、コンベヤ・システム110が設けられており、コンベヤ・システム110は、構造114によって支持されて走査のために小包又は手荷物116を自動的に且つ連続的に開口104に通すコンベヤ・ベルト112を含んでいる。物体116をコンベヤ・ベルト112によって開口104に送り込み、次いで撮像データを取得し、コンベヤ・ベルト112によって開口104から小包116を除去することを、制御された連続的な態様で行なう。結果として、郵便物検査官、手荷物積み降ろし員及び他の警備人員が、爆発物、刃物、銃及び密輸品等について小包116の内容を非侵襲的に検査することができる。
【0028】
有利なこととして、複合材料による患者前置コリメータ50は、放射線遮断能力、剛性、及び重量について最適化され得る。コリメータの重量を減少させると、コリメータが軽量化するためCTシステムのモータ及び軸受けに対する要求が小さくなる。加えて、複合材料による患者前置コリメータ・ブレードの構造、及びこれにより提供される機械的結着/ロックのため、別個の締結具又は接着剤を用いる必要が一切なくなり、これにより、かかる締結具の利用によって生成され得るあらゆる漏洩点も解消する。加えて、遮断材料挿入材の基材への固着成形は幾何学的構成及び応用の融通性を考慮しており、成形後の挿入材の形状に近い正味形状を提供することにより廃棄物及び費用を低減するので、得られる挿入材が、例えば接着剤を用いるものよりも環境配慮型となる。さらに、複合材料による患者前置コリメータの構造は、純タングステンのコリメータ・アセンブリを機械加工するよりも容易で安価なアセンブリの機械加工を可能にする。
【0029】
従って、本発明の一実施形態によれば、計算機式断層写真法(CT)システムにおいてX線ビームを成形する患者前置コリメータが、第一の材料密度を有する第一の材料で構成された基材と、この基材に機械的に結合されて、第一の材料密度よりも大きく高周波電磁エネルギを遮断するのに十分な第二の材料密度を有する成形可能な材料を含む第二の材料で構成された挿入材とを含んでいる。基材は、挿入材を基材に固着させて成形するための複数の構造的特徴を含んでおり、挿入材の成形可能な材料はこれら複数の構造的特徴との接続を形成して、基材と挿入材とを機械的に結合する。
【0030】
本発明のもう一つの実施形態によれば、計算機式断層写真法(CT)システムに用いられる患者前置コリメータを製造する方法が、複数の幾何学的特徴を有するように、第一の材料から基材を形成するステップと、第一の材料の材料密度よりも大きく高周波電磁エネルギを遮断するのに十分な材料密度を有する材料を含む第二の材料を、挿入材を形成するように基材に固着させて成形するステップとを含んでいる。第二の材料は基材に固着させて射出成形されて、当該第二の材料が複数の幾何学的特徴との機械的結着を形成して、基材に挿入材を固定するようにする。
【0031】
本発明のさらにもう一つの実施形態によれば、計算機式断層写真法(CT)システムが、走査対象を収容する開口を有する回転式ガントリと、対象へ向けて高周波電磁エネルギ・ビームを投射するように構成されている高周波電磁エネルギ投射線源と、高周波電磁エネルギ投射線源と対象との間に配置されて、高周波電磁エネルギ・ビームを形成するように構成されたコリメータであって、一対のブレードを含むコリメータとを含んでいる。CTシステムはまた、対象を通過した高周波電磁エネルギを検出して、検出された高周波数電磁エネルギに応答して検出器出力を発生するように構成されている検出器アレイと、検出器アレイに接続されて、検出器出力を受け取るように構成されているデータ取得システム(DAS)と、DASに接続されて、DASによって受け取られた検出器出力から対象の画像を再構成するように構成されている画像再構成器とを含んでいる。コリメータに関して述べると、コリメータの各々のブレードはさらに、第一の材料で形成されて、複数の幾何学的特徴を形成されて含んでいる金属基材と、基材に機械的に結合されて、第一の材料の材料密度よりも大きい材料密度を有する放射線遮断材料で形成された挿入材とを含んでおり、挿入材は複数の幾何学的特徴を介して金属基材に機械的に結合されて、ブレードが金属基材及び挿入材を結合するための接着剤及び締結具を含まないようにする。
【0032】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0033】
10:計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム
12:ガントリ
14:X線源
16:X線ビーム
18:検出器アセンブリ又はコリメータ
20:検出器
22:患者
24:回転中心
26:制御機構
28:X線制御器
30:ガントリ・モータ制御器
32:データ取得システム(DAS)
34:画像再構成器
36:コンピュータ
38:大容量記憶装置
40:コンソール
42:表示器
44:テーブル・モータ制御器
46:電動テーブル
48:ガントリ開口
50:患者前置コリメータ
51:ブレード
52:基材
53:開口
54:挿入材
56:アンダーカット
58:孔
60:座ぐり穴
62:挿入材配置域
64:出口表面
65:切り欠き
66:主面
68:リップ又は突起
70:アンカ
72:背面
74:円形フランジ
100:小包/手荷物検査システム
102:回転式ガントリ
104:開口
106:高周波電磁エネルギ源
108:検出器アセンブリ
110:コンベヤ・システム
112:コンベヤ・ベルト
114:構造
116:小包又は手荷物