特許第6012264号(P6012264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012264
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】栽培室用空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20161011BHJP
   A01G 9/26 20060101ALI20161011BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F24F11/02 Z
   F24F11/02 102N
   A01G9/26 B
   A01G9/24 G
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-126479(P2012-126479)
(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公開番号】特開2013-250028(P2013-250028A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊能 利郎
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−117707(JP,A)
【文献】 特開平11−275983(JP,A)
【文献】 特開平03−228625(JP,A)
【文献】 特開平06−105623(JP,A)
【文献】 特開2011−223892(JP,A)
【文献】 特開2001−231376(JP,A)
【文献】 特開2005−034043(JP,A)
【文献】 特開平10−258737(JP,A)
【文献】 米国特許第06705043(US,B1)
【文献】 米国特許第04507929(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
A01G 9/24
A01G 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の栽培室(1)内の空調を行う栽培室用空調システムであって、
冷凍サイクルを行う冷媒回路を有し、使用温度範囲が上記栽培室(1)内の植物の生育温度に対応した範囲である中温度帯用空調機(30)と、
冷凍サイクルを行う冷媒回路を有し、使用温度範囲の下限値が上記中温度帯用空調機(30)の使用温度範囲の下限値よりも高い高温度帯用空調機(20)と、
上記高温度帯用空調機(20)のみを運転させる第1運転モードと、上記高温度帯用空調機(20)及び上記中温度帯用空調機(30)の両方を運転させる第2運転モードとを切り換えて実行して上記栽培室(1)内の空気温度を設定温度まで低下させる冷房運転を行う運転制御部(51)とを備えている
ことを特徴とする栽培室用空調システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記運転制御部(51)は、上記第1運転モードを上記第2運転モードに優先して実行し、上記第1運転モードでは上記栽培室(1)内の空気温度が設定温度まで低下しない場合に、上記第1運転モードから上記第2運転モードに切り換えるように構成されている
ことを特徴とする栽培室用空調システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気を混合させる混合機構(40)と、
上記混合機構(40)で混合された空気を上記栽培室(1)内に吹き出す吹出口(12)とを備えている
ことを特徴とする栽培室用空調システム。
【請求項4】
請求項3において、
上記混合機構(40)及び上記吹出口(12)は、複数ずつ設けられ、
上記各混合機構(40)は、上記高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気の混合比率を調節する調節機構(42,43)を備えている
ことを特徴とする栽培室用空調システム。
【請求項5】
請求項4において、
上記各吹出口(12)は、他のいずれかの吹出口(12)と上記栽培室(1)内に設けられた栽培用植物を挟んで水平方向に対向するように設けられている
ことを特徴とする栽培室用空調システム。
【請求項6】
請求項4において、
上記複数の吹出口(12)は、上下方向に分散して配置されている
ことを特徴とする栽培室用空調システム。
【請求項7】
請求項4において、
上記複数の吹出口(12)は、水平方向に分散して配置されている
ことを特徴とする栽培室用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場の栽培室内の空調を行う栽培室用空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物工場では、栽培室内に、照明器具と空調機とを用いて人工的に昼と夜との環境を作り出すと共に、昼の長さ(明期)と夜の長さ(暗期)とを調節して、植物毎に異なる適切な生育環境を作り出している(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、明期と暗期とでは、空調機における設定温度が大きく異なる。例えば、明期は設定温度が23℃〜25℃に設定され、暗期は設定温度が15℃〜18℃に設定される。明期の設定温度は、住宅やオフィス等の居室の空調に用いられる一般空調機の使用温度範囲(例えば、20℃〜30℃)内のものであるが、暗期の設定温度は、一般空調機の使用温度範囲よりも低いため、一般空調機では対応できない。そのため、栽培室内において明期と暗期とを作り出すためには、一般空調機の使用温度範囲よりも低い温度を下限値とする栽培室内の植物の生育温度に対応した使用温度範囲(例えば、10℃〜30℃)の中温度帯用の空調機を用いる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、中温度帯用の空調機は、一般空調機に比べて供給する空気の温度が低い。そのため、上述のように中温度帯用の空調機を用いて栽培室内の冷房運転を行うこととすると、冷媒回路における冷媒の蒸発温度が一般空調機よりも低くなるため、効率が悪く、ランニングコストが高くなっていた。また、明期には、照明器具が放出する熱によって冷房負荷が大きくなり、低い蒸発温度の中での運転が継続されることによって栽培室内の湿度が低下し、植物に生育障害を与えることにもつながった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、栽培室用空調システムにおいて、ランニングコストを低減すると共に湿度低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、植物の栽培室(1)内の空調を行う栽培室用空調システムであって、冷凍サイクルを行う冷媒回路を有し、使用温度範囲が上記栽培室(1)内の植物の生育温度に対応した範囲である中温度帯用空調機(30)と、冷凍サイクルを行う冷媒回路を有し、使用温度範囲の下限値が上記中温度帯用空調機(30)の使用温度範囲の下限値よりも高い高温度帯用空調機(20)と、上記高温度帯用空調機(20)のみを運転させる第1運転モードと、上記高温度帯用空調機(20)及び上記中温度帯用空調機(30)の両方を運転させる第2運転モードとを切り換えて実行して上記栽培室(1)内の空気温度を設定温度まで低下させる冷房運転を行う運転制御部(51)とを備えている。
【0008】
第1の発明では、高温度帯用空調機(20)のみを運転させる第1運転モードと、高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の両方を運転させる第2運転モードとを切り換えて実行して冷房運転が行われる。つまり、冷房運転では、常に高温度帯用空調機(20)が用いられる。ここで、使用温度範囲の下限値の高い高温度帯用空調機(20)は、中温度帯用空調機(30)に比べて室内熱交換器を大きく形成して、冷房運転を行う際に、高温度帯用空調機(20)の冷媒回路における冷媒の蒸発温度が、中温度帯用空調機(30)の冷媒回路における冷媒の蒸発温度よりも高くなるようにしてある。つまり、蒸発温度の高い高温度帯用空調機(20)を必ず用いて冷房運転が行える。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記運転制御部(51)は、上記第1運転モードを上記第2運転モードに優先して実行し、上記第1運転モードでは上記栽培室(1)内の空気温度が設定温度まで低下しない場合に、上記第1運転モードから上記第2運転モードに切り換えるように構成されている。
【0010】
第2の発明では、まず、第1運転モードが実行され、蒸発温度の高い高温度帯用空調機(20)によって栽培室(1)内の空気温度を可能な限り低下させても設定温度に至らない場合に、蒸発温度の低い中温度帯用空調機(30)の運転が開始されて第2運転モードが実行される。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気を混合させる混合機構(40)と、上記混合機構(40)で混合された空気を上記栽培室(1)内に吹き出す吹出口(12)とを備えている。
【0012】
第3の発明では、温度の異なる高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気が、混合機構(40)において混合された後、吹出口(12)から栽培室(1)内に吹き出される。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、上記混合機構(40)及び上記吹出口(12)は、複数ずつ設けられ、上記各混合機構(40)は、上記高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気の混合比率を調節する調節機構(42,43)を備えている。
【0014】
第4の発明では、複数の混合機構(40)において高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気が混合されると共に、調節機構(42,43)によって吹き出し空気の混合比率が調節された後、対応する吹出口(12)からそれぞれ栽培室(1)内へ吹き出される。
【0015】
第5の発明は、第4の発明において、上記各吹出口(12)は、他のいずれかの吹出口(12)と上記栽培室(1)内に設けられた栽培用植物を挟んで水平方向に対向するように設けられている。
【0016】
第5の発明では、栽培用植物を挟んで水平方向の一方側と他方側とから調和空気が吹き出される。
【0017】
第6の発明は、第4の発明において、上記複数の吹出口(12)は、上下方向に分散して配置されている。
【0018】
第6の発明では、上下方向に分散して配置された複数の吹出口(12)から調和空気が吹き出される。つまり、調和空気の流れが栽培室(1)内に上下方向に分散して形成される。
【0019】
第7の発明は、第4の発明において、上記複数の吹出口(12)は、水平方向に分散して配置されている。
【0020】
第7の発明では、水平方向に分散して配置された複数の吹出口(12)から調和空気が吹き出される。つまり、調和空気の流れが栽培室(1)内に水平方向に分散して形成される。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、蒸発温度の高い高温度帯用空調機(20)を必ず用いて冷房運転を行うこととした。そのため、蒸発温度の低い中温度帯用空調機(30)のみを用いる場合に比べて、空調システム全体としての効率を向上させることができる。また、中温度帯用空調機(30)のみを用いる場合に比べて、蒸発温度が低いために空気を除湿するおそれの高い中温度帯用空調機(30)における熱処理量を減少させることができる。従って、栽培室(1)内の湿度低下を抑制することができる。
【0022】
また、第2の発明によれば、蒸発温度の高い高温度帯用空調機(20)によって栽培室(1)内の空気温度を可能な限り低下させても設定温度に至らない場合に、中温度帯用空調機(30)の運転を開始することとした。これにより、効率の高い高温度帯用空調機(20)を最大限に用いて冷房運転を行うことができる。従って、空調システムの効率を最大限に向上させることができる。また、栽培室(1)内の空気を除湿するおそれの高い中温度帯用空調機(30)の使用を最小限に止めることができるため、栽培室(1)内の湿度低下をより抑制することができる。
【0023】
また、第3の発明によれば、温度の異なる高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気を混合して栽培室(1)内に吹き出すこととした。そのため、温度の異なる2つの空調機(20,30)の吹き出し空気が別々の場所から吹き出される場合に比べて、栽培室(1)内における温度斑を生じ難くすることができる。
【0024】
また、第4の発明によれば、混合機構(40)及び吹出口(12)を複数ずつ設け、各混合機構(40)に高温度帯用空調機(20)及び中温度帯用空調機(30)の吹き出し空気の混合比率を調節する調節機構(42,43)を設けることとした。そのため、各混合機構(40)において調節機構(42,43)によって吹き出し空気の混合比率を調節することにより、各吹出口(12)から吹き出される空気の温度を変更することができる。従って、栽培室(1)内の温度分布に応じて各吹出口(12)から吹き出される空気の温度を変更することが可能となるため、栽培室(1)内の各部における空気温度の均一化を図ることができる。
【0025】
また、第5の発明によれば、栽培用植物を挟んで水平方向の一方側と他方側とから調和空気を対向するように吹き出すことにより、栽培室(1)内の水平方向に関する空気温度の均一化を図ることができる。
【0026】
また、第6の発明によれば、複数の吹出口(12)を上下方向に分散して配置することとしたため、栽培室(1)内の上下方向に関する空気温度の均一化を図ることができる。
【0027】
また、第7の発明によれば、複数の吹出口(12)を水平方向に分散して配置することとしたため、栽培室(1)内の水平方向に関する空気温度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施形態に係る栽培室用空調システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る栽培室用空調システムの各室内吹出口からの吹き出し方向を示す平面図である。
図3図3は、実施形態に係る栽培室用空調システムの冷房運転の際における室内温度と運転モードとの相関を示すブロック図である。
図4図4は、その他の実施形態に係る栽培室用空調システムの冷房運転の際における室内温度と運転モードとの相関を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、栽培室用空調システム(10)(以下、単に空調システム(10)という。)は、植物工場等の栽培室(1)内の空調を行うものである。本実施形態では、栽培室(1)には、植物の栽培棚(2)が複数設置され、各栽培棚(2)の上方に照明器具(3)が設けられている。そして、栽培室(1)では、照明器具(3)を点灯、消灯させることによって人工的に昼と夜との環境を作り出すと共に、栽培棚(2)の植物に応じた生育環境となるように昼の長さ(明期)と夜の長さ(暗期)とが調節される。なお、本実施形態では、一例として、栽培室(1)内の植物の生育温度が、明期は25℃であり、暗期は15℃である場合について説明する。
【0031】
図1に示すように、空調システム(10)は、室内吸込口(11)と、室内吹出口(12)と、第1空調機(高温度帯用空調機)(20)と、第2空調機(中温度帯用空調機)(30)と、ミキシング機構(40)とを備え、これらがダクト(13〜18)によって接続されることによって構成されている。
【0032】
上記室内吸込口(11)は、栽培室(1)の天井に設置され、該栽培室(1)内に開口して該栽培室(1)内の空気を空調システム(10)に取り込む。一方、上記室内吹出口(12)は、栽培室(1)の左右の側壁に設置され、該栽培室(1)内に開口して空調システム(10)の調和空気を栽培室(1)内に吹き出す。本実施形態では、室内吸込口(11)は、栽培室(1)の中央に1つ設けられ、室内吹出口(12)は、栽培室(1)の左右の側壁にそれぞれ9つずつ設けられている。左右の側壁において、9つの室内吹出口(12)は、上下方向及び水平方向のそれぞれに分散して配置されている。具体的には、上下方向に等間隔に並ぶ3つの室内吹出口(12)の列が、水平方向に3つ等間隔に配置されている。また、図2に示すように、左右の側壁にそれぞれ形成された9つの室内吹出口(12)は、それぞれが栽培棚(2)を挟んで水平方向に対向するように配置されている。各栽培棚(2)は、左右方向に長く形成されている。そのため、左右の対応する各吹出口(12)からは、栽培棚(2)に向かって該栽培棚(2)の長手方向に調和空気が吹き出される。
【0033】
上記第1空調機(20)及び第2空調機(30)は、それぞれ冷凍サイクルを行う冷媒回路(図示省略)を備え、室内熱交換器(21,31)において室内空気と冷媒とを熱交換させることによって室内空気の温度を調節するものである。第1空調機(20)は、使用温度範囲が20℃〜30℃の住宅やオフィス等の居室の空調に用いられる一般空調機によって構成されている。一方、第2空調機(30)は、使用温度範囲が栽培室(1)内の植物の生育温度(15℃、25℃)に対応した範囲である10℃〜30℃の中温度帯用の空調機によって構成されている。つまり、第1空調機(20)と第2空調機(30)とは、使用温度範囲が異なる2種類の空調機によって構成されている。
【0034】
本実施形態では、第1空調機(20)及び第2空調機(30)は、それぞれ室外機と室内機とを備え、室外機と室内機とに跨るようにそれぞれ冷媒回路が形成されている。なお、図1では、室外機の図示を省略し、室内熱交換器(21,31)と室内ファン(22,32)とが収容された室内機のみを図示している。第1空調機(20)及び第2空調機(30)の室内機は、栽培室(1)の天井裏の左右に1つずつ設置されている。左側の第1空調機(20)及び第2空調機(30)の室内機は、吸込口がそれぞれダクト(13)を介して室内吸込口(11)に接続されている。右側の第1空調機(20)及び第2空調機(30)の室内機は、吸込口がそれぞれダクト(14)を介して室内吸込口(11)に接続されている。
【0035】
上記ミキシング機構(混合機構)(40)は、室内吹出口(12)に対応する数だけ設けられている。各ミキシング機構(40)は、チャンバ(41)と、2つのダンパ(調節機構)(42,43)とを備えている。
【0036】
各チャンバ(41)は、箱状に形成され、内部空間が対応する室内吹出口(12)を介して栽培室(1)内に連通するように対応する室内吹出口(12)に取り付けられている。左側のチャンバ(41)には、左側の第1空調機(20)の室内機の吹出口に接続されたダクト(15)と、左側の第2空調機(30)の室内機の吹出口に接続されたダクト(16)とが接続されている。一方、右側のチャンバ(41)には、右側の第1空調機(20)の室内機の吹出口に接続されたダクト(17)と、右側の第2空調機(30)の室内機の吹出口に接続されたダクト(18)とが接続されている。
【0037】
ダンパ(42,43)は、手動によって角度を変更できる可動板によって構成されている。ダンパ(42)は、チャンバ(41)のダクト(15,17)の接続部に設けられ、角度を変更することにより、第1空調機(20)からチャンバ(41)内への空気の流入量を調節する。ダンパ(43)は、チャンバ(41)のダクト(16,18)の接続部に設けられ、角度を変更することにより、第2空調機(30)からチャンバ(41)内への空気の流入量を調節する。このような2つのダンパ(42,43)の開度を適宜調節することにより、第1及び第2空調機(20,30)の吹き出し空気の混合比率が変更される。本実施形態では、上方に位置するミキシング機構(40)ほど、混合後の空気温度が低くなるようにダンパ(42,43)の角度が調節される。つまり、上方のミキシング機構(40)では、下方のミキシング機構(40)に比べて、混合された空気中の第2空調機(30)の吹き出し空気の比率が高くなる。なお、ダンパ(42,43)は、手動でなく、自動制御によって角度が変更されるように構成されていてもよい。
【0038】
このような構成により、各ミキシング機構(40)は、チャンバ(41)内に、ダクト(15〜18)を介して第1空調機(20)の吹き出し空気と第2空調機(30)の吹き出し空気とを所定の比率で流入させて混合し、混合した調和空気を対応する吹出口(12)へ導く。
【0039】
また、空調システム(10)は、温度センサ(50)と、第1空調機(20)及び第2空調機(30)の運転を制御する運転制御装置(51)とを備えている。
【0040】
温度センサ(50)は、本実施形態では3つ設けられ、栽培室(1)の室内吸込口(11)の下方に設けられている。3つの温度センサ(50)は、上下方向に等間隔に配置されている。温度センサ(50)は、各高さ位置における空気温度を検出し、運転制御装置(51)に検出信号を送信する。
【0041】
運転制御装置(51)は、明期と暗期との切換を示す信号が入力され、明期への切換信号が入力されると後述する第1制御を実行し、暗期への切換信号が入力されると後述する第2制御を実行するように構成されている。詳細については後述するが、第1制御及び第2制御では、第1空調機(20)のみを運転させる第1運転モードと、第1空調機(20)及び第2空調機(30)の両方を運転させる第2運転モードとを切り換えて実行して栽培室(1)内の空気温度を設定温度まで低下させる冷房運転が行われる。また、第1制御及び第2制御では、いずれの場合においても、第1運転モードが第2運転モードに優先して実行され、第1運転モードでは栽培室(1)内の空気温度が設定温度まで低下しない場合に、第1運転モードから第2運転モードに切り換えられる。
【0042】
−運転動作−
運転制御装置(51)は、栽培室(1)内の空気温度を設定温度まで低下させる冷房運転が行われる。運転制御装置(51)は、明期と暗期とにおいて冷房運転の制御を変更する。具体的には、運転制御装置(51)は、明期への切換信号が入力されると第1制御によって冷房運転を行い、暗期への切換信号が入力されると第2制御によって冷房運転を行う。本実施形態では、第1制御では、設定温度が25℃に設定され、第2制御では、設定温度が15℃に設定されている。
【0043】
以下、運転制御部(51)による制御動作について詳述する。
【0044】
〈第1制御〉
第1制御では、まず、第1運転モードが実行される。第1運転モードでは、第1空調機(20)のみが運転を開始される。このとき、第1空調機(20)では、冷媒回路における蒸発温度の目標値が上限値に設定され、室内ファン(22)の風量が下限値に設定される。
【0045】
第1運転モードの開始後、温度センサ(50)の検出値に基づく栽培室(1)内の空気温度(以下、単に室内温度と称する。)が設定温度まで低下すれば、その状態のまま第1運転モードを継続する。一方、第1運転モードの開始から所定時間経過後に、室内温度が設定温度よりも高い場合、運転制御部(51)は、第1空調機(20)の室内ファン(22)の風量を増大する。
【0046】
室内ファン(22)の風量を増大させた後、室内温度が設定温度まで低下すれば、その状態のまま第1運転モードを継続する。一方、所定時間経過しても室内温度が設定温度よりも高い場合、運転制御部(51)は、第1空調機(20)の室内ファン(22)の風量が上限値でなければ室内ファン(22)の風量をさらに増大する。以降、運転制御部(51)は、所定時間毎に室内温度と設定温度とを比較し、室内温度が設定温度まで低下すれば、その状態のまま第1運転モードを継続し、室内温度が設定温度まで低下よりも高い場合、室内ファン(22)の風量を上限値まで段階的に増大させる。なお、室内ファン(22)の風量は、下限値から上限値へ一回的に増大させることとしてもよい。
【0047】
室内ファン(22)の風量を上限値まで増大させた後、室内温度が設定温度まで低下すれば、その状態のまま第1運転モードを継続する。一方、所定時間経過しても室内温度が設定温度よりも高い場合、運転制御部(51)は、第1空調機(20)の冷媒回路における蒸発温度の目標値を下げる。
【0048】
第1空調機(20)の冷媒回路における蒸発温度の目標値を下げた後、室内温度が設定温度まで低下すれば、その状態のまま第1運転モードを継続する。一方、所定時間経過しても室内温度が設定温度よりも高い場合、運転制御部(51)は、第1空調機(20)の冷媒回路における蒸発温度の目標値が下限値でなければ目標値をさらに下げる。以降、運転制御部(51)は、所定時間毎に室内温度と設定温度とを比較し、室内温度が設定温度まで低下すれば、その状態のまま第1運転モードを継続し、室内温度が設定温度まで低下よりも高い場合、第1空調機(20)の冷媒回路における蒸発温度の目標値を下限値まで段階的に下げる。なお、ここで、第1空調機(20)の冷媒回路における蒸発温度の目標値の下限値は、第2空調機(30)の冷媒回路における蒸発温度の目標値よりも高い温度に設定されている。
【0049】
第1空調機(20)の冷媒回路における蒸発温度の目標値を下限値まで下げた後、室内温度が設定温度まで低下すれば、その状態のまま第1運転モードを継続する。一方、所定時間経過しても室内温度が設定温度よりも高い場合、運転制御部(51)は、運転モードを切り換える。つまり、第1運転モードに代わって、第2運転モードが実行される。具体的には、第2空調機(30)の運転が開始される。
【0050】
〈第2制御〉
第2制御においても、まず、第1運転モードが実行される。第1運転モードでは、室内温度が第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値(20℃)に到達するように、第1空調機(20)が運転される。そして、室内温度が第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値(20℃)に到達すると、運転制御部(51)は、運転モードを切り換える。つまり、第1運転モードに代わって、第2運転モードが実行される。具体的には、第2空調機(30)の運転が開始される。第2空調機(30)は、室内温度が設定温度(15℃)に到達するように運転される。
【0051】
以下、明期と暗期とにおける冷房運転の動作について詳述する。
【0052】
〈明期〉
明期には、第1制御により、まず、第1運転モードが実行される。具体的には、第1空調機(20)の冷媒回路(図示省略)において冷媒を循環させて冷凍サイクルを行わせ、第1空調機(20)の室内ファン(22)を駆動する。これにより、栽培室(1)内の空気が第1空調機(20)の室内機内に取り込まれ、蒸発器として機能する室内熱交換器(21)において冷却される。冷却された空気は、室内機から吹き出されて各ミキシング機構(40)のチャンバ(41)内に流入する。第1運転モードでは、第2空調機(30)が運転されないため、各チャンバ(41)内に流入した冷却空気は、そのまま対応する吹出口(12)から栽培室(1)内に吹き出される。その結果、栽培室(1)内の空気温度が低下する。
【0053】
ここで、第1制御では、第1空調機(20)の冷媒回路における蒸発温度の目標値を上限値に設定し、室内ファン(22)の風量を下限値に設定して第1運転モードを開始する。そして、室内温度が設定温度まで低下しない場合に、まず、室内ファン(22)の風量を増大させ、それでも室内温度が設定温度まで低下しない場合に蒸発温度の目標値を下げる。このような制御により、蒸発温度を可能な限り高く維持した状態で冷房運転を行うことができる。その結果、栽培室(1)内の空気の除湿が抑制され、湿度低下が抑制される。
【0054】
ところで、明期は、暗期に比べて設定温度が高く、第1空調機(20)の使用温度範囲(20℃〜30℃)内の温度(25℃)に設定されている。そのため、ほとんどの場合、図3に示すように、第1空調機(20)のみを運転させる第1運転モードのみで室内温度を設定温度まで低下させることができる。
【0055】
しかしながら、明期は、照明器具(3)が点灯しているため、照明器具(3)の発熱により、冷房負荷が高くなる。そのため、照明器具(3)による発熱が著しく高く、第1運転モードのみでは室内温度が設定温度まで低下しない場合には、運転モードを第2運転モードに切り換えて第1空調機(20)と第2空調機(30)の両方を運転させる。具体的には、第2空調機(30)の冷媒回路(図示省略)において冷媒を循環させて冷凍サイクルを行わせ、第2空調機(30)の室内ファン(32)を駆動する。これにより、栽培室(1)内の空気が第2空調機(30)の室内機内に取り込まれ、蒸発器として機能する室内熱交換器(31)において冷却される。冷却された空気は、室内機から吹き出されて各ミキシング機構(40)のチャンバ(41)内に流入する。各チャンバ(41)内に流入した冷却空気は、第1空調機(20)の冷却空気と混合され、対応する吹出口(12)から栽培室(1)内に吹き出される。その結果、照明器具(3)の発熱が著しく高い場合であっても、栽培室(1)内の空気温度が設定温度(25℃)まで円滑に低下する。
【0056】
〈暗期〉
暗期には、第2制御によって冷房運転が行われる。暗期においても、まず、第1運転モードが実行される。これにより、第1空調機(20)のみにおいて冷房運転が実行され、第1空調機(20)による冷却空気のみが栽培室(1)内へ吹き出される。暗期は、照明器具(3)が消灯しているため、明期に比べて冷房負荷が小さい。そのため、栽培室(1)内の空気温度は、第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値(20℃)まで円滑に低下する。
【0057】
室内温度が第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値(20℃)に到達すると、第1空調機(20)は、サーモオフ状態となり、室内温度はそれ以上低下しなくなる。第2制御では、設定温度が第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値(20℃)よりも低い15℃に設定されているため、第1運転モードでは、室内温度を設定温度まで低下させることができない。そこで、設定温度が第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値(20℃)に到達すると、運転モードを第2運転モードに切り換えて第1空調機(20)と第2空調機(30)の両方を運転させる。具体的には、第2空調機(30)の冷媒回路(図示省略)において冷媒を循環させて冷凍サイクルを行わせ、第2空調機(30)の室内ファン(32)を駆動して第2空調機(30)の運転を開始する。これにより、栽培室(1)内の空気が第2空調機(30)の室内機内に取り込まれ、蒸発器として機能する室内熱交換器(31)において冷却される。冷却された空気は、室内機から吹き出されて各ミキシング機構(40)のチャンバ(41)内に流入する。各チャンバ(41)内に流入した冷却空気は、第1空調機(20)の冷却空気と混合され、対応する吹出口(12)から栽培室(1)内に吹き出される。その結果、栽培室(1)内の空気温度が設定温度(15℃)まで円滑に低下する。
【0058】
以上のような運転動作により、図3に示すように、明期には、ほとんどの場合、第1空調機(20)のみによって室内温度を30℃から設定温度の25℃まで低下させることができる。一方、暗期には、まず、第1空調機(20)のみによって室内温度を30℃から第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値である20℃まで低下させた後、第2空調機(30)を用いることによって室内温度を20℃から設定温度の15℃まで低下させることができる。
【0059】
−実施形態の効果−
本空調システム(10)では、第1空調機(20)のみを運転させる第1運転モードと、第1空調機(20)及び第2空調機(30)の両方を運転させる第2運転モードとを切り換えて実行して冷房運転を行うこととした。つまり、冷房運転では、常に第1空調機(20)が用いられる。ここで、使用温度範囲の下限値の高い第1空調機(20)は、第2空調機(30)に比べて室内熱交換器(21)を大きく形成して、冷房運転を行う際に、第1空調機(20)の冷媒回路における冷媒の蒸発温度が、第2空調機(30)の冷媒回路における冷媒の蒸発温度よりも高くなるようにしてある。つまり、本空調システム(10)では、蒸発温度の高い第1空調機(20)を必ず用いて冷房運転を行うこととした。そのため、蒸発温度の低い第2空調機(30)のみを用いる場合に比べて、空調システム(10)全体としての効率を向上させることができる。また、第2空調機(30)のみを用いる場合に比べて、蒸発温度が低いために空気を除湿するおそれの高い第2空調機(30)における熱処理量を減少させることができる。従って、栽培室(1)内の湿度低下を抑制することができる。
【0060】
また、本空調システム(10)によれば、明期と暗期のいずれの場合においても、まず、第1運転モードが実行され、蒸発温度の高い第1空調機(20)によって栽培室(1)内の空気温度を可能な限り低下させても設定温度に至らない場合に、蒸発温度の低い第2空調機(30)の運転を開始して第2運転モードを実行することとした。これにより、効率の高い第1空調機(20)を最大限に用いて冷房運転を行うことができる。従って、空調システム(10)の効率を最大限に向上させることができる。また、栽培室(1)の空気を除湿するおそれの高い第2空調機(30)の使用を最小限に止めることができるため、栽培室(1)内の湿度低下をより抑制することができる。
【0061】
また、本空調システム(10)によれば、温度の異なる第1空調機(20)及び第2空調機(30)の吹き出し空気を混合して栽培室(1)内に吹き出すこととした。そのため、温度の異なる2つの空調機(20,30)の吹き出し空気が別々の場所から吹き出される場合に比べて、栽培室(1)内における温度斑を生じ難くすることができる。
【0062】
また、本空調システム(10)によれば、ミキシング機構(40)及び室内吹出口(12)を複数ずつ設け、各ミキシング機構(40)に第1空調機(20)及び第2空調機(30)の吹き出し空気の混合比率を調節するダンパ(42,43)を設けることとした。そのため、各ミキシング機構(40)においてダンパ(42,43)によって吹き出し空気の混合比率を調節することにより、各室内吹出口(12)から吹き出される空気の温度を変更することができる。本実施形態では、上方に位置するミキシング機構(40)ほど、混合後の空気温度が低くなるようにダンパ(42,43)の角度が調節されている。そのため、栽培室(1)内には、空気温度が高くなる上部には、下部に比べて低い温度の調和空気が吹き出されることとなる。このように、本空調システム(10)によれば、栽培室(1)内の温度分布に応じて各室内吹出口(12)から吹き出される空気の温度を変更することが可能となるため、栽培室(1)内の各部における空気温度の均一化を図ることができる。
【0063】
また、本空調システム(10)によれば、栽培室(1)の左側の側壁に形成された各室内吹出口(12)を、右側の側壁に形成されたいずれかの室内吹出口(12)と、栽培室(1)内に設けられた栽培棚(2)を挟んで水平方向に対向するように設けることとした。そのため、栽培室(1)内の水平方向に関する空気温度の均一化を図ることができる。
【0064】
また、本空調システム(10)では、栽培室(1)の左右の側壁に形成した複数の室内吹出口(12)を、それぞれの側壁において上下方向に分散して配置することとした。そのため、栽培室(1)内の上下方向に関する空気温度の均一化を図ることができる。
【0065】
また、本空調システム(10)によれば、栽培室(1)の左右の側壁に形成した複数の室内吹出口(12)を、それぞれの側壁において水平方向に分散して配置することとした。そのため、栽培室(1)内の水平方向に関する空気温度の均一化を図ることができる。
【0066】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、暗期において、第2制御により、第1運転モードを実行した後に第2運転モードを実行することとしていた。しかしながら、暗期において、第2運転モードのみを実行することとしてもよい。つまり、暗期における冷房運転の開始の際から、第1空調機(20)と第2空調機(30)の両方を運転することとしてもよい。このような場合であっても、蒸発温度の高い第1空調機(20)を必ず用いて冷房運転が行われるため、蒸発温度の低い第2空調機(30)のみを用いる場合に比べて、空調システム(10)全体としての効率を向上させることができる。また、第2空調機(30)のみを用いる場合に比べて、空気を除湿するおそれの高い第2空調機(30)における熱処理量を減少させることができるため、栽培室(1)内の湿度低下を抑制することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、明期と暗期とが切り換えられる場合について説明したが、本発明に係る空調システム(10)は、図4に示すように、明期と暗期の切換がなく、明期のみであって設定温度が第1空調機(20)の使用温度範囲の下限値よりも低い温度(15℃)である冷房運転にも適用することができる。この場合には、上記実施形態の第1制御を適用する。つまり、冷房運転の開始の際には、第1運転モードを実行し、室内温度が低下しなくなると、運転モードを第2運転モードに切り換えて室内温度を設定温度まで低下させる。このような場合であっても、第2空調機(30)のみを用いる場合に比べて、空調システム(10)全体としての効率を向上させることができると共に、栽培室(1)内の湿度低下を抑制することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、各ミキシング機構(40)が対応する室内吹出口(12)に取り付けられていたが、各ミキシング機構(40)と対応する室内吹出口(12)とは離れた位置に設けられてダクト等を介して接続されていてもよい。
【0069】
また、室内吹出口(12)は、栽培室(1)の側壁に形成されるのではなく、栽培室(1)の栽培棚(2)付近に設けられていてもよい。
【0070】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、植物工場の栽培室内の空調を行う栽培室用空調システムについて有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 栽培室
10 栽培室用空調システム
12 室内吹出口(吹出口)
20 第1空調機(高温度帯用空調機)
30 第2空調機(中温度帯用空調機)
40 ミキシング機構(混合機構)
42、43 ダンパ(調節機構)
51 運転制御装置(運転制御部)
図1
図2
図3
図4