【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
実験例1:調理前水分と添加水量の違いによる各調理方法における調理後水分への影響
調理前水分と添加水量の違いによる鍋調理と電子レンジ調理の調理方法における調理後の水分値の差についての影響を調べるため、下記の通り、実験を行った。
【0040】
小麦粉950gと澱粉50gを混合した原料粉に、食塩10gとかんすい10gを350mlの水に溶かした練り水を加え、ミキサーで15分間混練し麺生地を作成した。これをロールで圧延して厚さ1.5mmの麺帯とし、20番の切刃(角刃)で切出して生麺線とした。次に、得られた生麺線を、1食分25〜30cm(重量110g/食)にカットし、沸騰水にて30秒間茹で、冷水で1分間水洗後、氷水に30秒間浸漬、冷却し、ザルで3回振って水きりした後、麺線の重量と水分値を測定して調理前重量(α化した麺線の重量)および調理前水分(α化した麺線の水分値)とした。
【0041】
次いで、この冷却された麺線170gを、
図1に示す凍結用リテーナーに充填し、リテーナーの凹部に添加水として水を50g添加した後、全体を凍結して、冷凍麺塊を製造し、実施例1とした。
一方、前記添加水の重量(α化した麺線に付与される水分量)を0gとした以外は、実施例1と同様にして比較例1とした。
また、前記沸騰水にて2分15秒茹で、添加水を0gとした以外は、実施例1と同様にして、比較例2とした。
【0042】
このようにして得られた各冷凍麺を鍋調理では350mlの沸騰水で表1に記す時間調理し、レンジ調理では500wで表1に記す時間調理し、各冷凍麺塊を調理した後の麺の重量と麺の水分値(調理後水分)を測定した。またこれらの値より、各調理方法によって実際に麺に吸収される水の量(吸収水量)および調理方法による水分値の差を算出した。
次いで、これらの調理後の麺について熟練したパネラー5名により食味・食感等について官能試験を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果より、通常より茹で時間を短くし、添加水を付与して所定の麺塊形状とした実施例1が、各調理方法による調理後の水分値の差を0.3%と少なくすることができた。また、官能試験を行った結果、鍋調理と電子レンジ調理の双方において、ほぼ同様の食味・食感に仕上がる冷凍麺類を得ることができ、好ましかった。
それに対し、比較例1は、レンジ調理時に食感が硬く脆くなり、比較例2は、鍋調理時に茹で伸びた食感となってしまい、好ましいものではなかった。
【0045】
実験例2:電子レンジ調理後の麺の水分量に対する添加水量の適正範囲
次に、電子レンジ調理後の麺の水分量に対して、添加水量(α化した麺線に付与される水分量)をどれくらいにするかを調べるため、下記の通り、実験を行った。
【0046】
上記実験例1と同様にして、表2に示すように添加水の水分量を変えて、実施例1〜3および比較例3,4の冷凍麺塊を得た。次いで、これらの冷凍麺塊について、鍋調理と電子レンジ調理の双方において実験例1と同様に官能試験を行い、電子レンジ調理した後の麺に含まれる水分量に対する添加水量の適正範囲を検討した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
※表2の「α化麺線の水分量」、「添加水量」、「電子レンジ調理後の麺の水分量」の各欄中の数字は、上段:水分量(g)、中段:電子レンジ調理後の麺の水分量に対するα化麺線の水分量または添加水量(重量%)、下段:麺の水分値(%)、カッコ内は麺重量(g)を示す。
【0048】
表2の結果より、実施例1〜3の、添加水量(α化した麺線に付与される水分量)が、電子レンジ調理後の麺の水分量(電子レンジ調理した後の麺に含まれる水分量)に対して、4〜45重量%であるのが、鍋調理と電子レンジ調理の双方において、ほぼ同様の食味・食感に仕上がる冷凍麺類を得ることができ、好ましかった。
一方、比較例3の、添加水量が、電子レンジ調理後の麺の水分量に対して、45重量%を超えた場合は、電子レンジでの解凍・加熱調理の際に、加熱ムラが生じ、解凍に時間がかかった。また、比較例4の、前記添加水量が4重量%未満である場合、レンジ調理したときに硬く脆い食感となり好ましくなかった。
【0049】
実験例3:麺塊凹部の深さによる氷の溶解状態と麺塊の解凍状態
次に、電子レンジ調理において、冷凍麺塊の凹部の深さ(凸部の高さ)による氷の溶解状態と冷凍麺塊の解凍状態について、下記の通り、実験を行った。
【0050】
小麦粉950gと澱粉50gを混合した原料粉に、食塩10gとかんすい10gを350mlの水に溶かした練り水を加え、ミキサーで15分間混練し麺生地を作成した。これをロールで圧延して厚さ2.10mmの麺帯とし12番の切刃(角刃)で切出して生麺線とした。次に、得られた生麺線を、1食分25〜35cm(重量168g/食)にカットし、沸騰水にて4分間茹で、冷水で1分水洗後、氷水に30秒間浸漬、冷却し、ザルで3回振って水きりした。次いで、この冷却された麺線300gを、
図1に示す凍結用リテーナーにおいて、凹部の深さが60〜0mmとなるようにリテーナー底部の隆起部を変えたものを用いて、それぞれ充填し、リテーナーの凹部に添加水として水を30g添加した後、全体を凍結して、実施例4〜8及び比較例5とした。
なお、凹部の深さ(凸部の高さ)は、表3のように設定し、表の中の60mm(実施例4)のものは、凹部が貫通したドーナツ状の麺塊形状で、0mm(比較例5)のものは、凹部が全くない麺塊形状を有するものである。
【0051】
これらの冷凍麺塊について、電子レンジにより、500wで、4分、5分、6分、6分半、7分間調理し、各時間ごとに冷凍麺塊の氷塊と麺塊全体が解凍する様子をチェックして各解凍時間を測定した。また同時に、各時間ごとに麺塊の周辺部(高温部位)と麺塊の中心部(低温部位)の麺塊温度を測定し、その麺塊の温度差を算出した。なお、表3には、麺塊の解凍時間が6分と7分のものについて各温度データを示す。次いで、前記麺塊の解凍時間が6分と7分のものについて実験例1と同様に官能試験を行った。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
※表3の麺塊の解凍時間:麺塊温度(高温部位,低温部位)の各欄中のデータは、上段:6分、下段が7分の麺塊の解凍時間の麺塊温度(℃)を示す。また、麺塊温度差の欄のデータは、高温部位(麺塊の周辺部)と低温部位(麺塊の中心部)の麺塊の温度差(℃)を示す。
【0053】
表3の結果より、凹部の深さが深くなるほど氷塊の解凍時間が短くなり、高温部(麺塊の周辺部)と低温部(麺塊の中心部)の麺塊温度差が減少した。
また、前記冷凍麺塊は、凹部の深さが3〜60mmで、凹部の深さが深くなるほど、解凍がさらに早くなり、しかも調理ムラが少なくなり、好ましかった(実施例4〜8)。
一方、比較例5の凹部の深さが0mm(凹部が貫通したドーナツ状の麺塊形状)のものは、レンジ調理したときに加熱・水分不足で硬くて脆い食感となり好ましくなかった。
【0054】
[実施例1]冷凍中華麺
小麦粉950gと澱粉50gを混合した原料粉に、食塩10gとかんすい10gを350mlの水に溶かした練り水を加え、ミキサーで15分間混練し麺生地を作成した。これをロールで圧延して厚さ1.50mmの麺帯とし20番の切刃(角刃)で切出して生麺線とした。次に、得られた生麺線を、1食分25〜30cm(重量110g/食)にカットし、沸騰水にて30秒間茹で、冷水で1分水洗後、氷水に30秒間浸漬、冷却し、ザルで3回振って水きりした。(重量170g,水分値59%,水分量100g)
次いで、この冷却された麺線170gを、
図1に示す凍結用リテーナーに充填し、リテーナーの凹部に添加水として水を50g(後述する電子レンジ調理後の麺の水分量137gに対して36.5重量%)添加した後、全体を凍結して、冷凍中華麺用の冷凍麺塊を得た。
【0055】
この得られた冷凍麺塊を、沸騰水350mlの中で2分茹でる事により鍋調理した。(調理後の麺の重量208g,水分値66.4%,水分量138g)また、500w5分間電子レンジ調理した(調理後の麺の重量206g,水分値66.1%,水分量137g)。これらを試食した結果、双方とも、ほぼ同様の茹でたてのなめらかでコシのある食味・食感を有し、特に、電子レンジ調理においても、解凍・加熱時間が早く、解凍が均一となり好ましいものであった。
【0056】
[実施例2]冷凍うどん
小麦粉900gと澱粉100gを混合した原料粉に、食塩50gと450mlの水に溶かした練り水を加え、ミキサーで15分間混練し麺生地を作成した。これをロールで圧延して厚さ3.10mmの麺帯とし9番の切刃(薄刃)で切出して生麺線とした。
次に、得られた生麺線を、1食分30〜40cm(重量104g/食)にカットし、沸騰水にて11分間茹で、冷水で1分水洗後、氷水に30秒間浸漬、冷却し、ザルで3回振って水きりした。(重量200g,水分値68%,水分量136g)
次いで、この冷却された麺線200gを、
図1に示す凍結用リテーナーに充填し、リテーナーの凹部に添加水として水を15g(後述する電子レンジ調理後の麺の水分量144gに対して10.5重量%)添加した後、全体を凍結し冷凍うどん用の冷凍麺塊を得た。
【0057】
この得られた冷凍麺塊を、沸騰水250mlの中で1分茹でる事により鍋調理した。(調理後の麺の重量206g,水分値68.5%,水分量141g)
また、500w5分間電子レンジ調理した(調理後の麺の重量209g,水分値69%,水分量144g)。これらを試食した結果、双方とも、ほぼ同様の茹でたてのなめらかでコシのある食味・食感を有し、特に、電子レンジ調理においても、解凍・加熱時間が早く、解凍が均一となり好ましいものであった。