特許第6012283号(P6012283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012283
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】開閉体装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/68 20060101AFI20161011BHJP
   E06B 9/11 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   E06B9/68 A
   E06B9/11 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-137363(P2012-137363)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-1553(P2014-1553A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大助
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−521433(JP,A)
【文献】 特表2005−520961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉するために設けられた開閉手段を巻取手段に巻き取ったり、巻き戻したりすることによって前記開口部の開閉状態を制御する開閉体制御装置において、
前記巻取手段を回転駆動する駆動手段と、
前記巻取手段に巻き取られた前記開閉手段の巻取回数nに対応した巻取径に応じて前記巻取手段の回転速度を制御する制御手段とを備え、
前記開閉手段は、前記巻取回数nが変化する箇所で前記駆動手段の駆動電流が変化するような厚みaの短冊状のスラットの複数係合されたもので構成され、
前記制御手段は、前記巻取回数nが変化する前記巻取手段の回転位置を前記駆動手段の駆動電流に基づいて予め検出しておき、前記巻取手段の半径d、前記開閉手段の厚みa、前記巻取回数nとした場合における前記巻取手段の回転速度を、前記巻取手段の基準速度にd/(d+na)を乗じたものとすることを特徴とする開閉体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、工場、倉庫などの建物を含む構造物躯体の開口部などをシャッターなどの開閉体を用いて仕切るように構成された開閉体装置に係り、特に開閉体の開閉動作時の移動速度を安定化することのできる開閉体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターカーテンなどのような開閉体装置は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物を含む構造物躯体の開口部や窓部あるいは内部の通路や空間などの開口部に設置され、その開閉体を移動させることによってその開口部を開放、閉鎖するものである。この開閉体装置は、多数の短冊状のスラット材からなるスラットカーテン、多数のパイプ材をリンク材などで連結させてなるパイプグリルカーテン、一枚状あるいは多数連結されたパネル材からなるパネルカーテン、ネット材からなるネットカーテン、合成樹脂あるいは布繊維製のシート材からなるシートカーテン、あるいはこれらの複合部材などからなる複合カーテンなどの開閉体を、開口部の上部から繰り出し下降させて開口部全体を閉鎖するように構成されている。このような開閉体装置は、開閉体の開閉動作を電動で行なう場合が多い。開閉動作を電動で行う開閉体装置については、特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−054368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の開閉体装置は、巻き径に関係なく、電動モータの回転数すなわち巻き取りシャフトの回転数を一定のまま、開閉体を巻き取っていた。従って、開閉体の巻取り始め、巻取り途中、巻取り終了時において、巻き取りシャフトの巻取径が徐々に大きくなり、開閉体の巻取り速度すなわち上昇速度が徐々に速くなる傾向にある。このように開閉体の上昇速度が変化すると、ガイドレールと開閉体との擦れによる開閉音が変化するため、静穏性が要求される環境では問題となることがあった。
開閉体の開閉動作を電動で行う場合、上昇等の開閉体の巻取りを行う際に電動にて行うのが一般的ではあるが、上述した課題は上昇等の巻取り時のみでなく、電動による下降等の巻き戻し時においても同様の課題がある。ただ、例えば防火シャッター装置のように下降等の巻き戻しの際には自重による等の必ずしも電動で行わない場合もあり、上述の課題はどちらかというと上昇等の巻取り時の方がより多く発生するといえる。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、開閉体の巻取りや巻き戻しの際の開閉速度を一定化または略一定化すること、特には開閉体の上昇等における巻取りの際の開閉体の移動速度を一定化または略一定化することのできる開閉体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る開閉体装置の第1の特徴は、開口部を開閉するために設けられた開閉手段を巻取手段に巻き取ったり、巻き戻したりすることによって前記開口部の開閉状態を制御する開閉体制御方法において、前記巻取手段に巻き取られた前記開閉手段の巻取状態に対応した巻取径に応じて前記巻取手段の回転速度を制御するようにしたことにある。これは、巻取手段の巻取径が、巻取り始め、巻取り途中、巻取り終了時などの巻取状態すなわち巻取回数に応じてそれぞれ異なるので、その巻取状態における巻取径に応じて巻取手段の回転速度すなわち巻取速度を適宜制御することによって、開閉手段の開閉動作時の移動速度をほぼ一定となるようにしたものである。本発明における「一定」とは厳密な意味のみでなく、開閉装置の利用上、実質的に一定としてもよいような略一定の場合も含む概念である。
【0007】
本発明に係る開閉体装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、前記巻取手段の半径がd、前記開閉手段の厚みがa、前記巻取手段に巻き取られた前記開閉手段の巻取回数をnとした場合における前記巻取手段の回転速度を、前記巻取手段の基準速度にd/(d+na)を乗じたものとすることにある。開閉動作時における開閉手段の移動速度は、巻取手段の巻取径と密接に関係しており、この巻取径rは、開閉手段の厚みaと巻取回数nの関数、d+naとなる。従って、この発明は、巻取手段の巻取速度を、巻取手段の基準速度にd/(d+na)を乗じた速度とすることによって、開閉手段の移動速度をほぼ一定にしたものである。
【0008】
本発明に係る開閉体装置の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載の開閉体装置において、前記巻取手段に巻き取られた前記開閉手段の巻取状態を、前記巻取手段を回転駆動する駆動手段の駆動電流に基づいて検出することにある。これは、開閉手段が巻取手段に巻き取られているときに巻取回数が変化する箇所で駆動手段の駆動電流が変化するので、この駆動電流に基づいて巻取回数が変化する箇所を検出し、検出された箇所に基づいて巻取手段の巻取速度を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の開閉体装置によれば、開閉体の巻取りや巻き戻しの際の開閉速度を一定化または略一定化すること、特には開閉体の上昇等における巻取りの際の開閉体の移動速度を一定化または略一定化することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の開閉体装置に係るシャッター装置の概略構成を示す図であり、建物外部から見た図である。
図2図1のシャッター装置を側面から見た一部断面を示す図である。
図3図1の制御装置の概略構成を示す図である。
図4図4は、図3の開閉体装置のシャッターカーテンの巻取り始め及び巻取り終了時における巻き取りシャフトの巻取径の様子を模式的に示す図である。
図5】巻き取りシャフトに巻き取られるシャッターカーテンの位置と、モータの駆動電流との関係を示す図である。
図6】巻取径の変化を考慮して制御回路が実行するモータ速度制御の一例を示す図である。
図7】巻き径に関係なく、モータ速度を一定のままシャッターカーテンを巻き取った場合(改善前)及びモータ速度をその回転位置に応じて変化させてシャッターカーテンを巻き取った場合(改善後)におけるシャッターカーテンの上昇速度の一例をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面に従って本発明に係る開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では開閉体装置として上下に開閉制御されるシャッター装置を例に説明する。図1は、本発明の開閉体装置に係るシャッター装置の概略構成を示す図であり、建物外部から見た図である。図2は、図1のシャッター装置を側面から見た一部断面を示す図である。このシャッター装置は、建物の開口部に設けられるものであり、基本的にシャッターケース1、シャッターカーテン2、ガイドレール3,4、巻き取りシャフト5、チェーン6、モータ7、制御装置8及び押しボタンスイッチ9から構成される。このシャッター装置は、通常時には、押しボタンスイッチ9の操作に応じて開閉機であるモータ7が動作して開閉制御するようになっている。
【0012】
ガイドレール3,4は、シャッターカーテン2の両端部に接するように建物の開口部の両端側に設けられ、まぐさ部20から床面まで掛け渡された断面形状がコの字型の案内溝を有する金属製部材で構成されている。シャッターカーテン2は、このガイドレール3,4の各案内溝に沿って上昇下降し、開口部の開閉動作を行う。巻き取りシャフト5は、シャッターケース1の両端側に回動可能に設けられ、シャッターカーテン2を巻き取ったり巻き戻したりする。チェーン6は、モータ7の回転軸に設けられた主動スプロケットと巻き取りシャフト5の回転軸に設けられた従動スプロケットとを連結している。従って、モータ7の回転駆動力はチェーン6を介して巻き取りシャフト5側に伝達され、モータ7が回転すると、チェーン6を介して巻き取りシャフト5が回転し、シャッターカーテン2の開閉動作が制御されるようになっている。
【0013】
図3は、図1の制御装置の概略構成を示す図である。制御装置8は、マイクロコンピュータ80を備えて構成されており、モータ7を駆動制御するモータドライブ回路81を備えている。制御装置8は、図示していない電源ラインを介して電力の供給を受けている。制御装置8には、電源ラインACを介して電力が供給されている。制御装置8は、押しボタンスイッチ9上の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号に基づいてモータドライブ回路81にてモータ7の回転を制御する。
【0014】
押しボタンスイッチ9は、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして、開スイッチ9A、停止スイッチ9B、閉スイッチ9Cを有し、それぞれのボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置8のマイクロコンピュータ80に出力する。開スイッチ9A及び閉スイッチ9Cはa接点で構成され、停止スイッチ9Bはb接点で構成されている。上限用リミットスイッチ8A及び下限用リミットスイッチ8Bは、モータ7の回転位置に応じてオン・オフ状態を維持するものであり、シャッターカーテン2が上限又は下限位置に達すると、上限用リミットスイッチ8A又は下限用リミットスイッチ8Bの接点が閉じて、シャッターカーテン2がこの上限位置又は下限位置に達したことを制御装置8のマイクロコンピュータ80に通知する。制御装置8のマイクロコンピュータ80は、シャッターカーテン2が上限又は下限位置に達すると、シャッターカーテン2を上限又は下限位置で停止させる。
【0015】
エンコーダ10は、モータ7の回転軸に結合され、モータ7の回転位置を検出して、それを制御装置8のマイクロコンピュータ18に出力する。電流検出器11は、モータドライブ回路81によってモータ7に供給される駆動電流を検出し、それを制御装置8のマイクロコンピュータ80に出力する。制御装置8のマイクロコンピュータ80は、エンコーダ10から出力されるモータ7の回転位置(シャッター位置)を示す検出信号及び電流検出器11から出力されるモータ7の駆動電流を示す検出信号に基づいてモータ7の回転速度制御用の制御信号を作成する。この制御信号の作成方法については後述する。
【0016】
図4は、図3の開閉体装置のシャッターカーテンの巻取り始め及び巻取り終了時における巻き取りシャフトの巻取径の様子を模式的に示す図である。図2に示すようにシャッターカーテン2の先端部が床面21に接地している状態にある場合における巻き取りシャフト5の巻取径(半径)は、図4(A)に示すように巻き取りシャフト5にシャッターカーテン2が巻き取られていない場合は、巻き取りシャフト5自体の半径dとなる。一方、シャッターカーテン2の先端部がまぐさ部20に接近した巻取終了直前状態にある場合における巻き取りシャフト5の巻取径(半径)rは、図4(B)に示すように巻き取りシャフト5自体の半径dに、巻き取りシャフト5に巻き取られたシャッターカーテン2の巻取状態、すなわちシャッターカーテン2の巻取り回数nに対応した厚み分naだけ大きくなる。巻き取りシャフト5にシャッターカーテン2がn回巻き取られた場合には、その巻取径rは、巻取回数nにシャッターカーテン2の厚みaを乗じた値naを、巻き取りシャフト自体の半径dに加算した値d+naとなる。すなわち、図4(B)に示すように、巻取径rは、d+naとなる。
【0017】
図5は、巻き取りシャフトに巻き取られるシャッターカーテンの位置と、モータの駆動電流との関係を示す図である。図5に示すように、巻取り径の変化ポイントすなわちシャッターカーテン2の位置S1,S2,・・・でモータ7の駆動電流が増加している。巻取り径の変化ポイントS1は、シャッターカーテン2が巻き取りシャフト5に巻き取られて1回転した時点、巻取り径の変化ポイントS2は、さらにシャッターカーテン2が巻き取りシャフト5に巻き取られて2回転した時点にそれぞれ対応する。このように、巻き取りシャフト5に巻き取られるシャッターカーテン2の巻取径rはd+aとなり、シャッターカーテン2が巻き取りシャフト5に巻き取られる回数に応じて変化する。そこで、モータ7の駆動電流を検出することによって、巻取径rが段階的に大きくなる変化ポイントS1,S2,・・・を特定することができるので、エンコーダ10から出力されるモータ7の回転位置(シャッター位置)をその変化ポイントS1,S2,・・・として記憶する。これによって、マイクロコンピュータ80は、エンコーダ10から出力されるモータ7の回転位置(シャッター位置)に基づいて、巻取径rが変化するシャッター位置(変化ポイント)S1,S2,・・・を認識することができるようになる。
【0018】
図6は、巻取径の変化を考慮して制御回路が実行するモータ速度制御の一例を示す図である。マイクロコンピュータ80は、エンコーダ10からの回転位置(シャッター位置)に基づいたモータ速度制御を制御するための信号のモータドライブ回路81に出力する。このとき、マイクロコンピュータ80は、図6に示すように、エンコーダ10からの回転位置(シャッター位置)が変化ポイントS1,S2,・・・に達した時点で、モータ速度を段階的に減速する。例えば、巻き取りシャフト5にシャッターカーテン2が1回転して巻き取られるまでのモータ速度を基準速度v0とする。モータ7の回転位置(シャッター位置)が変化ポイントS1に到達した時点で、モータ速度を基準速度v0にd/(d+a)を乗じた速度に減速する。次に、モータ7の回転位置(シャッター位置)が変化ポイントS2に到達した時点で、モータ速度を基準速度v0にd/(d+2a)を乗じた速度に減速する。以下、同様に、モータ7の回転位置(シャッター位置)が変化ポイントsnに到達した時点で、モータ速度を基準速度v0にd/(d+na)を乗じた速度に減速する。
【0019】
図7は、巻き径に関係なく、モータ速度を一定のままシャッターカーテンを巻き取った場合(改善前)及びモータ速度をその回転位置に応じて変化させてシャッターカーテンを巻き取った場合(改善後)におけるシャッターカーテンの上昇速度の一例をそれぞれ示す図である。図に示すように、モータ速度を一定のままシャッターカーテンを巻き取った改善前の場合、シャッターカーテン2が巻き取りシャフト5に巻き取られ、1回転して変化ポイントS1に到達するまで、シャッターカーテン2は一定の上昇速度v1で上昇する。シャッターカーテン2が巻取りシャフト5に1回転分巻き取られ、変化ポイントS1に到達した後は、シャッターカーテン2は上昇速度v1から上昇速度v2に速度が大きくなり、その速度v2で上昇することになる。そして、シャッターカーテン2が巻取りシャフト5に2回転分巻き取られ、変化ポイントS2に到達した後は、シャッターカーテン2は上昇速度v2から上昇速度v3に速度が大きくなり、その速度v3で上昇することになる。このように、改善前、すなわち従来は、巻き取りシャフト5の巻取径が徐々に大きくなり、シャッターカーテン2の巻取り速度すなわち上昇速度が徐々に速くなっていた。これに対して、図6に示すように、モータ7の回転位置(シャッター位置)が変化ポイントsnに到達した時点で、モータ速度を基準速度v0にd/(d+na)を乗じた速度に減速することによって、図7に示すように、シャッターカーテン2の上昇速度v1は、変化することなく、常時一定の速度v1で上昇するようになる。
【0020】
上述の実施の形態では、開閉体の巻取りによる上昇速度を一定または略一定にする場合について説明したが、開閉体の巻き戻しによる下降速度を一定または略一定とするような制御を行なうこともできる。すなわち、上昇の巻取りの際には巻取径が増大するために巻取径rはd+na(上昇時の開閉手段の厚みaはプラス符号)となるが、下降の巻き戻しの際には巻取径が減少するために巻取径rはd+na(下降時の開閉手段の厚みaはマイナス符号)となる。したがって、巻き戻しの際には、モータ速度を巻き戻し時の基準速度v0(このv0は巻取り時の基準速度と同じでも異なっていてもよい)にd/(d+na)を乗じた速度に加速すればよい。すなわち、d/(d+na)の式は巻取り、巻き戻しのそれぞれに応じて開閉手段の厚みaの符号がプラスかマイナスに変わるだけで、式自体はそのまま適用することができる。
【0021】
上昇等の巻取り時の開放速度や下降等の巻き戻し時の開閉体の移動速度は一定であることが好ましいが、実際の開閉体は例えばスラットが複数係合されて構成されているような場合の係合箇所やスラット自体の厚みが異なる場合がある等の理由で、開閉体の厚みが一定でない場合が通常なので、正確な意味では上述した式に一致するわけでは必ずしもない。しかしながら、実際の開閉装置においては略一定の速度になることが多い。これは、上述の係合箇所やスラット自体の厚みの変化が、開閉体の厚みと比較してわずかであれば近似的な意味で上述した式に合致するためであり、実用上は支障がないと考えられる。なお、開閉体がガイドレールに案内されている等の場合には摩擦等により速度も影響を受けることが考えられるが、この影響も実用上無視できるのであれば、上述の式を適用してもよい。なお、必要に応じて、摩擦等の影響を加味した式に補正してもよいことは言うまでもない。
【0022】
一定の速度で上昇(や下降)は、全開から全開の全範囲で一定という意味ではなく、全閉近傍、全開近傍または途中停止や途中開始近傍の場合にはモータの減速や加速が必要なので当然速度が一定になることはない。この実施の形態においては、速度一定とは、開閉体が停止した状態から移動して定常状態になる過渡状態及び定常状態から停止するまでの過渡状態などを除いた開閉の定常状態における速度を前提としており、例えば、途中停止や開始がない場合におけるある範囲、例えば、全閉位置近傍と全開位置近傍とを除いた開閉体移動範囲のうちの大部分の範囲(例えば開閉体移動範囲の内の3/4や4/5の範囲等)での移動速度に対して、その速度を一定または略一定にするということである。上述の式の開閉手段の厚みaは、開閉体全体で一定値でなく複数の値があってもよい。開閉手段の厚みaの値が変化すれば、これに伴ってd/(d+na)の値も変化するが、この変化に応じて速度を変化させればよい。
【0023】
上述の実施の形態では、シャッターカーテンが繰り出されて閉鎖するシャッター装置を例に説明したが、これ以外にも開閉部材が横引き方式で繰り出されたり、上昇方式で繰り出されたり、あるいは水平方式で繰り出されたりするものであっても同様に適用することができる。また、開閉体装置としては、例えば、オーバーヘッドドア装置を含むシャッター装置、ブラインド装置などに適用可能である。開閉体装置をシャッター装置とした場合、開閉体手段である開閉部材は、シャッターカーテンであり、その構成は、多数の短冊状のスラット材からなるスラットカーテン、多数のパイプ材をリンク材などで連結させてなるパイプグリルカーテン、一枚状あるいは多数連結されたパネル材からなるパネルカーテン、ネット材からなるネットカーテン、あるいはこれらの複合部材などからなる複合カーテンなどによるものである。また、開閉体手段である開閉部材の材質は、使用目的に応じたものであれば、どのようなものでもよい。具体的には、金属製、木製、プラスチック製、これらの複合されたものなどで構成することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…シャッターケース、
10…エンコーダ、
11…電流検出器、
2…シャッターカーテン、
20…まぐさ部、
21…床面、
3,4…ガイドレール、
5…巻き取りシャフト、
6…チェーン、
7…モータ、
8…制御装置、
80…マイクロコンピュータ、
81…モータドライブ回路、
8A…上限用リミットスイッチ、
8B…下限用リミットスイッチ、
9…ボタンスイッチ、
9A…開スイッチ、
9B…停止スイッチ、
9C…閉スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7