(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物を含有して、発泡剤として炭酸ガスを用いて得られるポリプロピレン系予備発泡粒子であって、
トリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物の含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.05〜2重量部であり、かつ、該予備発泡粒子が、直径が300μm以上の巨大気泡および、直径が巨大気泡の1/3以下である微細気泡を併せ持ち、
更に、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して無機充填材を0.1重量部以上、0.4重量部以下含有していることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
トリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物が、メラミン(化学名1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)であることを特徴とする、請求項1に記載の予備発泡粒子。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系型内発泡成形体は、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形用の金型内に充填した後、これらを加熱融着させ、冷却した後に得られる。
型内発泡成形の生産工程では、生産性を上げる、つまり、成形サイクルの短縮が望まれている。
【0003】
成形サイクルを短くする方法として、冷却時間を短くする方法があるが、一般に、冷却時間を短縮すると、離型時の割れ発生や成形体寸法が大きくなる問題があり、良品の型内発泡成形体が得られない。
【0004】
成形サイクルを短くする方法として、親水性物質であるエチレン系アイオノマーを含有するポリプロピレン系樹脂粒子に、水を発泡剤として用いるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が提案されている(例えば、特許文献1)。同方法では、予備発泡粒子の表層部に微細な気泡、中心部に表層部よりも大きな気泡を併せ持つ構造を有することにより、成形サイクル短縮に効果を示している。ただし、当該気泡構造を得るためには、発泡剤が水に限定されており、炭酸ガスを用いた場合では望ましい気泡構造が得られなくなると記載されている。
また、一般に、発泡剤が水、あるいは水、窒素の組み合わせの場合は、発泡倍率が中〜高倍率の領域ではヒケが発生しやすいという問題がある。さらに、エチレン系アイオノマーを用いて発泡倍率を高くするためには、エチレン系アイオノマーの添加量を多くする必要があり、コストが高くなるだけでなく、型内発泡成形体の機械的強度が低下するという問題もある。
【0005】
一方、親水性物質の添加量を減少し、機械的強度の低下を防ぎ、且つ、高い発泡倍率を得る方法として、トリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物を含有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、同方法でも、水を発泡剤として用い、型内発泡成形体にした場合にヒケが発生する問題がある。発泡剤として炭酸ガスを用いた場合では、気泡が均一なポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られ、ヒケが発生し難い特徴がある。
ただし、成形サイクルが長い為、ヒケの発生防止と成形サイクルを短くすることの両立が求められる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明におけるポリプロピレン系予備発泡粒子は、トリアジン骨格を有し、特定の単位トリアジン骨格あたりの分子量を有する化合物を含有するポリプロピレン系樹脂粒子を、発泡剤として炭酸ガスを用いて得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子である。
【0013】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、単量体成分としてプロピレンを好ましくは、60重量%以上、より好ましくは、80重量%以上含んでなる樹脂をいい、プロピレンと共重合可能な単量体を含んでいても構わない。
具体的には、例えば、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体が好ましい。これらの中でも、エチレン含有量が0.1重量%以上、10重量%以下のエチレン−プロピレンランダム共重合体、あるいは、エチレンと1−ブテンを合計0.1重量%以上、10重量%以下含有し、かつ1−ブテンが0.5重量%以上含まれるエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体が、成形性や機械的強度の観点からより好ましい。
【0014】
これらポリプロピレン系樹脂は、無架橋のものでも、架橋したものでも良いが、リサイクルの観点から、無架橋のものであるのが好ましい。
【0015】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂の融点は、130℃以上165℃以下であることが好ましく、更には135℃以上155℃以下のものが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の融点が130℃未満の場合、耐熱性、機械的強度が十分でない傾向がある。ポリプロピレン系樹脂の融点が165℃を超える場合、型内発泡成形時の融着を確保することが難しくなる傾向がある。
【0016】
ここで、本発明におけるポリプロピレン系樹脂の融点とは、示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂1mg以上10mg以下を、40℃から220℃まで10℃/分の昇温速度で昇温した後、40℃まで10℃/分の降温速度で冷却した後、再度40℃から220℃まで10℃/分の昇温速度で昇温した際に得られる、DSC曲線における吸熱ピークのピーク温度をいう。
【0017】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂のメルトインデックス(以下、「MI」と略す。)は、0.5g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは2g/10分以上20g/以下、さらに好ましくは5g/10分以上10g/10分以下である。
ポリプロピレン系樹脂のMI値が0.5g/10分未満の場合、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られにくい傾向があり、30g/10分を超える場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が破泡し易く、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連泡率が高くなる傾向にある。
【0018】
ここで、本発明におけるポリプロピレン系樹脂のMI値とは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件にて測定した値である。
【0019】
本発明においては、融点、MI値が異なるポリプロピレン系樹脂を2種以上混合して、前記の範囲としても良い。
【0020】
本発明においては、トリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物(以下、「トリアジン類化合物」と称する場合がある)を用いることにより、ポリプロピレン系樹脂の含水率を高め、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を与えることができる。
ここで、「単位トリアジン骨格あたりの分子量」とは、1分子中に含まれるトリアジン骨格数で分子量を除した値である。トリアジン類化合物の単位トリアジン骨格あたりの分子量が300を超えると、含水率を高める効果が十分に発揮されない傾向がある。
【0021】
本発明で用いられるトリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物しては、例えば、メラミン(化学名1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)、アンメリン(同1,3,5−トリアジン−2−ヒドロキシ−4,6−ジアミン)、アンメリド(同1,3,5−トリアジン−2,4−ヒドロキシ−6−アミン)、シアヌル酸(同1,3,5−トリアジン−2,4、6−トリオール)、イソシアヌル酸(同1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)、アセトグアナミン(同1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン−6−メチル)、ベンゾグアナミン(同1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン−6−フェニル)、トリス(メチル)イソシアヌレート、トリス(エチル)イソシアヌレート、トリス(ブチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、メラミン・イソシアヌル酸縮合物などが挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
これらのトリアジン類化合物は、ポリプロピレン系樹脂の加工温度において、固体粒子として存在するものが、巨大気泡および巨大気泡の1/3以下の微細気泡を得やすい点から、より好ましい。
【0023】
トリアジン類化合物が融点を持つ場合には、その融点としては180℃以上が好ましい。トリアジン類化合物が融点を持たず分解する場合には、その分解温度としては、230℃以上が好ましい。
【0024】
本発明におけるトリアジン類化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.05〜2重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
トリアジン類化合物の含有量が0.05重量部未満では、気泡構造が比較的均一となり、成形サイクル短縮に効果を示す巨大な気泡および微細な気泡を併せ持つ気泡構造をつくることができない場合がある。トリアジン類化合物の含有量が2重量部を超えると、型内発泡成形体にヒケが非常に発生しやすくなる傾向がある。
【0025】
本発明で用いられる発泡核剤は、発泡の時に気泡核の形成を促す物質をいい、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ゼオライト等の無機物質、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
これらの中でも、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムが、ポリプロピレン樹脂中への分散性に優れる点から、好ましい。
更に、これら発泡核剤の粒径分布がシャープであることが、微細な気泡を発生させ易い点から、望ましい。
【0026】
本発明のポリプロピレン系樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない範囲において、相溶化剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤、耐候剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜添加可能である。
【0027】
次に、ポリプロピレン系樹脂粒子は、通常、発泡に利用しやすいように、予め押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体上等のような所望の粒子形状のポリプロピレン系樹脂粒子とする。
【0028】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂粒子の平均粒重量は、0.5〜3.0mg/粒が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0mg/粒、更に好ましくは0.5〜1.5mg/粒である。
【0029】
本発明におけるポリプロピレン系予備発泡粒子は、従来から知られている方法により得ることができる。
例えば、ポリプロピレン系樹脂粒子を、密閉圧力容器内において、水等の分散媒に分散させ、発泡剤と共に攪拌流動させながら、容器内の内温を、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上、具体的にはポリプロピレン系樹脂の融点−10℃〜融点+10℃に昇温する。容器内温を前記温度(発泡温度)にて一定時間保持した後、容器の一端を開放して、容器内圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、ポリプロピレン系樹脂粒子および分散媒を同時に、容器内よりも低圧の雰囲気下(通常は大気圧下)に放出することにより、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡せしめ、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得ることができる。
なお、上記密閉容器内より低圧の雰囲気下(通常は大気圧下)に放出する際は、密閉容器内の圧力が低下しないように、例えば、窒素、空気、二酸化炭素などの無機ガスにより保圧することが好ましい。
【0030】
本発明で用いられる発泡剤としては、直径300μm以上の巨大気泡および、直径が巨大気泡の1/3以下である微細な気泡を併せ持つ気泡構造を得やすく、かつ、成形体にヒケが発生しにくい点から、炭酸ガスが好ましい。
これに対して、発泡剤としてブタン、プロパンなどの脂肪族炭化水素を用いる場合には、気泡構造が均一となり、成形サイクル短縮に効果を示す巨大な気泡および微細な気泡を併せ持つ不均一な気泡構造をつくることが難しい傾向がある。一方、発泡剤として空気、窒素、水などの無機物質を用いる場合には、型内発泡成形体にした際に、ヒケやソリが発生しやすい傾向がある。
【0031】
本発明における発泡剤の使用量は、得ようとする発泡粒子の発泡倍率や発泡温度との関係で適宜調節されるものであるが、加熱中または加熱後に、発泡温度にて1.5〜7MPa(G)の圧力範囲となるように、容器内に圧入する、あるいは、発泡温度にて該圧力を示すような量を予め加熱前に仕込んでおくことが好ましい。
【0032】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、直径300μm以上の巨大気泡および直径が巨大気泡の1/3以下である微細気泡を併せ持つ気泡構造を有する。
不均一な気泡構造をとるポリプロピレン系樹脂発泡粒子では、型内成形時に蒸気加熱後の発泡圧力の低下が速い為に、蒸気加熱後の冷却時間を短くすることができる。
【0033】
ここで、巨大気泡および微細気泡とは、以下のように測定して得られたものである。
無作為に選出した10個の発泡粒子に関して、セル膜が破壊されないように充分注意して発泡粒子をほぼ中央で切断し、その切断面を、寸法計測が可能なデジタルマイクロスコープを用いて拡大観察した。観察画面中、直径300μm以上の巨大気泡については、1つの発泡粒子中に存在するもの全てについてセルのx、y方向のフェレ径をそれぞれdx、dyとして測定し、巨大気泡径={(dx+dy)/2}/0.785の計算式によって巨大気泡径を算出した。
観察画面中、巨大気泡の存在しない領域では、ASTM D3576の方法に従って、任意に引いた線と交差するセル膜の個数を計測し、微小気泡径を算出した。
10個の発泡粒子におけるそれぞれの巨大気泡径および微小気泡径を平均することにより、巨大気泡径および微小気泡径を算出した。
【0034】
本発明の直径300μm以上の巨大気泡および、直径が巨大気泡の1/3以下である微細気泡を併せ持つ気泡構造は、発泡剤として炭酸ガスを用い、トリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物を用いることにより、得ることができる。さらに、予備発泡粒子の所望の発泡倍率に応じて、炭酸ガスの添加量、トリアジン類の添加量を変化させることにより、巨大セルと微細セルの気泡径を調節することができる。
【0035】
本発明における予備発泡時には、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散媒に分散させ、発泡温度に加熱する場合の樹脂粒子相互の融着を防止するために、分散剤を用いることができる。
【0036】
本発明で用いられる分散剤としては、例えば、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0037】
本発明における分散剤の平均粒径に特に制限はないが、0.001〜50μmが好ましく、より好ましくは0.01〜20μmである。分散剤の平均粒径が0.001μm未満の場合、ハンドリングしにくくなる場合があり、50μmを超えると、分散剤としての性能が低下する傾向にある。
【0038】
本発明における分散剤の添加量は、発泡温度、発泡剤の添加量、発泡剤の種類によりポリプロピレン系樹脂粒子相互の融着を防止するよう適宜調整されるものであるが、一般的には、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましい。分散剤の添加量が0.01重量部未満では、分散剤としての性能が低下し、ポリプロピレン系樹脂粒子同士の融着が見られる場合があり、5重量部を超えても、融着防止性能の大きな向上は見られない。
【0039】
本発明における予備発泡時には、分散性を安定化する目的で、分散助剤を用いることもできる。
【0040】
本発明で用いられる分散助剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、n−パラフィンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、脂肪酸ジエタノールアミドなどの界面活性剤などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0041】
本発明における分散助剤の添加量は、発泡温度、発泡剤の添加量、発泡剤の種類、分散剤の種類や添加量により適宜調節されるものであるが、一般的にはポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対し、0.001〜2重量部が好ましい。
分散助剤の添加量が0.001重量部未満では、分散助剤としての性能が低下し樹脂粒子の融着が見られる場合があり、2重量部を超えても、融着防止性能の大きな向上は見られない傾向がある。
【0042】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子からなる型内発泡成形体は、従来より知られる型内成型方法により得ることができる。
例えば、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、必要に応じて、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、あるいはこれらの中から選んだ複数の混合ガスである無機ガスにより加圧熟成して、粒子内に所定の内圧を付与する。その後、閉鎖し得るが密閉し得ない成形用金型型内に、該ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、そのまま、もしくは加圧圧縮状態で充填する。その後、ポリプロピレン系樹脂の融点付近の温度の水蒸気を用いて、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を加熱して粒子相互を融着せしめ、しかる後冷却することによって、成形体を得ることができる。
【0043】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いることにより、型内発泡成形時の成形サイクルが短くなり、且つ、ソリなどの歪みがない成形体を得ることができる。
【0044】
ここで、本発明における成形サイクルとは、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形用の金型内に充填した後、これらを加熱融着させ、冷却した後、離型するまでに要する時間である。
本発明においては、型内成形時の成形サイクルのうち、水冷時間を短縮できる効果が発現される。すなわち、成形時に蒸気加熱した後に、成形体を水冷し、成形体の固化と発泡圧低下を促進し、成形体の離型が可能とする迄の水冷時間は、本発明の発泡粒子を用いることにより、気泡が均一な発泡粒子を用いる場合よりも、短時間にすることが可能である。
【実施例】
【0045】
次に、本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子、および該ポリプロピレン系樹脂粒子からなる型内発泡成形体に関して、実施例を挙げて更に詳細に説明する。
【0046】
実施例および比較例において、使用した原料・添加物は、以下のとおりである。
・ポリプロピレン系樹脂:(プロピレン/エチレンランダム共重合体中のエチレン含有率2.9重量%、メルトインデックス7g/10分、融点144℃)
・トリアジン類化合物:
メラミン(三井化学製、メラミン、単位トリアジン骨格あたりの分子量126、分解温度300℃)
イソシアヌル酸(四国化成製、イソシアヌル酸、単位トリアジン骨格あたりの分子量129、分解温度330℃)
ベンゾグアナミン(日本カーバイド製、ニカグアナミン、単位トリアジン骨格あたりの分子量187、融点226℃)
トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキベンジル)−イソシアヌレート(チバスペシャルティケミカルズ社製、IRGANOX3114、単位トリアジン骨格あたりの分子量784、融点220℃)
・その他の親水性物質:
エチレン系アイオノマー(三井デュポンポリケミカル(株)製「ハイミラン1707」、MI=0.9g/10分、融点89℃)
ポリエチレングリコール(ライオン製、PEG#300、以下PEG)
・無機充填剤(発泡核剤):
タルク(林化成製、タルカンPK−S)
炭酸カルシウム(白石工業製、ホワイトンP−10)。
【0047】
実施例および比較例における、評価方法は、以下のとおりである。
【0048】
<気泡径の測定>
無作為に選出した10個の発泡粒子に関して、セル膜が破壊されないように充分注意して発泡粒子をほぼ中央で切断し、その切断面を、寸法計測が可能なデジタルマイクロスコープを用いて拡大観察した。観察画面中、直径300μm以上の巨大気泡については、1つの発泡粒子中に存在するもの全てについてセルのx、y方向のフェレ径をそれぞれdx、dyとして測定し、巨大気泡径={(dx+dy)/2}/0.785の計算式によって巨大気泡径を算出した。
観察画面中、巨大気泡の存在しない領域では、ASTM D3576の方法に従って、任意に引いた線と交差するセル膜の個数を計測し、微小気泡径を算出した。
10個の発泡粒子におけるそれぞれの巨大気泡径および微小気泡径を平均することにより、巨大気泡径および微小気泡径を算出した。
【0049】
<成形サイクル>
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形用の金型内に充填した後、これらを加熱融着させ、冷却した後、離型するまでに要する時間を、成形サイクルとした。
但し、離型は、冷却工程において型内発泡成形体が金型を押す力が、0.05MPaまで低下した段階で実施した。
【0050】
<ヒケ>
縦400mm×横300mm×厚み60mmの型内発泡成形体において、ヒケは次の基準で評価した。
○:成形体の横方向において、両端での厚み寸法と、端から150mmの中央部での厚み寸法との差が、0.50mm以下である。
×:成形体の横方向において、両端での厚み寸法と、端から150mmの中央部での厚み寸法との差が、0.50mm超である。
【0051】
<総合評価>
総合評価は次の基準で評価した。
○:型内発泡成形体の成形サイクルが170秒以下、且つ、ヒケが○である。
△:型内発泡成形体の成形サイクルが170秒超、且つ、ヒケが○である。
×:型内発泡成形体のヒケが×である。
【0052】
(実施例1〜8)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、表1に示すような種類と量のトリアジン骨格を有し、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物、および無機充填剤を混合した。得られた混合物を、50mmφの単軸押出機に25kg/時間で投入し、樹脂温度230℃にて溶融混練した後、ストランド状に吐出させ、水冷した後、ペレタイザーを用いてカッティングして、ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。なお、カッティングの際に、ポリプロピレン系樹脂粒子の粒子重量が1.2mg/粒となるように、調節した。
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の作製]
10リットル圧力容器に、得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水170重量部、リン酸カルシウム0.6重量部およびアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部を仕込み、その後、表1に記載の発泡温度に加熱した。この際、加熱前から所定温度に達する迄の間、また、必要に応じて、所定温度に達した後に、発泡剤である炭酸ガスを表1に記載の圧力となるように仕込んだ。その後、容器内圧力を窒素ガスで保持しつつ、圧力容器下のバルブを開いて、圧力容器の内容物を大気下に放出し、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
その後、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を高めるため、次のような二段発泡に供した。すなわち、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を別の圧力容器に仕込み、空気を圧入してポリプロピレン系樹脂発泡粒子に表1に記載の空気内圧を付与し、その後攪拌機能を備えた圧力容器に投入した後、攪拌しながら所定圧力の水蒸気を吹き込み、元のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子よりも発泡倍率が大なるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子の気泡径を、表1に示す。
[ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の作製]
得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を別の圧力容器に仕込み、空気を圧入して該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子に0.2MPaの内圧を付与した。
内圧を付与したポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、長さ400mm×幅300mm×厚み60mmの金型に充填した後、0.3MPaの水蒸気を用いて10秒間加熱して、融着させた後、冷却して離型して、型内発泡成形体を得た。
型内発泡成形時の成形サイクルおよび得られた型内発泡成形体のヒケ評価を、表1に示す。
【0053】
(比較例1〜8)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、表1に示すような種類と量の親水性物質、および無機充填剤を混合した以外は、実施例と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の作製]
発泡剤の種類および量、発泡時の発泡温度および圧力、付与時の空気内圧を、表1に示すように変更した以外は、実施例と同様の操作により、ポリプロピレン系予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子の気泡径を、表1に示す。
[ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の作製]
実施例と同様の操作により、型内発泡成形体を得た。
型内発泡成形時の成形サイクルおよび得られた型内発泡成形体のヒケ評価を、表1に示す。
【0054】
【表1】