(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動溶着による溶着部分が配置される面が、前記振動方向に所定距離未満で離散的に設けられた部分の近傍に、車両への取付部が少なくとも1つ設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の車両用樹脂製品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る車両用樹脂製品をリアスポイラに適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
本実施形態のリアスポイラ100は、
図1に示すように、車両200の後端部に取り付けられる。このため、車両200の形状が丸みを帯びた曲面的形状である場合、その形状に合わせて長手方向に湾曲した形状となる。以下、自動車の直進方向を基準として上下方向及び左右方向を説明する。
【0017】
図2に、リアスポイラ100の分解状態を例示する。
図2に示すように、リアスポイラ100は、車両200への取付穴30が設けられる内側部材1と、主に外観意匠部を構成する外側部材2とを備える。
【0018】
内側部材1および外側部材2は、樹脂成形品であり、成形方法は例えば射出成形など、形状に応じて任意であってよい。また、材料となる樹脂や添加剤などは、振動溶着に適したものであれば任意の材料を用いてよい。
【0019】
外側部材2は、折り曲げ部72で折り曲げられた外壁部71を備え、この外壁部71の長手方向に垂直な方向における断面は、
図6に例示するように略V字型になっている。
内側部材1は、この略V字型に折り曲げられた外壁部71の内側に嵌め込まれる形状となっている。そして、リアスポイラ100は、こうして外側部材2の内側に内側部材1が嵌め込まれた状態で、内側部材1と外側部材2とが振動溶着されて形成される。
【0020】
リアスポイラ100は、車両200の外形に合わせて、中央から左右方向の端部に近づいていくほど車両の前方向に湾曲した形状となっている。また、内側部材1は、こうした形状である外側部材2の内側に嵌め込まれる形状となっている。
【0021】
このため、内側部材1には、振動溶着による溶着部分が振動方向に離散的な面に配置される離散配置部10と、溶着部分が連続面に配置される連続配置部20とが設けられる。ここで、連続面とは、折り線を介することなく所定長さ以上連続する面であり、離散配置部10は、溶着部分が配置される1つの面が折り線などにより所定長さ未満しか連続せず、離散的となる部分である。離散配置部10は、長手方向における両端付近の湾曲した部分に設けられ、連続配置部20は、中央付近のあまり湾曲していない部分に設けられる。
【0022】
図3に、
図2におけるY部をV1方向から見た部分拡大図を示す。
図4(A)は、
図2におけるX部をV1方向から見た部分拡大図であり、
図4(B)は、X部をV2方向から見た部分拡大図である。
【0023】
図3に示すように、内側部材1における連続配置部20の表面には、振動溶着の際に外側部材2における外壁部71の内側に溶着させるための溶着用凸部21が配置される。
図3の例では、溶着用凸部21a、21bが外壁部71における側面部分の内側に振動溶着させるための部分であり、溶着用凸部21cが、外壁部71における折り曲げ部72の内側に振動溶着させるための部分となっている。
【0024】
内側部材1における離散配置部10は、
図3、
図4に示すように、振動溶着による溶着部を配置するための当接面11(11a,11b,・・・)が振動方向に離散的に配置される。また、離散配置部10は、隣接する当接面11の間が接続面12で接続され、当接面11と接続面12との間が折り曲げ部13または14を介して連接されている。このため、離散配置部10は階段状となっている。
【0025】
ここで、折り曲げ部13は当接面11における中央側の谷折りとなる折り線を示し、折り曲げ部14は当接面11における端部側の山折りとなる折り部を示す。内側部材1は、略V字型に折り曲げられた外壁部71の内側に嵌め込まれる形状であるため、折り曲げ部13は幅のある部分の折り線となるが、折り曲げ部14は幅のほとんどない折り曲げられた頂点のような形状であってもよい。
【0026】
また、外側部材2の外壁部71の内側における離散配置部10に対応する場所には、当接面11に溶着させるための溶着用リブ50が設けられる。溶着用リブ50は、内側部材1が外側部材2に嵌め込まれた状態で当接面11に略垂直となる平板である。また、
図6に示すように、溶着用リブ50は、内側部材1が嵌め込まれる側の当接縁端部51により当接面11に接触するように、外壁部71の内側に凸設される。
【0027】
図5は、振動溶着後の
図4のC−C断面を示し、
図6は、
図5のD−D断面を示す。
図5、
図6では、当接面11と、溶着用リブ50の当接縁端部51との接触面が振動溶着の際に溶融することにより、溶着部52が形成された状態を示す。
【0028】
当接面11(11a,11b,・・・)のそれぞれは、振動溶着の際に、溶着用リブ50の当接縁端部51と擦り合わされて十分な溶着強度で溶着されるよう、振動方向Qとの角度θが所定角度以内となるよう形成される。以下の説明では、この振動溶着により十分な溶着強度が得られる最大角度を、各方向について15°以内(−15°≦θ≦15°)であることとして説明する。
【0029】
なお、各当接面11は平面に限定されず、曲面であってもよい。曲面である場合、その曲面上の各点について、その点における接平面と振動方向Qとの角度θが15°以内(−15°≦θ≦15°)であることとする。
【0030】
内側部材1と外側部材2とを振動溶着する際、まず振動溶着装置により内側部材1と外側部材2とが互いに押し付けられるよう加圧し、その状態で加圧方向と垂直な方向に振動させる。この加圧方向P1は、折り曲げ部72で折り曲げられた外壁部71の内側に内側部材1を嵌め込む方向であり、加圧方向P2はその逆方向の加圧力を示す。すなわち、内側部材1および外側部材2は、振動溶着装置にその加圧方向P1、P2となるようセットされる。
なお、振動方向Qと加圧方向P1との角度は90°に限定されず、90°に近い角度であれば振動溶着可能である。
【0031】
また、階段状である離散配置部10の接続面12(12a,12b,・・・)それぞれについて、1つの接続面12と、振動方向Qにおいて隣接する溶着用リブ50との間には、
図5に示す隙間15が空けられている。この隙間15は、振動溶着における振幅を確保するための空間であり、振動方向Qについて、振動溶着の際の振幅の半分の距離が最低限必要となる。
図5中には、接続面12eと溶着用リブ50eとの間の隙間15eを一例として示す。
【0032】
以上のように、離散配置部10の各当接面11など、振動溶着による溶着部が配置される各部分は、その部分における接平面と振動方向Qとの角度θが15°以内(−15°≦θ≦15°)となっている。
【0033】
このため、外側部材2の内側に嵌め込まれる内側部材1の形状として、外壁部71の内側と振動方向Qとの角度が15°以内である部分については、内側部材1における対応する部分に上述した連続配置部20を配置することが好ましい。こうした形状とすることにより、その連続配置部20と外壁部71の内側との間で、振動溶着により十分な強度による溶着ができる。
【0034】
また、外側部材2の内側に嵌め込まれる内側部材1の形状として、外壁部71の内側と振動方向Qとの角度が15°より大きい部分については、内側部材1における対応する部分に上述した離散配置部10を配置し、外壁部71の内側に溶着用リブ50を上述のように配置することが好ましい。こうした配置とすることにより、振動方向Qとの角度が15°以内である当接面11と、溶着用リブ50の当接縁端部51との間で、振動溶着により十分な強度による溶着ができる。
【0035】
このため、リアスポイラ100が、長手方向における端部付近で湾曲した形状であっても、その湾曲した部分も含めて、溶着部が配置される各部分における接平面と振動方向Qとの角度を15°以内(−15°≦θ≦15°)とすることができる。このため、湾曲した部分も含めて、安定した強度で振動溶着することができる。
【0036】
また、離散配置部10と連続配置部20とが上述のように配置されるため、
図2、
図3に示すように、振動方向Qと垂直な方向に両方が設けられる形状であってもよい。
図3の例では、当接面11kが配置された側面に、外側部材2の外壁部71の内側に振動溶着される溶着用凸部21aが配置された形状例を示す。
【0037】
また、離散配置部10と連続配置部20とは上述のように配置されればよいため、外側部材2における外壁部71の曲面形状などに応じて、離散配置部10と連続配置部20とを適宜配置し、所望の部分を十分な溶着強度で振動溶着させることができる。
【0038】
また、
図2に示すように、本実施形態のリアスポイラ100を車両200に取り付けるための取付穴30が、内側部材1に所定数設けられる。
図2の例では、取付穴30a〜30dの4つがそれぞれ振動方向に所定間隔で配置される。
【0039】
リアスポイラ100が端部まで確実に車両200に固定されるようにするため、
図2における取付穴30a、30dは、前方向に湾曲した両端部分の離散配置部10に隣接する位置に配置される。こうした湾曲部分であっても、上述のように離散配置部10では、内側部材1と外側部材2とが十分な溶着強度で溶着される。
【0040】
ここで、取付穴30は内側部材1に設けられており、車両200に取り付けられた状態では外側部材2が確実に車両200に固定されることが求められる。このため、特に取付穴30の周辺は、十分な溶着強度で溶着されていることが求められる。
【0041】
本実施形態のリアスポイラ100では、両端付近の湾曲した部分に取付穴30が配置される場合であっても、その取付穴30の近傍に離散配置部10を配置することにより、取付穴30の周辺を振動溶着により十分な強度で溶着させることができる。
この近傍とは、内側部材1および外側部材2を接合する強度が十分に確保できる程度に近い距離を指し、なるべく隣接していることが好ましい。
【0042】
図4に示す例では、当接面11fと接続面12fとの間に、取付穴30aを配置するための取付部31が形成される。このため、取付穴30aが、当接面11f、11gの近傍に配置され、振動溶着後には、上述のように当接面11fおよび溶着用リブ50f、当接面11gおよび溶着用リブ50gがそれぞれ十分な強度で溶着される。
【0043】
なお、取付穴30による車両200への取付方法は、ボルト・ナットを用いる方法であってもよく、公知の取付用クリップを用いてもよい。特に、任意の取付用クリップを用いて、所定の数箇所でリアスポイラ100を車両200に固定した後、ボルト・ナットで他の箇所を固定することが、取付強度および作業性の向上等の観点から好ましい。
【0044】
内側部材1および外側部材2を振動溶着させる振動溶着装置としては、公知の各種装置を用いることができる。本実施形態では振動方向は1軸のみ、加圧方向も振動方向と直交する1軸のみであるため、汎用の一般的な振動溶着装置を用いることができる。このように、本実施形態のリアスポイラ100は、1軸振動のシンプルな振動溶着だけで溶着できるため、安定した溶着品質を得やすくなっている。
【0045】
振動溶着装置で溶着する際には、まず、内側部材1および外側部材2のそれぞれを、振動溶着装置に設けられた取付用の治具にセットする。それから振動溶着装置は、装置の上下方向から取付用の治具を近づけていき、加圧方向P1、P2への加圧を開始する。所定圧力となったところで、予め設定された振幅により内側部材1および外側部材2を振動させる。
【0046】
そして振動溶着装置は、振動による接触面の溶融に伴い、内側部材1および外側部材2の加圧方向における幅が予め設定された距離だけ縮まった時点で加圧および振動をストップさせる。この加圧および振動をストップさせるまでの縮まる距離は、例えば1mm程度とすることが好ましい。このように、振動による樹脂の溶融で形成される溶着部52の厚みを1mm程度としておくことで、溶着部が深くなりすぎず、外側部材2の外壁部71の外側表面における意匠性にも影響を与えることのない好適な振動溶着ができる。
【0047】
以上のように、上述した本発明の実施形態によれば、リアスポイラ100における離散配置部10および連続配置部20の何れについても、溶着部52が配置される各部分における接平面と振動方向Qとの角度が15°以内(−15°≦θ≦15°)となっている。このため、スポイラのような長尺製品で、長手方向における端部付近が湾曲した形状であり、その湾曲した形状の外側部材2の内側に内側部材1を嵌め込んで振動溶着する構成であっても、その湾曲した部分も含めて、一軸振動、一軸加圧の一般的な振動溶着装置により安定した溶着強度での振動溶着ができる。
このため、複数の方向から加圧や振動を加える特殊な振動溶着装置を必要とせず、端部まで安定した強度の振動溶着を低コストに実現できる。
【0048】
また、本実施形態のリアスポイラ100は、略V字型に折り曲げられた外壁部71の内側に内側部材1が嵌め込まれて振動溶着される形状であり、溶着部52が配置される当接面11が、その略V字型の外壁部71の内側で振動方向に離散的に配置される。このため、振動溶着による溶着部52が特定の面に偏ることなく、リアスポイラ100の内部に立体的に分散されて配置される。
このため、溶着時及び溶着後にも捩れにくく変形しにくい安定した強度を持つリアスポイラ100を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態のリアスポイラ100は、外側部材2の内側に内側部材1を嵌め込んで振動溶着させるため、外側部材2の外壁部71の外側表面には振動溶着の製法による影響を全く与えないようにすることができる。
このため、意匠性に優れると共に、捩れにくく変形しにくい安定した強度のリアスポイラ100を、汎用の振動溶着により低コストで製造することができる。
【0050】
また、本実施形態のリアスポイラ100では、車両200への取付穴30が、離散配置部10または/および連続配置部20に隣接するように配置される。
このため、取付穴30の近傍についても、内側部材1および外側部材2が十分な溶着強度で溶着されるようになっている。特に、取付穴30がリアスポイラ100の両端付近における前方に湾曲した部分に設けられる場合であっても、その取付穴30の近傍における溶着強度を十分に確保することができる。このため、車両200に取り付けられた使用時にも、リアスポイラ100全体が車両200に十分な強度で安定して固定される。
【0051】
また、本実施形態のリアスポイラ100では、上述のように、一軸振動、一軸加圧の一般的な振動溶着装置にセットするだけで、端部まで簡単に振動溶着できる。このため、端部についてだけ別工程で溶着したり、ネジ等の別部品を用いて固定するなどのコストアップ要因を排除し、低コストに製造することができる。
【0052】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、上述した第1の実施形態で内側部材1に当接面11が設けられ、外側部材2に溶着用リブ50が設けられるのに替えて、外側部材2に当接面11を設け、内側部材1に溶着用リブ50を設けた構成としたものである。
上述した第1の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0053】
図7に、第2の実施形態における振動溶着後のC−C断面を示す。
第2の実施形態としてのリアスポイラ100の離散配置部10では、外側部材2における外壁部71の内側に当接面11が棚状に凸設される。この当接面11は、面上の各点における接平面と振動方向Qとの角度θが15°以内(−15°≦θ≦15°)となるよう設けられる。
【0054】
当接面11をこのように設けることにより、外側部材2における外壁部71の外側表面における意匠性に影響を与えることなく、成形の際の金型を外しやすくし、成形性を良好にすることができる。
【0055】
また、内側部材1における当接面11に対応する場所には、当接面11に溶着させるための溶着用リブ50が設けられる。溶着用リブ50は、内側部材1が外側部材2に嵌め込まれた状態で当接面11に略垂直となる平板であり、内側部材1の所定位置に凸設される。
【0056】
こうした構成で、内側部材1が外側部材2に嵌め込まれ、溶着用リブ50の当接縁端部51が当接面11に接触した状態で振動溶着されることにより、上述した第1の実施形態と同様に溶着用リブ50と当接面11との接触面が溶融して溶着部52が形成される。
このため、第2の実施形態の構成によっても、離散配置部10で十分な溶着強度での振動溶着ができ、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、上述した第1、第2の実施形態で内側部材1と外側部材2とを振動溶着により溶着しているのに替えて、2つの外側部材3,4を振動溶着により溶着する構成としたものである。
上述した第1、第2の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0058】
図8に、第3の実施形態としてのリアスポイラ300を示す。
図9は、リアスポイラ300をV3方向から見た図である。以下、上述した第1の実施形態と同様に、自動車の直進方向を基準として上下方向及び左右方向を説明する。
【0059】
第3の実施形態としてのリアスポイラ300は、車両200の後方に取り付けられ、長手方向における両端付近が下方向に湾曲した形状となっている。また、外側部材を構成する上側部材3および下側部材4が振動溶着により溶着されて形成される。
上側部材3は、両端付近が下方向に湾曲した形状であり、その上側部材3の湾曲形状の内側に、下側から下側部材4が嵌め込まれ、振動溶着される。
【0060】
上側部材3および下側部材4の内側には、上述した第1、第2の実施形態と同様に、離散配置部10および連続配置部20が設けられる。上側部材3および下側部材4の内側における離散配置部10には、一方に当接面11が、他方に溶着用リブ50が、それぞれ設けられる。第1、第2の実施形態で上述のように、当接面11、溶着用リブ50を何れに設けても本実施形態を同様に実現することができる。
【0061】
図10に、
図9のZ部における
図8のE−E方向での部分断面図を示す。
図10の例では、上側部材3の内側に溶着用リブ50が凸設され、下側部材4の内側に当接面11が凸設された構成を示す。
【0062】
第3の実施形態としてのリアスポイラ300では、振動溶着される上側部材3および下側部材4が何れも外側部材であり、外壁部81、82の外側表面における意匠性が要求される。このため、成形性を良好にするため、当接面11は上述した第2の実施形態と同様に棚状に凸設される。この当接面11は、面上の各点における接平面と振動方向Qとの角度θが15°以内(−15°≦θ≦15°)となるよう設けられる。
【0063】
図10に示す構成例では、下側部材4における外壁部82の内側に当接面11が棚状に凸設される場合を示す。
また、上側部材3における当接面11に対応する場所には、当接面11に溶着させるための溶着用リブ50が設けられる。溶着用リブ50は、下側部材4が上側部材3の下側から嵌め込まれた状態で当接面11に略垂直となる平板であり、上側部材3の外壁部81における所定位置に凸設される。
【0064】
こうした構成で、下側部材4が上側部材3の下側から嵌め込まれ、溶着用リブ50の当接縁端部51が当接面11に接触した状態で振動溶着されることにより、上述した第1、第2の実施形態と同様に溶着用リブ50と当接面11との接触面が溶融して溶着部52が形成される。
このため、第3の実施形態の構成によっても、離散配置部10で十分な溶着強度での振動溶着ができ、外側部材である上側部材3および下側部材4を溶着させる構成として、上述した第1、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態は、上述した第3の実施形態で当接面11を外壁部の内側に配置したのに替えて、外壁部に当接面11を配置する構成としたものである。
上述した第3の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0066】
図11(A)に、第4の実施形態としての
図9のZ部における
図8のE−E方向での部分断面図を示す。
図11(B)は、F−F断面を示す。
【0067】
第4の実施形態としてのリアスポイラ300の離散配置部10では、上側部材3の外壁部81と、下側部材4の外壁部82との接触部分に、上述した第1の実施形態と同様の離散配置部10が設けられる。外壁部81、82の接触部分には、一方に当接面11が、他方に溶着用リブ50が、それぞれ設けられる。なお、当接面11、溶着用リブ50を何れに設けても本実施形態を同様に実現することができる。
【0068】
当接面11および溶着用リブ50は、上側部材3および下側部材4の意匠性に影響を与えないようにするため、
図11(A)(B)に示すように、上側部材3の外壁部81と、下側部材4の外壁部82との分割ライン5よりも少し上方向または下方向にずれた位置に配置される。このように配置することにより、当接面11および溶着用リブ50による溶着部が分割ライン5から見えないようにすることができる。
【0069】
また、当接面11は、上側部材3の外壁部81と、下側部材4の外壁部82との接触部分に設けられるため、上述した第1の実施形態と同様に階段状に設けられる。この当接面11は、面上の各点における接平面と振動方向Qとの角度θが15°以内(−15°≦θ≦15°)となるよう設けられる。
【0070】
図11に示す構成例では、上側部材3における外壁部81に当接面11が階段状に設けられる場合を示す。
また、下側部材4における当接面11に対応する場所には、当接面11に溶着させるための溶着用リブ50が凸設される。溶着用リブ50は、下側部材4が上側部材3の下側から嵌め込まれた状態で当接面11に略垂直となる平板であり、下側部材4における外壁部82における所定位置に凸設される。
【0071】
こうした構成で、下側部材4が上側部材3の下側から嵌め込まれ、溶着用リブ50の当接縁端部51が当接面11に接触した状態で振動溶着されることにより、上述した第1〜第3の実施形態と同様に溶着用リブ50と当接面11との接触面が溶融して溶着部52が形成される。
このため、第4の実施形態の構成によっても、離散配置部10で十分な溶着強度での振動溶着ができ、上述した第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
〔各実施形態について〕
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0073】
例えば、溶着部が配置される当接面11は、振動方向に複数の面(11a,11b,・・・)が離散的に配置されることとして説明したが、この離散的に設けられる当接面11は、リアスポイラ全体の形状や設計等に応じて、振動方向と垂直な方向にも配置される構成としてもよい。
例えば上述した第1の実施形態の構成で例示すると、
図12のように、振動方向に複数の当接面11(11a,11b,・・・)が設けられると共に、振動方向と垂直な方向に当接面11d1、11d2が設けられる構成であってもよい。この場合、外側部材2における対応する位置に、溶着用リブ50d1、50d2が設けられ、振動溶着により溶着部52dが形成される。こうした構成によっても、上述した各実施形態を同様に実現することができ、同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、当接面11は、樹脂成形の際の成形性に応じて階段状または棚状に設けられることとして説明したが、上述のように面上の各点における接平面と振動方向Qとの角度θが15°以内(−15°≦θ≦15°)となるよう設けることができれば、外壁面への固定形状は任意であってよい。
【0075】
また、上述した各実施形態では、長手方向における中央部付近に連続配置部20が配置され、両端付近に離散配置部10が配置される構成として説明したが、この配置に限定されず、振動方向における車両用樹脂製品の形状に応じて、離散配置部10と連続配置部20は任意の配置であってよい。例えば、連続配置部20と離散配置部10とが振動方向にさらに交互に設けられる構成であってもよい。
【0076】
また、上述した各実施形態では、2つの樹脂部材を振動溶着により溶着することとして説明したが、振動溶着できればこの構成に限定されず、例えば、内側部材1や下側部材4が複数の部材に分割された構成であってもよい。すなわち、例えば複数に分割された内側部材1が外側部材2の内側に嵌め込まれて振動溶着される構成や、複数に分割された下側部材4が上側部材3の内側に嵌め込まれて振動溶着される構成などであってもよい。
こうした構成であっても、振動溶着により同様に溶着することができ、本発明を同様に実現することができる。
【0077】
また、振動溶着の際の加圧方向に、3つの部材が配置される構成であっても、振動溶着により溶着可能であれば任意の構成であってよい。すなわち、例えば加圧方向に2層に分かれた内側部材1が外側部材2の内側に嵌め込まれて振動溶着される構成であっても、加圧方向における中間に位置する部材を何らかの方法で固定してから振動溶着させるなど、各部材間を振動溶着させることができれば任意の構成であってよい。
【0078】
また、上述した各実施形態ではリアスポイラとして説明したが、このものに限定されず、フロントスポイラなど各部位のエアスポイラにも本発明は同様に適用することができる。また、エアスポイラに限定されず、各種のエアロパーツ、車両用外装部品、車内用部品等にも本発明は同様に適用することができる。
【0079】
また、例えばストップランプ用のLEDなど任意の別部品を内蔵させる構成とする場合であっても、本発明は同様に適用することができる。この場合、別部品を組み込むための穴を開けた形状としておき、振動溶着後にその穴に別部品を組み込むなどの方法により製造することができる。