(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縦色線が、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、反射材粒子および蓄光材を含有する再帰反射特性と蓄光特性を有する樹脂層からなり、かつ、前記ガラスビーズは表層寄りに多く偏在し、前記蓄光材は内層寄りに多く偏在して該樹脂層が形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の消防用ホース。
前記縦色線をなす樹脂層が、蓄光発光または/および反射発光をするとき、該縦色線をなす各パーツ線が、ホース長さ方向に、発光する色の明暗差または濃淡差を呈するように形成されていることを特徴とする請求項4記載の消防用ホース。
前記ガラスビーズの平均粒径が前記蓄光材の平均粒子径よりも大きく、かつ、該蓄光材の平均粒子径が前記反射材粒子の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の消防用ホース。
前記ガラスビーズの平均粒径が前記蓄光材の平均粒子径の2〜5倍であり、該蓄光材の平均粒子径が前記反射材の平均粒子径の2〜5倍であることを特徴とする請求項6記載の消防用ホース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、長時間にわたり、視認性良く確実に帰還路を示すことができて、火災現場となっている建物内等に奥深く入りこんだ消防隊員を安全かつ迅速に帰還させる誘導機能に優れた消防用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明の消防用ホースは、下記(1)の構成を有する。
(1)ホースのジャケットの表面に縦色線を有する消防用ホースにおいて、該縦色線が
1〜5mの長さ範囲の部分で断続線として描かれ、かつ該断続している縦色線を構成する各パーツ線の長さが、所定の規則性を有してホース長さ方向に変化して
いることにより消防用ホースの筒先側金具の側から水元側金具の側に向かう方向を示すように描かれていることを特徴とする消防用ホース。
【0012】
また、かかる本発明の上記(1)の消防用ホースにおいて、より好ましくは、以下の(2)〜(7)のいずれかの構成を有するものである。
(2)前記縦色線が、蓄光材を含有していて蓄光特性を付与された樹脂層からなることを特徴とする上記(1)記載の消防用ホース。
(3)前記縦色線が、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、反射材粒子および蓄光材を含有する再帰反射特性と蓄光特性を有する樹脂層からなり、かつ、前記ガラスビーズは表層寄りに多く偏在し、前記蓄光材は内層寄りに多く偏在して該樹脂層が形成されてなることを特徴とする上記(1)または(2)記載の消防用ホース。
(4)前記樹脂層が、色素を含有することを特徴とする上記(2)または(3)記載の消防用ホース。
(5)前記縦色線をなす樹脂層が、蓄光発光または/および反射発光をするとき、該縦色線をなす各パーツ線が、ホース長さ方向に、発光する色の明暗差または濃淡差を呈するように形成されていることを特徴とする上記(4)記載の消防用ホース。
(6)前記ガラスビーズの平均粒径が前記蓄光材の平均粒子径よりも大きく、かつ、該蓄光材の平均粒子径が前記反射材粒子の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする上記(3)記載の消防用ホース。
(7)前記ガラスビーズの平均粒径が前記蓄光材の平均粒子径の2〜5倍であり、該蓄光材の平均粒子径が前記反射材の平均粒子径の2〜5倍であることを特徴とする上記(6)記載の消防用ホース。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる本発明によれば、消防隊員が、暗い闇と煙の中で、複雑な構造をした建屋内から展張した消防用ホースのラインだけを頼りに帰還をする際に、該消防ホースラインが示す退路のラインを、瞬時にかつ明確に退路の方向とともに判断することができる退路の視認性、誘導性に優れた消防用ホースが提供される。
【0014】
本発明によれば、消防用ホースのラインを頼りに帰還する消防隊員に対して、より瞬時にかつ正確に誘導する機能を、長時間にわたり発揮でき、無事な帰還を助ける消防用ホースが提供されるものである。
【0015】
また、暗い中などで、長い消防用ホースを捩れることなく、展張したり、巻いて収納する作業などの際に、捩れていないことが確認しやすい消防用ホースが提供される。
【0016】
請求項2〜7のいずれかにかかる本発明によれば、上述した請求項1記載の本発明の消防用ホースが有する効果を、より確実にかつ大きく発揮する消防用ホースが提供されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、更に詳しく本発明の消防用ホースについて説明する。
【0019】
本発明の消防用ホースは、
図1に示したように、消防用ホース1のジャケット4の表面に縦色線5を有する消防用ホースにおいて、該縦色線5が、
1〜5mの長さ範囲の部分で断続線として描かれ、かつ該断続している縦色線5をなす各パーツ線の長さが、所定の規則性を有してホース長さ方向に変化して
いることにより消防用ホースの筒先側金具の側から水元側金具の側に向かう方向を示すように描かれていることを特徴とする。
【0020】
図1において、2は筒先金具(オス金具)、3は水元金具(メス金具)であり、これら両金具を両端に有した消防用ホースのジャケット4の表面に断続線からなる縦色線5を有している。消防用ホースは、通常、規格上、メス金具3が水元側、オス金具2が筒先側となり、放水時には水は水元金具(メス金具)3側から筒先金具(オス金具)2側に流れるようになっている。したがって、消防隊員は、帰還する際は筒先金具(オス金具)2側から水元金具(メス金具)3側に向いて進むことになる。
【0021】
本発明の消防用ホースでは、縦色線5を断続線で形成し、かつ該断続している縦色線5を構成する各パーツ線の長さを、所定の規則性を呈してホース長さ方向に変化させて描いている。そして、この縦色線5の断続線の各パーツ線の長さが、該所定の規則性を呈してホース長さ方向に変化して描かれていることにより、該ホースを見る者に、所定の方向性を認識させるようにされている。
【0022】
例えば、
図1の態様では、筒先側金具(オス金具)2の側から水元側金具(メス金具)3の側に向かうにつれて、断続している縦色線4の各パーツ線の長さが段階的に長くなっていくように縦色線4が形成されている。このようにして消防用ホースを形成し、また、予め消防隊員には、各パーツ線の長さが「長くなっていく方向」が退路方向であることを周知させておくことにより、消防隊員は、迷うことなく瞬時に正確な退路方向を知り、帰還することができる。
【0023】
本発明において、「断続している縦色線を構成する各パーツ線の長さが、所定の規則性を有してホース長さ方向に変化して描かれている」とは、ホースジャケットの外表面において、断続して存在している縦色線の各パーツ線の長さ(ホース長手方向の長さ)が、一般に、瞬時に(視界的に一目で)視認できるホース長さ1
m〜5
mの長さ範囲の部分において、一定の方向性を持っていることを認識できるように、ホース長さ方向で所定の規則性を有して1サイクルまたは複数サイクルで変化していることをいう。すなわち、一般に、消防用ホース1本の全長は約20mであるので、その約20mの間において、複数のサイクルを呈して各パーツ線の長さを変化させて断続線が構成されているものであり、前述した瞬時に視認できるホースの一部分長さで、一定の方向性を示していることが認識されるように構成されていることが重要である。
【0024】
より具体的には、例えば、特に限定されるものではないが、各パーツ線の長さを、短い方から順に、1〜5cm、10〜15cm、20〜30cm、35〜50cm、55〜85cmなどの段階的に長くなっていく組合せにして、かつ、その間隔を2〜5cm程度の等間隔にして一組(1サイクル)の断続線を構成し、その一組(1サイクル)(
図1で、Sで示した)の断続線が、消防ホース全体長さ中において、何サイクルかが繰り返されて両端間のホースジャケット上に描かれているようにすることが重要である。
【0025】
なお、断続線で描かれた縦色線は、方向性を示すことができるのであればよく、
図1に示したものとは逆に、筒先側金具2から水元金具3の方向に各パーツ線の長さが、筒先側金具(オス金具)2の側から水元金具(メス金具)3の側に向かうにつれて、断続している縦色線の各パーツ線の長さが段階的に短くなっていくように構成されてもよい。
【0026】
この場合には、予め消防隊員には、各パーツ線の長さが「短くなっていく方向」が退路方向であることを周知させておくことが重要である。上記した各パーツ線の長さは1例であり、適宜に、より短いもの、より長いものを使用してよい。また、その一組(1サイクル)も構成するパーツ線の本数も特に限定されるものではないが、3本程度から6〜7本程度までとするのがよい。
【0027】
なお、本発明者等の知見によれば、各パーツ線の長さが、筒先側金具(オス金具)2の側から水元金具(メス金具)3の側に向かうにつれて、段階的に長くなっていくように構成されていることが、進むべき退路の方向を、より大きなパーツ線として示すことになるので、退路方向の判断が即座にできるので好ましい。特に、再帰反射特性と蓄光特性を有する樹脂層で該パーツ線を構成したときには、該効果がより明確となり好ましい。
【0028】
また、好ましくは、本発明にかかる消防用ホースの全てにおいて、長さ変化の規則性の態様はいずれか1つの態様に統一化・規格化すべきであり、各種の態様が煩雑に存在すると、進むべき退路の方向の判断が迅速・瞬時にできなくなることがあり得る点を留意すべきである。
【0029】
本発明の消防用ホースにおいて、縦色線の幅は0.5cm〜3cm程度であることが好ましい。視界が悪い状況のもとでも視認されやすいからである。
【0030】
また、縦色線が、少なくとも蓄光材を含有していて蓄光特性を付与された樹脂層からなることが好ましい。暗い状況のもとでの縦色線の良好な視認性が要請されることが多く、蓄光材を含有していることにより視認性が向上するからであり、また、光が乏しくともある程度長時間にわたりその良好な視認性を維持できるからである。
【0031】
さらにまた、縦色線は、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、反射材粒子および蓄光材を含有する再帰反射特性と蓄光特性を有する樹脂層からなっていて、かつ、該ガラスビーズは表層寄りに多く偏在し、該蓄光材は内層寄りに多く偏在して該樹脂層が形成されていることが好ましい。
【0032】
図2、
図3は、いずれもその好ましい構造の態様例を示したものであり、消防用ホース1のキャビネット4の表面に、縦色線5をなす樹脂の層6が形成されていて、該樹脂の層6に担持されて、ガラスビーズ7、蓄光材8、反射材9が存在している。10は必要に応じて設けられる接着剤層であり、該樹脂の層6を熱転写シート方式により形成する場合は、通常はホットメルト樹脂層である。樹脂の層6は、全体が、
図3のように単層のように形成されていてもよいが、複数の層が積層されている一つの層を形成しているようなものでもよい。
【0033】
本発明の消防用ホースは、縦色線5の構成を、特に
図2、
図3に示したような構成とすると、該縦色線5をなす樹脂の層6が再帰型の反射特性と蓄光性の両特性を併せ持つものとして構成され、消防士が暗い中でライトなどで照らすと、その反射光がその消防士の方に直接的に帰ってくるものであり、そのことから、該縦色線5の存在とその形状(退路の方向)を瞬時に正確に視認できるものである。また、蓄光材の存在により、ライトなどによる光の照射が終わったとき、あるいは光の照射方向がズレて変わったとき等でも、縦色線5がしばらくの間は蓄光発光を続けるので、退路として進む方向がよりわかりやすいものとなる。
【0034】
ここで、再帰型の反射とは、
図4(a)に、ガラスビーズ7の列と入射光Eとその反射光Rの関係をモデル的に示したように、入射してきた方向とほぼ同一の方向に光が反射する性質の反射をいい、正面位置あるいは斜め位置からであっても、消防士が該消防用ホースに光を照射すると、明るい直接的な反射光としてその消防士に認識でき、該消防用ホースに付与されている情報(ホースの縦色線方向(すなわち、ホースライン方向であり、出口につながる脱出・帰還経路の方向)の情報)をより即座にかつ確実に認識できることになる。
【0035】
この再帰型の反射は、ガラスビーズのような反射材が持つ光学的特性であるが、特に、本発明では、特定の屈折率の範囲(屈折率が1.5〜2.2)と特定の粒径の範囲(粒径が10〜250μm)のガラスビーズを使用することにより、視認性に特に優れた再帰型反射の効果を得ることができるので好ましく、特に、屈折率のさらに好ましい範囲は1.8〜2.1であり、ガラスビーズの径のさらに好ましい範囲は50〜250μm、さらに最も好ましい範囲は50〜120μmである。
【0036】
なお、
図4(b)は、鏡面反射での入射光Eとその反射光Rの方向を示したモデル図であり、このような反射(鏡面反射)では、看者が斜め位置から該消防用ホースに光を照射することになる場合、該反射光ではその該消防用ホース(縦色線)に示されている情報を、消防士に即座にかつ確実に認識させるという点では劣るものである。
【0037】
なおまた、
図4(a)、(b)において、Bはベース(基体、支持体)を示しているが、このベースBに色素を含ませている場合には、該色素の色が反射光Rの色として視認されることとなり、該色によっても視認性を更に向上し得るものである。色素は、顔料または染料、あるいはその両方が使用され、再帰反射光に有彩色(赤、青、黄色など)の色を付けて目立たせて視認性を一層向上させることができる。
【0038】
本発明の消防用ホースの好ましい態様においては、特に、樹脂の層6の表層寄りにガラスビーズ7が多く偏在するようにする。ガラスビーズ7が樹脂の層6に担持されて表層寄りに多く偏在することにより、
図4(a)にモデル的に示した再帰型反射がより効果的に実現される。
【0039】
ガラスビーズ7は、無色透明なものあるいは淡い有色の透明なものを使用することが好ましく、そのようにすることによって、樹脂の層6の色あるいは入射光の色をピュアに呈したものとしてその反射光が視認されることとなる。樹脂の層6には、所望に応じて顔料もしくは染料の色素を含有させてよく、該樹脂の層6は、マトリックスとしては代表的には色素と無色透明な樹脂成分からなるものであることが好ましい。
【0040】
そして、上述の好ましい態様の本発明の消防用ホースは、好ましくは再帰型反射特性を有する一方で、樹脂の層6は蓄光材8の粒子を、好ましくは必須のものとして含有しているのであり、ライトが完全に照射されていない暗い状況などでも、その蓄光特性によって光を放つこととなり、消防士の視認ができることとなる。
【0041】
ここで、蓄光機能とは、太陽光・蛍光灯などの光のエネルギーを吸収し、その蓄えたエネルギーを可視光線に変換することで光を放出する機能をいい、従来から蓄光塗料として知られているものなどを使用すればよい。すなわち、硫化物系のもの(例えば、化学組成がZnS:Cuのもの)や酸化物系のもの(例えば、化学組成がSrAl
2O
4:Eu,Dyのもの)等を使用することができるが、放出する光の量(残光輝度)と残光時間をより大きくできる点や耐熱性・耐久性の点で、酸化物系のものを使用することが好ましい。また、蓄光材は、粒子状のものとして使用することが残光輝度、残光時間を大きくできる点で好ましく、その平均粒子径は、0.5〜200μmのものを使用するのが好ましく、さらに好ましくは5〜100μm、最も好ましくは10〜60μmのものを使用することである。
【0042】
この蓄光材が存在することにより、そして、好ましくは、ガラスビーズや樹脂層が透明なもの(無色あるいは淡色の有色)で構成されていることから、特にそれらの存在により発光輝度が低下するなどの害を受けることなく、蓄光特性を良好に発揮することができる。
【0043】
本発明の消防用ホースにおいて、縦色線をなす樹脂の層が、蓄光発光または/および反射発光をするとき、該縦色線をなす各パーツ線が、そのパーツ線の単体内でホース長さ方向に、発光する色の明暗差または濃淡差を呈するように形成されていることも好ましい。発光する色の明暗差または濃淡差を補助的に利用して、例えば、退路での進む方向をより明るくあるいはより濃くすることなどにより、退路の方向をよりわかりやすく示すようにすることもできるからである。この発光する色の明暗差または濃淡差を実現するには、後述するガラスビーズ、反射材粒子、蓄光材および/または色素の各パーツ線の単体における含有量を、ホース長さ方向において均一な一定にせず、長さ方向に分布を持たせることによって達成することができる。
【0044】
本発明において、
図2、
図3に示した9は、光の反射材(ガラスビーズとは異なるもの)であり、光をより強く反射させる機能を積極的に持たせるために、そのような反射材粒子(反射鏡)を含有させているものである。例えば、該反射材9としては、アルミニウム粒子や、天然あるいは人工の雲母粒子などが該当し、代表的にはこれら粒子を用いることができる。なお、該雲母粒子は、一般に半透明なもので、光を半ば透過させるので酸化チタンなどをコーティングして白色反射面を呈するようにして用いることが反射光の色を鮮明なものにする上で好ましい。雲母粒子は、一般に薄板状の粒子であり、本発明においては、天然品あるいは人工合成品のいずれでも使用できる。雲母粒子は、層状構造を形成し、しかも、一部の光を反射して一部の光を透過させるために、光の多重層反射を起こさせることができる。透過した光も、下側の反射材(雲母など)で反射されることとなり、中でも、特に色素が存在する場合には、該色素を介して反射されることとなり、再帰反射光としての光量、色の強さ・鮮明さの向上効果に寄与するものである。
【0045】
反射材粒子(雲母粒子など)は、平均粒子径(平均長径)が0.1〜100μm程度のもの、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜25μm程度のものを用いることであり、一般に、ガラスビーズの粒径よりも小さい径のものを用いれば、ガラスビーズの間を透過してくる光を反射する層として作用することができて好ましい。
【0046】
また、樹脂の層6に色素を含有させて構成する場合、該色素(顔料、染料)の粒子径は、極力小さいものとすべきであり、好ましくは0.01〜10μm程度、より好ましくは0.1〜1μm程度のものを使用するのがよい。色素の粒子径が0.01μmよりも小さい場合には、一般に高価格となり望ましくなく、また、10μmよりも大きい場合には、該色素が、反射材粒子ないしは透過性反射材粒子としての雲母粒子などよりも大きいものである率が高くなり、その結果、該反射材や該透過性反射材粒子(雲母粒子)まで到達する光を遮る率が高くなり、反射光量を低下させることになるので好ましくない。
【0047】
樹脂の層6は、メジウムやベース樹脂(分散媒樹脂)を用いる場合、発光や発色に影響を与えない透明なもので、かつ耐熱性のあるもの、いわゆる透明インク樹脂などを用いるのがよい。該樹脂は、有機系のものや無機系のものなど、さらに水系や油性のもの等を使用できるが、扱いのしやすさなどからアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂などを使用するのが好ましい。
【0048】
ガラスビーズ7が表面寄りに多く偏在している樹脂の層6を有する本発明の好ましい態様の消防用ホースを製造するには、特に限定されるものではないが、代表的には、例えば、以下の(A)、(B)、(C)のうちのいずれかの方法によって製造できる。
【0049】
(A)転写シート方式:
転写シート方式による場合は、以下の(1)〜(5)の順に加工をして製造することができる。
(1)ガラスビーズ7を一面に敷き詰めたビーズ6のシート上に、蓄光インクで印刷またはコーティングして蓄光材8を含んだ蓄光樹脂層を設ける。
(2)さらに、その上から反射材9と白顔料を含む樹脂インクで印刷またはコーティングして反射層を設ける。
(3)次に、反射材層の上に、ホットメルト接着樹脂層10を印刷またはコーティングして転写シートを完成させる。
(4)この転写シートを消防ホースのジャケット(基材)4に重ね、熱プレスするとホットメルト樹脂層と消防ホースジャケットが接着する。
(5)十分に冷えてから、ビーズシートのベースフィルムを剥がし、代表的には、
図2に示したような積層構造を有する本発明にかかる消防用ホースを製造することができる。
【0050】
このようにして転写して形成された消防用ホースにおいては、その樹脂の層6の表面にガラスビーズ7が一面にあるので、良好に再帰反射をする。そして、ガラスビーズ7は透明なので、その内側に位置する蓄光材8が発光するとその光はガラスビーズ7を通過し、外側から視認されるのである。一方で、蓄光材8を含んだ透明樹脂は遮蔽性がない。このため、さらにその内側に反射材9と白色顔料(白色顔料がコーティングされた反射材)を入れ、遮蔽性を備えた反射材層(9)を設けるのである。このような構成にすることにより、例えば、該消防用ホースが色つきのものであっても、該消防用ホースの色に左右されることなく蓄光や反射光が得られる。
【0051】
蓄光樹脂層8は遮蔽力がなく、光を一部通過させるので、通過した光は反射層9に到達し光をはね返すことができるため、より強く再帰反射する仕組みとなっているのであり、さらに、ホットメルト樹脂接着層10には、ゴム系接着樹脂を混入することにより、放水時のホースの脹らみにも十分耐えることができる伸縮性を有するようにできるものである。
【0052】
また、印刷方式の場合には、スクリーン印刷法などを採用できるが、以下の(B)法または(C)法により製造することができる。
【0053】
(B)ガラスビーズ、蓄光材および反射材、場合により色素のすべてを含む樹脂インク(本発明では説明の便宜上、このような樹脂インクを「オールインワンタイプ」の樹脂インクと呼ぶ)を用いる場合:
流動性があるオールインワンタイプの樹脂インクで印刷し、反射機能と蓄光機能の両方を効率良く発現させるために、該樹脂インクを構成する各材料の粒子径を、以下のようにコントロールしてインクを作成する。
【0054】
すなわち、例えば、ビーカーの中に大きい粒と小さい粒を入れて混合したとき、一応、均一に混ざるが、ビーカーに振動を与えてトントントンと叩くと、次第に粒子の大きいものは上に、小さいものは下に分布するようになるが、印刷樹脂インクでも同じようなことを起こさせることができ、ガラスビーズ7が一番上に、その次に蓄光材8、そしてその下に反射材9、さらに色素(染料・顔料)と層状構造を構成するように粒子の平均径の相互関係(さらに、必要に応じて比重の相互関係)を調整・設定することにより、代表的には、
図3に示したような多層状構造を有し、反射・蓄光の両機能を持つ印刷物を製造することができる。
【0055】
このような層状構造を形成する上で、使用される各粒子のそれぞれの平均粒子径は、ガラスビーズは10〜250μmの範囲のものを使用すること、好ましくは50〜250μm、最も好ましくは50〜120μmの範囲のものを使用することである。蓄光材は平均粒子径で0.5〜200μmのものを使用することが好ましく、より好ましくは5〜10μm、最も好ましくは10〜60μmのものを使用することである。反射材は平均粒子径で0.1〜100μmのものを使用することが好ましく、より好ましくは1〜50μm、最も好ましくは5〜25μmのものを使用することである。
【0056】
そして、そのような範囲の中で、粒径の大小の相互の関係は、ガラスビーズの平均粒子径は蓄光材のそれよりも大きく、また蓄光材の平均粒子径は反射材のそれよりも大きいものを用いることが、蓄光材の層、反射材の層を明瞭に形成できて、蓄光性能と再帰反射性能の両者を良好に保有させることができる点で好ましく、具体的には、ガラスビーズの平均粒径が蓄光材の平均粒子径の2〜5倍であり、蓄光材の平均粒子径が反射材の平均粒子径の2〜5倍であることが、確実に積層状に分離した層を形成させ得る点で好ましい。このそれぞれの差が2倍未満であれば、明確な積層状の構造ができにくい方向であり、また5倍を超える場合には、表面がざらつきが生じたり、風合いが硬く重くなり、またそれぞれの粒子が脱落しやすくなる方向であり好ましくない。また、色素は、反射材よりもさらに小さいものを用いることが好ましいが、一般に色素の粒子は非常に小さいのでその点では問題は少ない。
【0057】
(C)多段印刷法による反射・蓄光機能を出現させるための樹脂インクの場合:
消防ホースの基材に直接多段印刷するには、まず基材(ホースのジャケット)に遮蔽層を印刷する。遮蔽層はホースが着色しているとき、その色が表面から見えないようにするためで、反射材9と白色顔料を含む樹脂インクで印刷をすればよいものである。次に、蓄光材7を含む樹脂インクで印刷する。この樹脂インクには、反射材(層中において、より下方に位置させるために、蓄光材よりも粒径が小さい反射材)を入れてもよい。
その後、ガラスビーズ7を含む透明樹脂インクで印刷する。このようにして多段印刷して形成された消防用ホースは、反射と蓄光の両機能を備えたものとなる。
【0058】
以上のように、本発明の消防用ホースを製造するには、各種方法があるが、特に、多段印刷/転写方式、多段印刷方式による場合は、ガラスビーズ7が整然と一列に担持されている状態を形成しやすいものであり、再帰反射効果を高くかつ安定して発揮できる樹脂の層6を製造できる。オールインワンタイプの樹脂インクを使ったプリント方式で製造する場合には、ガラスビーズ7が多少凹凸を呈して並んで存在する樹脂の層6となるので、再帰反射特性は多少劣る方向であるが、本発明者らの各種知見によれば実用に問題ないほど十分に高いものであり、製造法として工程が簡易である分非常に優れている。
【実施例】
【0059】
実施例1
ガラスビーズ、蓄光材、反射材および色素の全てを一つのインクに含有させたオールインワンタイプの樹脂インクを用いて、消防用ホースの側面表面に、直接的に該樹脂インクを載せた回転ロールを接圧させることにより該消防用ホースの長手方向に縦色線を印刷した。
【0060】
該縦色線は、オールインワンインクを使用した印刷法により構成されたものであり、
図3にモデルを示した構成を有し再帰反射・蓄光性能と遮蔽着色機能を有するものである。
【0061】
上記のインクを載せた回転ロールは、直径が250mmのものであり、最外周面上に周方向に間欠的に存在する切り欠き部が設けられているものであり、該切り欠き部の存在により対応箇所が非印刷となり、
図1にモデルを示したような断続した縦色線が印刷されるものである。
【0062】
具体的には、前記樹脂インクを載せた該回転ロールを1回転させて印刷を行うと、パーツ線長さが、約76.3mm、約63.2mm、約50.2mm、約37.1mm、約24.0mm、約10.9mmの順で短くなっていく縦色線を印刷でき、かつ、各パーツ線の間には約21.8mm長さ(一定)の非印刷部を形成するものである。該ロールは1回転すると、上記寸法の断続した縦色線を2サイクル分印刷できるものである。
【0063】
樹脂インクは、分散媒樹脂としてウレタン系樹脂を用い、ガラスビーズの屈折率は1.93、平均粒子径は53μmであり、蓄光材の平均粒子径は26μm、反射剤の平均粒子径は12μmであり酸化チタンで白色にコーティングした人工の雲母を用いたものである。
【0064】
この消防用ホースを、
図1に示したように、各パーツ線が長くなっていく先の方に水元側金具(メス金具)3をつけ、その反対側に筒先側の金具(オス金具)2をつけた。
【0065】
夜間、この消防用ホースに光を当てて再帰反射機能のレベルを確認した結果、70m離れたところからの反射光を肉眼ではっきりと視認でき、かなり遠くからでも、また苛酷な条件のもとでも、該ホースが持つ縦色線の各パーツ線の長さ情報(どちらが筒元側で、どちらが筒先側かという情報)を良好に得ることができることを確認できた。
【0066】
また、蓄光機能についてもそのレベルを確認したところ、残光輝度が約320mcd/m
2 、残光時間が1000分以上、耐光性が1000時間以上あり十分に高い満足できるものであり、蓄光発光機能によっても該ホースが持つ縦色線の各パーツ線の長さ情報(どちらが筒元側で、どちらが筒先側かという情報)を良好に得ることができることを確認できた。
【0067】
実施例2
縦色線の各パーツ線長さのみを変更して、その他は実施例1と同様にして、消防用ホースを製造した。
【0068】
縦色線の各パーツ線の長さは、樹脂インクを載せた該回転ロールを1回転させて印刷を行うと、パーツ線長さが、約152.6mm、約126.5mm、約100.3mm、約74.1mm、約48.0mm、約21.8mmの順で短くなっていく縦色線を印刷でき、かつ、各パーツ線の間には約20.0mm長さ(一定)の非印刷部を形成して、1サイクル分を印刷するものである。
【0069】
この消防用ホースを、
図1に示したように、各パーツ線が長くなっていく先の方に水元側金具(メス金具)3をつけ、その反対側に筒先側の金具(オス金具)2をつけた。
【0070】
この消防用ホースを実施例1の消防用ホースと同様に評価したところ、実施例1と同様に、該ホースが持つ縦色線の各パーツ線の長さ情報(どちらが筒元側で、どちらが筒先側かという情報)を良好に得ることができた。特に、一つのパーツ線の大きさが実施例1のそれよりも大きいことと相俟って、暗闇などの中でも、退路が分かりやすい点で、実施例1のものよりも優れていると判断できるものであった。
【0071】
比較例1
縦色線の各パーツ線長さのみを変更して、その他は実施例1と同様にして、消防用ホースを製造した。
【0072】
縦色線の各パーツ線の長さは、樹脂インクを載せた該回転ロールを1回転させて印刷を行うと、パーツ線長さが、約130mmで4本同一長さで、各パーツ線の間には約88mm長さ(一定)の非印刷部を形成するものである。このホースの一方の先端に水元側金具(メス金具)3をつけ、その反対側に筒先側の金具(オス金具)2をつけた。
【0073】
この消防用ホースを実施例1の消防用ホースと同様に評価したところ、縦色線の存在自体は、夜間や暗闇の中でも認識できるものの、該ホースが有する方向指示性という点では特別な機能や効果のいずれも認められないものであった。